通信性能評価と可視化
1導入環境におけるシステムの通信性能指標を用い、搬送機器と既設のアクセスポイント間の電波到達距離と受信信号強度について、図1の計測システムで計測したデータを基に評価を行った。その結果、「通信性能指標」の受信信号強度を確認するために、走行中の各地点で最も受信信号強度が強く見えるアクセスポイントが明らかになった(図3参照)。これを見ると、必ずしも最寄りのアクセスポイントの受信信号強度が一番強くはないと分かる。また、単純に受信信号強度を比較して接続先のアクセスポイントを選択した場合、どの位置でどのアクセスポイントに接続されるかを事前に予測することは困難であり、その再現性が低い環境であることも判明した。この結果から、
(ア)走行中は遠くのアクセスポイントからの信号であっても瞬間的に強くなる場合があること
(イ)同じルート上であっても毎回同じアクセスポイントへ接続できるわけではないこと
が、無線通信品質の劣化原因であることが明確になった(情報収集)。
2通信遅延及び通信のパケットロス数について、今回のシステムに期待する指標として「通信遅延1秒以内」を設定し、評価を行った。その結果、瞬間的にパケットロス数が増加し、通信遅延が1秒を超えてしまうことが分かった。これは、無線が不安定になっても通信リンクを使い続けてしまうローミングの特性により、期待する要件が満たせてないことが原因であることも判明した。
上記1の、搬送機器から距離が遠いアクセスポイントで電波が瞬間的に強まる課題については、あらかじめ遠くのアクセスポイントを除外するように無線機に対しフィルタリング設定を行った(処理)。
同じく、上記2の、ローミングに係る課題については、電波の強弱で不安定となるリンクは早めに手放し、適応的にアクセスポイントを選択できるような安定化機能を有効化した(制御)。
まとめ
通信遅延が期待する指標内に収まるかどうかを確認するために、遅延やパケットロス数を評価した結果を図2に示す。左図は、搬送機器から遠いアクセスポイントの除外(処理)と電波が強まったり弱まったりする状況下で通信の自動切替え(制御)を実施する前の性能、右図は実施後の性能を表している。左図では遅延時間が1秒を超えているが、右図では、期待する通信遅延1秒以内の性能指標を満足していることが分かる。
このように、指標を用いた評価結果を基に無線機に対して「情報収集・処理・制御」を実施することにより、図2右のように評価環境において、パケットロス数や通信遅延の悪化がなくなり、無線システムが期待する性能を満たせることが分かった。