参考資料
関係者ヒアリング結果概要
【開催状況】 ★は今回の報告対象
【開催状況】 ★は今回の報告対象
しろまる令和4年
実施日 相手方
ページ
番号111月15日
(火)
しろまる浜松市役所企画調整部国際課
しろまる浜松国際交流協会211月17日
(木)
しろまる公益財団法人栃木県国際交流協会311月17日
(木)
しろまる愛知県県民文化局県民生活部
社会活動推進課多文化共生推進室
しろまる公益財団法人愛知県国際交流協会411月22日
(火)
しろまる群馬県大泉町企画部多文化協働課511月22日
(火)
しろまる公益財団法人仙台観光国際協会
総合的な支援をコーディネートする人材の役割等の検討に資するため、幅広
い関係者から意見等を聴取する「関係者ヒアリング」を実施したもの。 612月16日
(金)
しろまる横浜市国際局政策総務課
しろまる公益財団法人横浜市国際交流協会712月21日
(水)
しろまる武蔵大学
アンジェロ・イシ 先生氏812月22日
(木)
しろまる一般社団法人多文化社会専門職機構
菊池 哲佳 氏912月23日
(金)
しろまる山浦 育子 氏1012月26日
(月)
しろまる神奈川県教育委員会子ども教育支援課
〇令和5年
★ 11
1月25日
(水)
〇一般社団法人在日ベトナム共済会
山本 美香 氏1★ 12
1月26日
(木)
〇NPO法人多言語センターFACIL兼
武庫川女子大学
吉富 志津代 氏4 ★ 13
1 月30日
(月)
〇一般財団法人自治体国際化協会
(CLAIR)9★ 14
1月30日
(月)
〇国際移住機関(IOM) 14
★ 15
2月7日
(火)
〇日本行政書士会連合会 21
★ 16
2月9日
(木)
〇日本商工会議所 27
★ 17
2月17日
(金)
しろまる日本弁護士連合会 31
★ 18
2月20日
(月)
しろまる日本語教育機関団体連絡協議会 34
★ 19
2月21日
(火)
しろまる一般社団法人日本経済団体連合会 41
★ 20
2月22日
(水)
しろまる公益社団法人日本社会福祉士会 45 1関係者ヒアリング結果概要
1 日時
令和5年1月 25 日(水)17 時 04 分〜18 時 17 分
2 場所
オンライン開催
3 対象者
一般社団法人在日ベトナム共済会 山本 美香 氏
4 対応者
出入国在留管理庁政策課外国人施策推進室 木村室長 ほか
5 内容
(在日ベトナム共済会における相談対応について)
しろまる 相談者が、
日本語を話すことができる場合は日本人の職員が、
ベトナム語し
か話すことができない場合は私が相談内容を把握した上で、
一般社団法人在日
ベトナム共済会の中で色々な人が関わり合いながら解決策を検討している。
しろまる 相談内容については様々であるが、
就労ビザや転職関係の相談が多い。
その
ほかには、家庭内暴力や夫が亡くなった場合の手続、銀行での手続、弁護士や
産婦人科の検索方法といった相談も寄せられている。
しろまる 多くの相談を受けているが、
件数や解決までに要した時間、
日数については
把握していない。
解決までに要する時間等については、
相談内容に依るところ
が大きく、
すぐに回答できる内容であれば即答しており、
即答できない内容で
あれば回答に要するおおむねの期間を伝えた後、
対応方法を確認した上で回答
していることから一定の時間を要する。
しろまる 共済会は、困っている人たちがより良い生活ができるようにという気持ち
を持ってボランティアで活動を始めたものであり、
活動資金等の支援は受けて
いないため活動が難しい面もある。
しろまる 相談の対応方法について、私は、電話やメール、Facebookを使って対応して
いるところ、
共済会では別のツールがもう一つあるが、
詳細は把握していない。
ベトナム人は、
Facebookを使用する方が多く、
私自身もFacebookで対応するこ
とが多い。
しろまる 共済会の相談体制については、
まずは相談内容を確認し、
私たち限りで答え
られる内容であればその場で回答するが、
私たち限りで回答できないものにつ
いては、相談内容に応じて、例えば、ビザの関係であれば入管を、技能実習関
係であれば技能実習機構を、
労働問題であれば労働局を案内する又はこれらに
連絡を取るほか、
役所で手続する際に必要な書類等を細かく調べて案内してい
る。 2しろまる 共済会の相談対応については、個人の経験やつながりを生かしながら行っ
ているが、
共済会に社会福祉士等の資格を持っている者は私が知る限り、
在籍
していないと思われる。
共済会においては、
相談対応に関する研修や勉強会を
行っていきたいと思っているが、
コロナ禍や資金の問題などから実施できてい
ない状況である。
(コーディネーターに必要な役割・能力等について)
しろまる 困りごとがあって相談したいが時間が無いという方のために、オンライン
で相談できるようにすると良いと考える。
通常の相談窓口に加えてオンライン
での相談対応が可能となれば、相談者が現地まで赴く時間が短縮でき、また、
色々な場所からも相談ができるほか、
対応者側も現地以外でも対応が可能とな
るため、互いにやりやすくなるのではないかと考える。
しろまる コーディネーターは、色々な知識を持った方になってもらうのが一番良い
が、
そのような人材を育成するのは簡単ではない。
寄せられた相談に対して時
間を掛けずにすぐに対応できるよう、
知識や経験をたくさん積んでもらいたい。
また、
相談する側は困っている状況であり、
相談内容をまとめることができな
い状況であることから、
相談に対して円滑に対応するためにも、
コーディネー
ターは相談内容を簡潔にまとめて把握する必要がある。
加えて、
語学も必要と
なるほか、
それぞれの母国の習慣や文化があるので、
互いにこれらの文化等を
把握することで、同様に円滑に対応できるものと考える。
しろまる 共済会においては、現在のところ、国や自治体に対して現行制度の改善す
べき点の提案等は行っていない。ただし、コミュニティで質問をした場合、
コミュニティ内の方が回答してくれることがあるが、回答した内容が正しい
知識ではなく、回答した方の経験によるものであった場合など、誤った知識
を教えられている可能性がある。正しい知識を知ってほしいという思いから、
国の新しい制度や生活上で必要なことをまとめてベトナム語で翻訳し、共済
会のホームページに投稿し周知してもらおうと考えている。
(国に対する要望について)
しろまる 外国人だけに限った話ではないが、決して安くない税金を支払わないとい
けないことに疑問を抱いている方がいるものと感じているため、
税金の使途に
ついて明確にすべきだと考えている。
そうすることで、
税金を支払うと金銭面
で苦しいが、
税金によって現在の生活が確保されているのだと納得できるので
はないか。 3(コロナ禍における孤独・孤立に関する相談について)
しろまる ベトナム人は友人に頼る方が多く、
また、
困ったときにはベトナム人同士で
助け合う部分があるため、
コロナ禍になって孤独になったという相談は今のと
ころ少ない。
以上 4関係者ヒアリング結果概要
1 日時
令和5年1月 26 日(木)10 時 29 分〜11 時 32 分
2 場所
オンライン開催
3 対象者
NPO法人多言語センターFACIL理事長
兼 武庫川女子大学文学部教授 吉富 志津代 氏
4 対応者
出入国在留管理庁政策課外国人施策推進室 木村室長 ほか
5 内容
(多文化共生の現場での課題について)
しろまる 多文化共生という言葉は広義であり、それをただ外国人支援と置き換えて
使っている場面がたくさんある。私たちは地域の多様性をきちんと認め合う
誰も排除しない社会のことを多文化共生と考えているものの、研究者の中に
は多文化共生という言葉をすごく否定的に捉える人もおり、これをマジョリ
ティ側が使う場合には同化を強いることになると言う人もいる。多文化共生
という言葉自体がそういった同化という意味と同等に成り下がらないため
に、まずこの言葉の正しい意味やこの言葉が表す社会をどのように目指して
いるかということをきちんと共有することが最初の課題である。
しろまる 社会保障制度や人権意識に関して日本人自身がきちんと認識しているのか
否かなどの、ともすれば意識の高い運動家が言っているようなものと捉えら
れがちな言葉を最終的にはきちんと入れ込んで、多文化共生という言葉を具
体的にしていかなければいけないと思っている。
(多文化社会と福祉の両方の観点からの支援・取組について)
しろまる 社会保障制度において、日本では同じように税金を払っている住民であっ
ても国籍で線が引かれることがある。
社会保障制度を考えるときに、
本来なら
ば同じように税金を払っている住民には国際条約的に同じ社会保障制度がき
ちんと受けられる権利があると言いながらも、
日本においては在留資格が優先
され、社会保証制度の枠組みに外国人が組み込まれない場合がある。日本も
様々な人権規約や国際的な条約に批准しているため、
本来は日本人と外国人が
同じように社会保障を受けられるべきである。
しろまる 社会福祉士の国家資格の中や社会福祉士を目指す学生たちが勉強している
教科書に外国人の事例がほとんど出てこないため、
社会福祉の分野そのものに 5外国人も住民として暮らしているということを気付いてもらわないといけな
い。
しろまる 具体例として、兵庫県三田市において社会福祉協議会と三田市の国際交流
協会が連携する仕組みづくりを行っており、
どうして連携が必要なのか、
どう
連携するべきかということを考えるプロセスで、
二つの組織が一緒になってい
ろいろなことを始めている。このように、概念だけではなく、具体的に一つモ
デル的な取組をしなければならないと考えており、
現在、
三田市で取組を行っ
ている。
しろまる 社会福祉協議会と国際交流協会は、その組織基盤が大きく異なることがあ
るため、
同等に扱うことはできない。
県レベルの外郭としての国際交流協会は
割と大きくしっかりとして基盤もあるが、
全国にあるいわゆる国際交流協会は
任意団体であったりNPO法人であったりと、
基盤がしっかりしておらず、三田市の場合も常勤職員が一人もいないので、
その点についても併せてどのよう
に連携するかが参考になるものと考えている。
(支援の活動資金について)
しろまる 支援の活動資金であるが、NPO法人多言語センターFACILには現在、
常勤・非常勤を合わせて14人の職員が在籍しており、約23年間、翻訳・通訳を
通じた多言語・多文化の関連事業をソーシャルビジネスとして行ってきたとこ
ろ、
現在はおおよそ1億円の事業規模であり、
この1億円のうちの85%は事業
収入となり、
この事業収入に寄附及び助成金を加えたものが活動資金となって
いる。なお、当該団体自体は、地域社会と外国にルーツを持つ住民とをつなぐ
コーディネーターという役割が設置趣旨となる。
しろまる 三田市の取組は、別のNPO法人におけるJICAの委託事業であるため、
私はアドバイザー的な存在で動いている。
FACILの社会貢献活動に関して
は、いろいろな資金を駆使しながら行っている。
(コーディネーターに必要な役割・能力・研修等について)
しろまる 社会福祉士はそもそもコーディネーターであるほか、国家資格になってお
り、人権意識も持っている。また、アセスメントの技術やコミュニケーション
力も高められ、社会制度も知っており、いろいろな関係機関、専門分野につな
ぐことができる。私が目指している人材は、多文化、多言語に対応できる社会
福祉士であるが、
社会福祉士が異文化に関することや外国人関連の制度、
言語
を身に付けるのは簡単ではない。
しろまる スクールソーシャルワーカーやメディカルソーシャルワーカーと同じよう
に、
多文化ソーシャルワーカーというものが社会福祉士の一つのカテゴリーと 6してきちんと位置付けられることを目指さなければならない。
しろまる FACILは、その組織そのものが地域社会と外国にルーツを持つ住民を
つなぐコーディネーターであると思っており、
多言語・多文化のいろいろな取
組を実施することで、
地域住民をどんどんつなげていき、
地域共生の中に外国
にルーツを持つ住民もきちんと入れ込んで地域社会を形作っていることから、
貴庁が目指し、求めているところに近いと感じている。
しろまる しかし、
上記の取組を行うに当たって、
養成研修を例えば3か月実施すれば
身に付くかと言われても、
それは絶対に無理である。
私の団体のコーディネー
ターは長い人で20年やっている。
言語の翻訳、
通訳のコーディネーターも含め
てであるが、
少なくとも3年くらいの実践と個人の資質が必要であるが、
資質
をどう測るのかが非常に難しい。
しろまる 多言語相談窓口を作ることは、相談窓口ではなく通訳機能の窓口を作るこ
とと同様であり、
多言語を話せる人がきちんと問題解決できるような相談員な
のか、
多言語の場合はまずはそこを切り分けて考えないといけないが、
現状は
そこが混在しているように思われる。
しろまる 養成されるべき人材の根本は社会福祉士そのものであり、問題は社会福祉
士の中に異文化理解、多言語に関すること、外国人特有の制度などの知識が
入っていないことが問題だと思っているので、
これらをよく承知している国際
交流協会と社会福祉協議会の連携はそこに意味があると思っている。
しろまる 求める人材としては、社会福祉的な人権意識、相談対応のノウハウ、コミュ
ニケーション力、
いろいろな情報とつなぐ力を持った人材であり、
これが貴庁
が考えている制度の資格
(認証)
と一緒になっていけばとても良いと思ってい
る。
しろまる 医療通訳制度を作るための活動を行っているところ、当該制度の資格は難
易度が高いが、認証されたとしても仕事がない。一方で、社会福祉士という国
家資格は社会福祉士の専門性をきちんと認められており、
公務員の中にも就職
の枠があるほか、
社会福祉協議会などある程度安定性のある就職先がある。多文化ソーシャルワーカーの就職先は、国際交流協会しかなかったりするため、
こういった認定の先に被認定者が活躍できる場を明確に切り開いていかない
といけない。
しろまる コーディネーターの資質というものはなかなか数値化できない。
一旦、
養成
講座を修了したことを認定することはとても意味があると思われるが、
それを
そのまま実践で生かせるかというと、
国家資格とは大きく異なり実践は難しい。
私もずっと活動を行っているが、
技術というのは経験でしかなく、
経験を積ま
ないと駄目だと感じている。
しろまる 人と人とをつなぐということは非常に時間も掛かり、そのシチュエーショ 7ンや扱うテーマや双方をそれぞれどのようにつなぐかということに関しては
社会福祉士が勉強することであるが、
社会福祉士になるために大量の勉強を課
せられているほか、その上で200時間の実習も義務付けられているなど、膨大
な経験を経て国家資格を取っているため、同様のレベルを目指すのであれば、
同量の研修等を行わないと国家資格と言えるのか疑問である。
しろまる 防災に関しては、
キーワードは地域住民であり、
私たちも地域住民とつなぐ
ことであると言っているが、かなり手間が掛かるものである。これは、自治会
活動や婦人会活動と地域に住んでいる日本人住民の中にもつながってない住
民もいることに加え、
そこに外国をルーツに持つ住民も固まって住んでいるわ
けではなく、それぞれの住まい方、仕事、性格、意識も異なることから、その
人たちが地域住民として地域とつながっているか否かは、
地域のつながりが希
薄になっている日本の課題である。
しろまる 防災は地域で行うことが大切なので、コミュニティ防災においてもそのこ
とに力を入れて発信している。
家の下敷きになった際に日本人が外国人に助け
てもらうかもしれない可能性があることから互いに知り合う必要があり、
その
ため地域のつながりが大事であることを伝え、
外国人を地域の中に入れ込んで
いくしかないが、長い時間を要す取組である。
しろまる これらの取組は、国際交流協会や地域の多文化共生の活動をしている団体
が長年ずっと取り組んでいることであるが、
時間が長く経過すると、
過去の経
験が正しく伝わっていないこともあり、
時間を掛けて繰り返し、
継続をして少
しずつ人の意識と制度の両方を変えていかなければならないと考えている。
(現行の相談対応の課題・問題点等について)
しろまる 必ず相談者のつなぎ先は存在するので、
相談がなされた場合には、
つなぎ先
が見つかるまで探している。
日本人に対してもつなぎ先が存在しないのであれ
ば、
外国人の相談者にもつなぎ先はないが、
日本人のつなぎ先があるのであれ
ば、
外国人の相談者のつなぎ先も必ず存在しており、
そのつなぎ先を把握して
いるのが社会福祉協議会である。
しろまる 今回、コロナ感染症の関連で給付金の受取窓口が社会福祉協議会になった
ことで、
同協議会が外国にルーツを持つ住民の存在に気付き始めており、
同協
議会でポケトークを使っている場所が増えているほか、
当該住民に対する意識
が少し高まっているため、
社会福祉士が当該住民も支援の対象であるという意
識さえあれば、つなぎ先は絶対に探すことができる。
しろまる 相談者のつなぎ先を考えるときに抜け落ちやすいのが当事者の参画であり、
当事者の視点をおろそかにしがちになる。
支援という言葉を使うと日本人が外
国人を支援するようにしか見えないが、
日本に長く在住している人には外国に 8ルーツを持つ人がたくさんいるところ、
同国人のことは良く理解でき、
母語も
話すことができるため、
当事者の存在はとても大切である。
仮にコーディネー
ター養成研修があるならば、
このようなことも視野に入れた当事者の育成とい
うものがあっても良いと考える。
(今後の見通し等について)
しろまる 兵庫県は、阪神・淡路大震災の影響のためか、NPO法人と行政との連携や
協働が進んでおり、
協働での企画及び取組の実施、
相互間の相談などを行って
いる。
行政とNPO法人の連携は絶対に必要であると考えるほか、
昔より行政
とNPO法人が対等な関係性になっており、これはとでも大事なことである。
しろまる 思いやり指数の世界ランキングでは日本は最下位で、冷たい国だと言われ
ており、
日本社会をもう少し立て直さなければならないと思っている。
そこに
外国から来日した人の異なる視点や多様性、
日本の社会的課題に気付かせてく
れるいろいろな課題をチャンスと捉えて、
そこから日本社会を変えていくとい
う意識にしてほしい。
しろまる 人権意識、優しさ、寛容性及び地域のつながりに関して、異なる人たちが
入っていくことで一緒にこの日本社会を良くしていこうという意識に変えて
ほしいと考えている。
そのために国に要望するとしたら、
在留資格は見直した
方が良い。例えば、技能実習生が転職できないというのは、社会保障制度から
するとそごが出てくる。
社会保障制度に関しては国籍の壁がないということを
知らない人が多く、
社会福祉協議会でさえ社会保障制度は外国人だと受けられ
ませんと言う人がいるため、そういうことを知ってほしい。
しろまる 私が今やろうとしているのは、社会福祉士を取る学生たちにまず多文化共
生の意識をしっかり埋め込むという小さなことをやっているが、
そういった教
育に関しても社会福祉と多文化共生が連携しているという形を少しずつ作っ
ていってほしいと思っている。
国際交流協会側からすると、
社会福祉的なスキ
ルが必要と認識している人が多い。
一方で、
社会福祉士の分野に多文化共生が
必要と感じている人が少ないことが問題であると思っており、
社会福祉協議会
の方にもう少しアプローチを掛けて相談窓口と連携する等、
そういう取組を進
められたらお互いに見えてくるものがあるのではないかと考えている。
以上 9関係者ヒアリング結果概要
1 日時
令和 5 年 1 月 30 日(月)10 時 30 分〜11 時 35 分
2 場所
オンライン開催
3 対象者
一般財団法人自治体国際化協会(CLAIR)
多文化共生部多文化共生課長 関根 氏
4 対応者
出入国在留管理庁政策課外国人施策推進室 木村室長 ほか
5 内容
(多文化共生研修の実施状況について)
しろまる 自治体国際化協会(以下「当会」という。
)では、全国市町村国際文化研修
所(以下「JIAM」という。
)と共催で「多文化共生研修」を実施しており、
今年度は「多文化共生の実践コース」、「多様性社会を生きる「次世代」の育成
〜外国につながりを持つ子どもたちへの学習支援〜」、「多文化共生の地域づ
くりコース」、「災害時における外国人への支援セミナー」、「外国人相談窓口の
運営」及び「外国人が安心して医療を受けられるための環境整備」の6種類の
研修を実施した。
しろまる 定員は研修によって異なるが 30〜70 名程度となっており、おおむねの研修
において定員を超えた申込みがある。特に、
「多文化共生の実践コース」につ
いては、後述する「多文化共生マネージャー」の認定要件となっていることか
ら、非常に多くの申込みがある。
しろまる 定員を拡大してほしい旨の声があり検討は行っているが、本研修に対して
当会が行っている費用助成の予算に係る問題や、研修場所の広さなどの問題
もあり、
現時点において、
すぐに定員を拡大することは難しいと考えている。
(多文化共生研修の成果について)
しろまる 在留外国人に関連する諸制度、諸課題に関わる人材を各地で養成すること
を目的として本研修を実施しているところ、毎年そのような人材が育成され
ることによって、
自治体や地域国際化協会、
国際交流協会の業務やサービス内
容が底上げされていると感じている。
(多文化共生マネージャーの研修について)
しろまる 「多文化共生マネージャー」
に認定されるためには、
「多文化共生の実践コー 10ス」を修了することが要件の一つとなるところ、本研修は定員 40 名で、計6
日間(前後期各3日間)実施される。前期修了後には、研修で学んだ内容を踏
まえて、自身の地域での課題や、深く調査したいテーマを選択し、今後どのよ
うな方法でその解決を進めていくか等を整理した
「研究計画書」
を作成しても
らう。また、後期修了後には、前期で作成した研修計画書に基づいた調査を通
じて、解決策を検討し「課題レポート」にまとめて提出してもらう。
しろまる 後期修了後に作成した課題レポートに関して、多文化共生マネージャーの
全国組織である
「NPO多文化共生マネージャー全国協議会」
に登録されてい
る多文化共生マネージャーのうち、
1期生や2期生といった、
長い間多文化共
生マネージャーとして活躍されている専門家の方に依頼して、二人一組で査
読をしてもらい、合格点が得られた者を多文化共生マネージャーとして認定
している。
しろまる 受講生の大半は非常に勉強熱心であり、規定文字数・枚数・内容について合
格基準をクリアし、多文化共生マネージャーとして認定されるが、一方で、実
践コースを受講した結果として、自身に力量が無いと判断して課題レポート
を提出しない者もこれまで何人かいた。
しろまる 平成 29 年までは、研修日程を 10 日間としていたが、10 日間も職場を空け
るのが難しいとの声があったことから、
研修日程を全6日間に短縮し、
それを
補う形で研究計画書と課題レポートの提出を後日求めることとした。
しろまる 本研修のメイン講師は一人だが、細かく企画を練るようなグループワーク
の時は班ごとに部屋を移動して検討することもあり、
その際には、
サポートス
タッフ2〜3人や、
JIAMの職員が適宜回って、
細かい質問への対応などを
行っている。
(多文化共生マネージャーの対象者について)
しろまる 「多文化共生研修」が、市区町村・都道府県の職員や地域国際化協会、国際
交流協会の職員で多文化共生施策を担当している者、若しくは多文化共生に
関連して自治体等と共同実績があるNPOやNGOの職員で、自治体等から
受講推薦を受けた方を対象としていることから、
基本的に行政の立場、
あるい
は行政と連携できる立場にある者が
「多文化共生マネージャー」
の対象となる。
(多文化共生マネージャーの活動領域・ニーズについて)
しろまる 自治体の多文化共生施策や地域国際化協会等が実施するイベント、常日頃
の相談業務のアドバイザーなど、その地域の多文化共生推進の担い手として
活動いただくことを想定している。
しろまる 自治体や地域国際化協会等からすると、自分たちの団体だけで全てを賄う 11ことは難しいと思うので、多文化共生に理解があり地域で活動できる方を少
しでも増やすことで全体のサービスを向上させたいと考えている。
しろまる 外国人住民の滞在長期化や多国籍化が顕著になっており、言葉の問題だけ
ではなく、文化的な差異によって生じる問題など、課題が多様化・複雑化して
きている。
しろまる 外国人住民を支援の対象として見るだけではなく、新たな地域の力や対等
なパートナーとして共に活動していくことが求められており、そのような人
たちを巻き込んで地域を活性化させるために必要な人物として、多文化共生
マネージャーが求められている。
(総合的な支援をコーディネートする人材の研修内容について)
しろまる 相談者の多くは、
中長期的に日本に在留する方になると想定されるため、人権・権利擁護の観点や、
社会福祉制度
(各種社会保障、
社会福祉、
高齢福祉等)
に係る知識が必要であり、そのような制度をいかに外国人が受けられるかを
きちんと踏まえた上でのアセスメントが必要になる。
しろまる 相手に伝わる言葉で外国の方にきちんと理解してもらうことが重要である
ため、やさしい日本語で対応できる能力が身に付く研修を行ってほしい。
しろまる 事例検討については、
一元的相談窓口で日頃から対応をする中で、
複雑に絡
み合ったケースや、
課題となるものがあると思うので、
それらを題材とするの
が良いのではないか。
しろまる 日本国内のどの地域で相談を受けたとしても、外国人が同じレベルの均質
的なサービスが受けられるよう、国が責任をもってコーディネーター人材を
育成していくことが重要であり、
それらを踏まえた上で、
研修対象人数や研修
科目、受講時間数等を検討するべきである。
(コーディネーターの配置先について)
しろまる 最初から人数を増やすのは難しいと考えられるところ、一元的相談窓口の
数に応じて検討するのが良いのではないか。
(国家資格化について)
しろまる 現行案のように養成研修の対象を社会人に限定すると、時間的な制約など
から真にコーディネーターになってほしい人材が養成研修を受講できない可
能性があるほか、
高齢化により福祉等の相談員人材が限られる中で、
次世代の
コーディネーターのなり手がスムーズに見つからないことも想定される。そ
のため、
国家資格を視野に入れるのであれば、
担い手の裾野を広げる観点から、
学生等も研修の対象とするのが良いのではないか。
例えば、
現行案のとおり、 12社会人になってから養成研修を受ける道を設けると同時に、学生時代から養
成研修の受講を可能とし、
実務経験を2年積めば、
コーディネーターとして認
定されるなどの複数のキャリアラダーを組む方法が考えられる。
しろまる 今後、消費生活相談や法律相談等のニーズが増加することも見込まれる中
で、
コーディネーターが、
それらすべてを専門的に対応することは難しいと考
える。そのため、まずは国の機関において、複雑な課題を持った外国人に対応
できる体制をきちんと整えた上で、確実に適切な機関につなげられるコー
ディネーター人材を育成してほしい。
(コーディネーターに求められる役割・能力について)
しろまる 多文化ソーシャルワーカーとして、相談者に対する聞き取りをきちんと
行った上で課題を切り分け、
適切な機関につなげることが基本となるが、
それ
でもどこの機関にもつなげられなかったり、
あるいは、
過度につながり過ぎた
結果、主体となってサポートを行う機関が判然としなくなったりするといっ
た問題が生じる可能性があるので、
全ての課題を適切に切り分け、
できるだけ
他の機関も活用しつつ、なおかつ必要な人には伴走支援とアウトリーチを行
うのが理想的である。
しろまる 外国人相談窓口で全てを解決することを求めるのではなく、日頃からいろ
いろなつながりを作っておき、確実に専門機関に振り分けられる能力が必要
であると考えている。
しかしながら、
専門機関はこれまで外国人の支援を行っ
ておらず、
専門機関につなぐ際のハードルは高いと考えられることから、
やさ
しい日本語でカバーできないような専門的な話の場合には、コーディネー
ターの能力だけに頼るのではなく、母国語での通訳支援などの言語保証等を
担保した制度設計をするべきである。
(予防的支援について)
しろまる 入国時や自治体への転入時に行っている生活オリエンテーションを更に充
実させることが重要である。また、中長期的に在留する方については、時間の
経過とともに生活オリエンテーションの内容を忘れることも考えられるほか、
ライフステージが変わるごとに必要なサービスも変化してくることから、ラ
イフステージやライフサイクルに応じた日本の社会制度等について説明する
機会を設けることも必要なのではないか。
しろまる 自治体で多言語での法律相談を行うことは、言語保障等の観点からハード
ルが高くなるため、法テラスなどで普段から定期的に実施できるような体制
を整えることが望ましい。
しろまる 社会福祉法の改正
(厚生労働省所管)
により創設された重層的支援体制や、 13既にできあがっている地域包括支援センターのネットワーク等の枠組みに入
ることができれば、常に情報共有ができる体制となり、外国人総合支援コー
ディネーター自身も情報のアップデートができることから、そのようなネッ
トワークに入れるような仕組みづくりが必要であると考える。
しろまる 自ら相談窓口に来る方は氷山の一角だと考えられるので、アウトリーチ支
援を積極的に行うことも必要である。
(国に対する要望)
しろまる 多文化共生に携わっている職員には有期雇用の者も多く、職員自体の生活
が安定しているとはいえない。職員の雇用体制をしっかりと安定させなけれ
ば、
多文化共生の分野で働きたいという人が集まらず、
専門家も育たないと思
うので、雇用関係も含めた体制整備に努めていただきたい。
しろまる 外国人が日本の制度を満遍なく使えるように、
省庁間が垣根を越えて、
上手
く連携できるような仕組みを是非整えていただきたい。
以上 14関係者ヒアリング結果概要
1 日時
令和5年1月 30 日(月)15 時 00 分〜15 時 58 分
2 場所
オンライン開催
3 対象者
国際移住機関(IOM)駐日代表 望月 大平 氏
プログラム・マネージャー 清谷 典子 氏
プログラム・アシスタント 須藤 詠子 氏
4 対応者
出入国在留管理庁政策課外国人施策推進室 木村室長 ほか
5 内容
(IOMの相談体制等について)
しろまる IOMの相談体制について、
IOMの職員は9名で構成されているが、
その
うち3名が国内事業に関わっており、相談が来た場合はその3名で連絡を受
けている。
特に2名がケースワーカーとして、
事案にしっかり付いて相談を受
ける体制となっている。このように、IOMが支援する場合の相談対応は、
ケースワーカーが行っている。
しろまる 相談者の属性は、多くは非正規に在留している外国人や家族等その関係者
であるが、支援団体、行政機関、病院、大使館、弁護士等もあるほか、正規に
在留している外国人も含まれる。
しろまる 相談は、
IOMサイトに電話番号やメールの問合せ先が載っているため、基本的には、メールか電話で連絡が来ることが多い。また、特定のIOMが行っ
ている事業に関して、例えば人身取引被害者の支援事業や非正規に在留する
外国人に対する帰国に関する支援事業である場合には、警察、婦人相談所、入
管等から直接連絡を受けることもある。
しろまる 相談内容については、在留資格に関する相談、日本に残りたい、難民認定申
請が認定されないといった内容のほか、難民認定申請が不認定の場合にはカ
ナダやアメリカで難民認定申請を行いたいという内容、日本での生活面に関
すること、貧困、病気、学校、子供の学習、DV等に加え、自国に帰りたいと
いう相談も寄せられている。
(複雑な相談等への対応件数等について)
しろまる 相談件数に関しては、
年間50〜60件で、
1件当たり何度も繰り返し相談が必
要な方もいるほか、
多くはIOMの事業に関連する相談ではないため、
関係機 15関を紹介する形で終了するものある。
そういった場合は、
認定NPO法人難民
支援協会(JAR)、社会福祉法人日本国際社会事業団(ISSJ)、国連難
民高等弁務官事務所
(UNHCR)、カトリック東京国際センター
(CTIC)、弁護士事務所や大使館といった機関につなげて終了するケースが多い。相談
の趣旨が分からない、他の機関へつなげられないという案件はさほど多くな
い。
(複雑な案件の対応について)
しろまる 複雑な案件に関しては、
IOMの支援対象外となる相談に関しては、
先ほど
も申し上げた行政機関や支援機関等へつなぐことが中心となるが、帰国希望
者で支援対象に該当する場合はIOMが入管等の関係行政機関に直接連絡し、
支援の可能性を模索することもある。人身取引の可能性がある場合にも緊急
を要するため、同じような形で直接、警察、入管、大使館等の関係機関に連絡
を行っている。
しろまる 基本的にはIOMが直接対応可能な案件で行政機関に連絡する場合以外の
IOMの管轄外の案件は、相談者に対して相談すべき機関の連絡先を伝える
といった対応を取っている。
(IOM内外における研修等について)
しろまる IOMでは官公庁や自治体の職員研修での講義において、IOMの事業や
IOMができる支援について案内し、IOMがどのような状況でどのような
対応ができるのかを伝えており、年間で約400人の職員がIOMの講義を聴講
している。このほか、官公庁、NGO等の外部機関主催の会議に積極的に参加
しており、ミーティングやその他の講義の出席依頼等を受けて話すこともあ
る。
しろまる IOMの内部での職員に対する研修について、IOMは国際機関であるた
め本部及び地域事務所にプロテクションディビジョンという保護を担当する
部署が設置されており、当該部署に専門家をアドバイスするスペシャリスト
が配置されていることから、同人らからウェビナー研修の実施やグッドプラ
クティスやポリシーフレームワーク・ガイドライン等の共有等が行われてい
る。
しろまる これらウェビナー研修等の研修は全員の参加が必須のものもあれば、希望
する職員のみが参加するものもある。
そのほか、
ウェビナー形式に加えて対面
形式での研修もあるほか、プロテクションに関わっている全世界のIOMの
職員が入っているメーリングリスト等も活用したワーキンググループ形式の
研修も行っている。 16しろまる IOMの職員については、ソーシャルワークをするという前提で、かつ、警
察や入管等のコーディネーションに関する業務があるということを前提に、
そのようなスキルのある方を募集している。
必要とされるスキルは、
まず言語
がその一つであり、加えてソーシャルワークのバックグラウンドがあること、
それがなかったとしても、例えば警察や入管でのバックグラウンドがあるな
ど得意分野のある方を採用の条件としている。IOMのケースワークを担当
している職員は、
短期間での入替えは考えておらず、
長い方で20年くらい勤務
している者もいる。い。
しろまる IOMの職員は、
カバーしなければならない分野が広いので、
特定のバック
グラウンドを切り口に雇用された方が多いが、長く業務に従事することによ
る積み重ねや、
関係機関、
ローカルといった特性の中での積み重ねによってス
キルを身に付けている部分もある。
しろまる IOMの職員は、日本の制度の内容について行政機関に代わって伝える立
場ではないため、
IOMが相談者に対して、
日本の社会制度等に関して説明す
ることはなく、
IOMでは、
相談者を行政窓口等へつなげるという取組を行っ
ている。
(コーディネーターに必要な役割・能力等について)
しろまる 相談対応支援においては、アクセスしやすい窓口というものが重要であり、
また、
相談者のたらい回し等を避けるため、
支援部署間や相談対応者間のある
程度のネットワークやメカニズムが相談受け入れ側、又はコーディネーター
間にあるということも重要である。
加えて、
相談者のバックグラウンドを理解
できることがコーディネーターとして求められるところ、これには相談者の
母国語が話せる外国人も含まれる。
さらに、
日本に関する相談事に対する正し
い知識があるということも非常に重要であり、相談支援においては間違った
情報を与えないということが必要である。
しろまる 予防的支援については、先ほどの相談対応と重なる部分が多いと思われる
が、コーディネーターがある程度のネットワークを構築した上でいろいろな
ところで情報発信をして正しい知識を伝えておけば、予防にも効果的である
と考える。
しろまる コーディネーターとして求められる方は、言語の問題を含めて多文化の配
慮や理解のある方、
又はカウンセリングの経験や技術のある方である。
2点目
として、入管の制度、福祉制度及び介護保険制度など、各種行政制度への知識
がある方、さらに関係機関の異なる機能と立場に対する知識の理解と調整能
力のある方、問題の所在を確認する多角的視点と判断力のある方というのが
挙げられる。 17しろまる コーディネーターの認証制度について、コーディネーターには幅広い資質
が求められることから、研修が修了して認証される研修制度を取ることは選
択肢としてはあり得る。
ただし、
認証に当たって研修受講者や日本語の能力が
高い方といった枠が設けられた場合、外国にルーツを持つ方の経験を発揮し
ようとしても、
そうした資格要件等が障害となってしまう場合があり、
そうし
た人材の制度への参入が拒まれる可能性がある。
しろまる コーディネーターの配置先について、
現在、
国際交流協会でワンストップセ
ンターやワンストップ窓口を設置しているところ、一元的窓口かつ多言語対
応ということで、
コロナ禍で非常に役に立ったと聞いており、
相談しやすい窓
口であると考えられることから、コーディネーターの配置先として良いので
はないか。ただし、実際に窓口を訪問する必要があることや、地域ごとに異な
る国際交流協会がたくさんある中で窓口を探すという困難性を考えると、併
せてホットラインやチャット等のSNSでアクセスできるような形も必要で
ある。
しろまる 入管や政府から要請があれば、コーディネーターをIOMに配置すること
は可能であるが、拠出を基に事業ベースでの対応となると思われる。
しろまる IOMとしての活動を踏まえた課題であるが、様々な在留資格の方がいる
中で様々な問題があることから、幅広い情報能力が必要である。また、言語の
問題として、IOMでは母国語でカウンセリングや相談を受けるようにして
いるところ、特殊言語の場合はなかなか通訳人が見つからずに苦労する部分
もある。
しろまる IOMの事業は、
政府の要請に基づいて行っており、
政府の拠出金を使って
事業を実施していることから、
政府に報告書を毎年提出しているほか、
その中
で課題及びその解決策等に関しても共有している。
また、
人身取引事案では、
警察や婦人相談所、入管等の関係機関で会議が開催されることがあるところ、
その中で報告する形でフィードバックを行うこともある。
(研修体制について)
しろまる 外国人の相談対応に従事する専門的な人材には幅広い知識が必要であるた
め、
長期的に育てるというような視野が必要であり、
育てた人材を長期的に使
うということも重要である。
そして、
横のネットワークを構築するネットワー
ク構築型の研修も実施する必要がある。
IOMの中では同じ業務を行っている
全世界の者が知り合いになれるようネットワークの構築が積極的に行われて
いる。
しろまる IOMでは、
自由参加型のウェビナーが、
おおむね週一回ペースで行われて
おり、
1時間から2時間程度のものが多い。
全員が受講しなければならない研 18修モジュールもあり、
例えば職員による相談者や裨益者に対する性的虐待の防
止や人権、
移住者の権利と尊厳の保護に関する研修内容などがある。
職員のセ
キュリティー等に関しても、全員が定期的に必ず受けないといけない研修モ
ジュールがある。
さらに、
オフィスから一人は受講しなければならない研修に
関しては3日間や1週間のものがある。
しろまる モジュール研修については、オンラインで資料を読んで質問に回答してい
くような形式となっており、
その中に講師が話しているビデオやアニメーショ
ンというものが含まれている事もある。
各モジュールはテーマによって数セッ
ションから成り、だいたい2〜4時間ぐらいの時間を要する。
(外国人を支援する人材の育成等について)
しろまる IOMでは人身取引対策事業を行っているが、人身取引は事案の傾向も対
策も、
行動計画が定期的に更新されるなど常に状況が変化している。
このため、
省庁や民間が開催している会議やワークショップ、
ミーティング等に積極的に
参加することで、
常に情報を更新するとともに、
IOMの知見や経験を共有す
るよう努めている。
しろまる 行政機関の職員が人身取引事案や困難な案件を大変な思いをして処理して
も、3年から5年で異動、契約終了等のため職員が入れ代わってしまい、せっ
かくの経験やスキルが散逸してしまうことは損失であると考える。
これらを集
積できる仕組みが必要と思っている。
現状では研修を通じたものになると思わ
れる。
人身取引に限らず、
様々なケースワークの課題を組み入れていけたらよ
いと思われる。
(外国人に対する相談支援等の課題について)
しろまる 現状では様々なレベルや機能の公的及び民間の窓口が多く、混乱する面が
あるのではないか。FRESCについては、アクセスが非常に良く、有効活用
が期待されるが知名度をどのようにして上げていくかということが課題であ
ると思っている。
しろまる ワンストップ窓口に関しても、例えば外国人集住地域とそうでないところ
などで相談体制への濃淡の差、
職員の能力の差などにギャップがあるような印
象を感じる。
どの窓口でも良いサービスを受けられるような体制にしていくこ
とも課題と思われる。
しろまる それはワンストップ窓口だけではなく、警察や婦人相談所、児童相談所、入
管等の職員の入れ替わりが行われる機関では、
体制や対応に差があるような印
象を受けている。 19(外国人を支援する人材を育成するための研修について)
しろまる 外国人支援人材を育成するためには、まず得意分野がある方を配置してそ
の中で育てていく必要がある。
得意分野がある方とは、
海外青年協力隊の出身
者や、
ハローワークで働いたことのある方など専門性の高い窓口で働いていた
方が挙げられ、
その方たちがどんどんいろいろな相談対応ができるように育て
ていくというのも一手かと思っている。
しろまる 次に、言語の必要性である。なお、英語対応が可能であれば、例えばIOM
の公開している英語のモジュールなどが使用できる可能性が広がるほか、
研修
機会も広がる可能性がある。
(今後の外国人からの相談内容について)
しろまる 外国人の相談内容としては、
年金に関すること、
介護保険制度に関すること、
公的機関の相談や子育ての困りごと等が増えていくと考えている。
(コーディネーター施策についてのアドバイスについて)
しろまる 専門部会の資料にも書かれていたが、
担当者の専門知識不足、
たらい回しに
された事案など、
当事者が相談した際に感じたことを把握し、
外国人の当事者
が今どのようなことに悩んでいるのか、
どういうサービスが欲しいのかといっ
た当事者の声を聞くということが重要だと思っている。
また、
相談データの集
積も重要である。
しろまる さらに、コーディネーターは、外国人だけではなく、受け入れる日本社会等
コミュニティへの働き掛けも重要だと思っており、
受け入れる側の人たちに対
する働き掛けも行っていく必要があるのではないかと考えている。
(国に対する要望について)
しろまる Global Compact for Migration(安全で秩序ある正規の移住のためのグ
ローバル・コンパクト(GCM))という日本も賛成して国連総会で決められ
た国際的な協力枠組みがあることから、
IOMでは、
この枠組みを指針として
使っていただくことが必要であると思っている。
しろまる 相談業務やコーディネーター業務は、結構負担が大きい職種であると認識
している。どこまでがコーディネーターの責任で実施し、最後までフォロー
アップするのか、
それともリファーした時点で終わるのかを整理しないと、どんどん負担が増えていきかねない。
コーディネーターの心理面でのケア等も配
慮が求められるのではと思われる。
しろまる 能力の差もあるが、自治体におけるそもそもの人材確保が難しいというよ 20うなところもあるので、
自治体にはいないけれども、
オンラインアポのシステ
ムを導入し、
そこでアポイントが取れる等、
確実にアクセスできるような方法
を考えていただきたい。
しろまる 外国人からの相談というのは今後また増えていくと思われるが、外国人と
の付き合い方や文化的な違いへの対処法に関して受け入れる側の日本人から
の相談も増えていくのではないかと思っており、
自治体や警察がそのような相
談に対して間違った情報を教えてしまうなど、
そういったことがないように気
を付けないといけないことから、
そのような日本人側からの相談に答えるため
の施策も必要なのではないかと思っている。
以上 21関係者ヒアリング結果概要
1 日時
令和 5 年 2 月 7 日(火)10 時 30 分〜11 時 44 分
2 場所
オンライン開催
3 対象者
日本行政書士会連合会副会長 坪川 貞子 氏
日本行政書士会連合会国際・企業経営業務部長 水野 晴夫 氏
日本行政書士会連合会国際部門次長 櫻田 直己 氏
日本行政書士会連合会国際部門部員 下川原 孝司 氏
日本行政書士会連合会国際部門部員 松田 秀幸 氏
日本行政書士会連合会国際部門部員 西川 剛史 氏
日本行政書士会連合会国際部門部員 黒田 敬子 氏
日本行政書士会連合会国際部門部員 須藤 哲哉 氏
4 対応者
出入国在留管理庁政策課外国人施策推進室 朝熊法務専門官 ほか
5 内容
(相談対応支援において求められる役割・業務内容について)
しろまる 相談現場において、外国人の目下の在留状況や緊急性に応じて、できる限
り短時間で適切な措置の優先順位を決定することが重要である。
しろまる 相談者が、単なる相談のみにとどまらず、行政手続等の具体的な対応まで
求めてくることも想定されるところ、コーディネーターが有償で行政手続等
を行った場合、各士業法に抵触してしまう場合があるのではないかと懸念し
ている。
しろまる 特定技能外国人登録支援機関の多くが商業目的で業務を行っているので
はないかと思われる状況が見受けられることから、本件コーディネーター制
度については、社会貢献の観点からの取組となるよう留意する必要がある。
(予防的支援で取り組むべき内容について)
しろまる 外国人が資格外活動などの入管法違反を犯さないために、基本的な在留管
理制度に関する説明を行うほか、各都道府県・市区町村での各種手続に関す
る説明を是非実施してほしい。
しろまる 将来的に在留カードとマイナンバーカードの一体化が検討されていると
ころ、同制度の内容についても説明が必要であると考えている。 22(予防的支援の実施場所について)
しろまる 本件コーディネーター制度は、基本的に社会貢献の活動になると想定され
るので、国際交流センターなどの公共施設を利用するほか、各都道府県に設
置されている行政書士会の施設でオリエンテーションを実施するのも良い
のではないか。
しろまる 外国人は、日本人の意識以上に宗教に関する信仰心が高い場合も多く、日
常的に寺院や教会などに足を運んで、僧侶・神父・牧師などに悩みや困り事
を打ち明けている場合がある。そのような場で打ち明けられた困り事などの
うち、公的・法律的な対応が求められる案件については、必要に応じて自治
体や専門家、行政書士、民間企業等に協力を求められるような関係構築が図
れる取組があると良いのではないか。
(コーディネーターに求められる能力について)
しろまる 生活上の困り事を分野ごとに振り分けられる能力が必須である。そのため
には、適切な判断を行うための基礎知識・法律の知識が必要となることはも
ちろんのこと、適切な連携先を選択する能力、コーディネーターに関する理
解、企画・設計・マネジメント能力、総合調整能力等を身に付ける必要があ
る。
しろまる 随時新しい連携先が増えていくことが想定されるため、各連携先の情報収
集能力等も必要である。
しろまる 本件コーディネーターは外国人と接する仕事であるため、コミュニケー
ション能力も当然のことながら重要である。
しろまる 学科試験だけではなく、コミュニケーション能力や、相談事を分野ごとに
振り分けられる能力等が身に付いているかどうかをきちんと見極めるため
の面接試験を実施するなど、しっかりとしたコーディネート人材となるよう
に考慮してほしい。
(国家資格化について)
しろまる 国家資格化した結果、各コーディネーターが民間事業のような形で本制度
を利用することも想定されるところ、手数料の発生等により外国人が気軽に
相談できなくなることも考えられるため、商業的にならないような制度設計
をしてほしい。
しろまる 全ての国家資格において、非常に厳しい試験が設けられていることから、
本件コーディネーター制度についても、それに準じた厳しいものにしてほし
い。 23しろまる 本件コーディネーター制度は基本的に認証制度にとどめ、例えば我々行政
書士のような国家資格者がコーディネーターとして認証を受け、各分野で専
門性を生かした情報提供を行い、予防的支援を実施するのが良いのではない
か。
(コーディネーターの配置先について)
しろまる 地域ごとの外国人割合に応じて配置すべきであり、制度が形骸化しないよ
うに市区町村単位での地域密着型が望ましいと考えている。
しろまる コーディネーターの事務所、自治体、公共施設や行政書士事務所などに
コーディネーターの名簿等を配置し、来所した相談者に示す等の方法があれ
ば、相談者の選択肢が増えるので非常に良いのではないか。
しろまる 一次相談場所としては、相談内容に応じてコーディネーターを探して相談
者に提案できるよう、各自治体に相談窓口を置くのが良いのではないか。
(現行の相談対応の課題・問題について)
しろまる 高い専門性を有する相談員は存在しているものの、マンパワーが不足して
いることが一番の問題であると考えている。
しろまる 緊急性のある相談であっても、相談場所によっては月に1〜2回しか相談
対応が実施されないなどの制限があり、即時対応ができないケースがある。
その上、緊急性の高い相談を分野ごとに切り分けて対応できる場所となると、
さらに相談場所が限られてしまう。
しろまる 外国人住民が少ない地域では、そもそも相談対応の連絡先が分からない場
合や、相談場所への物理的距離が遠く、実際に赴くには時間が掛かりすぎる
等の問題がある。このような場合、オンライン面談などの対処方法が考えら
れるが、居住地域によっては、ネットワーク環境やインフラ整備などの課題
があるのではないかと懸念している。
しろまる 地域に同国出身者が少ない場合は、外国人が孤立するおそれが高くなるた
め、日頃からイベントを実施するなど、地域住民と関わりを持つ機会を増や
すことが重要である。
(研修体制について)
しろまる コーディネーターには、多様性を求め、人が人を大切にする人権尊重の社
会を作り上げるための基本的な考え方が最も重要であると考えていることか
ら、入管法令、労働関係法令、基本的人権に関する基礎研修、国際私法に関
する体系的研修及び事例研修並びに日本の生活様式に係る研修が必要である
と考えている。 24しろまる 外国人からの相談内容は、入国・在留手続にとどまらず、婚姻、離婚、就
職、起業、経営、教育、労働環境、住まい、相続等の生活のあらゆる分野に
及ぶことが想定されるところ、とりわけ、婚姻や離婚、相続については、渉
外戸籍に関する各国の法律や要件等の法的知識や各自治体における統一的な
運用の集積や情報の共有が不可欠である。
しろまる 婚姻や離婚、就職、起業などに際して、在留資格がどのように関わるのか
を理解しておく必要があると考えられるところ、コーディネーターや地方自
治体職員向けに行う在留資格に関する研修の講師には、我々行政書士が適し
ているのではないかと考えている。
しろまる 研修はもちろん必要だが、研修を終えたからといって専門人材と呼べるの
かどうかを、コーディネート能力も含めて検討してほしい。
(外国人を支援する人材を育成するために必要な研修について)
しろまる 相談者のバックグラウンドとなる国籍、地域、民族、言語、宗教、文化的
多様性など、多文化共生を理解するための基礎知識を習得するための研修が
必須である。
しろまる 1お互いの違いを認識した上で、外国人に日本のルールや慣習等をやさし
い日本語で伝えるための能力、2他者を尊重し、相手や状況に合わせた効果
的なコミュニケーションを取るための知識・技能、3多様な他者と信頼関係
を構築し、チームを作ってネットワークを広げる能力、4組織の枠組みを超
えて連携、協働及び推進するプロセス等を学ぶことも重要である。
しろまる 相談対応時に法的な見解の回答が求められた際の対応方法や、士業の業務
に係る知識(特に士業法との抵触)等が形骸化しないよう、法令遵守制約を
カリキュラムに取り入れてほしい。
しろまる 技能実習制度において発生している諸問題を、本件コーディネーター制度
に生かすことが重要であると考えているため、技能実習制度で法定講習とし
て実施されている「監理責任者講習」の研修体制を参考にすると良いのでは
ないか。
しろまる 近年、多文化共生が注目されている中で、当会では大学教授等を招いて人
権に関する研修等を行っているほか、各都道府県において寄せられた人権に
関する様々な相談事項等について情報共有を行っている。また、当会には権
利擁護推進委員会という組織があり、会員の中には「人権擁護委員」を拝命
している者もいる。
しろまる 人権研修に関しては、法律的な人権のみではなく、日常生活における人権
や、LGBTに基づく人権の保護等も研修内容に盛り込むことが必要である
と考えている。 25(外国人に対する相談支援・支援の現状について)
しろまる 相談者が生活者として次のステージに進んだ際に、どのような悩み事を
抱え、何を求めているかを適切に把握しサポートすることが重要であると
考えるが、
実際に相談者の生活を毎日見ているわけではないので、
具体的に
どのようなサポートが必要であるのかといった細かな点までをケアするこ
との難しさを感じている。
例えば、
外国人が病気になった際に、
近隣の病院
を案内するだけでは本人は何もできないので、
病院までの付き添い、
病状の
説明、
費用や保険制度までのトータルケアが必要になるが、
現状どの程度の
支援体制ができているのかを知りたい。
しろまる コーディネーター制度においては、職業上の領域を離れた時点で終了と
するのではなく、
連携後の進捗確認や、
一定の成果を見える化した上で共有
することが重要である。例えば、奈良県では、災害時通訳・翻訳ボランティ
アを募集して年に2〜3回研修を行っているところ、ボランティアの人た
ちは従事する外国語ごとにグループ分けされており、日頃から外国人のサ
ポートをしたいという志のあるメンバーで構成されている。このように各
言語に精通し外国人相談に対応できる地域住民を、コーディネーター候補
として把握することも重要であると考えている。
しろまる 地域密接型の制度となるよう、
各市区町村の外国人相談窓口との連絡・連
携をしっかり行うことが重要である。
(外国人からの相談内容として今後増えることが見込まれる案件について)
しろまる 在留外国人についても高齢化が進んでおり、認知症を発症するケース等
が増えることが見込まれるため、
その方の財産保護の観点等も含め、
成年後
見制度の運用等に関する相談も視野に入れておく必要があると考えている。
(国に対する要望)
しろまる 実際にあった事例として、外国人女性が妊娠した際に、オーバーステイ
を理由に母子手帳が発行されない事例があった。本件については、行政書
士が間に入り、パートナーが住所を置いている自治体に依頼したことで最
終的に母子手帳を発行されることとなったが、本人はとても不安がってい
た。オーバーステイ等の法律違反はもちろん良くないが、こどもの健康福
祉のためにも柔軟に対応するようにしてほしい。
しろまる コーディネーターだけで全ての相談に対応するのは難しいので、各自治
体の外国人材受入れサポートセンター等に一定の予算をつけて、そこに人
材を常駐させたり、定期的に相談窓口を設置する等すれば、外国人が相談 26に行きやすくなるほか、国や自治体がしっかりとサポートしていることが
外国人に伝わることで、外国人も安心して暮らしていけると思う。
しろまる 外国人にとって、子どもの教育や日本語教育は大きな壁となるので、
しっかりとサポートしてほしい。
しろまる 現場で様々な問題に直面して戸惑うことも多い中で、
相談窓口が連携で
きていないことも多々あるので、
きちんと組織化し、
連携の形がはっきり
見えるようにしてほしい。
しろまる コーディネーター制度が国家資格化されると、
オーバーステイなどの法
令違反者は通報されることをおそれて相談しづらくなることも考えられ
るので、たとえ法律違反の状態であっても必要な行政手続を受けられる
ようにケアしてほしい。
しろまる コーディネーターが、
やさしい日本語で外国人とコミュニケーションを
取れる体制を整えるほか、在留外国人にもやさしい日本語であれば最低
限のコミュニケーションが取れるような日本語能力を身に付けてほしい。
それを在留資格の要件とすることは難しいかもしれないが、
例えば、
在留
期間の更新で3年、5年の在留期間を付与されるためには、
「やさしい日
本語の研修を受けていること」や、
「一定以上の日本語能力の資格をもっ
ていること」などがプラスの評価とされるようにすると良いのではない
か。
しろまる 外国人がコーディネーターの資格を取得した場合に、
「技術・人文知識・
国際業務」
の在留資格該当性を認めることなどを明確にすれば、
優秀で志
のある外国人のコーディネーター志望者が増えるのではないか。
しろまる 行政書士は、外国人の手続だけでなく、高齢者に係る成年後見制度や、
障がい者支援、
LGBTに係る問題なども取り扱っており、
様々な情報を
取りまとめて共有していることから、実例等も含めた対処方法などをお
伝えすることも可能である。
当会としても、
外国人がしっかりと生活でき
るよう支援していきたいと考えているので、行政書士を積極的に活用し
ていただきたい。
以上 27関係者ヒアリング結果概要
1 日時
令和5年2月9日(木)13 時 59 分〜14 時 54 分
2 場所
オンライン開催
3 対象者
日本商工会議所産業政策第二部 部長 大下 英和 氏
4 対応者
出入国在留管理庁政策課外国人施策推進室 朝熊法務専門官 ほか
5 内容
(現行の相談対応の課題・問題等について)
しろまる 日本商工会議所は直接外国人材の方々に接しているわけではなく、全国で
十数か所の商工会議所が技能実習生の監理団体等の役割を担っており、その
現場から様々な声が寄せられている。
しろまる 監理団体等の役割を担っている商工会議所では、受入れの多いベトナム人
やミャンマー人の母国語が分かる外国人を職員として雇っているケースがあ
り、何か問題があればその外国人職員が窓口として相談を受けている。
しろまる 例えば、ベトナム人などは、困り事があると同国人同士のSNSで解決策
を聞くことが多いとも聞いている。解決につながれば良いが、適切でない対
応に流れていくケースもあると伺っている。
しろまる 今回検討されている様々な外国人の生活上の困り事に対して適切に対応で
きるコーディネーターを、多くの外国人が働いたり住んだりしている地域に
一定数配置していただくことは、非常に意味があると思っている。
しろまる 現在、受入れ企業やその企業を支援している監理団体等が日本語の教育か
ら生活面の相談対応まで行うようになっているが、これだけ外国人の受入れ
が増えてくると、対応しきれないというのが足元の課題、問題点であると
思っている。
しろまる こうしたコーディネーターのような仕組みがしっかりできて、各地域に
コーディネーターが配置される状況、特に自治体の窓口に配置されている状
況が望ましいと思っており、出来るだけ早く形にしてほしい。
(コーディネーターの役割・業務内容について)
しろまる コーディネーターには、相談者に対する直接の対応と予防的な支援を期待
する。想定される相談、困り事に対応するに当たっては、実際には地域ごと
につなぎ先が異なることもある。可能ならば母国語でコミュニケーションが 28でき、かつ、地域特有の状況に対する理解も必要である。
しろまる 業務内容として、適切な窓口につなぐだけでなく、相談者の困り事が解決
するまで寄り添って対応できることが本来は望ましい。
(予防的支援について)
しろまる 相談者への直接の対応に加えて大事なのは予防的支援である。外国人が転
入して来た際に、その地域で暮らす上で必要な基礎知識を研修することが大
切である。転入時だけでなく、定期的に情報のアップデートを行い、能動的
に外国人とコミュニケーションを取ることも非常に大事である。
しろまる 予防的支援の内容は、日本語、生活する上で必要な文化、習慣、マナーの
理解が基本であり、その地域に落とし込んだ内容で教えていく必要がある。
しろまる 予防的支援を実施する場所については、東京にはFRESCというワンス
トップで対応できる施設がある。他の地域でも、ワンストップで対応できる
体制が望ましい。
しろまる 自治体の窓口では外国人の相談を受けられない場合もあり、コーディネー
ターが自治体に改善を働き掛けていくということも非常に大事である。
(コーディネーターの能力について)
しろまる コーディネーターの能力としては、親身になって外国人側の立場に立って
物事を考え、動けることが基本である。自治体の窓口等に関する知識やネッ
トワークはもちろんのこと、外国人側の元々の生活習慣や考え方、日本人と
の相違点をきちんと理解していくことが最低限必要であると思っている。
(コーディネーターの認証制度等について)
しろまる 認証制度を設けることは否定しないが、コーディネーターとしての役割
は、国家資格を持っているからできるというものではなく、また、一定の座
学を受ければできるというものでもないと考える。
しろまる 認証制度を設けるには、コーディネーターとしての役割を果たすために学
ぶべき基本的な知識を示す必要があるが、一方で、実際にコーディネーター
に類似した活動を行っている方を中心に、事例の共有と問題解決を行ってい
く仕組み作りを可能な限り早期に始めた方が良い。
しろまる しっかりした資格制度を作るのは後でも構わないので、まずは実際にコー
ディネーター的な役割を担っている方同士が連携して、個々の取組みのレベ
ルを上げ、コーディネーターの役割を明確にし、その役割を担うことができ
そうな人物に研修を行い、コーディネーターの担い手を増やしていくことが
重要である。 29しろまる 企業側からすると、深刻な人手不足の中で、外国人にはもっと早く、もっ
とたくさん来てほしいと思っている。しかし、企業側がその外国人の生活面
まで見なくてはならないとなると、負担が重く十分に対応できない。場合に
よっては外国人が犯罪行為に及ぶ、あるいは日本に悪い印象を持って帰国を
するという状況が繰り返されることにもなりかねない。そのようになってし
まうのは、受け入れる企業、外国人材の双方にとって望ましくない。
しろまる コーディネーターの担い手をどんどん増やす取組は、あまり形にとらわれ
ずに1日も早く進めていただきたい。国家資格化してハードルを上げ、仕組
みの整備に時間が掛かってしまうのは本末転倒である。完璧でなくても良い
ので、外国人支援をやる意欲があり、できる人材を増やしていくことが必要
であると思っている。
(コーディネーターに必要な研修体制等について)
しろまる 全国各地でコーディネーター的な取組をしている方々に基本的に押さえて
おくべきポイントを整理してもらい、その内容に沿って研修を実施すること
になるのではないかと思っている。そうした研修を受けた後、コーディネー
ターそれぞれが自治体や地域において、そのポイントを一つ一つ確認し、
各々ネットワークを作っていく必要があり、座学よりも、実際に地域におい
て事案を共有し合いながらレベルを上げていくことが大事である。
しろまる 基本的な知識を取りまとめた研修が出来れば、監理団体の職員や受入れ企
業の職員にとっても役に立つのではと思う。
ただし、
研修を受けたからといっ
て、それらの職員のみで外国人に対する支援を全てカバーするという考えは、
本来は違うというのが我々の思いである。
しろまる 外国人は職場にいる時は働く人だが、
それ以外の時には生活者であり、
生活
の困りごとに対する支援は基本的には公的に行うべきものである。まずは
コーディネーターの役割を果たせる人が、自治体に配置されていることが望
ましい。その上で、受入れ企業等においても、そのような知識を一定程度持っ
ている職員がいるというのが理想である。
しろまる 現在、商工会議所では、外国人支援に関する研修等は行っていない。監理団
体や登録支援機関を行っている商工会議所においては、受入れ機関等に対す
る研修や指導等、一般的な監理団体等が行っている内容のことは当然に行っ
ているはずであるが、受入れ担当者の育成は行っていないと思われる。
しろまる 研修の仕組みを作るのであれば、現場での実習を取り入れるべきである。
資格制度を導入するのであれば、資格を持っている人の指導の元で、実際の
相談に対応するという内容を入れ込むべきである。 30(監理団体等を務める商工会議所の支援先について)
しろまる 川口商工会議所では、会員事業所から、技能実習生や特定技能外国人を受
け入れたいが、監理団体や登録支援機関となってくれるところがないので、
商工会議所で務めてくれないかとの要望があり、地場産業の深刻な人手不足
もあって、監理団体等を務めることとなったと聞いている。
しろまる 監理団体等を務めている他の商工会議所も同じような状況で、実際の支援
先は会員事業所である。
(今後の見通し等について)
しろまる 事業所側はできるだけ多くの外国人に働きに来てほしいが、生活面の支援
までは手が回らないため、そこをどうにかしてほしいという点が深刻な問題
となっている。
しろまる 生活面の支援で鍵となるのは日本語能力である。日本語ができれば、病院
に行くなど自身でできることも増え、受入れ機関等の負担が軽減される。
しろまる 加えて、監理団体や外国人本人も相談窓口の存在を認知していないような
ので、相談窓口の認知度を高めるという取組も非常に大事である。
しろまる 働く外国人が増えてくれば単なる生活支援だけではなく、日本の税制や社
会保険制度などの相談も増えてくる可能性があり、適切に窓口につなげられ
る体制が必要であると思っている。
(国に対する要望について)
しろまる 地方の中小企業は人手不足が深刻で、外国人の受入れを望む企業は大変多
い。外国人に来てもらえるのであれば、仕事はしっかり教える体制はある。
そのためには、労働者として受け入れると同時に、生活者として外国人を受
け入れるしっかりした公的な仕組みを設計することが非常に大事である。
しろまる 今回のコーディネーターを一つの核にして、各自治体で外国人の方々が安
心して暮らせることになれば、その地域の日本人も安心して暮らせる状況に
なる。国がリーダーシップを発揮して資金面や事業面でしっかりと自治体を
支援することが大事である。
以上 31関係者ヒアリング結果概要
1 日時
令和 5 年 2 月 17 日(金)10 時 50 分〜11 時 50 分
2 場所
オンライン開催
3 対象者
日本弁護士連合会 滑川 和也弁護士(広島弁護士会所属)
4 対応者
出入国在留管理庁政策課外国人施策推進室 木村室長 ほか
5 内容
(相談対応支援に係る役割・業務内容について)
しろまる この役割、
業務については共感している。
一方、
入管庁の立場と異なる立場、
考え方がある。
例えば、
非正規滞在者を支援の対象に含めることは難しいかも
しれないが、
非正規滞在者の中には、
難民認定申請をしても認められない方や、
日本人の配偶者や子供がいる方などもいる。
弁護士の立場としては、
そのよう
な方にも支援の手を差し伸べる必要があると考えており、非正規滞在者等が
困り事を抱えている場合に、弁護士や支援者につなぐための仕組みも検討し
てほしい。
(予防的支援の実施場所について)
〇 弁護士会が相談会を企画しても法的支援に関する相談者はなかなか集まら
ず、
行政に対して相談をする人が多いということを実感しているため、
地方自
治体を拠点にするのは良いと考えている。
(コーディネーターに求められる能力について)
〇 一つの考え方に縛られず複合的な物事の見方ができる方に、コーディネー
ターを務めていただきたいと考えている。
しろまる 外国人特有の差別として、アルバイトの面接で外国人であることを理由に
採用を断られた、中学校で物が紛失した際に外国人であることを理由に犯人
と疑われたといった事例や、保証人を付けなければアパートを借りることが
できないといった事例がある。
〇 このような外国人差別など、
外国人特有の複雑な問題がある中で、
そのよう
な問題に真に理解を示すことができ、問題を分野ごとに的確に振り分けられ
る能力を持った方にコーディネーターを務めてほしいと考えている。 32(国家資格化について)
〇 これまでの入管業務は外国人に対する管理や取り締まりが中心であった。
近年になって新たに外国人支援に取り組むこととなったため、支援業務が入
管庁の中で独立し、
土台がしっかりとでき上がった後に、
国家資格化を検討す
るのが良いのでないか。
国内でも、
外国人への向き合い方に対して様々な意見
がある中で、現時点において国家資格化することには消極的である。
(コーディネーターの配置先について)
〇 市町村等の自治体に配置するほか、広島国際センター等の外郭団体に配置
するのが良いのではないか。
(現行の相談対応の課題について)
〇 人材不足が一番の問題であると考えている。コーディネーターに相応しい
人材を見つけるのは難しく、外国人の散在地域となると更に人材の確保が困
難となる。
これらの問題は弁護士にも共通しており、
言葉の問題等により外国
人の案件を扱う弁護士が少なく、
外国人に対応できる人は少ない。
支援人材は
必ず必要な人材であり、しっかりと育成していくことが大切である。
(相談対応に従事する職員に必要な研修について)
〇 外国人にも等しく保証される自由権規約、
社会権規約、
難民条約、
女性差別
撤廃条約、子どもの権利条約、人種差別撤廃条約、拷問等禁止条約、強制失踪
条約及び障がい者権利条約等の国際人権条約に関して、国際人権法の専門家
を招いて講義を実施してほしい。
〇 異なる立場の人の意見を聞くことも重要であるため、そのような立場の人
に講義を実施してもらうのも良いのではないか。
その上で、
コーディネーター
自身が様々な意見を整理してミックスしていくことが重要ではないかと考え
る。
しろまる 苦労して在留特別許可を受けた当事者の話、訴訟が終了した後に相手方
だった弁護士の話なども是非講義内容に取り入れてほしい。
(外国人に対する相談支援・支援の現状全般について)
しろまる 近年、
SDGsやESGが注目される中、
グローバルな視点から、
外国人を
含む人権問題に対して日本がどのように取り組んでいるかという点も重要で
あると考えている。 33(今後増加が想定される相談内容について)
〇 難民問題に関する相談が今後増えていく可能性があると感じている。また、
人手不足を外国人労働者に頼るという流れが今後も続くことが見込まれるた
め、
労働問題に関する相談が増加すると考えられるほか、
日本で生まれたり、
日本に来た外国籍の子供の生活や教育に関する相談、日系ブラジル人等の高
齢化に関する諸問題の相談も増えると感じている。
〇 外国人の高齢化が進んでいく中で、死後の相続等の相談が寄せられること
が考えられるところ、基本的には、相続の法律について、どの国の法律で適用
されるかなどのテクニカルな問題に対処できる能力が必要である。
他方、
偽装
結婚の場合の相続問題などについては、対応が難しいと感じている。
(その他)
〇 法的支援に関する相談については弁護士で対応できるが、生活支援に関す
る相談については弁護士の管轄外となるので相談のつなぎ先を探すこととな
るところ、連携先が上手く見つからないことがある。行政につなぐこともあ
るが、案件の難しさによっては相談先が熱心に対応してくれないケースもあ
り、最終的には支援者やコミュニティー頼みになってしまっている。
〇 外国人の散在地域の市町村から生活相談や専門相談の依頼があった際には、
県の外郭団体である広島国際センターが中心となり出張相談を行っているが、
頻度が年に1回程度であるほか、広報がなかなか上手くいっていない影響も
あり、相談件数は2件程度である。
〇 日本弁護士連合会には、
「多文化共生社会の実現に関するワーキンググルー
プ」があり、そこで多文化共生社会の課題に取り組んでいる。多文化共生社
会をどう捉えるかについて、国としてはっきりと定まっていないほか、人に
より考え方が異なると感じている。
以上 34関係者ヒアリング結果概要
1 日時
令和5年2月 20 日(月)14 時 00 分〜15 時 05 分
2 場所
オンライン開催
3 対象者
一般財団法人日本語教育振興協会 評議員 中西 郁太郎 氏
一般社団法人全国日本語学校連合会 副理事長 長岡 博司 氏
一般社団法人日本語学校ネットワーク 代表理事 大日向 和知夫 氏
一般社団法人一般社団法人全国各種学校日本語教育協会
副理事長 新井 時賛 氏
全国専門学校日本語教育協会 会長 深堀 和子 氏
一般社団法人全日本学校法人日本語教育協議会 代表理事 江副 隆秀 氏
日本語教育機関団体連絡協議会事務局 谷 一郎 氏
日本語教育機関団体連絡協議会事務局 森下 明子 氏
4 対応者
出入国在留管理庁政策課外国人施策推進室 木村室長 ほか
5 内容
(地域全体の課題・問題について)
しろまる 外国人からの相談への対応が組織化されておらず、省庁、都道府県、市区
町村、NPO団体と主体者がそれぞれ対策や窓口を設けるなど、交通整理さ
れていないため情報迷子となり、結局、具体的支援にまでたどり着けない
ケースが非常に増えている。
しろまる 例えば、外国人の方が日本語の勉強をしたいと考えた際に、行政窓口でボ
ランティアの日本語教室は案内されるが、日本語教育機関の紹介が行われて
いないという状況がある。行政は、特定の学校等を案内することを懸念して
いるように思われるが、日本語教育機関においては、日本語教育に関連して
いろいろな相談対応も行うことが可能であるところ、十分に活用していただ
けていないと感じている。なお、地域日本語教育コーディネーターがそうし
た外国人から相談を受けた場合に学校につないでいるかどうかは判然としな
い。
(日本語教育機関の生活指導担当者の課題・問題について)
しろまる 日本語教育機関では生活指導担当者が設置されており、当該担当者が在籍
している学生の様々な相談業務を行っているため、対応事例がかなり蓄積さ 35れていることから、日常的に困っているということはない。
しろまる しかし、トラブルがあった際、特に、学生が亡くなった場合には、多岐に
わたる対応が必要となるため、行政のサポートが受けられる形であればあり
がたい。
(相談対応支援における役割・業務内容について)
しろまる 相談対応で支援が必要な要因の一つとして、外国人の日本語力不足がある
ものと考えられる。この点において、文化庁が主導して行っている日本語教
育の観点からの地域日本語教育コーディネーターという制度があるが、貴庁
が考えているコーディネーター制度との役割、業務内容の違い、線引きなど
がかなり重複している印象を受けるため、コーディネーターの所属、業務内
容、予算というものをはっきりさせるためにも、その点をしっかり検討して
いただきたい。
(地域全体の予防的支援の実施場所・取り組むべき内容について)
しろまる 入国後、できるだけ早い時期にオリエンテーションが実施されるべきであ
り、実際に我々も新しく来日した留学生に早期にオリエンテーションを実施
している。
しろまる オリエンテーションについては、我々も継続して留学生に行ってきた経験
から、入国直後だけではなく、適切な時期に定期的に実施する必要があると
承知しており、地域全体としても同様ではないかと考えている。
しろまる オリエンテーションの内容については、相談事例の多いものから重点的に
行っていくべきであり、オリエンテーションの実施場所は、やはり自治体の
庁舎などが良いと思われるが、同時にアクセスの良い場所であるべきと考え
る。また、相談者が少ない地域又は相談者が意思疎通できる言語対応者が少
ないケースの場合では、オンラインでの対応も考えて良いのではないか。
しろまる 予防的支援の実施場所として是非申し上げたいのが、日本語教育機関との
連携である。我々は、留学生が主な対象ではあるが、入国直後やその後の定
期的に実施するオリエンテーション等の研修により、それなりのノウハウが
あるほか、全国に日本語教育機関があるため場所の面でも活用いただけるの
ではないかと思っている。
しろまる 日本語教育機関で実施している予防的支援は、警察による日本の法令遵守
(交通規則、資格外活動、犯罪等に巻き込まれないための注意喚起、交通事故
に遭ったときの対応)、地域の生活ルール・マナー
(ごみ出し、
部屋の使い方、
騒音、駐輪場)及び在留資格などのオリエンテーションが挙げられる。 36(日本語教育機関における予防的支援について)
しろまる 初級、中級などと対象の先生たちのレベルが上がってくることに加え、外
国人の在留期間が長くなるに連れてトラブルの内容も変わってくるため、入
国時のオリエンテーションで教えたからといって、長期的に在留する外国人
の問題が全て解決するわけではなく、積み重ってなってきた時のトラブルに
対しての研修が行われることが必要である。
しろまる また、外国人なので、1回言ったら伝わっているという考えではミスが多
く起こる。何度も伝えることで、外国人のタイミング、個人個人のタイミン
グを把握する能力が必要であると感じることも、定期的に研修を実施する一
つのポイントと思っている。
しろまる 日本語教育機関は、4月、7月、10月、1月と最大4回の入国のシーズン
があり、そのタイミングに合わせて、新規でオリエンテーションを実施し、
その間のタームでちょうどいい2、3か月後又は6か月後ぐらいのタイミン
グで再度オリエンテーションを行っているのが一般的な日本語教育機関では
ないかと思われる。
しろまる 日本語教育関は長いと2年間在籍することになるが、この2年間における
ポイントポイントで重要となる項目が変わってくる。
例えば、
入国直後は社会
適応のための基礎的知識であるが、
ステージが進めば、
日本語教育機関を卒業
した後に就職するのか進学するのかなど、
ステージを移っていくに連れて、そのタイミングでどのようなことを考えなければいけないのか、準備しなけれ
ばならないのか、
どのような行政手続を行わなければならないのか等、
タイミ
ングによって要求される重要なことが変わってくるため、これが定期的にオ
リエンテーションが行なわれている背景にもなっている。
(コーディネーターに求められる能力について)
しろまる いろいろと求められる能力は考えられるが、特に必要な能力は、我が国の
基本的な社会の制度や法令に関する知識であり、この能力がないと相談にも
対応できないだろうと思われる。
しろまる また、重要なのがコミュニケーション能力であり、知識ばかりがあっても
相談対応は対人なので、コミュニケーションや意思疎通がしっかりできる方
でないと問題がある。
しろまる 加えて、コミュニケーションを取る上で1番良い方法は、母国語でいろい
ろ話を聞いてあげられることであり、それが困難であっても、媒介語として
英語などの語学スキルがあった方が良い。日本語でも構わない場合も多いと
思われるが、その際はやさしい日本語で話すスキルを持っている方がコー
ディネーターであれば、コミュニケーションを取るのに役立つだろうと思わ 37れる。
(コーディネーターの国家資格化について)
しろまる 国家資格化については、我々の中でも賛成意見、慎重意見及び反対意見が
ある。
しろまる 賛成意見としては、現状、相談対応についてはボランティアで対応されて
いることが多いが、対応の内容に関して非常に偏りがあると考えている。今
回のコーディネーターの役割・能力をしっかり決めて国家資格ないしそれに
準ずる認定資格にすることで、この偏りが整理されるのではないかという意
見がある。
しろまる 慎重意見としては、将来的には国家資格でも良いかもしれないが、慌てて
無理やり国家資格などを作ってしまうことによって、実態にそぐわないよう
な形で制度ができてしまい、せっかくコーディネーターが活躍できる場面を
限定してしまうのではないかという意見がある。
しろまる また、知識は計りやすいが、コミュニケーション能力や人間性を計るのは
難しく、他方で、そのような能力が非常に大切な仕事となるため、これらの
理由から国家資格化は慎重に考えるべきとの意見がある。
しろまる 加えて、コーディネーター制度を作るまでに時間も掛かるものと思われ、
時代も変化していく中で、堅い制度を作ってしまうと柔軟に対応できなくな
るのではないかという心配もあるほか、コーディネーターには知識だけでは
なく、経験が重要な部分をかなり占めていると思われることから、単純に知
識を試験で計る形ではなく、経験を評価する形にしないと意味がないのでは
ないかとの意見がある。
しろまる 最後に反対意見については、慎重意見とほぼ同様であるが、評価試験だけ
ではコーディネーターの能力は評価できないとの意見がある。
(研修体制について)
しろまる 基本的法令知識が必要であるが、ある時点での知識ではなく、常に運用を
把握していることに加え、法令知識をアップデートする研修が必要である。
また、外国人の問題は多岐にわたるため、個別事例でのケーススタディが非
常に重要かと思われる。
しろまる 加えて、
知識のみではなく、
相談に当たっての接し方に関する研修のほか、
コーディネーターが日本語教師を兼ねていれば良いが、そうでない方の場合
は、
やさしい日本語で話すことができるような研修、
在留資格に関連する相談
も多いものと思われるため、在留諸申請等の業務に関する研修も必要ではな
いかと考える。 38しろまる 上記に加え、研修よりも、まず外国人に対するポリシーをはっきりさせる
べきである。また、知識だけはあるが、外国人との接点や接した経験がない
人には荷が重いのではないか。
しろまる まずは、国が目指す社会は、多文化共生社会なのか統合社会なのかといっ
た基本的な考え方・方針を明確に示す必要がある。
(国が実施する研修において要望する分野(科目)について)
しろまる 研修が必要と思われる項目として、デジタル対応能力(デジタル申請の際
の手順)、被害者、加害者両面からの対応策に関するケーススタディ、在留
資格等入管法に関する分野(全在留資格に関する網羅的な知識と実際の申請
書類の運用方法等)、申請業務を犯罪等で悪用するケースへの対応策、問題
点を提起する情報交換会とそれに対する関係省庁からアドバイスを受けられ
る場の提供、カウンセリング手法、異文化間コミュニケーション、国別、民
族別の特徴、市区町村の担当部署に主体的な地域の支援体制を作る視点や意
識を授ける科目、世界と日本をふかんする科目(地政学的なもの)等が挙げ
られるが、網羅的に列挙したわけではないので、実際に研修を制度化する際
には、このような項目について時間を掛けて整備することが必要だと思われ
る。
(日本語教育機関における研修について)
しろまる 各日本語教育機関において、経験のある先輩が後輩にいろいろな個々のケー
スについて伝授していくといったことが常に行われている。
しろまる 組織的な研修としては、各団体の中で大規模なものから小規模なものなど
様々行われているところ、その中で1番大きい研修は日本語教育振興協会の
生活指導担当者研修となり、経験が浅い3年以内ぐらいの職員を対象にした
ものと、ある程度ベテランの域に達した職員を対象にしたものがそれぞれ年
1回行われており、以前は集合研修で東京や地方で行っていたものの、今年
度はオンラインで実施している。
しろまる 日本語教育振興協会だけではなく、他の団体においても内部で大なり小な
り似たような研修が行われている。
(外国人に対する相談支援・支援の現状全般について)
しろまる 外国人に対する相談対応は学校や企業において個別に行われているが、組
織的な連携が不足している。また、国において、外国人の受入れに関する基
本的施策や総合的な受入れ、処遇に関する方針が明らかでないため、相談等
の方向性が定まらない。 39しろまる 小中高の教員が抱えている外国ルーツの児童生徒や保護者への個別指導支
援の負担増に関して、日本語教育機関が柔軟に関われることでいろいろと貢
献できると考えているところ、そのような仕組みがないということが問題と
認識している。
しろまる また、理想的には中長期在留が見込まれる全ての外国人について、来日の
初期に日本語教育が行われていれば、かなり問題が解決するのではないかと
我々は感じているところ、その体制が整っていないということが問題なので
はないかと思っている。
しろまる 細かい点となるが、外国人が銀行口座を開設する際のハードルが非常に高
く、この点に関する困り事、相談が現状として非常に多い。加えて、外国人
が病気や怪我をした場合に、母国語での医療通訳がうまく提供されていない
ため、我々自身も困ることが多い。
(日本語教育機関における他の教育機関との連携等について)
しろまる 全国日本語学校連合会においては、年2回、大学や専門学校と連携して大
きな会場借りて進学フェアを開催している。ただし、留学生の中には、大学
に進学せずに、就職を希望するケースも増えてきており、そうなるとどうし
ても企業とのマッチングが必要となることから、産官学の連携がもっと必要
だと考えている。
しろまる 神奈川県では神奈川拠点校において、いわゆるコーディネーター的な役割
を担ったエキスパートの専門家が、大学や専門学校などの留学生に対して留
学生の困り事や就職などのいろいろな問題への相談対応、指導を行っており、
貴庁が目指しているコーディネーター制度に近い取組を実施している。
(*なお、
令和2年度から拠点校での定期講座開催は終了し、
県内教育機関か
らの希望に基づき出前講座方式で開催している。)
しろまる 公益財団法人川崎市国際交流協会では川崎市国際交流センターに外国人窓
口相談コーナーを設け、
行政書士による無料相談会を行っている。
10か国の言
語での相談ができ、やさしい日本語でも対応できる。外国人のビザ・在留資格
に関する問題、国際結婚・離婚、子供の国籍、会社設立、日本支店設立、外国
人雇用などに関する無料相談を行政書士が行っている。
しろまる 外国人支援についてはボランティアベースであるため、基本的には深刻な
問題、カウンセリングができない。留学生が亡くなった場合においても、国
における文化、習慣等があるため、いろいろな経験を積んでいる方でないと
連携ができない。
しろまる 日本語教育振興協会においては、外部向けの外国人材生活支援担当者実務
研修を行っている。令和3年度はコロナ禍のため実施していないが、日本語 40教育機関で培った経験を、例えば、介護施設や専門学校、大学の生活指導担
当者と共にケーススタディやグループワークを実施しながら、全体的な横の
共有等も行っている。
(今後、増加が想定される外国人からの相談内容について)
しろまる 主に、子供の学習相談、心の問題に関する相談、就労、所属機関離脱後の残
留、難民認定申請などの入管関連、日本語学習、就労に関する相談、外国ルー
ツで日本国籍を保持する児童生徒の受験問題、価値観が異なることに起因す
る問題、犯罪、民事上のトラブル相談、不動産、婚姻(邦人との婚姻を含む)及
び仕事上のトラブル相談、
生活全般の問題
(在留資格による社会保障制度の差
異なども含む)などが挙げられる。
(国に対する要望について)
しろまる 外国人生活者に対する公的負担による日本語教育の機会を確保していただ
きたい。
しろまる 文化庁及び入管庁両方からコーディネーター制度が提唱されており、政府
の取組としてバラバラ感があるため、省庁間でしっかり調整又は統合するな
どしてほしい。
しろまる 日本語教育機関は、相談対応の窓口としても、研修の実施機関としても、そ
れなりの経験の蓄積があることから、是非活用いただけたらと思っている。
しろまる 貴庁への申請書類を全て英語のままで構わないという取扱いにしていただ
きたい。
日本語教育機関に40〜50年在籍しているが、
これまでずっと入管庁に
提出する書類を日本語に翻訳してきた。
この作業がなくなるだけでも時間、エネルギー、費用の面が軽減化されるため、入管庁においても体制、言語という
点について入管庁としての企業努力をすることで、制度設計の在り方も異
なってくるものと思われる。
しろまる グローバルスタンダードという考えに基づき、外国人の受入れを行ってい
る各国がどのような対応をしているのか調査して、世界水準のような対応を
行ってもらいたい。
以上 41関係者ヒアリング結果概要
1 日時
令和5年2月 21 日(火)15 時 30 分〜16 時 30 分
2 場所
オンライン開催
3 対象者
日本経済団体連合会産業政策本部 上席主幹 脇坂 大介 氏
日本経済団体連合会産業政策本部 部 員 清水 優作 氏
4 対応者
出入国在留管理庁政策課外国人施策推進室 木村室長 ほか
5 内容
(現行の相談対応の課題・問題等について)
しろまる 経団連の会員企業で雇用されている外国人への相談対応は、当該企業の人
事部又は人事部が外部委託している外国人サポート会社が実施していること
が多いと聞く。現行の相談対応について問題が発生しているとは聞いていな
い。
(予防的支援について)
しろまる コーディネーターに相談する外国人が不法滞在をしている場合、コーディ
ネーターの身分によっては通報義務が課される。利益相反になり、十分な支
援ができない恐れがある。本当に助けを必要としている外国人も相談に来な
くなる可能性がある。
しろまる 不法滞在者が予防的支援を求めた場合にはどのように対応するのか、整理
することがコーディネーター及び外国人双方にとって良いと考える。
(コーディネーターに求められる能力について)
しろまる 入管法の理解が重要。また外国人の在留状況を正確に把握する能力は必須
である。
しろまる 支援する外国人のバックグラウンドによって、コーディネーターの対応の
仕方は大きく変わる。例えば、日系人の場合でも、ブラジル人とペルー人で
は文化的な背景や言語が異なるため、同じような対応はできない。
しろまる 近年では、日系人は少なくなっている一方で、アジア諸国からの若い技能
実習生や特定技能外国人が増えている。日系人の支援で培ったノウハウでは
技能実習生や特定技能外国人に対してうまく対応できないと集住都市会議で
も指摘されている。 42しろまる これらのことから、在留外国人は多様であるということを前提に、外国人
それぞれのバックグラウンドに応じて、きめ細やかな対応ができることが、
コーディネーターには求められている能力である。
しろまる 加えて、コーディネーターは日本人と外国人の橋渡しをする役割もある。
日本の文化や考え方を分かりやすく外国人に伝えられる能力も求められる。
(コーディネーターの国家資格化等について)
しろまる 国家資格化することにより、コーディネーターに求められる能力や研修内
容が体系化されるという良い点がある。
しろまる コーディネーターは任期付きの採用ではなくフルタイム形式で、例えば、
地方自治体の職員として安定した立場で働いていただくことが、ノウハウの
蓄積やネットワーキングの構築に資すると考える。コーディネーターは役所
内での調整も求められるため、地方自治体におけるネットワークの有無に
よって、コーディネーターが果たせる役割の大きさを左右すると考える。
しろまる 市役所、NPO法人等への対応といった観点からも、名称独占の国家資格
を有していれば、コーディネーター自身が物事を進めやすいと思われる。ま
た、コーディネーター自身の処遇が安定することでコーディネーターの活躍
範囲が広がると考える。
しろまる コーディネーターは公務員として任命、委嘱することで、安定的な立場で
活躍できるようにした方が良いのではないか。
(研修体制について)
しろまる ノウハウの蓄積については是非進めていただきたい。医療分野で行われて
いる症例の共有のように、ノウハウや事例を調べることができる信頼性の高
いデータベースがあれば、
支援にあたって、
効率的に素早い判断が可能となる。
また、コーディネーターが自主的に学習できるよう教材としてもデータベー
スは活用できると考える。
しろまる 災害に遭った際、外国人は日本人よりも弱い立場に置かれることが非常に
多い。例えば、水や雪の災害、地震、台風の際にどのような支援が必要なの
か、また、予防的措置として災害から身を守る方法について、どのように外
国人に伝えていくのかといった災害教育も重要である。
しろまる 国家資格取得後においても、法律や制度、外国人が置かれる立場、在留す
る外国人の属性は刻一刻と変化するため、定期的に研修を受講する機会を設
けていただきたいと考える。
しろまる 経団連でも提言しているが、政府の施策としてライフサイクル・ライフス
テージに応じた支援が必要である。今後、外国人が余生を日本で過ごすとい 43うパターンも出てくると思われる。今まで想定されていなかった場面での支
援が考えられ、そうした研修内容も今後必要になるのではないか。
(今後の見通しについて)
しろまる 市役所やNPO団体の職員には、
外国人を支援する上で、
現状の制度に改善
要望を持つ方がいるのではないか。
制度や法体系は与えられたものであり、自分たちで変えることができないと考えているかもしれない。現場から見た問
題点や改善点があれば、自分たちで変えていけることを知っていただけると、
より良い支援が可能になるのではないかと考える。
しろまる 例えば、
規制改革の枠組みであれば一般の方も使うことができるため、
コー
ディネーターだけではなく、外国人を支援する一般の方にも制度は自分たち
で変えていけるという考え方を持ってもらえるようになると、より良い制度
に変わっていくのではないかと思っている。
しろまる 企業の人事担当者からは、今後、アジア圏からの外国人の受入れが更に増
えていくと聞いている。中華圏の方は漢字を読めるが、東南アジアの方は漢
字を読めず日本語検定試験の合格率も低い。今後は漢字に頼らないような意
思疎通の手法が増えていくのではないか。
(国に対する要望)
しろまる コーディネーターを国家資格化する取組みは、諸外国では聞いたことがな
く、日本がトップランナーとしての役割を果たせるのではないか。この資格
制度を体系化し、グットプラクティスとして日本から発信できるような制度
設計になることを期待する。
しろまる 出入国在留管理庁は外国人の出入国と在留を管理するだけではなく、在留
外国人を支援する目的で設置された組織である。このコーディネーター制度
が創設された場合には、在留支援に注力していることを国内外に示す良いメッ
セージになる。諸外国が日本に対する見方を変える良いきっかけになると考
える。
しろまる 外国人の支援は国籍や在留資格に加えて、ライフステージに応じた支援が
必要であり、問題が多岐にわたる。だからこそ体系化が必要であり、きめ細
やかな制度設計ができれば、コーディネーター制度は長く続くと考える。
しろまる コーディネーターの研修は、出入国在留管理庁のみで実施するのではなく、
ソーシャルワーカーの講座を持っている大学等と連携して、パイロットプロ
ジェクトとしてスモールスタートすることも一案である。
しろまる 日本では、外国人集住都市で問題を解決した際の方策やノウハウを国内で
シェアすることによって、外国人を支援する体制が整備されてきた。そのよ 44うにパイロットプロジェクトとしてスモールスタートして、試行錯誤を繰り
返していくことが成功の秘訣だと考える。
(その他)
しろまる 経団連の会員企業では人事のアウトソーシングが進んでおり、外国人労働
者における仕事・生活面の支援についてもサポート会社に外部委託している。
外国人労働者は何か困ったことがあれば、委託先会社に相談することが一般
的である。
しろまる 年金や医療保険については、厚生年金や被用者保険に加入しているため、
市役所を訪問する必要はなく、ソーシャルワーカーに相談することはないと
聞いている。
しろまる 在留資格「技術・人文知識・国際業務」での就労が多く、仮に解雇された
場合には失業保険が支給されるほか、その職種の範囲内で就職活動も可能で
ある。国内外における採用ニーズも高いため、サポート会社には解雇された
等の相談はあまり寄せられていないと思われる。
しろまる サポート会社は、例えば、家での水漏れ等の日常的な困りごとが起きた場
面において、支援を行っているようである。
以上 45関係者ヒアリング結果概要
1 日時
令和 5 年 2 月 22 日(水)13 時 28 分〜14 時 57 分
2 場所
オンライン開催
3 対象者
日本女子大学 人間社会学部 社会福祉学科 森 恭子 氏
東洋大学 ライフデザイン学部 生活支援学科 南野 奈津子 氏
4 対応者
出入国在留管理庁政策課外国人施策推進室 木村室長 ほか
5 内容
(現行の相談対応の課題・問題について)
しろまる 日本社会福祉士会(以下「当会」という。
)は、コロナ禍前の 2018 年に、在
留外国人総数上位100自治体の各領域で働く福祉専門職を対象に、外国人
の相談対応で感じている課題・問題を調査し、「「滞日外国人支援に携わる実務者(社会福祉士)
の滞日外国人支援基礎力習得のためのガイドブック作成及び
研修プログラムの開発事業」報告書(以下「調査報告書」という。)」に取りま
とめた。
しろまる 調査報告書によると、
福祉専門職は外国人の相談対応において、
1コミュニ
ケーション・言語の問題、2異なる文化、宗教、生活習慣によって相手を理解
することや信頼関係構築の難しさ、3外国人が日本の制度を十分に理解して
いない(日本社会への理解を図ることの難しさ)
、4在留資格によって制度や
行政サービスが利用できない、
5外国人支援で連携する機関
(外国人を対象に
支援する団体等)
がない、
といった課題意識や問題を抱えていることが明らか
となった。
(相談対応支援における役割・業務内容について)
しろまる 調査報告書や、
当会が厚労省の社会保障審議会に提出した
「ソーシャルワー
ク専門職である社会福祉士に求められる実践能力
(以下
「レポート」
という。)」
で示された「社会福祉士が果たすべき役割」を踏まえた上で、外国人相談にお
いて求められる役割や業務内容を検討するに、1より良いコミュニケーショ
ンが図れるように、通訳の手配、やさしい日本語での対応、日本語文書の翻訳
や、
分かりやすい説明をすること、
2外国人及びその家族の抱える生活課題や
ニーズ、強みについて、社会的、心理的、身体的、経済的、文化的側面から把
握し分析をすること、
3外国人及びその家族の生活課題の解決、
ニーズ充足、 46自立等のための支援計画の作成、
実施、
点検をすること、
4適切な社会資源(行政、福祉関係者、弁護士や司法書士等の専門職、民間支援団体、学校、病院、
警察、日本語教室、当事者団体(エスニックグループ)
、協会など)につなぐ
ための仲介、調整をすること、5外国人及びその家族の権利擁護や、ニーズを
自ら表明できない場合に代弁をすることが求められると考えている。
(予防的支援の実施場所・取り組むべき内容について)
しろまる 予防的支援として、生活課題が深刻になる前に防ぐ、貧困を防ぐ、孤立や排
除を防ぐ、非行や犯罪を防ぐ、地域等での外国人とのトラブルを回避するといっ
たことが求められるところ、予防的という言葉は若干消極的なイメージがあ
るので、より積極的に「外国人との豊かな共生づくり」と捉え、次のような取
組を行うのが良いのではないか。
・ 現在、
難民事業本部
(RHQ)
が行っている
「定住促進サービス」
を提供し、
日本語を体系的に十分に学ぶことができる場の提供、
小・中学校に入る前に、
子どもの日本語を体系的に一定期間学ぶ場の提供、
日本の法制度や生活、
困っ
たときの社会資源を学ぶオリエンテーションの実施、来日して間もないとき
の生活環境整備、日本語と職業訓練の両方を学ぶことができる場の提供を行
うこと。
・ 社会参加の機会を提供するための取組として、
職場参加促進のために、
企業
(福祉施設を含む。
)等とのマッチングやインターン、起業支援を行うほか、
地域社会への参加促進として、文化・料理等の交流やイベント、防災・防犯訓
練、地域行事、活躍の場づくりを行ったり、地域行政への参加促進として、外
国人の声を取り組む仕組みづくりを行うこと。
・ 外国人の中でリーダー的なキーパーソンを作り、
外国人同士の相互扶助を促
すことも大切であると考えているため、エスニックグループの組織化や支援
を行うこと。
・ 普段から連携を深めて協働で問題を解決しやすい関係を作ることを目的と
して、多職種・多機関との連携、協働を行うほか、問題の早期発見のために、
保育所、学校、日本語教室等に出向き、ニーズキャッチを行うアウトリーチ支
援を行うこと。
・ 外国人の地域でのニーズを把握し社会資源を開発していくとともに、
気軽に
相談できる場や居場所を作るほか、外国人に寄り添う近所のサポーターとな
る人を配置すること。
・ 外国人への理解促進のために、日本人に対して、学校、企業、不動産屋、地
域社会等で講座を開くこと。 47(コーディネーターに求められる能力について)
しろまる レポートで示された
「社会福祉士に求められる知識・技術」
を踏まえた上で、
本件コーディネーターに求められる能力を検討するに、人権・差別意識、多様
性の尊重、守秘義務等の倫理、援助原理(主体性、自己決定の尊重等)といっ
た価値や倫理観を持っていることが重要であると考えている。
しろまる 知識面として求められるのは、人間理解に関する幅広い知識(福祉、教育、
心理、医療等)
、社会福祉、生活関連の法制度や行政等各種サービスに関する
知識、外国人の受入れや共生施策、入管法や在留資格等の知識、国際移住に関
する社会的背景の知識であると考えている。
しろまる 求められる技術(能力)としては、1相手をより良く理解するためのコミュ
ニケーション能力等の相談面接技術、
2生活課題や強みの把握、
分析を行い、
支援計画を作成し、課題解決を図ったり、自立を促進したりする能力、3人権
を擁護し、
代弁したり交渉したりする能力、
4異なる文化や価値観等を理解し
適切に対応する能力(文化的コンピテンス)や、5多機関・多職種との連携、
ネットワークを図り、
外国人を適切な支援へ円滑につなげ、
協働で課題解決を
図る能力であると考えている。
しろまる コーディネーターとして最低限求められる能力は、上記で述べたものであ
るが、そのほかにも、基盤整備、環境整備のために、1エスニックグループの
組織化や支援、2地域の外国人が抱える課題やニーズ、社会資源の把握、分析
(地域アセスメント)
を行い、
地域の外国人の課題解決に向けての体制作りや
社会資源の開発をする能力、
3外国人との共生社会作りをする能力
(外国人と
日本人の相互理解促進や啓発活動、
地域行事やイベントでの共同作業、
外国人
の意見を取り入れる会合、
共生社会の実現に向けた計画立案など)
が求められ
ると考えている。
(コーディネーターの配置先について)
しろまる 社会福祉協議会や社会福祉士の相談窓口に配置するのも良いが、市区町村
で必置となっている
「生活困窮者自立支援相談窓口」
の相談支援員の配置のよ
うに市区町村の外国人の一元的相談窓口にコーディネーターを配置するのも
良いのではないか。
当該相談窓口は、
社会福祉協議会やNPOなどに委託され
て運営されており、相談員の半分程度が社会福祉士の資格を持っていると考
えられる。
当該相談窓口では、
相談支援員が必ず支援計画を立てることとなっ
ていることから、個別支援も上手くできるのではないかと考えている。 48(外国人の受入れ環境整備に係る取組について)
しろまる 近年では、行政も外国人の受入れ環境整備に取り組んでいるが、そのよう
な体制ができていない地域では、地方自治体自らが積極的に環境整備に係る
働き掛けを行う必要があると考えている。例えば、北九州市の国際交流協会
では、自分たちから積極的に外国人の受入れ環境整備に努めており、地域の
学校や弁護士などの様々な団体とネットワークを作り、会議等での事例検討
を行っている。また、子どもの貧困が問題となっていることから、社会福祉
協議会でも、そのような機関とのネットワーク化を積極的に行っている。
(国家資格化について)
しろまる 本件コーディネーター制度について、単に連携先へのつなぎ業務だけでは
なく、
「本人や家族への直接的な相談支援機能や自立支援機能」や「間接的な
外国人との共生社会体制づくりの機能」
等の業務を含めるのであれば、
高度な
専門性が要求されると考えられるところ、社会福祉士は相談援助のプロであ
ることから認証制度で十分であると考えている。また、近年の「社会福祉士」
の養成プログラムでは、地域共生社会の実現に向けて、分野横断的な複雑化・
複合化した問題に取り組み、
「個別支援と地域支援」
を重視するコミュニティ・
ソーシャルワークに力を入れていることから、
社会福祉士保持者の場合は、上乗せの研修等で「外国人支援の特有な知識・技術(例えば在留資格の知識、文
化的コンピテンス、やさしい日本語の活用等)
」を学ぶことができると考えて
いる。
しろまる 現在、外国人が相談に行く場所の多くは、地方公共団体の国際交流協会、地
域の日本語教室、NPO等の外国人支援団体、職場や日本語学校である。その
ような場所には、社会福祉士資格の保持者は少ないと考えられる一方で、
「多
文化共生アドバイザー」、「多文化共生マネージャー」、「地域国際化推進アドバ
イザー」、「災害時外国人支援情報コーディネーター」
等の比較的短期間で取れ
る資格を保持している人が在籍していると思われる。社会福祉士以外の人た
ちが、生活困窮の外国人がいた場合に「生活困窮者自立支援の窓口」や「社協
の生活福祉資金の貸付け」につなげる、児童虐待の場合には「児童相談所」に
つなげる等のレベルで業務を行うのであれば、福祉サービスや支援機関等の
社会資源の知識を学び、普段から連絡を取っておくことで十分に対応が可能
であると考えられることから、
「外国人相談コーディネーター」という形で、
任意団体の資格を付与するのが妥当であると考えている。
しろまる 国家資格取得には、かなりの労力(時間、金銭面)が必要になるところ、労
力に見合う就職先が十分に用意されているのかを疑問に感じている。また、
「外国人総合支援コーディネーター」
の国家資格を保持したとしても、
それ以 49外の職場領域への応用が利かないことから、国家資格を作る必要はないと考
えている。
しろまる 医師、弁護士、看護師等は、共通の価値・知識・技術の上に各分野が細分
化されていることからも、外国人援助は社会福祉士の一分野と考えれば、相
談援助の国家資格「社会福祉士」がある中で、外国人援助という特定分野に
限った国家資格を作る必要はないと考えている。
しろまる 入管庁がコーディネーターの果たすべき役割として挙げている「相談対応
支援」については、ソーシャルワークの基本的役割であり、社会福祉士の基本
技術や知識にて対応が可能である。また、
「予防的支援」についても、社会福
祉士が滞日外国人支援に必要な知識を習得することで即時対応が可能である。
さらに、コーディネーターに期待される役割のうち、
「外国人の受入れ環境の
改善への協力」についても、社会福祉士の使命として、滞日外国人の抱える課
題の根本的解決のために、ソーシャルディベロップメント(社会開発)やソー
シャルアクション(制度改善)を行うことが求められていることから、社会福
祉士を是非活用していただきたいと考えている。
(外国人の相談対応に従事する専門人材に必要な研修とその背景について)
しろまる 当会では、
調査報告書で明らかとなった
「福祉専門職が外国人の相談対応で
感じている課題」を解決するために、2019 年に「滞日外国人支援基礎力習得
のためのガイドブック」
を作成し研修に取り組んでいる。
これらの研修経験を
踏まえ検討するに、
受講生の社会福祉士資格の取得の有無や、
これまでにどの
ような勉強を行ってきたか、どの程度の専門性を持ったコーディネーターを
養成目的とするかで、研修内容の濃淡が異なると考えられる。
しろまる また、必要な研修としては、1「基本的な理念」として、基本的人権、多様
性の尊重、差別、内外人平等、自立と共生、社会的結束、社会的包摂、2「コ
ミュニケーション・言葉の支援」として、より良いコミュニケーションが図れ
るように、通訳の活用、やさしい日本語での話し方、3「外国人の受入れ・共
生政策・法制度」として、入管法や在留資格に関する知識、外国人受入れ政策
などの知識、4「社会資源の知識」として、生活関連や福祉法制度、労働法関
連、行政、各種サービス、施設、組織、機関、団体(民間営利・非営利)
、国
際機関、専門職、地域のマンパワー、5「外国人特有の課題」として、言葉、
文化、制度、心、アイデンティティの壁、文化的コンピテンス(異なる文化や
価値感等を理解し適切に対応する能力)
、6「支援のアプローチ」として、ミ
クロレベル
(個別支援)
では、
ライフサイクルと定住・統合支援、
援助の原理・
原則、
傾聴技術、
援助プロセス
(アセスメントからプランニング・実施・点検)、メゾレベル(地域支援)では、外国人との共生社会構築の体制づくり、当事者 50組織化、
参加支援、
地域アセスメント、
多職種・多機関連携・ネットワーク化、
社会資源の開発、啓発活動、マクロレベル(制度改善)では、外国人及びより
良い共生社会に向けた政策提言、
政策決定プロセスへの経路づくりの研修、8「事例検討・ロールプレイ」として、個別支援に関する事例、共生社会作りに
向けた体制整備に関する事例を学ぶ必要があると考えている。
(研修の講師について)
しろまる 普段から外国人支援のみを行っている人は少なく、一人の社会福祉士が講
師として研修内容の全てを網羅するのは難しいと考えている。例えば、当会
が実施する研修の際には、社会福祉士のみが講師を行うのではなく、外国人
支援に精通した通訳等にも講師を依頼している。
しろまる 当会で 100 人を対象として全国研修を行う際は、講師を4人程度確保する
とともに、演習対応のファシリテーターを2人確保しており、2日間開催す
る場合には、計 10 人程度の講師が必要となる。分野ごとの演習の際には 20
人程度に対して講師を2人付け、更にその中で4〜5人でのグループワーク
を行っており、ファシリテーターが全体を管理したり、アドバイスをしたり
しながら演習を進めている。
しろまる 研修を行う時期や場所によって、講師に求められる能力は異なってくると
考えている。例えば、東京などの大都市と外国人の人口が少ない散在地域で
は、外国人の特性も変わってくるので、同じ講師で全ての地域の研修を担当
することは難しいこともある。
(外国人に対する相談支援、支援の現状全般について)
しろまる 外国人支援団体は、外国人集住地域や大都市に集中しており、外国人が散
在している地域では相談できる場が限られていることから、外国人やその家
族を包括的に支援する人材や団体が少ないと感じている。また、県レベルや
政令指定都市レベルでの外国人相談窓口で、多言語での相談が受けられたと
しても、電話相談が中心であるため、外国人の住んでいる市町村に訪問し、
その人に寄り添ってきめ細やかな支援ができるとは限らないと感じている。
しろまる 地域住民によるボランタリーな日本語教室が様々な場所で行われており、
ボランティアが身近な相談者となっている場合が多く、地域の助け合いの精
神として良い側面がある一方、
負担が大きい場合もあると感じている。
例えば、
行政からの手紙を翻訳するような「ちょっとした助け」であれば良いが、行政
の窓口、学校、病院などの付き添いや説明などは負担が大きく、どこまで支援
して良いか分からなかったり、相手との適切な距離が取れずバーンアウトし
たりする人もいる。
地域住民は、
外国人の生活課題を早期発見できる立場にい 51るので、適切な外国人支援の人材・団体につなげることができれば良いが、そ
もそもつなげる先が無かったり、
分からなかったりすることも多い。
このよう
な問題は、外国人福祉に限らず、日本人の福祉問題も同様であり、地域にどん
な社会福祉資源があるかが認知されていないことがあるため、近年の福祉政
策では、住民が外国人を福祉専門職につなげることが重視されている。
しろまる 現在、
厚労省では、
分野横断的、
複雑・
複合的な福祉課題に対応するために、
市区町村レベルで「重層的支援体制整備事業」を進めている。当該事業では、
一元的相談窓口の設置や包括的相談体制整備、それに対応する人材としてコ
ミュニティ・ソーシャルワーカー(以下「CSW」という。) 等の配置が推奨
されている。
社会福祉協議会もCSWの委託を受けているところ、
どんな相談
も断らないという方針から外国人住民も対象となっているが、CSWも自治
体によって人数の違いがあり、
量的・質的にまだまだ差があるのが現状である。
しろまる コロナ禍で相談件数が増え、現場の福祉専門職の業務量が増えており、福
祉専門職もコロナに罹患するなど心身共に疲弊している状況がある。また、
福祉専門職の非正規化も進み、彼ら自身の生活が不安定となっている。この
ような状況で、言語や文化等の壁があり支援に時間を費やす外国人に対して
積極的に支援をすることには難しさがあり、福祉専門職等が外国人支援に消
極的にならざるを得ない状況が生まれている。
しろまる 近年、
翻訳機やタブレットなどが活用され、
簡単なコミュニケーションはで
きるようになったが、通訳が確保できずに外国人の子どもに通訳を頼らざる
を得ない場合もある。特に、医療通訳者の確保は難しく、神奈川県や兵庫県の
ように医療通訳の団体があり、病院と連携している自治体はまれである。
しろまる 外国人の子ども
(日本語教育が必要な子ども)
の学習支援が十分でないため、
日本語及び教科学習の習得ができず、不登校、中退、高等学校への進学断念、
子どもの自己肯定感の低下、
メンタルヘルスなどの問題が生じている。
市区町
村によっては、
学校転入前に、
体系的に日本語を学んでから配置させるところ
もあるが、そのような自治体は少ないのが現状である。多くは、学校での取り
出し授業等で、
地域のボランティアに学習補助をさせているが、
ボランティア
のレベルの差や学習補助の時間数の差などで、子どもたちの日本語や教科が
十分に身に付かないケースがある。義務教育で、日本語・基礎学力を身に付け
られないと、その結果として、職業スキルの習得も難しくなり、成人後に仕事
に就けなかったり、
労働条件の悪い職場に就職したりすることとなり、
生活困
窮に陥るリスクが高くなる。また、障害があるのか、日本語が理解できないの
かが曖昧で、特別支援学級に配置される場合もある。
しろまる 在留資格が不安定な人については、日本の行政サービスや社会制度全般が
利用できず、特に、医療現場では国民健康保険等が無いために、医療費が高 52額となり支払いが困難となるケースがある。そのため、医療現場では、保険
のない外国人の受診が断られる場合もあり、重篤になってからの病院受診と
なってしまうこともある。また、子どもについても少々の病気であれば、受
診を手控えさせられることがある。
しろまる 何年も日本に住んでいる在留資格が不安定な子どもの場合は、高等教育へ
の進学が難しかったり、日本で就職できなかったりするなどの問題がある。
しろまる 新型コロナウィルスの影響で、
多くの外国人が、
市区町村の社会福祉協議会の「生活福祉資金の特例貸付」
の支援を受けたり、
「生活困窮者自立支援窓口」
に殺到したことにより、外国人の生活困窮が浮き彫りになったといわれてい
る。
今後、
貸付けの償還への支援などの課題が生じてくることが想定される。
(今後増加が想定される相談内容について)
しろまる 特定技能外国人の受入れ拡大等が進み、長期間日本で働く人が増えている
ことからも、日本への定住を希望する外国人が増加し、永住権の取得などの
在留資格の切り替えや帰化などの相談が増えるのではないかと考えている。
しろまる 義務教育終了後の若者については実態が不明であり、日本人のように若者
や中高年の引き籠もり、生活困窮が懸念されることから、そのような相談が
増えるのではないか。
しろまる 年金・介護保険制度について、十分に理解していなかったり、若い時は日
本に永住をすることを考えておらず制度に加入していなかったりするケース
等では、高齢になった際の生活・ケアの問題が起こるのではないか。
しろまる 同じ国の出身や、同じ民族の外国人が集住してエスニック・コミュニティ
を形成したり、企業が多数の外国人を丸抱えしたりした場合に、地域社会と
の交流やつながりが無くなり、地域社会が分断・住み分けされてしまうこと
が懸念される。分断された結果として、日本語が話せない外国人が増加した
り、日本人・外国人のお互いの顔が見えないことによる不信感やトラブルが
生まれやすくなったりするのではないかと考えている。
(国に対する要望)
しろまる 在留資格によっては社会制度が使えないなどの不安定な状態となってしま
うので、人道的配慮の観点から、不正規滞在者であっても、安定した身分で
滞在できる人が増えるような制度にしてほしい。
しろまる 永住権を申請する際の身元保証書(保証人の職業、所得を証明する資料)
を無くしてほしい。
しろまる 公立学校に転入する前に、子どもが体系的に日本を学ぶ機会を全国的に無
料で提供する環境を整えてほしい。また、公立学校(教育委員会等)で、 53「学習アセスメント(どの程度日本語ができ、どの程度、本国で学習してい
るかの把握・分析等)
」を行った上で学習支援計画を立てるなど、子どもの
日本語・学習支援の強化対策を行ってほしい。
しろまる 日本語学習と職業スキルを学ぶ仕組み作りとして、例えば、日本語学校と
ハローワークの職業訓練が連携して、スムーズな職業的自立に結びつけるな
どの取組を行ってほしい。
しろまる 地域の実情にあわせて、市区町村、地域国際化協会、国際交流協会、社会福
祉協議会、民間支援団体、企業、日本語学校等の市町村レベルでのコーディネー
ター配置を推進するとともに、継続的に雇用されるための財政的援助が必要
であると考えている。
しろまる 国の政策として外国人材を受入れていくのであれば、将来、彼らや彼らの
子どもが日本に定着し、日本への貢献を行っていくことを視野に入れ、投資
的な意味での支援の在り方を検討してほしい。(「認定社会福祉士制度」及び「滞日外国人支援ソーシャルワーク研修」につ
いて)
しろまる 2007 年の社会福祉士・介護福祉法改正時に、より専門的な対応ができる仕
組み作りが必要であるとして認定社会福祉士制度の検討が開始され、2012 年
に本制度が始まった。
しろまる 社会福祉士の資格は、国家試験に合格して登録機関に登録を行うことによっ
て付与されるが、社会福祉士資格の取得はあくまでも専門職として実践をし
ていくためのスタートラインであり、試験の合格が実践力を証明しているわ
けではない。そこで、高度な知識と卓越した技術を用いて、個別支援や他職種
との連携、地域福祉の増進を行う能力を有する社会福祉士としてのキャリア
アップを支援する仕組みとして、実践力を認定する「認定社会福祉士制度」が
創設された。
しろまる 認定社会福祉士を取得するには、
次の要件を満たすことが必要である。1社会福祉士及び介護福祉士法に定める社会福祉士資格を有すること。2日本に
おけるソーシャルワーカーの職能団体で倫理綱領と懲戒の権能を持っている
団体の正会員であること。3相談援助実務経験が社会福祉士を取得してから
5年以上あり、
且つこの間、
原則として社会福祉士制度における指定施設およ
び職種に準ずる業務等に従事していること。
このうち、
社会福祉士を取得して
からの実務経験が複数の分野にまたがる場合、認定を受ける分野での経験は
2年以上あること。
4上記、
実務経験の期間において、
別に示す
「必要な経験」
があること。5「認められた機関((注記)後述)
」での研修(スーパービジョン実
績を含む)
を受講していること又は認定社会福祉士認証・認定機構が定めた認 54定社会福祉士認定研修のいずれかの研修を受講していること。
しろまる 前述の「認められた機関」とは、第三者機関である「認定社会福祉士認証・
認定機構(以下「機構」という。)」を指している。職能団体、大学や大学院な
どの教育機関、国及び地方公共団体(指定及び委託を含む。)、社会福祉法人及
び医療法人等に研修を作って機構に申請を行ってもらい、その研修を受ける
ことで単位取得を認めるという取扱いとしている。
しろまる 当会も、2013 年に「滞日外国人支援ソーシャルワーク研修」を開発したと
ころ、
本研修の目的は、
複雑な生活課題を抱えながら地域で暮らす滞日外国人
の方々に対して、ソーシャルワーカーはどのような支援ができるのかについ
て、
多文化共生をキーワードに滞日外国人支援の視点と在り方を学び、
滞日外
国人の生活課題を理解して潜在的ニーズを把握し、支援計画を立てる
ソーシャルワーク実践力を身につけることである。
しろまる 2015 年以降は、幅広く受講していただけるように各都道府県に研修を移管
しており、各都道府県がそれぞれの実情にあわせて、本会が開発した研修内
容を作り直すなどして機構に申請を行い、それぞれが研修を行っている。現
在は、神奈川県や兵庫県などで研修が開催されており、延べ 300 人以上が受
講を修了している。
しろまる 認定社会福祉士を取得するには様々なルートがあるところ、
通常は、
研修で
30 単位取得(内訳:共通専門研修 10 単位、分野専門研修 10 単位、スーパー
ビジョン実績 10 単位)することとされており、1単位はおおよそ 11.25 時間
となっている。
(その他)
しろまる 厚労省が行っている重層的支援体制整備事業の中にも、
「多文化共生」が
入っており、当該事業を推進するに当たっては、社会福祉士や精神保健福祉
士が活用されるように努めることとされている。また、当該事業は、相談支
援、社会参加支援、地域作りに向けた支援を一体的に実施する事業となって
いる。
しろまる つなぎ先が分からない相談があった場合には、地域の社会資源をほぼ全て
把握している市区町村の社会福祉協議会や市区町村の福祉総合相談窓口のよ
うなところに相談するのが良いのではないか。
しろまる 相談対応に応じるのは市町村レベルであると考えられるところ、社会福祉
士会は県レベルでの活動であるため、社会福祉士との連携を求める場合は、
市町村の社会福祉協議会に連絡をするのが良いのではないか。
以上

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /