難民等と認定した事例等について
1 「難民」の定義
出入国管理及び難民認定法では、
「難民」の定義について、
「難民の地位に関す
る条約(以下「難民条約」という。
)第1条の規定又は難民の地位に関する議定書
(以下「議定書」という。
)第1条の規定により難民条約の適用を受ける難民をい
う。
」と規定しています(入管法第2条第3号)。これら難民条約及び議定書上の難民(以下「条約難民」という。
)の定義は、
「人
種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理
由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍
国の外にいる者であって、国籍国の保護を受けることができないもの又はそのよう
な恐怖を有するために国籍国の保護を受けることを望まないもの、及び、常居所を
有していた国の外にいる無国籍者であって、当該常居所を有していた国に帰ること
ができないもの又はそのような恐怖を有するために当該常居所を有していた国に帰
ることを望まないもの」となっています((注記))。2 「補完的保護対象者」の定義
出入国管理及び難民認定法では、
「補完的保護対象者」の定義について、
「難民
以外の者であって、難民条約の適用を受ける難民の要件のうち迫害を受けるおそれ
がある理由が難民条約第1条A(2)に規定する理由であること以外の要件を満た
すものをいう。
」と規定しています(入管法第2条第3号の2)。3 難民該当性又は補完的保護対象者該当性の判断
入管法第61条の2第1項に規定する難民の認定又は同条第2項に規定する補完
的保護対象者の認定を申請した申請者が申し立てる「迫害を受けるおそれがあると
いう十分に理由のある恐怖」に係る本人の供述や提出資料等について、合理性はあ
るか、不自然さはないか、出身国に係る諸情報と整合するか否か等の観点から、申
請者の申立ての信ぴょう性を判断した上で、その内容が条約難民の定義に該当する
か否かの難民該当性又は補完的保護対象者の定義に該当するか否かの補完的保護対
象者該当性を評価しています。なお、入管法第61条の2第1項に規定する難民の
認定を申請した場合には、補完的保護対象者の該当性についても判断しています。
4 人道配慮による在留許可
条約難民又は補完的保護対象者に該当するとは認められないものの、人道上の観
点から我が国での在留を配慮する必要がある者については、個々の事案ごとに諸般
の事情を勘案した上で、在留特別許可や在留資格変更許可を行うなどの法制度の運
用を行っています。
我が国では、
「条約難民としての認定」、「補完的保護対象者としての認定」のほ
か、こうした「人道配慮による在留許可」により、保護を行っているところです。
(注記) 閣議了解等に基づいて受け入れている「定住難民」
(昭和53年から平成17
年まではインドシナ難民、平成22年以降は第三国定住難民)は、
「条約難民」
とは異なります。
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1難民と認定した事例及びその判断のポイント
1 「人種」及び「政治的意見」を理由として難民と認定された事例
【事例1】
(概要)
申請者は、A族であること、地元であるB市の警察署に1週間勾留され、
宗教に関する経歴について取調べを受けたこと、C国へ留学するため、本国
を出国して1週間後から父親と連絡が取れなくなり、その後も複数回両親と
連絡が取れなくなった期間があること、その後、D国にて本国政府関係者か
ら事情聴取され、現在もなお、本国の両親と連絡をするときには同人の同席
が必要であることなどを申し立て、帰国した場合、本国政府に逮捕され命を
落とすおそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、本国政府はA族に対する抑圧を強化し
ており、また、本国政府から、過激主義の影響を受けているなど反政府的な
思想を有しているとみなされた場合には、本国政府から迫害を受ける蓋然性
が高いと考えられる。
申請者はC国や本邦での留学経験があること、D国在留時に本国政府関係
者から接触を受けC国での留学歴を含め、隠すことなく答えたこと、現在も
なお、本国の両親と連絡を取る際には、同本国政府関係者の同席が必要であ
り、両親と申請者とのやりとりは本国政府の監視下にあること、複数回両親
と連絡が取れなくなった期間があり、両親が収容施設に収容されていた可能
性も否定できないことからすれば、申請者が本国政府から過激主義の影響を
受けたA族とみなされ、収容施設に収容される可能性は否定できず、申請者
が帰国した場合、迫害を受けるおそれがあると認められる。
したがって、申請者は、
「人種」及び「政治的意見」を理由に迫害を受け
るおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民
に該当する。
2 「宗教」及び「政治的意見」を理由として難民と認定された事例
【事例2】
(概要)
申請者は、本国において、政治宗教団体Aのメンバーとして活動していた
こと、両親や妻子が行方不明になったこと、逮捕されて刑務所に3か月間拘
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束され、拷問等を受けたことなどを申し立て、帰国した場合、再び身柄の拘
束を受けるおそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
政治宗教団体AはB国政府と対立し、その抗争により多くの死者が発生し
てきたところ、申請者は、政治宗教団体Aの宗教面の指導者であって、政治
宗教団体Aに属していることのみを理由に、C州集会において局部を薄く切
られるなどの暴行を受け、刑務所においては、鞭でたたかれるなどの拷問を
受けた体験を有するものと認められる。
したがって、申請者は、
「宗教」及び「政治的意見」を理由に迫害を受け
るおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民
に該当する。
3 「特定の社会的集団の構成員であること」を理由として難民と認定された
事例
【事例3】
(概要)
申請者は、同性愛者であること、本国において、同性愛は違法とされてい
るため、
警察に3か月拘束され暴行を受けたこと、
警察署に指名手配ポスター
が掲示されていることなどを申し立て、帰国した場合、逮捕され30年の懲
役刑に処されるおそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
本国では、同性愛者に対する差別意識が強く、これが本国の警察組織など
の国家機関の内部にも残存しており、本国刑法A条を適用して逮捕する場合
があるほか、他の法令を適用して恣意的な身柄拘束をする可能性があったと
いえる。
そして、申請者が本国で指名手配されているという事実を認めることがで
きないとしても、申請者が同性愛者であることを理由に、警察署の警察官ら
に逮捕・勾留され、棒で殴られるなどの暴行を受け、相当な傷害を負ったに
もかかわらず、敗血症に至るなど重症化するまで、相当長期間にわたって、
適切な治療を受けられないまま、身柄を拘束されていたことが認められるこ
とからすると、申請者が本国に帰国すれば、同様に、申請者が同性愛者であ
ることを理由に警察官らに逮捕・勾留され、暴行を受けるおそれがあるとい
える。
したがって、申請者は、
「特定の社会的集団の構成員であること」を理由
に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するものであ
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り、条約難民に該当する。
【事例4】
(概要)
申請者は、A教徒であり、同性愛者であること、本国において、同性愛者
が集まるナイトクラブにいたところ、警察に逮捕されたこと、同性愛者であ
ることを理由に、
地域住民のA教徒から脅迫や暴行を受けたこと、
同性のパー
トナーが正体不明の者から毒殺されたことなどを申し立て、帰国した場合、
地域住民のA教徒から殺害されるおそれがあるとして難民認定申請を行った
ものである。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、本国においては同性間の性行為が違法
であり、最大14年の懲役刑が科されるものの、現政権下になってからは同
法の適用事例が多いとは言えない。しかしながら、同性間の性行為を犯罪と
する刑法は現在も有効であり、今後も現政府は同性愛に関する法律を非犯罪
化したり、見直したりする計画はないことを表明していること、いまだにB
政権の流れをくむ治安部隊及び準軍事組織からの同性愛者に対する恐喝や虐
待が続いていること、地域社会においても同性愛者に対する深刻な社会的差
別が存在していること、同性愛者が政府当局に保護を求めることは困難であ
ることが認められる。
この点、
申請者は、
同性のパートナーが正体不明の者から毒殺されたこと、
申請者が同性愛者であることを理由に地域社会の若者からたびたび脅迫され
暴行されたことを鑑みれば、申請者が帰国した場合、同性愛者であることを
理由に、A教徒が多数を占める地域住民から危害を加えられる可能性は十分
に考えられる。また、申請者が、警察に被害相談に行ったにもかかわらず、
警察が合理的な理由なく捜査を開始しなかったことも上記出身国情報と一致
しており、同性愛者に対する地域住民からの危害について本国政府による効
果的な保護を期待することは困難である。
さらに、同性愛者は本国全土で深刻な社会的差別に直面しているとの出身
国に係る諸情報を踏まえると、申請者にとって、国内避難が有効なものとい
うことはできない。
したがって、申請者は、
「特定の社会的集団の構成員であること」を理由
に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するものであ
り、条約難民に該当する。
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【事例5】
(概要)
申請者は、本国において、両親の死後、父の弟である叔父から高齢の呪術
医との結婚を強要され、これを断ったところ、食事も水も与えられない状態
で2週間監禁されたことを申し立て、帰国した場合、叔父に呪術医と結婚さ
せられ、殺害されるおそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、本国においては、A地域を中心に強制
結婚が行われており、結婚を拒否した女性が、レイプを含む精神的・身体的
暴力の被害を受けていることが認められる。他方、本国B地域においては、
強制結婚は一般的ではないものの、
本国における強制結婚の主要な原因には、
文化、宗教、出身地域、民族グループへの帰属等が挙げられる。また、本国
B地域では、過半数に近い女性が15歳以上になってから身体的暴力を経験
しており、女性に対する暴力は、主にB地域に居住するC教徒の間の方が、
A地域に多いD教徒の間よりも一般的であるとの報告も認められる。
申請者は、本国B地域を本拠とするC教徒であり、女性は遺産を相続する
ことができないとするなど女性に対する差別が存在するE族の文化圏の出身
者であるところ、父及び母の死後、父の弟である叔父に、家や父の財産を全
て奪われた上、高齢の呪術医との結婚を強要され、2週間にわたり監禁され
たことからすれば、申請者が帰国した場合、再び叔父から結婚を強要された
り、これを拒めば、暴力を受ける蓋然性は高い。
また、出身国に係る諸情報を踏まえると、本国においては、家を離れた独
身女性については、汚名やトラウマ、経済的な理由等により他所への定住が
困難であり、家族や友人に頼らざるを得ない状況にあることが認められる。
この点、申請者は未婚の女性であり、叔父以外に頼るべき親族がいないこと
を踏まえると、申請者に対し、本国での国内避難を求めるのは合理的ではな
い。
さらに、本国においては、強制結婚が文化的・宗教的慣習としていまだ存
在している上、結婚を断ったことによる暴力の被害者が警察から非難や軽蔑
的な扱いを受けたりしているとの報告もあることからすれば、申請者に対す
る本国政府による効果的な保護を期待することもできない。
したがって、申請者は、
「特定の社会的集団の構成員であること」を理由
に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するものであ
り、条約難民に該当する。
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【事例6】
(概要)
申請者は、本国の学校において、分離主義者のメンバーと政府軍の銃撃戦
が発生した際、政府軍の軍人から拘束されレイプされたこと、軍人による拘
束から逃走したところ、分離主義者のメンバーから隠れ家などの情報を政府
軍に漏らしていないか疑われ、監視されたり嫌がらせをされたりしたこと、
その後、当時所持していた携帯電話に何者かから電話があり、申請者と家族
を殺すと脅迫され、その数日後、軍服を着て目出し帽を被った男性3人に父
親が誘拐されたこと、身代金を支払いに行った際、隠れ家でレイプされ、父
親も殴られたことを申し立て、帰国した場合、本国政府及び分離主義者から
狙われ、殺害されるおそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、申請者の出身地であるA州を含む地域
においては、分離主義者と治安部隊の間で武力衝突が継続しており、同地域
の女性が治安部隊や分離主義者による強姦被害に遭っていること、同地域に
居住する女性は、分離主義者に協力したり、分離主義者を匿うなどの支援を
行っていなかったとしても、そのような支援を行ったと政府軍にみなされた
場合、政府軍から制裁として強姦など性的暴力の対象となる可能性があるこ
とや、逆に、分離主義者についても、政府を支援したとみなされた者に対し
ては、分離主義者から深刻な人権侵害が行われていることが認められる。
この点、申請者は、本国において、政府軍の軍人及び軍服を着て目出し帽
を被った男性集団から強姦されているところ、同男性集団の正体は明らかで
はないものの、上記情報及び申請者の申立てを併せ鑑みると、分離主義者か
ら政府軍とつながりのある者として把握され、ジェンダーに基づく暴力の対
象とされたことも十分に考えられる。
また、申請者は三度にわたり、政府軍及び分離主義者から強姦被害を受け
ているところ、出身国に係る諸情報によれば、申請者の出身地であるA州や
居住歴のあるB州において、治安部隊や分離主義者による民間人に対する性
暴力等に係る報告が頻繁になされていることなどからすれば、申請者が帰国
し、A州又はB州で生活した場合、軍人を含む本国政府関係者や分離主義者
からの更なるジェンダーに基づく暴力等の対象となるおそれは十分に考えら
れる。
加えて、本国においては、強姦を含む女性に対する暴力が広くまん延して
おり、治安部隊や分離主義者による強姦事件も多数報告されていること、本
国政府は、女性に対する暴力に対処するための取組を行っているものの、加
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害者が処罰を受けない場合も多いことからすれば、かかる状況下で、政府軍
や分離主義者から強姦された女性について、本国政府による効果的な保護が
期待できる状況にあるとは認められない。
出身国に係る諸情報によれば、本国において同伴者のいない女性は国内を
移動する際、検問所で頻繁に嫌がらせを受けているとの報告が認められるこ
とからすれば、女性の立場が低く、女性に対する暴力がまん延している本国
において、本国に頼ることのできる家族や配偶者のいない申請者に対し、本
国のA州及びB州以外の地域に避難を求めるのは合理的ではない。
したがって、申請者は、
「特定の社会的集団の構成員であること」を理由
に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するものであ
り、条約難民に該当する。
4 「政治的意見」を理由として難民と認定された事例
【事例7】
(概要)
申請者は、
本国所在のA国政府関係機関の職員であること、
本国において、
2021年12月ないし2022年1月にかけて、当局関係者に拘束され、
拷問を受けたことなどを申し立て、帰国した場合、外国政府関係機関で勤務
していた者として、B教過激派組織Cから迫害を受けるおそれがあるとして
難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
出身国情報に係る諸情報を踏まえると、B教過激派組織Cは、外国政府関
係機関にかつて雇用されていた者について、その地位や役割にかかわらず、
反B教過激派組織Cの思想を有するものとして標的にしていることが認めら
れるところ、
A国政府関係機関の職員である申請者について、
本国において、
当局関係者から、拘束され、拷問を受けたという事情に鑑みても、A国政府
関係機関の職員としてB教過激派組織Cから標的とされている可能性は否定
できず、かかる申請者が帰国した場合、B教過激派組織Cから、条約難民の
要件である迫害を受けるおそれがあると認められる。
したがって、申請者は、
「政治的意見」を理由にB教過激派組織Cから迫
害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するものであり、
条約難民に該当する。
【事例8】
(概要)
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申請者は、本国において、官公庁の幹部職員、A国のNGOの職員及び医
師として働いていたこと、SNSでB教過激派組織Cを批判する投稿をする
など反B教過激派組織Cの意見を公にしていることなどを申し立て、帰国し
た場合、B教過激派組織Cから危害を加えられるおそれがあるとして難民認
定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、B教過激派組織Cは、前政権のために
働いていた者や国際組織と関係があった者、B教過激派組織Cに抵抗や反対
をしたとみなした者等を標的にしてきたことなどが認められることからすれ
ば、申請者は自身の経歴を理由に、B教過激派組織Cの標的とされる可能性
は否定できず、かかる申請者が帰国した場合、B教過激派組織Cから、条約
難民の要件である迫害を受けるおそれがあると認められる。
したがって、申請者は、
「政治的意見」を理由にB教過激派組織Cから迫
害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するものであり、
条約難民に該当する。
【事例9】
(概要)
申請者は、本国において、反政府活動を行ったこと、反政府活動を行う組
織や人物に協力したこと、A教に改宗していると疑われていること、本国政
府からスパイであると疑われていること、15年の禁錮刑の判決を受けたこ
と、本邦において、在日B国政府関係機関の職員と面会し情報を提供したこ
と、SNSで本国政府を批判したことなどを申し立て、帰国した場合、本国
政府から迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申請を行ったものであ
る。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、本国においては、亡命した本国人に対
する対応として行われた殺人、殺人未遂及び誘拐の被害者は、主要な反対派
組織又は分離主義組織のリーダーであることを示している旨の報告が認めら
れるところ、
国境の外で殺人や殺人未遂の被害者となった本国人については、
本国政府との密接な関係の継続を終わらせたり拒否したりした、本国政府と
近い結びつきのある政府職員や個人等が挙げられる旨の報告も認められる。
また、本国政府は活動を把握するために政治的反対勢力を国外で監視してい
る旨の報告も認められ、さらに、B国、C国又はその他の国々とのつながり
を疑われる個人又は集団は、本国政府当局から批判的に注視される危険性が
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相対的に高くなる旨の報告も認められる。
この点、申請者の本国及び本邦における活動状況等を踏まえれば、申請者
について、本国政府から本国政府との密接な関係の継続を終わらせたり拒否
したりした、本国政府と近い結びつきのある個人としてみなされている可能
性やB国、C国又はその他の国々とのつながりを疑われる個人としてみなさ
れている可能性も否定できず、
かかる申請者が帰国した場合、
本国政府から、
条約難民の要件である迫害を受けるおそれがあると認められる。
したがって、申請者は、
「政治的意見」を理由に本国政府から迫害を受け
るおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民
に該当する。
【事例10】
(概要)
申請者は、A族であること、本邦において、デモなどに参加したこと、少
数民族組織Bで広報担当、書記長及び事務局長を務めたこと、本邦の少数民
族組織Cで副会長を務めたこと、組織Dの駐日事務所Eのアドバイザーを務
めていることを申し立て、帰国した場合、軍から迫害を受けるおそれがある
として難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、本国においては、各地で活発化した抗
議デモの参加者に対する軍・警察等の発砲によって一般市民の死傷者が生じ
るなど、本国情勢は引き続き不透明な状況にあることが認められる。また、
軍はクーデターを非難する政党Fの議員らが組織した組織G及び組織Gが創
設した組織Dをテロ組織に指定し、その関係者に対して反逆罪を適用して逮
捕状を発付するなど、組織G及び組織Dに対して特に強硬に対応しているこ
とが認められる。
この点、申請者は、本邦において、事務所Eのアドバイザーを務め、同組
織の駐日代表と民族や政治に関して緊密に取り組んでいること、本邦の公人
や事務所Eの代表などが参加する会議に申請者も参加しており、その会議の
様子がメディアでも取り上げられていることからすれば、申請者が組織Dの
関係者であり軍に敵対心を持つ者として認知されている可能性が十分に認め
られ、クーデター以降の軍と組織Dとの間の極度の緊張関係からすると、申
請者が帰国した場合、軍に反抗する組織である組織Dの関係者で軍に敵対心
を有しているものとして、軍から迫害を受けるおそれがあると認められる。
したがって、申請者は、
「政治的意見」を理由に軍から迫害を受けるおそ
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れがあるという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民に該当
する。
【事例11】
(概要)
申請者は、本国所在のA国国際協力組織の職員であることを申し立て、帰
国した場合、外国政府関係機関で勤務していた者であるとしてB教過激派組
織Cから迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申請を行ったものであ
る。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、B教過激派組織Cは、外国政府関係機
関にかつて雇用されていた者について、その地位や役割にかかわらず、反B
教過激派組織Cの思想を有するものとして標的にしていることが認められる
ところ、A国国際協力組織の職員である申請者についても、外国政府関係機
関職員としてB教過激派組織Cから標的とされる可能性は否定できず、かか
る申請者が帰国した場合、B教過激派組織Cから迫害を受けるおそれがある
と認められる。
したがって、申請者は、
「政治的意見」を理由にB教過激派組織Cから迫
害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するものであり、
条約難民に該当する。
【事例12】
(概要)
申請者は、本国において、A国を拠点とするメディアに所属し、ジャーナ
リストとして活動していたこと、官公庁の職員として勤務していたことなど
を申し立て、帰国した場合、B教過激派組織Cから迫害を受けるおそれがあ
るとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、B教過激派組織Cは、前政権のために
働いていた者や国際組織と関係があった者、B教過激派組織Cに批判的なジ
ャーナリスト、B教過激派組織Cに抵抗や反対したとみなした者等を標的に
してきたことなどが認められることからすれば、申請者についても、申請者
の経歴等を理由にB教過激派組織Cから標的とされる可能性は否定できず、
かかる申請者が帰国した場合、B教過激派組織Cから迫害を受けるおそれが
あると認められる。
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したがって、申請者は、
「政治的意見」を理由にB教過激派組織Cから迫
害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するものであり、
条約難民に該当する。
【事例13】
(概要)
申請者は、本国において、政権与党であるA党の党員であるところ、A党
のメンバーに拉致され、スパイ活動や殺人行為を行うように言われたが、こ
れを断ったため、暴行を受けたことを申し立て、帰国した場合、A党のメン
バーから危害を加えられるおそれがあるとして難民認定申請を行ったもので
ある。
(判断のポイント)
申請者は、本国の政権与党であるA党の党員として区議会議員選挙に立候
補したものの落選し、その後、約6年間政治活動を行っていなかったにもか
かわらず、A党のメンバーからスパイ活動や殺人を行うよう指示を受けてい
ることから、A党から党員として認識されているものと認められるところ、
申請者は、当該指示について、自宅を来訪したA党のメンバーから暴行を受
けたため、一度は指示に従う旨承諾したものの、その後、自宅から逃亡し、
結果的に指示に従わなかったことからすれば、
かかる申請者が帰国した場合、
A党のメンバーから指示に従わなかったことに対する報復の対象とされる可
能性や、再度、同様の指示に従うように強要される可能性は高いと考えられ
る。
出身国に係る諸情報を踏まえると、本国政権与党であるA党と治安当局は
関係性が深く、治安当局が、野党党員やその支持者、政府に批判的な者を恣
意的に拘禁し、暴行を加え、殺害していることが認められるところ、A党と
の関係において、治安当局が治安維持機関として有効に機能していないこと
からすれば、仮に申請者が帰国し、A党メンバーから危害を受けた場合、本
国政府からの効果的な保護が受けられるとは認められない。
したがって、申請者は、
「政治的意見」を理由にA党から迫害を受けるお
それがあるという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民に該
当する。
【事例14】
(概要)
申請者は、A州で生まれ育ったB族であること、本国のC商工会議所のセ
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ミナーにおいて、政府批判をしたこと、本邦の外務省前で行われたデモにお
いて、政府を批判するスピーチをしたこと、SNS上に政府を批判する記事
を投稿したこと、自らが執筆した100ページ以上の政府批判に関する原稿
をSNS上に公表していること、分離主義組織Dを支援し、分離主義組織D
にアドバイスをしていること、兄が分離主義組織Dに所属していること、父
が分離主義組織E又は分離主義組織Eの関係者であると疑われたことを申し
立て、帰国した場合、本国政府から迫害を受けるおそれがあるとして難民認
定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、A州では、1970年代からB族の自
治権獲得等を目指した運動が活発化し、分離主義組織Eは政府に対する武力
闘争を継続してきたことからテロ組織に指定されていたところ、2018年
には政府が同指定を解除し、分離主義組織Eとの和平合意に署名するなどの
動きが見受けられたものの、現在も、同地域では、分離主義組織Eから分裂
した分離主義組織Dと政府との間の武力衝突が続いていること、分離主義組
織Dのメンバーや支持者とされる人々が拷問を受けたり、その家族について
も当局の標的となっていること、また、本国では、2016年から断続的に
非常事態宣言が発令されるなど国内情勢は非常に不安定な状態にある上、政
治的自由が制限され、公然と政府に反対した者はその政治的見解を理由に嫌
がらせを受けたり、逮捕・拘留される可能性が高いことが認められることか
らすれば、申請者の本国及び本邦における活動を理由に、本国政府から反政
府的な人物とみなされている可能性は否定できず、かかる申請者が帰国した
場合、本国政府から迫害を受けるおそれがあると認められる。
したがって、申請者は、
「政治的意見」を理由に本国政府から迫害を受け
るおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民
に該当する。
【事例15】
(概要)
申請者は、本国において、A社の隠れ記者として取材及び執筆活動を行っ
たこと、軍評議会の行為をありのまま記事にして発信したことを申し立て、
帰国した場合、軍から迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申請を行っ
たものである。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、本国では、表現の自由が厳しく制限さ
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れており、軍がジャーナリストを標的に、あらゆる法律を利用してジャーナ
リストを追跡、探知し、嫌がらせや逮捕、殺害を行っていること、ジャーナ
リストの収監者数や、48時間以上拘束されたジャーナリストの増加率、ジ
ャーナリストに言い渡された懲役刑の総数が世界最大規模となっていること
が認められる。
申請者は、本国において、報道免許を剝奪されたA社で隠れ記者として取
材を行ったり、軍政権を批判する記事を書いたりしており、現在も本邦にお
いて取材や記事の執筆を継続して行っていることからすれば、申請者が記者
であることや申請者の行った本国及び本邦における活動が本国官憲に把握さ
れ、
申請者が軍に反抗的な人物であるとみなされている可能性は否定できず、
かかる申請者が帰国した場合、軍を含む官憲から迫害を受けるおそれがある
と認められる。
したがって、申請者は、
「政治的意見」を理由に軍から迫害を受けるおそ
れがあるという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民に該当
する。
【事例16】
(概要)
申請者は、本国において、公立中学校の教師としての仕事をボイコットし
て政治活動に参加し、軍のクーデターに反対するデモに参加したこと、同デ
モに参加した際、警察署へ連行されたことがあること、反政府武装勢力Aや
本国の戦災避難民を支援するために寄附を行ったこと、申請者の父が警察署
に連行され、死亡したこと、本邦において、軍の行為に反対するデモに参加
したことを申し立て、帰国した場合、軍から迫害を受けるおそれがあるとし
て難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、本国において、軍・警察の発砲等によ
る一般市民の死亡・負傷事案が発生し、また、軍が政治活動参加者を拘束、
殺害している状況が認められる。
申請者は、教師としての仕事をボイコットして政治活動に参加した者であ
り、申請者の父は警察署に連行され、勾留中に申請者の所在を尋問され暴行
を受けて死亡していることから、申請者の父が警察に連行された背景には、
申請者の本国における政治活動に関連する事情があることがうかがわれる。
また、申請者が居住していた寮に、申請者に対する逮捕状が出されている旨
伝えに来た警察官が来訪した時期と申請者の父が連行された時期が同時期で
- 13 -
あることからすれば、申請者の行った政治活動を理由として、申請者が軍に
敵対心を有しているとみなされている可能性は否定できず、かかる申請者が
帰国した場合、軍を含む官憲から条約難民の要件である迫害を受けるおそれ
があると認められる。
したがって、申請者は、
「政治的意見」を理由に軍を含む官憲から迫害を
受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約
難民に該当する。
【事例17】
(概要)
申請者は、本国において、A教過激派組織Bのメンバーらから、A教過激
派組織Bにお金を払うか一緒に働くかどちらか選べと言われ、多額のお金を
払わされたり、お金を払わないとA教過激派組織Bに拘束され、暴行を受け
たことを申し立て、帰国した場合、A教過激派組織Bから危害を加えられる
おそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、A教過激派組織Bは本国の国家機関内
で雇用されている者を含む情報提供者のネットワークを利用して、
本国全土、
特にA教過激派組織Bが支配する地域において、反A教過激派組織Bと思わ
れる人物の情報を監視、収集し、A教過激派組織Bを批判、反対する者に対
して嫌がらせ、
脅迫、
暴行を行っていることが認められるところ、
申請者は、
A教過激派組織Bから金銭を払うか、テロ行為をするためA教過激派組織B
とともに働くかの選択を迫られ、数次にわたり多額の金銭を払ったこと、金
銭を払えなかったことを理由に拘束され、暴行されたこと、その際、A教過
激派組織Bに対して一緒には働かないと明確に伝えたこと、申請者の来日後
に本国の母や仕事仲間の元にA教過激派組織Bが来訪し、申請者の所在を尋
ねてきたことからすれば、申請者は反A教過激派組織Bの思想を有すること
を理由に、A教過激派組織Bから標的とされている可能性は否定できず、か
かる申請者が帰国した場合、反A教過激派組織Bの思想を有する者として再
び拘束、暴行を受ける蓋然性は高い。
また、出身国に係る諸情報を踏まえると、本国においては、A教過激派組
織Bは政党として議席獲得後も連立政権として議席を確保し続け、本国国内
の国家治安機関とつながっており、A教過激派組織Bと本国政府が密接な関
係にあること、A教過激派組織Bのような自治武装組織や本国に利権を持つ
外国の力によって政府の機能が制限されていることが認められ、このような
- 14 -
本国情勢からすれば、A教過激派組織Bから標的とされた者について、本国
政府による効果的な保護が期待できる状況にあるとは認められない。
したがって、申請者は、
「政治的意見」を理由にA教過激派組織Bから迫
害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するものであり、
条約難民に該当する。
【事例18】
(概要)
申請者は、A政権の独裁政治に反対していること、本国政府からB国の傭
兵とC国軍との間の通訳人としてD国に行くよう依頼され、これを断ったこ
とを申し立て、帰国した場合、本国政府、本国の民兵及び本国に駐留してい
るC国軍などの治安当局から逮捕、拉致されたり、殺害されたりするおそれ
があるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、本国政府は、政府を批判する者や反体
制派支配地域の住民など様々な個人を反政府的な人物とみなし、恣意的に逮
捕、拘禁し、拷問や虐待を行っていることが認められる上、特に、元反体制
派支配地域の出身者は、本国政府から反政府的な意見を有するものとみなさ
れる可能性が高く、本国政府による監視や恣意的逮捕、強制失踪などの標的
となっているとの報告がなされている。また、本国政府は、C国軍と共にD
国での戦闘に参加させるため、E地域を含む本国国内各地において新たな戦
闘員を募集し、戦闘員らをD国に派遣していることが認められる。
申請者は、かつて反体制派が支配していたE地域出身であり、E地域内の
検問において、E地域出身であること及び反体制派の兄がいることを理由に
逮捕された経歴を有することに加え、本国の申請者のE地域内の職場を来訪
した国家安全保障局の職員からD国でC国軍の下で働いているB国兵の通訳
を依頼され、これを断ったこと、その後、国家安全保障局の指示により職場
を解雇されていることからすれば、自身の出身地や本国政府からの依頼を
断ったことを理由に、本国政府から反政府的な思想を有する者であるとみな
されている可能性は高く、かかる申請者が帰国した場合、迫害を受けるおそ
れがあると認められる。
したがって、申請者は、
「政治的意見」を理由に本国政府から迫害を受け
るおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民
に該当する。
- 15 -
【事例19】
(概要)
申請者は、A族であること、B教徒であること、本国において、申請者の
父と兄がA族の武装勢力Cの隊員であること、申請者の父が軍との戦闘によ
り死亡したことなどを申し立て、帰国した場合、軍から迫害を受けるおそれ
があるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、本国において、軍と少数民族武装勢力
との間で多数の衝突が発生しており、特に、A族の武装勢力Cの拠点である
地域においては、軍とA族の武装勢力Cの戦闘が激化し、多数の避難民が発
生するなど、情勢の急激な悪化が認められる。
申請者の父は、生前A族の武装勢力Cの隊員であって、軍との戦闘により
亡くなったこと、申請者の兄もA族の武装勢力Cの隊員であること、母と姉
が戦災避難民キャンプに避難していること、申請者の実家には、A族の武装
勢力Cの隊員であった父を探しに軍が来訪したことからすれば、申請者につ
いて、軍からA族の武装勢力Cの関係者で軍に敵対心を有しているものとし
て、軍から迫害を受けるおそれがあると認められる。
したがって、申請者は、
「政治的意見」を理由に軍から迫害を受けるおそ
れがあるという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民に該当
する。
【事例20】
(概要)
申請者は、A教B派のC人であること、移住先のD国において芸術家とし
て銅像を制作していたこと、偶像崇拝を禁止するA教過激派組織Eが、自身
の作品を出展した展示会を訪れたことを申し立て、帰国した場合、A教過激
派組織Eなどから迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申請を行ったも
のである。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、A教過激派組織Eは、民族、宗教的少
数派である特にC人、大半のC人が信仰するA教B派、
「西欧化した」とみ
なした者を含む文化及び宗教上の道徳観に背くとみなした者、A教過激派組
織Eに抵抗や反対をしたとみなした者等を標的にしてきたことや、本国を出
国した者について、A教の価値観が欠けている、十分に良いA教徒ではない
とみなしていることが認められる。また、A教過激派組織Eのルールの下で
- 16 -
言論と表現が厳しく弾圧され、芸術家はその活動を理由として恣意的に逮捕
等されているほか、偶像崇拝につながるとして人物画や人間や動物を形どっ
た彫像作品等がA教過激派組織Eによる破壊の対象となっているとの情報も
確認できる。
申請者は、主にD国において生活し、長期間にわたって本国を出国してい
ることが認められる。また、申請者は芸術家として、人間や動物の像を制作
し、美術展に出展していたことが認められ、申請者の作品が展示されていた
D国の展示会にA教過激派組織Eも来ていたということからすれば、申請者
が芸術家として、A教過激派組織Eの道徳観に背くような作品を制作してい
ることがA教過激派組織Eに認知された可能性は否定し得ず、かかる申請者
が帰国した場合、A教過激派組織Eから迫害を受けるおそれがあると認めら
れる。
したがって、申請者は、
「政治的意見」を理由にA教過激派組織Eから迫
害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するものであり、
条約難民に該当する。
【事例21】
(概要)
申請者は、本国において、A教B派と戦ったこと、その後、抵抗組織Cに
加入し、A教B派と戦ったこと、抵抗組織Cが軍に編入されて以降、軍兵士
としてA教B派と戦ったこと、A教B派から逮捕状が発付され、A教B派が
申請者を捜索するため、申請者の家や村に何度も来訪したこと、軍兵士とし
て、組織Dの軍と戦ったことなどを申し立て、帰国した場合、A教B派及び
軍などから迫害を受けるおそれがある旨主張している。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、本国においては、複数の紛争当事者が
存在しているところ、特にA教B派については、敵対勢力とみなした者等を
標的にし、恣意的な拘束や誘拐を行っていることが認められる。
申請者は、本国において、抵抗組織C及び軍に所属し、A教B派と戦って
きた経歴を有していること、その後、A教B派から申請者に対して逮捕状が
発付されたこと、A教B派が申請者を捜索するため、申請者の家や村に何度
も来訪したことからすれば、申請者が上記経歴を理由に、A教B派から反A
教B派であるとみなされている可能性は否定できず、かかる申請者が帰国し
た場合、A教B派から逮捕・拘束される蓋然性は高い。
また、出身国に係る諸情報を踏まえると、本国において、本国政府と反政
- 17 -
府勢力(A教B派)との衝突が長期にわたり継続しているなど、かかる状況
下で、A教B派から標的とされた者について、本国政府による効果的な保護
が期待できる状況にあるとは認められない。
したがって、申請者は、
「政治的意見」を理由にA教B派から迫害を受け
るおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民
に該当する。
- 1 -
2人道配慮により在留許可を行った事例及びその判断のポイント
1 本国の情勢や事情等を踏まえて在留許可を行った事例
【事例1】
(概要)
申請者は、本国において、軍と武装勢力Aの戦争が始まったことを申し立
て、帰国した場合、戦争に巻き込まれて武装勢力Aから殺害されるおそれが
あるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の主張は、難民条約上のいずれの迫害の理由にも該当しないとして
「不認定」とされた。
しかしながら、出身国に係る諸情報を踏まえると、本国においては、軍と
準軍事組織である武装勢力Aとの間で戦闘が発生し、
各地で死者が報告され、
民間人を直接標的にした事件も発生するなど、無差別かつ常態的な戦闘が行
われていることからすれば、申請者が帰国した場合、上記戦闘に巻き込まれ
る可能性は否定できない。よって、申請者は、人道上の配慮から我が国での
在留を認める必要があると判断された。
【事例2】
(概要)
申請者は、本国において、政府軍と反政府軍の内戦が継続し、テロリスト
による本国居住のA民族の殺害やレイプが起きたり、B国から入ってきた独
立派A民族を狙ったB国政府による爆撃が起きたりしており、本国国内が混
乱していることを申し立て、帰国した場合、爆撃等に巻き込まれたり、テロ
リストに殺害されたりするおそれがあるとして難民認定申請を行ったもので
ある。
(判断のポイント)
申請者の主張は、難民条約上のいずれの迫害の理由にも該当しないとして
「不認定」とされた。
しかしながら、出身国に係る諸情報を踏まえると、本国においては、紛争
は依然として多面的で前線が複数あり、様々な国家・非国家主体間で展開さ
- 2 -
れていて、かつ多数の地域的・国際的主体が関与しているところ、同国の多
くの地域で政府による支配が拡大し、治安が相対的に改善されたにもかかわ
らず、治安面での成果は脆弱であり、紛争及び不安定な情勢の継続によって
一般市民に壊滅的影響が生じている旨の報告が認められ、多くの地域でテロ
組織Cが依然として活発に活動していること、人権法の重大な違反・侵害及
び国際人道法の違反が本国全土で続いているとの報告も認められることから
すれば、申請者が帰国した場合、本国では政府軍や反体制派等の武力を伴っ
た争いに巻き込まれたり、
武装勢力等の標的とされる可能性は否定できない。
よって、申請者は、人道上の配慮から我が国での在留を認める必要があると
判断された。
【事例3】
(概要)
申請者は、
本国において、
銅山の開発計画に抗議するデモに参加したこと、
憲法の改正を求めるデモに参加したこと、本邦において、軍を批判するデモ
に参加したことを申し立て、帰国した場合、軍から迫害を受けるおそれがあ
るとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の申立てによれば、上記活動の態様は、いずれも一参加者として参
加したというものであること、本国における上記活動後、何ら問題なく自己
名義旅券を行使して本国の出国手続を受けていること、上記活動を理由に、
申請者や本国の申請者の家族が本国官憲から接触を受けたことはないことか
らすれば、条約難民の要件である迫害を受けるおそれがあるとは認められな
いとして「不認定」とされた。
しかしながら、出身国にかかる諸情報を踏まえると、申請者の本国の生活
拠点のあったA地域においては、軍と反政府武装勢力との間で武力衝突が発
生しているとの報告があることが認められ、申請者が帰国した場合、軍と反
政府武装勢力との間の武力衝突に巻き込まれる可能性は否定できない。よっ
て、申請者は、人道上の配慮から我が国での在留を認める必要があると判断
された。
【事例4】
- 3 -
(概要)
申請者は、本邦において、本国A地域の戦災避難民を支援するために寄附
を行ったこと、
民族組織Bに加入し活動したことを申し立て、
帰国した場合、
軍から迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の申立てによれば、上記寄附については、本邦の送金業者を介して
本国の母に送金し、母からA地域の戦災避難民に寄附を渡してもらったとい
うものであること、上記民族組織Bにおける活動の態様は、一般メンバーと
して所属し、デモに一参加者として参加したり、少数民族武装勢力Cや本国
の戦災避難民を支援するために同組織の寄附を担当するメンバーにお金を直
接渡すといった方法で、寄附を行ったりしたというものであること、上記活
動を理由に、申請者や本国の申請者の家族が本国官憲から接触を受けたこと
はないことからすれば、条約難民の要件である迫害を受けるおそれがあると
は認められないとして「不認定」とされた。
しかしながら、出身国にかかる諸情報を踏まえると、申請者の本国の生活
拠点であったA地域においては、軍と反政府武装勢力との間で武力衝突が発
生している状況にあることからすれば、申請者が帰国した場合、軍と反政府
武装勢力との間の武力衝突に巻き込まれる可能性は否定できず、また、本国
を出国する前に滞在していたD地域においては、居住権に関する書類の確認
が広く行われ、書類の不備を理由に逮捕される者がいたり、違法な居住区に
居住せざるを得ないことが多い新規移住者が警察等によりその居住区を破壊
され、追放されているとの情報も認められる。よって、申請者は、人道上の
配慮から我が国での在留を認める必要があると判断された。
2 本邦での特別な事情を考慮して在留許可を行った事例
【事例5】
(概要)
申請者は、今次3回目の難民認定申請であり、これまでの難民認定手続と
同様に、申請者がA教B派であり、本国において、A教C派教徒と口論やけ
んかをしたこと、C派教徒に拉致され、暴行を受けたことなどを申し立て、
帰国した場合、C派教徒から殺害されるおそれがあるとして難民認定申請を
行ったものである。
- 4 -
(判断のポイント)
申請者の主張は、これまでの難民認定手続における主張と同旨であり、当
該主張に難民該当性は認められず、その他の申請者の主張等を全て考慮して
も、申請者が条約難民に該当するとは認められないとして「不認定」とされ
た。
しかしながら、申請者は、本邦で日本人と婚姻し、同居し、相互扶助して
いることが認められ、また、既に申請者夫婦の間に出生した日本人実子を監
護養育しており、婚姻の安定性・継続性が認められる。よって、申請者は、
人道上の配慮から我が国での在留を認める必要があると判断された。
【事例6】
(概要)
申請者は、今次2回目の難民認定申請であり、前回の難民認定手続と同様
に、本国において、1大統領選挙キャンペーン期間中、友人たちとともに前
大統領に反対するデモに参加したことから、前大統領の支持者から暴行を受
けた上、武器を持って自宅に来訪されたことを申し立て、帰国した場合、同
人らから狙われ、殺害されるおそれがあり、今次の難民認定申請において、
2本国で反政府デモが行われた際、申請者の兄が申請者と間違われて、政党
Aの支持者から暴行され負傷したことを申し立て、帰国した場合、同人らか
ら殺害されるおそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の上記1の主張は、
前回の難民認定手続における主張と同旨であり、
当該主張に難民該当性は認められず、その他の申請者の主張等を全て考慮し
ても、申請者が条約難民に該当するとは認められない。
また、申請者の上記2の主張によれば、申請者の兄に暴行を加えた人物が
政党Aの支持者であるというのは、兄が暴行を受けた際に周囲にいた人から
の伝聞であること、政党Aの支持者は、申請者が過去に前大統領に反対する
デモに参加したことを批判し、申請者と間違えて申請者の兄を暴行したとい
うものの、申請者の兄が暴行された際、申請者の兄以外にも暴行を受けた人
がいたというのは不自然であること、上記事情を除いて、申請者の兄が政党
Aの支持者から暴行や脅迫を受けたことはないことからすれば、条約難民の
要件である迫害を受けるおそれがあるとは認められないとして「不認定」と
- 5 -
された。
しかしながら、申請者は、本邦で日本人と婚姻し、同居し、相互扶助して
いることが認められ、また、既に申請者夫婦の間に出生した日本人実子を監
護養育しており、婚姻の安定性・継続性が認められる。よって、申請者は、
人道上の配慮から我が国での在留を認める必要があると判断された。
- 1 -
3難民等と認定しなかった事例及びその判断のポイント
1 迫害理由として「人種」を申し立てるもの
【事例1】
(概要)
申請者は、A民族であること、本国のB地域において、高等学校で、A民
族であることを理由に、C民族の学生から差別するようなことを言われた
り、暴力を振るわれたことなどを申し立て、帰国した場合、迫害を受けるお
それがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の申立てによれば、申請者が本国政府関係者から身柄拘束等をされ
たことはないこと、出身国に係る諸情報を踏まえると、本国政府は、A民族
の言語や文化を尊重する政策に取り組んでいることなどが認められること、
申請者を迫害するものの一部は、私人である一般のC民族の人であるとこ
ろ、本国政府が私人による違法行為を放置、助長、黙認するような特別な事
情があるとは認められず、申請者が本国政府から効果的な保護を受けること
が期待できない状況にあるとは認められないことからすれば、条約難民の要
件である迫害を受けるおそれがあるとは認められないとして「不認定」とさ
れた。
2 迫害理由として「宗教」を申し立てるもの
【事例2】
(概要)
申請者は、A教徒であること、本国B地域において、同地域に住むC教徒
であるD氏から土地を購入し、家を建築していたところ、同人から、同土地
に宗教施設を建てるため、以後同土地を訪れないよう求められた上、殺害の
脅迫を受けたこと、同人及び同人の仲間のC教徒から暴行を受けたことなど
を申し立て、帰国した場合、D氏及び同人の仲間のC教徒から殺害されるお
それがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の申立てによれば、申請者を迫害するのは、私人であるC教徒のD
氏及び同人の仲間のC教徒であるところ、出身国に係る諸情報を踏まえる
と、本国の憲法は、信教の自由を保障していることなどが認められること、
- 2 -
本国政府が私人による違法行為を放置、助長、黙認するような特別な事情が
あるとは認められないことからすれば、申請者が本国政府から効果的な保護
を受けることが期待できない状況にあるとは認められない。よって、条約難
民の要件である迫害を受けるおそれがあるとは認められないとして「不認
定」とされた。
【事例3】
(概要)
申請者は、A教徒であること、本国において、B地域に住むC教過激派の
D氏とその仲間に、同地域から追い出されたこと、B地域内で行われたクリ
ケットの試合で、申請者がA教の国であるE国を応援したことを理由に、D
氏とその仲間から殺害の脅迫及び暴行を受けたことを申し立て、帰国した場
合、C教過激派のD氏とその仲間から殺害されるおそれがあるとして難民認
定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の申立てによれば、申請者を迫害するのは、C教過激派のD氏とそ
の仲間であるところ、出身国に係る諸情報を踏まえると、本国の憲法は、信
教の自由を保障し、宗教的な理由による差別を禁じていること、本国政府が
C教過激派組織及び私人による違法行為を取り締まっていることなどが認め
られること、本国政府がC教過激派組織及び私人による違法行為を放置、助
長、黙認するような特別な事情があるとは認められないことからすれば、申
請者が本国政府から効果的な保護を受けることが期待できない状況にあると
は認められない。よって、条約難民及び補完的保護対象者の要件である迫害
を受けるおそれがあるとは認められないとして「不認定」とされた。
【事例4】
(概要)
申請者は、申請者及び本国A地域に居住していた申請者の家族がB教から
C教へ改宗したため、本国において、父が同地域に住む地元のB教徒らから
暴行及び殺害の脅迫を受けたり、母及び妹たちが殺害の脅迫を受けたことな
どを申し立て、帰国した場合、地元のB教徒らから殺害されるおそれがある
として難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の申立てによれば、申請者を迫害するのは、特定地域の私人である
- 3 -
B教徒らであるところ、出身国に係る諸情報を踏まえると、本国の憲法にお
いて宗教の自由が認められており、本国政府は、私人による違法行為を取り
締まっていることなどが認められ、本国政府が私人による違法行為を放置、
助長、黙認するような特別な事情があるとは認められず、申請者が本国政府
から効果的な保護を受けることが期待できない状況にあるとは認められない
こと、また、両親は親戚のいるD地域に転居しているところ、転居後にB教
徒からの接触を受けたことはない上、申請者自身も、D地域には様々な宗教
の人がいるので安全に暮らすことができる旨述べていること、妹たちはE地
域に転居していること、申請者は、B教徒であった時から宗教とは関係のな
い生活をしており、改宗後も同様の生活をしていることからすれば、条約難
民の要件である迫害を受けるおそれがあるとは認められないとして「不認
定」とされた。
3 迫害理由として「政治的意見」を申し立てるもの
【事例5】
(概要)
申請者は、本国のA地域において、B党のサポーターとして党の宣伝活動
を行ったことを理由に、同区のC党の関係者から活動をやめるよう言われ、
これを拒否したため、喧嘩になり、木や鉄の棒で殴られたこと、申請者を探
してC党の関係者が申請者の実家に来訪したことを申し立て、帰国した場
合、A地域のC党の関係者に殺害されるおそれがあるとして難民認定申請を
行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の申立てによれば、申請者を迫害するのは、特定地域のC党の関係
者であるところ、出身国に係る諸情報を踏まえると、本国においては、刑事
司法制度が機能しており、本国政府が政党関係者及び私人による違法行為を
取り締まっていることなどが認められること、本国政府が政党関係者及び私
人による違法行為を放置、助長、黙認するような特別な事情があるとは認め
られないことからすれば、申請者が本国政府から効果的な保護を受けること
が期待できない状況にあるとは認められない。よって、条約難民及び補完的
保護対象者の要件である迫害を受けるおそれがあるとは認められないとして
「不認定」とされた。
【事例6】
- 4 -
(概要)
申請者は、本国において、野党活動家の釈放、土地紛争の解決及び賃上げ
を要求するデモに1回参加したことを申し立て、帰国した場合、本国政府か
ら迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の供述によれば、申請者は上記デモに多数の参加者の一人として参
加したこと、当該デモ参加後、何ら問題なく自己名義旅券の発給及び本国の
出国手続を受けていること、上記活動を理由に、申請者や申請者の家族が本
国政府関係者から接触を受けたことはなく、本国の家族は平穏に生活してい
ること、申請者に対して逮捕状の発付又は手配はされていないことからすれ
ば、当該主張をもって、条約難民の要件である迫害を受けるおそれがあると
は認められないとして「不認定」とされた。
【事例7】
(概要)
申請者は、本国において、申請者の父と一弟が、A党のB地域のメンバー
として、現政権与党であるC党に反対する政治活動を行っていることを理由
に、B地域のC党の関係者から、申請者の父と一弟が暴行を受け、申請者の
母が脅迫を受けたことを申し立て、帰国した場合、B地域のC党の関係者か
ら酸をかけられるといった迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申請を
行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の申立てによれば、申請者を迫害するのは、特定地域のC党の関係
者であるところ、出身国に係る諸情報を踏まえると、本国政府は、政党関係
者及び私人による違法行為を取り締まっていることなどが認められること、
本国政府が政党関係者及び私人による違法行為を放置、助長、黙認するよう
な特別な事情があるとは認められないことからすれば、申請者が本国政府か
ら効果的な保護を受けることが期待できない状況にあるとは認められない。
よって、条約難民及び補完的保護対象者の要件である迫害を受けるおそれが
あるとは認められないとして「不認定」とされた。
【事例8】
(概要)
申請者は、本国において、A党の支持者であること、本国のB地域所在の
- 5 -
C大学に在学中、同大学のキャンパスにおいて、A党を支持する活動を行っ
たことを申し立て、帰国した場合、C大学に通っていたD党の支持者たちか
ら暴行を受けるおそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の申立てによれば、申請者を迫害するのは、特定地域のD党の支持
者であるところ、出身国に係る諸情報を踏まえると、本国政府は、D党関係
者による違法行為を取り締まっていることなどが認められること、本国政府
がD党関係者による違法行為を放置、助長、黙認するような特別な事情があ
るとは認められないことからすれば、申請者が本国政府から効果的な保護を
受けることが期待できない状況にあるとは認められない。よって、条約難民
の要件である迫害を受けるおそれがあるとは認められないとして「不認定」
とされた。
4 その他の申立て
(1)私人間のトラブルを申し立てるもの
【事例9】
(概要)
申請者は、本国において、申請者の友人がA氏に借金をしたところ、友人
が行方不明となり、A氏から友人の代わりに借金を返済するよう脅迫された
ことを申し立て、帰国した場合、友人の代わりにA氏へ借金を返済しなけれ
ばならないとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の申立ては、友人の借金をめぐるトラブルを理由とするものであ
り、難民条約上のいずれの迫害の理由にも該当しないとして「不認定」とさ
れた。
【事例10】
(概要)
申請者は、本国において、申請者の兄と共に日用品を販売する店を経営し
ていたところ、商品の買い付けのためにA国を訪れた際、買い付けのために
所持していた多額のお金を何者かに盗まれてしまい、そのことを兄に報告す
ると、兄が激怒したことを申し立て、帰国した場合、兄に殺害されるおそれ
があるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
- 6 -
申請者の申立ては、申請者が店の商品の買い付けのために所持していたお
金を盗まれたことを理由として、兄から迫害を受けるおそれがあるというも
のであり、難民条約上のいずれの迫害の理由にも該当しないとして「不認
定」とされた。
【事例11】
(概要)
申請者は、本国在住の弟たちに対し、申請者が本国に帰国した場合の生活
費や仕事を始めるためのお金を要求したところ、弟たちからこれを拒否さ
れ、殺害の脅迫を受けたことを申し立て、帰国した場合、弟たちに殺害され
るおそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の申立ては、申請者が生活費や仕事を始めるためのお金を要求した
ことを理由として、弟たちから迫害を受けるおそれがあるというものであ
り、難民条約上のいずれの迫害の理由にも該当しないとして「不認定」とさ
れた。
(2)本邦で稼働することを希望するもの
【事例12】
(概要)
申請者は、本邦において、友人から借金をしたことから、借金を返済する
ため、本邦で働いてお金を稼ぎたいとして難民認定申請を行ったものであ
る。
(判断のポイント)
申請者の主張には、難民該当性を基礎づける事情が含まれていないとして
「不認定」とされた。
(3)その他本邦への滞在を希望するもの
【事例13】
(概要)
申請者は、本邦で働けば小遣いを稼げること、本邦が好きであること、家
族が本邦にいるため一緒に暮らしたいとして難民認定申請を行ったものであ
る。
(判断のポイント)
- 7 -
申請者の主張には、難民該当性を基礎づける事情が含まれていないとして
「不認定」とされた。
【事例14】
(概要)
申請者は、子供たちの将来のために、本邦で子供たちを育てたいとして難
民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の主張には、難民該当性を基礎づける事情が含まれていないとして
「不認定」とされた。
5 複数回申請
【事例15】
(概要)
申請者は、今次2回目の難民認定申請であり、前回の難民認定手続と同様
に、本国において、A氏という人物から支援を受けて生活していたところ、
これを妬んだA氏の弟であるB氏が送り込んだ5人の暴漢に殴られ、手足を
縛られたことを申し立て、帰国した場合、B氏から殺害されるおそれがある
として難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の主張は、前回の難民認定手続における主張と同旨であり、当該主
張に難民該当性は認められず、その他の申請者の主張等を全て考慮しても、
申請者が条約難民に該当するとは認められないとして「不認定」とされた。

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