法制審議会第200回会議配布資料 民1
商法(船荷証券等関係)等の改正
に関する要綱案 1
商法(船荷証券等関係)等の改正に関する要綱案 第1部 船荷証券に関する規定の見直し
第1 電子船荷証券記録及びこれに関する基本的な概念
1 電子化された船荷証券の名称を「電子船荷証券記録」とし、電子船荷証券記
録とは、船荷証券に記載すべき事項を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気
的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録
であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)(注1)のうち、特定情報処理システムにおいて作成され、及び管理されたもの
であって、当該電磁的記録が改変されているかどうかを確認することができる
措置その他の当該電磁的記録が運送人又は船長の作成に係るものであることを
確実に示すことができる措置(注2)がとられているものをいうものとする。
2 特定情報処理システムとは、電子船荷証券記録を作成し、及び管理するため
に用いられる情報処理システムであって、電子船荷証券記録の支配及び電子船
荷証券記録の提供に係る事項を適正かつ確実に行うために必要な技術的措置(注
3)がとられているものをいうものとする。
3 船荷証券の占有又は所持に代わる概念として「電子船荷証券記録の支配」を
設け、電子船荷証券記録の支配とは、特定情報処理システムにおいて、特定の
者のみが電子船荷証券記録に記録されている運送品に係る権利(以下「電子船
荷証券記録上の権利」という。
)を有する者として当該電子船荷証券記録を利用
することができる状態にあることをいうものとする。
4 船荷証券の交付又は引渡しに代わる概念として「電子船荷証券記録の提供」
を設け、電子船荷証券記録の提供とは、特定情報処理システムにおいて、運送
人若しくは船長又は電子船荷証券記録の支配に係る権限を有する者が、その指
定する者が当該電子船荷証券記録の支配に係る権限を有する者となるようにす
るための措置(注4)をとることをいうものとする。
5 裏書に代わる概念として「電子裏書」を設け、電子裏書とは、特定情報処理
システムにおいて、電子船荷証券記録に当該電子船荷証券記録の提供をする者
の氏名又は名称及び当該電子船荷証券記録の提供を受ける者(以下「被電子裏
書人」という。
)の氏名又は名称を記録し、当該記録が改変されているかどうか
を確認することができる措置その他の当該記録が当該記録を行った者の作成に
係るものであることを確実に示すことができる措置(注5)をとることをいうも
のとする。
(注1)商法第539条第1項第2号は「電磁的記録」を「電子的方式、磁気的方式その他
人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算
機による情報処理の用に供されるもので法務省令で定めるものをいう。
」と定義し、
その委任を受けた商法施行規則第9条第1項は「商法第539条第1項第2号に規定
する法務省令で定めるものは、電子計算機に備えられたファイル又は電磁的記録媒体
(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で 2作られる記録であって電子計算機による情報処理の用に供されるものに係る記録媒体
をいう。以下同じ。
)をもって調製するファイルに情報を記録したものとする。
」と定
めるが、商法第539条第1項第2号が定める「電磁的記録」についても、
「電子的
方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる
記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。
」という定義
に改めるものとする。
(注2)措置の具体的な内容は法務省令で定めるものとする。
(注3)措置の具体的な内容は法務省令で定めるものとし、法務省令において、1電子船荷
証券記録としての効力を有する電磁的記録を識別することができる措置、2電子船荷
証券記録に記録された情報が変更され、又は消去された場合には、その履歴を記録し、
又は保存する措置、3信頼性を確保するための措置等を定めることを検討するものと
する。
(注4)措置の具体的な内容は法務省令で定めるものとする。
(注5)措置の具体的な内容は法務省令で定めるものとする。 第2 船荷証券の交付に代わる電子船荷証券記録の提供
船荷証券の交付に代えて電子船荷証券記録の提供をする場合について、次のよ
うな規律を設けるものとする。
1 運送人又は船長は、船荷証券の交付に代えて、荷送人又は傭船者の承諾を得
て、電子船荷証券記録の提供をすることができる。
2 荷送人又は傭船者は、受取船荷証券の交付に代えて運送品の受取があった旨
を記録した電子船荷証券記録(以下「受取電子船荷証券記録」という。
)の提供
を受けた場合には、当該受取電子船荷証券記録上の権利を有する者として当該
受取電子船荷証券記録を利用することができないようにする措置と引換えに、
運送品の船積み後遅滞なく船積みがあった旨を記録した電子船荷証券記録(以
下「船積電子船荷証券記録」という。
)の提供をすることを請求することができ
る。
3 商法第757条第1項の規定にかかわらず、受取船荷証券の交付に代えて受
取電子船荷証券記録の提供がされた場合には、荷送人又は傭船者は、船積船荷
証券の交付の請求をすることができない。 第3 電子船荷証券記録の記録事項等
電子船荷証券記録の記録事項等について、次のような規律を設けるものとする。
1 電子船荷証券記録には、商法第758条第1項各号(第11号を除く。)に
掲げる事項(受取電子船荷証券記録にあっては、同項第7号及び第8号に掲げ
る事項を除く。)を記録しなければならない。
2 運送人又は船長は、第2の2に規定する船積電子船荷証券記録の提供の請求
があったときは、船積電子船荷証券記録の提供に代えて、受取電子船荷証券記
録に船積みがあった旨並びに商法第758条第1項第7号及び第8号に掲げる
事項を記録することができる。 3第4 電子船荷証券記録上の権利の譲渡又は質入れ
電子船荷証券記録上の権利の譲渡又は質入れについて、次のような規律を設け
るものとする(注1、注2)。 1 指図式の電子船荷証券記録上の権利の譲渡又はこれを目的とする質権の設定
は、当該電子船荷証券記録に電子裏書をし、譲受人又は債権者に当該電子船荷
証券記録の提供をすることによって、その効力を生ずる。
2 記名式の電子船荷証券記録(当該電子船荷証券記録の支配に係る権限を有す
る者に運送品を引き渡す旨が付記されているものに限る。)及び無記名式の電
子船荷証券記録上の権利の譲渡又はこれを目的とする質権の設定は、譲受人又
は債権者に当該電子船荷証券記録の提供をすることによって、その効力を生ず
る。
3 条件を付した電子船荷証券記録上の権利の譲渡又はこれを目的とする質権の
設定は、無条件とする。
4 電子船荷証券記録上の権利の一部の譲渡又はこれを目的とする質権の設定は、
無効とする。
(注1)1及び2に掲げる電子船荷証券記録上の権利の譲渡及びこれを目的とする質権の設定
については、民法第467条及び第364条の規定等は適用しないものとする。
(注2)その他の記名証券(民法第3編第1章第7節第3款)に相当する類型の電子船荷証券
記録については、電子船荷証券記録上の権利の譲渡等に関する特別の規律は設けないも
のとする。 第5 電子裏書の特例
電子裏書の特例として、次のような規律を設けるものとする。
1 電子裏書は、電子船荷証券記録に被電子裏書人の氏名又は名称を記録しない
こととする方法によってもすることができる。
2 1に規定する電子裏書(以下「白地式電子裏書」という。
)がされたときは、
電子船荷証券記録の支配に係る権限を有する者は、次の各号に掲げる行為をす
ることができる。
一 当該電子船荷証券記録に被電子裏書人として自己の氏名若しくは名称又は他
人の氏名若しくは名称を記録すること。
二 当該電子船荷証券記録に電子裏書(白地式電子裏書を含む。
)をすること。
三 当該電子船荷証券記録に被電子裏書人として自己の氏名若しくは名称又は他
人の氏名若しくは名称を記録せず、かつ、当該電子船荷証券記録に電子裏書
をせずに当該電子船荷証券記録の提供をすることにより、当該電子船荷証券
記録上の権利を譲渡し、又はこれを目的とする質権を設定すること。
3 被電子裏書人の氏名又は名称を記録せずに電子船荷証券記録の支配に係る権
限を有する者に運送品を引き渡すべき旨が付記された電子裏書は、白地式電子
裏書と同一の効力を有する。 第6 運送品の引渡請求 4電子船荷証券記録上の権利を有する者は、当該電子船荷証券記録上の権利を有
する者として当該電子船荷証券記録を利用することができないようにする措置と
引換えでなければ、運送品の引渡しを請求することができないものとする。 第7 電子船荷証券記録に関する規定の整備
電子船荷証券記録について、商法第3編第3章第3節の規定のうち船荷証券に
関するもの(同法第757条、第758条及び第765条から第767条までを
除く。
)及び民法第3編第1章第7節の規定(同法第520条の2、第520条の
3、第520条の8(第520条の18及び第520条の20において準用する
場合を含む。)、第520条の11(第520条の18及び第520条の20にお
いて準用する場合を含む。)、第520条の12(第520条の18及び第520
条の20において準用する場合を含む。)、第520条の13及び第520条の1
9を除く。
)を準用し、又はこれらの規定と同様の規律を設ける等の所要の整備を
するものとする。 第8 電子船荷証券記録と船荷証券の転換
1 船荷証券から電子船荷証券記録への転換
船荷証券から電子船荷証券記録への転換について、次のような規律を設ける
ものとする。
(1) 船荷証券が交付された場合には、当該船荷証券を交付した運送人又は船長は、
当該船荷証券の所持人(当該船荷証券が、裏書によって、譲渡し、又は質権
の目的とすることができるものである場合にあっては、裏書の連続によりそ
の権利を証明した者(裏書がされる前であるときは、荷送人又は荷受人)に
限る。以下同じ。
)の承諾を得て、当該船荷証券を電子船荷証券記録に転換す
ることができる。この場合において、当該船荷証券を交付した運送人又は船
長は、当該船荷証券(数通の船荷証券が交付された場合にあっては、その全
部)と引換えに、電子船荷証券記録に当該船荷証券の記載と同一の内容とな
る事項(注1)を記録し、当該船荷証券の所持人に当該電子船荷証券記録の提
供をしなければならない。
(2) (1)の規定による転換として電子船荷証券記録の提供がされた場合((1)の船荷
証券に裏書がされる前であるときを除く。)には、(1)の規定により当該電子
船荷証券記録の提供を受けた者までの電子裏書の連続があるものとみなす。
(3) (1)の規定による転換として提供された電子船荷証券記録に(1)の規定により当
該電子船荷証券記録の提供を受けた者としてその氏名又は名称が記録された
者は、(1)の規定により当該電子船荷証券記録の提供を受けた者と推定する(注
2)。
(注1)同一の内容となる事項の具体的な内容は法務省令で定めるものとする。
(注2)(1)の規定により当該電子船荷証券記録の提供を受けた者としての氏名又は名称に
ついては、任意的記録事項とし、(1)の「当該船荷証券の記載と同一の内容となる事
項」には含めないことを検討するものとする。 52 電子船荷証券記録から船荷証券への転換
電子船荷証券記録から船荷証券への転換について、次のような規律を設ける
ものとする。
(1) 電子船荷証券記録の提供がされた場合には、当該電子船荷証券記録の提供
をした運送人又は船長は、当該電子船荷証券記録の支配に係る権限を有する
者(当該電子船荷証券記録上の権利が、電子裏書及び当該電子船荷証券記録
の提供によって、譲渡し、又は質権の目的とすることができるものである場
合にあっては、電子裏書の連続によりその権利を証明した者(電子裏書がさ
れる前であるときは、荷送人又は荷受人)に限る。以下同じ。)の承諾を得
て、当該電子船荷証券記録を船荷証券に転換することができる。この場合に
おいて、当該電子船荷証券記録の提供をした運送人又は船長は、当該電子船
荷証券記録上の権利を有する者として当該電子船荷証券記録を利用すること
ができないようにする措置と引換えに、船荷証券の一通又は数通に当該電子
船荷証券記録の記録と同一の内容となる事項(注1)を記載し、当該電子船荷
証券記録の支配に係る権限を有する者に当該船荷証券(数通の船荷証券があ
る場合にあっては、その全部)を交付しなければならない。
(2) (1)の規定による転換として船荷証券の交付がされた場合((1)の電子船荷証券
記録に電子裏書がされる前であるときを除く。)には、(1)の規定により当該
船荷証券の交付を受けた者までの裏書の連続があるものとみなす。
(3) (1)の規定による転換として交付された船荷証券に(1)の規定により当該船荷証
券の交付を受けた者としてその氏名又は名称が記載された者は、(1)の規定に
より当該船荷証券の交付を受けた者と推定する(注2)。
(注1)同一の内容となる事項の具体的な内容は法務省令で定めるものとする。
(注2)(1)の規定により当該船荷証券の交付を受けた者としての氏名又は名称については、
任意的記載事項とし、(1)の「当該電子船荷証券記録の記録と同一の内容となる事項」
には含めないことを検討するものする。 第9 電子船荷証券記録の提供請求権
船荷証券の返還請求権に相当する電子船荷証券記録の提供請求権及び電子船荷
証券記録上の権利に対する強制執行がされた場合における電子船荷証券記録の提
供請求権について、次のような規律を設けるものとする。
1 電子船荷証券記録上の権利を有する者は、当該電子船荷証券記録の支配に係
る権限を有する者に対し、当該電子船荷証券記録の提供を請求することができ
る。
2 電子船荷証券記録上の権利に対する強制執行がされた場合における債権者も
1と同様とする。 6第2部 その他の規定の見直し
第1 複合運送証券
複合運送証券について、次のような規律を設ける等の所要の整備をするものと
する。
運送人又は船長は、船積みがあった旨を記載した複合運送証券又は受取があっ
た旨を記載した複合運送証券の交付に代えて、荷送人の承諾を得て、船積みがあ
った旨を記録した電子複合運送証券記録又は受取があった旨を記録した電子複合
運送証券記録を荷送人に提供することができる。 第2 倉荷証券
1 倉荷証券について、船荷証券に関する規定の見直し(第1部)と同様に、電
子倉荷証券記録及びこれに関する基本的な概念、倉荷証券の交付に代わる電子
倉荷証券記録の提供、電子倉荷証券記録の記録事項等、電子倉荷証券記録上の
権利の譲渡又は質入れ、電子裏書の特例、寄託物の返還請求、電子倉荷証券記
録と倉荷証券の転換並びに電子倉荷証券記録の提供請求権に関する規律を設け
る等の所要の整備をするものとする。
2 電子倉荷証券記録について、商法第2編第9章第2節の規定のうち倉荷証券
に関するもの(同法第600条、第601条及び第608条を除く。
)及び民法
第3編第1章第7節の規定(同法第520条の2、第520条の3、第520
条の8(第520条の18及び第520条の20において準用する場合を含
む。)、第520条の11(第520条の18及び第520条の20において準
用する場合を含む。)、第520条の12(第520条の18及び第520条の
20において準用する場合を含む。
)第520条の13及び第520条の19を
除く。
)を準用し、又はこれらの規定と同様の規律を設ける等の所要の整備をす
るものとする。
(注)商法第603条(寄託物の分割請求)に相当する規律については、既に電子倉荷証券
記録の提供がされている場合においては、寄託物の分割請求をするときに、その各部分
に対応する電子倉荷証券記録の提供を請求する権利を認める一方で、その各部分に対応
する紙の倉荷証券の交付を請求する権利は認めないものとする。また、商法第608条
(倉荷証券の再交付)に相当する規律については、これを設けることも検討する。 第3 所要の整備
その他所要の規定を整備するものとする。
以上

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