1技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議
最終報告書を踏まえた政府の対応について
令 和 6 年 2 月 9 日
外 国 人 材の 受 入れ ・共 生 に 関 す る
関 係 閣 僚 会 議 決 定
技能実習制度及び特定技能制度の在り方については、令和4年 11 月 22
日、外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議(平成 30 年7月 24 日
閣議口頭了解)
(以下「関係閣僚会議」という。
)の下に設置された技能実
習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議において議論が重
ねられ、令和5年 11 月 30 日、最終報告書が関係閣僚会議に提出された。
今後の両制度の在り方については、当該最終報告書を踏まえつつ、日本
人と外国人が互いに尊重し、安全・安心に暮らせる共生社会の実現を目指
し、両制度を外国人がキャリアアップしつつ国内で就労し活躍できる分か
りやすいものとするとともに、人権侵害等の防止・是正等を図り、日本が
魅力ある働き先として選ばれる国になるという観点に立って、地方や中小
零細企業における人材確保にも留意しつつ、以下の方針で検討を進めるこ
ととする。
1 総論
しろまる 現行の技能実習制度を実態に即して発展的に解消し、
人手不足分野
における人材確保及び人材育成を目的とする育成就労制度を創設す
る。
しろまる 現行の企業単独型技能実習のうち、育成就労制度とは趣旨・目的を
異にするものの、引き続き実施する意義のあるものは、育成就労制度
とは別の枠組みでの受入れを検討する。
しろまる 特定技能制度については、適正化を図った上で存続させる。
2 外国人の人材確保
(1)受入れ対象分野
しろまる 育成就労制度の受入れ対象分野は、
現行の技能実習制度の職種等
を機械的に引き継ぐのではなく、
育成就労制度と技能実習制度の趣
旨・目的の違いを踏まえ、新たに設定するものとする。
しろまる 育成就労制度は、
人手不足分野における特定技能1号への移行に 2向けた人材育成を目指すものであることから、
受入れ対象分野を特
定技能制度における「特定産業分野」に限るものとする。
しろまる 技能実習2号移行対象職種のうち、
対応する特定産業分野が設定
されているものについては、
当該分野が特定技能制度において外国
人材による人材確保が必要な分野と認められていることを前提に、
育成就労制度においても、
原則として受入れ対象分野として認める
方向で検討する。
それ以外の職種については、
育成就労制度の趣旨・目的を踏まえ、
特定産業分野への追加の要否や対応等について、
業所管省庁と業界
団体等との連携、調整を政府全体で促進していく。その際、技能実
習が行われている職種のうち、
対応する特定産業分野が設定されて
いないものについては、
現行の技能実習制度が当該職種に係る分野
において果たしてきた人材確保の機能の実態を確認した上で、
特定
産業分野への追加について検討を進める。
(2)受入れ見込数
しろまる 育成就労制度においても、特定技能1号と同様に、受入れ対象分
野ごとに受入れ見込数を設定して受入れ上限数として運用する。
(3)設定の在り方
しろまる 育成就労制度及び特定技能制度においては、
受入れ見込数や受入
れ対象分野は適時・適切に変更できるものとし、それらの設定や特
定技能評価試験のレベルの評価等は有識者・労使団体等で構成する
新たな会議体の意見を踏まえて政府が判断するものとする。
(4)地域の特性等を踏まえた人材確保
しろまる 育成就労制度及び特定技能制度においては、
技能実習制度におけ
る地域協議会を参照して同様の協議会を組織し、
業所管省庁だけで
なく自治体も積極的に参画して、
地域産業政策としての外国人材の
受入れ環境の整備等に取り組む。
しろまる 各自治体は、
共生社会の実現や地域産業政策の観点からの受入れ
環境の整備、外国人相談窓口の整備や、外国人の生活環境等を整備
するための取組を推進する。
しろまる 季節性のある分野について、その業務の実情に応じた受入れ・勤
務形態を認めることなどを検討する。
3 外国人の人材育成
(1)人材育成の在り方
しろまる 育成就労制度は、
基本的に3年間の就労を通じた育成期間におい 3て、
対象となる外国人ごとに育成就労計画を定めた上で計画的に特
定技能1号の技能水準の人材に育成することを目指すものとし、適正化方策を講じた特定技能制度と連続性を持たせる。
しろまる 育成就労制度で外国人が従事できる業務の範囲は、
現行の技能実
習制度よりも幅広くして特定技能制度における業務区分と同一と
しつつ、
当該業務区分の中で修得すべき主たる技能を定めて計画的
に育成・評価を行う。
しろまる 業所管省庁は、育成就労制度及び特定技能制度の育成・キャリア
形成プログラムを策定する。
しろまる 特定技能外国人に対する支援にキャリア形成の支援を加える。
(2)人材育成の評価方法
しろまる 育成就労制度では、
外国人が就労開始前までに日本語能力A1相
当以上の試験(日本語能力試験N5等)に合格すること又は相当す
る日本語講習を認定日本語教育機関等において受講することを要
件とする。
しろまる 外国人の技能修得状況等を評価するため、受入れ機関は、育成就
労制度による受入れ後1年経過時までに技能検定試験基礎級等及
び日本語能力A1相当以上の試験
(日本語能力試験N5等。
ただし、
既に試験に合格している場合を除く。)を外国人に受験させる。
しろまる 育成就労制度から特定技能1号への移行時には、
技能検定試験3
級等又は特定技能1号評価試験及び日本語能力A2相当以上の試
験(日本語能力試験N4等)の合格を要件とし、受入れ機関が外国
人に当該試験を受験させる。
しろまる 特定技能1号から特定技能2号への移行時には、
従前の特定技能
2号評価試験等の合格に加え、日本語能力B1相当以上の試験(日
本語能力試験N3等)の合格を要件とする。
しろまる 上記各段階における日本語能力に関しては、
現行の技能実習制度
における取扱いを踏まえ、
各受入れ対象分野でより高い水準の試験
の合格を要件とすることを可能とする。
しろまる 育成就労制度で育成を受けたものの、
特定技能1号への移行に必
要な試験等に不合格となった者については、
同一の受入れ機関での
就労を継続する場合に限り、
再受験に必要な範囲で最長1年の在留
継続を認める。
(3)日本語能力の向上方策
しろまる 日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関
の認定等に関する法律の仕組みを活用して日本語教育の質の向上 4を図るとともに、
受入れ機関が日本語教育支援に積極的に取り組む
ためのインセンティブとなる優良な受入れ機関の認定要件等を設
ける。
しろまる 育成就労において必要となる日本語能力を測る試験について、A1相当からA2相当までの範囲内で設定される水準の試験を含む
新たな試験の導入や、
外国人の十分な受験機会を確保する方策を検
討するとともに、母国における日本語学習支援として、日本語教材
の開発、
現地日本語教師の育成のための日本語専門家等の各国への
派遣、日本語教材購入助成等の支援の実施等の取組を進める。
4 外国人の人権保護・労働者としての権利性の向上(1)「やむを得ない事情がある場合」の転籍
しろまる 育成就労制度において、現行の技能実習制度で認められている
「やむを得ない事情がある場合」の転籍については、例えば、労働
条件について契約時の内容と実態との間で一定の相違がある場合
について、労働法理や慣行に照らし、改善状況等を考慮しつつ対象
とすることを明示するなど、その範囲を拡大・明確化するとともに
手続を柔軟化するものとし、現行制度下においても、可能な限り速
やかに運用の改善を図る。
(2)本人の意向による転籍
しろまる 上記(1)の場合以外は、計画的な人材育成の観点から、3年間
を通じて一つの受入れ機関において継続的に就労を続けることが
効果的であり望ましいものの、
以下の要件をいずれも満たす場合に
は、同一業務区分内に限り、外国人本人の意向による転籍を認める
(注)。
ア 同一の受入れ機関において就労した期間が一定の期間を超え
ていること
イ 技能検定試験基礎級等及び一定の水準以上の日本語能力に係
る試験に合格していること
ウ 転籍先となる受入れ機関が、
転籍先として適切であると認めら
れる一定の要件を満たすこと
なお、アの「一定の期間」については、当分の間、各受入れ対象
分野の業務内容等を踏まえ、
受入れ対象分野ごとに1年から2年ま
での範囲内で設定するものとする。
ただし、アの「一定の期間」については、人材育成の観点を踏ま
えた上で1年とすることを目指しつつも、
1年を超える期間を設定 5する場合には、当該期間を選択する受入れ機関において、就労開始
から1年を経過した後には転籍の制限を理由とした昇給その他待
遇の向上等を図るための仕組みを検討する。
また、
育成就労制度において育成途中の外国人による特定技能1
号への在留資格変更については、
育成就労を経ないで特定技能1号
の在留資格を得るために必要となる試験に合格し、かつ、アの要件
を満たす場合に限って認める。
イの「一定の水準以上の日本語能力に係る試験」については、各
受入れ対象分野の業務内容等を踏まえ、
各受入れ対象分野において、
日本語能力A1相当の水準から特定技能1号への移行時に必要と
なる日本語能力の水準までの範囲内で設定するものとする。
(注)
転籍が認められる要件の概要については法律で規定した上、
上記アの
「一
定の期間」
の具体的な数値や上記イ及びウの要件の具体的な内容等について
は主務省令等で規定予定。
しろまる 本人の意向により転籍を行う場合、
転籍前の受入れ機関が支出し
た初期費用等のうち、
転籍後の受入れ機関にも分担させるべき費用
については、
転籍前の受入れ機関が正当な補塡を受けられるように
するための仕組みを検討する。
しろまる 転籍については、受入れ機関、送出機関及び外国人の間の調整が
必要となることに鑑み、転籍支援は、まずは監理支援機関(下記5
(1)参照)が中心となって行うこととしつつ、ハローワークは外
国人育成就労機構(下記5(4)参照)等と連携するなどして行う
こととする。なお、当分の間、民間の職業紹介事業者の関与は認め
ない。
しろまる 転籍ブローカー等の排除を担保するため、
転籍の仲介状況等に係
る情報を把握できる仕組みを設けるとともに、
不法就労助長罪の法
定刑を引き上げつつ適切な取締りを行う。
しろまる 転籍を認めるに当たっては、
外国人を3年間の育成期間内に特定
技能1号の技能水準の人材に育成するとの観点から、
当該外国人の
転籍先の受入れ機関における育成就労計画の適否を審査するもの
とし、転籍を認めた後においても、当該転籍先の受入れ機関が当該
計画に基づき当該外国人を育成するよう監理支援機関とともに監
督するものとする。
しろまる 転籍等に係る制度の悪用を防止し、適切な人材育成を促すため、
受け入れた外国人の技能検定試験、
日本語能力を測る試験等の合格
率等を受入れ機関及び監理支援機関の許可等の要件や優良認定の 6指標とする。
5 関係機関の在り方
(1)監理支援機関・登録支援機関
しろまる 育成就労制度の下での監理団体(監理支援機関)については、受
入れ機関と密接な関係を有する役職員の監理への関与の制限、
外部
監査人の設置の義務化等により独立性・中立性を担保するとともに、
受入れ機関数等に応じた職員の配置・相談対応体制を担保するなど
した上で、新たに許可を受けるべきものとし、機能を十分に果たせ
ない監理団体は許可しない。
しろまる 特定技能外国人に対する支援が適切になされるよう、
受入れ機関
が支援業務を他に委託する場合の委託先を登録支援機関に限るこ
ととした上、登録支援機関及び受入れ機関の要件の厳格化・適正化
を行う。
しろまる 手続全般の簡素化・合理化を進めた上で、優良な監理支援機関及
び登録支援機関に対しては更に簡素化等の措置を講じる。
(2)受入れ機関
しろまる 育成就労制度における受入れ機関については、
受入れ機関ごとの
受入れ人数枠を含む育成・支援体制等の要件を適正化して設定する
とともに、分野別協議会への加入等の要件を設け、前職要件等の現
行の技能実習制度の国際貢献目的に由来する要件については撤廃
する。また、受入れ機関において、就労期間に応じた昇給その他の
待遇の向上、生活文化研修や日本語能力の向上方策の実施、相談対
応体制の確保、外国人本人の連絡先や預金口座等の適正な把握等、
外国人の適正な受入れに必要な方策を講ずる。
しろまる 手続全般の簡素化・合理化を進めた上で、優良な受入れ機関に対
しては更に簡素化等の措置を講じる。
しろまる 来日後のミスマッチや労働条件等に係る外国人と受入れ機関等
の認識のそごを防止するため、
受入れ機関に係る情報の透明性を高
め、
外国人が安心して働ける受入れ機関をより直接的に選択できる
ようにする。
(3)送出機関
しろまる 二国間取決め(MOC)を新たに作成し、悪質な送出機関の排除
に向けた取組を強化するとともに、原則として、当該取決めを作成
した国の送出機関からのみ受入れを行うものとする。
しろまる 各送出機関が徴収する手数料等の情報の公開を求めるなどして 7送出機関に係る情報の透明性を高め、
監理支援機関等がより質の高
い送出機関を選択できるようにする。
しろまる 外国人が送出機関に支払う手数料等が不当に高額とならないよ
うにするとともに当該手数料等を受入れ機関と外国人が適切に分
担するための仕組みを導入し、外国人の負担の軽減を図る。
(4)外国人育成就労機構
しろまる 外国人技能実習機構を外国人育成就労機構に改組し、
育成就労制
度の対象となる外国人に対する支援・保護業務を行わせるとともに、
特定技能外国人への相談援助業務も行わせる。
しろまる 外国人育成就労機構の監督指導機能や支援・保護機能を強化し、
そのために必要な体制等を整備するとともに、労働基準監督署、地
方出入国在留管理局等との連携を強化する。
6 その他
しろまる 制度所管省庁は、業所管省庁との連絡調整、業所管省庁や関係機関
への助言、送出国との連携の強化等、制度全体を適正に運用する上で
の中心的な役割を果たす。
しろまる 業所管省庁は、受入れガイドラインや育成・キャリア形成プログラ
ムを策定するなどして受入れの適正化を促進するほか、相談窓口の設
置、不適切な引き抜きを防止するための措置等、各受入れ対象分野に
おいて必要な外国人の受入れ環境の整備等に資する取組を行う。
しろまる 人権侵害行為に対しては、現行制度下でも可能な対処を迅速に行う。
しろまる 移行期間を十分に確保するとともに丁寧な事前広報を行い、現行制
度を利用している外国人や受入れ機関等に不当な不利益を生じさせ
ず、また、制度の移行による急激な変化を緩和するため、必要な経過
措置を設ける。
しろまる 育成就労制度及び特定技能制度について、適切な情報発信等を行い、
関係者の理解を促進する。
しろまる 育成就労制度の施行後も、制度の運用状況について不断の検証と必
要な見直しを行う。
しろまる 育成就労制度を通じて、
永住に繋がる特定技能制度による外国人の
受入れ数が増加することが予想されることから、
永住許可制度の適正
化を行う。
以上

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