全国の弁護士会及び弁護士会連合会による総会決議等の採択を受けて、改めて選択的夫婦別姓制度の速やかな導入を求める会長声明
当連合会は、第75回定期総会において「誰もが改姓するかどうかを自ら決定して婚姻できるよう、選択的夫婦別姓制度の導入を求める決議」(2024年6月14日付け)を採択し、同制度実現のため精力的に活動してきた。そして、今般、全国52の弁護士会及び全国8の弁護士会連合会の全てにおいて、同制度の導入を求める総会決議、会長・理事長声明等が採択された。全国の全ての弁護士会及び弁護士会連合会が、婚姻に伴い改姓を強制する現行制度が「婚姻の自由」と「氏名の変更を強制されない自由」との間で二者択一の選択を迫る人権侵害であることを認識し、その是正に不可欠な制度として選択的夫婦別姓制度の導入を求める意思を明確にした。これは、全国の弁護士会及び弁護士会連合会がその必要性を共有し、国に対して一致して声を挙げたという点で、極めて重大な意味を持つ。
先の第217回通常国会では、28年ぶりに選択的夫婦別姓制度の導入に向けた法案が衆議院法務委員会で審議入りした。そのこと自体は、同制度の導入に向け一歩前進したものと評価できる。
しかしながら、1996年の法制審議会答申の内容を踏まえた2法案のほか、現行の夫婦同氏制を維持した上で改姓した者が婚姻前の氏(旧姓)を通称として使用できるようにする法案(旧姓通称使用の法制化案)が提出され、継続審議となった。
当連合会や全国の弁護士会及び弁護士会連合会が指摘してきたように、現行の夫婦同氏制(婚姻に伴う改姓の強制)は、憲法に違反する人権問題であり、旧姓の通称使用の法制化では決して解決し得ない問題である。通称はいかなる制度的工夫を施しても、正式な氏名に代わるものではなく、自己の氏名を正々堂々と名乗れない苦痛は解消できない。また、旧姓通称使用の法制化案は、民間事業者には努力義務が課されるに過ぎないこと、旅券やマネー・ローンダリング対策など日本以外の国が関わる場面で通称を通用させるためには国際民間航空機関(ICAO)や金融活動作業部会(FATF)の加盟国との合意を改訂する必要があることなど、看過し難い問題がある。
また、経済団体や労働団体、全国の多くの地方議会も、選択的夫婦別姓制度の導入を求めている。
国は、現行の夫婦同氏強制制が憲法に違反する人権問題であり、旧姓通称使用の拡大や法制化では決して解決できない問題であることを直視し、誰もが改姓するかどうかを自ら決定して婚姻できるよう、選択的夫婦別姓制度を導入すべきである。
当連合会は、引き続き、全国の弁護士会及び弁護士会連合会と手を携え、同制度の速やかな導入に向けて力を尽くす所存である。
2025年(令和7年)10月15日
日本弁護士連合会
会長 渕上 玲子