65 |
3|一元的相談窓口を設置・運営している地方公共団体の声
一元的相談窓口を設置・運営する上で、どのようなことに注意し、どのような
工夫をしたらいいでしょうか。ここでは、既に一元的相談窓口を設置・運営して
いる地方公共団体の声について御紹介します(令和3年度及び、同4年度に地方
公共団体から受けた回答を取りまとめたものです。)。
1一元的相談窓口を設置したきっかけ
●くろまる 人口減少などにより様々な分野で人手不足が深刻化するなか、技能実習生を
はじめとする在住外国人が増加傾向にあり、更なる増加が見込まれたことか
ら、令和元年度に、多文化共生・国際化推進業務(委託)の一部として行って
いた従来の相談窓口を拡充し、電話通訳サービスおよび通訳タブレットの導入
による外国人生活相談窓口の多言語化・ワンストップ化を行った。(北海道函
館市)
●くろまる 土日祝日の対応や近年増加しているベトナム語の対人対応など、既存の相談
窓口(市役所内)で対応できないサービスを充足させるため。(北海道苫小牧市)
●くろまる これまで、外国人集住地域を中心に2か所の相談窓口を運営してきたが、外
国人市民の増加、居住エリアの分散化、ライフスタイルの変化等により相談対
応が困難な状況となっていた。そこで既存の相談窓口を「サテライト窓口」と
して維持するとともに、市の相談事業を束ねる「基幹窓口」を新たに整備し
て、3つの窓口が連携することで、市全体としての相談体制の拡充を図ること
を目指した。(大阪府八尾市)
●くろまる 久留米市においてもベトナム国籍を中心に技能実習生が増加しており、今後
も増加が見込まれる中、外国人住民が安心して生活できる地域づくりが必要で
あると考えた。多くの外国人住民は、言葉の障壁に加えて、日本の社会制度や
生活習慣に不慣れであることから、日常生活に多くの不安を抱えていることが
推測され、このような不安解消や生活支援を行うため、外国人相談窓口を設置
した。(福岡県久留米市)
66 |
2相談員の確保方法
●くろまる 地域の日本語教室の卒業生等を採用している。(宮城県石巻市)
●くろまる 母国語でやり取りできる相談員が対応することで、「相談者に寄り添う相
談」が実施できるメリットがあると考え11言語に対応する相談員を採用する
こととした。また、相談員の募集については公募によるほか、紹介やスカウト
など川崎市国際交流協会の人脈を活用することがある。なお、いかなる採用方
法においても面接や翻訳等の試験を実施している。(川崎市)
●くろまる 市政だより・ハローワークでの募集を行った。また近隣の関係団体にも相談
員募集の情報を伝え、外国人コミュニティの口コミなども利用した。(大阪府
八尾市)
●くろまる 一般公募や神戸市から奨学金を給付されている留学生等、同市と繋がりのあ
る者に声掛けを行っている。また、ひょうごラテンコミュニティ等の繋がりの
ある団体に依頼し、人材を紹介してもらっている。現在は、相談員の知り合い
をたどって人材を探すことも多い。(神戸市)
3相談員の育成
●くろまる 相談員を対象とする研修に積極的に参加を促し、スキルアップできるように
している。今年度は、「傾聴」訓練のための「カウンセリング」研修を、外部
講師を招いて実施した。(青森県)
●くろまる 岩手県行政書士会からの派遣を受け、相談対応にご協力いただいている行政
書士と相談員とが、相談事例を持ち寄り、相談対応に関しての勉強会を行って
いる。(岩手県)
●くろまる 入管主催の研修会や、その他専門機関の研修に参加している。また、相談内
容をエクセルで管理しており、相談例を蓄積している。(神奈川県平塚市)
67 |
●くろまる 相談員育成の取組(横浜市)
1 研修の実施、外部研修への参加奨励(情報提供・一部は有給参加)
2 定例ミーティングでの事例検討・情報共有
3 日常業務でのスーパーバイズ及びピアサポート
4 研修や外部事例検討会等への講師としての参加奨励
(参考)相談員としての心構え
■しかく (相談者への)自立への支援
■しかく 相談者の選択を尊重し、(相談員の)思いや考えを押し付けない
■しかく 中立的な立場・組織としての対応/回答
■しかく 専門機関との連携
■しかく 秘密の厳守
●くろまる 専門家による勉強会やセミナーを開催している。テーマ例は、在留資格(行
政書士)、法律相談の事例(弁護士)、福祉制度(社会福祉協議会)、年金制
度(年金事務所)、難民支援の実例(難民支援に携わるNPO法人)等の日本
の社会制度についてのものが主である。また、その他に通訳をすることも多い
ため、コミュニティ通訳研修や医療通訳研修なども開催している。自分たちの
組織で主催することもあれば、他団体のセミナーに出張として参加することも
ある。本当は、相談員が実際に受けた事例に基づき、ソーシャルワーカー等の
専門家にスーパーバイザーとしてコメントをいただきながら相談員間で検討し
合うことができればと思っているが、時間が取れていない。(浜松市)
●くろまる 独自の相談員の研修は行っていないが、本年度(令和3年度)は東京出入国
在留管理局のオンライン研修を受講し、自宅で受講できるため相談員からは大
変好評であった。(愛知県小牧市)
●くろまる 1WEB会議ツールを用いた研修(他団体が主催しているもの)2動画視聴
(出入国在留管理庁が作成したYouTube等)3月1回の相談員会議の開
催(研修会や相談内容などの共有、行政担当者参加)。(京都府亀岡市)
68 |
●くろまる 月に1回程度、相談窓口を運営する熊本市国際交流振興事業団内の相談員、
相談窓口担当職員、日本語教育等担当職員等が相談内容や情報を共有し、対応
を検討するミーティングを実施している。(熊本市)
出入国在留管理庁、地方出入国在留管理局主催の研修会について
出入国在留管理庁では、地方公共団体担当者を対象に多文化共生施策に関連した
研修会を実施しています。令和5年度は「外国人との共生社会の実現に向けた取
組」、「やさしい日本語講座」及び「外国人受入環境整備交付金」等多文化共生施策
事務等を担当する職員に必要な知識等についての講義を行いました。
また、地方出入国在留管理局においても、一元的相談窓口の職員等を対象に特定
技能制度を含む入管制度等について研修会を実施しています。東京出入国在留管理
局においては、一元的相談窓口等の相談員等を対象とした説明会を動画で配信しま
した。内容は、入管法の基礎知識、ひとり親家庭に対する支援、医療通訳について
など、業務に役立つ情報を中心に工夫を凝らしたものとなっています。
今後も継続してこのような研修会
を実施していきます。希望の研修内
容がありましたら、御要望・御意見
等を出入国在留管理庁在留支援課ま
でお寄せください。
▲さんかく東京局が行ったオンライン研修の様子
69 |
4窓口の周知・情報発信の方法
●くろまる 庁舎内及び地元スーパー等での相談窓口に係るポスターの掲示。外国人の転
入時に相談窓口のカードを配布。(宮城県石巻市)
●くろまる 多言語相談窓口の周知については、ホームページ、広報誌、チラシ等により
行っている。チラシの設置は県、市町村及び国際化協会、日本語教室、コミュ
ニティ等に加え、外国人住民が訪問する可能性のある郵便局や教会、交番・駐
在所、運転免許センター、留学生の多い大学・専門学校等に依頼するなど、設
置場所の拡大を行っている。また、コミュニティや大学等にチラシのデータを
送り、Facebookや電子掲示板等にアップを依頼しているところ。
一方で、弁護士や行政書士による専門家相談については、導入して間もない
こともあり、件数がまだ多くないことから、その周知方法を工夫する必要があ
ると考えている。今後の外国人住民に対する周知・情報発信については、「い
かに情報を拡散していくか」という観点を重視し、さらにSNSを活用して実
施する。(福島県)
▼ポスター
▼相談窓口カード(名刺サイズ)
70 |
●くろまる 相談員SNSや市内の外国人と関わりの深い団体(人材派遣会社、飲食店
等)にも協力を仰ぎ、周知を依頼しているほか、企業等と一元的相談窓口との
間でメーリングリストを作成し、頻度高く情報共有を行っている。
相談窓口から外国人に確実に情報を届けるためには、どのような外国人住民
が在籍する会社やコミュニティが存在するのか分析することが効果的である。
市の特徴としては、人材派遣会社に在籍する傾向が高いため、企業を核とした
連携をとることができるよう整備している。外国人住民がどのような手段で生
活に必要な情報を得るかは地域によってそれぞれだと思われるため、地域に応
じた分析が重要であると思う。(栃木県小山市)
●くろまる 外国人住民向け多言語版広報紙「GARAPA」を発行している。通常号は
町広報紙の中で特に外国人住民に必要であると思われる情報を抜き出して翻訳
しており、特集号は防災や交通安全、確定申告等の情報や、近年では新型コロ
ナウイルス感染症に係る情報提供を行っている。配布に当たっては、外国人住
民からの情報収集や、外国人住民との顔の見える関係性の構築のため、町内約
80カ所の外国人関連施設・店舗等に職員が直接出向いて配付を行っている。
(群馬県大泉町)
▼GARAPA特集号▼
71 |
●くろまる 相談窓口設置について、15言語に対応したチラシを市役所や公民館等の市
の施設に設置し、市に転入した際に配布する転入バッグの中にも入れている。
(神奈川県平塚市)
●くろまる 窓口設置のパンフレットスタンドは、分野別に整理し言語別のタックを付け
て情報を探しやすくしている。市公式HP内には自動翻訳機能を実装するとと
もに、特に重要と思われる情報を国際交流員等が翻訳した「多言語情報」のペ
ージを「やさしい日本語」も含めて設け、言語別に横断的な情報発信を行って
いる。
転入・転居や出生等の手続をした外国人市民を窓口へ案内するシステムを整
備し、本市での生活に役立つ情報をまとめた「多言語生活情報セット」を配布
することで、住民異動等の機会を捉えた情報提供をしている。(愛知県大府市)
●くろまる 新型コロナウイルス感染症の各種制度やワクチンに関する情報を、より分か
りやすく外国人住民にも取得していただけるよう、昨年、市ホームページ内及
びFacebookにて多言語ページ「Amigo Suzuka」を開設し
た(いずれもやさしい日本語、ポルトガル語及びスペイン語の3ページ)。
さらに、令和3年7月から外国人向けYouTubeチャンネル「Amig
o Suzuka」を開設し、ワクチンのWeb予約方法や予診票の書き方な
どを、最大10言語(やさしい日本語含む)の動画により、分かりやすい情報
発信を始めた。(三重県鈴鹿市)
●くろまる チラシ作成、市のSNS、かめおか多文化共生センターのHP、わかる範囲
ではあるが市内の技能実習生を雇用している企業への訪問・案内。(京都府亀
岡市)
●くろまる 開設前のプレスリリースを行ったほか、市報、市ホームページ、市SNSで
の発信に加え、市内の日本語教室や企業団体等への周知を行った。(兵庫県尼
崎市)
72 |
●くろまる 彦根市の外国人住民がいる全2,000世帯に郵送で開設案内を送付した。
窓口を訪れた多数の外国人が当該案内を所持していたため、効果的であったと
言える。なお、当該案内を含め、彦根市から送付する重要な文書には、封筒の
表に言語別のQRコードを掲載しており、そこからホームページの各言語別の
案内を閲覧することができる仕組みである。全ての文書や案内を多言語化して
同封することは困難であるが、前述の方法であればHPの該当ページを翻訳す
るのみで済むため、効率的かつ有用である。(滋賀県彦根市)
▼外国人に送付する封筒
▼開設案内リーフレット▼
73 |
●くろまる 市のHPにおいて広報したほか、日本人にも当事者意識をもっていただくべ
く、市政だよりにも掲載して周知を図った。また、チラシを作成して市内の公
共施設に置いただけでなく、市内の学校の児童を通じて保護者への配布を行っ
たほか、外国人住民が集住する団地を管轄する自治会の協力を得て、直接、ポ
ストにチラシを配布する形で、積極的に広報を実施した。また、SNSの利用
も積極的に行っている。(大阪府八尾市)
●くろまる 一人でも多くの外国人へ窓口の存在を認識してもらうために、窓口開設につ
いて、HP、テレビ(県の広報番組)、SNS等における周知や周知用のチラ
シやカードの関係機関への配布などに注力した。(長崎県)
▼周知用チラシ ▼周知カード(表)
▼周知カード(裏)
74 |
●くろまる 来訪者の目につきやすいよう、相談窓口の案内看板の設置場所や表記内容等
に次のような工夫をした。
・ 最初はA2サイズの可動式看板を設置する予定であったが、出入り口が奥
まっていることや設置可能場所が限られていることから、出入り口ドアへの
表示、室内パネルの設置に加え、建物内のエレベーターホールの壁に案内看
板を貼り付けた。
・ 最も目につきやすいエレベーターホールの案内看板に休館日を表記した。
・ 室内パネル及びエレベーターホールの案内看板については日本語、英語、
やさしい日本語表記にした(来訪者の使用言語を想定)。
・ 出入り口ドアについては日本語、英語、やさしい日本語、中国語、韓国
語、ベトナム語表記にした(来訪者の使用言語を想定)。(鹿児島県)
▼エレベーターホールの案内 ▼案内パネル
出入り口ドア
75 |
5一元的相談窓口の設置・運営にあたり工夫していること
●くろまる 窓口の場所を来庁者の目に付きやすい1階(住民票や戸籍等関連の窓口付
近)に設置し、誰でも相談しやすい環境を整えた。(北海道登別市)
●くろまる 開設当時は、日系人が多かったため、労働者からの相談を想定し、平日は夜
間(午後10時まで)も相談を実施することとした。夜間相談の件数は、日中
に比べ少なかったため、費用対効果、相談員のモチベーション維持及びワーク
ライフバランスも考慮し、令和3年4月から週1回のみとしたところ、全体の
夜間相談件数は減ったが、1日あたりの対応件数は増加しており、効率的にな
った。(長野県松本市)
●くろまる 行政に係る事案を行政側が直に受け取りやすくできるよう、業者や国際交流
協会への委託でなく直営で運用している。外国人相談員は市の会計年度任用職
員で、正職員が受講対象の各種研修(公務員倫理、情報セキュリティ等)を聴
講できるような体制とした。
コロナ禍に鑑み、来庁しなくても相談がしやすいよう、相談窓口直結のメー
ルアドレス設定や言語別による電話番号回線の増設等の相談対応環境を拡充し
た(令和3年5月の新庁舎移転に伴うもの)。(栃木県小山市)
●くろまる 外国人市民のくらしに関する相談は医療、福祉、就労、子育て、介護、日本
語教育等の多岐に渡るため、行政窓口・関係機関の情報に精通した多文化共生
コンシェルジュを配置している。すでに千葉市国際交流協会で相談員として相
談業務に従事した経験がある者から、資質等を考慮した上で選定している。多
文化共生コンシェルジュは、外国人からの相談に対し、各言語の担当職員を経
由する等して具体的な内容を引き出した上で精査し、必要な情報を関係機関へ
の問合せやインターネットで検索する等により回答をしている。担当は2名と
も海外での生活を経験しており、その経験を生かして外国人に寄り添った対応
をしている。多文化共生コンシェルジュを配置することにより、これまで、相
76 |
談員ごとに分散しがちだった情報を集約できるようになり、類似の相談への対
応がしやすくなった。(千葉市)
●くろまる 市内在住外国人の中で最も多いのは、ブラジル国籍であるため、ブラジル人
コミュニティにおけるキーパーソンを相談員として雇用している。また、相談
に来やすく、日本人来庁者の目にも留まりやすいよう、相談員を新城市役所総
合案内窓口内に配置している。(愛知県新城市)
●くろまる 当相談センターは、外国人からの相談を専門機関に繋ぐ役割を担っているの
で、専門機関との連携が不可欠だと考えている。そのため、連携することが多
い政府機関・県の機関・市町村の機関を相談コーディネーターが訪問し、連携
をお願いしている。(富山県)
●くろまる 相談者が外国人というだけで、相談員に対応を全て任せてしまわずに、担当
職員を加えた3者で対応する。普段から相談員の話をよく聞くようにする。
(愛知県西尾市)
●くろまる 相談窓口設置以前に、国際交流協会が受けていた相談は気軽な内容が多かっ
たことから、広報用リーフレットに、「秘密は守ります」と記載して、守秘義
務があることを明示し、相談者が安心して相談に訪れることができるようにし
ている。(愛媛県今治市)
●くろまる 外国人住民の抱える問題を早期に発見し、迅速かつ的確に対応するため、外
国人住民が多い市町村に、相談窓口や行政等との橋渡し役を務める「島根県外
国人地域サポーター」を配置している。同サポーターは、地域の外国人とのネ
ットワークを持っていることから、情報が届きにくい外国人住民へ行政からの
情報や地域の生活情報等を伝達する役割も担っている。(島根県)
77 |
●くろまる 倉敷市は高梁川(たかはしがわ)流
域の7市3町(新見市、高梁市、総社
市、早島町、倉敷市、矢掛町、井原
市、浅口市、里庄町、笠岡市)におい
て、高梁川流域連携中枢都市圏を形成
しており、倉敷市に開設した「倉敷・
高梁川流域外国人相談窓口」は、圏域
の在留外国人が利用可能である。倉敷
市以外の6市3町の窓口を来訪した在留外国人についても、タブレットによる
テレビ電話で通訳オペレーターが通訳することにより、対応可能な体制として
いる。
外国人相談対応という圏域の共通課題を、広域連携による外国人相談窓口と
することで市町を超えて解決することができた。また、近隣市町を含む広域で
の外国人住民の動向や課題の把握にも寄与し、相談事例の集積により相談対応
の質の向上にもつなげる。(岡山県倉敷市)
78 |
●くろまる 相談対応の際には、多文化共生コーディネーターと多言語相談員がペアとな
って相談を受けることとしている。日本での行政手続や関係機関との調整能力
に長けたコーディネーターと、海外の事情を熟知した多言語相談員が共同で対
応にあたることで、互いのスキルを活かしながら、相談対応を円滑に行うこと
ができる。(山口県)
●くろまる 相談員の資質向上が課題となっていたため、先進地である他県の視察を行
い、実際の相談に対する対応方法等の調査・把握を行った。具体的には、各相
談窓口の広報物や相談対応票、使用マニュアルを確認させていただき、また相
談員に相談体制や多言語対応の方法、相談内容の傾向等に係る話を伺った。
(鹿児島県)
ボランティアの活用について
多言語対応の方法の1つとして、ボランティアの活用があります。
東京都八王子市では、八王子市国際協会が語学ボランティアの登録事業を行っ
ており、令和5年3月31日時点で368名、言語数にして20言語の語学ボラ
ンティアが登録されています。サポートデスク(一元的相談窓口)には、年間を
通して曜日を決めて派遣しており、少数言語については事前に予約があれば派遣
されます。急な対応が必要な場合には翻訳機器を活用するなど、状況に応じた多
言語対応が行われています。
また、東京都練馬区では、区で通訳ボランティアを募集しており、令和5年4
月14日時点で310名、言語数にして23言語のボランティアが登録されてい
ます。
一元的相談窓口での相談対応等をボランティアに手伝ってもらった場合の謝礼
(図書カード等)についても、外国人受入環境整備交付金の対象となります。
交付金活用の詳細については、外国人受入環境整備交付金担当までお問合せく
ださい。
79 |
6一元的相談窓口の運営にあたり苦労すること/その対処法
●くろまる 関係機関と連携しても既存施策では解決できない場合があり、支援が長期化
かつ終わりが見えない事例もあること。
→思いつくあらゆる関係機関に問い合わせたり調べたりするなど、相談事案に
応じて、解決の糸口を見つけられるよう努めている。また、最新の情報を把握
するよう日々情報収集に努めている。(札幌市)
●くろまる 対応困難事例の存在(主に長時間の対応が必要になる例、長期間に渡り反復
して相談がされる例)
繁忙度及び困難性が一定しないため、新たに相談員となった者が、業務につ
いて事前のイメージとのギャップを感じることがあり、相談員のなり手の不足
にもつながっている。
→先輩の相談員から新任の相談員に対し、以下のように相談員の心構えを伝え
ている。
「相談が少ないから意味を見出せないのではなく、相談が少ないことが、外国人
住民が不安なく暮らせていることのあらわれである。」
「この窓口に来る相談者は、最後の行き場として相談に来る人が多い。そのた
め、困難でもなるべく相談者が納得できる答えを見つけだすことが大事であ
る。」(神奈川県横須賀市)
80 |
7窓口を設置した効果・設置して良かったこと
●くろまる 外国人が困った時に一元的に相談ができる窓口を設置したことで、外国人の
不安・悩みの解消に資する効果があった。
・ 相談窓口のホームページ上で、行政情報や重要な情報について多言語で発信
することができ、情報が外国人に広く届くようになった。
・ 札幌市役所や区役所職員から、外国人住民にかかる相談が国際部や相談窓口
にできるようになったことで、多文化共生への意識も広がりつつある。(札幌市)●くろまる 町からのお知らせやチラシについて、翻訳したものを町内各所に配架できる
ようになった。そのほか、(外国人受入環境整備交付金で翻訳機を整備したた
め)通訳相談員が対応可能ではない言語や時間帯に相談者が来ても、翻訳機を
使用し相談を受けることができるようになった。(神奈川県愛川町)
●くろまる 窓口の広報を含め、市役所からの様々な案内等を多言語化することにより、
外国人住民にとって有益となっただけではなく、「言葉が分からず一定の支援
が必要な外国人住民が彦根市には住んでいる。」という意識づけを日本人住民
に向けて図ることができた。(滋賀県彦根市)
多言語化した情報を一元的相談窓口に設置▲さんかく
▼タブレットによるオペレーター通訳利用の様子
81 |
●くろまる 外国人住民の増加、居住エリアの分散化、生活スタイルの多様化等に対応す
ることができる相談窓口が設置できたと感じている。特にコロナ禍において、
新型コロナウイルス感染症対策の特別定額給付金申請の記入方法、ワクチンの
予約・接種、新型コロナウイルス感染症感染拡大防止対策、陽性者への対応な
ど、全ての外国人住民を対象として情報発信、対応が必要なものがあり、相談
窓口がうまく機能したと感じている。(大阪府八尾市)
●くろまる 市庁舎内における外国人からの相談対応・体制が曖昧であったが、市の事業
として根拠が明確になったとともに、在留外国人の相談に係るセーフティーネ
ットを構築することができた。(愛媛県今治市)
●くろまる 在留資格に関する相談だけでなく、DVと思われる相談や弁護士につなげる
相談なども少しずつ出てきており、このことは市民相談の所管課が窓口を担当
している効果と思われる。(福岡県久留米市)
●くろまる 想定よりも日本人からの相談があり、その方がキーマンとなって一緒に問題
を解決したり、情報の伝達者になっている。(福岡県古賀市)
82 |
日本司法支援センター(法テラス)等との連携について
外国人住民からの相談の中には、法的課題が含まれているものが少なからずあると
ころ、法テラスでは、通訳を介した民事法律扶助相談(※(注記))を含め、多言語での法的
支援の推進に取り組んでいます。
一元的相談窓口は、法テラスの指定相談場所に指定されることにより、民事法律扶
助を利用した弁護士や司法書士による法律相談を実施することが期待されています。
法テラスの指定相談場所となることに関心のある自治体においては、指定のための条
件等について、お近くの法テラス地方事務所までお問合わせください(1)。
また、日本弁護士連合会も、全国の弁護士会に対し、一元的相談窓口において弁護
士による定期的な法律相談の機会を設けるなどの連携の取組を要請しています。指定
相談場所への弁護士の派遣などについて、各地の弁護士会等との連絡・調整が必要な
場合は、日本弁護士連合会宛てにお問合わせください(2)。
【問合せ先】
1 法テラス地方事務所の連絡先
2 日本弁護士連合会業務部業務第二課
多文化共生社会の実現に関するワーキンググループ担当
電話番号03-3580-9841(代表)
※(注記)経済的に余裕のない方のための無料法律相談です。一定の基準を満たし、
かつ日本国内に住所があり、適法に在留する外国人を対象としています。
※(注記)在留資格がないなど、法テラスの民事法律扶助相談を利用できない場合でも、
日本弁護士連合会が行う法律援助事業を利用できる場合が
あります。詳しくは上記2までお問合わせください。
https://www.houterasu.or.jp/chihoujimusho/index.html
83 |
8窓口の設置を検討している自治体へのアドバイス
●くろまる 外国人相談者に対する一律の対応は妥当ではなく、文化等の背景への配慮が
欠かせないことから、相談者と同国の相談員が対応することでスムーズな対処
が可能となるため各国の相談員を配置することが適切であるとともに、同相談
員を統括する主任相談員を設置することにより、窓口運営の効率化が図られ
る。(北海道)
●くろまる 日本人と外国人を分けて考えるのではなく、同じ地域に暮らす住民に最善の
サービスを提供するためには何をすべきなのか、個別対応できることが重要と
考える。
個別対応するためには、お互いに尊重し合いながら共に生きていくため、共
生社会づくり(雰囲気づくり)は重要と思われる。(北海道東川町)
●くろまる 相談の内容によっては、相談者のプライバシーに配慮しなくてはならないた
め、相談スペースは個室を設けることが望ましい。
相談者との後日のトラブルを避けるため、相談は複数人体制で行い、発言・
回答内容を共有することが望ましい。
外国人住民が希望する言語に対応できる相談員がいない場合、翻訳機を使用
しているが、後日のトラブルを避けるためには、翻訳機を過信しすぎないこと
が大事である。(神奈川県横須賀市)
●くろまる 「外国籍の人が少ないから開設しない」というのではなく、少なくても困っ
ている外国人はいるため積極的に開設を検討してほしい。外国人受入環境整備
交付金についても、環境整備について十分の十の交付金をいただけるため、ぜ
ひ検討してもらいたい。(神奈川県平塚市)
●くろまる 外国人への相談窓口の周知や情報発信などは日本人よりも難しく、外国人に
よっては市からのアプローチを警戒される場合もある。それらを考慮すると市
単独で外国人相談窓口の運営を継続するのは難しいと感じており、市の国際交
84 |
流団体やNPO法人、外国人コミュニティ等の協力も得ながら、外国人の利用
しやすい相談窓口にするための工夫が必要である。(大阪府八尾市)
●くろまる 多文化共生推進員と多文化共生相談員を配置することによって最も変化した
ことは、市役所職員の外国人に対する意識である。市役所職員の意識が変化し
たことで外国人住民に情報が速やかに提供されるなどの体制整備が進んでい
る。これに伴って外国人住民の意識も変化しており、安芸高田市に住居を構え
て永住しようとする方も着実に増加している状況となっている。(広島県安芸
高田市)
●くろまる 一元的相談窓口を設置・公表したことにより、市役所内を始め住民からも認
知され、相談に対する受理から回答又は取次ぎまでがスムーズになった。ま
た、外国人用の相談窓口として認識されたことにより関係機関とのネットワー
クが構築され、つなぎ役としての新たな役割が確立された。(香川県丸亀市)
●くろまる 外国人相談は通訳窓口ではないという理解と、私情をはさんだ支援をしない
ということを関係する相談員全員が共有すること、そして、できればスーパー
バイザー的な役割のポジションがあることと、相談員同士のチームワークを大
切にすることを当市の相談窓口では大事にしている。(北九州市)
●くろまる 今後、コロナ禍が収束するにつれて、在住外国人が増えていくことが予想さ
れるが、一元的相談窓口がある方が、外国人がより安心して日本にて生活がで
きると思われる。今は外国人受入環境整備交付金を活用できるため、設置しや
すい状況だと思う。(沖縄県那覇市)
85 |
令和5年度実施外国人受入環境整備交付金に係るアンケート調査結果
令和5年4月から5月にかけて、全国の地方公共団体を対象とした外国人受入環境
整備交付金に係るアンケート調査を今後の交付金の在り方の検討等に活かすことを目
的として実施しました。
そのアンケートの集計結果の一部について御紹介いたします。
■しかく実施対象:都道府県及び市区町村(計1788団体)
■しかく回答件数:840団体(回収率47.0%)
■しかくR4 外国人相談窓口を設置していますか。
(外国人受入環境整備交付金を受けていない窓口を含む)305535
はい いいえ
■しかく外国人受入環境整備交付金の内容に
ついて知っていますか。526314
はい いいえ
■しかくよろしければ外国人受入環境整備交付金に対す
る満足度を教えてください。
※(注記)1(満足度が低い)〜5(満足度が高い)の5段階評価
回答全体で集計 交付金を受けている団体で集計
1% 5%64%16%14%1 2 3 4 5
2% 3%19%41%35%1 2 3 4 5
アンケートの中で外国人受入環
境整備交付金をとりまく現状と
ともに、多くの地方公共団体の
皆様から今後の参考となる意見
や提案をいただきました。
アンケートに御協力いただいた皆様、誠にありがとうございました。