1あかれんが 2024年 特別号
連続テレビ小説「虎に翼」で主人公を演じる
伊藤沙莉さんにインタビュー!
女性法曹の「パイオニア」として知られる三み淵
ぶち
嘉子
よ し こ
さんを
主人公のモデルとしたテレビドラマがはじまります
三淵嘉子さんは、日本で女性初の弁護士、判事、裁判所長となった女性です。
当時、女性が法律を専門的に学べる ほぼ唯一の学校であった明治大学専門部女子部 2あかれんが 2024年 特別号
法科を経て、明治大学法学部に入学。昭和13年、大学を卒業し、中田正子、久米愛
とともに高等試験司法科(現在の司法試験)の初の女性合格者となりました。修習後
に弁護士となり、その後、司法省(現在の法務省)の民事部(現在の民事局)で勤務
された後、最高裁家庭局の局付などを経て、 昭和24年、東京地裁民事部判事補に任
用されました。後に、女性初の裁判所長として、家庭裁判所所長を歴任しました。
この度、法務省だよりあかれんが編集部は、この4月から始まる三淵嘉子さんを 主
人公のモデルとしたNHKの連続テレビ小説「虎に翼」 で主人公の猪爪寅子を演じる
伊藤沙莉さんにお話を伺う機会を得ました。 法服を思わせる全身真っ黒な衣装で現れ
た伊藤さん。
当方が「法務省です!」と名乗ると、いたずらっぽく首をすくめ、周囲の笑いを取
り、ちょっと緊張感を見せながらも、真剣に、この役や作品への思いを語ってくださ
いました。
弁護士法の改正により女性が高等試験司法科(現在の司法試験)を受けられるよう
になったのが昭和11年(1936年)
。三淵嘉子さんが司法試験に合格した昭和13
年(1938年)は、まだ女性に選挙権すらなかった時代です。
三淵さんが法学部で法律を勉強すると言うと、高等女学校の女性教師が「おやめに
なった方がよろしいですよ。お嫁のもらい手がありませんよ」と述べ、母親が「娘は
嫁に行けなくなった」
と泣き出したとか。
そんな時代に弁護士を目指した三淵さんは、
まさに女性法曹のパイオニアです。
伊藤さんはこう語ります。
「本当に長い戦い。自分の前に道がないということが全て
で、そこに道を作っていく。切り開いていく。これがどれだけ大変なことなのか、演
じてみて、強く感じられました。」伊藤さんは、寅子が法律の道を進み、様々な困難にぶつかる中で「 こんなこと言わ
れちゃうんだ」、「こんな扱いなんだ」と強い衝撃を受けたそうです。と同時に、寅子
は「力強く生きて、誰かを救いたい。それ以上に次の(世代の)人のことを考えてい
る人」と語ります。
伊藤さんは、寅子のモデル三淵さんにお仕えした元家庭裁判所調査官の方とお話を
する機会があったそうで、三淵さんの魅力あふれるエピソー ドをたくさんお聞きにな
ったそうです。
「三淵さんのような人がいたから今がある。三淵さんがいたから、女性
女性法曹のパイオニアとして 3あかれんが 2024年 特別号
達が法曹界に出ていくことができた。それを楽しく伝えられると良いな」と、目を輝
かせました。
寅子は、ドラマのストーリーが始まる戦前当時から、現代では女性にとって当たり
前の権利を持っていなかったことに
「なんで?なんで?」
と率直な疑問を抱いており、
それが寅子の原動力となっていたと伊藤さんは語ります。
伊藤さんご自身、寅子を通じ、当時の女性たちの前に立ちはだかっている「壁」に
ぶつかると「だって、それって変じゃん?」と直感的に感じ、違和感はなかったそう
で、
「寅子の疑問はいつも自分にもリンクしている」と述べ、すっかり寅子と一心同体
になっているようでした。
伊藤さんは、寅子を演じる中で法律についても考えるようになったとのこと。
「法律
というものは、自分の中で『 当たり前にあるもの』と感じていた。ただ、法律にも成
り立ちがあって、寅子のように、法律に疑問を持って、法律がおかしいと戦ってきた
人がいて、それが少しずつ変わっ ていって、今がある」、「私たちが、そうやってでき
てきた法律に守られていることに、感謝やありがたみを感じる。
」と語ります。
伊藤さんは、今回、寅子を演じるに当たって、たくさんの参考文献や資料を読むば
かりでなく、三淵さんが通ったのと同じ明治大学法学部で数回講義を受けたそうです。
「大学には行った事がなかったので、楽しかった!」とのこと。
「当時の法律を知ることで、寅子が抱えている悶々とした気持ちを作ることができ
たのでありがたい時間でした。
」と語りました。
伊藤さん自身は裁判官に合っていると思うか尋ねると、
「合ってません!」ときっぱ
「なんで?」
「なんで?」が原動力
私たちは「法律」に守られている
裁判官の仕事について
裁判官や弁護士を演じるためにどのような準備をしてきた? 4あかれんが 2024年 特別号
り(笑)。「裁判官は、中立な立場にいるじゃないですか?公平に中立に見て、何が正しいか
を判断する人。私は感情的な人間なので、話をろくに聞きもせず『いや、 この人が確
実に悪い!』とかやっちゃいそう!(笑)」伊藤沙莉さんはインタビューの最後に「法律に携わっている方々が見ても、違和感
がないように、
『よく描いている』と思ってもらえるようにしたい」と意気込みを語り
ました。
今回のインタビューを通じて、伊藤沙莉さんが寅子を演じることで、法律の重要性
や法曹の仕事について、色々と考えを深めてくださったことが伝わってきました。
そんな伊藤沙莉さんが演じる弁護士・裁判官。とても楽しみですね!
このドラマを見た多くの皆さんが、
「法」に関心を持ったり、裁判官・検察官・弁護
士などの法曹のお仕事に少しでも興味を持ってくださったら嬉しいです。
おわりに 5あかれんが 2024年 特別号
法務省の赤れんが棟にある法務史料展示室の特別展示室では、現在、
「近代の法 曹」
をテーマとして、明治初期から昭和まで、法
曹界に名を残した5名の人物にスポットを当
て、その事績をたどるとともに関連する史料
を紹介していますが、その中の1人がこのド
ラマの主人公のモデルである三淵嘉子さんです!とても柔和な笑顔の三淵さんの写真パネル
も展示されていますよ。
ぜひ、この機会に法務史料展示室にお越し
ください!
(参考文献)
三淵嘉子と家庭裁判所 日本評論社 清永聡編著
法務史料展示室 企画展示「近代の法曹」展示パネル
伊藤沙莉さんのインタビューについては、
6月に発刊予定の本誌85号にも掲載する予定
です。お楽しみに!
コラム 〜法務史料展示室の企画展示「近代の法曹」〜
写真は法務省ホームページより

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