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選択的夫婦別姓制度に関するQ&A

icon_pdf.gif選択的夫婦別姓制度に関するQ&A(PDFファイル;2.8MB)


Q1 現行制度で、一方が姓を変えないと結婚できないのはどうしてですか?選択的夫婦別姓制度にするとはどういうことですか?

Answer

民法750条が「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」と定めて夫婦同姓を義務付けているからです。


選択的夫婦別姓制度とは、結婚にあたり、それまでの姓をそのまま維持することも、配偶者の姓に改姓することも、いずれでも選択できるようにする制度です。


夫婦で同姓になることを希望する人、各自がそれまでの姓を維持することを希望する人のどちらの希望も尊重する制度なのです。


Q2 姓を変えずに結婚したいというのはワガママなのでしょうか?

Answer

いいえ、ワガママではありません。

結婚に伴い姓を変えるよう強制することの方が、憲法に反するものであり、人権問題であると言えます。


氏名は「人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴であつて、人格権の一内容を構成する」ものです(1988年2月16日最高裁判決)。

民法750条は、「個人の尊重」を定める憲法13条が保障する「氏名の変更を強制されない自由」を不当に制限するものです(憲法13条違反)。


また、民法750条によれば、夫婦別姓を希望する人は、婚姻をすることができません。婚姻の法的効果(例えば相続など)も享受できません。

このような差別的取扱いは合理的根拠に基づくものとは言えず、「法の下の平等」にも反しています(憲法14条違反)。


さらに、憲法24条1項は「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有する。」と定め、同条2項は「法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。」としています。

民法750条は、婚姻に「両性の合意」以外に、一方が改姓をしなければならないという要件を不当に加重し、当事者の自律的な意思決定に不合理な制約を課すものです。

新たに婚姻する夫婦のうち約95%で女性が姓を変えており、事実上、多くの女性が結婚に伴い改姓を強いられています(憲法24条違反)。


Q3 選択的夫婦別姓を導入すると、どのようなメリットがありますか?

Answer

婚姻前から築いてきた仕事上の実績や評価を維持しやすくなり、キャリアの断絶を防ぐことができ、ビジネスや研究など様々な分野での女性活躍に資することになります。


多様性の尊重は、有為な人材の確保にもつながります。

姓の変更に伴う、様々な届出、変更手続などの負担が軽減されます。

通称使用の弊害が取り除かれ、国際的な活躍も後押しできます。


婚姻にあたっての選択肢を増やすことは、誰もが生きやすい、活力ある社会の実現にもつながるものです。


Q4 国際的には、夫婦同姓がスタンダードなのですか?

Answer

いいえ、国際的にも、夫婦同姓を法律で強制している国は日本だけです。


以前は日本以外にも夫婦同姓を強制する国がありましたが、国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)による勧告の影響などもあって、諸外国では20世紀中に法改正が進みました。


日本もCEDAWから2003年以降2024年までに4度にわたり、結婚に際し旧姓を維持することを選択できるようにする法改正についての勧告を受けています。


Q5 最高裁も、夫婦同姓を義務付ける現行法を合憲と言っているのではありませんか?

Answer

最高裁は、2015年12月16日判決や2021年6月23日決定で民法750条を合憲としましたが、これらは選択的夫婦別姓制度を否定したものではありません


補足意見に「国会において、この問題をめぐる国民の様々な意見や社会の状況の変化等を十分に踏まえた真摯な議論がされることを期待する」とあるように、「夫婦の氏についてどのような制度を採るのが立法政策として相当かという問題」について、国会での議論を促したものです。


なお、

「夫婦別氏の選択肢を設けていないのは憲法24条に反する」

「かかる措置(法改正)をとるために必要と考えられる社会通念上相当な期間が経過した」

「もはや国会の立法裁量の範囲を超えるほどに合理性を欠いている」

などの反対意見も述べられています。


Q6 世論はどうなっていますか?

Answer

官民の各種世論調査においても、選択的夫婦別姓制度の導入に賛同する意見が高い割合を占め、反対の意見の割合を上回っています


例えば、2023年の国立社会保障・人口問題研究所「社会保障・人口問題基本調査第7回全国家庭動向調査」では、60歳未満の回答者における「夫、妻とも同姓である必要はなく、別姓であってもよい」への賛成割合が、単身女性(未婚)で85.3%、離別女性で78.5%、有配偶女性で71.4%、単身男性(未婚)でも61.0%となっています。


また、日本労働組合総連合会(連合)が2022年7月に実施した「夫婦別姓と職場の制度に関する調査2022」では64%が同制度を容認すると回答し、日本経済新聞社が2024年7月に実施した世論調査では69%が同制度に賛成すると回答しています。


Q7 通称使用できる場面が広がれば、別姓を認める必要はないのではありませんか?

Answer

いいえ。「通称」は戸籍制度に基づく法律上の氏名とは異なります。

通称使用には限界があり、通称使用できる場面を広げても問題は解決しません


「通称」での金融機関との取引や携帯電話の契約、国際航空券の購入、出入国などは厳しく制限されています。マイナンバーカード、運転免許証、住民票、パスポートなどでは旧姓の併記が実現していますが、パスポートのICチップには、旧姓は記録されません。国際的にはマネー・ローンダリング、テロ資金供与等の対策の観点から厳格な本人確認が求められています。


納税や登記(会社設立・役員就任、不動産取引)などでも、旧姓の併記が認められましたが、どちらが本名か分かりにくく混乱が生じています。

また、婚姻・離婚・再婚といった私的な情報が公開されてしまい、新たな苦痛を生じさせています。


通称の公証化により問題を解決すべきとの意見もありますが、通称はどのようにしても通称に過ぎず、生来の氏名を正式名称として正々堂々と名乗れないという苦痛が続くことを解決できません


Q8 夫婦・親子の姓が異なると、家族の絆が薄れるのではありませんか?

Answer

夫婦・親子の姓の異同と家族の絆との関係については、個人によって様々な考え方があります。

姓を同じくすることで絆を感じる人もいますし、姓が異なっても絆を感じる人もいます。

それぞれの意見や価値観に従って同姓・別姓を選択できるとするのが選択的夫婦別姓制度の考え方です。

姓を同じくすることで家族の絆が保たれると考える夫婦は同姓を選択できるのです。


また、現行制度の下でも、一方の親が外国籍の子ども、事実婚の両親の子どもなどは、夫婦・親子の姓が異なります。

しかし、夫婦・親子が別姓であるが故に、これらの家庭の絆が薄くなっているとは言えないのではないでしょうか。

Q9 両親・親子の姓が異なると、子どもが混乱するのではありませんか?

Answer

両親・親子の姓が異なる家庭の子どもから「いじめられた経験もありません」「家族の一体感もあって幸せです」「『かわいそう』という意見は的外れです」などの声が上がっています(2020年6月「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」による座談会より)。


また、選択的夫婦別姓制度が導入されれば、両親・親子は同じ姓が当たり前という意識も変わっていくでしょう。

Q10 選択的夫婦別姓制度を導入すると、戸籍制度はなくなるのですか?戸籍はどうなるのですか?

Answer

選択的夫婦別姓制度を導入しても戸籍制度はなくなりません


1996年の民事行政審議会の答申でも、戸籍制度はこれまでと同様とされ、別姓夫婦とその子どもについても一つの戸籍に在籍することが前提とされています。

これによれば、戸籍簿の「戸籍に記載されている者」欄の【名】を【氏名】に改め、戸籍内の各人について氏名を記載すれば足りることになります。


Q11 選択的夫婦別姓制度を導入すると、子どもの姓はどのようになりますか?

Answer

1996年に法制審議会が答申した民法改正要綱案は、夫婦別姓となる「夫婦は、婚姻の際に、夫又は妻の氏を子が称する氏として定めなければならない」とし、子の姓を統一することとしています。

他方で、別姓夫婦の子の姓は、子の出生の時点における状況などを考慮して、夫婦の協議によって父又は母の姓を子の出生の都度選択すればよいとする意見もあります

この点は、様々な事情を検討して議論を深めていく必要があるでしょう。


Q12 子どもは、自分の意思で姓を変更することはできますか?

Answer

はい。現行法でも、離婚などで子が父又は母と姓を異にする場合には、家庭裁判所の許可を得て姓を変更することが可能とされています。

1996年に法制審議会が答申した民法改正要綱案では、別姓夫婦の未成年の子どもが両親の婚姻中に自分の姓を両親のいずれか一方の姓に変更するためには、特別の事情と家庭裁判所の許可が必要とされています。

また、子どもが成年になった後は、特別の事情がなくても、家庭裁判所の許可を得れば姓を変更することができるとされています。

このような法改正がされれば、選択的夫婦別姓制度が導入された場合でも、子が姓を変更することは可能です

Q13 選択的夫婦別姓制度を導入する場合、既に結婚している夫婦が別姓となるには、いったん離婚しなければなりませんか?

Answer

1996年に法制審議会が答申した民法改正要綱案は、経過措置を設けるとしています。

この経過措置では、婚姻前の氏に戻そうとする者は、改正法の施行日から1年以内に、その配偶者と共に届け出るものとされています。

このような経過措置を設ければ、既に結婚している夫婦が別姓となるために離婚する必要はありません

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