司法試験及び司法試験予備試験のデジタル化に関する会長談話


2024年6月21日付けで閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2024」及び「デジタル社会の実現に向けた重点計画」において、司法試験及び司法試験予備試験(以下「司法試験等」という。)のデジタル化に向けた取組等の推進が政府方針とされた。


これを受けて、法務省は令和8年からのCBT方式による司法試験等の実施に向けた準備を進め、同省ウェブサイトにおいて「司法試験等のCBT(Computer Based Testing)方式の導入に関するQ&A」(以下「Q&A」という。)及び司法試験等CBTシステムのアプリケーションの体験版(以下「体験版アプリケーション」という。)を公表している。


Q&Aは本年7月30日までに数回更新されており、現時点では、いわゆる「CBTテストセンター」を試験会場とすること、モニターの大型化、答案構成用紙の紙媒体配布等の改定がなされた。これらの改定は、法科大学院協会が実施したアンケート(本年5月16日公表)において、体験版アプリケーションを使用した法科大学院生等から、アプリケーションの操作性の改善や答案構成用紙等の紙媒体配布を求める意見等が寄せられたことを反映したものと推測される。


他方、前述のアンケートにおいて多くの要望が寄せられた司法試験用法文や問題文の紙媒体での配布がなされないこと等、いまだに検討課題が残されており、司法試験等の試験準備及び習熟期間確保等の面において受験予定者が不安定な状況に置かれている。


司法試験等は、裁判官・検察官・弁護士という法曹三者を選抜する国家試験であり、社会における法的需要に応え、司法基盤を支えるための有為な人材を確保することで、法の支配を実質的に担保する制度である。そのため、司法試験等のデジタル化は、受験者の法曹としての資質を適切にはかるという機能の維持を大前提とし、受験者がその実力をありのまま発揮できるよう制度設計されなければならないことは言うまでもない。


当連合会は、司法の一翼を担う弁護士の団体として、法務省に対し、これまでの改定にとどまることなく、アプリケーションの安定した機能提供を含む操作性改善や司法試験用法文等の紙媒体の配布等、受験予定者の声を尊重した制度設計を実現し、受験予定者が令和8年の司法試験等に向けて準備できる環境を早急に整えるよう、強く要請する。



2025年(令和7年)8月6日

日本弁護士連合会
会長 渕上 玲子

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