第3回東京イミグレーションフォーラム
UNHCR駐日代表の講演【仮訳】
2023 年 12 月 21 日(木)
菊池長官、ご列席の政府および国際移住機関の代表者の皆様、第 3 回東京イミグレーシ
ョンフォーラムに国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)をご招待いただきありがとうご
ざいます。本フォーラムでは、世界およびアジア地域の難民問題に焦点を当てた分科会
が開催されることについて特に感謝申し上げます。人の移住と庇護の問題は異なるもの
ですが密接に関連しており、効果的で信頼性の高い庇護制度と安全で秩序ある正規の移
住の制度は車の両輪のようなものです。
本フォーラムで難民問題へも焦点を当てることは、先週スイスのジュネーブで開催され
た第 2 回グローバル難民フォーラム(Global Refugee Forum: GRF)において共同議長国の
一カ国として日本政府が主宰し、上川外務大臣が政府代表として参加されたことを鑑み
れば時勢を汲んだものと言えます。私自身もジュネーブから戻ったばかりですので、こ
の機会に今回の GRF についていくつか要点を共有したいと思います。
GRF は難民問題に関する世界最大の国際会議です。主に 4 つの議題、(i) 難民受け入れ国
の負担軽減、 (ii) 難民の自立促進、(iii) 第三国定住など解決策の拡大、および(iv) 自主的
帰還に向けた環境整備について議論する目的をもって、4 年ごとに開催されています。
GRF では、ガザとウクライナの人道危機を引き続き注視しつつ、危険をおかして地中海
やベンガル湾を渡る人々の移動、スーダン、シリア、アフガニスタン、ミャンマー、コ
ンゴ民主共和国、アメリカ大陸における紛争や混乱など、しばしば忘れられがちな他の
人道危機についても議論しました。また、アフリカのサヘル地域などの人道状況を悪化
させる気候変動の影響についても詳しく分析しました。
今回の第 2 回 GRF には、300 人もの難民、各国政府、市民社会、国際機関や開発機関、
ビジネスリーダー、宗教団体、学者を含む 4,200 人以上が参加し、まさに「社会全体で
難民問題に取り組む」ことを体現できました。
それでは、第 2 回 GRF ではどのような成果があったのでしょうか?GRF は、難民と受け
入れコミュニティーを支援するために様々なステークホルダーが発表した「宣言
(pledge)」を中心に構成されています。先週ジュネーブでは、資金面での支援や物的
支援、政策レベルの支援、その他の形の支援に関する 1,600 以上の宣言が発表されまし
た。ドナー各国は、今後数年間で 22 億ドルを超える資金を提供することを宣言しまし
た。民間セクターからは、2 億 5000 万ドル以上の資金提供、100 万時間のプロ・ボノ、
10 万人の難民の雇用、40 万人以上に対する研修、難民支援目的で難民自身が所有する
事業への 1 億 8000 万ドル以上の投資、そして 6,000 以上の奨学金事業の実現を宣言し
ました。
日本政府は「人道と開発と平和のネクサス」という分野でマルチステークホルダー宣言
(Multistakeholder Pledge)を発表し、短期的な人道支援と中長期的な開発と平和構築の
アプローチを同時に実施する必要性を強調しました。この取り組みは、ドナー国、難民
受け入れ国、国際機関、その他の主要なアクターが協働して、2030 年の持続可能な開
発目標に向けて、難民と彼らを受け入れる人々の人間の安全保障を実現するためのプラ
ットフォームを提供するものです。また、日本政府は、第三国定住事業、教育を通じた
難民受け入れ、そして紛争から逃れた人々に対する国際的な保護の強化への支持をも表
明しました。日本の衣料品会社であるユニクロは、難民の雇用などを通じた自立支援に
向けて一層の努力をするよう、民間セクターに呼びかけました。
GRF は、国際社会が二極化する中、真の国際的な団結と連帯を示す機会となりました。
私たちの高等弁務官であるフィリッポ・グランディは、今回の第 2 回 GRF を次のように
表現しました。「生命、自由、安全が脅かされ、その危険から逃れる人々が保護を受け、
彼らが避難生活をできるだけ早く終えられるように、私たち全員が力を合わせる一致団
結の瞬間でした。」
「人道問題には人道的な解決策はない」と、元難民高等弁務官の緒方貞子氏はよく話し
ていました。必要なのは政治的解決です。強制移動の問題を解決するためには、人道的
な観点のみならず、開発と平和構築の観点も重要です。道のりはまだ長いですが、
UNHCR は人道危機の根本的な問題の解決に向けて、皆様と共に歩み続けたいと思いま
す。
ご清聴ありがとうございました。

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