国連女性差別撤廃委員会への任意拠出金の使途除外措置等の撤回及び同委員会との建設的な対話の継続を求める会長談話


本年1月27日、外務省は国連人権高等弁務官事務所に対して、日本政府が用途を指定して毎年拠出している任意拠出金について、その使途から国連女性差別撤廃委員会(以下「委員会」という。)を除外すること、及び本年度中に予定されていた委員会委員の訪日プログラムを中止することを伝達した。


委員会は、1979年に国連総会で採択された「女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」(以下「条約」という。)の履行を確保するために設置された組織である。日本が1985年に条約を批准して以降、委員会は条約の実施状況に関する日本政府報告書に対する総括所見を発表しており、直近では2024年10月30日に第9回日本政府報告書に対する総括所見を発表したところである。そして、日本政府も、これまで委員会との建設的対話を継続してきた。建設的対話や総括所見は、自国政府のみでは気づきにくい人権問題を認識し、改善する契機となるものであり、基本的人権の保障を目指す国際協調主義(憲法第98条第2項)の重要な要素となっている。


日本は、これまで、婚内子と婚外子の相続における差別の解消、女性のみに対する再婚禁止期間の撤廃などを求める委員会の勧告に対し、時間を要したものの、結果的に勧告に沿う法改正を行ってきた。


しかし、このたびの外務省による任意拠出金の使途から委員会を除外する措置等は、委員会との信頼関係を損なうだけではなく、日本の条約批准から40年の節目を迎え、ますます女性差別撤廃に向けた取組の強化が求められる社会情勢に逆行するものであって、国際社会に対して、日本が女性差別の撤廃に消極的であるとの印象を与えかねないものであり、極めて不適切な対応であるといわざるを得ない。


当連合会は、条約及び委員会の目指す理念が全世界及び全市民に共通するものであることや日本国憲法が国際協調主義を定めていることを踏まえ、日本政府に対し、上記各措置を速やかに撤回し、委員会との建設的対話を継続することを求めるとともに、今後も引き続き、選択的夫婦別姓制度の実現をはじめとする、あらゆる女性差別や女性に対する不利益を撤廃し、平等な社会の実現に向けて活動していく所存である。



2025年(令和7年)3月3日

日本弁護士連合会
会長 渕上 玲子

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