図2 広く利用されている標準外径光ファイバのイメージ図
標準外径光ファイバ
国際規格で、光ファイバのガラス(クラッド)の外径は0.125±0.0007 mm、被覆層の外径が0.235〜0.265 mmと定められている。現在の光通信で広く使用されている光ファイバは、外径0.125 mmのシングルコア・シングルモードファイバで、毎秒250テラビットが伝送容量の限界と考えられており、新型光ファイバの研究開発が盛んに行われている。
波長多重技術
異なる波長の光信号を1本の光ファイバで伝送する方式で、波長数に比例し伝送容量を上げることが可能であるが、光伝送に適した波長帯域は限られており、現在の光伝送システムで利用されている波長数は90程度である。
ペタビット、テラビット
1ペタビットは1,000兆ビット、1テラビットは1兆ビット、1ギガビットは10億ビット。毎秒1ペタビットは、1秒間に8K放送の1,000万チャンネル相当である。
波長帯域
通信用途で主として用いられている、C帯(波長1,530〜1,565 nm)とL帯(1,565〜1,625 nm)、その他に、O帯(1,260〜1,360 nm)、E帯(1,360〜1,460 nm)、S帯(1,460〜1,530 nm)、U帯(1,625〜1,675 nm)がある。今回は、S帯の中でも短い波長(1,460〜1,490 nm)も加えて使用した。
新型光ファイバ
現在、中・長距離通信用に普及している標準シングルコア・シングルモードファイバは、毎秒250テラビット程度が容量の限界と考えられている。その問題を解決するために、コア(光の通り道)を増やしたマルチコアファイバや、マルチモード・マルチコアファイバの研究が進められてきた。
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図4 これまでNICTが伝送実験を実施した主な標準外径光ファイバとその実験結果
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図5 これまでNICTが標準外径光ファイバを用いて実証した伝送容量
モード分離処理
モードにより光信号の到着時間が異なるマルチモード伝送では、モード分離を行う際に、ほぼ必ずMIMO(Multi-input-multi-output)処理が必要となる。MIMOは、無線通信でマルチパス干渉を除去するために用いられる信号処理技術で、光通信においては、同一の光ファイバ内を伝搬する異なる光信号同士の干渉を除去するために使用される。各モードの伝搬速度差に応じてMIMO処理の負荷が高くなり、伝送距離が伸びるに従ってモード分離が困難になる。
光増幅方式
光ファイバは、同軸ケーブル等と比較して伝送損失が非常に小さいが、数10 kmを超える伝送では光信号が減衰していく。そのため、長距離伝送システムでは、光増幅器を用い伝送損失を補償する必要がある。光増幅方式は、希土類添加ファイバを使った増幅、ラマン増幅、半導体による光増幅がある。今回は、希土類添加ファイバを使った増幅とラマン増幅を使用した。
ラマン増幅
光ファイバの材料であるガラス素材における誘導ラマン散乱を利用した光信号増幅方式。希土類添加ファイバ光増幅器と同様に、大パワーの励起光の照射によって、より長波長の信号光の増幅現象が生じる。
256QAM
QAMとは、光の位相と振幅を併用し複数のビットを表現する方式(多値変調)の一種である。256QAMは1シンボルが取り得る位相空間上の点が256個で、1シンボルで8ビットの情報(28=256通り)が伝送でき、同じ時間でOOK(On-Off keying)の8倍の情報が伝送できる。