難民と認定した事例等について
1 「難民」の定義
出入国管理及び難民認定法では、
「難民」の定義について、
「難民の地位に関す
る条約(以下「難民条約」という。
)第1条の規定又は難民の地位に関する議定書
(以下「議定書」という。
)第1条の規定により難民条約の適用を受ける難民をい
う。
」と規定しています(入管法2条3号の2)。これら難民条約及び議定書上の難民(以下「条約難民」という。
)の定義は、
「人
種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理
由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍
国の外にいる者であって、国籍国の保護を受けることができないもの又はそのよう
な恐怖を有するために国籍国の保護を受けることを望まないもの、及び、常居所を
有していた国の外にいる無国籍者であって、当該常居所を有していた国に帰ること
ができないもの又はそのような恐怖を有するために当該常居所を有していた国に帰
ることを望まないもの」となっています((注記))。2 難民該当性の判断
申請者が申し立てる「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖」
に係る本人の供述や提出資料等の証拠に不自然、不合理な点がないか、出身国等に
係る客観的情報と整合するか否か等の観点から、申請者の申立ての信ぴょう性を判
断した上で、その内容が条約難民の定義に該当するか否かの難民該当性を評価して
います。
3 人道配慮による在留許可
条約難民に該当するとは認められないものの、人道上の観点から我が国での在留
を配慮する必要がある者については、
個々の事案ごとに諸般の事情を勘案した上で、
在留特別許可や在留資格変更許可を行うなどの法制度の運用を行っています。
我が国では、
「条約難民としての認定」のほか、こうした「人道配慮による在留
許可」により、保護を行っているところです。
(注記) 閣議了解等に基づいて受け入れている「定住難民」
(昭和53年から平成17
年まではインドシナ難民、平成22年以降は第三国定住難民)は、
「条約難民」
とは異なります。
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1難民と認定した事例及びその判断のポイント
1 「人種」及び「政治的意見」を理由として難民と認定された事例
【事例1】
(概要)
申請者は、A族であること、本国において、一時帰国した際、空港で本国
政府関係者から申請者の個人情報について聞かれるなどしたこと、本国政府
関係者が本国の自宅を訪れ、父に対し申請者を帰国させるよう言ったことな
どから、帰国した場合、本国政府から迫害を受けるおそれがあるとして、難
民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、本国政府はA族に対する抑圧を強化し
ており、また、本国政府から過激主義の影響を受けているなど、反政府的な
思想を有しているとみなされた場合には、本国政府から迫害を受ける蓋然性
が高いと考えられる。
申請者は、一時帰国した際の空港での手続において、本国政府関係者から
接触を受けていること、父が本国政府関係者から申請者を帰国させるよう言
われて以降も帰国していないこと、父が警察から、申請者からの電話には警
察が代わりに出る旨言われるなどしたことからすれば、本国政府から過激主
義の影響を受けているA族とみなされている可能性は否定できず、申請者が
、 。
帰国した場合 本国政府から迫害を受けるおそれは十分にあると認められる
したがって、申請者は 「人種」及び「政治的意見」を理由に迫害を受け、るおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民
に該当する。
2 「人種」、「宗教」及び「政治的意見」を理由として難民と認定された事例
【事例2】
(概要)
申請者は、A族であること、B教徒であること、海外に長期滞在していた
ところ、一時帰国した際、警察署等で取調べを受けたり、区役所の職員や警
察官から自宅を捜索されたりしたこと、本国からの出国手続の際、出国審査
の職員から数か月以内に帰国しない場合は逮捕する旨言われたことなどか
ら、帰国した場合、本国政府から迫害を受けるおそれがあるとして難民認定
申請を行ったものである。
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(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、本国政府は、A族に対する抑圧を強化
しており、さらに、B教徒が多い特定の国との結びつきを問題視し、それら
の国と関係のある者を標的としているとされる。また、本国政府から過激主
義の影響を受けているなど、反政府的な思想を有しているとみなされた場合
には、本国政府から迫害を受ける蓋然性が高いと考えられる。
申請者は、本国政府が問題視する特定の国での長期滞在歴があること、一
時帰国した際、警察署等で取調べを受けたり、区役所の職員や警察官から自
宅を捜索されたりしたこと、本国からの出国手続の際、出国審査の職員から
数か月以内に帰国しない場合は逮捕する旨言われたことなどからすれば、本
国政府から、B教を信仰し、過激主義の影響を受けたA族であるとみなされ
ている可能性は否定できず、申請者が帰国した場合、本国政府から迫害を受
けるおそれは十分にあると認められる。
したがって、申請者は 「人種 「宗教」及び「政治的意見」を理由に迫
、 」、害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するものであり、
条約難民に該当する。
【事例3】
(概要)
申請者は、A族であること、B教を信仰していること、本国政府の独裁統
治に反対する思想を有していること、本国において、旅券発給時に帰国し旅
、 、
券を返納する期限について誓約したが 当該期限までに帰国しなかったこと
本国政府関係者からの連絡を無視したことなどから、帰国した場合、本国政
府から迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、本国政府は、A族の活動を監視し、B
教の信仰を厳しく統制しており、また、本国政府から反政府的な思想を有し
ているとみなされるような場合には、本国政府から迫害を受ける蓋然性が高
いと考えられる。
申請者は、旅券発給時に帰国し旅券を返納する期限について誓約したが、
当該期限までに帰国しなかったこと、本国政府関係者からの電話を無視した
こと、その後、本国の家族が、本国政府関係者から申請者の状況を確認する
、 、 、
連絡を受けていることなどからすれば 本国政府から その命令に従わない
反政府的な思想を有しているA族とみなされている可能性は否定できない。
また、申請者は、本国及び本邦において、真摯に信仰を実践していると認
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められ、A族が監視・抑圧され、B教の信仰が厳しく統制されている本国情
勢を併せ鑑みれば、申請者が帰国した場合、本国政府から迫害を受けるおそ
れは十分にあると認められる。
したがって、申請者は 「人種 「宗教」及び「政治的意見」を理由に迫
、 」、害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するものであり、
条約難民に該当する。
3 「宗教」及び「政治的意見」を理由として難民と認定された事例
【事例4】
(概要)
申請者は、A教B宗派を信仰していること、本国において、自身と、同じ
くB宗派を信仰している兄とが、本国のA教C宗派民兵組織であるDの標的
リストに登載されていると聞いたため、申請者は家族と共に国外に移住した
ところ、本国に残った兄がC宗派民兵組織Dのメンバーと思われる者に殺害
されたこと、申請者が、本国政府に対し、医療や教育等を求める平和的なデ
モを企画し、同デモに参加したところ、C宗派民兵組織のメンバーと思われ
る者から、拉致された上、身柄を拘束され、暴行を受けたことなどから、帰
国した場合、C宗派民兵組織から迫害を受けるおそれがあるとして難民認定
申請を行ったものである。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、本国ではC宗派民兵組織によるB宗派
教徒への虐待が行われていると認められるところ、申請者と同じくB宗派を
信仰している兄が、C宗派民兵組織Dのメンバーと思われる者に殺害された
こと、申請者が、デモへの参加後、2度にわたりC宗派民兵組織のメンバー
と思われる者から拉致され暴行等を受けたことに加え、同デモを主催してい
たことも併せ鑑みれば、申請者がC宗派民兵組織からB宗派の反政府活動家
とみなされ、今後もC宗派民兵組織から危害を加えられる可能性は十分に考
えられる。
この点、出身国に係る諸情報を踏まえると、抗議者やデモ参加者は、国家
当局と民兵組織の両方から、危害を加えられるリスクが高いこと、B宗派教
徒が警察に犯罪を通報しても調査が行われない場合があること、申請者の居
住していた地域では警察の任務が困難になっていることが認められることか
らすれば、C宗派民兵組織からの危害に対する本国政府による効果的な保護
を期待することは困難である。
したがって、申請者は 「宗教」及び「政治的意見」を理由に迫害を受け、 - 4 -
るおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民
に該当する。
4 「宗教」を理由として難民と認定された事例
【事例5】
(概要)
申請者は、本国において、A教の信仰を示すため、A教のシンボルの装飾
品を身に付けていたところ、本国政府官憲から、暴行や取調べを受け、二度
とこのようなことをしないという誓約書を書かせられたこと、B教の宗教施
設の近くに立っていたところ、本国政府官憲から信仰について尋問されたこ
と、その後、B教からA教に改宗したこと、申請者の来日後、本国にいる兄
が、本国政府官憲から、申請者の改宗を理由に逮捕・勾留され、申請者の改
宗について尋問を受けたことなどから、帰国した場合、本国政府から迫害を
受けるおそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の本邦におけるA教徒としての活動の態様及び申請者がA教に改宗
するに至った経緯を併せ鑑みれば、申請者のA教に対する真摯な信仰が認め
られる。こうした申請者のA教徒としての活動からすれば、申請者が帰国し
た場合、本邦におけるA教徒としての活動と同様、本国においても、信仰を
外面化させ、積極的に宗教活動を行うと見込まれること、兄が本国政府官憲
から申請者の改宗について尋問を受けたことに鑑みれば、申請者が本国政府
から迫害を受ける可能性は否定できない。
したがって、申請者は 「宗教」を理由に迫害を受けるおそれがあるとい、う十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民に該当する。
【事例6】
(概要)
申請者は、本国において、A教B宗派からC教に改宗し、C教の宣教師と
して活動していたところ、A教D宗派武装勢力であるEの関係者から宣教活
動をやめるよう脅迫されたり、D宗派武装勢力Eと思われる者から発砲され
たりしたこと、D宗派武装勢力Eが支配する裁判所から、A教からの改宗者
であることを理由に自身に対し死刑判決が出されていることから、帰国した
場合、D宗派武装勢力Eから迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申請
を行ったものである。
(判断のポイント)
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出身国に係る諸情報を踏まえると、本国では、D宗派武装勢力EがD宗派
武装勢力Eを批判する者等を恣意的に拘禁しており、拘禁された人々には、
ジャーナリストや民間人、人権擁護者、C教共同体のメンバーが含まれてい
たとの報告やD宗派武装勢力EがC教徒を背教者として強く非難していると
の報告が認められる。
そうすると、D宗派武装勢力Eから、D宗派武装勢力Eに対して批判的な
思想や信念を有しているとみなされた者である場合には、迫害を受ける蓋然
性が高いと考えられる。
申請者は、本国で、A教からC教に改宗し、C教の宣教師として活動して
いたところ、D宗派武装勢力Eの関係者から脅迫を受けるなどしたというの
であるから、申請者がC教を信仰していることをD宗派武装勢力Eが把握し
ている蓋然性は高い。そうすると、申請者が帰国した場合、C教徒を背教者
として強く非難しているD宗派武装勢力Eから迫害を受けるおそれは十分に
あると考えられる。
また、出身国に係る諸情報を踏まえると、本国において、本国政府とD宗
派武装勢力Eとの衝突が長期にわたり継続しており、民間人にも多数の死傷
者が発生しているなど、国内の治安及び人道状況の悪化が深刻化していると
ころ、かかる状況下で、D宗派武装勢力Eから標的とされた者について、本
国政府による効果的な保護が期待できる状況にあるとは認められない。
したがって、申請者は 「宗教」を理由に迫害を受けるおそれがあるとい、う十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民に該当する。
【事例7】
(概要)
申請者は、無宗教であるところ、本国では、A教の戒律に逆らえば死刑に
処されることから、帰国した場合、本国政府やA教過激派組織であるBから
迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者は、幼少期から、A教の教えに疑問を持っていたところ、申請者の
SNS上での言動に起因して、申請者が無神論者であるという評判が申請者
の周囲の人間に広く周知されたと認められる。
出身国に係る諸情報を踏まえると、A教過激派組織Bは自らが解釈するA
教の原則、規範及び価値に違反しているとみなした個人・コミュニティの殺
害、攻撃及び脅迫を行ってきたと認められる。この点、無神論者である申請
者が帰国した場合、A教の教えに沿った行動をとるとは認められず、無神論
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者であることが広く知られることとなった申請者について、A教過激派組織
Bから自らの解釈するA教の原則等に違反しているものとみなされ、攻撃等
の対象となる可能性が十分にあるものと認められる。
したがって、申請者は 「宗教」を理由に迫害を受けるおそれがあるとい、う十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民に該当する。
5 「政治的意見」を理由として難民と認定された事例
【事例8】
(概要)
申請者は、本国において、少数民族武装勢力であるAの関係者であるとい
う疑いにより逮捕状が発付されたこと、その後、申請者の所在を確認するた
めに警察官が自宅を訪れたことから、帰国した場合、軍から迫害を受けるお
それがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者については、本国において、少数民族武装勢力Aの関係者であると
いう疑いにより逮捕状が発付されている可能性が否定できず、逮捕状が発付
されたとする時期以降に、警察官が複数回にわたり申請者の自宅を訪れてい
ることからすれば、官憲が申請者を少数民族武装勢力Aの関係者として個別
に認識していると認められるところ、出身国に係る諸情報を踏まえると、軍
と少数民族武装勢力Aが極度の緊張関係にあると認められることからすれ
ば、申請者が帰国した場合、少数民族武装勢力Aの関係者であるとみなされ
ていることを理由に軍を含む官憲から迫害を受けるおそれがあると認められ
る。
したがって、申請者は 「政治的意見」を理由に迫害を受けるおそれがあ、るという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民に該当する。
【事例9】
(概要)
申請者は、A族及びB教徒であること、本国において、父がA族の武装勢
力であるCに所属して活動していることなどから、帰国した場合、軍から迫
害を受けるおそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の父は、A族の武装勢力Cに所属し、保健部門の幹部として活動し
ているところ、出身国に係る諸情報を踏まえると、本国において、軍と少数
民族武装勢力との間で多数の衝突が発生しており、A族の武装勢力Cの拠点
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である地域においては、軍とA族の武装勢力Cの戦闘が激化し、多数の避難
民が発生するなど、情勢の急激な悪化が認められる。
申請者は、本国において、警察署に勾留された際、親がA族の武装勢力C
に所属していることについて言及されていることからすれば、官憲が申請者
をA族の武装勢力Cの関係者と認識していると認められるところ、軍とA族
、 、
の武装勢力Cとの間の極度の緊張関係を踏まえると 申請者が帰国した場合
A族の武装勢力Cの関係者であることを理由に軍を含む官憲から迫害を受け
る蓋然性は高い。
したがって、申請者は 「政治的意見」を理由に迫害を受けるおそれがあ、るという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民に該当する。
【事例10】
(概要)
申請者は、本国において、総選挙等に関連して複数回にわたり逮捕された
ことがあり、現在でも自身に対して逮捕状が発付されていることから、帰国
した場合、軍から迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申請を行ったも
のである。
(判断のポイント)
申請者は、本国において、総選挙の際、居住する地域を代表する役職を務
めていたところ、軍が支持する政党を勝利させるよう秘密指示を受けていた
ものの、選挙結果が軍の意に沿わないものであったことから、軍兵士に逮捕
され、拘束されて暴行を受けていることからすれば、申請者が、総選挙を契
機として、軍からその意に従わない人物として個別に認識されるに至ったと
認められる。
また、申請者は、その後も複数回にわたり逮捕されて暴行を受けているこ
とからすれば、軍が、申請者について、軍に反抗する立場の者として注視し
ていることは明らかである。
申請者は、軍基地を襲撃した暴徒と接触があるとの容疑で自身に対して逮
捕状が発付された旨申し立てているところ、申請者が、軍から個別に認識さ
れ、複数回にわたり逮捕された経緯を有していることなどを踏まえると、申
請者に対して逮捕状が発付された可能性は否定し得ず、申請者が帰国した場
合、軍から迫害を受けるおそれがあると認められる。
したがって、申請者は 「政治的意見」を理由に迫害を受けるおそれがあ、るという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民に該当する。
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【事例11】
(概要)
申請者は、A族であること、本国において、学生組合やA族の団体の会員
として反政府活動を行ったこと、野党であるB党のメンバーとして組織化活
動等を行ったこと、選挙の際に野党であるB党を支援したところ、警察に拘
束されたことなどから、帰国した場合、警察及び軍から迫害を受けるおそれ
があるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
、 、 、
申請者は 本国において 学生組合及びA族の団体における反政府活動や
野党であるB党のメンバーとして活動を開始して以降、軍及び警察から累次
の接触や暴行等を受けながらも、野党であるB党を選挙で勝たせるための活
動等を継続的に行っていたところ、選挙を控えた時期に警察から身柄拘束を
受けるなどしていたものである。
この点、申請者が軍及び警察から受けた扱いを踏まえると、申請者が、B
党をはじめとする軍に反抗する組織の関係者として個別に注視されている可
能性は否定できない。
出身国に係る諸情報を踏まえると、かかる申請者が帰国した場合、B党を
含む軍に反抗する組織の関係者で軍に敵対心を有しているとみなされている
ことを理由に軍を含む官憲から迫害を受けるおそれがあると認められる。
したがって、申請者は 「政治的意見」を理由に迫害を受けるおそれがあ、るという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民に該当する。
【事例12】
(概要)
申請者は、本国において、国会議員である親族Aが軍及び警察に拘束され
たことから、帰国した場合、軍から迫害を受けるおそれがあるとして難民認
定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、申請者の親族Aは、国会議員としての
経歴やその政治活動が注目を集めていた者である。
この点、申請者の親族Aは、身柄拘束を受けた際の尋問で、軍から、軍の
組織で役職に就くように勧誘を受けたところ、これを拒絶していることから
すれば、申請者の親族Aが、軍から反抗的な人物として認識されていること
。 、 、
は明らかである また 申請者の親族Aが身柄拘束時に受けた尋問を通して
申請者が軍から個別に認識されている可能性が考えられる。
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申請者は、軍から反抗的な人物として認識されているAと親密な交流や関
係を有する親族であり、軍から個別に認識されている可能性が考えられるこ
とからすれば、申請者についても、軍に反抗的な人物であるとみなされてい
る可能性は否定し得ず、申請者が帰国した場合、軍から迫害を受けるおそれ
があると認められる。
したがって、申請者は 「政治的意見」を理由に迫害を受けるおそれがあ、るという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民に該当する。
【事例13】
(概要)
申請者は、本国において、A族の武装勢力に所属していた経歴を有する父
が、軍に連行され、行方不明となっていること、A族の武装勢力の関係者で
、 、
ある夫が行方不明となっていること 申請者に対する事情聴取を目的として
軍が複数回にわたり本国の自宅を訪れたことなどから、帰国した場合、軍か
ら迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の父は、長年にわたりA族の武装勢力に所属した後に帰順し、小売
業に従事していた際、武装勢力と連絡を取っているとの容疑をかけられて軍
人に連行され、行方不明となっているところ、父が連行される現場に申請者
が居合わせていたこと、父を連行した数日後に軍が実家を訪れていること、
申請者の夫が行方不明となって以降、複数回にわたり本国の実家を訪れた軍
が、申請者の事情聴取を企図していたことなどを踏まえると、申請者につい
て、軍からA族の武装勢力の関係者として個別に認識されていたことは明ら
かである。
出身国に係る諸情報を踏まえると、軍とA族の武装勢力が極度の緊張関係
にあることが認められ、申請者が帰国した場合、A族の武装勢力の関係者で
あるとみなされていることを理由に軍から迫害を受けるおそれがあると認め
られる。
したがって、申請者は 「政治的意見」を理由に迫害を受けるおそれがあ、るという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民に該当する。
【事例14】
(概要)
申請者は、本国において、A族の武装勢力であるBに所属して活動してい
たこと、民主化を訴えるグループであるCの組織化を担当する役職で活動し
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たことなどから、帰国した場合、軍から迫害を受けるおそれがあるとして難
民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者は、本国において、民主化を訴えるグループCに所属して以降、軍
及び警察による累次の接触や逮捕等を受けながらも、民主化を訴えるグルー
プCの組織化を担当する役職における活動等を通じて、軍主体の体制に反対
する政治活動を継続的に行っていたものである。
この点、申請者が上記活動等を理由に警察から複数回逮捕されていること
に加え、申請者の父が、村長という立場にあり、警察から累次に渡る警告を
受けていたことや軍と極度の緊張関係にあるA族の武装勢力Bと密接な関係
を有していることを併せ鑑みれば、申請者が、軍をはじめとする官憲から、
軍に反抗する組織の関係者として個別に注視されていることは明らかであ
り、出身国に係る諸情報を踏まえると、かかる申請者が帰国した場合、軍に
反抗する組織の関係者で軍に敵対心を有しているとみなされていることを理
由に軍を含む官憲から迫害を受けるおそれがあると認められる。
したがって、申請者は 「政治的意見」を理由に迫害を受けるおそれがあ、るという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民に該当する。
【事例15】
(概要)
申請者は、A族のB教徒であること、本国において、村の議長を務めてい
たところ、軍の隊長から自身の民族と宗教を侮辱されたことに対して反論し
たため、同隊長及びその部下である軍人たちから暴行を受け、警察署に勾留
されたこと、その後、仮釈放されたものの、そのまま逃走したため軍に捜索
されていることから、帰国した場合、軍から迫害を受けるおそれがあるとし
て難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者は、村の議長として、軍の隊長の命令に従って様々な任務に当たっ
ていたところ、同隊長から、難癖を付けられて、自身の宗教や民族を激しく
侮辱されたため、言い返したことから、同隊長及びその部下である軍人たち
から暴行を受けた上、警察署に連行されて勾留され、その後、村人が保証人
となることで仮釈放された後に逃亡したものである。
この点、申請者が勾留された理由は、A族の武装勢力であるCを支援して
いるとみなされたためであるところ、出身国に係る諸情報を踏まえると、申
請者の出身地では、軍と地元の武装勢力の間での武力衝突に起因して多数の
- 11 -
避難民が発生するなど、両者の間で極度の緊張関係が生じている上、申請者
が逃亡した後、軍が申請者の自宅を定期的に訪れていることなどを踏まえる
と、申請者が帰国した場合、A族の武装勢力を支援しているとみなされてい
ることを理由に、軍から迫害を受けるおそれがあると認められる。
したがって、申請者は 「政治的意見」を理由に迫害を受けるおそれがあ、るという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民に該当する。
【事例16】
(概要)
申請者は、本国において、金融機関に勤務していたところ、本国の一部地
域の独立を求める過激派であるAに資金を渡していると疑われたことを理由
に、軍人に拉致・監禁されて暴行を受けたこと、その後、監禁先から逃亡し
たことから、帰国した場合、軍人から迫害を受けるおそれがあるとして難民
認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者は、本国の一部地域の独立を求める過激派Aに資金を渡したことは
ないものの、申請者が拉致・監禁された理由は、申請者が本国の一部地域の
独立を求める過激派Aの支援者であるとみなされたためであることは明らか
である。
、 、 、 、
この点 申請者は 軍人に拉致された後 監禁先から逃亡しているところ
申請者の行方は軍人により捜索されていると考えるのが自然であることに加
え、出身国に係る諸情報を踏まえると、本国においては、治安部隊と分離独
立派との激しい衝突が常態化している上、本国政府当局による分離主義グ
ループやその支援者とみなされた者に対する危害についての報告が存在する
ことからすれば、申請者が帰国した場合、本国の一部地域の独立を求める過
激派Aの支援者であるとみなされていることを理由に本国政府から迫害を受
けるおそれがあると認められる。
したがって、申請者は 「政治的意見」を理由に迫害を受けるおそれがあ、るという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民に該当する。
【事例17】
(概要)
申請者は、本国において、市民団体のメンバーとして政府による人権侵害
等に抗議し人権を擁護する市民運動を行っていたこと、当該活動を理由に逮
捕され、収容されて拷問を受けたことなどから、帰国した場合、本国政府か
- 12 -
ら迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、本国政府は、政府に批判的な活動を取
り締まっており、野党指導者、人権擁護家、市民社会活動家、ジャーナリス
ト等を恣意的に逮捕して拘禁し、拷問しているとの報告が認められる。そう
すると、本国政府から、反政府的な思想を有しているとみなされるような場
合には、本国政府から迫害を受ける蓋然性が高いと考えられる。
申請者は、本国において、本国政府による人権侵害等に抗議する市民運動
を活発に行っており、当該活動に関連して複数回逮捕され、収容施設に収容
されて拷問を受けたというのであるから、本国政府から政府に批判的な市民
運動を行っている者として個別に認識されていると認められ、申請者が帰国
した場合、本国政府から迫害を受けるおそれがあると認められる。
したがって、申請者は 「政治的意見」を理由に迫害を受けるおそれがあ、るという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民に該当する。
【事例18】
(概要)
、 、 、
申請者は 本国において 弁護士として労働者等を弁護する活動をしたり
本国政府に抗議するデモに参加したりしたところ、逮捕され、身柄を拘束さ
れて拷問を受けたことなどから、帰国した場合、本国政府から迫害を受ける
おそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、本国政府は、政府に批判的な活動を取
り締まっており、反政府デモ参加者、ジャーナリスト、弁護士及び人権活動
家等を恣意的に逮捕して拘禁し、拷問しているとの報告や、政治犯の弁護を
請け負った弁護士が、有罪判決を受けて処罰されているとの報告が認められ
る。
そうすると、本国政府から、反政府的な思想を有しているとみなされるよ
うな場合には、本国政府から迫害を受ける蓋然性が高いと考えられる。
申請者は、本国において、弁護士として、デモに参加して不当に逮捕され
た労働者等の弁護活動をしたり、申請者自身も、労働者のデモや大学生の逮
捕に反対するデモ等に参加したところ、当該活動に関連して複数回逮捕及び
拘束され、拷問を受けた上、釈放後も本国政府官憲から脅迫を受けたという
のであるから、申請者が、上記活動を理由に、本国政府から、反政府的な思
想を有している者として個別に注視されていたことは疑いがなく、申請者が
- 13 -
帰国した場合、本国政府から迫害を受けるおそれがあると認められる。
したがって、申請者は 「政治的意見」を理由に迫害を受けるおそれがあ、るという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民に該当する。
【事例19】
(概要)
申請者は、A族であること、無宗教者であること、B教過激派組織である
Cに本国政府のスパイと疑われ、拘束されて暴行を受けたこと、その後、自
身に対してB教過激派組織Cから逮捕状が発付されたことなどから、帰国し
た場合、B教過激派組織Cから迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申
請を行ったものである。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、B教過激派組織Cは、本国政府関係者
等を標的としてきたと認められるところ、申請者に対して発付された逮捕状
に記載された内容や申請者がB教過激派組織Cのメンバーから本国政府のス
パイであると疑いをかけられ、拘束されて激しい暴行を受けていることを踏
まえると、申請者が、本国政府公務員として働いていたことを理由に、B教
過激派組織Cから個別に把握されていることは明らかであること、申請者が
拘束されて以降、申請者の家族がB教過激派組織Cから累次にわたる接触や
暴行を受けていることなどからすれば、申請者が帰国した場合、B教過激派
組織Cから迫害を受けるおそれがあると認められる。
したがって、申請者は 「政治的意見」を理由に迫害を受けるおそれがあ、るという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民に該当する。
【事例20】
(概要)
申請者は、A族であること、本国において、A族の武装勢力であるBや同
組織の民族学校で活動したことなどから、帰国した場合、軍及び警察から迫
害を受けるおそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、本国において、A族の武装勢力Bの拠
点である地域において、軍と少数民族武装勢力の衝突に起因して多数の避難
民が発生するなど、情勢の急激な悪化が認められる。
申請者は、A族の武装勢力Bに所属し、民族学校教員等として活動してい
たところ、軍兵士等が申請者のA族の武装勢力Bにおける活動について聴取
- 14 -
するために本国の自宅を訪れたこと、A族の武装勢力Bの拠点である地域に
おいて軍の活動が活発化していること、申請者の親族にA族の武装勢力Bの
関係者が複数存在することなどを踏まえると、申請者がA族の武装勢力Bに
所属して活動していた事実が軍に把握されている可能性は否定できない。
申請者は、上記本国における活動等のほか、本邦においても、A族の団体
、 、
に所属して A族の武装勢力Bを支援する活動を行っていることからすれば
かかる申請者が帰国した場合、軍と少数民族武装勢力との間の極度の緊張関
係からすると、申請者は、軍に反抗する組織であるA族の武装勢力Bの関係
者で軍に敵対心を有しているものとして、軍から迫害を受けるおそれがある
と認められる。
したがって、申請者は 「政治的意見」を理由に迫害を受けるおそれがあ、るという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民に該当する。
【事例21】
(概要)
申請者は、本国において、本国政府機関や外国政府機関の手がけるプロジ
ェクトで働いていたことから、帰国した場合、A教過激派組織であるBから
迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、A教過激派組織Bが本国政府関係者等
を標的としていること、特定の外国の価値観を持つようになったとみなされ
た者がA教過激派組織Bをはじめとする勢力から殺害等の対象とされる可能
性があることなどが報告されている。
、 、 、
この点 申請者は 複数の本国政府機関等で勤務した経歴を有するところ
その大部分が、外国政府機関が手がけるプロジェクト及び同プロジェクトを
継承した事業に関連するものであること、本邦入国直前まで勤務していた本
国政府機関において要職を務めていたことなどからすれば、申請者が、本国
における経歴を理由に、A教過激派組織Bから標的とされている可能性は否
定できず、申請者が帰国した場合、A教過激派組織Bから迫害を受けるおそ
れがあると認められる。
したがって、申請者は 「政治的意見」を理由に迫害を受けるおそれがあ、るという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民に該当する。
【事例22】
(概要)
- 15 -
申請者は、A族であり、B教徒であること、本国において、父及び兄がA
族の武装勢力であるCに所属して活動していること、本邦において、A族の
団体に所属して活動していることから、帰国した場合、軍及び警察から迫害
を受けるおそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、本国において、軍と少数民族武装勢力
との間で多数の衝突が発生しており、A族の武装勢力Cの拠点である地域に
おいては、軍とA族の武装勢力Cの戦闘が激化し、多数の避難民が発生する
など、情勢の急激な悪化が認められる。
申請者の父及び兄は、いずれもA族の武装勢力Cに所属して活動している
ところ、申請者が本国の学校に在学していた際、軍兵士が、申請者を監視す
るために同校に度々現れていたこと、申請者に対して、申請者の父の氏名を
挙げた上で親子関係について詰問したこと、軍兵士が申請者の祖母の家を度
々訪れ、祖母に暴行を加えていること、加えて、申請者の叔父もA族の武装
勢力Cに所属し、要職を務めていたことを踏まえると、申請者について、軍
からA族の武装勢力Cの関係者として個別に注視されていたことは明らかで
ある。
軍とA族の武装勢力Cとの間の極度の緊張関係を踏まえると、申請者が帰
国した場合、軍に反抗する組織であるA族の武装勢力Cの関係者で軍に敵対
心を有しているものとして、軍を含む官憲から迫害を受けるおそれがあると
認められる。
したがって、申請者は 「政治的意見」を理由に迫害を受けるおそれがあ、るという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民に該当する。
【事例23】
(概要)
申請者は、本国において、弁護士として、憲法改正を求める要望書を最高
裁判所に提出したこと、軍から農地を接収された人々の弁護活動を行ったこ
とから、帰国した場合、軍から迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申
請を行ったものである。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、本国においては、軍・警察等によるデ
モ参加者への対応によって多数の死傷者が生じるなど、軍を含む官憲が、反
抗的な立場を表明した者に対して強硬に対応していることが認められる。
申請者は、本国において、弁護士として、一般市民に対して無償で法律支
- 16 -
援を行う弁護士団体に所属し、憲法改正を求める最高裁判所宛ての要望書に
名を連ねたり、軍から農地を接収された人々の代理人として、軍に対して土
地の返還を求める訴訟に関わっていたところ、多数の軍人が複数回にわたり
申請者の実家を訪れ、申請者の所在を確認していること、申請者の実家が軍
人によって家宅捜索され、申請者が仕事で使用していた法律関係の資料が押
収されていることからすれば、申請者が、本国における弁護士としての活動
を理由に、軍から軍に反抗的な人物として注視されていることは明らかであ
、 、 。
り 申請者が帰国した場合 軍から迫害を受けるおそれがあると認められる
したがって、申請者は 「政治的意見」を理由に迫害を受けるおそれがあ、るという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民に該当する。
【事例24】
(概要)
申請者は、本国において、軍幹部養成学校から逃亡したことなどから、帰
国した場合、軍から迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申請を行った
ものである。
(判断のポイント)
申請者は、本国において、軍幹部を多数輩出している軍幹部養成学校に入
、 、 、
学したところ 複数回にわたり脱走を試みたことから 軍事裁判にかけられ
収監された後、退学が認められたという経歴を有するものである。
この点、申請者は、軍幹部養成学校入学後、軍の本質を知り、自身の思想
・信条と相容れないと認識するに至ったことから、軍幹部養成学校から脱走
、 、 、
を試みたものであり 軍事裁判において その思想・信条を表明している上
身柄拘束中に度重なる暴行・脅迫を受けながらも、自らの思想・信条を放棄
することはなかったことからすれば、申請者が、軍と相容れない思想・信条
を持つ人物であることは、当然に軍から把握されているものと認められる。
出身国に係る諸情報を踏まえると、本国において、軍を含む官憲が、軍に
反抗的な立場を表明した者に対して強硬に対応していることが認められると
ころ、申請者は、軍幹部養成学校退学以降、当該事情に起因して、警察等か
ら継続的に接触を受けていたことなどからすれば、申請者が、軍幹部を多数
輩出している軍幹部養成学校において、軍と相容れない思想・信条を持つこ
とを表明したことを理由に、軍から軍に反抗的な思想を有する人物として注
視されていることは明らかであり、申請者が帰国した場合、軍から迫害を受
けるおそれがあると認められる。
したがって、申請者は 「政治的意見」を理由に迫害を受けるおそれがあ、 - 17 -
るという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民に該当する。
【事例25】
(概要)
申請者は、本国において、民主化を求めるデモに参加したこと、本邦にお
、 、
いて 本国の民主化運動を支援する組織を立ち上げて活動していることから
帰国した場合、軍から迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申請を行っ
たものである。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、本国においては、民主化を求める組織
がテロ組織に指定されるなど、その関係者に対して特に強硬な対応がとられ
ていることが認められる。
申請者は、本邦において、本国で民主化運動に参加している人々を支援す
ることを目的とした組織の設立に参加し、同組織の運営の中核を担っている
ことなどからすれば、申請者が、本邦における上記活動を理由に、軍から、
本国の民主化を求める組織の関係者として個別に注視されている可能性は否
定できず、申請者が帰国した場合、軍から迫害を受けるおそれがあると認め
られる。
したがって、申請者は 「政治的意見」を理由に迫害を受けるおそれがあ、るという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民に該当する。
【事例26】
(概要)
申請者は、本国において、本邦で反本国政府活動をしている友人と連絡を
取ったところ、警察官から当該友人との連絡を控えるよう脅迫されたこと、
本国出国直前に、警察官から接触を受け、申請者が帰国したら話があると伝
えられたこと、本邦において、反本国政府組織に加入して本国政府に反対す
る抗議活動等に参加した後、本国の警察から連絡を受けたこと、申請者の来
日後、本国の家族らが、申請者の帰国の説得をするよう警察官から接触を受
けたことから、帰国した場合、本国政府から迫害を受けるおそれがあるとし
て難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、本国政府は、少数民族に対する同化政
策を推進しており、同政策への抗議活動に参加した者を多数拘束するなど、
反政府活動を厳しく取り締まっていることが認められる。そうすると、本国
- 18 -
政府から、反政府的な思想を有しているとみなされるような場合には、本国
政府から迫害を受ける蓋然性が高いと考えられる。
申請者は、本国において、本邦で反本国政府活動をしている友人と連絡を
取ったことを理由に警察官から脅迫を受けており、申請者が本国政府が注視
している本邦の反政府活動家と連絡を取り合っていたことは、本国政府に把
握されていると認められること、本国出国直前に、申請者が本邦へ渡航する
ことを知った警察官から、申請者が帰国したら話があると伝えられたにもか
かわらず帰国していないこと、本邦での反政府活動を理由に、本国の警察か
ら連絡を受けた上、申請者の本国の家族らも、警察官から申請者の帰国の説
得をするよう接触を受けていることからすれば、申請者が、本国政府から、
反政府的な思想を有している者として個別に注視されている可能性は否定で
きず、申請者が帰国した場合、本国政府から迫害を受けるおそれがあると認
められる。
したがって、申請者は 「政治的意見」を理由に迫害を受けるおそれがあ、るという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民に該当する。
【事例27】
(概要)
申請者は、A族であり、B教徒であること、本国において、軍から、A族
の武装勢力Cと繋がりがあると疑われ、身体拘束をされた上で暴行を受け、
A族の武装勢力Cと繋がりがあると自白させられたことなどから、帰国した
場合、軍から迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申請を行ったもので
ある。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、本国において、軍と少数民族武装勢力
との間で多数の衝突が発生しており、A族の武装勢力Cの拠点である地域に
おいては、軍とA族の武装勢力Cの戦闘が激化し、多数の避難民が発生する
など、情勢の急激な悪化が認められる。
申請者の親族には、A族の武装勢力Cに所属して長年活動している者が複
数存在するところ、申請者及びその家族は、当該親族及びA族の武装勢力C
との関係を疑われ、軍及び警察から累次にわたる接触を受けていたところ、
父及び兄が相次いで軍に連行されて拷問を受け、上記親族やA族の武装勢力
Cとの関係について尋問されていること、その後、申請者も軍兵士に連行さ
れて暴行を受け、上記親族やA族の武装勢力Cとの関係について尋問された
上、A族の武装勢力Cを支援していることを認める文書に署名させられたこ
- 19 -
とを踏まえると、申請者について、軍からA族の武装勢力Cの関係者として
個別に注視されていたことは明らかである。
軍とA族の武装勢力Cとの間の極度の緊張関係を踏まえると、申請者は、
軍に反抗する組織であるA族の武装勢力Cの関係者で軍に敵対心を有してい
るものとして、軍を含む官憲から迫害を受けるおそれがあると認められる。
したがって、申請者は 「政治的意見」を理由に迫害を受けるおそれがあ、るという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民に該当する。
【事例28】
(概要)
申請者は、A族及びB族の血を引くこと、C教徒であること、本国におい
て、A族の武装勢力Dの地域幹部として活動していたところ、軍に逮捕・拘
束されて拷問を受けたことなどから、帰国した場合、軍から迫害を受けるお
それがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、本国において、軍と少数民族武装勢力
との間で多数の衝突が発生しており、A族の武装勢力Dの拠点である地域に
おいては、軍とA族の武装勢力Dの戦闘が激化し、多数の避難民が発生する
など、情勢の急激な悪化が認められる。
この点、申請者は、本国において、A族の武装勢力Dの地域幹部として、
住民からの徴税、食料調達等に従事していたところ、軍に逮捕され、軍基地
に連行されて、拘束中に拷問を受けたこと、拘束されていた軍基地から移送
される途中に逃亡したものの、その後、申請者を捜すために、軍が申請者の
実家や二姉宅を複数回訪れていることに加え、申請者が地域幹部という要職
を務めていたことを踏まえると、申請者について、軍からA族の武装勢力D
の関係者として個別に注視されていたことは明らかである。
軍とA族の武装勢力Cとの間の極度の緊張関係を踏まえると、申請者は、
軍に反抗する組織であるA族の武装勢力Dの関係者で軍に敵対心を有してい
るものとして、軍から迫害を受けるおそれがあると認められる。
したがって、申請者は 「政治的意見」を理由に迫害を受けるおそれがあ、るという十分に理由のある恐怖を有するものであり、条約難民に該当する。
- 1 -
2人道配慮により在留許可を行った事例及びその判断のポイント
1 紛争待避機会として在留許可を付与した事例
【事例1】
(概要)
申請者は、本国において、兵役に就くことを要請されていることから、帰
国した場合、軍への入隊を強要され、同国人同士の戦闘に従事させられるお
それがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
出身国に係る諸情報を踏まえると、本国において、国外脱出による兵役忌
避は処罰の対象となるものの、当該処罰は、申請者に対して差別的に適用さ
、 、 、
れるものではなく 一般に 兵役忌避者に適用されるものであることに加え
免除料等の支払により兵役を免除され得ることからすれば、申請者の主張を
もって、条約難民の要件である迫害を受けるおそれがあるとは認められない
として「不認定」とされた。
しかしながら、出身国に係る諸情報を踏まえると、本国では、内戦が続い
ており、政府軍の支配地域においては、治安が大きく改善した旨の報告があ
る一方、武装勢力等による民間人の殺害等が横行し、これを防止しようとし
た政府軍が上記武装勢力と衝突したり、武装勢力同士が互いの利益をめぐり
戦闘を行っているとの報告があるほか、反体制派の拠点とされる一部地域で
は現在も戦闘が継続している旨の報告もあることからすれば、申請者が帰国
した場合、戦闘に巻き込まれる可能性があることは否定できない。よって、
申請者は、人道上の配慮から我が国での在留を認める必要があると判断され
た。
【事例2】
(概要)
申請者は、本国では、戦争が続いていることから、帰国した場合、生命が
危険にさらされるおそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の主張は、本国の治安情勢に対する不安を述べているものであり、
- 2 -
難民条約上のいずれの迫害理由にも該当しないとして「不認定」とされた。
しかしながら、出身国に係る諸情報を踏まえると、本国では、内戦が続い
ており、政府軍の支配地域においては、治安が大きく改善した旨の報告があ
る一方、武装勢力等による民間人の殺害等が横行し、これを防止しようとし
た政府軍が上記武装勢力と衝突したり、武装勢力同士が互いの利益をめぐり
戦闘を行っているとの報告があるほか、反体制派の拠点とされる一部地域で
は現在も戦闘が継続している旨の報告もあることからすれば、申請者が帰国
した場合、戦闘に巻き込まれる可能性があることは否定できない。よって、
申請者は、人道上の配慮から我が国での在留を認める必要があると判断され
た。
【事例3】
(概要)
申請者は、本国において、妻の浮気が原因で離婚したこと、離婚した妻の
きょうだいから殺害の脅迫等を受けたことから、帰国した場合、離婚した妻
の親族等から迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申請を行ったもので
ある。
(判断のポイント)
申請者の主張は 難民条約上のいずれの迫害理由にも該当しないとして 不
、 「
認定」とされた。
しかしながら、出身国に係る諸情報を踏まえると、本国では、申請者の出
身地であるAでのテロ件数自体は減少傾向にあるものの、依然としてB教過
激派組織の犯行と思われるテロ事件が発生していること、また、反政府デモ
が激化し、Aにおいても、デモ部隊と治安部隊との衝突により多数の死傷者
が発生していることからすれば、Aでは、いまだに不安定な治安状況が続い
ていると認められる。そうすると、A出身で同地に居住していた申請者が帰
国した場合、テロ等に巻き込まれる可能性は否定できない。また、出身国に
係る諸情報を踏まえると、本国で比較的安全とされる地域とのつながり等が
ない申請者は、同地域への移動が困難であることからすれば、申請者にとっ
て国内避難が有効であるともいえない。よって、申請者は、人道上の配慮か
ら我が国での在留を認める必要があると判断された。
- 3 -
【事例4】
(概要)
申請者は、本国において、1分離独立派勢力であるAがB地域を支配して
おり、B地域の治安が悪いこと、若者が反政府武装勢力であるCからメンバ
ーとなるよう勧誘されていることから、帰国した場合、反政府武装勢力Cか
ら勧誘され、戦闘地域に送られて命を落とすおそれがあり、B地域に行った
場合、分離独立派勢力Aから危害を加えられるおそれがあること、また、2
地域の有力者の娘と婚前交際を行ったため、同有力者が怒っていると聞いた
ことなどから、帰国した場合、同有力者から殺害されるおそれがあるとして
難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者は、本国の治安情勢に関する不安を述べているのであって、申請者
に係る個別具体的な迫害事情は特段見受けられず、上記1の主張をもって、
条約難民の要件である迫害を受けるおそれがあるとは認められない。
また、上記2の主張は、難民条約上のいずれの迫害理由にも該当しないと
して「不認定」とされた。
しかしながら、出身国に係る諸情報を踏まえると、本国では、政府軍と反
政府勢力との間で戦闘が長期にわたり継続しており、民間人の死傷者や避難
民が大量に発生するなど、本国情勢は非常に不安定かつ流動的であり、申請
、 。 、
者が帰国した場合 上記戦闘に巻き込まれる可能性を否定できない よって
申請者は、人道上の配慮から我が国での在留を認める必要があると判断され
た。
【事例5】
(概要)
申請者は、1A教B宗派を信仰するC人であり、本国において、C人主体
の組織であるDに所属してA教過激派組織であるEとの戦闘に参加した経験
があることなどから、帰国した場合、A教過激派組織Eから迫害を受けるお
それがあること、また、2本国情勢が悪化していることから、帰国できない
として難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
C人主体の組織Dにおける申請者の活動は、20年以上前にA教過激派組
- 4 -
織Eとの戦闘に数回参加したというものであり、当該活動を理由に身柄拘束
等をされたことはないこと、その他申請者に係る個別具体的な迫害事情も特
段見受けられないことからすれば、上記1の主張をもって、条約難民の要件
である迫害を受けるおそれがあるとは認められない。
また、上記2の主張は、難民条約上のいずれの迫害理由にも該当しないと
して「不認定」とされた。
しかしながら、出身国に係る諸情報を踏まえると、本国においては、A教
、 、 、
過激派組織Eが 独自のA教の解釈により 住民に刑罰を与え統治下に置き
地元住民の社会的活動を監視しているとの情報があるほか、過激派組織によ
るテロに住民が巻き込まれる事件が発生しているとの情報もあることからす
れば、本国情勢は非常に不安定かつ流動的であり、申請者が帰国した場合、
上記テロに巻き込まれる可能性等を否定できない。よって、申請者は、人道
上の配慮から我が国での在留を認める必要があると判断された。
2 本邦事情
【事例6】
(概要)
申請者は、2回目の難民認定申請であり、前回の難民認定手続と同様に、
本国において、地区のチーフから、申請者の実弟が死亡したため、申請者が
父の遺産を相続するとともに、亡父や亡祖父の妻全員を養うよう命令された
が、その命令に従わず、逃亡したことから、帰国した場合、強制的にチーフ
の所に連行され、迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申請を行ったも
のである。
(判断のポイント)
申請者の主張は、前回の難民認定申請における主張と同旨であり、難民該
当性は認められないとして「不認定」とされた。
しかしながら、申請者は、本邦で日本人と婚姻し、同居し、相互扶助して
いることが認められ、また、既に申請者夫婦の間には日本人実子が出生して
おり、婚姻の安定性・継続性が認められる。よって、申請者は、人道上の配
慮から我が国での在留を認める必要があると判断された。
- 5 -
【事例7】
(概要)
申請者は、2回目の難民認定申請であり、前回の難民認定手続と同様に、
本国において、反政府武装勢力が活動をしたり、麻薬関係者による殺人事件
が起きたりして、治安が悪化していることから、帰国した場合、事件に巻き
込まれるおそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の主張は、前回の難民認定申請における主張と同旨であり、難民該
当性は認められないとして「不認定」とされた。
しかしながら、申請者は、母と共に本邦に入国し、本邦において日本人と
婚姻した母と同居し、その扶養を受けていること、本国には申請者の面倒を
見る者がいないなどの事情が認められる。
よって、申請者は、人道上の配慮から我が国での在留を認める必要がある
と判断された。
- 1 -
3難民と認定しなかった事例及びその判断のポイント
1 迫害理由として「人種」を申し立てるもの
【事例1】
(概要)
申請者は、本国において、A族であることを理由に、居住地域のB族から
侮辱的な言葉を言われたことから、帰国した場合、居住地域のB族から侮辱
的な言葉を言われるおそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の申立てによれば、申請者を迫害するのは、居住地域のB族であっ
て、出身国に係る諸情報を踏まえると、本国政府当局がこうした私人による
違法行為を放置、助長するような特別な事情があるとは認められない。よっ
て、条約難民の要件である迫害を受けるおそれがあるとは認められないとし
て「不認定」とされた。
2 迫害理由として「宗教」を申し立てるもの
【事例2】
(概要)
申請者は、本国において、A教からB教に改宗したため、A教徒である両
親や親族から殺害の脅迫を受けたことから、帰国した場合、家族から迫害を
受けるおそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の申立てによれば、申請者を迫害するのは、申請者の家族であっ
て、出身国に係る諸情報を踏まえると、本国では、憲法で宗教の自由を認
め、宗教的な差別を禁止している上、本国政府当局がこうした私人による違
法行為を放置、助長するような特別な事情があるとは認められない。よっ
て、条約難民の要件である迫害を受けるおそれがあるとは認められないとし
て「不認定」とされた。
【事例3】
(概要)
申請者は、A教徒であること、本国において、村で行われたA教の祭りに
参加していた際、村のB教原理主義者らからA教の祭りをしないよう言われ
- 2 -
たが、これに反論したところ、暴行や脅迫を受けたことから、帰国した場
合、村のB教原理主義者らから迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申
請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の申立てによれば、申請者を迫害するのは、特定地域のB教原理主
義者らであって、出身国に係る諸情報を踏まえると、本国では、憲法上、信
教の自由が保障されており、本国政府当局がこうした私人による違法行為を
放置、助長するような特別な事情があるとは認められない。よって、条約難
民の要件である迫害を受けるおそれがあるとは認められないとして「不認
定」とされた。
【事例4】
(概要)
申請者は、A教B宗派の信者であること、本国において、B宗派を攻撃す
ることをやめるように求める抗議活動に参加したため、A教C宗派の過激派
組織であるDのメンバーと思われる者から銃撃されたことから、帰国した場
合、DなどのA教C宗派過激派組織の関係者から迫害を受けるおそれがある
として難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の申立てによれば、申請者を迫害するのは、DなどのA教C宗派過
激派組織の関係者であって、出身国に係る諸情報を踏まえると、本国政府当
局がC宗派過激派組織による違法行為を放置、助長するような特別な事情が
あるとは認められない。よって、条約難民の要件である迫害を受けるおそれ
があるとは認められないとして「不認定」とされた。
3 迫害理由として「国籍」を申し立てるもの
【事例5】
(概要)
申請者は、両親が元A国国籍者であるところ、本国において、A国国籍者
が本国政府からスパイだと思われていることから、帰国した場合、本国政府
からスパイだと疑われ強制的にA国に帰国させるための拷問を受けるおそれ
があるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者は、A国国籍を有しておらず、本国政府からスパイだと疑われるお
- 3 -
それがあるというのは、合理的な根拠に基づかない申請者の臆測である。
よって、条約難民の要件である迫害を受けるおそれがあるとは認められない
として「不認定」とされた。
4 迫害理由として「政治的意見」を申し立てるもの
【事例6】
(概要)
申請者は、本国において、労働者の賃上げを求めるデモに参加したこと、
本邦において、首相の退陣を求めるデモに参加したことから、帰国した場
合、本国政府から迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申請を行ったも
のである。
(判断のポイント)
申請者の申立てによれば、申請者は、いずれのデモにも多数の参加者の一
人として参加したこと、本国での活動を理由に本国政府関係者から接触を受
けたことはないこと、本国でのデモ参加後、何ら問題なく自己名義旅券の発
給及び本国の出国手続を受けていること、また、本邦でのデモ参加を理由に
申請者や本国の家族が本国政府関係者から接触を受けたことはないことから
すれば、条約難民の要件である迫害を受けるおそれがあるとは認められない
として「不認定」とされた。
【事例7】
(概要)
申請者は、本国において、憲法の改正を求めるデモに参加したことから、
帰国した場合、本国政府から迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申請
を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の申立てによれば、申請者のデモ参加の態様は、一参加者として参
加したというものであること、これを理由に、申請者や本国の家族が本国政
府官憲から接触を受けたことはないこと、また、上記デモ参加後、何ら問題
なく自己名義旅券の発給及び本国の出国手続を受けていることからすれば、
条約難民の要件である迫害を受けるおそれがあるとは認められないとして
「不認定」とされた。
- 4 -
【事例8】
(概要)
申請者は、本国において、A県B区でC党を支持する政治活動を行ってい
たところ、B区のD党支持者たちからC党の支持をやめるよう脅迫を受けた
ことから、帰国した場合、B区のD党支持者たちから迫害を受けるおそれが
あるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の申立てによれば、申請者を迫害するのは、本国政府ではなく、特
定地域のD党関係者であって、出身国に係る諸情報を踏まえると、本国政府
当局が政党関係者や私人による違法行為を放置、助長するような特別な事情
があるとは認められない。よって、条約難民の要件である迫害を受けるおそ
れがあるとは認められないとして「不認定」とされた。
【事例9】
(概要)
申請者は、本国において、大統領選挙で、A党の党員として、A党候補を
応援する活動をしていたところ、同選挙後、B党所属の国会議員の手下から
殺害の脅迫を受けたことから、帰国した場合、B党所属の国会議員の手下か
ら迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の申立てによれば、申請者を迫害するのは、本国政府ではなく、B
党所属の国会議員の手下であって、出身国に係る諸情報を踏まえると、本国
政府当局が政党関係者及び私人による違法行為を放置、助長するような特別
な事情があるとは認められない。よって、条約難民の要件である迫害を受け
るおそれがあるとは認められないとして「不認定」とされた。
5 その他の申立て
(1)私人間のトラブルを申し立てるもの
【事例10】
(概要)
申請者は、本国において、父の遺言により、家督の後継者に選ばれたとこ
ろ、異母きょうだいの長男から脅迫を受けたこと、見知らぬ者から暴行を受
けたことなどから、帰国した場合、異母きょうだいの長男から迫害を受ける
おそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。
- 5 -
(判断のポイント)
申請者の申立ては、家督相続をめぐるトラブルを理由として、異母きょう
だいの長男から迫害を受けるおそれがあるというものであり、難民条約上の
いずれの迫害理由にも該当しないとして「不認定」とされた。
【事例11】
(概要)
申請者は、本国において、申請者が警察に通報したことによって逮捕され
た窃盗犯から殺害の脅迫を受けたことから、帰国した場合、当該窃盗犯から
迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の申立ては、窃盗犯を警察に通報したことを理由として、窃盗犯か
ら迫害を受けるおそれがあるというものであり、難民条約上のいずれの迫害
理由にも該当しないとして「不認定」とされた。
【事例12】
(概要)
申請者は、本国において、勤めていた金融機関が倒産したため、預金の払
戻しを求める顧客から脅迫を受けたことから、帰国した場合、まだ返金が終
了していない顧客から迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申請を行っ
たものである。
(判断のポイント)
申請者の申立ては、勤務していた金融機関の倒産に伴うトラブルを理由と
して、顧客から迫害を受けるおそれがあるというものであり、難民条約上の
いずれの迫害理由にも該当しないとして「不認定」とされた。
【事例13】
(概要)
申請者は、本国において、大商人との間に借金及び代金の支払をめぐる問
題が生じていることから、帰国した場合、大商人から迫害を受けるおそれが
あるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の申立ては、借金及び代金の支払をめぐるトラブルを理由として、
大商人から迫害を受けるおそれがあるというものであり、難民条約上のいず
- 6 -
れの迫害理由にも該当しないとして「不認定」とされた。
(2)本邦で稼働することを希望するもの
【事例14】
(概要)
申請者は、本邦で稼働し、本国の家族を経済的に支えたいとして難民認定
申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の主張には、難民該当性を基礎付ける事情が含まれていないとして
「不認定」とされた。
【事例15】
(概要)
申請者は、本国及び本邦での借金を返済するため、引き続き本邦で稼働し
たいとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の主張には、難民該当性を基礎付ける事情が含まれていないとして
「不認定」とされた。
(3)その他本邦への滞在を希望するもの
【事例16】
(概要)
申請者は、新型コロナウイルス感染症が怖いため、本邦に滞在したいとし
て難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の主張には、難民該当性を基礎付ける事情が含まれていないとして
「不認定」とされた。
【事例17】
(概要)
申請者は、本邦において、交際相手と結婚し暮らしたいから、帰国したく
ないとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の主張には、難民該当性を基礎付ける事情が含まれていないとして
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「不認定」とされた。
6 複数回申請
【事例18】
(概要)
申請者は、2回目の難民認定申請であるところ、前回の難民認定手続と同
様に、本国において、A党の下部組織の総書記として活動するなどしたこと
により、B党の関係者と争いが生じたことなどを申し立て、帰国した場合、
B党の関係者から迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申請を行ったも
のである。
(判断のポイント)
申請者の主張は、前回の難民認定手続における主張と同旨であるところ、
前回は、その不服申立てによっても、条約難民に該当するとは認められない
として棄却決定されている。今回も、前回棄却決定と同様の理由により、
「不認定」とされた。

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