電子メールや、オンラインショッピング、キャッシュレス決済、各種電子申請など、情報社会におけるインターネットサービスは、
公開鍵暗号に基づく電子署名や認証と鍵交換、及び
共通鍵暗号によるデータの暗号化などによって安全に守られています。
しかし、研究開発が急速に進展している量子コンピュータによって、現在普及している暗号技術が破られる恐れがあります。そこで、量子コンピュータが実用化されても解読が困難とされる耐量子計算機暗号への移行準備が始まっています。その移行は、かつてない規模で2025年頃から本格化すると予想されます。
NISTでは耐量子計算機暗号の標準化を進めており、2022年7月にその候補となる技術の選定結果を公表しました。選定された暗号方式は事実上の世界標準になり、今後世界中で置き換えが進められていくと考えられています。米国ではすでに2022年5月、
大統領令が発布され、量子コンピュータがサイバーセキュリティにもたらすリスクに対処するため、強固な新暗号技術の確立と普及への動きが始まっています。
新しい暗号方式への移行は、完全に置き換わるまでに10年規模の時間を要すると予想されることから、量子コンピュータの実用化のスピードに間に合わせるべく、早急な取り組みが必要になります。
本成果により、PQCをICカードシステムに実装する技術が確立されるとともに、PQCの普及が進み、量子コンピューティング時代へ向けた暗号インフラのスムーズな移行に繋がると期待されます。凸版印刷とNICTは今後も連携しながら、PQCの早期の普及を図り、世界の安全・安心な情報流通基盤の構築及び維持に貢献します。