最初に、メッセージ伝送フォーマット(FIXフォーマット)を模擬したアプリケーションを使用しない状態で、暗号化なし(a系)を基準として、3種類の暗号方式(b,c,d系)とを比較したところ、ミリ秒(0.22ms)以下の範囲の遅延時間に収まり、要求事項の通信性能をネットワーク層以下で有していることを確認しました(表2)。
1低遅延通信検証(パフォーマンステスト)の結果から、量子暗号通信を適用しても基準となる暗号化なし(a系)の結果と比較して遜色のない通信速度が維持できることが確認できました。
表2から、1低遅延通信検証(パフォーマンステスト)において、3種類の暗号方式(b,c,d系)を用いた場合と、暗号なし(a系)の場合の遅延時間を比較した結果、いずれも1ms以下の遅延に収まり、暗号方式の違いを問わず、安定した応答時間でアプリケーションが稼働できていることを確認しました。
2大容量データ通信検証(ボリュームテスト)の結果から、大量の株式取引が発生した場合においても暗号鍵を枯渇させることなく高秘匿・高速暗号通信が実現できることが確認できました。
表2から、顧客による取引集中に合せて取引メッセージ件数が増加する場合において、暗号なし(a系)の場合でパフォーマンステストと比べ応答時間は増加しましたが、同様に暗号化した場合(b,c,d系)においても、暗号方式にかかわらず、同等程度の増加時間に収まり、それぞれに差異はみられませんでした。その上で、回線暗号装置(COMCIPHER-Q)による暗号方式(b系)の場合においては、応答時間が暗号化なし(a系)と比べても1ms以下の遅延で収まりました。
表2の測定結果については、今後のロングランテストやストレステストの測定時に再検証を行い、再現性や信頼性を高めていきます。特に、今回のボリュームテストの大容量時の注文殺到時間を増加させ、ストレステストと併せて応答時間、スループットに与える影響を検証していきます。
以上の検証データを基に、上記3つの暗号方式を組み合わせることによって、金融アプリケーションを高速暗号化できる条件を導出していきます。さらに次のステップとして、これらに、非常時対応に備えたメインシステム・バックアップシステム間の経路切り替えを可能とするルーティング機能を備えれば、冗長性が向上します。ルーティング機能については、次回以降の応用検証として並行して準備を進めています。