中 間 報 告 書
令和5年5月 11 日
技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議
目 次
第1 はじめに................................................................ 1
第2 前提 ................................................................... 1
第3 委員の意見 ............................................................. 1
1 技能実習制度と特定技能制度の制度趣旨について ............................ 1
(1) 検討の前提となる基本的な視点に関する有識者会議における主な意見 ......... 1
(2) 制度目的(人材育成を通じた国際貢献)と実態(国内での人材確保や人材育成)を踏
まえた制度の在り方(制度の存続や再編の可否を含む。)(技能実習) ............ 3
(3) 外国人が成長しつつ、中長期的に活躍できる制度(キャリアパス)の構築(両制度の
対象職種の在り方を含む。) .............................................. 6
(4) 受入れ見込数の設定等の在り方(特定技能制度における現行の取扱いを含む。). 8
2 人権侵害の防止その他外国人にとっても我が国にとってもプラスとなる仕組みとするた
めの方策について ....................................................... 10
(1) 転籍の在り方(技能実習) .............................................. 10
(2) 管理監督や支援体制の在り方 .......................................... 15
(3) 外国人の日本語能力の向上に向けた取組(コスト負担の在り方を含む。)....... 21
第4 検討の方向性 .......................................................... 24
1 はじめに(検討の視点)................................................... 24
2 技能実習制度と特定技能制度の制度趣旨について ........................... 24
(1) 制度目的と実態を踏まえた制度の在り方 ................................. 24
(2) 外国人が成長しつつ、中長期的に活躍できる制度(キャリアパス)の構築(両制度の
対象職種の在り方を含む。) ............................................. 25
(3) 受入れ見込数の設定等の在り方(特定技能制度における現行の取扱いを含む。) 26
3 人権侵害の防止その他外国人にとっても我が国にとってもプラスとなる仕組みとするた
めの方策について ....................................................... 26
(1) 転籍の在り方(技能実習) .............................................. 26
(2) 管理監督や支援体制の在り方 .......................................... 27
(3) 外国人の日本語能力の向上に向けた取組(コスト負担の在り方を含む。)....... 29
「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」名簿.............. 30
「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」開催実績.......... 31 1第1 はじめに
技能実習制度は、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律
(平成 28 年法律第 89 号)附則第2条、特定技能制度は、出入国管理及び難民認定法及び
法務省設置法の一部を改正する法律(平成 30 年法律第 102 号)附則第 18 条第2項の規
定による検討を行う時期にそれぞれ差し掛かったことから、政府は、外国人材の受入れ・
共生に関する関係閣僚会議(平成 30 年7月 24 日閣議口頭了解)
(以下「関係閣僚会議」
という。
)において両制度の検討を行うこととし、令和4年 11 月 22 日、関係閣僚会議の
下に、技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(以下「有識者会議」
という。
)を設置し、有識者会議において、両制度の施行状況を検証し、課題を洗い出し
た上、
外国人材を適正に受け入れる方策を検討するための議論を行うこととした。
有識者
会議は、令和4年 12 月 14 日から令和5年4月 28 日まで計7回にわたって開催され、両
制度の利用者や関係者からのヒアリングも行いつつ、各界の有識者 15 名による自由かっ
たつな議論を進めてきたところ、今後の両制度の在り方の方向性について一定の結論を
得たことから、中間報告書を取りまとめ、関係閣僚会議へ提出することとした。
第2 前提
有識者会議においては、
「目指すべき外国人との共生社会(三つのビジョン)」(外国人
との共生社会の実現のための有識者会議意見書(令和3年 11 月)
)の考え方も踏まえつ
つ、
外国人との共生社会の実現という社会のあるべき姿を念頭に置いて、
外国人の人権に
配慮する観点を踏まえつつ、両制度の在り方について検討を行った。
第3 委員の意見
1 技能実習制度と特定技能制度の制度趣旨について
(1) 検討の前提となる基本的な視点に関する有識者会議における主な意見
しろまる 農業、水産加工、建設業、縫製業といった国内の産業で深刻な人手不足が生じて
おり、
生産年齢人口も減少に向かっていることも明らかである。
技能実習生を受け
入れている産業について、
特定技能制度に吸収するという方法も含め、
正面から労
働者を雇用し、受け入れることができるようにする方策も議論すべきである。
しろまる 人権重視を大前提として、国際貢献をしっかり果たし、なおかつ、国内の人手不
足への対策として有効な手立てとなるように、
日本で学び、
働きたいと思っている
外国人、中小企業、それらを受け入れる地域、我が国と送出国にとってよりよい制
度の有り様を検討したい。 2しろまる 作業範囲や労働時間数の制限の緩和、安定的に外国人材が活躍できる環境整備
や監理団体等による受入れ、
支援体制の充実が必要である。
これらを実現すること
により、事業者と外国人材の双方にとって発展的な制度になる。
しろまる 外国人労働者を受け入れるための制度の見直しに際しては、次の4点を踏まえ
るべきである。1受け入れた際のデメリットが顕在化しないよう、また、社会の分
断を招かないような制度設計をすること。
2日本人労働者と同じ処遇、
生活者とし
ても必要な支援を受けられること。
3外国人労働者の就労ニーズは多様化しており、
在留の条件は明確化しつつ、
長期滞在の道が開かれること。
4有期契約から無期契
約への転換など外国人についてひょうそくがとれているなど、
日本の労働市場改革
とひょうそくを合わせた制度設計をすること。
しろまる これまでは日本は魅力的な働き先であったが、今後は外国人から日本が選ばれ
るよう努力すべきことを意識することが必要である。
送出国における賃金も向上し
ており、
近隣国との人材獲得競争もある。
外国人にどのように日本社会になじんで
もらえるか等の観点から議論することが必要である。
しろまる 外国人材の定住化、
子育てや介護、
年金という今後の暮らしも踏まえた視点が必
要である。定住化や今後の暮らしに関わる見通しも持った議論が必要である。
しろまる 技能実習生が暮らしやすい環境作りには自治体が果たす役割が大きい。過疎地
と都市部、様々あり、自治体の体力も違う中で努力をしているが、国と緊密に連携
して対応することが必要である。日本がしっかり実習先として選ばれていくよう、
また、
担い手不足の解決にも資するよう、
制度を見直していくことが必要である。
しろまる 今回の議論は日本の将来の姿に関わる。単なる人手不足対応ではなく長期的な
視野を持って議論する必要がある。
諸外国の事例を含めエビデンスを踏まえた政策、
EBPMを進めるべきである。
しろまる 外国人受入れ制度は相互補完関係にある。技能実習制度を見直すなら特定技能
制度や他の制度も含めて改めて考えることが必要である。
しろまる 産業全体に及ぶ人手不足や処遇改善の原資がないという構造的な問題は、産業
政策課題として、
国が解決しなければならない課題である。
外国人労働者政策と併
せて業所管省庁が産業政策等の観点からも検討・連携し、
多様なステークホルダー
と協議した上で、どのような施策を講じるかが重要である。この視点から、業所管
省庁の責任と役割の明確化を図るのは重要な課題である。
しろまる 外国人労働者と雇用企業の2者の関係だけではなく、産業政策や地域政策とい
った観点も必要である。
人手不足も業界や地域によって異なる中で、
業界団体や業
所管省庁が補助金や支援のスキームを業界ごとに作るなど、
様々なアクターが政策
を一体的に組み上げていくという視点も必要ではないか。
しろまる 生活者としての外国人労働者の支援の在り方の検討が必要である。社会保障や
言語、
教育、
公共サービスや多文化理解などの環境整備も行っていかなければなら
ず、そのコストは、事業主が応分の負担をすることを前提に、国、自治体でバラン
スを取った負担の在り方を検討することが必要ではないか。 3しろまる 技能実習生であれ特定技能外国人であれ、働く外国人当事者にとって賃金は最
大の動機であり、
今回の制度改正においても、
賃金の在り方は非常に重要な検討課
題である。
特に技能実習生については、
各都道府県の最低賃金に合わせているのが
実態であるが、
地方の中小企業が人材を確保できる環境を整えるには、
当初の賃金
を全国斉一にすべく、補塡の仕組みを作るなど、制度的な検討が必要ではないか。
しろまる 技能実習生が失踪するなどによって制度を逸脱した場合のサンクションの在り
方については、一般的に、正規の居場所を失った不法滞在の外国人は、事件や事故
の被害者にも加害者にもなりかねないため、
いきなり在留資格を失い、
不法滞在に
陥るということでよいのか、慎重な検討が必要である。
しろまる 依然として技能実習生含む外国人労働者の人権侵害の問題は後を絶たず、外国
人労働者も増え続けている。
国籍を問わず、
全ての労働者の人権が保障されること
が重要である。
労働者が安心して働き、
生活できる環境整備が喫緊の課題である。
小手先の見直しではなく、労働者保護の視点に立った政策を総合的に検討するこ
とが不可欠である。また、技能実習制度における課題のみならず、特定技能制度の
課題も検討することが必要である。
(2) 制度目的(人材育成を通じた国際貢献)と実態(国内での人材確保や人材育成)を
踏まえた制度の在り方(制度の存続や再編の可否を含む。)(技能実習)
(制度目的と実態のかい離に関する指摘)
しろまる 技能実習制度の目的と実態のかい離が様々な問題の背景になっている。制度の
存続可否も含めた議論をすべきである。
しろまる 人材育成の中には、身に付けた能力を母国に戻ってその国の開発に生かすとい
う意味での人材育成と、
本人の能力を高めて、
それが日本の企業にとっても戦力と
なるという意味での人材育成と二つの意味がある。外国人技能実習機構の帰国後
技能実習生フォローアップ調査では、回答者の 40%が帰国後に就業していて、そ
のうちの ×ばつ60%で 20%程度しか
技能実習に関係する仕事に就いていないという回答である。国際貢献だけを技能
実習制度の目的に位置付けるとするには無理がある。国内で企業の戦力になると
いう役に立ってもらうという意味での人材育成についても、企業にとって育成は
人材確保を主な目的として行うものなのであるから、特定技能制度の中に包摂し
ていくのが良いと考える。
しろまる 実態に合わせ、
技能実習制度を廃止した上で、
国内産業にとって人材確保の制度
として再出発することが必要である。
それにより、
日本のどの産業にどれくらいの
人数の受入れが必要かという議論や検証ができるようになり、特定技能制度と整
合性がとれたキャリアパスを見通すことのできる制度になる。
しろまる 技能実習制度は、
途上国の技能移転と位置付けるよりも、
労働力として正面から
認め、長く日本で生活者として暮らせる仕組みを考えるべきである。 4しろまる 技能実習制度のメリットは、
人材育成が組み込まれている点にあるが、
技能移転
だけで説明するのは無理があり、労働力として来てもらうという実質は否定し難
い。
一方、
技能移転、
国際貢献という観点と労働力としての人材確保は矛盾しない。
ただ、
労働力として正面から認めるのであれば、
技能実習生の保護や国内労働市場
への悪影響の防止を盛り込むなど技能実習法を相当見直す必要がある。
しろまる 国際労働市場において、情報の非対称性や過大な需給ギャップは発生するもの
であり、
これらを乗り越えるため、
送出機関や監理団体などが担っている機能は必
須である。
技能実習生の負担する手数料は、
こうした機能を稼働させるためのコス
トを個々の技能実習生に転嫁するものと考えられ、それ自体は韓国の雇用許可制
など、
国際労働市場で一般的に見られる現象で日本に固有のものではない。
こうし
た国際労働市場のメカニズムを踏まえるならば、
技能実習制度の単なる廃止、
技能
実習制度が担ってきた機能を単に廃止する、
及び厳格化するということは、
かえっ
て人権状況を悪化させる可能性が高い。
しろまる 国際的には、
国際貢献と労働力確保は矛盾せず、
両立するものとして改善するこ
と自体は国際的な基準から外れるものではない。実態としても当事者の意識とし
て、
技能実習生にとって稼ぐことと技能を身に付けることは二律背反ではなく、また、
受入れ企業にとってもスキル形成と労働力確保は両立し、
どちらも否定できな
い事実であることは認めざるを得ない。
しろまる 技能実習制度の制度趣旨に本国において修得が困難な技術を身に付けるという
要件があることから、
本国にはその技術を生かせる仕事がなく、
帰国後もその仕事
に就けないという事情があるため、
帰国後に同じ仕事に就いていない、
すなわち国
際貢献ではないというのは非常に日本的な議論である。
しろまる 技能実習生を労働者として受け入れている実態は否定できないが、監理団体や
実習実施者は、
実態と葛藤しつつ、
制度のスキームに沿って正当に受入れを行って
いるものが大部分を占めている。
この目的と実態のかい離は、
必ずしも監理団体や
実習実施者だけの責任ではなく、
送出機関や技能実習生本人の来日の真意、
また、
国内外に存在しているブローカーの問題もある。監理団体や実習実施者だけが悪
いと決めつけるのではなく、不適切な送出しをしている送出機関や仲介するブロ
ーカーを取り締まる方策や失踪対策などを総合的に議論していくべきである。さ
らに、
実際に国際貢献という制度趣旨を適切に果たしている事例もあるため、
そう
した部分をどう整理するかも考える必要がある。
しろまる 技能実習制度本来の目的に沿って活動している監理団体、
実習実施者も多く、また、技能修得という本来の目的のために入国した技能実習生も多いことは明確で
ある。技能実習生の受入れに人材確保の実態があることは否めないが、技術・技能
を修得するとともに、日本の良さや伝統文化を持ち帰り、普及・伝ぱしてもらうと
いう人材育成の視点からも効果的な制度である。技能実習制度と特定技能制度は
目的が異なるため、
明確に対象をすみ分け、
両制度を共存させながら監理団体と登
録支援機関、実習実施者と特定技能所属機関を生かしていくことが必要である。 5〇 特定技能制度は、国内で人材確保の努力をしてもなお労働力が不足している分
野に限り受け入れるものであることから、
制度の見直しに当たっては、
この間各業
界で取り組まれてきた人材確保、処遇改善などを踏まえることが必要である。
(人材確保機能の必要性)
しろまる 人権尊重は大前提の上、技能実習制度については、人作りによる国際貢献と、現
実的な人手不足の対応という、両方の役割を果たす制度として、また、特定技能制
度へのエントリーステップとなる制度として、何らかの形で存続させるべきであ
る。
しろまる 技能実習制度は、
人材育成と人材確保の二つの役割を果たしており、
この二つの
目的を持つ仕組みとして見直し、存続をしていくのが一つの方向である。また、人
材育成と人材確保の両方の役割を持つ技能実習制度と特定技能制度を一連の仕組
みとして制度の見直しを図っていく必要がある。
しろまる 人材育成を目的とする技能実習制度に労働者性を認めたときに、スキルの向上
をどこまで求めるのか整理する必要がある。
しろまる 技能実習制度は、
人手不足対策として活用されている一面もある一方で、
技能修
得の仕組みがしかるべき水準で適正に機能しており、人材育成を通じた国際貢献
が果たされていることも事実である。技能修得の仕組みと人手不足対応の二つの
側面を併せ持った制度としていくことが現実的である。
(人材育成機能の必要性)
しろまる 技能実習制度は人材育成という非常に重要な役割を担っている。スキル形成は、
OJTで仕事を通じて能力開発されるという部分が大きい。育成と人材確保は不
可分なものであり、分けて考えるのは難しい。監理団体、実習計画、外国人技能実
習機構といった技能実習制度の仕組みを使った育成は非常に有効なのではないか。
しろまる 技能実習制度を存続できるか議論した上で、
現状に合わないのであれば、
特定技
能制度につなげるための技能修得を図るという面を強化させた上で、どのように
制度を改善していくかを議論し、検討する必要がある。
しろまる 多くの優秀で真面目な技能実習生が、
日本語を含め技能修得に励んでおり、
技能
移転と国際理解の促進という、国際貢献に大きな役割を果たしていると認識して
いる。こうしたことを評価、検証した上で、受入れ環境の整備と人権尊重を含め待
遇改善に向けた検討をしていただきたい。
しろまる 技能実習制度には、
その制度の趣旨にのっとり、
途上国等への技能の移転を進め
つつ、
日本企業のグローバルな競争力を強化している企業単独型の事例もある。また、団体監理型においても、優良な取組をしている実習実施者もあることから、こ
のようなグッドプラクティスをいかに増やしていくかということも議論すべきで
ある。
しろまる 技能実習制度について、
諸外国から問題を指摘されているということは、
技能実
習生が雇用主に従わざるを得ず、人権侵害等に追い込まれていくという構造的な 6問題があるのではないか。開発支援と同レベルでの技能移転が本当にあるのか疑
問に感じる業種も中にはある。
(その他)
しろまる 重要な論点は、
悪質な事業者を排除しつつ、
優良な取組をする事業者をどのよう
に増やしていくかである。仮に、技能実習制度を廃止して、特定技能制度に一本化
するにしても、悪質な事業者を排除できる保証はない。
しろまる 諸外国において、
スキルレベルは余り問わず、
かつ転籍等を認めるような自由労
働市場に近い形をとることでうまくいった例は1件もない。
結局、
他の先進国では、
期限付労働移民プログラムとして、
農業労働者などごく一部の職種に絞り、
期間を
限定することで数を確保しており、
ハイスキル層などそれ以外については、
極めて
厳格な要件を課すことで事実上受け入れていない。
(3) 外国人が成長しつつ、中長期的に活躍できる制度(キャリアパス)の構築(両制度
の対象職種の在り方を含む。)(キャリアアップの必要性)
しろまる 技能実習制度と特定技能制度との接続について、外国人材がキャリア形成の道
筋を明確に描くことができるキャリアパス制度の構築は必要である。
しろまる 技能実習制度と特定技能制度の職種や分野の不整合は解消すべきである。でき
る限り幅広い業種で、
なおかつ一貫してキャリアが積めるような仕組みを考え、二つの制度の連結性を高めることがキャリアパスにつながり、人材育成にもつなが
る。
ただ、
どうすれば特定技能制度に上がっていけるかは制度として担保する必要
があり、技能と日本語のハードルを設けるべきである。
しろまる 人材育成の中には、身に付けた能力を母国に戻ってその国の開発に生かすとい
う意味での人材育成と、
本人の能力を高めて、
それが日本の企業にとっても戦力と
なるという意味での人材育成と二つの意味がある。仮に特定技能とは別の在留資
格を作って技能実習制度から置き換えていくのであれば、新たな制度は特定技能
1号や2号と連結した同じ業種、
分野で重なり合う形が望ましく、
それがキャリア
アップにつながる。
しろまる 経済界では、
不足する人手を確保したいというニーズもあるが、
日本人の雇用を
守ることを第一義的に考えるべきである。人手不足業種は特定技能制度の対象と
していくことも考えていく必要があり、
技能実習制度の職種・作業と特定技能制度
の分野をシームレスにつないでいくことが必要である。
しろまる 技能実習生が日本での滞在期間が長くなると同時にスキルが向上していくこと
は、本人にとってはもちろん有益であると同時に受け入れる企業にとっても重要
な観点である。
外国人材を、
人手不足を埋める一時的な労働者としてみるのではな
く、日本の社会の中で活躍してもらうという観点が重要である。 7しろまる 中長期的に活躍できる制度にするには、日本語や技能のレベルアップや共生の
ための環境整備が必要であるが、企業だけに責任を負わせるのは無理であるため、
日本社会全体で費用を負担するという考えも必要である。
しろまる 受入れ企業の教育体制の有無も含め、外国人労働者の人材育成をセットで考え
る必要がある。
受入れ企業による人材育成がなされなければ、
単なる労働力の確保
となり、人権上の課題が生じかねない。他方、本人にとっての技能修得等は労働者
自身の働きがいやモチベーションの向上の意味でも非常に重要であり、公的支援
も必要である。
しろまる 特定技能2号の分野が極めて少ないのは、日本の企業自体が最長 10 年で帰って
もらっていいと思っているのではないか。本当に外国人材のキャリアアップを考
えるのであれば、
特定技能2号、
あるいはそれ以降も含めたキャリアアップや人材
育成の仕組みが必要である。
しろまる 外国人材が、日本社会が期待する方向で生活・就労するようになるには、ある程
度長期で自分の人生設計をする資質を持つ人材に来てもらえるかどうかが重要な
ポイントである。その上で、日本でスキルアップするのは、受入れ企業にとっても
メリットがあり、本人にとってもインセンティブになる。
(スキル評価の仕組み)
しろまる 技能実習3号は高度な専門的能力を有する者として、日本語能力試験や技能検
定で高次の資格を取られた方には、何かしらのインセンティブを与えることも必
要である。
しろまる 仕事の経験を積むにつれて上がる技能や能力を見える化することが重要である。
また、
キャリアと処遇をつなげていく仕組み作りも重要である。
処遇という観点で
は、日本人と同等報酬に係る規定の実効性確保の方策も検討が必要である。
しろまる 過去の日系人に関する調査によれば、
数年で帰るのか、
在留資格を更新し続ける
のか方針が決まっていないので、
キャリア形成の意識がつかず、
それが子供にも引
き継がれていた。こうした経験からすると、キャリア形成の観点から、日本に行く
場合にはどのようなキャリア展開ができるのかという観点を持てるようにするこ
とが必要ではないか。
しろまる 技能実習制度と特定技能制度を連結してキャリアパスを構築する中で、賃金も
上昇していく仕組みが作れないか。10 年以上を見通して、外国人材の方が日本に
長期的に滞在し、
キャリアを積んで、
地域住民となってもらえるような仕組みが作
れるといい。
しろまる 試験ルートの特定技能1号外国人が技能実習生以下の技能ではないか、という
現場からの声がある。こうした中で特定技能外国人の方が使い捨ての労働力とし
て雇用されてしまうと、特定技能制度で一人前の労働者として受け入れるという
ことと真逆の結果になってしまうのではないかという懸念があるため、試験ルー
トと技能実習ルートはきちんと制度設計されるべきである。 8しろまる 技能実習制度は技能検定が大きな影響を及ぼし、特定技能制度は業界のニーズ
から生まれているため、
そこにずれの原因があるので、
そこをスムーズな移行のた
めに見直すことはあり得る。
しろまる 有期契約で未熟練の外国人材の場合は、
OJTだけでなく基礎的・計画的な人材
育成をする必要がある。
〇 特定技能外国人は即戦力と位置付けられているが、即戦力にもいろいろなレベ
ルがあり、
技能修得を図る人材育成的な機能や支援団体の強化等も必要になる。また、制度的な位置付けからすると特定技能制度は技能実習制度ほどには計画性は
必要ではないかもしれないが、支援機関の役割は重要である。
しろまる 技能実習制度の作業区分が細かいことにより、キャリアが広がらないという問
題意識がある。技能実習制度は、技能検定の仕組みとセットになっており、出口が
技能検定であるため、細分化された技能検定の職種区分とリンクしてしまってい
る。
もう少し柔軟に大ぐくりにして特定技能制度につながることは必要だが、
大ざ
っぱすぎてもスキルが上がっているかわからないため、どの程度のくくりにする
かは検討が必要である。
しろまる 仕事をしていれば、
何かしらのスキルは形成されるが、
どのレベルのスキルを求
めるかを明確にしておく必要がある。技能検定は、現在の制度では、出口のレベル
チェックとしては一つの選択肢であるが、多くの外国人材のスキルを測る物差し
としてきちんと機能しているかは、検証する必要があるのではないか。
しろまる 技能検定や職種区分が細かすぎるという議論があるが、技能検定は重要な外せ
ない要素である。評価が勘と経験に頼りがちなマニュアルワークの世界において、
昭和 34 年からこうした形で検定が整備されてきた趣旨を踏まえると、技能実習制
度あるいはそれに替わるトレーニングの制度においても維持していくべきである。
技能検定が現場の職種・仕事と合わないというのであれば、
それは技能検定制度自
体の問題で、技能実習制度固有のものではない。
しろまる 技能実習生が技能修得のために来日しているという実態は幾つかの調査からも
明らかであり、
特定技能外国人及び技能実習3号の賃金水準をみても、
市場賃金に
引き直した技能実習生や元技能実習生の賃金は明確な上昇を示しており、技能実
習制度のスキル形成力を示している。国際貢献やその人自身が持つ人的資本を高
めるという観点からも、
持ち帰ったスキルを母国の検定、
資格等にスムーズに接続
するための国際的な資格の相互認証システムの構築が議論されるべきである。
(4) 受入れ見込数の設定等の在り方(特定技能制度における現行の取扱いを含む。)(受入れ見込数の設定等の在り方)
しろまる ポストコロナにおける需要の急拡大やアジア地域の少子高齢化を含めた深刻な
労働力不足が見込まれる中、必要な人材を確保するために特定技能制度の活用は
急がれる。
深刻な労働力不足に直面しているコンビニ、
鉄鋼などのインフラ関係業 9種も、対象分野に追加すべきである。特定技能2号への移行についても、選定基準
や選定プロセスの透明化を確保した上で、
分野を拡大すべきである。
特定技能2号
を活用することにより、
企業にとって、
幹部登用等を見据えた中長期的な視点から
人材の育成ができる。
しろまる マクロ経済でみると人手不足はこれからますます激しくなり、生産性の向上が
なければ、これから 10 年の間に 100 万人を超えるような外国人材を入れなければ
日本経済は回らないというぐらい深刻である。一方、大きな情勢変化があると、企
業のニーズは大きく変わる。
長期的な目標を立てた上で情勢は変化するので、
例え
ば、毎年それが妥当なのかを見直す必要がある。また、業界の事情だけで決めない
よう、第三者機関を入れて見直しが正しいかをチェックする機能がある方がいい。
しろまる 労働力の需給関係や年齢構成、人口動態の分析が必要である。また、地域におけ
る共生のための体制設備や受入れ準備がどの程度できているかも大事な考慮要素
である。政策形成の透明性という観点からも労使双方、有識者、自治体、NGOが
入った恒常的な第三者機関が必要ではないか。
しろまる 受入れ見込数の決定や分野追加は、エビデンスに基づく政策立案が肝要である。
データに基づいた受入れ見込数の設定が行えるように制度の見直しが必要であり、
様々なステークホルダーの予見可能性が確保されること、
また、
状況に応じて制度
の見直しができるということが欠かせない。
しろまる 現行の特定技能制度における人手不足の判断基準や受入れ人数の設定は政府内
での検討のみにより、業界事情を踏まえて決まっている場合もあるのではないか。
労働に関わるルールであることから、労使や外国人支援団体などの多様なステー
クホルダーが参画する機関を設け、そこで開かれた議論を通じて決定する仕組み
にする必要がある。
しろまる それぞれの分野で全国トータルの受入れ数を設けるのではなく、地域ごとに不
足する人材に応じた受入れ数を、
その地域の自治体と業界等が話し合った上で、それに必要な自治体としてのサポートを行う仕組みを作っていくという取組も必要
ではないか。
しろまる 仮に技能実習制度と特定技能制度が連結し、技能実習制度にもある程度労働者
性を認めることとなった場合、
後継的な仕組みにおいて、
基本とすべきは各企業の
受入れ能力である。
したがって、
現行の技能実習制度における一社当たりの常用職
員数に応じて設定される割合がまずベースにあるべきではないか。優良な受入れ
企業については、
その枠を広げていき、
その逆もしかりとする仕組みがベースであ
って、その結果の積上げが分野ごとの人数枠になるのではないか。
しろまる 経済見通しのような、より実際のアウトルックに近いことを示して関係者の相
場感を作っていく方向に注力した方が、
機械的にならなくていいと考える。
労働市
場テストは人口が増えていた頃の遺物であり、
今後の人口減を考えれば、
受入れ上
限はワークしないのではないか。 10(特定技能制度の在り方)
しろまる 特定技能制度は正面から外国人労働者を入れている制度であり、これを発展的
に手直ししていくことが一つの方向である。制度開始からまだ数年がたったばか
りなので、
技能実習制度で実施された方策で使えるものも取り込みながら、
改善策
を議論すべきである。課題としては、登録支援機関の質の担保、送出機関の手数料
徴収の規制策、家族帯同などが考えられる。
しろまる 特定技能1号については、在留期間の通算に含めない、家族帯同を認めない、い
わゆる移民政策ではないとした制度当初の考え方は尊重して、まずは日本人の雇
用を守りながらも今後の在り方を考えていくべきである。
しろまる 労働者人口の減少が続いていく中で、
中小企業にとって、
外国人材の受入れは必
須である。
人権尊重は大前提の上、
特定技能制度の分野の拡大を検討すべきである。
2 人権侵害の防止その他外国人にとっても我が国にとってもプラスとなる仕組みとす
るための方策について
(1) 転籍の在り方(技能実習)
(転籍制度の必要性)
しろまる 技能実習制度は、
技能修得等を通じた人材育成を制度目的としているため、
実習
実施計画に従い、実習実施者である一つの雇用主の下で実習を続けることが必須
の条件であり、転籍を原則として認めていない。このために、雇用主が無理なこと
を言っても技能実習生は従わざるを得ず、それが技能実習生への様々な人権侵害
を発生させる基礎的な背景・原因となっている。
しろまる 日本国内の人材確保が目的であるとすれば、
他の在留資格と同様に、
原則として
転職を禁止する理由はない。
転籍制限があることにより、
外国人材を雇用主に大き
く従属させる可能性があり、彼らが権利を行使することを間接に妨げているとい
うILOの指摘は重いものである。
暴行や虐待、
秘密裏の出産という普通の雇用形
態では考えられない人権侵害を防止するためには、転籍制限をなくすことが不可
欠である。
しろまる 国内の人材確保が受入れ目的となっているとすると、技能修得等は就労の結果
であってそれ自体が目的ではないことから、転籍を認めない理由はない。
しろまる 技能実習生であるから転籍を認めないという制度目的にとらわれた在り方は、
実態としても正当化されない。転籍できないことが雇用主側に都合良く利用され
ているのではないか。
また、
人権の遵守が国際的にも非常に厳しく要求されている
ことから、国際的な批判に耐えられる制度設計をすべきである。
しろまる 技能実習制度の枠組みを残した上で、
特定技能制度との連結を強化し、
人権尊重
の観点から転籍を認める形としてはどうか。
しろまる より良い労働条件を求めて転職していくのは、
労働者の基本的な権利である。良 11
い労働条件のために転職していくことはやむを得ず、それにより、むしろ、その業
界自体が良くなっていくのではないか。
しろまる 技能実習生の失踪率が 1.8%、
転職が認められている特定技能外国人では行方不
明者の割合が 0.14%であり、10 倍以上の差があること等からみて、技能実習生に
例外的に転籍を認める制度は十分に機能していないのではないか。
しろまる 日本人であれ外国人であれ、1年や2年という短期間で会社から離れてしまう
ことは好ましくないが、
技能実習制度の転籍不可という仕組みは、
国内の労働法制
や国際的な批判との見合いの中で耐えられないであろう。
ただし、
具体的にどの点
が国際的な批判に耐えられないのかを見定めていく必要があり、
その結果、
ある程
度転籍を認めざるを得ない制度になるのであれば、企業側も受け入れざるを得な
いのではないか。
しろまる 国際機関や諸外国がいろいろな分野で人権の観点から評価するのは制度が全て
であるため、
何年間も転籍が認められないという制度そのものが問題視される。また、
転籍した場合に本人が在留資格を失って不法滞在となれば、
社会にとっても非
常に不安定な存在となるという問題もある。
しろまる 労働力としての位置付けを正面から認めるのであれば、転職制限は再考が必要
である。
その際には、
民法 628 条など有期雇用に関する契約上の取扱いを踏まえて
転職制限の意味を議論することが必要である。
しろまる 現行の労働法制上、
有期労働契約が3年以内で、
1年間はやむを得ない事由があ
るときに限り契約が終了できることとなっており、期間の定めを設けたとしても、
1年たてば労働者は自由に退職できるということになっている。この制約以上に、
入管法上で、外国人材の転籍を制限する必要はないのではないか。
しろまる 転籍の仕組みとして、雇用主の同意や協議が必要とすると機能しなくなるので、
基本的にはそれぞれの契約当事者の自由意思でできる仕組みとすべきである。
しろまる 転籍を認める制度とする場合、
初期費用も含め、
それまで掛かったコストについ
て、補塡等のルールをどう定めていくか、議論を深めたい。
しろまる 育てた人材が地方から大都市圏に大量に移動してしまうことを懸念する意見も
あるが、転職が認められている特定技能外国人が大都市圏に大量に流入している
データは今のところ見当たらない。むしろ、受け入れた企業が、給与水準を含め、
キャリアアップをどのように示すのかが非常に重要な要素であり、自治体が外国
人と共生するための環境整備をどれだけ行って、地域の魅力を引き出しているか
も関係している。
このため、
在留資格と結びつけて法的に転籍を拘束する必要性は
ない。
しろまる 技能修得等という観点からみて、広い意味での日本社会の就業規律や技術の維
持、
改善への意識などは、
一つの職場にいなければ身に付かないというものではな
い。
その業種特有の技能についても、
現行の技能実習制度のように3年間同じ職場
でなければ身に付けられないものが今の技能実習制度の職種にあるとは考えられ
ない。 12(一定の制約の必要性)
しろまる 技能修得の観点から考えれば、
人権の尊重を最大限に担保した上で、
技能実習制
度を、外国人材にとっても事業者にとっても最初のエントリーステップと位置付
け、一定期間、例えば、技能実習1号及び2号の3年程度は同一事業所で一つの技
術をしっかり身に付け、
なおかつ、
日本で生活する上で必要な日本語も身に付けて
もらう期間として、
よほどのトラブルがない限り、
原則転籍不可という制度設計で
見直し、存続することが重要ではないか。
しろまる 日本人を雇用した場合と同様に、
技能修得には一定の期間が必要であり、
受入れ
費用負担、事業計画等の観点からもほとんどの事業所が技能実習生の一定期間の
在籍を望んでいる。また、人材確保の観点からも、技能実習生には、当該事業所で
の一定の就労期間を確保することが必要ではないか。
しろまる 技能実習制度に一定の技能修得を図るための人材育成機能を持たせるべきであ
り、
完全に転籍を自由に認めるのは難しい。
技能実習生ごとに技能実習計画が作成、
認定されている仕組みの中で自由に転籍を認めれば、人材育成機能を軽減させて
しまう。
しろまる 技能実習生の人権保護を一層強化するため、
一定の要件の下で、
これまで以上に
柔軟に転籍を認めてもよい。
一方で、
技能実習生のキャリア形成を阻害するような
転籍は認めるべきではない。短期間で転籍を繰り返すのはキャリア形成に支障が
あるので、
例えば1年に1度など回数制限を設けることも必要である。
転籍制限を
なくすと、真面目に技能移転に取り組んでいる実習実施者が結果的に受入れを取
りやめざるを得なくなることを懸念している。
良質な実習実施者が退出し、
悪質な
実習実施者が残るような事態になりかねない。
これを防ぐためにも、
実習実施者に
とっても技能実習生に技能移転を行うインセンティブが保たれる制度設計が必要
である。
しろまる 人権の視点から考えたとき、完全に移動できないのは仕組みとして問題がある
が、
スキル形成という視点では、
一つの職場で一定期間習熟を図るという視点もあ
るため、
人権の課題とバランスを取った検討が必要である。
劣悪な労働環境におい
ては転籍可能という実習先変更支援の枠組みを緩やかにして、例えば労働者自身
がスキルアップを目指す場合にも広げることも考えられる。
しろまる 技能を修得する観点からは、一つの実習実施機関で3年から5年間実習するこ
とが望ましいが、
人権の尊重を前提として、
同じ職種内での転籍は認めてはどうか。
しろまる 転職と転籍は分けて考えていい。
農業をやるために来たのであれば、
農業をやっ
てほしい。例えば、在留資格が「技能」で調理人の方がIT企業に就職を希望する
場合には、在留資格の変更が必要であり、
「技能」のままでは分野を超えた転職は
できない。
分野を超えた転職をするためには、
1回出直すというのは十分合理的な
のではないか。
しろまる OECD、ILOのヒアリングにおいても転籍制限イコール即人権侵害ではな
いと明確に言っている。
転籍制限の在り方は、
自国民の働く権利と非常に密接に関 13わっている。転籍を無制限に認めると、それは別種の権利侵害を生む。
しろまる 職域を超えた転籍は、
給料が高い職種に人材が流出し、
人手不足の産業がより一
層人手不足に陥ることとなって産業間格差が生じる懸念がある。
しろまる 転籍については、
地方への影響も十分に考慮して議論すべきである。
仮に無条件
に転籍の自由が認められることになれば、地方の実習実施者が外国人材の入国の
足掛かりとなってしまう。技能実習生等の意思も尊重しつつ、原則1回に限り、同
一職種の転籍を認めることが考えられる。
また、
転籍前後での企業間の費用負担の
在り方についても検討が必要である。
しろまる 職種や業種によっては、
技能を修得するのに半年か1年あれば十分であるが、3年間転籍ができないとなると、
1年程度の技能修得後も2年は最低賃金で働く、かつ、転籍ができないことで労働移動を防いでいるので人権侵害といわれる危険性
がある。
職種や業種を踏まえ、
訓練に必要な期間を一律としないような議論をする
必要がある。
しろまる 受入れに掛かるイニシャルコストが受け入れる企業側にとって負担であり、仮
に転籍が自由になった場合に、イニシャルコストの問題が現状のままでは企業側
は受け入れ難い。この問題をどのように解消できるか、制度の中で、あるいは制度
とは別に何かしらの支援の仕組みで負担感を抑えられるのかを考えていく必要が
ある。
しろまる 実習実施者による一方的な費用負担に対する不公平感が惹起される点や、転籍
によって生じた欠員に対する補充の問題、転籍を希望する技能実習生の新たな受
入れ先が見つからないといったトラブルや事態を未然に防ぐためのルール作りが
必要である。
しろまる 自由意思で転籍を認める場合、
入国の際の旅費等の費用負担について、
次に受け
入れた事業者が支払うこと等も検討が必要である。
また、
次の実習実施者が決まる
までの間、
外国人技能実習機構が行っているシェルターの確保、
職業紹介事業者や
仲介ブローカー等がビジネスとして絡んでいないかの監視も必要である。
しろまる 1年ごとの技能実習生の意向確認や、現行制度の実習継続困難時における実習
先変更支援の改編、
拡充を行い、
外国人技能実習機構が転籍先をあっせんする等、
積極的に関与する仕組みを構築すべきである。
また、
営利目的の仲介業者が参入で
きない仕組みも必要である。
しろまる 1、2年の離職を回避するため、企業の努力や自治体の支援、国としての支援制
度については別途考えていく必要がある。
(転籍の制度設計に当たり検討すべき事項)
しろまる 各国の制度を比較すると、
転職可とされつつ、
事実上頻繁に転職しにくいものが
多い。外形的な役割だけでなく、実質的な部分を踏まえる必要がある。日本でも現
行制度で転籍が認められている部分で、
転籍がどの程度行われているのか、
実態を
踏まえ、事実認定を丁寧にしていくことが重要である。 14しろまる スキルアップのためには、
余り頻繁な転籍は望ましくなく、
訓練する側も途中で
変わるリスクがある中では訓練に及び腰になってしまう。
一方で、
転籍制限を課す
ことは個人に機会費用の負担をさせていることにもなってしまう。これらを解決
するには、
中長期的に活躍できるような訓練投資をした企業が得する仕組みや、外国人本人も優良な成績を上げたら優遇されるようなインセンティブを与えること
が重要である。
しろまる 労働条件がいいところに移るのはある種の労働市場のメカニズムであるので、
働き続けることにつき様々なインセンティブを企業側で作っていく工夫が必要で
ある。
しろまる 失踪の防止や救済の観点から、入管法上の在留許可に関する条件についてもき
ちんと周知することや、契約や実習計画について本人に示してサインをもらうな
どの透明化を図ることが必要である。
しろまる 転籍の条件が厳しすぎたり、監理団体が転籍に対応できているかという問題が
あるので、転籍を速やかに行えるようにNPO法人などの支援機関を頼るなどの
様々な方策を検討する必要がある。
しろまる 転籍を可能な制度としたとしても、そもそもマッチングがうまくいっているか、
住居が見つけられるのか、転籍先が見つけられず在留資格を喪失したら日本にい
られなくなるなど、
他の在留資格にも共通する課題もあり、
幅広に検討する必要が
ある。
また、
技能実習制度における実習先変更の実績や特定技能制度における転職
の実績を把握し検討することが必要である。
しろまる 在留資格の審査の場面では、やむを得ない事由があった場合のみ転籍を認めて
いることにより、
立証責任が技能実習生本人に転嫁されてしまい、
実習先の法令違
反が立証できなければ救えない状況になってしまっている。実態としてきちんと
救えるような制度にしていく必要がある。
しろまる 転籍や転職については、
現場で技能実習生が置かれている実態を踏まえて、
国際
基準からは何が適切か不適切かを明らかにした上で、
人権配慮の観点から、
絶対的
な基準に照らして判断すべきである。
また、
技能実習生が声を上げられる状況にあ
るかといった観点から、相談制度の運用実態を検証すべきである。
しろまる 人権は普遍的概念と言われるが、どこかの国際機関が確定的に決定できるもの
ではない。
国際的な批判を十分に認識する必要はあるが、
日本における人権状況が
どうあるべきかは、
日本人自身が主体的に決めることである。
国際機関が各国の制
度や取組を評価するに当たっては、
国家主権を尊重する観点から、
その評価内容が
慎重な表現になるのは当然のことであり、それをもって日本国内の人権状況が全
て問題なしとなるわけではない。今後の政策決定において在留外国人の人権をど
う確保するかは、日本の労働法制の適用も含めて我が国が主体的に決めるべきで
ある。 15(2) 管理監督や支援体制の在り方
ア 監理団体や登録支援機関の監理及び支援の在り方(存続の可否を含む。)(監理団体の在り方)
しろまる 現行の技能実習制度の基本的な枠組みというのは引き継ぐ形で、優良な監理
団体による日本語を含む技能修得への支援強化、特に地方での特定技能外国人
を含む住居環境、住居確保などの生活面における支援などが必要である。
しろまる 技能実習制度の監理団体の中には、体制や制度に関するノウハウの面で疑念
を抱かせる団体があるのも事実である。監理団体の今後の在り方の検討が必要
である。
しろまる 規模の大きな監理団体にはスケールメリットがあり、
余り問題は起こらず、多くの企業を見ているからこそ転籍支援もできるのではないか。
しろまる 技能実習生を転籍させずに同一の企業に置くことで、その実習先から監理費
として監理団体にお金が入り、
そこからまた送出機関に費用が流れるため、
技能
実習生をそこに置いておくことが送出機関と監理団体のメリットとなる。問題
が生じた場合、
帰国までは監理団体の責任となっているため、
監理団体は自分た
ちが不利益を被らないよう、
帰国させるということが生じている。
したがって、
技能実習生と企業、
監理団体のお金のつながりを切り離し、
国に一旦支払うよう
な仕組みがあるといいのではないか。
しろまる 外国人材に寄り添って適切に支援することが監理団体には求められているが、
監理団体が実習実施者の意見を優先し、
擁護する事案もあると聞いている。
また、
監理団体によっては、
特別に職業紹介が認められているにもかかわらず、
1法人
しか実習監理を行っていないところもあるため、
例えば、
労働法等の違反を起こ
した監理団体等は今後一切の受入れを認めない、一つしか実習実施者を見込ん
でいないところは認めないなど、監理団体の適格性はより厳格化する必要があ
る。
しろまる 監理団体が営利性を持っていないことで、より良い賃金を出す事業者に送り
出すインセンティブがなく、
むしろ、
傘下の受入れ事業者のうち賃金が一番低い
ところに合わせて賃金を定めるよう企業に促してしまうケースがあり、このこ
とが、
技能実習1号、
2号が最低賃金に張り付いている理由の一つとなっている
ので、
営利性を持つ団体をあらかじめ排除するのではなく、
適切なインセンティ
ブ構造の下、制度を設計してはどうか。
しろまる 受入れ事業所が監理団体に支払う費用について、透明性を確保すること等に
より、
受入れ事業所の費用負担の軽減を図るとともに、
監理団体の事業活動を評
価し、公表することによって受入れ事業所が監理団体を選ぶ幅を広げることが
必要である。
しろまる 技能実習生等の日本語や生活習慣の理解不足に関し、現場の受入れ企業によ
るサポートは万全と言えない事情にあり、外国人はネット上で情報収集するこ 16とが多いことから、
監理団体による支援の充実とその評価・公表が必要かつ有益
である。
しろまる 監理団体が送出機関を通じて呼び寄せる仕組みによって、かえって高額のコ
ストが掛かっていることから、呼寄せの方法としては政府の機関同士があっせ
んするという方法を中心として、必要であれば民間の職業紹介会社が呼寄せ会
社の費用負担であっせんするという方法に切り替えていくことが考えられる。
そうなれば、監理団体は、呼寄せに関わる機関ではなく、入国した外国人材の保
護のために活動する、登録支援機関と同様の役割に限定していくことになる。
しろまる 労働者からすると、支援が監理団体と自治体とで分かれているのはわかりに
くいため、
監理団体が一元的に外国人の労働に関して責任を持ち、
自治体につな
いでいく機能を持つことで、監理団体の責任を明確にしておく必要がある。
(登録支援機関の在り方)
〇 登録支援機関は許可制でなく、監理団体に比べ指導監督を受ける機会が少な
いと思われるし、
登録支援機関の数が増えているが、
外国人労働者の仕事から日
常生活までの全ての支援メニューをワンストップで行える機関は少ない。今は
まだ技能実習ルートが多く、
問題が顕在化していないが、
いずれトラブルが起き
ることが容易に想定される。総合的な支援や行政がもっと関与できる非営利性
の組織に改めていく等の見直しが必要である。
しろまる 登録支援機関について、支援機関として質が担保されているかは非常に疑問
がある。
特に試験ルートで来日した特定技能外国人について、
技能実習生と同様
の支援が不可欠であり、
適切に支援を行う適格性の観点から、
例えば許可制とす
る、第三者による審査プロセスを設けるなど質を担保する施策が必要である。
しろまる 登録支援機関の手数料には上限がないが、
過大な要求を避けるためにも、
ある
程度制約を設けることが必要である。また、登録支援機関は、個人、法人、営利
団体、
非営利団体を問わず登録することができるが、
許可制の監理団体と比べる
と行政の検査や報告の機会が少ないので、登録支援機関も協同組合等の非営利
組織で許可制とし、許可要件に職業紹介事業許可を取得していることを入れる
べきではないか。
(両者共通)
しろまる 本当に熱心な監理団体や登録支援機関の人たちが、そこまでやるかというく
らいに技能実習生や特定技能外国人の方を支援していることもあれば、一方で、
どこからも支援されないまま失踪に至ってしまって、失踪した先で不法滞在か
つ違法就労という状態になってしまい、その先で労災に遭ってしまうという深
刻なケースも見られる。
しろまる 生活支援や現場で支援する人が疲弊してきており、
日本全体として、
この先日
本で一緒に暮らしていく人たちをどう受け入れるかを考えていく必要がある。
しろまる 社会の中で孤立したり、
居場所が不安定な人たちには、
犯罪の加害者にも被害 17者にもなり得る可能性がある。
治安対策の基本は、
そのような人をどのように社
会の中に包摂していくか。外国人は、日本で生活し働く上で、日本人よりも大き
なハンデを負っている。直接的で実効性のあるサポートを提供できる仕組みを
構築し、普通の来日外国人が犯罪に手を染めなくても済むような環境整備が重
要である。
しろまる 技能実習制度と特定技能制度を一つの連続した仕組みとするのであれば、登
録支援機関と監理団体を一本化するような方向で検討するのは、非常に有効な
方法ではないか。
しろまる 監理団体が登録支援機関にもなっている割合は 54.1%であり、事業協同組合
が監理団体のノウハウを使いながら登録支援機関を行っている現状がある。登
録支援機関が監理団体のような事業をするのは、監理団体の許可も取っている
ところはできても、それ以外のところは難しいのではないか。
しろまる 現行の登録支援機関による支援の仕組み、
公的機関による保護の仕組み、
受入
れ企業が拠出した半ば公的な団体による支援の仕組み、この三つの並列した仕
組みを有効な方法に整理統合できないか。
しろまる 監理団体や登録支援機関は、受入れ企業から費用を受け取って運営している
ため、
雇用主から独立した立場で保護しにくい関係にある。
受入れ企業の負担は
必要であるとしても、国や公的機関へ拠出するのが有効な方法ではないか。
しろまる 監理団体の適正化を図ることはもちろん、独立性をより強化する必要がある。
また、登録支援機関にも適正化のための行政のコントロールが及んだ方がよい
のではないか。
しろまる 規模が小さく、独自に組合の協同経済事業を実施していない財政収益構造の
不安定な監理団体や労働法制の面から違法な取扱いを行った監理団体、支援 10
項目を行えない登録支援機関などは排除していく方向で考えるべきである。
しろまる 優良な監理団体や登録支援機関に絞ることは大事である。実習実施者によっ
て技能実習生のサポートに温度差があり、それを監理団体が水準を平準化した
り、
上げている面があるため、
監理団体が外国人材をサポートできる仕組みは必
要である。しかしながら負担感が強いので、公的な支援があるのが望ましい。
イ 国の関与や外国人技能実習機構の在り方(存続の可否を含む。)(外国人技能実習機構の在り方)
しろまる 技能実習制度を一元的に監督している機関として、外国人技能実習機構があ
るが、創設時の想定よりも監理団体、実習実施者ともに増えており、大きく制度
として拡大をしている。
このことも踏まえ、
機構の強化も含めた見直しが必要で
ある。
しろまる 外国人技能実習機構には有効な役割があるため、技能実習制度から別の制度
に切り替えていく場合であっても、
存続していくことは考えられる。
その場合、 18労働基準監督署との役割分担をどうするかが論点となる。
しろまる 外国人技能実習機構には、悪質な実習実施者や受入れ機関に対する取締りの
役割もあることから、存続すべきである。なお、機構に対する書類作成や報告の
手続を簡素化できるとよい。
しろまる 外国人技能実習機構の役割のうち、技能実習計画の認定に多大な労力を割い
ていると思うが、それよりは技能実習生の保護に支援の重点を移行していくの
がよい。
しろまる 外国人技能実習機構の相談業務について、
技能実習制度にかかわらず、
特定技
能制度や他の就労系の在留資格に拡大した保護機関とするのも一つの方向性と
してあり得るのではないか。また、管理監督を行うのであれば、機構の規模や権
限について見直すべきである。
さらに、
登録支援機関や分野別の機構の仕組みや
役割分担、整理統合を考えることが必要である。
しろまる 外国人技能実習機構という国の責任による一元的な管理体制が取られること
は意義があり、
不適切な監理団体はとう汰していくという観点からも、
機構の体
制強化は不可欠である。機構に蓄積された技能実習生のトラブル対応や生活支
援に関するノウハウは活用すべきであり、
国の一元的な監督機関として、
機構が
特定技能外国人への支援を今後実施していくことも有益である。
ただし、
予算確
保も含め、機構の体制整備を図ることが必要である。
しろまる 今後、
登録支援機関でいろいろな問題が出てきたときに、
登録支援機関の実効
性を担保する国の監督機関が必要という声が出てくるだろう。外国人技能実習
機構の問題は、特定技能制度についてもどうするかということも視野に入れて
議論する必要がある。
しろまる 外国人技能実習機構では、
多様な相談を受けているが、
相談の結果を支援機関
の指導に生かしていくべきではないか。本来は支援機関が対応すべきものもあ
り、外国人技能実習機構における相談の位置付けを改めて整理しておく必要が
ある。
(行政・業界の関与の在り方)
しろまる 地方公共団体の関与は非常に重要であり、外国人材を雇用する企業が地域単
位で集まってサポートし合ったり、自治体が情報共有のプラットフォームを作
るなど、多面的な支援を地域単位で進めていく必要がある。
しろまる 行政機関がもっと関与し、外国人材と共生を目指す地域のコミュニティ作り
を目指す組織を作り、支援していくこともこれからは重要である。
しろまる 職業紹介におけるハローワークの役割を強化できないか。ハローワークの活
用は、
悪質なブローカーの排除において、
国がきちんと対応していくという意味
で重要である。
しろまる 労働行政と入管行政の連携を強めるべきである。
労働基準監督署は、
技能実習
生を受け入れている企業に重点的に監督に入っており、実態の情報を把握しや 19すいので、連携することは有益である。また、ハローワークは、外国人雇用状況
の届出を通じた雇用状況や、その地域の人手不足企業で外国人材をどれくらい
募集しているかを把握しているので、
地域の行政と労働局等とが連携し、
労働市
場をうまく機能させていくことはあり得る。
しろまる 外国人材の住宅環境整備に対する国の支援を含め、
業所管省庁は、
管理監督で
はなく、
企業の適正な受入れを後押しする役割として、
積極的に関与することが
求められる。
〇 特定技能制度は多くの省庁にまたがるため、連絡調整をする一元的な機関を
作る又は外国人技能実習機構にその役割を与える等の検討も必要である。また、
外国人支援センターとの連携の仕方も検討が必要である。
ウ 国際労働市場の実態及びメカニズムを踏まえた送出機関や送出しの在り方(入
国前の借金の負担軽減策、MOCの更なる強化方策を含む。)しろまる 求人側と求職者が遠く離れた国際労働市場において、送出機関などの仲介機
能及びそれを稼働させるためのコストというのは必須である。技能実習制度に
おける送出機関や監理団体は、こうした仲介機能やマッチング機能を果たして
きたと捉えることができる。
しろまる 韓国の雇用許可制の例をみると、
政府機関同士であっても、
外国人が相当の手
数料をブローカーに支払っているという調査結果もあることから、政府機関同
士でのあっせんにすれば問題が解決するわけではなく、相手国の実態をよく見
極める必要がある。
しろまる 政府機関同士でのあっせんは、
一つの理想形として挙げられるが、
韓国政府の
調査でも政府機関にたどり着く前に、技能実習生とほぼ同額の手数料を徴収さ
れているという結果があるなど、
ブローカーが排除されるわけではなく、
政府の
財政的支出も膨大である。
日本に来る外国人材が更に増えることを考えると、民間事業者にライセンスを与えてそれを規制し、インセンティブを与えながらコ
ントロールしていく方式が考え得る。
しろまる 国際労働移動に関しては、
市場原理に任せると失敗する歴史的事実があり、送出国はそれを非常に嫌う。
最新の調査結果からも海外の送出機関からは、
技能実
習制度はコンプライアンスや人権保護の観点に関する評価は高い一方で、特定
技能制度は外国人労働者の権利保護体制に懸念が示されている。
しろまる 人権という観点において、
国際労働市場で最も評価されるのは、
スキルレベル
の向上である。
送出国政府を始めとして、
送り出す労働者のスキルレベルを上げ
ることが、
国際労働市場での評価に最も寄与するというエビデンスがある。
こう
したスキル形成及び国際的なスキルポータビリティーも視野に入れた改革が必
要である。
しろまる 国際労働移動の世界では、いい事業者が経済的にインセンティブを与えられ 20て、得をする仕組みを作るのが重要と言われている。この観点からすると、個人
が直接選べるシステムも重要であるが、
同時に、
日本の受入れ側と送出機関のB
toBのマッチングのプラットフォームがないことも非常に大きな問題である。
JETROなどを活用して、現地の送出機関と日本の受入れ側のマッチングの
場の提供や優良なところを選べる仕組みを作ることも非常に重要である。
しろまる GtoGによる政府同士による取扱いが、一つの方策になるという意見もある
が、そのためには膨大な費用が掛かるのではないか。本来、国や地方公共団体の
行政がやらなくてはならないことを、予算や人的な制約から行政だけではでき
ないことから、監理団体等の民間の支援事業者が、社会性、事業性、革新性を備
えた「ソーシャルビジネス」的な性格でやっているのであり、合理的・効率的な
仕組みではないか。今後、それらを管理しやすい仕組みを充実させ、監視をもっ
と効かせることが現実的に有効な仕組みと考えられる。
しろまる 送出機関の手数料支払の問題については、ILOの第 181 号条約を送出国も
批准することや、送出国の国内法で同様の内容を規定することが一つの解決策
である。しかし、それがすぐに全面的に実現しないのであれば、送出機関を経由
して監理団体にあっせんする方法だけでなく、特定技能制度のように雇用主と
直接雇用契約を結ぶ方法や民間職業紹介機関を通じて雇用契約を結ぶ等、幾つ
かの方法があり得ることとすることで、最も合理的で費用が安くなる方法にお
のずから収れんしていくのではないか。
しろまる 仲介者への費用支払の問題については、送出機関の窓口にたどり着くまでの
情報が不足していないか、送出機関の窓口が全ての人に公平に開かれているの
かといった点を検証して対策を考えるべきである。
また、
悪質な送出機関や高額
な手数料徴収の問題が、
日本からの通報にもかかわらず是正されない場合、
二国
間の合意として、当該国からの受入れ自体も停止するというような強い選択を
できるようにすることも検討すべきではないか。
しろまる 国内の募集方法について、民間の職業紹介機関やハローワークが十分な機能
を果たすことで、不適正な仲介業者が入り込めないような運用にすべきである。
しろまる 新しい制度では、
渡航前費用の適正化、
借金に依存させない仕組みを作ること
が大事である。費用の透明化に当たり、送出機関、実習先に関する情報や実習先
における就労状況、賃金の支払状況等を外国人技能実習機構等が一元的に把握
できるようなデータベースを構築するのも一つの方策ではないか。これにより
送出機関に対して過大な借金を抱えているようなケースを早期発見して把握す
ることが可能となり、是正措置を講じることも期待できる。
しろまる 優良な受入れ企業にインセンティブが働くような仕組みや優良な送出機関を
選べることが非常に重要である。
例えば、
送出機関ごとの人数やその後の定着実
績等を含めたレーティングのようなもの、あるいは悪質な送出機関やブローカ
ーの公表により、受入れ企業又は監理団体が適切な送出機関を選べる仕組みを
作ることが非常に大事である。 21しろまる 特定技能制度においては、送出機関を関与させずに受入れをすると一時帰国
等のトラブルが多く発生しているため、責任を持って送り出すことができる送
出機関は必要である。母国との連絡やトラブル対応のために一定の費用を送出
機関に支払い、責任を持たせた方がよいのではないか。
しろまる JICA、JETROは一生懸命やっているが、送出機関の取締り、見分け等
については、
所掌外なのではないか。
もう少し踏み込めるような機関が必要なの
ではないか。
しろまる 主要な送出国の一つである中国について、
送出機関の基準を明確化し、
適正か
つ円滑な受入れのためにも早期に二国間取決めや協力覚書の締結をすべきであ
る。
しろまる 今般の制度改革において、
送出しの段階をいかに適正に管理・運営できるよう
にするかは極めて重要な点であり、そのため、送出国に対して、送出しの仕組み
作りや送出機関の規制の在り方に係るキャパシティビルディング支援を、二国
間協定の作成又は改定とセットで提案・提供することが考えられる。
しろまる 送出機関に対して、
労働者が一定額の支払をすることは必要だと思うが、
現行
の二国間協定に、
入国前の更なる借金の軽減策を盛り込むべきである。
例えば二
国間協定で各国の事情に合わせた手数料の上限を設定し、法外な手数料支払と
借金を防止する措置を盛り込むのがいいと考えられる。
しろまる 不適正な送出機関を排除する方策として、例えばILO第 181 号条約の批准
を要件にすることや、悪質な送出機関からは一切受入れを認めない等新規の受
入れの停止措置を厳格化すること等についても検討すべきである。
しろまる 入国前の借金は非常に大きな課題であり、
相手国に対し、
継続的な対応と協議
を通じて、
悪質な送出機関を排除するよう求めるとともに、
公正かつ適正な送出
機関を選択できるよう見える化することも重要である。
しろまる 送出機関には日本の行政権限が及ばないことから、国家間合意によらざるを
得ない面があり、優良な送出機関を選択できる仕組みを確保することも重要で
ある。
しかし、
国の取組だけでは実現が難しい場合もあり得ることから、
例えば、
ILOが政府と労使団体とともに発展途上国の企業の労働法令の遵守状況をチ
ェックして公表している取組もあることから、
政府以外の機関も巻き込んで、優良な送出機関を見える化できるような仕組みを作ることが考えられる。
(3) 外国人の日本語能力の向上に向けた取組(コスト負担の在り方を含む。)(来日前の日本語能力の担保方策)
しろまる 少なくとも外国人材が日本に来た際に、
自分で病院や役所に行けるように、
日本
語をしっかり学ぶことは求めていくべきである。技能だけでなく日本語能力も一
定のレベルを設けて、自立した生活を送り働くことができる外国人材を受け入れ
る仕組みにしていくことで、結果的に監理団体や支援団体の負担を少しでも減ら 22すことにつながる。
しろまる 入国前に、
一定の会話が通じ、
自分自身で要求ができる程度の日本語能力がある
ことは必須である。技能実習制度については、入国時には、日本語能力試験のN5
以上、
技能実習2号修了時には、
技能検定とともに日本語能力試験のN4以上の試
験合格を必須にすべきである。
しろまる 日本語教育について、
不当なハードルにならない取組が必要である。
入国前に課
す日本語能力が高すぎると教育費用が不透明な形で要求されたり、日本語能力の
偽造証明書が高いレートで流通するなど、
別の負担が生じることがあるため、
入国
前に要件を課すとしても、可能な限り安く、透明性の高い形で、十分な供給がされ
る必要がある。
ただハードルを課すだけでは、
そこに至る道筋で様々な中間搾取が
生じかねないため、十分な検討が必要である。
しろまる 日本語能力は非常に重要で大きな要素を占めているが、入ってくる段階でN5
レベルの合格を条件とすると、
ハードルが高くなってしまい、
有用な外国人材に日
本が選ばれなくなるというもろ刃の剣の面がある。
(来日後に日本語能力を向上させる方策)
しろまる 外国人労働者の適正な就労に向けた課題として、日本語の充実を挙げている事
業所が多くあり、
日々の日本語によるコミュニケーションが多いほど、
日本語習得
が円滑にされている傾向がある。技能実習生の日本語習得機会の確保だけでなく、
コミュニケーション能力向上のために地域や事業所における担当スタッフを配置
するための支援を行うことなどにより、日本語能力の向上や技能実習生の定着に
つながるのではないか。
しろまる 自治体による日本語能力向上の取組について、各自治体の実情に合わせた取組
を行う必要があるが、それには国の財政支援や日本語教育に関するノウハウの提
供など手厚い支援が重要である。
しろまる 語学教育については、企業側も外国人本人のどちらも働くことに注力したいの
で学習のインセンティブが弱い。地域による日本語教育が拡充されることも重要
だが、企業と外国人本人の双方にとって学ぶことがプラスになるような動機付け
の仕組みを作ることが重要である。
しろまる 技能実習制度においては、
監理団体が行う入国後の日本語教育について、
講習方
法や内容、
科目ごとの時間数が監理団体によってかなり濃淡があるため、
一定の基
準を設け、講習の質の担保をすることが必要である。
しろまる 優良な実習実施者又は監理団体の要件として、
「地域社会との共生」の中に「日
本語学習の支援」があるが、飽くまで選択肢の一つであり、選択しなくても優良に
なることができる。日本語学習の重要性に鑑みると、必須要件として、優良な実習
実施者や監理団体を認定するための要件として更なる加算措置を図る等、受入れ
企業等が積極的に取り組むインセンティブを高めることは重要である。
しろまる 特定技能制度では、登録支援機関に日本語学習機会の提供が義務化されている 23が、
機会の提供にとどまっている。
適切に情報提供がされているか不透明であり、
実効性に課題がある点については見直すべきである。
しろまる 日本語を学ぶ意欲のある外国人材と日本語教育を提供する自治体やNPO等の
マッチングを支援する仕組みも必要である。
また、
政府においてオンラインの教育
ツールの充実等にも努め、周知を図ることも必要である。
しろまる 仕事を通じた、
コミュニケーションの中で日本語が上達する部分がある。
事業主
が仕事をさせる中で、日本人の社員と一緒に仕事をするような機会を積極的に作
り、技能実習修了時に日本語検定等でチェックする機能を働かせることによって、
自然と日本語を覚えていくような環境を作っていくことも重要ではないか。
しろまる 業務遂行上の安全性などのための日本語は制度としてきちんとやるとして、生
活面の日本語は、
地域のNPOやボランティアを活用することで、
地域での国際交
流にもつながるので、そのような地域の役割に対して支援することもあり得るの
ではないか。
(来日後の日本語教育の費用負担の在り方)
しろまる 日本語学習のコスト負担については、
日本政府の呼寄せ対策の一環として、
オン
ラインコンテンツを作成したり教科書を配布するなどして、外国人材の負担をな
るべく少なくすることが必要である。また、教師が必要な場合には、日本政府が支
援して、
あるいは受入れ事業者も一定の負担をして、
安い費用で学べるような場を
提供することも一つの方策である。
しろまる 外国人労働者にコスト負担のしわ寄せが生じることは問題である。実習実施者
が一定程度負担し、必要に応じて国が支援することも必要ではないか。
しろまる 受入れ企業が業務に必要な日本語教育をすることは当然だが、日本の産業や社
会に有益な人材を育てるという意味では、公的な負担で日本語教育の仕組みを作
ることも考えるべきである。ドイツには、国も費用を負担して、ドイツ語のプログ
ラムを受講できる仕組みがあり、これを受講すると在留資格の関係で有利に取り
扱われるとのことである。職業訓練として必要な日本語能力についても同様の仕
組みを考えたらどうか。
しろまる 技能実習生に必ずしも日本語能力向上の意欲が高くなく、
また、
受入れ企業も仕
事上は問題がないので、仕事を休んでまで学習する必要性を感じていないという
のが実態ではないか。この意識をどう変えていくかが非常に大きなポイントであ
る。
一方で、
日本語が通じないために仕事外で問題が起きた時に企業や監理団体が
常にサポートしなければならず、
負担となっているため、
長く働いてもらいたい、
長く働きたいのであれば、
日本語をしっかり学ぶ、
学ばせるというインセンティブ
が働く仕掛けを作る必要がある。外国人本人、受入れ企業、自治体がそれぞれ役割
と費用を一定程度負担することは仕方がない。
加えて、
これを国としてどうやって
サポートしていくかが求められる。 24第4 検討の方向性
1 はじめに(検討の視点)
我が国の人手不足が深刻化する中、
外国人が日本社会において暮らし、
経済社会の担
い手となっている現状にある。
これを踏まえ、
外国人との共生社会の実現が社会のある
べき姿であることを念頭に置き、
その人権に配慮しつつ、
我が国の産業及び経済並びに
地域社会を共に支える一員として外国人の適正な受入れを図ることにより、日本で働
く外国人が能力を最大限に発揮できる多様性に富んだ活力ある社会を実現するととも
に、
我が国の深刻な人手不足の緩和にも寄与するものとする必要がある。
このような観
点から、
技能実習制度と特定技能制度が直面する様々な課題を解決した上で、
国際的に
も理解が得られるものとなるよう、各論点について検討の方向性を示すものである。
2 技能実習制度と特定技能制度の制度趣旨について
(1) 制度目的と実態を踏まえた制度の在り方
しろまる 現行の技能実習制度は人材育成を通じた国際貢献を制度目的とし、労働力の需
給調整の手段としてはならないという基本理念を掲げているにもかかわらず、技
能実習生が国内の企業等の労働力として貢献しており、制度目的と運用実態のか
い離が指摘されている。
このことにも鑑みると、
今後も技能実習制度の目的に人材
育成を通じた国際貢献のみを掲げたままで労働者として受入れを続けることは望
ましくないことから、現行の技能実習制度を廃止して人材確保及び人材育成を目
的とする新たな制度の創設を検討すべきである。
すなわち、
技能実習制度が人材育
成に加え、事実上、人材確保の点において機能していることを直視し、このような
実態に即した制度に抜本的に見直す必要がある。
しろまる 技能実習制度が有する人材育成機能は、未熟練労働者として受け入れた外国人
を一定の専門性や技能を有するレベルまで育成することで、国内で引き続き就労
する場合は身に付けたスキルを生かして活躍でき、国内産業や日本経済にも貢献
するとともに、帰国する場合はそのスキルを生かすことにより国際貢献につなが
るため、新たな制度にも目的として位置付けることを検討すべきである。
しろまる 特定技能制度については、
深刻な人手不足に対応するため、
制度を見直して適正
化を図った上、人材確保と人材育成を目的とする新たな制度との調和を図りつつ、
引き続き活用していく方向で検討すべきである。
その際、
新たな制度との関係性に
加え、
外国人材の支援面など様々な課題も指摘されていることを踏まえ、
受入れ見
込数の設定や分野の設定の在り方のほか、登録支援機関の役割の見直しを踏まえ
た適切かつ実効的な支援の在り方、
行政の指導監督体制、
特定技能外国人への支援
体制の整備などについて、最終報告書の取りまとめに向けて具体的に議論してい 25くこととする。
しろまる 企業単独型の技能実習の取扱いや現行制度から新たな制度への円滑な移行の在
り方については、最終報告書の取りまとめに向けて具体的に議論していくことと
する。
(2) 外国人が成長しつつ、中長期的に活躍できる制度(キャリアパス)の構築(両制度
の対象職種の在り方を含む。)しろまる 新たな制度と特定技能制度は、外国人がキャリアアップしつつ国内で就労し活
躍できるわかりやすい制度とする観点から、新たな制度から特定技能制度への移
行が円滑なものとなるよう、その対象職種や分野を一致させる方向で検討すべき
である。
しろまる その際、
現行の両制度の全ての職種や分野を含め、
人材確保の面からは特定技能
制度の対象分野に関する考え方を基本としつつも、業界からの要望及び受入れの
必要性を前提として生産性向上や国内人材確保のための取組状況を検証した上で
検討することとし、最終報告書の取りまとめに向けて具体的に議論していくこと
とする。
しろまる 人材育成の観点から、外国人が修得する主たる技能等について、育成・評価を行
うことによるスキルアップの見える化を前提として、特定技能制度への移行を見
据えた上で体系的な能力を身に付ける観点に立って幅広い業務に従事することが
できる制度とする方向で検討すべきである。
その際、
修得した技能の習熟度を客観
的に測定することは重要であり、
技能評価の在り方について、
技能検定や技能実習
評価試験等の運用状況も踏まえながら、最終報告書の取りまとめに向けて具体的
に議論していくこととする。
しろまる また、外国人の処遇その他受入れ企業等における適切かつ効率的な育成のため
の体制等の整備と併せて外国人労働者の職場への定着を図るためのインセンティ
ブを工夫することについても、最終報告書の取りまとめに向けて具体的に議論し
ていくこととする。
しろまる 日本の企業等が魅力ある働き先として選ばれるためには、日本で修得した技能
等を更に生かすことができる仕組みの構築が必要である。
そのような観点から、外国人と受入れ企業等の双方に向けたインセンティブになるよう、必要性があるこ
とを前提として、特定技能2号への対象分野の追加及びその設定の在り方を検討
すべきである。その際、日本において、高い技能を修得して自立した外国人労働者
が中長期的に安心して暮らし能力を発揮しながら働くことは、我が国の産業や経
済の発展に資するものであることから、日本の企業等が魅力ある働き先として選
ばれるよう、
外国人労働者の受入れに関する政府方針等を踏まえつつ、
賃金等の待
遇面や実効的な技能の修得・評価を含め、
最終報告書の取りまとめに向けて具体的
に議論していくこととする。 26しろまる また、
外国人材のキャリアアップを進めていくため、
修得された技能について、
母国での活躍につながるような方策を採れないかについても検討すべきである。
(3) 受入れ見込数の設定等の在り方(特定技能制度における現行の取扱いを含む。)しろまる 人材確保をも目的とする新たな制度と特定技能制度において、国内の人手不足
状況に対して的確に対応するために、
業所管省庁における取組状況の確認、
人手不
足状況や国内労働市場に与える影響の確認、受入れ見込数の設定及び対象分野の
設定については、例えば労使団体などの様々な関係者の意見やエビデンスを踏ま
えつつ判断がされる仕組みとするなど透明性や予見可能性を高める方向で、最終
報告書の取りまとめに向けて具体的に議論していくこととする。
3 人権侵害の防止その他外国人にとっても我が国にとってもプラスとなる仕組みとす
るための方策について
(1) 転籍の在り方(技能実習)
しろまる 現行の技能実習制度では、限られた時間内に計画的かつ効率的に技能等を修得
する観点から、
一つの実習先で実習を行うことを原則としているが、
新たな制度に
おいては、人材育成そのものを制度趣旨とすることに由来する転籍制限は残しつ
つも、
制度目的に人材確保を位置付けることから、
労働者としての権利性をより高
め、また、制度趣旨及び対象となる外国人の保護を図る観点から、従来よりも転籍
制限を緩和する方向で検討すべきである。
しろまる その際、
転籍制限の在り方については、
受入れ企業等における人材育成に要する
期間、
受入れ企業等が負担する来日時のコストや人材育成に掛かるコスト、
産業分
野や地方における人材確保及び人材育成、
我が国の労働法制との関係、
労働者の権
利行使に与える影響など新たな制度の目的である人材確保や人材育成との関係を
踏まえた総合的な観点から、最終報告書の取りまとめに向けて具体的に議論して
いくこととする。
しろまる 加えて、人権侵害や法違反等があった場合に外国人が権利行使をしやすくする
救済の仕組みや転籍先を速やかに確保する方策についても、現行の運用状況を踏
まえつつ、具体的に議論していくこととする。その際、外国人の失踪事案は、いず
れの制度においても一定数発生し得るものであるということに鑑み、外国人が犯
罪の加害者にも被害者にもならないような観点も踏まえて検討すべきである。 27(2) 管理監督や支援体制の在り方
ア 監理団体や登録支援機関の監理及び支援の在り方(存続の可否を含む。)しろまる 日本語能力が不足しスキルレベルが未熟練の外国人材を海外から円滑に受け
入れ、
適切な人材育成等を行うためには、
現行の技能実習制度において監理団体
が担っている国際的なマッチング機能、受入れ企業等に対する適正な受入れの
監理・支援の機能、外国人に対する職業生活から日常生活までの全般的な保護・
支援等の機能や、現行の特定技能制度における登録支援機関が担っている外国
人に対する支援の機能は重要である。
しろまる 他方、
現行制度下の監理団体の中には、
受入れ企業等における人権侵害や不適
正な就労を防止・是正できていない団体も少なくなく、
そのような団体は厳しく
適正化又は排除していく必要がある。
また、
現行制度の登録支援機関についても、
法人か個人かを問わず登録できることから、その中には外国人に対する職業生
活から日常生活までの全般的な支援を行うことができないものも少なくなく、
登録支援機関の支援の在り方の見直しを検討するとともに、機能を十分に果た
せないような機関は同様に厳しく適正化又は排除していく必要がある。
しろまる 新たな制度においては、
監理団体は、
国際的なマッチング機能や受入れ企業等
や外国人に対する支援等の機能を適切に果たすことができる優良な団体のみが
認められるようにするため、
受入れ企業等からの独立性・中立性の確保や、
監理・
保護・支援に関する要件を厳格化する方向で検討すべきである。また、登録支援
機関は、外国人労働者に必要とされる支援を適切に行う機能を果たすことがで
きる優良な機関のみが認められるようにするため、支援に関する要件を厳格化
する方向で検討すべきである。
これらの要件については、
受入れ企業等からの費
用徴収の在り方を含めて、
現行の運用状況を踏まえつつ、
最終報告書の取りまと
めに向けて具体的に議論していくこととする。
しろまる 受入れ企業等が安心して優良な監理団体及び登録支援機関を利用できるよう
に、
その事業活動の評価などを公表し、
特に受入れ企業等への支援や外国人労働
者保護の面で優良な団体等にはインセンティブを与えるような方向で検討すべ
きである。
しろまる 両制度において、受入れ企業等に対する支援と外国人に対する支援のそれぞ
れについて、監理団体や登録支援機関による支援と自治体等による支援の適切
な役割分担の在り方を検討すべきである。
イ 国の関与や外国人技能実習機構の在り方(存続の可否を含む。)しろまる 外国人技能実習機構が担ってきた法令に基づく監督指導や相談窓口などの援
助は、
一定の効果があり適正な受入れに不可欠であることから、
その役割に応じ
た体制を整備した上で引き続き活用する方向で検討すべきである。 28しろまる 技能実習生と同様、
特定技能1号外国人についても、
日本語能力や有する技能
等の関係上、
職業生活から日常生活まで一定の支援を要するが、
その全てを受入
れ企業等に委ねることは限界がある。
また、
受入れ企業等に対しても国による中
立的で法令に基づく指導監督を行うことが適切な場合もある。
したがって、
特定
技能制度についても、
受入れや支援の実態把握や分析を進めつつ、
登録支援機関
による適切かつ実効的な支援の在り方や行政の指導監督体制の在り方を引き続
き検討すべきである。
しろまる 新たな制度において、
業所管省庁は、
我が国の外国人労働者受入れ政策等との
整合性を前提とし、
それぞれの業界特有の事情を踏まえつつ、
産業政策等の観点
に立って、
受入れ企業等が負担するコストに留意しながら、
より良い受入れを後
押しする役割を担う方向で検討すべきである。具体的には、業所管省庁は、その
イニシアチブの下にある業界団体と相互に連携し、
業界ごとの生産性向上・国内
人材確保の取組や当該取組を行った上での人手不足状況の確認、受け入れる外
国人労働者から日本を就労先として選んでもらえて安心して暮らし働くことが
できるための支援、業界内の受入れの適正化等の役割を担うことを念頭に置き、
最終報告書の取りまとめに向けて具体的に議論していくこととする。
また、
特定
技能制度においても、
これらの取組について、
業所管省庁等による更なる対応の
強化を検討すべきである。
しろまる 地方における中小・小規模事業者が必要とする人材を確保して育成するとい
う観点からは、業所管省庁だけでなく自治体においても外国人が安心して働き
暮らせる環境整備に向けた取組を検討すべきである。
ウ 国際労働市場の実態及びメカニズムを踏まえた送出機関や送出しの在り方(入
国前の借金の負担軽減策、MOCの更なる強化方策を含む。)しろまる 国際労働市場においては求人者と求職者が離れていることから、その職業紹
介のコストを受入れ企業等や外国人本人などの関係者が負担して監理団体や送
出機関などが介在することで仲介機能が働いている実態がある。このプロセス
の中に悪質なブローカーや送出機関が関与し、外国人本人が不当な費用を負担
して多額の借金を負うことになれば、来日後の活動に悪影響を及ぼすこともあ
り得ることから、悪質なブローカーや送出機関の排除など更なる対応を検討す
べきである。
しろまる この点、
政府機関自らが国際的な職業紹介の機能を担うこととしても、
政府機
関にたどり着く前に悪質なブローカーが介在する可能性は排除されるわけでは
ない等の指摘も見られる。
その点も踏まえつつ、
新たな制度の仲介機能について
は、国際的な職業紹介のプロセスでの外国人の負担をできる限り軽減するよう、
職業紹介における費用負担の国際的なルール、送出国の送出制度や関係法令と
の整合性、諸外国の受入れ制度の運用状況、費用対効果、国際労働市場における 29求人側と求職者との著しい情報の非対称性を内包したマッチングのメカニズム
などの総合的な観点から、最終報告書の取りまとめに向けて具体的に議論して
いくこととする。
〇 過大な手数料の徴収の防止や悪質な送出機関の排除や送出機関の適正化に向
けて、新たな制度においても、相手国との間で実効的な二国間取決め(MOC)
を作成するなど、外国人材の適正な受入れに関する国際的な取組を強化する方
向で検討すべきである。
(3) 外国人の日本語能力の向上に向けた取組(コスト負担の在り方を含む。)しろまる 外国人労働者が来日する際に日常生活及び職業生活に必要な最低限の日本語能
力を有することは重要であることから、来日前の日本語学習に掛かる負担の程度
や安定的な人材確保に与える影響なども十分に考慮しながら、入国時の試験や入
国後講習などにおける日本語能力に関する要件化も含めて就労開始前の日本語能
力の担保方策について検討すべきである。
しろまる 外国人労働者の来日後においても、
引き続き日本で働き生活していく中では、日本語能力の向上は重要であり、適切な技能形成や長期的な就労を可能とする上で
も必要であることから、受入れ企業等と外国人労働者が日本語教育に自発的に参
画するためのインセンティブ化も含め、日本語能力が段階的に向上する仕組みを
設ける方向で検討すべきである。
しろまる 外国人労働者に対する来日後の日本語教育に掛かる費用や必要な支援について
は、
外国人労働者の円滑な就労と技能形成が受入れ企業等や地域の産業・経済に資
するという観点に加え、地域における外国人労働者に対する生活支援と共生社会
実現の観点から、基本的に外国人労働者の負担とはせずに受入れ企業等の負担と
しつつも、
国や自治体が日本語教育環境の整備などの支援を適切に行いながら、日本語教育の機会を充実させる方向で検討すべきである。
その上で、
受入れ企業等と
国や自治体の役割分担や負担の在り方については、新たな制度における日本語能
力に関する要件や仕組みを踏まえつつ、最終報告書の取りまとめに向けて具体的
に議論していくこととする。
以上 30「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」名簿
(敬称略、座長及び座長代理以外 50 音順)
[座 長] 田 中 明 彦 独立行政法人国際協力機構理事長
[座長代理] 高 橋 進 株式会社日本総合研究所チェアマン・エメリタス
[構 成 員] 市 川 正 司 弁護士
大 下 英 和 日本商工会議所産業政策第二部長
黒 谷 伸 一般社団法人全国農業会議所経営・人材対策部長
是 川 夕 国立社会保障・人口問題研究所国際関係部長
佐久間 一浩 全国中小企業団体中央会事務局次長
末 松 則 子 鈴鹿市長
鈴 木 直 道 北海道知事
武石 恵美子 法政大学キャリアデザイン学部教授
冨 田 さとこ 日本司法支援センター本部国際室長/弁護士
冨 高 裕 子 日本労働組合総連合会総合政策推進局総合政策推進局長
樋 口 建 史 元警視総監
堀 内 保 潔 一般社団法人日本経済団体連合会産業政策本部長
山 川 隆 一 明治大学法学部教授 31「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」開催実績
<本会議>
第1回 令和4年 12 月 14 日(水)
第2回 令和5年 1月 31 日(火)
第3回 令和5年 2月 15 日(水)
第4回 令和5年 3月 8日(水)
第5回 令和5年 4月 10 日(月)
第6回 令和5年 4月 19 日(水)
第7回 令和5年 4月 28 日
(金)
<関係者ヒアリング>
第1回 令和4年 12 月 27 日(火) GTS 協同組合
第2回 令和5年 1月 6日(金) NPO 法人日越ともいき支援会
第3回 令和5年 1月 12 日(木) 一般社団法人 EDAS
第4回 令和5年 1月 12 日(木)
監理団体、実習実施者・特定技能所属機関、特定
技能外国人
第5回 令和5年 1月 13 日(金) 一般財団法人外国人材共生支援全国協会(NAGOMi)
第6回 令和5年 1月 16 日(月) PERSOL Global Workforce 株式会社
第7回 令和5年 1月 16 日(月) 株式会社 ONODERA USER RUN
第8回 令和5年 1月 16 日(月) E SU HAI COMPANY LIMITED(ESUHAI)
第9回 令和5年 1月 18 日(水) 一般社団法人建設技能人材機構(JAC)
第 10 回 令和5年 1月 18 日(水) NPO 法人移住者と連携する全国ネットワーク
第 11 回 令和5年 1月 18 日(水) 日本繊維産業連盟
第 12 回
第 13 回
令和5年 1月 19 日(木)
令和5年 1月 19 日(木)
技能実習生
技能実習生
第 14 回 令和5年 1月 30 日(月) ILO(国際労働機関)アジアパシフィック事務所
第 15 回 令和5年 2月 2日(木) 一般社団法人日本自動車工業会
第 16 回 令和5年 2月 3日(金) ILO(国際労働機関)駐日事務所
第 17 回 令和5年 2月 6日(月) OECD(経済協力開発機構)移民課
第 18 回 令和5年 2月 24 日(金) 公益財団法人国際人材協力機構(JITCO)
第 19 回 令和5年 2月 27 日(月) 独立行政法人国際協力機構(JICA)
第 20 回 令和5年 2月 28 日(火) 国際交流基金
第 21 回 令和5年 3月 1日(水) 国際貿易振興機構(JETRO)
第 22 回 令和5年 3月 22 日(水) ものづくり産業労働組合 JAM

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /