意見書
〜共生社会の在り方及び中長期的な課題について〜
令和3()年  月
外国人との共生社会の実現のための有識者会議
目 次
はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
第1 目指すべき外国人との共生社会(三つのビジョン) ・・・・・・・6
1 これからの日本社会を共につくる一員として外国人が包摂され、全て
の人が安全に安心して暮らすことができる社会・・・・・・・・・・・・6
2 様々な背景を持つ外国人を含む全ての人が社会に参加し、能力を最大
限に発揮できる、多様性に富んだ活力ある社会・・・・・・・・・・・・6
3 外国人を含め、全ての人がお互いに個人の尊厳と人権を尊重し、差別
や偏見なく暮らすことができる社会・・・・・・・・・・・・・・・・・7
第2 我が国における在留外国人の状況の変化・・・・・・・・・・・・・9
1 総論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
2 各論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
(1)在留資格別の在留外国人数の推移・・・・・・・・・・・・・・・・9
(2)国籍・地域別の在留外国人数の推移・・・・・・・・・・・・・・・10
(3)年齢別(5歳ごと)の在留外国人数の推移・・・・・・・・・・・・10
(4)男女別の在留外国人数の推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
(5)地方公共団体別の外国人人口の推移・・・・・・・・・・・・・・・11
第3 外国人との共生社会の実現に向けた取組の方向性・・・・・・・・・13
1 円滑なコミュニケーションと社会参加のための日本語教育等の取組 ・13
(1)現状及び課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
ア 日本語教育等の機会提供・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
イ ライフステージに応じた体系的な日本語学習・・・・・・・・・14
ウ 日本語教育の質の向上等・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
(2)取組の方向性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
ア 外国人が生活のために必要な日本語等を習得できる環境の整備・14
イ ライフステージに応じ、体系的に日本語を学習することができる
環境の整備・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
ウ 日本語教育の質の向上、専門人材の確保に資する取組の推進・・16
エ 日本語を学びやすくするための取組の推進・・・・・・・・・・・16
2 外国人に対する情報発信・外国人向けの相談体制等の強化・・・・・・17
(1)現状及び課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
ア 外国人に対する情報発信・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
イ 外国人向けの相談体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
(2)取組の方向性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
ア 外国人の目線に立った情報発信の強化・・・・・・・・・・・・・18
イ 外国人が抱える問題に寄り添った相談体制の強化・・・・・・・・20
ウ 情報発信、相談対応の多言語化・やさしい日本語化の更なる促進
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
3 ライフステージ・ライフサイクルに応じた支援・・・・・・・・・・・21
(1)現状及び課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
(2)取組の方向性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
ア 「乳幼児期」、「学齢期」及び「青壮年期」初期を中心とした外国
人に対する支援(妊娠、出産、子育て、就学、進学等の支援)
・・・21
イ 「青壮年期」を中心とした外国人に対する支援(就労等の支援)
・25
ウ 「高齢期」を中心とした外国人に対する支援(介護等の支援)
・27
4 共生社会の基盤整備に向けた取組・・・・・・・・・・・・・・・・・27
(1)現状及び課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28
ア 共生社会の実現に向けた意識醸成・・・・・・・・・・・・・・28
イ 社会制度等の知識修得のための仕組みづくり・・・・・・・・・28
ウ 外国人の生活状況に係る実態把握・・・・・・・・・・・・・・28
エ 外国人に対する支援や在留管理のための情報収集及び関係機関間
の連携・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
オ 外国人の社会参加・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
(2)取組の方向性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30
ア 共生社会の実現に向けた意識醸成・・・・・・・・・・・・・・30
イ 社会制度等の知識修得のための仕組みづくり・・・・・・・・・32
ウ 外国人の生活状況に係る実態把握のための政府統計の充実等・・・32
エ 共生社会の基盤整備のための情報収集強化及び関係機関間の連携
強化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34
オ 外国人も共生社会を支える担い手となるような仕組みづくり・・37
おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39
「外国人との共生社会の実現のための有識者会議」名簿・・・・・・・・・40
「外国人との共生社会の実現のための有識者会議」開催実績・・・・・・・・41
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はじめに
我が国に在留する外国人は、令和2(2020)年末現在約 289 万人となり、過去
最高となった令和元(2019)年末からは減少したが、30 年前(平成2〔1990〕
年末)が約 108 万人、20 年前(平成 12〔2000〕年末)が約 169 万人、10 年前(平
成 22〔2010〕年末)が約 213 万人であったことを考えれば、大幅に増加してい
る 1。このような現状からすると、共生社会の実現に向けた取組を推進していくこ
とが喫緊の課題であることは明らかであり、平成2(1990)年に施行された改正
出入国管理及び難民認定法において在留資格「定住者」が創設され、南米諸国出
身者を中心とした日系人の来日が増加したことを受けて、地域社会においてそ
の重要性が認識され、特に外国人住民が集住する地方公共団体において必要に
迫られて各種施策が実行されてきた。平成 18(2006)年3月 27 日には、総務省
が「地域における多文化共生推進プラン」を策定し、それをモデルに、地方公共
団体において多文化共生の指針や計画が策定されるようになった 2。一方、平成 18(2006)年 12 月 25 日、教育、雇用等の様々な面で課題が顕在
化する中、外国人が社会の一員として日本人と同様の公共サービスを享受しつ
つ、生活できる環境を整備するため、「『生活者としての外国人』に関する総合的
対応策」3
を取りまとめた。
その後、平成 20(2008)年9月のリーマン・ショックを契機に世界的な金融
危機が発生したことにより、
特に日系定住外国人を中心に、
従来の形の就労が困
難となり、生活困難な状況に置かれる人々が増加したことなどから、平成 23
(2011)年3月 31 日に「日系定住外国人施策に関する行動計画」4
が取りまとめ
られるなど、平成 20 年代前半までの外国人の受入れ環境整備に向けた対策は、
日系定住外国人を対象としたものが中心であった。
国においては、
外国人の受入1平成 23(2011)年までは外国人登録者数を、平成 24(2012)年以降は在留外国人数をい
う。2「地域における多文化共生推進プラン」は、外国人住民の増加・多国籍化、在留資格「特
定技能」の創設、多様性・包摂性のある社会実現の動き、デジタル化の進展、気象災害の
激甚化といった社会経済情勢の変化を踏まえ、令和2(2020)年9月に改訂された。3平成 18(2006)年 12 月 25 日に「外国人労働者問題関係省庁連絡会議」で取りまとめら
れたもの。1外国人が暮らしやすい地域社会づくり、2外国人の子どもの教育の充実、3
外国人の労働環境の改善、社会保険の加入促進等及び4外国人の在留管理制度の見直し等
の施策を実施することとされた。4平成 23(2011)年3月 31 日に「日系定住外国人施策推進会議」で取りまとめられたも
の。
「1日本語で生活できるために2子どもを大切に育てていくために3安定して働くた
めに4社会の中で困ったときのために5お互いの文化を尊重するために」の5つの分野に
係る施策を具体化することを目的として策定された。
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れ施策について、留学生 30 万人計画 5
の策定(平成 20〔2008〕年)
、高度人材に
対するポイント制の導入(平成 24〔2012〕年)
、新しい技能実習制度の導入(平
成 29〔2017〕年)等、様々な施策を講じ外国人の受入れを推進してきた。そし
て、
中小・小規模事業者を始めとした人手不足の深刻化を受け、
平成 30
(2018)
年6月 15 日、
「経済財政運営と改革の基本方針 2018」において、新たな在留資
格を創設することとされた。また、外国人のより一層の増加が見込まれる中、外
国人が円滑に共生できる社会の実現に向けて取り組んでいくとの考えが示され
た。
これを受け、同年7月 24 日に「外国人の受入れ環境の整備に関する業務の基
本方針について」が閣議決定され、法務省の司令塔的機能の下、関係省庁が連携
を強化し、地方公共団体とも協力しつつ、外国人の受入れ環境の整備を効果的・
効率的に進めることとされた。
同日、
外国人との共生社会の実現に向けた環境整備等について、
関係行政機関
の緊密な連携の下、政府が一体となって総合的な検討を行うため、
「外国人材の
受入れ・共生に関する関係閣僚会議」
(以下「関係閣僚会議」という。
)が設置さ
れ、同年 12 月 25 日、日本人と外国人が安心して安全に暮らせる社会の実現に
寄与することを目的として
「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」(以下「総合的対応策」という。
)が取りまとめられた(資料1)。
総合的対応策は、令和3(2021)年6月 15 日に関係閣僚会議において令和3
(2021)年度改訂が決定されるなど(資料2)、改訂を重ねながら内容の充実が
図られており、
外国人との共生社会の実現のための方向性を示すものとして、我が国社会に定着しつつある。
このように、
外国人の受入れ環境整備は、
総合的対応策の下で進められてきた
が、令和2(2020)年初頭からの新型コロナウイルス感染症の感染拡大という非
常時ともいえる状況において、多くの外国人は、日本語を習得する機会や、日本
の習慣・社会制度を学ぶ機会が十分提供されてこなかったために、
これらに対す
る理解が十分でないこと、必要としている情報をどこで入手できるのか分から
ないため、情報を容易に入手できないこと等、生活、雇用等様々な場面において
困難な状況にあることが浮き彫りとなった。
また、
外国人の入店を断る店舗につ
いての報道があるなど、外国人に対する誤解や偏見に基づく差別も生じている。
国際社会に目を転じると、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響によ
り、
脆弱性を抱えた人々が困難な状況に陥っている中、
人間の安全保障の理念を
反映し、
「誰一人取り残さない(Leave no one behind)
」持続可能で多様性と包摂5平成 20(2008)年、日本を世界により開かれた国とし、アジア、世界との間のヒト、モ
ノ、カネ、情報の流れを拡大する「グローバル戦略」の一環として、令和2(2020)年を
目途に留学生受入れを 30 万人とすることを目指す「留学生 30 万人計画」が策定された。
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性のある社会の実現を掲げ、全ての人に包括的かつ公正な質の高い教育を確保
することや、各国内及び各国間の不平等を是正することなどの 17 の国際目標を
掲げる「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」(以下
「SDGs」
という。)6
の重要性がこれまで以上に強く認識されている。
そして、
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により生じた困難の克服にとどまらない、
SDGsの達成に向けてより持続可能で包摂的な社会をつくり上げるため、あ
らゆる関係者の行動が呼びかけられている。
国がSDGs推進のための具体的施策を取りまとめた「SDGsアクション
プラン 2021」
において総合的対応策は
「ダイバーシティ・バリアフリーの推進」
に資する取組と位置付けられ、
関連する国際目標として
「すべての人に健康と福
祉を」、「質の高い教育をみんなに」、「働きがいも経済成長も」、「人や国の不平等
をなくそう」、「住み続けられるまちづくりを」
及び
「平和と公正をすべての人に」
が示されている 7。従前、外国人との共生の現場では、地方公共団体や民間支援団体、有志のボラ
ンティア等が中心となり、
創意工夫して様々な取組を行ってきたが、
深刻な人手
不足の中、
外国人の受入れにより恩恵を受けてきた民間企業も、「『ビジネスと人
権』に関する行動計画」
(令和2〔2020〕年 10 月 16 日付け「ビジネスと人権に
関する行動計画に係る関係府省庁連絡会議」策定)
(資料3)の実施等を通じ、
外国人の受入れ環境整備への協力が求められるようになっている。
また、
令和3
(2021)年6月に英国で開催されたG7コーンウォール・サミット 8
の「G7カ
ービスベイ首脳コミュニケ」において、
「自由で公正な貿易」の項目に、人権の
堅持や、グローバルなサプライチェーンの全過程における国際労働基準及び強
制労働の事例に対処することの重要性について合意する旨明記されており、我6持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)とは、平成 13(2001)
年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、平成 27(2015)年9月の
国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための 2030 アジェン
ダ」に記載された、令和 12(2030)年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標の
こと。
「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のため、17 の国
際目標を設定し、
その下に、
169 のターゲット、
231 の指標が定められている
(令和2
〔2020〕
年3月現在)。7
令和2(2020)年 12 月 21 日に開催された「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」
の第9回会合において決定された「SDGsアクションプラン 2021」において、あらゆる
人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現に向けた取組の一つとして総合的対応策が掲
げられた。8令和3(2021)年6月 11 日から 13 日にかけて英国・コーンウォールにて開催されたG
7首脳会合。
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が国で就労する外国人についても、より一層の人権の尊重が求められる 9。このような現状の下、
我が国における外国人の受入れ環境整備については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が外国人に与えた影響をも踏まえ、総合的
対応策を改訂していくという短期的な課題への対応にとどまらず、目指すべき
共生社会のビジョンを掲げ、中長期的なゴールを設定し、それに向けて、国、地
方公共団体、
民間セクター等が一丸となって、
これまで以上に取組を推進してい
く必要がある。
本有識者会議では、
外国人との共生社会の在り方、
その実現に向けて取り組む
べき中長期的な課題について調査し、関係閣僚会議に意見を述べることを目的
として、令和3(2021)年2月から月1回会議を開催し、検討を行ってきた。そ
の中で、
外国人との共生社会を推進するためには、
共生社会についての国として
のビジョンを示し、
その実現を目指していく必要があると考え、
検討を行った。
その結果、
「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実
現のための国際目標を定めたSDGsの理念等を踏まえ、目指すべき共生社会
のビジョンとして、以下の三つを提示する(本意見書の「第1 目指すべき外国
人との共生社会(三つのビジョン)
」参照)
(資料4)。〇 これからの日本社会を共につくる一員として外国人が包摂され、
全ての人
が安全に安心して暮らすことができる社会
〇 様々な背景を持つ外国人を含む全ての人が社会に参加し、
能力を最大限に
発揮できる、多様性に富んだ活力ある社会
〇 外国人を含め、
全ての人がお互いに個人の尊厳と人権を尊重し、
差別や偏
見なく暮らすことができる社会
このような社会を実現するために取り組むべき中長期的な課題として、1「円
滑なコミュニケーションと社会参加のための日本語教育等の取組」
、2「外国人
に対する情報発信・外国人向けの相談体制等の強化」
、3「ライフステージ・ラ
イフサイクルに応じた支援」10
及び4「共生社会の基盤整備に向けた取組」の四9人種差別撤廃条約第 10 回・第 11 回政府報告審査に関する人種差別撤廃委員会の総括所
見に対する日本政府コメントに関する人種差別撤廃委員会の分析評価報告書(令和2
〔2020〕年9月)
(外務省ホームページ)において、技能実習生が劣悪な労働条件、虐待的
かつ搾取的な慣行及び債務労働のような状況にさらされているとの報告に懸念が示されて
いる。10本有識者会議では、
「ライフステージ」と「ライフサイクル」という用語を用いて議論し
た。
「ライフステージ」
に応じた支援については、
「乳幼児期」
(0〜5歳頃)、「学齢期」(6〜15 歳頃)、「青壮年期」
(16〜64 歳頃)及び「高齢期」
(65 歳頃〜)の段階(ステージ)
ごとに日本社会に参加するための十分な支援が提供されているかという観点で用いた。また、
「ライフサイクル」に応じた支援については、外国人が、各々の選択に応じて我が国社
会でライフステージを移行しながら生活していくに当たり、
どのような支援が必要かとい
う観点から用いた。
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つの重点事項を取り上げ、
それぞれについて取組の方向性を取りまとめた
(本意
見書の「第3 外国人との共生社会の実現に向けた取組の方向性」参照)。
国においては、
取組の方向性を踏まえ、
実施できるものから速やかに実施した
上で、5年以内には全ての取組を実現していただきたい。
また、取組の方向性に沿って施策を実施する際には、国において、地方公共団
体がこれまで住民に対して行ってきた様々な取組を参考とし、地域で行われて
いる各種施策を体系化し、
その中で地方公共団体が、
地域の実情に応じて施策を
利用できるような仕組みを構築することを求めたい。
関係閣僚会議においては、
外国人との共生社会の実現は、
我が国の将来の形や
我が国の在り方そのものに関わる重要な課題であることを真摯に受け止めてい
ただきたい。
その上で、
本意見書において提示した目指すべき外国人との共生社
会や、その実現に向けた取組の方向性を踏まえ、正確に実態を把握し、共生社会
の在り方及び共生社会を実現するために行う施策を示し、それらをKPI(Key
Performance Indicators、成果指標)を採り入れた中長期的な行動計画として取り
まとめていただくことを強く期待する。
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第1 目指すべき外国人との共生社会(三つのビジョン)
1 これからの日本社会を共につくる一員として外国人が包摂され、全ての
人が安全に安心して暮らすことができる社会
外国人との共生社会を実現するためには、
本国等への帰国を前提として在
留する者も含め、我が国社会で生活する外国人が、十分なセーフティネット
の下で共に生きる社会の一員として包摂され、
全ての人が安全に安心して暮
らすことができる社会を目指していく必要がある。
外国人の中には、日本語を習得する機会や、日本の文化や習慣、税や社会
保障等の社会制度を学ぶ機会が十分に提供されてこなかったために、
これら
に対する理解が十分でない人も存在する。そこで、これらに対する理解を促
進するため、国は、外国人に対して、日本語を習得する機会を保障し、日本
の文化や習慣、税や社会保障等の社会制度に係る情報を提供し、外国人がそ
のことを十分に理解し、修得するための仕組みを構築する必要がある。
外国人に対し支援を行うに当たっては、
言葉の壁など外国人の多くが直面
する様々な困難性に配慮し、国、地方公共団体、学校、企業、民間支援団体
等による緊密な連携の下、
外国人の置かれている状況や支援ニーズを把握し、
外国人の立場に寄り添った支援を提供していく必要がある。この点、外国人
の多くが直面する困難性については、
「外国にルーツを持つ者」11の中にも同
様の困難性に直面する者も多いと考えられ、支援に当たっては、
「外国にル
ーツを持つ者」にも配慮した施策を形成すべきである。
このような考え方は、
「誰一人取り残さない」社会の実現を目標に掲げる
SDGsの理念とも考え方を同じくするものであり、また、格差を固定化さ
せたり、社会を分断させたりすることなく、安定的な社会を実現していくと
いう観点からも必要である。
なお、人生の礎となる子供に対する教育や、母子保健を始め生命に関わる
医療サービスなど、誰しもが享受すべき権利については、全ての外国人がア
クセスできるよう、引き続き支援していく必要がある。
2 様々な背景を持つ外国人を含む全ての人が社会に参加し、能力を最大限
に発揮できる、多様性に富んだ活力ある社会
これまでの外国人の受入れ環境整備に関する取組は、
平成 18
(2006)
年 12
月に「
『生活者としての外国人』に関する総合的対応策」が取りまとめられ
て以降、外国人が日本人と同様に公共サービスを享受し、安心して生活する
ことができるようにするという福祉的なアプローチを基軸としたものであ11「外国にルーツを持つ者」とは、
「国籍にかかわらず、父母の両方又はそのどちらかが外
国出身者である者」のことをいう。
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った。
他方、現在、日本で教育を受けた若い世代の外国人や、高度な知識・スキ
ルにより我が国の社会・経済発展に貢献する研究者・経営者、災害発生時に
おける通訳ボランティア、
自治会や消防団に加入したりPTAの役員として
活躍したりする外国人住民といった多様な外国人が我が国で活躍しており、
我が国社会の構成員として外国人への期待も高まりつつある。
中長期的な視点を持って外国人との共生社会の実現に向けた取組を進め
るに当たっては、専門的・技術的分野の外国人労働者の受入れにより我が国
社会に活力を取り込むというこれまでの視点を超えて、
様々な背景を持つ外
国人を含む全ての人が社会に参加し、それぞれの特性をいかしながら、能力
を最大限に発揮できる社会を目指していく必要がある。
外国人を含む全ての
人が能力を存分に発揮し社会の一員として活躍することによって、成長、イ
ノベーション等へと結び付ける好循環を実現し、
多様性に富んだ活力ある社
会をつくり上げていくことができる。
したがって、共生社会の実現は、外国人のためだけのものではなく、我が
国の全ての人、企業、地域、ひいては社会全体の成長を促すものとして捉え
ていく必要がある。
3 外国人を含め、
全ての人がお互いに個人の尊厳と人権を尊重し、
差別や偏
見なく暮らすことができる社会
目指すべき共生社会においては、外国人を含む全ての人が、それぞれが持
つ多様性を異質なものとして差別・排除の対象とするのではなく、豊かさと
してお互いに個人の尊厳と人権を尊重することが必要である。
この考え方は、
目指すべき共生社会の基盤となるものであり、
誰しもが個人の尊厳や人権を
侵されることがあってはならない。このような観点から、特にヘイトスピー
チ 12
・ヘイトデマ 13
は、人としての尊厳を傷つけたり、差別意識を生じさせ
たりする原因ともなり、一人一人の人権が尊重され、豊かで安心できる成熟
した社会の実現を目指す上で、許されるものではない。
また、お互いに個人の尊厳と人権を尊重するためには、全ての人が、共に
社会をつくっていくことの必要性や意義に対する理解を深め、
社会の一員と12ヘイトスピーチとは、
「特定の国の出身者であること又はその子孫であることのみを理
由に、日本社会から追い出そうとしたり危害を加えようとしたりするなどの一方的な内容
の言動」のことをいう。平成 28(2016)年6月3日に施行された、いわゆる「ヘイトスピ
ーチ解消法」は、
「本邦外出身者」に対する「不当な差別的言動は許されない」と宣言して
いる。13ヘイトデマとは、
「特定の民族や特定の地域の人々を対象とする悪質な虚偽の情報」の
ことをいう。
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してルールを守る社会であることが必要である。
このような社会が保たれてこそ、安全・安心や活力が生み出されるのであ
り、共生社会を実現するためには、全ての人がこれからの日本社会を共につ
くる仲間として、お互いに尊重し、理解し合い、ルールを守ることが不可欠
である。
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第2 我が国における在留外国人の状況の変化
1 総論(資料5)
我が国の総人口は、
平成 20
(2008)
年の1億 2,808 万 3,960 人をピークに、
平成 23(2011)年以降は一貫して減少しており、令和2(2020)年の総人口
は1億 2,622 万 6,568 人となっている 14。総人口が一貫して減少する中、在留外国人数 15
は増加傾向にあり、令和元
(2019)年末に過去最高を更新して 293 万 3,137 人となり、総人口に占める
割合は 2.32%となった。令和2(2020)年末における在留外国人数は、新型
コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、
外国人入国者数が大幅に減
少したことなどに伴い 16、対前年比4万 6,021 人減の 288 万 7,116 人となり、
総人口に占める割合は 2.29%となった。
また、生産年齢人口(15~64 歳)は、平成7(1995)年の 8,726 万人をピ
ークに一貫して減少する中 17
、外国人労働者数は、令和2(2020)年 10 月
末において 172 万 4,328 人となり、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の
影響下においても、過去最高を更新している。
2 各論
(1)在留資格別の在留外国人数の推移(資料6)
在留資格別に在留外国人数及び構成比の変化を平成 22(2010)年から
令和2(2020)年までの 10 年間で見ると、平成 22(2010)年末は1「永
住者」
(56 万 5,089 人・27.1%)、2
「特別永住者」
(39 万 9,106 人・19.1%)、3「留学」
(20 万 1,511 人・9.7%)
、4「日本人の配偶者等」
(19 万 6,248
人・9.4%)
、5「定住者」
(19 万 4,602 人・9.3%)の順であったのに対し、
令和2(2020)年末では1「永住者」
(80 万 7,517 人・28.0%)
、2「技能
実習」
(37 万 8,200 人・13.1%)、3
「特別永住者」
(30 万 4,430 人・10.5%)、4「技術・人文知識・国際業務」
(28 万 3,380 人・9.8%)
、5「留学」(28万 901 人・9.7%)の順となっている。
「永住者」が全体の4分の1強を占
める状況に変化はないが、
「技能実習」、「技術・人文知識・国際業務」の
増加が顕著となっている。14総務省「人口推計」
(各年 10 月1日現在)、「国勢調査」
(令和2〔2020〕年は速報結果)
に基づく。なお、平成 23(2011)年の総人口は1億 2,783 万 4,233 人である。15在留外国人とは、中長期在留者及び特別永住者をいう。16出入国在留管理庁の報道発表資料「令和2年における外国人入国者数及び日本人出国者
数等について」
(令和3〔2021〕年3月 31 日公表)によると、令和2(2020)年における
外国人入国者数は 430 万 7,257 人で、前年比 2,687 万 9,922 人(86.2%)の減少となってい
る。17総務省「人口推計」
(各年 10 月1日現在)に基づく。
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(2)国籍・地域別の在留外国人数の推移(資料7、8)
国籍・地域別に在留外国人数及び構成比の変化を平成 22(2010)年か
ら令和2
(2020)
年までの 10 年間で見ると、
平成 22
(2010)
年末は1
「中
国」
(67 万 8,391 人・32.5%)
、2「韓国・朝鮮」
(56 万 799 人・26.9%)18、3「ブラジル」
(22 万 8,702 人・11.0%)
、4「フィリピン」
(20 万 208 人・
9.6%)
、5「ペルー」
(5万 2,385 人・2.5%)の順であったのに対し、令和
2(2020)年末では1「中国」
(77 万 8,112 人・27.0%)
、2「ベトナム」
(44 万 8,053 人・15.5%)、3
「韓国」
及び
「朝鮮」
(45 万 4,122 人・15.7%)19、4「フィリピン」
(27 万 9,660 人・9.7%)
、5「ブラジル」
(20 万 8,538
人・7.2%)となっている。
「韓国」及び「朝鮮」、「ブラジル」の在留者数
が減少し、
「中国」も在留者数は増加しているが在留外国人数全体に占め
る構成比が減少している一方で、平成 22(2010)年末に4万 1,354 人であ
った「ベトナム」の在留者数は令和2(2020)年末に 44 万 8,053 人とな
り、大幅に増加している。
なお、国籍・地域別の外国人労働者数でも「ベトナム」の増加が顕著で
あり、
令和2
(2020)
年 10 月末に
「ベトナム」
(44 万 3,998 人)が「中国」
(41 万 9,431 人)に代わり最多となっている。
(3)年齢別(5歳ごと)の在留外国人数の推移(資料9、10、11)
5歳ごとの年齢別の在留外国人数の変化を平成 22(2010)年から令和
2(2020)年までの 10 年間で見ると、全ての年齢層で増加しているが、
特に 20 歳代は約 30 万人増加しており、他の年代と比較して増加幅が大
きい 20
。また、高齢(65 歳以上をいう。以下同じ。
)の在留外国人数につ
いては、令和2(2020)年末に 19 万 947 人となり、在留外国人数の 6.6%
程度を占めているが、我が国の総人口に占める 65 歳以上人口の割合(高18旧「登録外国人統計」では、外国人登録証明書の「国籍等」欄に「朝鮮」の表記がなさ
れている者と「韓国」の表記がなされている者を合わせて「韓国・朝鮮」として計上され
ている。19出入国在留管理庁「在留外国人統計」においては、平成 24(2012)年末から、
「韓国・
朝鮮」
に係る表記を
「韓国」、「朝鮮」
と区別して表記しているが、
本文では、
平成 22
(2010)
年末の「韓国・朝鮮」の在留者数との比較を行う観点から、「『韓国』及び『朝鮮』
」と表記
し、
「韓国」及び「朝鮮」の在留者数を合算した数を示している。なお、令和2(2020)年
末の「韓国」の在留者数は 42 万 6,908 人である。20平成 22(2010)年末現在は旧「登録外国人統計」
、令和2(2020)年末現在は出入国在
留管理庁「在留外国人統計」に基づく。平成 22(2010)年末から令和2(2020)年末にか
けて、
「0〜9歳」は4万 6,141 人、
「10〜19 歳」は2万 1,976 人、
「20〜29 歳」は 30 万
2,079 人、
「30〜39 歳」は 14 万 7,618 人、
「40〜49 歳」は4万 4,987 人、
「50〜59 歳」は 10
万 5,026 人、
「60〜69 歳」は4万 7,157 人、
「70〜79 歳」は2万 7,600 人、
「80 歳〜」は1
万 381 人、それぞれ増加している。
- 11 -
- 11 -
齢化率)である 28.8%(令和3〔2021〕年1月1日時点)21
と比較すると
低くなっている。
他方、
高齢の在留外国人数の変化を平成 22
(2010)
年から令和2
(2020)
年までの 10 年間で見ると、平成 22(2010)年末の 13 万 1,270 人から令和
2(2020)年末の 19 万 947 人へと5万 9,677 人増加しており、在留外国
人の定住化が進む中、
高齢の在留外国人数は、
今後も増加することが見込
まれる。
また、在留資格別に見ると、20 歳代は、
「留学」、「技能実習」、「技術・
人文知識・国際業務」
の割合が高い。
30 歳代以降は、
30 歳代半ばから徐々に「永住者」
の割合が増加しており、
40 歳代半ばから 60 歳代半ばまでは、
「永住者」の占める割合が過半数を占めている。
(4)男女別の在留外国人数の推移(資料 11、12)
令和2(2020)年末の在留外国人数を男女別に見ると、男性 49.5%、女
性 50.5%とわずかながら女性が多い。
また、男女別の在留外国人数を、年齢別に見ると、20 歳代及び 30 歳代
では男性の方が多く、40 歳代以降は女性の方が多い。さらに、それを年
齢別及び在留資格別に見ると、
40 歳代半ばから 60 歳代半ばまでの女性は
「永住者」が6割以上を占めている。
(5)地方公共団体別の外国人人口 22
の推移
地方公共団体別の外国人人口を平成 27(2015)年から令和2(2020)
年までの5年間で見ると、
都道府県別及び市区町村別では、
平成 27
(2015)
年及び令和2
(2020)
年のいずれも三大都市圏 23
に属する団体が上位を占
めており、目立った変動はない 24
。他方、市区町村の人口に占める外国人
人口の構成比の変化を平成 27(2015)年から令和2(2020)年までの5
年間で見ると、平成 27(2015)年末は1「大阪市生野区」
(27.3%)
、2「群
馬県大泉町」
(18.5%)
、3「新宿区」
(12.3%)
、4「横浜市中区」
(11.3%)、5「大阪市浪速区」
(11.2%)の順であったのに対し、令和2(2020)年末21総務省「人口推計」によると、令和3(2021)年1月1日現在の総人口(平成 27 年国勢
調査を基準とする推計値)は1億 2,563 万人、65 歳以上は 3,621 万 5,000 人であり、我が国
の総人口に占める 65 歳以上人口の割合(高齢化率)は 28.8%である。22住民基本台帳制度の適用対象者をいう。具体的には中長期在留者、特別永住者、一時庇
護許可者、仮滞在許可者、出生による経過滞在者及び国籍喪失による経過滞在者。23三大都市圏とは、東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)
、名古屋圏(愛知県、岐
阜県、三重県)及び大阪圏(大阪府、兵庫県、京都府、奈良県)を総称したもの。24総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」に基づく。外国人人口につ
いて、平成 27(2015)年、令和2(2020)年のいずれにおいても、都道府県では、埼玉県、
東京都、神奈川県、愛知県、大阪府が、市区町村では、横浜市、名古屋市、京都市、大阪
市、神戸市がそれぞれ上位を占めている。
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では1「北海道占冠村」
(47.0%)
、2「大阪市生野区」
(28.4%)
、3「群馬
県大泉町」
(23.5%)、4
「北海道倶知安町」
(17.3%)、5
「北海道留寿都村」
(17.0%)の順となっている 25。また、平成 27(2015)年から令和2(2020)年までの外国人人口増加
率を市区町村別で見ると、1「北海道倶知安町」
(226.0%)
、2「兵庫県加
東市」
(197.2%)
、3「長野県白馬村」
(181.1%)
、4「香川県多度津町」
(148.4%)
、5「三重県名張市」
(137.0%)の順となっており 26
、人口規模
の大きい都市部だけでなく、人口規模の小さい地方部においても大きく
伸びている。25総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」に基づく。26総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」に基づく。令和2(2020)
年1月1日現在で外国人人口が 1,000 人以上の地方公共団体を対象とした。
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第3 外国人との共生社会の実現に向けた取組の方向性
第1で提示した目指すべき外国人との共生社会の実現に向け、取り組むべき
中長期的な課題として、まず、生活のために必要な日本語や、ライフステージに
応じて必要となる日本語を習得できる機会を提供するという観点から、
「円滑な
コミュニケーションと社会参加のための日本語教育等の取組」を一つ目の重点
事項として取り上げることとした。
また、
平時はもちろんのこと、
新型コロナウイルス感染症の感染拡大のような
非常時ともいえる状況においても、
全ての外国人が取り残されることなく、
安全
に安心して暮らすことができるようにするため、外国人が必要とする支援に迅
速かつ確実にアクセスできるよう、
「外国人に対する情報発信・外国人向けの相
談体制等の強化」を二つ目の重点事項として取り上げることとした。
そして、外国人の「乳幼児期」、「学齢期」、「青壮年期」及び「高齢期」の各ラ
イフステージを、
「就学」、「就労」等の活動と交差させ、外国人を多面的に捉え
ながら、
人生のライフステージごとや、
ライフステージを移行しながら生活して
いくに当たり必要となる施策を検討するため、
「ライフステージ・ライフサイク
ルに応じた支援」を三つ目の重点事項として取り上げることとした。
また、
これらの重点事項については、
外国人の生活状況に係る実態を十分に踏
まえて施策として企画・立案することが重要であり、さらに、その実施に当たっ
ては、
外国人を含む全ての人が、
共に社会をつくっていくことの意義等について
理解すること、外国人への支援の提供や適正な在留管理に資する関係機関の緊
密な連携を図っていくことなどが重要であることから、
これらについて
「共生社
会の基盤整備に向けた取組」
とし、
四つ目の重点事項として取り上げることとし
た。
1 円滑なコミュニケーションと社会参加のための日本語教育等の取組
(1)現状及び課題
ア 日本語教育等の機会提供
これまで、
国においては、
地域における日本語教育の機会提供のため、
日本語教室が開催されていない市区町村における日本語教室開設に向
けた支援の強化など、様々な施策に取り組んできた。
しかしながら、令和2(2020)年 11 月時点において、約 58 万人の外
国人住民が日本語教室の開設されていない市区町村に居住しており、
依然として、日本語教育を受ける機会が十分に提供されているとは言
い難い状況にある。
また、
国においては、
社会生活上のルールや制度に関する周知に努め
ており、地方公共団体によっては、生活オリエンテーションを実施す
- 14 -
- 14 -
るなどしているが、実施の有無やその内容は一様でなく、居住する地
方公共団体の施策の有無や内容の違いにより、我が国の習慣・社会制
度に対する理解度に違いが生じ得る状況となっている。
イ ライフステージに応じた体系的な日本語学習
学校における日本語教育、職場における日本語教育など、ライフス
テージに応じた日本語教育については、各省庁の所管業務ごとに実施
されているが、外国人がライフステージに応じて身に付ける必要があ
る日本語のレベルについての基準等がなく、外国人が自らのニーズや
レベルに応じ、体系的に日本語学習を積み上げていくことが困難な状
況にある。
ウ 日本語教育の質の向上等
日本語教育機関 27
における日本語教師の資質・能力については、
ばら
つきがあり、また、待遇が必ずしも十分でないなどの面で日本語教師
としての長期的なキャリア形成が難しい状況が隘路となり、日本語教
師の質の向上や量的確保が課題となっている。
(2)取組の方向性
平時はもちろんのこと、新型コロナウイルス感染症の感染拡大のよう
な非常時ともいえる状況においても、全ての外国人が取り残されること
なく、
安全に安心して暮らすことができるためには、
日本語能力を身に付
け、我が国の習慣・社会制度を理解しておくことが重要である。
そのような観点から、非常時の対応など生活のために必要な日本語や、
我が国の習慣・社会制度に関する知識を習得できるよう環境整備を行う
ことが必要である。
その上で、
学習ニーズやレベルに合った日本語を習得し、
進学や就職な
どのライフステージの継ぎ目においてその日本語能力を最大限発揮でき
るよう、いつからでも、どこからでも、個々の学習ニーズやレベルに応じ
た日本語教育にアクセスできる環境を整えていくことが重要である。
また、
それらの環境を整備するに当たっては、
日本語教育機関において
提供される教育の質が均質であり、十分な人数の専門人材が確保されて
いる必要がある。
このため、国においては、引き続き、日本語教育の充実に向けた既存の
取組を推進するとともに、以下のような新たな取組を検討する必要があ
る。
ア 外国人が生活のために必要な日本語等を習得できる環境の整備27日本語教育の推進に関する法律第7条に規定する「日本語教育を行う機関」をいう。
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(ア) 生活のために必要なレベルの日本語の習得を目的とする日本語教
育及び社会にスムーズに定着するための生活オリエンテーションの
受講支援
外国人が、
個々の学習ニーズに応じて生活のために必要なレベルの
日本語を習得できるようにするため、国の責務において、地方公共団
体や企業等との連携の下、
日本語教育機関において一定期間無償で学
習できる機会を提供する。
以上の取組を行うに当たっては、外国人が、その学習ニーズやレベ
ルに合った日本語教育機関で学習できるよう、
来日後間もない時期等
において、外国人を含む世帯の日本語の学習ニーズやレベルを評価し、
個々の学習ニーズやレベルに応じた学習計画の作成及び学習のため
の支援をする人材の配置や仕組みの導入(第3の4(2)エ(イ)参照)
についても検討する。
また、
日本語学習の機会等を全国的に提供していくためのインフラ
整備として、
日本語教室空白地域解消推進事業等による日本語教育の
機会の提供について、一層の促進を図る。
さらに、生活上必要な情報にアクセスするためには、日本語能力だ
けではなく、我が国の習慣・社会制度等の知識が必要であることや、
外国人が日本語学習の目的として日本文化・社会への関心を挙げる者
が多いことなども踏まえ、
外国人が社会にスムーズに定着するための
生活オリエンテーション(生活ルールやマナー等、日本で生活するた
めに必要な基本的な情報の提供)を実施することが必要である。そこ
で、国の責務において、地方公共団体や企業等との連携の下、無償で
生活オリエンテーションが実施されるよう支援する。
支援の実施に当たっては、
日本語の習得等を希望する外国人の受講
につながるよう、在留資格手続、外国人在留支援センター(FRESC)(以下「FRESC」という。
)や地方公共団体の相談窓口での相
談対応など、あらゆる機会を捉えて受講について案内するとともに、
SNS等を活用して発信する。
(イ) 生活のために必要な日本語等を習得するためのカリキュラム、
教材
の作成
生活のために必要なレベルの日本語の習得を目的とする日本語教
育及び生活オリエンテーションについて、
国による受講支援を実施す
るに当たっては、文化庁、出入国在留管理庁等の関係省庁が緊密に連
携し、カリキュラム及び教材を作成する。
(ウ) オンライン講座等の実施
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新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機として、
各地の日本語
教育機関においてオンライン授業が広まり、
遠隔地や海外からの学習
者の参加がみられるなどの効果があった。また、場所を選ばず、時間
や費用面での負担も比較的少ない等のオンラインの特性をいかし、対面講座とオンライン講座を組み合わせることにより、
学習効果を更に
高めることも可能である。これらを踏まえ、国等においては、既存の
ICT教材開発の知見もいかしながら、
最大限の効果を上げることが
できるようオンライン講座等の実施を検討する。
イ ライフステージに応じ、体系的に日本語を学習することができる環
境の整備
関係省庁が緊密に連携し、学習する側が、どのように学習を積み上
げていけば、どのレベルの日本語が体系的に習得できるようになるの
かが分かるよう、外国人がライフステージに応じて、日本語の学習を
積み上げていくためのガイドラインを作成する。
また、外国人が、学習のニーズやレベルに応じた適切な日本語教育
機関を選択して受講できるよう、日本語能力の評価基準である「日本
語教育の参照枠」を活用し、各機関における日本語教育の水準を客観
的に評価し、明示できる仕組みを構築する。
ウ 日本語教育の質の向上、専門人材の確保に資する取組の推進
国において、
「公認日本語教師(仮称)
」の資格を創設し、日本語教育
の質を向上することで、職業として持続可能な制度とするため、長期
的なキャリア形成が可能となるような仕組みを構築する。
それにより、
意欲ある人材の積極的な参入を促し、質・量ともに十分な専門人材を
確保する。
また、外国人が個々の学習ニーズやレベルに合った日本語能力の習
得を希望する場合に希望に沿った日本語教育が受講できるよう、日本
語教育機関を体系的に整理する。
エ 日本語を学びやすくするための取組の推進
上記アからウまでの環境整備に加えて、外国人自身の日本語を学習
しようとする動機付けを高めるため、以下の取組を検討する必要があ
る。
(ア) より身近な学習機会の提供
日本語教育の受講を希望している場合でも、
仕事上の都合や学費が
高いなどの理由で、
日本語教育機関に通うことが困難な外国人もいる
であろう。もし就労先において日本語教室が開講されるなどして、よ
り身近に日本語教育を受講できる機会があれば、
日本語習得の動機付
- 17 -
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けを高めることにつながると考えられる。
そこで、
外国人の個々の学習ニーズやレベルに応じた日本語教育の
機会が提供されるよう企業に求める。また、企業における取組が促進
されるよう、経済団体に対し会員企業への支援を要請するとともに、
各企業における受入れ環境整備の成果と連動した優遇措置の導入等
を検討する。加えて、国においては、雇用主に対して、学習支援に必
要な費用に係る財政的な支援を検討する。
(イ) 地域交流の促進
外国人の子供については、学校での授業や、地域における日本人の
子供との交わりを通じて日本語の上達が期待される一方で、
保護者に
はそのような機会が少なく、
親子の日本語能力のギャップに起因する
両者のミスコミュニケーションを惹起し、また、地域で孤立するおそ
れがある。
そこで、
外国人の親子が、
地域住民との交流を通じて日本語を学び、
地域との関係性を深める機会を提供することができるよう、
地域に居
住する外国人との交流イベントの実施等に必要な費用に係る財政的
な支援を検討する。
2 外国人に対する情報発信・外国人向けの相談体制等の強化
(1)現状及び課題
ア 外国人に対する情報発信
出入国在留管理庁が運営する外国人生活支援ポータルサイトでは、
関係省庁の施策(新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響に対す
る在留外国人等への支援策を含む。
)が発信されているが、外国人が自
らの置かれている状況に応じ、どの支援策が活用可能であるかなど、
情報を適切かつ迅速に選択することは困難との指摘がある。
国において発信される情報は、往々にして膨大な文字情報によって
提供されるなど、
読み手に配慮した内容となっておらず、
また、
各種支
援情報の伝達手段と外国人が情報を入手する媒体のミスマッチにより、
必要とする支援に関する情報が届かないなどの課題も指摘されている。
イ 外国人向けの相談体制
国においては、外国人受入環境整備交付金の交付などを通じて一元
的相談窓口の設置、
運営を支援しているが、
地域によっては、
外国人の
増加や国籍の多様化を背景として必要な通訳の確保が困難な状況が生
じている。地方公共団体等からは、国に対して更なる支援が求められ
ており、
また、
外国人受入環境整備交付金の使途について、
地域の実情
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に応じて幅広く活用できるよう交付要件の緩和を求める声が上がって
いる 28。外国人が抱える問題は、在留資格の問題、差別・偏見等の問題、経済
的問題、DVを含む家庭における問題などが複合的に絡み合っている
場合が多く、相談対応に当たっては、関係機関が緊密に連携して取り
組むことが求められている。
また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大への対応に関し、外国
人住民と最前線で接する市区町村の役所、保健所等の職員が、十分な
通訳・翻訳体制が確保できない中、日本語能力が十分ではない外国人
とのコミュニケーションに苦労していることも明らかとなった。
さらに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大という非常時ともい
える状況においては、外国人が置かれている困難な状況を迅速かつ的
確に把握し、時宜を得た支援策を講じていく必要があり、支援が後手
に回らないようにするためにも、外国人が抱える問題を迅速かつ的確
に把握できる仕組みが必要である。
(2)取組の方向性
今後、
全ての外国人が取り残されることなく、
安全に安心して暮らせる
ようにするため、外国人が必要とする支援に迅速かつ確実にアクセスで
きるよう、情報発信や相談体制の強化を通じた環境整備に取り組む必要
がある。
また、
外国人に対する情報発信等の強化を検討するに当たっては、
外国
人の社会貢献活動への参加意欲の高まりに加え、災害時の通訳ボランテ
ィアなど実際に社会を支える担い手としての外国人の存在が注目される
中、外国人の社会参加を促すための情報提供を充実させるという視点も
重要である。
このため、国においては、引き続き、外国人に対する情報発信、外国人
向けの相談体制の強化に向けた既存の取組を推進するとともに、以下の
ような新たな取組を検討する必要がある。
ア 外国人の目線に立った情報発信の強化
(ア) 情報内容の工夫(何を伝えるか)
出入国在留管理庁が運営する外国人生活支援ポータルサイトでは、
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響に対する在留外国人等
への支援策を始めとした関係省庁の施策が、
省庁の縦割りを排し、
「生
活維持に係る支援」、「就労に係る支援」等、支援の目的別にカテゴラ28福岡都市圏広域行政推進協議会「令和3年度国に対する提言書」
(令和2〔2020〕年8
月)ほか。
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イズされて発信されていることは評価できる。
地方公共団体においては、
日本語に対する理解が十分でない外国人
住民も等しく必要な情報が得られるよう、
やさしい日本語等により情
報提供する際の提供する情報の基準や優先順位を定めたガイドライ
ンを作成・運用している事例がある。
国においては、このような好事例も参考としつつ、例えば、出入国
在留管理庁が実施する「関係者ヒアリング」
(以下「関係者ヒアリン
グ」という。)(資料 13)、「在留外国人に対する基礎調査」や民間支援
団体等との日頃の意見交換等、あらゆるリソースを通じ、外国人が抱
える問題を迅速かつ的確に把握し、
外国人が必要とする支援の内容や
情報等の的確な把握と分析を進めることが求められる。また、提供す
る情報の基準等を定めたガイドラインを作成するなど、引き続き、外
国人のニーズを踏まえた、
効果的な情報発信の実現に努めるべきであ
る。
(イ) 情報の伝え方の工夫(どう伝えるか)
行政機関が発信する情報は、外国人によって読まれ、必要な情報と
認識されることによって初めて有用性を持つこととなるため、
「何を
伝えるか」に加えて、
「どう伝えるか」も極めて重要な要素である。
国において発信される情報は、
往々にして膨大な文字情報によって
提供されることが多いが、文字情報だけではなく、視覚情報としてデ
ザイン性を意識した構成にするなど、
発信された情報を外国人に読ん
でもらえるよう、そして、一目で必要な情報と認識され、その内容を
理解してもらえるよう工夫することが求められる。
(ウ) 情報の伝達手段の工夫
各省庁では、外国人が必要とする各種支援情報を、各省庁のホーム
ページへ掲載することに加え、SNSを通じて発信しているほか、メ
ールによる情報配信サービスを開始するなどアウトリーチ型の情報
発信の強化に努めており、これらの取組については評価できる。
他方、
行政機関が発する各種支援情報の伝達手段と外国人が情報を
入手する媒体のミスマッチが指摘されていることから、
国において情
報を発信するに当たっては、国籍、年代、性別、居住地域等の属性ご
とに外国人が情報を入手する媒体(SNS、コミュニティにおける口
コミ、紙媒体等)を把握することが求められる。その上で、例えば、
SNSの広告で言語や地域を指定してピンポイントで情報を打ち込
むなど、支援を必要とする外国人に確実に情報が届くよう、効果的な
情報発信を行うべきである。
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- 20 -
また、マイナポータルでは、各種生活情報等をオーダーメイド型及
びプッシュ型で通知しているところ、
在留や出入国に関する情報等も
含めて発信ができるよう、システムの構築を検討すべきである(マイ
ナポータルの活用については第3の4(2)エ(ア)参照)。イ 外国人が抱える問題に寄り添った相談体制の強化
(ア) 一元的相談窓口等への支援の強化
地方公共団体の一元的相談窓口を含む行政窓口における利便性向
上の観点から、国において一元的に通訳を確保し、地方公共団体の窓
口を訪れた外国人と職員との間の通訳サービスを提供する体制整備
を進める。
また、一元的相談窓口におけるこれまでの取組を集約・分析し、窓
口相談に関するガイドブックの作成、
相談対応の好事例を集めたデー
タベースの構築など、
地方公共団体のニーズを踏まえた一元的相談窓
口に対する支援を実施するとともに、
外国人受入環境整備交付金の交
付要件の見直しを検討し、一元的相談窓口の設置を促進する。
(イ) 地域における関係機関の連携・外国人支援者ネットワーク構築の促進外国人が抱える問題は、在留資格の問題、差別・偏見等の問題、経
済的問題、
DVを含む家庭における問題などが複合的に絡み合ってい
る場合が多く、関係機関が連携して対応することが求められる。
そこで、
上記(ア)の取組に加えて、
地方公共団体と地方出入国在留管
理官署等の国の関係機関が連携して対応できるようにするため、
地域
の実情を踏まえ、
地域における関係機関の連携による出張相談を実施
するとともに、
FRESCと同様に複数機関が連携して対応する相談
窓口の設置等を検討する。
また、民間支援団体等による外国人支援者ネットワークについて、
出入国在留管理庁は、
地域の実情に応じた形でのネットワークの構築
を促進し、民間支援団体等を通じた国の支援情報の提供や、外国人が
抱える問題の迅速かつ的確な把握が可能となる仕組みを構築する。
(ウ) 外国人の相談対応等に従事する専門人材の育成等
外国人の相談対応を含む支援の充実を図る観点からも、
総合的な支
援をコーディネートする人材の育成・認証制度の創設に向けた検討を
進める(総合的な支援をコーディネートする人材の育成・認証制度の
検討等については第3の4(2)エ(イ)参照)。ウ 情報発信、相談対応の多言語化・やさしい日本語化の更なる促進
情報発信、相談対応の多言語化について、引き続き、取組を推進す
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- 21 -
る。
また、外国人住民と最前線で接する地方公共団体等の職員が、通訳・
翻訳体制の確保が困難な場合においても、日本語能力が十分ではない
外国人に対し、やさしい日本語によって必要な情報を案内し、相談に
対応できるようにする。
そのため、
職員向けのやさしい日本語研修や、
AIによるやさしい日本語への自動翻訳ツールの開発・導入促進、や
さしい日本語検定の創設等を検討する。
さらに、防災や医療など生命に関わる場面を始め、外国人との意思
疎通が円滑にできるよう、これらの取組等を通じ、やさしい日本語の
普及に努める。
3 ライフステージ・ライフサイクルに応じた支援
(1)現状及び課題
現在、国においては、
「乳幼児期」、「学齢期」、「青壮年期」及び「高齢
期」
のライフステージごとに外国人に対する支援を実施しているが、
関係
者ヒアリング等も踏まえた検討の結果、各ライフステージにおいて更な
る取組が必要な状況にあることが分かった。
特に、
高齢の外国人が増加す
る中、総合的対応策において、
「高齢期」の外国人に焦点を当てた取組が
見られないなど(資料 14)
、国としてこのライフステージにある者に対す
る必要な支援を検討する必要があるが、
その前提として、
高齢の外国人を
取り巻く実態や課題が把握できていない状況にある。
また、例えば、
「青壮年期」に留学生として我が国社会に参加し、数年
間就労して本国等へ帰国する場合、我が国で出生し「高齢期」に至るまで
生活する場合など、
外国人は、
各々の選択に応じて我が国社会でライフス
テージを移行しながら生活していくが、就学、進学、就職等、ライフステ
ージを移行する際に課題に直面する場合が多く、この「継ぎ目」における
支援が必要となっている。
(2)取組の方向性
国においては、
引き続き、
各ライフステージにおける既存の取組を推進
するとともに、以下のような新たな取組を検討する必要がある。
ア 「乳幼児期」、「学齢期」及び「青壮年期」初期を中心とした外国人に
対する支援(妊娠、出産、子育て、就学、進学等の支援)
外国人の子供に対する支援の中で、教育は、日本社会における生活
の礎となるものであり、将来的に自立し、未来を切り開きながら自己
実現を図っていくためにも極めて重要である。
国においては、就学促進のための取組や、その後の就労につなげる
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- 22 -
取組など、外国人の子供が将来に希望をもって生活を送ることができ
るよう、
妊娠、
出産、
子育て等就学前の段階からキャリア形成に至るま
で、各ライフステージの継ぎ目における支援を意識しつつ、以下の(ア)
から(オ)までの支援策に取り組むことが求められる。
また、
就学の促進、
高等学校等の中途退学の防止等の観点から、
保護
者が就学・進学の重要性を十分に理解していることが肝要であるため、
国は、来日前における就学情報等の提供、プレスクール 29
等の機会を
捉えて、子供の将来にどのような可能性があるかについて、保護者に
情報が提供される仕組みを構築すべきである。
(ア) 子育てしやすい環境の整備
外国人の子供と親が孤立することなく、
地域の中で子育てしやすい
環境を整備するため、妊娠・出産期の支援も含め、外国人の親子が地
域社会の中で孤立しないための支援を目的とした実態調査及びニー
ズの把握を行い、それらを踏まえた支援策を検討する。
(イ) 外国人の子供の就学促進に向けた就学状況の把握、
プレスクールの
設置支援等
しろまる 就学状況の把握等
地方公共団体(教育委員会を含む。)、文部科学省、地方出入国
在留管理官署等の関係機関が連携し、地域における外国人の子供
の就学状況について、一体的に管理・把握し、就学支援につなげ
るための仕組みを構築し、当該仕組みの構築に当たっては、外国
人の子供に就学前の健康診断が実施されるよう、対応を検討する。
また、学齢期の子供が来日した段階で漏れなく学校につなげるこ
とができるよう、地方公共団体の窓口等で就学案内を行い、フォ
ローする仕組みを全国的に構築する。
加えて、乳幼児期は心情、意欲、態度、基本的生活習慣など、
生涯にわたる人格形成の基礎が培われる極めて重要な時期であ
り、幼児教育は、将来、人間として充実した生活を送る上で重要
な教育であることから、外国人幼児の幼稚園、保育園への就園状
況等、幼児教育の実態についても把握する。
しろまる 不就学の子供への支援
様々な理由により不就学となっている子供に対して、NPO等29プレスクールとは、
「小学校入学前の外国人幼児等や保護者を対象として、入学後の学
校生活への円滑な適応につなげるための教育・支援を行う場」
(外国人児童生徒等の教育
の充実に関する有識者会議「外国人児童生徒等の教育の充実について(報告)」〔令和2年
3月〕
)のことをいう。
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- 23 -
の協力を得て日本語・母語指導等の支援を行い、円滑な就学を図
るなど、国等において、不就学の子供を公立学校等への就学につ
なげるために必要な支援を行う 30。しろまる プレスクールの設置支援等
地方公共団体においては、地域の実情に応じ、就学前に外国人
の子供や保護者を対象としたプレスクールを実施しているが、現
状、実施の有無やその内容が一様ではない。そこで、国において
は、先進的な取組を行っている地方公共団体の先例を参考とし、
地方公共団体の状況の違いを踏まえつつ、プレスクールに関する
マニュアルやカリキュラムの作成・提供等の支援を通して設置を
促進し、質の向上に努める。
外国人の子供も対象となる奨学金等の支援制度が十分に周知
されておらず、活用されていないという指摘があることも踏まえ、
プレスクールでは、利用することができる各種支援制度も含め確
実に周知されるようにする。
(ウ) 外国人の子供の母語や母文化に配慮した日本語指導体制の構築
外国人の子供が日本語を学習するに当たっては、
アイデンティティ
の確立、日本語能力・認知能力の発達や、複数の文化背景を持つこと
を強みとしたグローバル人材としての活躍を後押しする観点からも、
母語と関係させて習得を図っていくことが重要である。
そのため、日本語の指導を必要とする全ての外国人の子供に対し、
学校内外において、
教育委員会や学校がNPOや国際交流協会等と連
携し、
母語や母文化に触れる機会が得られるような取組を促進するこ
とが求められる。
(エ) 外国人の子供に対するトータルなキャリア形成支援
外国人の子供に対するキャリア形成支援については、
これまでの施
策を更に推進するとともに、以下の施策を検討する必要がある。
しろまる 来日前における就学情報等の提供
来日のタイミングや居住する地方公共団体の違いにより、子供
が公立高等学校受検に際し、外国人生徒を対象とする特別定員枠
による入学者選抜を利用できないなど、進路に大きな違いが生じ30外国人の子供に対する就学支援の事例として、
「定住外国人の子どもの就学支援事業」
による
「虹の架け橋教室」
設置がある。
同事業は、
平成 20
(2008)
年秋の経済危機により、
不就学となった外国人の子供に対して、公立学校等への円滑な転入が図られるよう、日本
語等の指導や学習習慣の確保を図るための場を提供するために実施されたもの。平成 21
(2009)年度から平成 26(2014)年度にかけて実施された。平成 27(2015)年度からは、
その後継として、文部科学省において「定住外国人の就学促進事業」を開始。
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- 24 -
得るため、それを認識せずに来日し我が国社会への入口段階から
取り残されることにならないよう、国等において来日前に必要な
就学情報等の提供を行う。
しろまる 学習意欲を高めるためのロールモデルの提供
外国人の子供が、自身の将来に幅広い職業の選択肢があること
を具体的に想像でき、自らの進路に希望を持つことで学習意欲が
高められるよう、学校教育等において、ロールモデル(先輩外国
人)との交流や社会見学の機会の提供等を通じ、多様な選択肢に
触れることができる仕組みを構築する(資料 15)。しろまる その他の進学支援
文部科学省が実施した「令和2年度公立高等学校入学者選抜の
改善等に関する状況調査」
結果によると、
12 の都道府県において、
公立高等学校での入学者選抜で外国人生徒に対する特別な配慮
が行われていない。
そこで、日本人生徒に対する教育機会の確保にも配慮しつつ外
国人の進学の機会を広げていく観点から、国等において、外国人
生徒のための高校入学試験における特別定員枠・受検上の特別な
配慮の導入の促進に努める。
また、国においては、日本語指導が必要な高校生等の中途退学
率が全体と比較して高水準にある 31
こと等に留意しつつ、支援ニ
ーズを把握し、中途退学の予防、中途退学した者の学び直し、地
域における居場所づくりや、就労の支援という観点も含めた支援
策を検討する。また、不就学等の理由により義務教育を修了して
いない者に学びの機会を提供する観点から、夜間中学が全ての都
道府県・指定都市に設置されるよう、取組の一層の推進を図る。
(オ) 外国人学校の位置付け、役割を踏まえた支援
外国人学校に在籍している子供たちの中には、
中長期的に日本社会
で生活していく者もいるという現状に鑑みると、
外国人学校に在籍し
ていることで、
公立学校に通う外国人の子供たちと比べて不利な状況
になることがあってはならない。しかしながら、各種学校として認可
されていても、公立高校の受検資格が認められない場合がある等、外
国人学校に在籍している子供の進学には課題がある。31文部科学省が実施した「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(平成
30 年度)
」によると、全高校生等(特別支援学校の高等部は除く。
)の中途退学率が 1.3%で
あるのに対し、日本語指導が必要な高校生等(特別支援学校の高等部は除く。
)の中途退学
率は 9.6%となっている。
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また、外国人学校に対しては、新型コロナウイルス感染症の感染が
拡大する状況において、
感染症対策に係る考え方などの情報提供が十
分とは言えず、
感染症対策を十分にとることができない場合があるこ
とや、子供たちの定期的な健康診断が行われておらず、子供たちの保
健衛生の確保が図られていない場合があることも明らかになった。
文部科学省が令和元(2019)年5月に実施した、外国人の子供の就
学状況等調査結果によれば、
不就学の可能性があるとされた外国人の
子供の中には公立学校に通わず外国人学校に通う者も含まれている
と考えられることから、外国人の就学状況の実態把握のためには、外
国人学校との連携が必要である。
今後、国においては、上記の課題等を認識し、外国人学校の位置付
け、役割を踏まえた支援に柔軟に取り組むことが求められる。
イ 「青壮年期」を中心とした外国人に対する支援(就労等の支援)
国際社会において企業が競争力を向上させていくためには、様々な
背景を持った人材を活力として捉え、多様性をイノベーションの創出
に結び付けていくことが重要である。
この点、
「はじめに」
で詳述したとおり、
「SDGsアクションプラン
2021」においても、外国人を始め多様な人材の能力を最大限発揮させ
ることにより、イノベーションの創出等の成果につなげるダイバーシ
ティ経営の普及促進が具体的な取組例として挙げられている。
外国人を始め多様な人材が能力を発揮できる組織を実現していくに
は、
人事制度、
社内文化等の面で寛容な職場が欠かせないことから、国においては、経済団体に働きかけるなどして、外国人の働きやすい環
境の整備に向けた受入れ側の意識や企業風土の変革を促していくこと
が求められる。
また、
国においては、
外国人の早期離職を防ぎ、
その定着を図るため
には、職場等における効果的なコミュニケーションのための受入れ環
境整備が重要であるとの認識の下、これまでも各種取組を実施してき
た。
しかしながら、依然として、企業が外国人材に必要以上に高い日本
語能力を求めがちであること、
就業規則や業務マニュアルの多言語化・
やさしい日本語化が不十分であること、翻訳されている場合でも、就
業規則等の背景にある働き方の文化等が補足されていないことなどの
問題点が指摘されている。
さらに、
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響下においては、
外国人の勤務日数が減らされたり、日本語ができない人が解雇された
- 26 -
- 26 -
りしているとの指摘もある。
以上を踏まえ、国においては、これまでの施策を更に推進するとと
もに、
企業に対して、
外国人の受入れ環境整備への協力を促すため、以下のような新たな取組を求める。
しろまる 企業が外国人の採用に当たって要求する日本語能力について、
日本語能力試験のN1レベル 32
などが設定されている場合がある
が、
試験実施団体が公表している試験の特性や測定内容、
レベル感
などを十分に配慮した上で、適当と思われるものを活用するとと
もに、入社後の業務に必要な日本語レベルが企業の採用計画に確
実に反映されるようにする。
しろまる 職場等における効果的なコミュニケーションを実現するために
は、外国人が業務に必要な日本語を習得するとともに、外国人と
のコミュニケーションツールとしてやさしい日本語の導入を促進
し、相互に理解し合う環境整備を行う。
しろまる 就業規則等の翻訳に当たっては、外国人と受入れ側のコミュニ
ケーションギャップや外国人の早期離職の背景に、働き方の文化
等に対する外国人の理解が十分ではないという事情があることに
留意する。
しろまる 外国人は景気変動の影響を受けやすく、雇用の調整弁となりが
ちであることなどを踏まえ、
外国人の安定的な就労に資するよう、
日本語能力に配慮しつつ、技術習得・資格の取得を目的とした職
業訓練の機会を増やすことが重要である。そのため、受入れ企業
による一定の費用負担の下、就労の安定やキャリアアップ支援を
目的とした研修や職業訓練の機会を従業員に提供する。
上記の取組を企業に求めるに当たっては、経済団体に対し会員企業
への支援を要請するとともに、企業の協力が確実に得られるよう、外
国人雇用の好事例を周知し
(資料 16)、それにより最終的に外国人の就
労の安定やキャリアアップ支援にもつなげていくほか、マッチング体
制の整備を進める。
また、各企業における受入れ環境整備の成果と連動した優遇措置の
導入等を検討する。32日本語を母語としない者を対象に、日本語能力を測定し、認定することを目的として、
国内では公益財団法人日本国際教育支援協会が、国外では独立行政法人国際交流基金が現
地関係機関の協力を得て実施している。日本語能力試験の認定レベルは、N1〜N5の5
段階であり、N1が最も難しく、能力評価の基準として、新聞の論説や評論、まとまりの
ある会話やニュース・講義といった論理がやや複雑で抽象度の高い日本語を理解できるこ
とが求められる。
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ウ 「高齢期」を中心とした外国人に対する支援(介護等の支援)
日本で老いを迎える外国人の存在に焦点を当てた取組は、総合的対
応策においては見られない 33
が、
高齢の外国人が増加する中、
今後、外国人住民の老いと介護、
老後の安定的な生活の確保、
文化的・宗教的多
様性を背景とした死をめぐる問題等が生活レベルで課題となることが
想定される。
外国人の中には、企業や本人の理解が不十分であったなどの理由に
より、
介護・年金等の社会保険に未加入である者や、社会保障協定 34の未締結国から来日し、本国等で負担した年金保険料が年金受給につな
がらず、結果として低年金・無年金等に陥るリスクを抱えている者も
存在しており、これらの者に対するセーフティネットの在り方を検討
する必要がある。
そこで、以下の3点に関して、身寄りのない高齢の外国人の存在 35
にも配慮しつつ、外国人の置かれている状況や支援ニーズを把握し、
国としてセーフティネットの在り方を検討することが求められる。
しろまる 高齢者福祉施策の中で重要な役割を担っている介護保険制度
しろまる 老後の安定した生活にとって重要な基盤となる年金制度
しろまる 人としての尊厳に配慮した死の迎え方
高齢の外国人に対するセーフティネットについては、社会保険制度
が、強制加入の下で社会連帯や共助の側面を持つ支え合いの仕組みで
あることに留意し、外国人を含む全ての人の理解が得られるものとな
るように、その在り方を検討するべきである。
4 共生社会の基盤整備に向けた取組
上記1から3の重点事項に係る施策については、外国人の生活状況に係33一部の地方公共団体においては、公的年金の給付を受けることができない在日外国人に
対して、独自の福祉給付金制度が設けられている。34公的年金制度について、老齢年金の受給資格の一つとして一定期間の制度への加入を要
求している場合があるが、外国に短期間派遣され、その期間だけ派遣地国の公的年金制度
に加入したとしても老齢年金の受給資格要件としての一定の加入年数を満たすことがで
きない場合が多いため、年金受給資格を確保できないという問題が生じる。
そのため、社会保障協定を締結し、両国間の年金制度への加入期間を通算して、年金を
受給するために最低必要とされる期間以上であれば、それぞれの国の制度への加入期間に
応じた年金がそれぞれの国の制度から受けられるようにしている。35池上重弘「ブラジル人家族と危機-『1990 年体制』から 30 年の歴史の中で」(『移民政
策研究』2021 第 13 号、62 ページ)によると、令和2(2020)年度静岡県多文化共生基礎
調査(外国人調査)において、
「一人暮らし」と回答した静岡県在住のブラジル人 92 人の
うち、50 代が 42.4%、60 代以上が 19.6%となっており、50 歳を超える人が6割を占めて
いる。
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る実態を十分に踏まえて企画・立案されることが重要であり、その実施に当
たっては、外国人との共生に対する国民の幅広い理解を得ながら、外国人へ
の支援の提供や適正な在留管理に資する関係機関の緊密な連携を図ってい
くことが肝要である。
また、
我が国での就労等を希望する外国人を我が国に惹きつけていくため
には、社会への参加を後押しする施策の推進など、安定的・継続的に本邦に
在留し、能力を最大限発揮できる環境を整備していくことも重要である。
本項では、上記を踏まえ、外国人の受入れ環境整備の基盤となる事項につ
いて、課題を踏まえた取組の方向性を提示することとする。
(1)現状及び課題
共生社会の基盤整備に関する課題として以下の点が挙げられる。
ア 共生社会の実現に向けた意識醸成
共生社会を実現するためには、外国人を含む全ての人が、共に社会
をつくっていくことの意義等について、国民の幅広い理解が必要であ
る。
しかしながら、
依然として学校、
職場、
地域など社会の様々な場面に
おいて外国人に対する差別や偏見が生じており 36
、共生社会の実現に
向けた意識醸成が課題となっている。
イ 社会制度等の知識修得のための仕組みづくり
外国人においても、納税や社会保険料の納付等果たすべき公的義務
を履行し、社会の構成員として責任をもった行動をとることが期待さ
れる。
このような中、
外国人の中には、
日本の文化や習慣、
税や社会保障等
の社会制度についての理解が十分でなく、意図せず公的義務を履行し
ていなかったり、必要なサービスを享受できなかったりする人も存在
する。
このような事態は、国等による社会制度等の周知が十分でない結果
生じているものであることから、
外国人が、
日本の文化や習慣、
税や社
会保障等の社会制度を十分に理解し、修得するための仕組みづくりも
また重要な課題である。
ウ 外国人の生活状況に係る実態把握36出入国在留管理庁が実施した
「令和2年度在留外国人に対する基礎調査」
によると、
「子
どもが通っている学校において、子どもが困っていること」という設問に対して、
「外国に
ルーツがあることでいじめられる」が 7.8%で、
「日本語が分からない」と並び最も多くな
っている。また、
「生活での差別的な扱いを受けた経験」という設問に対しては、
「家を探
すとき」
(24.6%)、「仕事をしているとき」
(24.1%)、「仕事を探すとき」
(19.6%)の順とな
っている。
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- 29 -
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響等を踏まえ、国におい
ては、解雇され、実習が継続困難となった技能実習生等について、特
例として特定産業分野への転職を認め、在留資格「特定活動」を付与
するなど、適切な支援が迅速に実施されていることは評価できるが、
一層外国人に活用されるため、国によるより積極的な周知が必要であ
る。
今後、平時においても、ライフステージ・ライフサイクルに応じ、ま
た、ジェンダー平等の観点からも、きめ細かな支援を実施していくた
めには、政府統計、世論調査等に基づいて外国人の生活に係る実態を
把握しておく必要がある。
しかしながら、
政府統計等の中で、
「国籍」、「在留資格」、「出身国・地域」、「主な使用言語」等が調査項目として採
用されている統計は限られており、その実態を十分に把握することは
困難な状況にある。
エ 外国人に対する支援や在留管理のための情報収集及び関係機関間の
連携
国においては、外国人がどのような問題に直面し、どのような支援
を必要としているかを把握し、
ニーズに応じた支援を提供できるよう、
民間支援団体等との連携の下、情報収集能力の強化を図る必要がある
が、現状においてその取組は十分とは言えない。
また、外国人への支援策について、各関係機関において充実が図ら
れているが、多様化、複合化する外国人が抱える問題に対応するため
には、各関係機関が連携して対応することが重要であり、個々の外国
人が置かれた状況に応じ、各関係機関が提供可能な支援をコーディネ
ートする人材の育成等が課題となっている。
さらに、在留資格手続における外国人の負担の軽減や適正な在留管
理の観点から、出入国在留管理庁において、マイナンバー制度との連
携等を通じ在留管理に必要な情報
(納税・社会保険料納付情報、
身分関
係情報)を効率的に取得し、円滑な在留資格の審査を実現し利便性を
向上させることや適正な在留管理を実現していくことが課題として挙
げられる。
加えて、平成 24(2012)年に、外国人が住民基本台帳制度の対象と
なったところ、一部の地方公共団体では、住民基本台帳から集計され
る地域の外国人数等の情報が外国人住民の利便性の向上のために活用
されていないことも課題である。
オ 外国人の社会参加
外国人の受入れ環境整備については、平成 18(2006)年 12 月に取り
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- 30 -
まとめられた「
『生活者としての外国人』に関する総合的対応策」にお
いて、
「外国人について、
(中略)
社会の一員として日本人と同様の公共
サービスを享受し生活できるような環境を整備しなければならない。」とうたわれ、その理念は、令和3(2021)年度に改訂された総合的対応
策においても継承されている 37。このように、外国人の受入れ環境整備は、福祉的なアプローチを基
軸としたものであり、外国人が社会に参加し、能力を最大限発揮でき
るよう後押しするという観点からの取組は、十分ではなかった。
そこで、
日本で教育を受けた若い世代の外国人や、
高度な知識・スキ
ルにより我が国の社会・経済発展に貢献する研究者・経営者、
災害発生
時における通訳ボランティア、自治会や消防団に加入したりPTAの
役員として活躍したりする外国人住民等、我が国では様々な場面で外
国人が活躍しており、将来我が国社会の構成員として外国人への期待
も高まりつつあることから、社会参加に意欲を持つ外国人に活躍の場
を広げていく必要がある。
(2)取組の方向性
ア 共生社会の実現に向けた意識醸成
共生社会の実現に当たっては、外国人を含む全ての人が、それぞれ
の持つ多様性を尊重し、外国人との関わり合いの中で共に成長してい
くことが重要である。
そのためには、外国人を含む全ての人が、共に社会をつくっていく
ことの意義等を理解した上で、主体性を持って共生社会の実現に向け
た取組に協力していくことが重要であり、国においては、これまでの
啓発活動等の取組を推進するとともに、以下のような新たな取組を検
討する必要がある。
(ア) 地域における啓発活動への支援
各地域では、行政機関が民間支援団体等と連携するなどして、外国
人との共生に関する啓発イベント等を実施しているが、
日頃から外国
人との共生に関わっている者の参加に加え、
より多くの日本人に関心
を持ってもらうという観点から、
活動に広がりを持たせていくための
工夫が必要である。
そこで、国においては、社会全体の人権意識を高め、あらゆる差別
や偏見が許されるものではないという意識が広く社会に浸透するよ
う、各地で実施される人権啓発に関するイベントに、共生社会の実現37令和3
(2021)
年度改訂版の総合的対応策では、
「外国人が日本人と同様に公共サービス
を享受し安心して生活することができる環境を全力で整備していく。
」と記述されている。
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をテーマとしてクロスさせていくことが求められる。
また、人権啓発に加えて、様々なテーマと連携させることも、外国
人との共生に係る啓発活動に広がりを持たせるという点では有用で
ある。参考となる好事例としては、地方公共団体等が共催する起業家
育成を目的としたワークショップに「多文化共生」をテーマとして盛
り込み、
参加した外国人の意見を基にビジネスのアイディアを企画す
るイベントを開催している事例 ×ばつしろまるしろまる」の共同イベントは、目指すべき共生社会のビジ
ョンを広め、
共に社会をつくっていくことの意義等に対する理解を醸
成していくに当たり、非常に参考となる取組である。国としては、こ
うした取組を全国的に推進していくため、
先進事例の周知を積極的に
行うとともに、モデル事業への補助等、財政的な支援を検討すべきで
ある。
さらに、国として、外国人との共生に係る啓発月間等を設け、全国
キャラバン、シンポジウム、作文コンテスト等の参加型イベントを組
み入れるなど、
広く外国人との共生についての関心と理解を深めるた
めの取組を推進すべきである。
(イ) 幼児教育・学校教育等における共生のための教育の推進
外国にルーツを持つ子供たちは、学校でのいじめや地域での偏見・
差別にさらされることがある。
そのような現状においては、地域における啓発活動に加え、人格形
成の基礎が培われる幼児教育や、
学校教育の中で外国人との共生に対
する理解を深めていくための取組を推進していくことも重要である。
そこで、国においては、外国人に対する差別の実態や、諸外国にお
ける共生のための教育の先進事例等を踏まえ、幼児教育、学校教育に
おける共生のための教育の導入について検討する。また、その検討に
当たっては、学校での偏見・差別の低減を目指した人権教育が表面的
なものにとどまらない、
心の中にある差別の芽と向き合うような本質
的なものとなるよう留意する。38滋賀県は、起業やまちづくり、デザインなどに関心のある幅広い分野の参加者を得て、
多文化共生をテーマに盛り込んだ
「Startup Weekend Shiga (Change Makers in Nagahama City)」
(注)を平成 27(2015)年 11 月に開催した。イベントの参加者は、
「外国にルーツを持つ
人々と一緒につくりあげるサービス」をテーマに、外国人住民から意見を聞きながら議論
を行い、ビジネスモデルを考案し発表を行った。
(注)
「Startup Weekend」は、本拠地をアメリカシアトルに置く NPO法人 UP Global が
展開する世界的な起業家育成プログラムのこと。
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- 32 -
さらに、言語教育が、その言語を公用語とする国の文化、歴史、習
慣等の学習を通じた異文化理解や、
当該言語を話す児童生徒の自信を
深めることにも資することを踏まえ、地域の実情に応じ、母語に触れ
る機会の提供を検討する。
イ 社会制度等の知識修得のための仕組みづくり
外国人が、納税や社会保険料の納付等果たすべき公的義務を履行す
るためには、社会制度等の知識を十分に理解し、修得するための仕組
みづくりが課題となっている。
そこで、国においては、納税や社会保険料の納付等の公的義務に係
る情報を、生活オリエンテーション(第3の1(2)ア参照)で提供
するとともに、その後も継続的に周知していく。
あわせて、安定的・継続的な生活ができるよう、外国人のニーズに
応じて、人生設計に資する知識(結婚、出産、子供の進学、退職後を
見据えた生活等に関する知識)に係る情報を提供し、外国人が、これ
らを理解し、修得するための仕組みを構築する。
ウ 外国人の生活状況に係る実態把握のための政府統計の充実等
外国人のライフステージ・ライフサイクルに応じ、きめ細かな支援
を検討・実施していくに当たっては、ライフステージごとの状況につ
いて、
「国籍」、「在留資格」や、
「外国にルーツを持つ者」を念頭に「出
身国・地域」、「主な使用言語」等も含め、属性によってどのような傾向
が見られるのか、日本人との比較においてどうかという点に着目し、
実態を正確に把握することが重要である。
そして、
実態に基づいて抽出した課題を踏まえ、
既存施策の改善や、
新たな施策の企画・立案に取り組み、KPIに基づき取組の進捗状況
を把握、評価する仕組みの導入が求められる。
現状においては、
政府統計の中で、
国勢調査 39、人口動態調査 40
及び
人口移動調査 41
において国籍に関する調査項目が設けられており、賃39総務省「国勢調査」は、日本に住む全ての人と世帯を対象とする国の最も重要な統計調
査で、年齢別の人口、家族構成、働いている人や日本に住んでいる外国人などを調査する
もの。40厚生労働省「人口動態調査」は、日本の人口動態事象を把握する上で重要な統計調査で
あり、戸籍法及び死産の届出に関する規程により届け出られた出生、死亡、婚姻、離婚及
び死産の全数を対象として、一人の女性が一生の間に生む子どもの数に相当する合計特殊
出生率や死因別死亡数、年齢別婚姻・離婚件数などを調査するもの。41国立社会保障・人口問題研究所「人口移動調査」は、近年の人口移動の動向を明らかに
するとともに、将来の人口移動の傾向を見通すための基礎データを得ることを目的とし、
社会保障・人口問題基本調査の一環として実施されるもの。
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金構造基本統計調査 42
では在留資格に関する調査項目が設けられてい
る。
この点、
例えば、
人口動態調査を基に推計すると、
心疾患や脳血管疾
患が「タイ」や「フィリピン」に多いなど国籍ごとに特徴が出ている43。一方で、健康診断の受診の有無、飲酒や喫煙の有無・頻度等を調査
する公的調査には、
「国籍」の調査項目がないため、先述した疾患がど
のような状況から生じているのかを把握することができず、実態を踏
まえたきめ細かな疾病対策を講じることができない状況となっている。
また、
「学校基本調査」44
について、
「学校調査票」
の項目に
「学年別・
国籍別」を加えることにより、学校が正確に外国人児童生徒の状況を
把握できるようになるとの指摘もある。
そこで、国においては、以下のような新たな取組を検討する必要が
ある。
(ア) 政府統計等における調査項目の見直し
外国人の各ライフステージにおける生活状況について、
「国籍」、「在
留資格」、「出身国・地域」、「主な使用言語」等の属性別にどのような
傾向が見られるのか、
日本人との比較においてどうかという点が把握
できるよう、生活状況の把握に資する政府統計等について、
「外国に
ルーツを持つ者」も念頭に置きつつ調査項目を見直し、その追加を検
討する。
(イ) 政府統計等に基づき把握・分析した情報を踏まえた既存施策の改善
等の促進
上記(ア)を踏まえ、政府統計等に基づき把握・分析した情報を「共生
に関する白書(仮称)
」として取りまとめる。
そして、専門家の意見を聴くなどして、外国人の生活状況に係る実
態から課題の抽出を行い、政府の取組とのギャップを可視化し、各省
庁に対して既存施策の改善、必要となる施策の企画・立案等を促す。
それに当たっては、KPIに基づく取組の進捗管理を徹底する。
さらに、今後、国においてセーフティネットから漏れ落ちる者に対
する支援策を講じるに当たっては、
必ず外国人も対象に含めて検討を
行う。その際、政府統計のような定量的なエビデンスが得られない場42厚生労働省「賃金構造基本統計調査」は、雇用形態、就業形態、職種、性、年齢、学歴、
勤続年数、経験年数等の労働者の属性別の賃金を調査するもの。43林玲子「外国人の死因―日本人・本国人との比較」(『人口問題研究』2020 第 76 巻第2
号、218-239 ページ)44文部科学省「学校基本調査」は、全国の学校数、在学者数、卒業者数等の学校に関する
基本的事項を調査するもの。
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合でも、現場の声に丁寧に耳を傾け、顕在化していない課題を拾い上
げるアプローチを徹底する。
エ 共生社会の基盤整備のための情報収集強化及び関係機関間の連携強化共生社会の基盤整備のための情報収集強化及び関係機関間の連携に
ついて、
国においては、
これまでの取組を推進するとともに、
以下のよ
うな新たな取組を検討する必要がある。
(ア) 外国人に対する支援及び適正な在留管理等のための情報収集能力
の強化・関係機関間の連携の強化
しろまる 外国人に対する支援を目的とした情報収集能力・関係機関間の
連携の強化
・ 外国人が抱える問題を把握するため、民間支援団体等による
外国人支援者ネットワークの構築を支援する。支援に当たって
は、地域の大学等の産官学の知見や経験をいかすなど、地域の
実情に応じた形でのネットワークの構築を推進する。
また、地方出入国在留管理官署に配属されている受入環境調
整担当官は、外国人支援者ネットワークの構築を支援するに当
たり重要な役割を担うことから、必要十分な定員の確保、育成
を目的とした研修の実施、人事のキャリアパスの構築など所要
の体制整備を行う。
さらに、外国人支援を持続可能な形で成り立たせるため、行
政機関と外国人を媒介する役割を果たしている一定の民間支
援団体や支援者に対して、財政的な支援を含む支援策を検討す
る。
・ 新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響下において、地
方公共団体では、国が保有する外国人の就労先に係る情報の提
供を受けることができないため、感染防止に関する注意喚起が
実施できないなどの課題が顕在化した。
そこで、国においては、保有する外国人に関する情報を地方
公共団体等に提供することが外国人の支援に資すると考えら
れる場合は、
本人の同意を得るなどした上で地方公共団体に情
報を提供するなど、
関係機関間における情報連携の強化に取り
組む。
・ 国においては、地方公共団体において、個人情報の保護に配
慮した上で住民基本台帳から集計される地域の外国人数等、外
国人住民の利便性の向上に資する情報が適切に活用されるよう
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検討する。
しろまる 適正な在留管理、在留資格手続上の利便性向上を目的とした情
報収集能力・関係機関間の連携の強化
・ 出入国在留管理庁において、外国人の在留管理に必要な情報
(納税・社会保険料納付情報、身分関係情報)を確実に捕捉し
て在留管理に活用できるよう、また、在留資格手続における外
国人本人の負担を軽減する観点からも、関係機関から直接に在
留管理に必要な情報を取得できる仕組みの構築を検討する。
・ 在留資格手続のオンライン申請について、対象となる在留資
格や手続の追加を促進するとともに、外国人本人からマイナポ
ータルを経由した申請を可能とし、その際、マイナポータル上
の自己情報(住民情報や税・社会保障情報等)を利用できる仕
組みの構築を検討する。
・ 国において検討が進められている在留カードとマイナンバー
カードの一体化等により、外国人へのマイナンバーカードの普
及が進んだ場合、外国人がマイナポータルにアクセスしやすい
環境が整備されるため、外国人に対してマイナポータルを通じ
た一元的な情報提供を行うとともに、各種情報の提供を強化す
るほか、オーダーメイド型及びプッシュ型の情報提供を行うこ
とを検討する。
(イ) 総合的な支援をコーディネートする人材の育成・認証制度の検討等
外国人が抱える日本語の問題や在留資格の問題など、多様化、複合
化する問題に対応するためには、行政機関、民間支援団体、外国人コ
ミュニティのキーパーソンなど、幅広い連携が必要である。
また、情報発信の観点からも、例えば、外国人コミュニティと連携
し、
相互にコミュニケーションを図っていくことのできる人材が重要
である。
さらに、本有識者会議では、外国人がライフステージ・ライフサイ
クルに応じて個々の学習ニーズに見合った日本語教育を受けられる
よう、
学習計画の作成及び学習のための支援をする人材の配置や仕組
みの導入を提案したが(第3の1(2)ア(ア)参照)、その作成に当たっ
ては、世帯の状況等を的確に把握し、外国人の希望を踏まえ、どのよ
うな人生設計が考えられるのか、そのためには、在留資格変更も含め
たキャリアパスをどのように描くのかなど、
ライフプランニングを支
援する人材が必要である。
そこで、外国人が抱える問題の解決等に向けて、各種支援の取組を
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熟知し、関係機関と連携しながら、総合的な支援をコーディネートす
る人材が必要であることから、
支援人材の認定等に係る制度について、
専門家の意見を聴くなどして制度の在り方を検討する。
(ウ) 民間支援団体等のための拠点の創設
外国人への支援をコーディネートする人材や民間支援団体への情
報提供や相談対応等の支援を行う拠点を創設する。
同拠点においては、
外国人支援者のネットワーク化やスキルアップのための研修を実施
するなど、外国人支援者の活動を支援する仕組みを検討する。
(エ) 地方公共団体間の連携強化等に向けた基盤整備
国においては、地方公共団体における「多文化共生の推進に係る指針・
計画」
の策定に資するよう
「地域における多文化共生推進プラン」
を策定しているが、外国人の受入れ環境整備に関して、地方公共団体
間の対応の違いは存在しており、
各地域のニーズに応じた対応がなさ
れるよう体制を整備する必要がある。
そのためには、例えば、外国人の少数散在地域において、日本語教
育をどのように効果的に実施するかなど、
同じ課題を抱えた地方公共
団体同士が課題解決に向けて広域で連携することや、
短期間に外国人
が急増している地方公共団体が、
受入れ環境整備の進んでいる地方公
共団体の好事例を参考として施策の企画・立案を行うなど、地方公共
団体間の連携を強化していくことが鍵となる。
そこで、
地方公共団体間の連携や、
好事例の横展開を促進するため、
国の「地域経済分析システム」
(RESAS)45
等を参考に、各地方公
共団体における外国人の属性(国籍、在留資格、年代別等)
、人口に占
める外国人住民の割合、
就学対象児童数等をマップやグラフ等を用い
て可視化し、同じ課題を抱える地方公共団体や、受入れ環境整備の進
んだ地方公共団体等を容易に検索できるシステムを構築するなどの
基盤整備を行う。
また、同システムには、各地方公共団体に居住する外国人の生活・45地域経済分析システム(RESAS(Regional Economy Society Analyzing System)
)は、
内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局及び経済産業省が、産業構造や人口動態、人
の流れなどに関する官民のビッグデータを集約、可視化したシステムのこと。
地方創生の実現に向けて、各都道府県・市区町村が客観的なデータに基づき、自らの地
域の現状と課題を把握し、
その特性に即した地域課題を抽出して地方版総合戦略を立案す
ることを主たる目的としている。
同システムには、
データ分析支援機能が搭載されており、
分析結果について、全国傾向と比較した特徴等を示す「示唆」
、分析結果から施策を検討
するヒントとしての「施策検討例」等、分析を支援するための様々な機能が付与されてい
る。
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在留状況等について全国的な傾向と比較した特徴や、
「多文化共生に
係る指針・計画」の策定・見直し等の検討に資するヒントの提示機能
など、共生施策の企画・立案に資する支援機能も付与する。
オ 外国人も共生社会を支える担い手となるような仕組みづくり
これまで、我が国における受入れ環境整備については、福祉的なア
プローチを基軸として取組が進められてきたが、例えば、災害発生時
において通訳や消防団員、災害ボランティアとして活躍する外国人な
ど、支援する側としての外国人の役割に対する注目も高まっている。
近年は、
日本で教育を受けた若い世代の外国人や、
高度な知識・スキル
により我が国の社会・経済発展に貢献する研究者・経営者等、
我が国で
は様々な場面で外国人が活躍しており、将来我が国社会の構成員とし
て外国人への期待が高まりつつある。
言語や文化等の外国人の持つ多様性を社会資源としていかし、活力
ある社会を実現していくという観点から、意欲ある外国人が社会に参
加し、能力を最大限発揮できるような環境を整備することが重要であ
ることから、国においては、JETプログラム 46
等のこれまでの取組
を推進するとともに、
以下のような新たな取組を検討する必要がある。
(ア) 外国人の社会参加を促進する取組の推進
しろまる 外国人に対する情報提供・育成支援等
外国人の社会参加を促進する観点から、生活のために必要な日
本語等を習得するためのカリキュラム
(第3の1(2)ア(イ)参照)
において、日本人との懸け橋となるコミュニティリーダーの育成
等に資する取組として、日本人との円滑なコミュニケーションに
必要なスキルの習得や、自治会や地域における防災活動を始めと
する社会参加に関する情報の提供等を盛り込む。
また、医療や福祉の現場など、外国人の増加や定住化傾向を踏
まえ、外国人のサービス提供者の需要が見込まれる分野について、
奨学金制度の創設など間接的な人材育成の支援策を検討する。
しろまる 社会参加に意欲のある外国人と地方公共団体等とのマッチン
グ支援の提供
社会参加に意欲のある外国人と、通訳・翻訳者や多文化ソーシ
ャルワーカー等を求める地方公共団体、民間支援団体等とのマッ
チングを支援するため、人材バンクの創設など所要の体制構築を46語学指導等を行う外国青年招致事業(The Japan Exchange and Teaching Programme)の略
で、外国青年を招致して地方自治体等で任用し、外国語教育の充実と地域の国際交流の推
進を図る事業のこと。
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検討する。
しろまる 外国人が地域の行政に参加する機会の拡充
外国人が増加傾向にある中、我が国の実情に通じた外国人が地
域住民を支援する担い手として貢献できる方途を探っていくこ
とも重要である。
既存の取組として、例えば、警察では、地域住民の意見を聴く
とともに理解と協力を求める場として活用されている警察署協
議会 47
において、
外国人が委員として委嘱されている事例がある。
国においては、地域住民を支援する担い手として、外国人の活
躍の裾野を広げていく観点から、民生委員への外国籍の者の任用
などを検討することが求められる。
(イ) 外国人との共生と地域活性化等との相乗効果の創出
外国人の持つ多様性を社会資源として捉え、
地域の活性化やグロー
バル化にいかしていくという視点も重要である。
地方公共団体における取組の中には、
外国人から見た観光地の新た
な魅力の掘り起こしや、効果的な海外発信等、外国人ならではの視点
をいかして地域の活性化につなげている事例 48
もある。
このような外
国人との共生を地方創生とクロスさせる取組を全国的に促進するた
め、
先進事例の周知を積極的に行うとともに、
モデル事業への補助等、
財政的な支援を検討することが求められる。
(ウ) 海外で実施される技能に関する試験や資格の認証の推進
上記(ア)及び(イ)の施策は、既に我が国に在留する外国人の社会参加
を促進するためのものであるが、本邦外にいる外国人を含め、我が国
での就労等を希望する外国人を惹きつけていくためには、
各分野にお
いて海外で実施される技能に関する試験や資格の認証を推進してい
くことが重要である。
現状においても、例えばIT分野において、情報処理技術に関する
各国の試験や資格を認証しているところ、今後、外国人の活躍が見込
まれる分野において、
海外の試験や資格の認証を積極的に推進してい
くことが求められる。47原則として全国の全ての警察署に警察署協議会が置かれており、警察署長が地域住民の
意見を聴くとともに、理解と協力を求める場として活用されている。48各地方公共団体における取組は、
「多文化共生事例集作成ワーキンググループ」が作成
した「多文化共生事例集」
(平成 29(2017)年3月)等において紹介されている。
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おわりに
本有識者会議では、
全ての委員が外国人との共生社会の実現に向け、
各々の専
門的知見に基づき真摯かつ熱心に議論を重ね、
それを踏まえ、
目指すべき外国人
との共生社会や、
その実現に向けた取組の方向性について、
意見書として取りま
とめた。
外国人との共生社会の実現に向けては、
「外国人と教育」、「外国人と災害」、「外
国人と高齢化」、「外国人とジェンダー」
というように外国人と課題をクロスして
捉える必要があり、また、
「外国人と災害と高齢化」など、多様化・複合化する
課題への対応が求められる。これらへの対応は、関係省庁が緊密に連携し、政府
全体で取り組む必要がある。
「はじめに」でも述べたが、国においては出入国在
留管理庁の総合調整機能の下、
中長期的な行動計画を策定し、
政府全体で共生社
会の実現に向けた取組を推進していただきたい。
中長期的な行動計画を踏まえて、
具体的な施策を企画・立案するに当たっては、
本文中でも度々言及したが、
実態をよく把握するとともに、
現場のニーズに合っ
たものにしていくという視点を持ち、関係者ヒアリング等を通じて民間支援団
体や外国人当事者の方々の声に耳を傾け、
施策に反映していくことを、
労を惜し
まず続けてもらいたい。
また、本意見書では、外国人との共生社会の実現に向けた施策について、KP
Iに基づき取組の進捗状況を把握、
評価する仕組みの導入を提案したが、
我が国
が目指すべき外国人との共生社会と共通性を持つSDGsの 17 の国際目標、169のターゲット、231 の指標に照らし、施策に不十分な点や抜け落ちがないかをチ
ェックすることも有用であると考える。
なお、外国人の受入れの在り方については、本有識者会議において、調査し、
関係閣僚会議に意見を述べる対象にはなっていないが、三つのビジョンで示し
た目指すべき共生社会を実現するための環境整備を進めていくためには、将来
の我が国における外国人の受入れの在り方を見据えた上で中長期的な行動計画
を立てて推進することが望ましい。
最後に、
国において中長期的な行動計画を策定するに当たっては、
本意見書の
内容を踏まえて真摯に検討するとともに、国境を越える人の移動や外国人との
共生に関する国際的な規範や潮流の中で、日本がどのような立ち位置にあるの
か、どのような社会を目指すべきかという視点を持って検討いただくようお願
いしたい。
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「外国人との共生社会の実現のための有識者会議」名簿
[座 長] 田中 明彦 政策研究大学院大学長
[構成員] 池上 重弘 静岡文化芸術大学教授
佐藤 郡衛 明治大学特任教授
高橋 進 株式会社日本総合研究所チェアマン・エメリタス
田村 太郎 一般財団法人ダイバーシティ研究所代表理事
林 玲子 国立社会保障・人口問題研究所副所長
(座長以外五十音順、敬称略)
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「外国人との共生社会の実現のための有識者会議」開催実績
第1回 令和3(2021)年2月 24 日
しろまる 外国人との共生社会の在り方及び取り組むべき中長期的な課題について
第2回 令和3(2021)年3月 24 日
しろまる 円滑なコミュニケーションのための日本語教育等の取組について
しろまる 外国人に対する情報発信・相談体制等の強化について
第3回 令和3(2021)年4月 28 日
しろまる ライフサイクルに応じた支援について
第4回 令和3(2021)年5月 24 日
しろまる 共生社会の基盤整備に向けた取組について
第5回 令和3(2021)年6月 24 日
しろまる 意見書(案)取りまとめ
第6回 令和3(2021)年7月 28 日
しろまる 意見書(案)取りまとめ
資 料
資料1 外国人との共生施策の変遷(1ページ)
資料2 外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(令和3年度改訂)の概要(2ページ)
資料3 「ビジネスと人権」に関する行動計画(概要)(3、4ページ)
資料4 目指すべき外国人との共生社会(三つのビジョン)
(5ページ)
資料5 在留外国人数及び我が国の総人口に占める割合と外国人労働者数の推移(6ページ)
資料6 【在留資格別】在留外国人数及び構成比の変化(7ページ)
資料7 【国籍・地域別】在留外国人数及び構成比の変化(8ページ)
資料8 【国籍・地域別】外国人労働者数及び構成比の変化(9ページ)
資料9 【年齢別】在留外国人数及び構成比の変化(10 ページ)
資料 10 【年齢別】在留外国人数と日本人人口の比較(11 ページ)
資料 11 【男女別・年齢別・在留資格別】在留外国人数(12 ページ)
資料 12 【男女別】在留外国人数と男女比の推移(13 ページ)
資料 13 関係者ヒアリングの結果概要について(14〜35 ページ)
資料 14 ライフステージ・ライフサイクルに応じた支援の現状
(総合的対応策)
(36 ページ)
資料 15 ロールモデルの提示に関する参考事例(37 ページ)
資料 16 外国人雇用の好事例の周知に関する参考事例(38 ページ)
(1)
外国人との共生施策の変遷
(概要)・法務省に外国人の受入れ環境整備に関する総合調整機能を付与(閣議決定)
・「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」の設置(閣議口頭了解)
(背景)外国人の増加、定住化、子どもの定住化等が見込まれる一方で、課題が顕在化
(概要)上記背景を受け、社会の一員として日本人と同様の公共サービスを享受し生活できるような環境を整備する必要があること
から、
1外国人が暮らしやすい地域社会づくり、2外国人の子どもの教育の充実、3外国人の労働環境の改善、社会保険の加
入促進等及び4外国人の在留管理制度の見直し等
の施策を実施することとした。1平成18年12月25日
「『生活者としての外国人』に関する総合的対応策」(外国人労働者問題関係省庁連絡会議)1平成18年12月25日
「『生活者としての外国人』に関する総合的対応策」(外国人労働者問題関係省庁連絡会議)
(概要)外国人材の受入れ・共生のための取組を、政府一丸となって、より強力に、かつ、包括的に推進していく観点から、1外国
人との共生社会の実現に向けた意見聴取・啓発活動等、2生活者としての外国人に対する支援、3外国人材の適正・円滑な受
入れの促進に向けた取組及び4新たな在留管理体制の構築等の施策を実施することとした。5平成30年12月25日
「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」(126施策)
(外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議決定)
以後、3回改訂5平成30年12月25日
「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」(126施策)
(外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議決定)
以後、3回改訂
「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(令和3年度改訂)」(197施策)
「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(令和3年度改訂)」(197施策)
(背景)日系人等の定住外国人がリーマン・ショックで教育、雇用等の様々な面で深刻な影響を受ける。
(概要)上記背景を受け、政府は、上記の対策や「定住外国人支援に関する対策の推進について」(平成21年4月)を取りまとめ、
教育、雇用、住宅、帰国支援、国内外における情報提供等の各種施策を講じた。2平成21年1月30日
「定住外国人支援に関する当面の対策について」(内閣府)2平成21年1月30日
「定住外国人支援に関する当面の対策について」(内閣府)
(概要)日系定住外国人を日本社会の一員として受け入れるための施策の基本指針を策定し、
「1日本語で生活できるために2子ど
もを大切に育てていくために3安定して働くために4社会の中で困ったときのために5お互いの文化を尊重するために」の5つの分野に係る施策について検討することとした。その後、基本指針に掲げた施策を具体化することを目的として行動計画を
策定した(なお、平成26年3月には「日系定住外国人施策の推進について」を策定し、上記の基本指針と行動計画を一本化
〔日系定住外国人施策推進会議〕)。3平成22年8月31日
「日系定住外国人施策に関する基本指針」(日系定住外国人施策推進会議)
平成23年3月31日
「日系定住外国人施策に関する行動計画」(日系定住外国人施策推進会議)3平成22年8月31日
「日系定住外国人施策に関する基本指針」(日系定住外国人施策推進会議)
平成23年3月31日
「日系定住外国人施策に関する行動計画」(日系定住外国人施策推進会議)4平成30年7月24日
外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議
設置4平成30年7月24日
外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議
設置
資料 1 (2)外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(令和3年度改訂)の概要
我が国に在留する外国人は令和2年末で289万人。外国人労働者は令和2年10月末で172万人(過去最高)。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大等で明らかになった課題も踏まえ、受け入れた外国人材の受入れ環境を更に充実させる等の観点から策定(197施策)。
今後も政府一丸となって、関連施策を着実に実施するとともに、総合的対応策の充実を図る。令和3年6月15日外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議外国人との共生社会の実現に向けた意見聴取・啓発活動等
(1)国民及び外国人の声を聴く仕組みづくり
共生社会の実現に向けて取り組むべき中長期的な課題及び方策等に関する工程表の策定《施策1》
「国民の声を聴く会」や「御意見箱」等を通じた共生施策の企画・立案に資する意見の聴取《施策2》
(2)啓発活動等の実施
全ての人が互いの人権を大切にし、支え合う共生社会の実現のため、各種人権啓発活動を実施《施策7》
多言語に対応した人権相談及び調査救済手続の広報の実施《施策8》円滑なコミュニケーション・情報収集のための支援(1)行政・生活情報の多言語・やさしい日本語化、相談体制の整備
地方公共団体における一元的相談窓口の設置を促進する方策の検討《施策9》
FRESC/フレスクにおける効果的・効率的な外国人の受入れ環境整備のための支援の実施及び地方機関への
情報提供《施策10》
(2)日本語教育の充実(円滑なコミュニケーションの実現)
「日本語教育の参照枠」の活用のための手引き等の作成、生活の分野における学習内容を示す「生活Cando」の作成《施策21》
「日本語教育の参照枠」の活用を促進するとともに、都道府県等が関係機関と連携して行う日本語教育環境
を強化するための体制づくりの推進《施策22》
日本語学習サイト「つながるひろがる
にほんごでのくらし」の「日本語教育の参照枠」を踏まえた生活場面
の充実《施策23》
就労者等に対する日本語教師の研修プログラムの充実・普及及び日本語教師の養成に求められる「必須の教育
内容」の円滑な実施のためのICT教材の開発・普及《施策27》
日本語教師資格、日本語教育機関の日本語教育水準の維持向上を図るための仕組みの法制化の検討《施策28》
日本人社員と外国籍社員の職場における双方向の学びの動画教材や手引きの周知及び活用促進《施策32》ライフステージ・生活シーンに応じた支援(1)地域における多文化共生の取組の促進・支援
外国人支援者等の活動の現状・課題の把握、外国人支援者のネットワークの構築《施策34》
JICAとの連携による地方公共団体やNPO等の共生社会の構築に向けた取組の推進《施策39》
(2)生活サービス環境の改善等
警察における外国語対応が可能な職員の配置や各種手続に係る外国語による対応の促進《施策50》
部屋探しをする際に活用できる「外国人のための賃貸住宅入居の手引き」等の周知・普及の推進《施策56》
金融機関における外国人の口座開設円滑化のための環境整備(14言語の外国人向けパンフレット等の配布、
犯罪への関与の防止等に係る周知活動の実施)《施策58》
(3)外国人の子供に係る対策
外国人児童生徒等の学校における日本語指導体制等の構築《施策66》
学齢簿システムと住民基本台帳システムの連携や外国人の子供の就学状況の一体的管理・把握《施策69》
(4)留学生の就職等の支援
新型コロナウイルス感染症の長期化や新たな危機に備えた外国人留学生の母国でのオンライン学習支援
《施策79》
「外国人留学生の採用や入社後の活躍に向けたハンドブック」の自治体や支援機関等への展開《施策82》
大学とハローワークの連携強化による一貫した就職支援、全国の大学等へ好事例等の共有《施策95》
(5)適正な労働環境等の確保
外国人労働者のための視聴覚教材の多言語化(14言語化)《施策98》
日本の職場におけるコミュニケーション能力の向上等を目的とした研修の実施及びモデルカリキュラム等の
作成《施策104》
(6)社会保険への加入促進等
医療機関等におけるマイナンバーカードを活用した本人確認と保険資格確認の実施《施策110》
(1)災害時等の非常時における情報発信・支援
「Safety
tips」等の周知、多言語辞書の改定による正確な情報の伝達環境の整備《施策114》
(2)新型コロナウイルス感染症の感染予防・円滑なワクチン接種支援等
高等教育機関・日本語教育機関への新型コロナウイルス感染症の感染防止・予防に資する情報等の提供
《施策118》
各省庁が把握しているインフルエンサー等に係る情報の集約・共有等、情報発信の充実・強化に向けた取組
の推進《施策119》
職場における新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策の徹底に係る労使団体への要請《施策120》
留学生が多く在籍する日本語教育機関、専門学校等や外国人を雇用する職場における抗原簡易キット等を活
用した検査の実施等と、陽性者発見時における幅広い接触者への迅速かつ機動的なPCR検査等の実施
《施策121》
在留外国人へのワクチン接種の周知広報、接種案内の確実な送付、多言語による相談対応体制の確保
《施策122》
「高度外国人材活躍推進ポータル」における新型コロナウイルス感染症に関する情報発信・イベントの実施
《施策125》
困窮留学生等を支援する関係機関とハローワークの連携による就職支援及び支援内容の周知《施策126》
外国人学校における新型コロナウイルス感染症対策として、やさしい日本語・多言語での情報発信、保健衛
生に関する有識者会議での検討内容を踏まえた措置の実施《施策128》
(1)特定技能外国人のマッチング支援策等
国内のマッチングイベントや海外説明会等の開催による特定技能制度の活用促進《施策123(再掲)》
(2)特定技能試験の円滑な実施、特定技能制度の周知・利用の円滑化等
技能試験及び日本語試験の実施並びに受験の推進、分野所管省庁による新たな日本語試験の活用の検討
《施策134》
特定技能2号試験実施の検討推進、特定技能2号の対象分野追加及び業務区分の整理に係る検討《施策141》
(3)悪質な仲介事業者等の排除
開発途上国への技術協力等を通じて得た知見等の活用による日本国内の取組の側面支援《施策156》
(4)海外における日本語教育基盤の充実等
国際交流基金を通じた日本語教育基盤の強化や我が国の文化及び社会の魅力発信等の取組の推進《施策161》
(1)在留資格手続の円滑化・迅速化
在留手続等に係る手数料の電子納付等の利便性向上を図る施策の検討《施策163》
外国人本人によるオンライン申請の利用の実現、オンライン化対象となる手続の拡大の検討《施策164》
令和7年度中の交付開始に向けた在留カードとマイナンバーカードとの一体化の検討《施策166》
(2)在留管理基盤の強化
関係省庁及び地方公共団体等の連携による在留外国人の住居地情報の整備《施策170》
(3)留学生の在籍管理の徹底
留学生の在籍管理が不適切な大学等に対する、留学生の受入れを認めない等の在留資格審査の厳格化
《施策179》
(4)技能実習制度の更なる適正化
出入国在留管理庁と技能実習機構が連携して行う調査の強化等による技能実習制度の適正化《施策97(再掲)》
失踪技能実習生対策としての実地検査の強化、失踪者の多い送出機関からの新規受入れ停止《施策184》
技能実習生と日本人との同等報酬等の確認・働き方改革関連法の周知の徹底《施策186》
解雇された技能実習生への監理団体による着実な転籍支援の実施、実習生の継続的な状況把握による適切な
転職支援《施策187》
技能実習生のプライバシーや感染予防に配慮した住環境を確保する実習実施者に対する優遇措置《施策188》
(5)不法滞在者等への対策強化
外国人雇用状況届出情報等の収集・分析機能強化による効果的な摘発の実施《施策189》
(注記)
1:下線は総合的対応策(令和2年度改訂)からの変更、
(注記)
2:施策番号が赤字のものは新規施策非常時における外国人向けのセーフティネット・支援等外国人材の円滑かつ適正な受入れ共生社会の基盤としての在留管理体制の構築
資料 2 (3)「ビジネスと人権」に関する行動計画
(概要)
行動計画ができるまで
行動計画
政府から企業への期待
行動計画の実施・見直しに関する枠組み
政府は、その規模、業種等にかかわらず、日本企業が、国
際的に認められた人権等を尊重し、「指導原則」やその他関
連する国際的なスタンダードを踏まえ、人権デュー・ディリ
ジェンスのプロセス((注記))を導入することを期待。
((注記))企業活動における人権への影響の特定、予防・軽減、対処,情
報共有を行うこと。)
行動計画期間は5年。毎年、関係府省庁連絡会議において実
施状況を確認。ステークホルダーとの対話の機会を設け、その
概要を公表。公表3年後に中間レビュー、5年後に改定。1「ビジネスと人権」に関する国際的な要請の
高まりと行動計画の必要性
「OECD多国籍企業行動指針」や「ILO多国籍企業宣言」の
策定、国連グローバル・コンパクトの提唱といった中、国連は
「ビジネスと人権に関する指導原則」を支持。G7・G20の
首脳宣言でも行動計画に言及。
投資家等の求めもあり、企業も人権尊重への対応が必要。企業
自らが、人権に関するリスクを特定し、対策を講じる必要。
日本ではこれまで人権の保護に資する様々な立法措置・施策を
実施し、企業はこれに対応。
「ビジネスと人権」に関する社会的要請の高まりを踏まえ、一
層の取組が必要との観点から、政府として行動計画を策定。
新型コロナウイルス感染症の文脈においても、行動計画を着実
に実施していく必要。2行動計画の位置付け
「指導原則」、「OECD多国籍企業行動指針」、「ILO多国
籍企業宣言」等を踏まえ作成。
SDGsの実現に向けた取組の一つと位置付け。3行動計画の策定及び実施を通じ目指すもの
国際社会を含む社会全体の人権の保護・促進
「ビジネスと人権」関連政策に係る一貫性の確保
日本企業の国際的な競争力及び持続可能性の確保・向上
SDGsの達成への貢献4行動計画の策定プロセス
現状把握調査を含め、経済界、労働界、市民社会等との意見交換
会を実施。令和2年2月に原案を作成し、パブリックコメントを実
施。1基本的な考え方
(1)政府、政府関連機関及び地方公共団体等の「ビジネスと人
権」に関する理解促進と意識向上
(2)企業の「ビジネスと人権」に関する理解促進と意識向上
(3)社会全体の人権に関する理解促進と意識向上
(4)サプライチェーンにおける人権尊重を促進する仕組みの整備
(5)救済メカニズムの整備及び改善2分野別行動計画
→詳細は次頁。
第1章
第2章
第3章
第4章
令和2年10月
「ビジネスと人権に関する行動計画に係る関係府省庁連絡会議」
資料 3 (4)ア.公共調達
「ビジネスと人権」関連の調達ルールの徹底
イ.開発協力・開発金融
開発協力・開発金融分野における環境社会配慮に係
る取組の効果的な実施
ウ.国際場裡における「ビジネスと人権」の推進・
拡大
国際社会における「指導原則」の履行促進に努力
人権対話による「ビジネスと人権」の取組の推進
国際機関等のフォーラムにおける経済活動と社会課
題の関係に関する議論への貢献
労働者など幅広い層の人々が恩恵を受けるEPA及び
投資協定の締結に努力
日EU・EPAに基づく市民社会との共同対話
エ.人権教育・啓発
公務員に対する「ビジネスと人権」の周知・研修
「人権教育・啓発に関する基本計画」に基づく
人権教育・啓発活動の実施
民間企業と連携・協力した人権啓発活動の実施
中小企業向けの啓発セミナーの継続
人権尊重を含む社会的課題に取り組む企業の表彰
教育機関等に対する、行動計画等の周知
行動計画の周知等における国際機関との協力
ア.国内外のサプライチェーンにおける
取組及び「指導原則」に基づく人権
デュー・ディリジェンスの促進
業界団体等を通じた日本企業に対する行動
計画の周知、人権デュー・ディリジェンス
に関する啓発
「OECD多国籍企業行動指針」、「IL
O宣言」及び「ILO多国籍企業宣言」の
周知
在外公館や政府関係機関の現地事務所等に
おける海外進出日本企業に対する、行動計
画等の周知等
「価値協創ガイダンス」の普及
女性活躍推進法の着実な実施
環境報告ガイドラインに則した情報開示の
促進
海外における国際機関の活動への支援
イ.中小企業における「ビジネスと人権」
への取組に対する支援
「ビジネスと人権」のポータルサイトによ
る中小企業への情報提供
中小企業を対象としたセミナーの実施
取引条件・取引慣行改善に係る施策
司法的救済及び非司法的救済
民事裁判手続のIT化
警察官、検察官等に対する人権
研修
日本NCP(国別連絡窓口)の活
動の周知とその運用改善
人権相談の継続
人権侵害の予防、被害の救済
個別法令等に基づく対応の継
続・強化(労働者、障害者、外
国人技能実習生を含む外国人労
働者、通報者保護)
裁判外紛争解決手続の利用促進
開発協力・開発金融における相
談窓口の継続
途上国における法制度整備支援
質の高いインフラ投資の推進
第2章
2.分野別行動計画(2)人権を保護する国家
の義務に関する取組(5)その他の取組
オ.法の下の平等
(障害者,女性,
性的指向・性自認等)
ア.労働(ディーセント・
ワークの促進等)
イ.子どもの権利
の保護・促進
ウ.新しい技術の
発展に伴う人権
エ.消費者の
権利・役割(3)人権を尊重する企業
の責任を促すための取組(4)救済へのアクセス
に関する取組(1)横断的事項
ディーセント・ワー
クの促進
ハラスメント対策の
強化
労働者の権利の保
護・尊重(含む外国
人労働者、外国人
技能実習生等)
人身取引等を含む児童労
働撤廃に関する国際的な
取組への貢献
児童買春に関する啓発
子どもに対する暴力への
取組
スポーツ原則・ビジネス
原則の周知
インターネット利用環境
整備
「子供の性被害防止プラ
ン」の着実な実施
ヘイトスピーチを
含むインターネッ
ト上の名誉毀損等
への対応
AIの利用と人権や
プライバシーの保
護に関する議論の
推進
エシカル消費の
普及・啓発
消費者志向経営
の推進
消費者教育の
推進
ユニバーサルデザイ
ン等の推進
障害者雇用の促進
女性活躍の推進
性的指向・性自認へ
の理解・受容の促進
雇用分野における平
等な取扱い
公衆の使用の目的と
する場所での平等な
取扱い
カ.外国人材の
受入れ・共生
共生社会実現に向
けた外国人材の受
入れ環境整備の充
実・推進 (5)多様性に富んだ
活力ある社会
個人の尊厳と人権を
尊重した社会
安全・安心な社会
「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のための国際目標
を定めたSDGsの理念等を踏まえた、目指すべき共生社会の三つのビジョン
目指すべき外国人との共生社会
(三つのビジョン)
目指すべき外国人との共生社会(三つのビジョン)
これからの日本社会を共につくる一員として
外国人が包摂され、全ての人が安全に安心して
暮らすことができる社会
様々な背景を持つ外国人を含む
全ての人が社会に参加し、能力を
最大限に発揮できる、多様性に富
んだ活力ある社会
外国人を含め、全ての人がお互
いに個人の尊厳と人権を尊重し、
差別や偏見なく暮らすことができ
る社会
資料 4 (6)在留外国人数及び我が国の総人口に占める割合と外国人労働者数の推移00.511.522.533.544.5505001,000
1,500
2,000
2,500
3,000
3,50061年62年63年
元年2年3年4年5年6年7年8年9年10年11年12年13年14年15年16年17年18年19年20年21年22年23年24年25年26年27年28年29年30年
元年2年
在留外国人数
外国人労働者数
総人口に占める在留外国人の割合
平成20年9月
いわゆるリーマン・ショック
(注記)
在留外国人数は、平成23(2011)年までは法務省入国管理局(当時)「(旧)登録外国人統計」(12月末現在)に、平成24(2012)年以降
は出入国在留管理庁「在留外国人統計」(12月末現在)に基づく。
(注記)
外国人労働者数は、厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ」(各年10月末現在の統計)に基づく(外国人雇用状況の届出制度は、
平成19〔2007〕年10月1日から開始されているため、平成20〔2008〕年以降の推移を示している。)。
(注記)
総人口は、総務省「人口推計」(各年10月1日現在の統計)、「国勢調査」(令和2〔2020〕年は速報結果)に基づく。
昭和
平成
令和
平成23年3月
東日本大震災
令和2年
新型コロナウイルス感染症の流行
平成24年7月
新しい在留管理制度の導入
平成2年6月
在留資格の整備
(千人)
令和2年末288万
7,116人令和元年末293万
3,137人172万4,328人48万6,398人(%)
2.32%
0.80%
平成22年7月
在留資格「技能実習」の創設
在留資格「留学」と「就学」の一本化
在留外国人数及び外国人労働者数
我が国の総人口に占める在留外国人の割合
平成29年11月
技能実習法の施行
平成31年4月
「特定技能」制度の創設
2.29%
資料 5 (7)【在留資格別】在留外国人数及び構成比の変化
令和2(2020)年
平成22(2010)年
(注記)
平成22(2010)年は、法務省入国管理局(当時)「(旧)登録外国人統計」(12月末現在)に基づく。また、令和2(2020)年は、出入国在留管理庁「在留外
国人統計」(12月末現在)に基づく。
(注記)
平成22(2010)年末の外国人登録者数(208万7,261人)は、外国人登録者数のうち中長期在留者に該当し得る在留資格をもって在留する者及び特別永住者の
数である。
(注記)
平成22(2010)年末の「技術及び人文知識・国際業務」の数は、「技術」及び「人文知識・国際業務」の数を合算したものである。
(注記)
平成22(2010)年末の「技能実習及び研修」の数は、「技能実習」、「特定活動」(技能実習)及び「研修」の数を合算したものである。
永住者
807,517人28.0%
技能実習
378,200人13.1%
特別永住者
304,430人10.5%
技術・人文知識・
国際業務
283,380人9.8%
留学
280,901人9.7%
定住者
201,329人7.0%
家族滞在
196,622人6.8%
日本人の
配偶者等
142,735人4.9%
特定活動
103,422人3.6%
永住者の
配偶者等
42,905人1.5%
その他
145,675人5.0%
永住者
565,089人
27.1%
特別永住者
399,106人
19.1%
留学
201,511人9.7%日本人の
配偶者等
196,248人9.4%定住者
194,602人9.3%技能実習及び研修
159,431人7.6%家族滞在
118,865人5.7%技術及び
人文知識・国際業務
115,059人5.5%技能
30,142人1.4%特定活動
(技能実習除く)
22,294人,1.1%
その他
84,914人4.1%外国人登録者数:208万7,261人
在留外国人数:288万7,116人
資料 6 (8)【国籍・地域別】在留外国人数及び構成比の変化
令和2(2020)年
平成22(2010)年
外国人登録者数:208万7,261人
中国
678,391人32.5%
韓国・朝鮮
560,799人26.9%
ブラジル
228,702人11.0%
フィリピン
200,208人9.6%
ペルー
52,385人2.5%
米国
49,821人2.4%
ベトナム
41,354人2.0%
タイ
38,240人1.8%
インドネシア
24,374人1.2%
インド
21,723人1.0%
その他
191,264人9.2%
中国
778,112人27.0%
ベトナム
448,053人15.5%
韓国
426,908人14.8%
フィリピン
279,660人9.7%
ブラジル
208,538人7.2%
ネパール
95,982人3.3%
インドネシア
66,832人2.3%
台湾
55,872人1.9%
米国
55,761人1.9%
タイ
53,379人1.8%
その他
418,019人14.5%
在留外国人数:288万7,116人
(注記)
平成22(2010)年は、法務省入国管理局(当時)「(旧)登録外国人統計」(12月末現在)に基づく。また、令和2(2020)年は、出入国在留管理庁「在留外国
人統計」(12月末現在)に基づく。
(注記)
平成22(2010)年末の外国人登録者数(208万7,261人)は、外国人登録者数のうち中長期在留者に該当し得る在留資格をもって在留する者及び特別永住者の数
である。
(注記)
「韓国・朝鮮」について、平成23(2011)年末の統計までは、外国人登録証明書の「国籍等」欄に「朝鮮」の表記がなされている者と「韓国」の表記がなされている韓国籍を有
する者を合わせて「韓国・朝鮮」として計上していたが、平成24(2012)年末の統計からは、在留カード等の「国籍・地域」欄に「韓国」の表記がなされている者を「韓国」に、「朝
鮮」の表記がなされている者を「朝鮮」に計上している。
(注記)
「台湾」について、台湾の権限ある機関が発行した旅券等を所持する者は、平成24(2012)年7月8日までは外国人登録証明書の「国籍等」欄に「中国」
の表記がなされ
ていたが、
同年7月9日以降は、在留カード等の「国籍・地域」欄に「台湾」の表記がなされており、平成24(2012)年末の統計からは「台湾」の表記がなされた在留カード等の
交付を受けた者を
「台湾」に計上している。
資料 7 (9)中国
287,105人44.2%
ブラジル
116,363人17.9%
フィリピン
61,710人9.5%
韓国
28,921人4.4%
ペルー
23,360人3.6%
G8等
46,221人7.1%
その他
86,302人13.3%
【国籍・地域別】外国人労働者数及び構成比の変化
令和2(2020)年
平成22(2010)年
外国人労働者数:64万9,982人
外国人労働者数:172万4,328人
ベトナム
443,998人25.7%
中国
419,431人24.3%
フィリピン
184,750人10.7%
ブラジル
131,112人7.6%
ネパール
99,628人5.8%
韓国
68,897人4.0%
インドネシア
53,395人3.1%
ペルー
29,054人1.7%
G7/8等
80,414人4.7%
その他
213,649人12.4%
(注記)
厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況」(平成22〔2010〕年10月末現在)及び厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和2〔2020〕年10月末
現在)」に基づく。
(注記)
平成22(2010)年のG8等及び令和2(2020)年のG7/8等は、英国、米国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ、ロシア、オーストラリア、ニュージーランドを指す。
資料 8
(10)
【年齢別】在留外国人数及び構成比の変化
(注記)
平成22(2010)年は、法務省入国管理局(当時)「(旧)登録外国人統計」(12月末現在)に基づく。また、令和2(2020)年は、出入国在留管理庁
「在留外国人統計」(12月末現在)に基づく。
67,909(3.2%)60,600(2.8%)62,334(2.9%)78,826(3.7%)276,281(12.9%)310,723(14.6%)272,198(12.8%)227,918(10.7%)207,583(9.7%)165,909(7.8%)116,919(5.5%)88,312(4.1%)67,369(3.2%)46,217(2.2%)33,486(1.6%)21,878(1.0%)29,689(1.4%)0
100,000
200,000
300,000
400,000
500,0000~4歳5~9歳
10~14歳15~19歳20~24歳25~29歳30~34歳35~39歳40~44歳45~49歳50~54歳55~59歳60~64歳65~69歳70~74歳75~79歳80歳~
令和2(2020)年
平成22(2010)年
90,065(3.1%)84,585(2.9%)68,712(2.4%)94,424(3.3%)367,186(12.7%)280,548(9.7%)224,517(7.8%)193,962(6.7%)174,516(6.0%)135,741(4.7%)92,830(3.2%)67,913(2.4%)49,807(1.7%)33,157(1.1%)40,070(1.4%)0
100,000
200,000
300,000
400,000
500,0000~4歳5~9歳
10~14歳15~19歳20~24歳25~29歳30~34歳35~39歳40~44歳45~49歳50~54歳55~59歳60~64歳65~69歳70~74歳75~79歳80歳~
(人)
(人)
456,051(15.8%)
433,032(15.0%)
資料 9
(11)
【年齢別】在留外国人数と日本人人口の比較90(3.1%)85(2.9%)69(2.4%)94(3.3%)433(
15.0%)456(15.8%)367(12.7%)281(9.7%)225(7.8%)194(6.7%)175(6.0%)136(4.7%)93(3.2%)68(2.4%)50(1.7%)33(1.1%)40(1.4%)4,540(3.7%)4,932(4.0%)5,287(4.3%)5,550(4.5%)5,991(4.9%)5,882(4.8%)6,234(5.1%)7,141(5.8%)8,141(6.6%)9,619(7.8%)8,558(7.0%)7,859(6.4%)7,329(6.0%)8,074(6.6%)9,341(7.6%)6,972(5.7%)11,661(9.5%)0
5,000
10,000
15,00001002003004005000~4歳5~9歳
10~14歳15~19歳20~24歳25~29歳30~34歳35~39歳40~44歳45~49歳50~54歳55~59歳60~64歳65~69歳70~74歳75~79歳80歳~
(千人)
(千人)
(注記)
在留外国人数は、出入国在留管理庁「在留外国人統計」(令和2〔2020〕年末現在)に基づく。
(注記)
日本人人口は、総務省「人口推計」(令和3〔2021〕年1月1日現在(平成27〔2015〕年国勢調査を基準とする推計値))に基づく。
しかく日本人人口
しかく在留外国人数
資料 10
(12)
【男女別・年齢別・在留資格別】在留外国人数
技能
技術・人文・国際
技能実習1号ロ
技能実習2号ロ
留学
家族滞在
特定活動
永住者
日本人の配偶者等
定住者
特別永住者60402002040600歳5歳10歳
15歳
20歳
25歳
30歳
35歳
40歳
45歳
50歳
55歳
60歳
65歳
70歳
75歳
80歳以上
(千人)
教授
芸術
宗教
報道
高度専門職1号イ
高度専門職1号ロ
高度専門職1号ハ
高度専門職2号
経営・管理
法律・会計業務
医療
研究
教育
技術・人文・国際
企業内転勤
介護
興行
技能
特定技能1号
特定技能2号
技能実習1号イ
技能実習1号ロ
技能実習2号イ
技能実習2号ロ
技能実習3号イ
技能実習3号ロ
文化活動
留学
研修
家族滞在
特定活動
永住者
日本人の配偶者等
永住者の配偶者等
定住者
特別永住者
女性
男性
(注記)
在留外国人数は、出入国在留管理庁「在留外国人統計」(令和2〔2020〕年末現在)
に基づく。
資料 11
(13)
【男女別】在留外国人数と男女比の推移
(注記)
在留外国人数は、平成23(2011)年までは法務省入国管理局(当時)「(旧)登録外国人統計」(12月末現在)に、平成24(2012)年以降
は出入国在留管理庁「在留外国人統計」(12月末現在)に基づく。671680702731736748797833862884906968
1,002
1,032
1,0059729459229439801,050
1,135
1,234
1,328
1,446
1,4296836827137527768088909459901,031
1,067
1,117
1,151
1,186
1,181
1,162
1,133
1,112
1,123
1,142
1,182
1,248
1,328
1,403
1,487
1,458
49.6%
49.9%
49.6%
49.3%
48.7%
48.1%
47.3%
46.9%
46.5%
46.2%
45.9%
46.4%
46.5%
46.5%
46.0%
45.6%
45.5%
45.3%
45.7%
46.2%
47.0%
47.6%
48.2%
48.6%
49.3%
49.5%
50.4%
50.1%
50.4%
50.7%
51.3%
51.9%
52.7%
53.1%
53.5%
53.8%
54.1%
53.6%
53.5%
53.5%
54.0%
54.4%
54.5%
54.7%
54.3%
53.8%
53.0%
52.4%
51.8%
51.4%
50.7%
50.5%0%10%20%30%40%50%60%70%0500
1,000
1,500
2,000
2,500
3,000
3,500(千人)男性
女性
男性
女性
資料 12
(14)
関係者ヒアリングの結果概要について
今後の出入国在留管理行政の在り方に関する検討に資するため,広く国民の
声を聴くという観点に立ち,幅広い関係者から意見等を聴取する関係者ヒアリ
ングを実施するもの。
【開催状況】
しろまる令和2年度
・第1回 2月19日(金) 佐賀県鳥栖市市民環境部市民協働推進課
下川 有美 氏
・第2回 2月22日(月) NPO法人国際活動市民中心(CINGA)
新居 みどり 氏
・第3回 3月 5日(金) 株式会社オリジネーター,一般社団法人外国人雇用協議会,
一般社団法人国際人流振興協会
工藤 尚美 氏
・第4回 3月 9日(火) 日本行政書士会連合会
・第5回 3月10日(水) ランゲージワン株式会社
カブレホス セサル 氏
・第6回 3月15日(月) 内定ブリッジ株式会社
淺海 一郎 氏
・第7回 3月16日(火) 一般財団法人自治体国際化協会(CLAIR)
・第8回 3月26日(金) 神奈川県横浜市教育委員会事務局
学校教育企画部小中学校企画課
土屋 隆史 氏
・第9回 3月26日(金) 静岡県浜松市教育委員会学校教育部指導課
教育総合支援センター 外国人支援グループ
櫻井 敬子 氏
・第10回 3月30日(火) NPO法人青少年自立援助センター
田中 宝紀 氏
しろまる令和3年度
・第1回 4月 6日(火) 一般社団法人kuriya
海老原 周子 氏
・第2回 4月 8日(木) 認定NPO法人多文化共生教育ネットワーク
かながわ(ME-net)
高橋 清樹 氏
・第3回 4月 9日(金) 一般財団法人外国人材共生支援全国協会(NAGOMi)
資料 13
(15)
・第4回 4月12日(月) 桃山学院教育大学
オチャンテ 村井 ロサ メルセデス 准教授
・第5回 4月14日(水) NPO法人愛伝舎
坂本 久海子 氏
・第6回 4月16日(金) 東京外国語大学
小島 祥美 准教授
・第7回 4月20日(火) 三重県鈴鹿市
・第8回 4月21日(水) 一般社団法人日本海外協会
林 隆春 氏
・第9回 5月10日(月) NPO法人神戸定住外国人支援センター(KFC)
福山 恵 氏,フフデルゲル 氏
・第10回 5月13日(木) 一般社団法人新経済連盟
・第11回 5月17日(月) 宮城 ユキミ 氏
・第12回 5月25日(火) 一般社団法人日本経済団体連合会
・第13回 6月 4日(火) 日伯交流協会
児玉 哲義 氏
・第14回 6月 9日(水) 全国中小企業団体中央会
・第15回 6月29日(火) 日本労働組合総連合会
・第16回 7月15日(木) 日本弁護士連合会
【結果概要】
・第1回(令和3年2月19日)
佐賀県鳥栖市市民環境部市民協働推進課
下川 有美 氏
(意見のポイント)
しろまる やさしい日本語について,外国人とのコミュニケーションを容易とする
ためのツールとして普及させ,国のホームページでも活用すべき。
しろまる 地域での日本語教室には,講師・スタッフの確保等が課題。継続的な人
材育成が必要であるため,国においても取組を行ってほしい。
しろまる 多文化共生のまちづくりを推進する上で「やさしい日本語」の普及・活
用は不可欠である。外国人とのコミュニケーションがスムーズになれば,
日本人住民も日本にいながら外国の文化や風習等を知ることができる。
しろまる 多文化共生事業や日本語教室事業は,日本人住民のためにもなる。
・第2回(令和3年2月22日)
NPO法人国際活動市民中心(CINGA)
新居 みどり 氏
(16)
(意見のポイント)
しろまる 外国人住民に接する役所等の職員に外国人への苦手意識があるため,外
国人とのコミュニケーションを容易にするツールとして「やさしい日本語」
の周知や研修が必要。
しろまる 日本語教育については,外国人本人が地域で自立して生きていくための
日本語を習得できる体制整備が必要。
しろまる 外国人在留支援センターにおいて,中間支援(最前線で支援に当たって
いる地方自治体や国際交流協会への支援)をしてもらいたい。
しろまる 在留外国人に日本語教育を受けるための動機付け(日本語学習と在留資
格の連動)が必要。
しろまる 日本語教育の人材育成については,初等教育における人材育成が重要。
・第3回(令和3年3月5日)
株式会社オリジネーター,一般社団法人外国人雇用協議会,一般社団法人国際人流振興協会
工藤 尚美 氏
(意見のポイント)
しろまる 企業は外国人材に非常に高い日本語能力を求めがち。受け入れる日本人
側も,ノンネイティブの日本語に慣れていくことが重要。
しろまる 日本語学習の動機付けのためには,個々人にとって必要な日本語が何か
を明らかにすることが重要。例えば仕事で使用する専門用語,買い物で知
っていた方がよい日本語等を教えていくとモチベーションが高まる。
しろまる 日本語教育を担う人材については,待遇などの問題で長期的なキャリア
形成が難しいという側面がある。どんな日本語学習者や日本語教育機関が
あるのか,可視化していくべき。
しろまる 来日した外国人を対象として,国が日本語教育を行う制度があった方が
よい。また,日本で生活していく上で必要となる語学以外の周辺情報を提
供するオリエンテーションのような国の仕組みがあった方がよい。
しろまる 行政の取組があっても外国人がその情報にたどり着けず,活用されてい
ない。SNS等で周知する努力が必要。
・第4回(令和3年3月9日)
日本行政書士会連合会
水野 晴夫 氏 ほか
(意見のポイント)
しろまる 在留資格上の特例措置等に関する情報発信について,相談を受ける行政
書士の立場からすると,
単に
「運用上こうなります」
とするだけではなく,
その法的根拠も明らかにして発信してほしい。
(17)
しろまる 外国人支援を持続可能な形で成り立たせることに関しては,実績のある
優れたNPOに対する財政的な支援を出入国在留管理庁において検討い
ただきたい。
しろまる 仮放免中の未成年の多くが学校に通っているところ,健康保険がないこ
とによって学校としては非常に神経を使わざるを得ないので,健康保険に
加入できるようにして,他の児童生徒と同じ就学環境を作ってほしい。
・第5回(令和3年3月10日)
ランゲージワン株式会社
カブレホス セサル 氏
(意見のポイント)
しろまる 在留外国人はある程度日本語が分かる人が多いため,通訳のいる医療現
場においても,やさしい日本語で会話して,本人にもある程度内容が分か
るように話すとよいと思う。しかし,やさしい日本語でも本人が間違って
理解する場合があるので,留意は必要。
しろまる 外国人に情報を伝えるには,SNSのほか,国際交流協会などの外国人
が集まる拠点を活用すると効果的ではないか。
しろまる 医療通訳者についてはきちんとした資格があった方がよいという側面
もある一方,そうするとボランティアが困るという側面もある。
しろまる 日本社会で活躍する外国人の子供を増やすには,教育に関して親へよく
説明することが重要。親に奨学金等の支援制度のことが伝わっておらず,
せっかくの支援が活用されていないのではないか。
・第6回(令和3年3月15日)
内定ブリッジ株式会社
淺海 一郎 氏
(意見のポイント)
しろまる 外国人とのコミュニケーションには,日本人も普段意識できていないポ
イント,すなわち言葉の裏にある文化コードや背景知識を言葉にして相手
に伝えていくことが必要。企業のほとんどが日本語ネイティブの日本人と
同等に文化コード等を理解できる外国人を求めており,現場での指導・教
育等においても就業規則等の書きぶりにおいても,そのような対応ができ
ていない。国は,そういった企業の意識を変えていかなければならない。
しろまる 外国人雇用企業を支援する場面で用いる「やさしい日本語」は,言い回
しを簡易にするだけでは不十分であり,上記の文化理解等を補足していか
なければならない。
しろまる 被用者に係る日本語教育の推進は,各行政機関が局所的に対応してもあ
(18)
まり意味はなく,
「入社後の定着」
をゴールとして関係行政機関で共有した
上で,連携をしていかなればならない。
しろまる 外国人雇用企業及び業界団体は,外国人スタッフの定着や戦力化のため,
入社時や入社後の業務に必要となる日本語の基準を示すべき。
・第7回(令和3年3月16日)
一般財団法人自治体国際化協会(CLAIR)
清水 隆教 氏,藤波 香織 氏
(意見のポイント)
しろまる 自治体の情報の多言語化はかなり進んできたが,中には日本人向けの情
報を翻訳しただけのものや背景事情を知らない外国人には理解困難なも
のもある。出入国在留管理庁で作成している生活・就労ガイドブックに関
しても,より分かりやすいものになるよう,外国人の企画委員を導入する
などして,充実させていくとよいのではないか。
しろまる ホスト国としての意識を日本人に喚起させるためには,多文化共生の裾
野を広げる観点から,外国人に向けた多言語情報を,これまでの情報提供
ルート以外のところにも流していく工夫が必要ではないか。
自治体,国際交流協会,多文化共生関係NPO・関係者だけでなく,民
間企業や学校,地域コミュニティ,その他これまで関連のなかった団体に
まで広げていくことで外国人が身近にいて,どんなことに配慮すべきなの
か,既に自分の企業・学校にも外国ルーツの人たちがいることを認識する
ことにつながる。多様な人々への理解が広まるきっかけとすることができ
る。
情報提供に当たっては,多言語だけでなく「やさしい日本語」で情報提
供を進めることが大事である。
「やさしい日本語」
が日本人側に浸透するこ
とで,日本人が外国人と苦手意識なく接することにつながり,例えば地域
での声かけや災害時,自治会活動など,相互に理解するきっかけになる。
しろまる 相談員に関しては,
外国人・日本人問わず,
傾聴スキルやメンタル対応,
ネットワークの蓄積等,誰もが担える仕事ではないことから,資格や認定
制度などによりこれを専門職化し,人材を育成していくことが大事である。
また,相談員が適切に相談を的確な機関につなげられるよう,コーディネ
ーターを相談窓口に置くことが必要である。
コーディネーターの設置により,相談事例の分析・課題抽出,専門的な
研修実施,充実した相談体制のサイクルが可能となり,さらには,有効な
多文化共生施策の企画実施に結び付けることができる。
しろまる 外国人の子供についての対策を進めるに当たっては,教育支援だけでは
なく,母語支援,日本語支援のための人材育成や十分な助成,親に対する
(19)
子供のキャリア形成等への理解や乳幼児期からの保健医療支援,困窮家庭
への支援も含めた生活支援が必要になるなど,自治体内においても複数の
部局にまたがった連携が重要となる。
・第8回(令和3年3月26日)
神奈川県横浜市教育委員会事務局学校教育企画部小中学校企画課
土屋 隆史 氏
(意見のポイント)
しろまる 在留カードに記載されている氏名が正式な名前として扱われるとこ
ろ,卒業証書には正式な名前を記載する必要があるため,在留カードに
漢字併記のない生徒やその保護者から卒業証書に漢字の記載を求められ
ても対応できない。この問合せは毎年数多くあるが,在留カード交付申
請書に中国語訳があれば,申請時の誤解が減少し,トラブルが減るので
はないか。
しろまる 就学の児童生徒については,外国人学校に在籍している者,インター
ナショナルスクールに通っている者,そもそも日本に住んでいない者等
も含まれていることがある。出入国の状況が分からないので教員が個別
に訪問して確認するなどしているが,正確な把握が難しい。
しろまる 今,入学してきた外国籍等児童生徒が学校に良い思い出を持ってくれ
れば,将来的に日本の良き理解者になってくれる。どの国の保護者も子
供の教育に関心がない人はいないのだから,子供を学校に安心して預け
ることができる環境づくりは重要。
・第9回(令和3年3月26日)
静岡県浜松市教育委員会学校教育部指導課教育総合支援センター外国人支援グループ
櫻井 敬子 氏
(意見のポイント)
しろまる 日本語指導の必要な児童の支援において重要なのは,児童の母語や母文
化を大切にする環境づくり,自分で学習する力の育成,そして夢や希望を
持つことができるような指導。
しろまる 浜松市の就学ガイダンスでは日本語能力,前学校の状況,発達障害等診
断の有無,宗教等あらゆることを聞き取り,支援にいかしている。国ごと
に学校制度が異なることから,就学ガイダンスにおいて日本の学校制度を
説明することは重要。
しろまる 在留資格のない子供は相談に来ないと把握できないため,自治体に転入
してきた時に追跡できるシステムがあるとよい。
しろまる 日本生まれの外国籍の子供が日本語も母語もどっちつかずとなってい
(20)
ることがある。母語を意識して教えないと母語の能力が育たず,親子の会
話ができなくなる。
しろまる 子供は日本の学校に入れば日本語が上達するが,親はそうではないため,
親子で地域社会の中で日本語を学ぶことができるシステムがあるとよい。
・第10回(令和3年3月30日)
NPO法人青少年自立援助センター
田中 宝紀 氏
(意見のポイント)
しろまる YSCグローバル・スクールにおいては主に外国にルーツを持つ子供を
受入れ,
日本語教育等を実施している。
在籍している生徒の多くは 10 代半
ばであり,学齢期を超過した者や,進路未定のまま中学を卒業した者等。
これら 15 歳以上の高校進学希望者や就労希望者の受け皿がほとんどない。
夜間中学では彼らのニーズに合わないのが現状。
しろまる オンライン授業も行っているが,オンラインでできることは当然限りが
あり,特に地域情報は提供することができないため,子供の身近にいる学
校教員や国際交流協会等,地域支援者との連携が不可欠。
しろまる 高校受検に際して,外国ルーツであるものの日本国籍を有している,あ
るいは来日から一定年数が経っているなどの事情により,外国人枠を利用
できない生徒もいる。できるだけ生徒が希望どおりに進学できるよう地域
の高校とも連携しつつ支援をしている。
しろまる 最近は学内奨学金制度を利用する生徒が増え,コロナ禍により生徒の家
庭が経済的影響を受けていると感じる。
しろまる 仮放免中の外国人の子供は非常に不安定な立場にあり,改善が必要だと
感じる。
しろまる 入国前の外国人に行政が十分な情報提供を行うべき。来日のタイミング
やどの自治体に居住するか等により,子供が受検の際に外国人枠を利用で
きない等,生活や進路に大きな違いが生じ得るが,それを認識せずに来日
する人が多い。
令和3年度
・第1回(令和3年4月6日)
一般社団法人kuriya
海老原 周子 氏
(意見のポイント)
しろまる 外国ルーツの若者の悩みは,学力不足,ロールモデルの不在,在留資格
の問題,
経済力の問題等,
複合的な要因によるものであることが多いため,
(21)
それぞれに応じた対応が必要。
しろまる 在留資格「家族滞在」
「公用」をもって在留する若者は奨学金等の支援を
受けられない問題があるため,対象要件の緩和が認められるとよい。
しろまる 外国ルーツの高校生を支援するに当たり,高校教員のみならず,カウン
セラーやソーシャルワーカー等の外部人材を登用し,
「チーム学校」
として
対応することが必要。また,支援の網からこぼれ落ちてしまう若者もいる
ため,学校内外で連携しながら複層的に進むとよい。
しろまる 外国人への情報発信においては,外国人コミュニティの中に入って関係
性を構築する人が必要。また,支援団体や外国人コミュニティのキーパー
ソンとの連絡会議を利用するなどの方策があるとよい。
しろまる コロナ禍を受けて外国人の孤独・孤立は深まったと感じる。国で外国人
の孤立・孤独について実態把握を行い,課題を可視化してほしい。
しろまる 進路未定のまま高校を卒業し,日本語を学びたいが日本語学校は学費が
高くてなかなか入学できないという若者がいるため,ニーズ把握を始めと
し,日本語等支援策を検討してほしい。
しろまる 外国人支援の仕事で経済的に安定した生計を立てることは難しい状況
がある中,高齢化も進んでおり,若手が育っていない。人材確保が課題と
感じる。人件費を補填する等人材を育成する仕組みが必要。
・第2回(令和3年4月8日)
認定NPO法人多文化共生教育ネットワークかながわ(ME-net)
高橋 清樹 氏
(意見のポイント)
しろまる 外国人生徒の日本語能力や教育環境の違いを踏まえた公正な高校入試
制度が必要。また,外国人生徒の個別のニーズに対する特別支援教育を全
国に展開することが必要。
しろまる 外国につながる子供の支援のために,市町村別,年齢別,在留資格別の
詳細なデータに基づく実態把握及び支援方法の検討が必要。
しろまる 多文化化・多様化に対応できる人材を大学や専門学校で育成することが
必要。
しろまる 在留資格「家族滞在」で在留する若者の就職,在留資格変更のために,
彼らが就労できる制度の周知,在留資格の書類手続の簡素化やオンライン
申請の促進が必要。
しろまる 難民認定申請中の子供,オーバーステイの子供や在留資格「家族滞在」
の子供の地位は不安定になりやすいため,彼らのための支援窓口があると
よい。
しろまる 外国人支援における自治体間格差を解消するために,国が自治体とNP
(22)
O等との連携を支援してほしい。
しろまる 国の支援の下,複合的な課題に対応できる多文化ソーシャルワーカーを
各自治体において養成してほしい。
しろまる 外国籍の不就学の子供をなくすために,行政と学校が連携し,学齢期の
子供が来日した段階で学校につなぐ仕組みが必要。
・第3回(令和3年4月9日)
一般財団法人外国人材共生支援全国協会(NAGOMi)
武部 勤 氏,梅田 邦夫 氏,万城目 正雄 氏
(意見のポイント)
しろまる 技能実習制度において,コミュニケーション欠如が失踪など諸問題の主
要因であり,日本語能力検定N5取得を外国人材への入国要件とすべき。
しろまる 在留資格「留学」
「技術・人文知識・国際業務」について,偽造書類対策
として,在留資格審査に際し,主管官庁作成の卒業認定書,成績認定書の
提出を義務化すべき。
しろまる 技能実習機構による監理団体・実習実施者に対する検査と,悪徳業者に
対する処分を強化すべき(人権侵害対策)。しろまる 技能実習生及び日本語学校留学生の借金を適正化すべき。
しろまる コロナ禍を受けて雇止め等の困難に直面している技能実習生について,
監理団体が保護し,事態の更なる悪化を食い止めている点を評価・サポー
トすべき。その上でマッチング支援の拡充等が必要。
しろまる 技能実習生の入国後講習における日本語教育を充実させるべく更なる
支援が必要。
しろまる 来日目的によって外国人が求める日本語は異なる。日本語基礎テストに
上位級を創設するなど,中長期在留する外国人のコミュニケーション能力
を図る試験を用意してはどうか。
しろまる 日本語教育機関や大学に対する実地調査や審査・処分を徹底するため体
制強化が必要。また,これまでの調査・指導実績を公表すべき。
しろまる 日系4世の受入れ制度における日本語能力要件を緩和すべき。
しろまる ドラマ・アニメ・音楽等のコンテンツ輸出を強化し,外国人が日本語に
触れる機会を増やしてはどうか。
しろまる 技能実習生が社会生活上のルール等に関する情報を分かりやすい形で
迅速に入手できるよう,監理団体,実習実施者はもとより,生活指導員,
技能実習指導員も活用すると効果的。
しろまる これまで監理団体,実習実施者等が経験してきた外国人材の健康上のト
ラブルとその対応事例などをノウハウとして共有すると効果的。また,通
訳が同行しないと外国人患者を受け付けない病院などもあるため,オンラ
(23)
インでの通訳対応や医療通訳者の配置を検討してほしい。
しろまる 「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」における防災・気象
情報の周知・普及が特定の在留資格の外国人材を対象としているように読
めるため,全ての外国人が対象となっていることを明確にすべき。
しろまる コロナ禍を受けて解雇され,住居を失った技能実習生等について,公営
住宅等へ入居できるような支援を検討すべき。
しろまる 日系人等定住外国人が直面している高齢化問題について総合的対応策
において現状認識・課題を明らかにし,施策の必要性を検討すべき。
しろまる 各種行政サービスについて外国人が1か所で相談できるワンストップ
相談センターを各地に設置すべき。また,自治体間において共生施策に関
する先進的な取組を共有できる勉強会を定期的に設けるべき。
しろまる 外国人を雇用する企業が関係法令のみならず言語,宗教,慣習等の違い
に起因する様々な問題の発生防止等のためのノウハウを共有できるよう
「外国人雇用管理ハンドブック(仮称)
」を作成し,啓発活動を行ってはど
うか。
・第4回(令和3年4月12日)
桃山学院教育大学
オチャンテ 村井 ロサ メルセデス 准教授
(意見のポイント)
しろまる いじめや差別をきっかけに心に傷を負う外国籍児童は多い。学校におけ
る多文化共生教育,また地域を巻き込む人権教育が必要。
しろまる 母語の継承は重要。幼い頃に日本の学校等で母語を使うことに抵抗を感
じ,母語を使わなくなってしまい,後から勉強し直す若者を沢山見る。こ
れからいっそう多様化が進むであろうことを踏まえ,バイリンガルを励ま
すような環境づくりをできるとよい。
しろまる 高校の特別入学枠など,義務教育後の進路に係る外国人生徒の支援体制
には地域差があるため,地域差の解消が必要。
しろまる 外国人生徒の高校中退の理由は学力,いじめ,経済面など複合的。保護
者が日本の教育制度を理解していないことも理由の一つであり,保護者に
高校進学の重要性を理解させる必要がある。
しろまる 小中学校と比較すると高校は学習支援が不十分。取り出し授業や母語支
援が足りていない。
しろまる 外国人生徒の保護者も不安定な環境にあることが子供に影響している。
彼らを孤立させず,困ったときにどこに相談すべきか分かるような情報を
提供することが必要。
しろまる 外国人の子供の進路やキャリア形成においてロールモデルは重要。身近
(24)
にロールモデルがいないのであれば,オンラインを利用してロールモデル
になる人物と子供たちとの交流を設けられるとよい。
しろまる 外国ルーツの子供も日本社会を担う一員となる。彼らへの支援は将来の
日本への投資になるという共通理解が必要。
・第5回(令和3年4月14日)
NPO法人愛伝舎
坂本 久海子 氏
(意見のポイント)
しろまる 愛伝舎では外国人への情報発信に Facebook の有料広告を利用するなど,
ピンポイントで需要のある外国人に情報が届くよう工夫している。外国人
への情報発信に際してこのような言語別の発信等は効果的。
しろまる 行政が発信する情報は文字量が多い,内容が難しい,通訳・翻訳の質に
疑問があるなどの課題がある。簡潔な情報発信,通訳・翻訳の質の精査が
必要。
しろまる 外国人支援・多文化共生ネットワーク結成や他の協働事業を通じて他の
団体と連携するようになり,支援が深まる,支援について相談できる,共
同して政府に提言できるなどの効果があった。特に,外国人コミュニティ
と連携して当事者の声を直接聞けるようになったことは重要。
しろまる 日本の人口減少が加速する中,外国人との共生に向けた取組は人口問題
と絡めて考えるべき問題。企業等が外国人を社会の構成員として受け入れ
るという認識を持つよう,国において意識啓発をしてほしい。
しろまる 在留外国人が増加する中で,NPO法人等が無償又は単年の事業予算で
支援を引き受ける現状には限界があるため,継続的な予算事業とすること
が必要。
・第6回(令和3年4月16日)
東京外国語大学
小島 祥美 准教授
(意見のポイント)
しろまる 外国人児童の不就学解消のため外国人教育に携わる業務を自治体で「職
務」として位置付けてほしい。
しろまる 学校が外国人児童の国籍や状況を正確に把握していないことがある。文
部科学省が行う「学校基本調査」における「学校調査票」の項目に「学年
別・国籍別」を加え,
「不就学学齢児童生徒調査」の対象とすべきである。
しろまる 公立高校入試における外国人生徒の入学枠や特別措置の有無には地域
間格差があり,生徒の進路を大きく左右するため,格差の是正が必要。
(25)
しろまる 学齢を超過した外国人生徒の学び直し支援を充実させてほしい。特に,
全都道府県・政令都市における公立夜間中学設置は必須。
しろまる 外国(人)学校である中等部を卒業しても,地域によっては公立高校の
受検資格が認められない。これは,学校教育法施行規則における「その他
高等学校において,中学校を卒業した者と同等以上の学力があると認めた
者」の解釈が自治体によって異なるためであり,解釈の統一化を図ってほ
しい。また,子供の健康・安全確保のため,外国学校に対しても全日制で
集団活動を行うことを前提として学校保健安全法,日本スポーツ振興セン
ター法(災害共済給付)
,学校給食法を適用すべきである。
しろまる 子供が教育を十分に受けられるか否かは,親の生活基盤の安定に左右さ
れる。第三国定住等で行っているプログラムを応用して,日本語を学ぶ機
会を公的に支援するなどし,親の雇用状況の安定を図ってほしい。
しろまる 長期滞在すると判断される外国人の子供及びその保護者に対して,入国
時に就学案内を行い,その追跡を行ってもよいのでないか。
・第7回(令和3年4月20日)
三重県鈴鹿市
山田 昭弘 氏 ほか
(意見のポイント)
しろまる 令和元年度から国際交流協会が主催となり,ボランティアの協力を得て,
夏休み及び冬休み中の外国籍小学生に学習支援を実施している。新学期の
学習に円滑につなげられる等の成果も出ており,鈴鹿市を支える人材育成
の観点からも事業の継続が望ましい。今年度までは独立行政法人福祉医療
機構(WAM)の社会福祉振興助成事業を受けて開催しているが,来年度
以降の運営費用が課題となっているため,今後の財政的援助をお願いした
い。
しろまる 就学前児童に関する独自の取組として,公立保育所にポルトガル語とス
ペイン語の通訳ができるコーディネーターを配置し,相談業務や保護者対
応等を行わせている。私立保育園も,外国籍園児の在籍数が多いところは
通訳の配置,外国籍職員の雇用等を行っている。ただし,このような対応
が可能な園はごく一部であるため,継続的な支援が必要である。
しろまる 鈴鹿市内には日本語教室が3か所あり,全て地域のボランティアが運営
しているが,スタッフの高齢化による人材不足が課題。外国人材雇用企業
から受入れを依頼されることも増えているところ,コロナの影響もあり,
現状のままでは教室運営が困難。企業の責務として雇用している外国人材
への日本語教育を進めてほしい。また,国においては,オンライン学習の
ためのノウハウの教示,学習環境保持のための補助を検討してほしい。
(26)
しろまる 外国人に対する情報発信においては,多言語化が課題。コロナに関連し
て各省庁が多言語で情報を発信しているものと承知しているが,各自治体
が使える情報は引き続き多言語で提供してほしい。
しろまる Facebook 等のSNSを利用した情報発信はコストがかからず,
効果的に
外国人に情報を届けることができるため,外国人散在地域においても活用
可能だと思われる。
・第8回(令和3年4月21日)
一般社団法人日本海外協会
林 隆春 氏
(意見のポイント)
しろまる 1990 年の入管法改正を受けて多数の日系人が労働者として入国したが,
その後のバブル崩壊と企業のコストカット等により,社会保障等の対象か
ら漏れてしまった。この世代は3〜5年後に介護を要する年齢になるため,
老人ホーム等のニーズが出てくると思われ,対応が必要である。
しろまる 現在高齢の日系人の中には帰国して老後を過ごすことを希望するもの
の,家族・親族が日本にいる,日本と比して本国の福祉制度が脆弱等の理
由により帰国しない(できない)状況にある人が多い。
しろまる 現在支援をしている日系人の中には自分の雇用状況
(直接・間接,
正規・
非正規など)を理解していない人が多い。コロナ禍を受けて出勤日を大幅
に減らされている事例も多く見る。これらの人々は解雇されていないため,
各種支援の対象として把握されていない。
しろまる 生活保護を始めとする公的支援は全て申請主義のため,そもそも申請の
方法が分からずに支援を受けられない人が多い。
しろまる 火葬の習慣がない,遺骨を自宅で預かりたがらない等,葬儀を巡る考え
方は国によって違うため配慮が必要。
しろまる 日本海外協会の行った知立団地の全室調査のように,リアルな巡回調査
による実態把握が必要。
しろまる リーマンショック後の雇用整理や帰国支援事業により外国人コミュニ
ティのメンターが帰国し,コミュニティ全体が深刻な打撃を受けた。コミ
ュニティのリーダー不在は深刻な問題。
しろまる 相談会,フードバンクなどの支援活動を数多く行っているが,現場でし
か分からない現状があるため,行政の人も現場を見に来てほしい。また,
外国人の話を根気よく聴いてほしい。
・第9回(令和3年5月10日)
NPO法人神戸定住外国人支援センター(KFC)
(27)
福山 恵 氏,フフデルゲル 氏
(意見のポイント)
しろまる 2000 年の介護保険制度開始後,
制度に対する誤解や文化的な違いのため,
制度を利用しようとしない外国人高齢者が多かったことから,
「ベトナム
人交流会」等の機会を利用して外国人高齢者に制度を説明し,利用を促し
た。
しろまる 外国人高齢者は在留期間更新の手続を失念することが多く,手続のため
に出かけるのも大変である。高齢者については5年間の在留期間を認める,
在留カードの更新を不要とするなどの措置をとってほしい。
しろまる 言葉や文化の壁のため,外国人住民はそもそも行政サービスの存在を知
らずに利用できないことが多い。外国人住民が行政サービスをより利用し
やすいように工夫が必要である。特に行政サービスを理解しており,通訳
を介さず直接会話のできる職員を配置してほしい。
しろまる 技能実習生等の外国人労働者についても,住民としてフォローをしてほ
しい。彼らは短期労働者であるとして行政サービスを受けられていないよ
うに思う。
しろまる 中国残留邦人については一世の人口が減り,二世が高齢になりつつある。
一世には法律に基づく国の支援策が多くある一方で,二世にはそれがない
ため,行政において何らかの対応を検討してほしい。
しろまる 外国人高齢者が要介護認定を申請しても,訪問調査等の際に通訳がいな
いと内容を理解できない。さらに,介護保険制度は複雑であり,言語がで
きても外国人高齢者に説明することは困難である。制度を理解しており,
言語もできるようなキーパーソンが必要となる。
しろまる 外国人高齢者の支援に当たっては,認知症等への対応能力のほか,言語
や文化,歴史的背景の理解が必要となる。介護保険サービスにおいて,外
国語対応に単位を認めるべきである。
しろまる 言語の問題のため介護福祉士試験に合格できない,子育てのため正職員
になれないなど,頑張ってもなかなか報われない人がいる。このような人
たちに,来日後に日本語や生活面の知識を学ぶチャンスを設け,試験等に
ついてもサポートをしてほしい。そして,このような人たちに永住の道が
開けるように,永住者の在り方についても検討してほしい。
・第10回(令和3年5月13日)
一般社団法人新経済連盟
佐藤 創一 氏,高橋 芳夫 氏
(意見のポイント)
しろまる 外国人がもたらす多様性はイノベーションの源泉となるほか,人口減少
(28)
への対応という面からも重要。一方で,国際的な人材獲得競争は激化して
おり,日本の魅力を高めていくには,官民双方の取組が重要である。
しろまる 「官」には,何を目指し,どのような外国人を,どのように受け入れて
いくかという基本的なビジョンと戦略性の明確化をお願いしたい。
しろまる また,その「戦略性」をベースに,在留資格制度等の見直し(特に多様
なキャリアパスを可能にするという視点での制度設計)や,外国人の社会
統合政策の更なる推進をお願いしたい。
しろまる 外国人受入れ・共生政策では,企業をはじめ「民」の取組が重要。民間
の積極的取組を支援いただくことで,より効果的な政策の実現が可能とな
る。
しろまる 具体的には,まず移民受入れの基本的な考え方を「移民基本法」として
示すとともに,これに基づいて,受入れ計画や社会統合政策の具体的な目
標設定・KPIによる進捗管理をする必要がある。
しろまる その上で,外国人の多様なキャリアパスを可能にする在留資格制度の構
築が必要である。具体的には,
「特定技能2号」の対象業種の拡大,在留資
格「技術・人文知識・国際業務」から「特定技能1号」に移行する外国人
の家族帯同を認める特例措置の設置,
「特定活動」46 号1
の要件緩和等。
しろまる ×ばつター
ゲットというマトリクス構造で問題を構造化することが必要である。その
ためには,ウェブサイトのレビュー,アンケート調査等により,データを
集める仕組みが必要である。
しろまる この点,ポータルサイトの設置など改善はみられるが,やさしい日本語
や多言語による行政の情報発信について分かりにくい,どこに何があるの
か分からないという声を聞くため,
不断の見直しが必要ではないか。
また,
外国人在留支援センターも一層の周知及びそこで問題が解決するという
信頼の醸成が必要である。
しろまる 個別課題で言うと,住居の賃貸,銀行口座の開設,税金・保険料の納付
など生活に密着したサービスについて,外国人に不親切・不合理な取扱い
が多い。商慣習や行政サービスの見直しが必要である。
しろまる 外国人住民の社会統合政策及び適正な在留管理といった観点から,マイ
ナンバー及びマイナンバーカードは効果的に活用することが可能である。
しろまる 民間における支援については,一部の企業は,外国人従業員の定着や共
生のための日本語教育支援,生活支援,異文化・慣習への配慮等を実施し1本邦大学卒業者が本邦の公私の機関において,本邦の大学等において修得した広い知識,
応用的能力等のほか,留学生としての経験を通じて得た高い日本語能力を活用することを
要件として,幅広い業務に従事する活動を認めるもの。
(29)
ている。税制等を通じて,国がこのような企業の積極的な取組を支援でき
ないか。
しろまる また,
手続のデジタル化に関し,
「オンライン利用率の大胆な引上げに係
る基本計画」を踏まえて,着実に実行に移されていくことを期待する。
・第11回(令和3年5月17日)
宮城 ユキミ 氏
(意見のポイント)
しろまる 外国にルーツを持つ子供の教育・進路は保護者に左右されるところが大
きい。日本の学校制度や授業の内容,学歴が将来に及ぼす影響等について
外国にルーツを持つ子供はもちろん,保護者に対しても情報提供をしてい
くことが必要である。特に,義務教育以降の教育については,義務教育と
比して情報提供が少ないため,改善が必要と感じる。
しろまる 外国にルーツを持つ子供に対する取り出し授業は,学習支援や心のケア
等の面で効果を有する一方,他の科目の学習の遅れなどにもつながり得る
ことから,取り出し授業の対象とする科目を見極めた上で,期限付き等で
実施することが必要だと思う。
しろまる 現在,外国にルーツを持つ子供に対する入学前のプレスクールはあるが,
途中編入の子供にも同様の制度が必要だと思う。それを通じて,学力測定
を行うとともに,日本の学校のルールや学校生活に必要なもの等を伝えて
いくとよいのではないか。
しろまる 勉強はできても日本語がまだできないという子供のために,公立高校に
国際科を設置してほしい。
しろまる 外国にルーツを持つ子供の母語支援はボランティア人材頼みであり,場
所の確保も困難である。行政において,母語を教える人材の経済的支援,
皆が集まれる場所の提供を行ってほしい。
しろまる 日本語教育については,外国人集住都市では盛んに行われている一方,
それ以外の地域ではそうでもないなど,地域によって格差がある。統一的
な教材を作るなどして,日本語教育の機会が平等に与えられるとよいと思
う。
しろまる 外国人向けの行政の情報発信について,やさしい日本語や多言語化も必
要だが,必要な人に届いていないところがあるため,LINE等のSNS
を活用すればより効率的ではないか。
しろまる 外国人に対する差別・偏見は 10 数年前より改善されてきたと感じる一
方,ごみ捨て場が散らかっていると外国人のせいにされる,国籍を理由に
住居の賃貸契約を断られるという話はよく聴く。
しろまる 共生社会の実現のために,特に子供に対して国籍を含む多様性,個性を
(30)
発揮することの重要性等を教えられたらよいと思う。
・第12回(令和3年5月25日)
一般社団法人日本経済団体連合会
堀内 保潔 氏 ほか
(意見のポイント)
しろまる 基本的に,外国人が我が国で円滑に生活・就労するためには一定の日本
語能力が必要であり,そのためにも外国人に対する日本語教育の質的な向
上と教育機会の拡充が必要である。
しろまる 外国人在留支援センター(FRESC)の取組は重要であり,充実させ
るべき。今後は,FRESCにおいて,申請や届出を含めた真のワンスト
ップ化を実現するとともに,入居機関の間のデータ連携やキャパシティ拡
充,また,地方への展開を検討してほしい。
しろまる 外国人の情報源は母国の人のコミュニティ内で発信される情報に偏っ
ていると聞くので,行政の発信する情報を含め,外国人向けの情報発信に
ついては,外国人の受入機関の経験等を踏まえてニーズごとに改善してほ
しい。
しろまる 技能実習生に対する相談窓口の周知が不十分である。
しろまる 日本で働きたいという外国人は減少している。海外在住の外国人に日本
で働くことのイメージを積極的に発信することが必要である。
しろまる いわゆる超高度人材の獲得について,最大の課題は報酬と聞くが,他に
も住居,税率,子女への教育制度などがボトルネックになっている。
しろまる 海外では事実婚,同性婚等,家族の在り方が変わってきており,このよ
うな家族を帯同できないことも人材獲得上の課題と聞いている。
しろまる 年功序列や長期休暇をとりにくい等の日本的慣行が外国人材の企業へ
の定着の阻害要因になっているケースがある。
しろまる 企業においては外国人材の働く現場における人権の尊重,関係法令の遵
守の徹底はもとより,人材が長く日本で活躍できるような環境整備に努め
る必要がある。ダイバーシティ制度の推進,就労環境整備に引き続き取り
組むことが必要である。
しろまる 生活の上で必要な保険,医療,福祉や行政の窓口において高い日本語能
力を求められることが問題になっている。
「やさしい日本語」や「やさしい
英語」の積極的な普及・促進が必要である。
しろまる 共生社会の実現に係る取組に関して,政府全体での連携の促進と司令塔
機能の強化が必要である。出入国在留管理庁の司令塔機能の強化とキャパ
シティの増強をお願いしたい。
しろまる シームレスな支援のためにデータ基盤の整備が必要。マイナンバーカー
(31)
ドと在留カードの一体化,データ連携を可能にすることが必要である。
しろまる 個人情報保護やセキュリティ管理,プライバシーへの配慮は必要だが,
外国人本人がマイナポータルを通じて,就労や生活に関する情報を一元的
に取得できるようになれば,就労,口座の開設,賃貸借契約,在留期間更
新や在留資格変更の手続についても活用可能だと思う。
・第13回(令和3年6月4日)
日伯交流協会
児玉 哲義 氏
(意見のポイント)
しろまる リーマンショック後,日本に居続けた日系ブラジル人の中には,子供達
の教育をしっかりとしないといけないと認識するようになった者もおり,
その子供達は,日本で高校や大学を卒業し,非正規労働ではなく,様々な
職種に就くようになった。この子供達は,ブラジル側との接点が薄れてし
まい,ブラジル離れが起きている。
しろまる 外国人の子供の母語・母文化支援については,浜松市では民間団体がポ
ルトガル語教室を開いている。国が母語・母文化支援していただくことは
ありがたいが,必ずしも国がやる施策ではないと考えている。日本政府の
義務は,全ての子供に日本語を教えることだと思っている。
しろまる 外国にルーツを持つ子供達が,国籍でなく,その実力により,差別なく
日本人と同等の扱いがされる世の中になってほしい。
しろまる ブラジルの大学に進学するためにブラジル人学校で勉強していたとし
ても,ブラジルに帰国しない場合,日本社会で生きていかないといけない
が,日本語教育を受けていないので,勉強はできても日本語が必要ない製
造業等の職種で働くしかないといった事例もある。ブラジル人学校に通う
子供達でも日本社会で生きていくための日本語を学ぶ機会を与える必要
がある。
しろまる 日本語ができることで働ける業種が増えるので,積極的に日本語を覚え
る機会を作ることが必要である。
しろまる 2012 年に日本とブラジルは社会保障協定を結んだが,
人材派遣会社を通
じて雇用されていた日系ブラジル人の中には,年金に加入していなかった
ため,支払い年数を満たさず,日本でもブラジルでも年金の受給がされな
い人が多い。その中の一部の人は,病気等により働けなくなり,生活保護
に頼らざるを得ない状況となっている。
しろまる SNSを利用しない人のために市が人材派遣会社や在日ブラジル人が
集まるところに紙の情報誌を提供しているが,SNSでの情報発信が一番
早く伝わる。
(32)
しろまる 新型コロナウイルスのワクチンについて,自分がいつ受けられるのか分
からない人が多い。いつ誰が受けられるのかという情報を明確に伝えてほ
しい。
しろまる 差別を受けたときに相談できる人がいないこともある。気軽に相談でき
る場所があるとよいのではないか。
しろまる 行政が多文化共生をうたっても,一般市民がそれを理解し,外国人を受
け入れなければ,本当の多文化共生ではない。一般市民の理解を得ること
が重要であり,日本側もオープンな気持ちをもつことが大切なのではない
か。
・第14回(令和3年6月9日)
全国中小企業団体中央会
佐久間 一浩 氏,熊野 祐気 氏
(意見のポイント)
しろまる 外国人であることを理由にアパート等の契約を断られるため,技能実習
生の寮(宿泊施設)の確保に苦慮しているという声が非常に多い。行政に
おいて,管理会社に外国人の入居に対する理解を促す,地域の空き家を技
能実習生に貸し出す,技能実習生も入居可能な住宅を把握して紹介する等
の取組をしてほしい。
しろまる 技能実習生個人の銀行口座開設はハードルが高く,結果的に口座の売買
等にもつながっている。銀行口座開設がスムーズに行われるようにしてほ
しい。
しろまる 外国人にとって自治体の窓口における住民登録の手続は非常に難しく,
時間がかかっている。各国の言葉に精通した通訳の常駐等をお願いしたい。
しろまる 自治体がごみの出し方等を発信してはいるが,外国人にも伝わるように,
多言語のパンフレット等で発信してほしい。
しろまる 行政の発信する情報は,企業を通じて外国人労働者に届くことが多いと
思うので,企業が外国人労働者に流しやすいような形で情報を発信しても
らえるとよいと思う。
しろまる 外国人の就業機会を増やすために出入国在留管理庁において行ってい
るマッチングイベントはよい取組だが,外国人に十分認知されていないよ
うに思う。もっと周知に力を入れた方がよいと思う。
しろまる 既にNPO法人や事業協同組合や企業組合が共生に係る取組をしてい
るが,そのような団体が点在しており,外国人や企業にとって,信頼でき
る団体なのか否か分からない。行政において,団体の名簿等を作成し,こ
れらの団体で構成される全国規模ないし地域規模の組織を作れば,団体を
管理することができるし,団体の情報をシェアしていくことができるので
(33)
はないか。
しろまる 今後も出入国在留管理庁と監理団体・登録支援機関等による意見交換の
場を設けてほしい。
・第15回(令和3年6月29日)
日本労働組合総連合会
仁平 章 氏
(意見のポイント)
しろまる 外国人の情報収集ツールは出身国によって差があるので,情報発信する
際には各国のSNS事情も含めて検討することが必要。また,SNSで情
報を発信する場合,発信した情報が他の情報にどんどん埋もれてしまうの
で,同じ内容であってもこまめに発信していくことが必要。
しろまる 出入国在留管理庁のホームページが様々な言語に翻訳されているのは
よいことだが,最新の情報が日本語のページのみに掲載されているなどの
課題が見受けられる。最新の情報,大切な情報を外国語のページにどのよ
うに反映していくのかについて検討してほしい。
しろまる 行政相談・生活相談のために窓口に来る方は,どの窓口にいけばよいか
分からないことが多く,外国人在留支援センター(FRESC)のように
適切な窓口につないでくれる場所が大切なので,地方も含めて関係省庁間
での連携が必要ではないか。
しろまる 平日に相談窓口に来られない方が相談できる窓口の時間帯や場所を広
く周知することが必要。また,外国人の相談時の通訳について,留学生等
に協力を仰ぐなど、支援者を広げていく取組も必要ではないか。
しろまる 日本で生活する上で一定レベルの日本語は必須だと思うので,職場や地
域で初歩的な日本語を学べるような環境整備が必要。
しろまる 自社で働く外国人に日本語を学んでほしいと思っている企業はあるが,
自治体の行っている日本語教室などの情報提供が不十分。日本語を学ぶ機
会について,積極的に周知し,展開することが必要。
しろまる 外国人が仕事のない休日に受講できる日本語教室や,日本語教室へ通う
ための費用支援などが必要ではないか。
しろまる 外国人が医療を受けやすい体制を整備してほしい。
しろまる 住宅の賃貸について,外国人であるため借りられない等の事例がある。
大家を含め住民への啓発活動,研修の場を作るなど,行政として何かしら
検討をすることが必要なのではないか。
しろまる 外国人に日本の基本的な生活様式等を教える拠点作りも必要なのでは
ないか。
しろまる 妊娠,出産,育児,学校の手続について,母国語で情報が得られて,母
(34)
国語で書類等が作成・提出できるとよい。
しろまる 社会保険について,加入対象となる外国人が加入できるよう,企業への
指導が必要。また,年金の脱退一時金の制度について,事業者と外国人本
人の双方に制度の周知,母国語での手続が可能になるとよい。
しろまる 「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」を省庁横断で作成し
たことはとてもよいこと。総合的対応策の施策が現場でどれくらい進展し
ているか,施策に基づくサービスの提供を受ける側がどのように思ってい
るかを検証しながら続けていくことが必要である。
・第16回(令和3年7月15日)
日本弁護士連合会
関 聡介 弁護士,吉田 朋弘 弁護士
(意見のポイント:関弁護士)
しろまる 日弁連は近時の定期総会等において,1外国人のリーガルアクセス改善,
2外国人相談等の担い手となる弁護士の育成と基盤強化,3法テラス,自
治体,国際交流協会,関係省庁やワンストップセンターとの連携推進等を
宣言・公表しており,実現に向けて各種取組を行っている。
しろまる 外国人事件においては,当事者が弁護士費用や通訳・翻訳費用を負担で
きないケースも少なくないが,法テラスの民事法律扶助制度は住所要件と
在留資格要件があり,当事者が利用できないことが多いため,日弁連が資
金を拠出して制度の空白を埋めている。これは暫定的な対応であり,ゆく
ゆくは法整備をするべきである。
しろまる コロナ禍を受けて,オンラインや電話による外国人事件の相談も増えて
いる。課題は,外国人に対する広報,外国人のアクセスの確保,少数言語
の通訳の確保である。広報の方法として,最近はSNSも活用している。
また,オンライン相談も増えており,アクセス向上に役立っている。少数
言語の通訳の確保方策として,各弁護士会の通訳の確保状況に係る情報共
有が進められつつある。
しろまる 在留資格次第で救われる外国人当事者がいる。そこからこぼれ落ちる者
がいないよう,きめ細かな制度設計と運用をお願いしたい。また,日本の
少子高齢化が進んでいく中で,在留資格がなくともそれ以外に大きな問題
のない外国人を在留特別許可により一定数「正規化」していくことは,合
理的な選択肢だと思われるため,積極的に検討してほしい。
(意見のポイント:吉田弁護士)
しろまる 外国につながる子供が就学を拒否される例があるが,日本語でのコミュ
ニケーション能力の欠如や日本と外国とで学習内容・順序が異なること等
により,相当学年への就学に必要な基礎条件を著しく欠く場合などには学
(35)
年を下げて入学させる,義務教育を修了しないまま学齢を超過している場
合は公立の中学校又は夜間中学に入学させる等の方法により教育の機会
を保障するべきである。また,不就学についての継続的な実態調査が必要
である。
しろまる 外国につながる子供の高校受検について,自治体によって入学特別措置
や特別入学枠があるが,限定的であるため拡充が必要である。
しろまる 外国につながる子供は中退率が高いが,その一因として,卒業後も経済
的理由から進学できない,在留資格との関係から就職できない等,将来を
見通せないことが挙げられる。在留資格「家族滞在」の子供について「定
住者」や「特定活動」への在留資格変更の要件が緩和されたことは大きな
改善だが,
「特定活動」への変更に扶養者(親)の身元保証が必要とされて
いる点等は改善が必要。また,制度の対象となる者も拡大してほしい。
しろまる 外国につながる子供の正確な状況を把握するためにも,在留資格と進路
を結び付けるような統計があるとよい。また,高校進学率や不就学率につ
いては統一的な基準に基づく統計があるべき。
しろまる 高校中退対策として,家庭生活,地域生活なども視野に入れて支援する
必要があり,
学校内外の連携のためスクールソーシャルワーカー
(SSW)
の活用は有効である。SSWに限らず,通訳,母語カウンセリング等,外
国につながる子供に関わる人材確保のための予算措置が必要である。
しろまる 在留資格の問題が絡む児童相談所の相談案件も増えていることから,外
国につながる子供に関わる支援者に対する在留資格等の研修が必要であ
る。
しろまる 子供の在留状況が親の在留資格に従属していることが多くの問題につ
ながっている。DV・虐待等の被害に遭っても,在留資格に影響するため
逃げられない。子供がいざというときに逃げられる制度設計が必要である。
しろまる 就職や奨学金等,在留資格によってやり直しがききにくい制度となって
おり,日本で生まれた子供の将来を閉ざしている。やり直しがきくような
制度設計が望まれる。
以上
(36)
適正な労働条件と雇用管理の
確保、労働安全衛生の確保
適正な労働条件と雇用管理の
確保、労働安全衛生の確保
就労の支援
就労の支援
雇用・労働
ライフステージ・ライフサイクルに応じた支援の現状(総合的対応策)
高齢期(65歳頃〜)
乳幼児期(0〜5歳頃)
学齢期(6〜15歳頃)
青壮年期(16〜64歳頃)
子育て支援
子育て支援
就学の促進、就学状況の把握
就学の促進、就学状況の把握
学校における指導体制の確保・充実
学校における指導体制の確保・充実
教師等の指導力の向上、支援環境の改善
教師等の指導力の向上、支援環境の改善
中学生・高校生等の
進学・キャリア形成支援
中学生・高校生等の
進学・キャリア形成支援
子育て・教育に関する支援
社会保険への加入促進等
住宅確保のための環境整備・支援
医療・保健・福祉サービスの提供環境の整備等
交通安全対策、事件・事故、消費者トラブル、法律トラブル、人権問題、生活困窮等への対応
災害発生時の支援等
・総合的対応策において
「高齢期」の外国人に焦点
を当てた取組は見られな
い。
高齢者に対する支援
外国人は、各々の選択に応じて我が国社会でライフステージを移行しながら生活
例:留学生として来日し数年間就労後帰国する場合、我が国で出生し「高齢期」に至るまで生活する場合
資料 14
(37)
ロールモデルの提示に関する参考事例
静岡県:企業で活躍する定住外国人ロールモデル活躍事例集
三重県:外国人の子どもに向けたキャリアガイド冊子・DVDの作成
大阪府:
OSAKA
多文化共生フォーラムの開催
・府内全市町村の日本語指導が必要な中学生や外国にルーツのある中学生が集い、同じ言語を母語とす
る他校の中学生と出会ったり、他の学校での多文化共生の取組みを知ったりすることを通して、アイ
デンティティを育み、自尊感情を高めることを目的に実施している。
・また、参加者がロールモデルとなる高校生の話や、高校生活に関する情報を聞くことにより、進路に
展望を持つことにつなげている。
https://www.pref.osaka.lg.jp/hodo/index.php?site=fumin&pageId=41826
・外国のルーツを生かしたり、言語や文化の違いを越えたりして、
企業で正社員として活躍している定住外国人をロールモデルとして紹介
・日本語版のほか、子どもの進路選択時に親子で将来のキャリアを考えるきっかけと
なるようポルトガル語、フィリピノ語、スペイン語版も作成
http://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-210/bookdata.html#roll
・三重県や母国で活躍する先輩たちのメッセージを通して、将来の夢をもち、目標
に向かって努力することの大切さを外国につながりを持つ子どもたちや保護者に
伝えるため、DVDと多言語の職業紹介冊子を作成
DVD:やさしい日本語、ポルトガル語、英語、スペイン語、フィリピノ語、中国語冊子:日本語、ポルトガル語、スペイン語、英語、中国語、フィリピノ語に対応
https://www.pref.mie.lg.jp/TABUNKA/HP/73513032706.htm
https://www.pref.mie.lg.jp/TABUNKA/HP/49135032696.htm
資料 15
(38)
外国人雇用の好事例の周知に関する参考事例
経済産業省等:外国人留学生の採用や入社後の活躍に向けたハンドブック
・外国人留学生等の採用や入社後の活躍に向けた取組に際し、企業が特に押さえてお
くべき12項目のチェックリストや企業事例を整理
・「外国人留学生の採用・活躍に向けたベストプラクティス集」において、外国人留
学生等の採用・活躍に向けた特徴的な取組を行う企業を掲載
https://www.meti.go.jp/press/2019/02/20200228007/20200228007-1.pdf
厚生労働省:外国人の活用好事例集
・外国人を雇用している企業約50社を対象とした雇用管理等に関するヒアリング調査
を実施した上で、有識者で構成された研究会において調査結果の分析を行い、好事
例となる取組内容を取りまとめ
https://www.mhlw.go.jp/content/000541696.pdf
経済産業省:新・ダイバーシティ経営企業100選
・ダイバーシティ経営に取り組む企業の裾野の拡大を目的に、女性、外国人など多様
な人材の能力をいかし、企業価値創造につなげている企業を表彰し、受賞企業の取
組みを公表
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen/
資料 16

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