会長からのご挨拶(2025年1月1日)
会長からのご挨拶
本年も、よろしくお願い申し上げます。
昨年1月1日に発生した能登半島地震から1年が経過しました。被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。日弁連では、昨年1月の能登半島地震、9月に発生した能登豪雨災害で被災された皆さまの生活再建の実現に向けた支援活動を、今後も継続して実施していく所存です(アイコン会長談話)。
昨年の秋には、日弁連の四大シンポジウムと呼ばれるアイコン弁護士業務改革シンポジウム(仙台市)、アイコン人権擁護大会・シンポジウム(名古屋市)、アイコン国選弁護シンポジウム(金沢市)、アイコン司法シンポジウム(東京都)を開催しました。
弁護士だけでなく、多くの市民の方々にもご参加いただき、司法および弁護士を取り巻くさまざまな課題についての研究成果を発表し、議論を深めることができました。
人権擁護大会・シンポジウムでは、地球温暖化が要因の1つだと言われている豪雨災害などの気候危機を人権問題と捉え、脱炭素社会や再生可能エネルギーへの転換を検討する分科会を開催し、「人権保護として再生可能エネルギーを選択し、地球環境の保全と地域社会の持続的発展を目指す決議」を採択しました。太陽光発電等にも多くの課題がありますが、それでも再生可能エネルギーとしては有効なものであり、創意工夫をして利活用していかなければならないことが示されました。
司法シンポジウムは、法曹界を取り巻く課題を議論することが多く、市民の皆様にとっては身近でないテーマもあったかもしれませんが、今回は、法の支配を社会の隅々に行き渡らせるという目的を掲げた「司法制度改革」の20年を振り返りました。
司法制度改革によって弁護士数が増え、課題はまだあるものの、市民の皆さまにとって弁護士がより身近な存在となり、利用しやすくなったことは間違いないと思います。また、訴訟対応だけではなく、例えば、国際的な人権問題、SNS時代のプライバシー権や知る権利などのさまざまな分野における新たな課題に取り組んだり、企業や自治体などの組織内で活躍するなど、弁護士の活動領域は大幅かつ多種多様に拡大しています。
コロナ禍を経て、さらに急速に進む社会のデジタル化・IT化の中で、司法にも進歩が求められます。民事裁判のIT化では、すでにオンラインでの審理手続が行われ、民事裁判書類電子提出システム(mints(ミンツ))を利用した訴訟書類の提出が実施されています。2026年5月までに訴状等のオンラインでの提出が、弁護士に義務付けられることになります。
前述の司法シンポジウムでは、「AI時代の司法制度」をテーマにした分科会を行いました。将来、膨大なデータを読み込み一定の結論等を示すAIが、司法にも大きな影響を及ぼすと予想されています。しかし、日本では、知的財産等に関する分野への影響など、AIに関連する法規制は曖昧なまま推移しています。日弁連としても、司法とAIについて早急に調査・研究を進め、弁護士のみならず市民の皆さまにも広く情報を共有していかなければならないと考えています。
昨年に引き続き、日弁連は、さまざまな課題に取り組み、その活動に関する情報を、皆様へ積極的に発信して参ります。
本年が皆様にとって素晴らしい年となりますようお祈り申し上げます。
2025年(令和7年)1月1日
日本弁護士連合会会長
渕上 玲子会長のサイン