法制審議会
担保法制部会
第34回会議 議事録
第1 日 時 令和5年6月13日(火) 自 午後1時29分
至 午後6時03分
第2 場 所 法務省第1会議室
第3 議 題 担保法制の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(3)
第4 議 事 (次のとおり)
- 1 -
議 事
しろまる道垣内部会長 予定した時刻になりましたので、法制審議会担保法制部会の第34回会議
を開会いたします。
本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
本日は結構リアルの出席の方も多いのですが、私としては出席の圧力を掛けているつも
りでは全然ありません。しかし、来ていただくと楽しいなという感じはいたします。
本日は衣斐さんが御欠席ということで、あと、加藤さんと村上さんが途中退席の予定で
あると伺っております。
事前に事務局から連絡がありましたとおり、今回から会議の終了時刻を、申し訳ござい
ませんけれども、18時までとさせていただきたいと思います。皆さんお忙しい中、本当
に恐縮ではございますが、必要に応じて途中退席をしていただければと思います。
また、前回の部会後に委員等の交代がございましたので、御報告を致します。小田委員
が退任され、新たに市原さんが委員に就任されました。簡単な自己紹介をお願いいたしま
す。
(委員の自己紹介につき省略)
しろまる道垣内部会長 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
まず、配布資料の説明をしていただきます。事務当局からお願いいたします。
しろまる笹井幹事 本日から少し長くなりますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
事前に部会資料31「担保法制の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討
(3)」をお送りいたしました。これについては後ほど審議の中で事務当局から御説明い
たします。また、直前となりましたが、部会資料29-3をお送りいたしました。部会資
料29-3は、パブリック・コメントとして頂いた御意見のうち中間試案第11から第1
5までを対象としており、中間試案第16以降につきましては次回以降、部会資料29-
4以下として随時送付いたします。
さらに、伊見委員から資料の提出を頂きましたので、これを委員等提出資料34-1、
34-2としております。これにつきましては、後ほど伊見委員から御説明を頂く予定で
す。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございます。
それでは、審議に入りたいと思うのですが、まずは前回配布いたしました部会資料30
「担保法制の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(2)」の積み残し部分に
ついて議論を行いたいと思います。部会資料30の「第4 複数の担保権が競合する場合
の優劣に関する規律」まで議論をしたと認識しておりますので、「第5 動産・債権譲渡
登記制度の見直し」から議論を開始したいと思います。事務当局において説明をお願いい
たします。
しろまる森下関係官 第5は動産・債権譲渡登記制度の見直しについての提案です。
1では、新たに登記できることとする事項等について提案いたしております。具体的に
は、譲渡担保権者の変更、転譲渡担保、順位の変更などを新たに登記できることとしてい
ます。なお、中間試案では、これらを登記するための目録を新たに設けるかどうかについ
て提案しておりましたが、パブリック・コメントでは、転譲渡担保のように他の譲渡登記
との関係が問題とならないものについては付記登記方式とし、順位の変更のように他の譲
- 2 -
渡登記と関連するものについては目録方式とするなど、性質に応じて使い分けることも考
えられるとの意見もありました。そこで、本文では新たに登記できることとする実質的内
容のみを記載することとしています。
2は、留保所有権について登記できることとし、その効果を引渡しがあったものとみな
すこととするもので、中間試案から変更はございません。
3は、動産譲渡登記の動産の所在によって特定する方法の要件についての提案になりま
す。【案5.3.1】は、動産の保管場所の所在地の要件を維持しつつ、例えば所在地につい
て評価的な概念による特定を認めることとするなど、特定の方法を柔軟化する運用上の見
直しを行うという提案になります。これに対して【案5.3.2】は、動産の保管場所の所在
地の要件を撤廃し、特定方法については当事者の任意に委ねることとするものです。【案
5.3.2】による場合は、当事者が申請した内容を基本的にはそのまま登記するといった運
用が想定されます。
4は、登記をすることができる譲渡人を商号登記をした商人に拡大することについて、
見送ることを提案するものです。これは、個人商人について譲渡登記を利用するニーズは
それほど大きくないと考えられること、また、現行の商業登記制度では特定の個人につい
て複数の商号登記が認められているなど、自然人について譲渡人検索によって譲渡登記の
有無を適切に検索することが容易でないことなどを理由とするものです。
以上について御審議をお願いいたします。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございました。伊見さんから提出していただいております委員
等提出資料34-1、34-2というのがこの動産・債権譲渡登記制度の見直しに関連い
たしますので、この段階で伊見さんの方から御説明をお願いいたします。
しろまる伊見委員 ありがとうございます。司法書士の伊見でございます。まずは、昨日直前にな
りまして委員等提出資料ということで配布をお願いさせていただきまして、大変お手間を
お掛けいたしました。また、本日も先んじて発言をさせていただくということで大変恐縮
をしております。資料を2点出させていただいておりますが、その内容の御説明に併せま
して、今御説明を頂きました第5の登記に関する論点全体についても併せて発言をさせて
いただければと思います。
まず、この登記の見直しについてでありますが、中間試案におきましては登記制度の見
直しについて、付記する案と関連担保目録を作成するという二つの案が出ていたところで
ありますけれども、今回お示しいただきました部会資料30の提案においては、いわゆる
2層目の登記につきまして、目録又は記録欄を設けるとしまして、実務上のニーズと公示
の分かりやすさや適切さといった観点から、実質的にいかなる機能を持たせるべきかにつ
いて検討を進めていただいたものと理解をしております。そのため、本文の1、2につき
ましては基本的に提案の方向性に賛成するものでございます。
そして、そのことを前提にしまして、今後の検討におきましては、登記制度の具体的な
イメージを共有しながら進めていくのがよいと考えましたため、作成したのが資料34-
1という位置付けになります。皆さんの御認識と一致していない点というのも多々あろう
かと思いますけれども、不一致を確認することにも意義があると思い、お出しするもので
ございます。
担保目録等導入のためのイメージ図という横置きのものを御覧いただけますでしょうか。
- 3 -
こちらのイメージ図の構成ですけれども、まず一番左側から1層ということで、これは現
行の登記ファイルの記載内容をそのまま書いたものになっております。右の方に進んでい
ただきまして、第2層ということで、こちらが今回の部会資料の方で御提案を頂いていま
す、新設される担保目録等ということを資料の中から読み込んで、このようになるのでは
ないかということで考えたものになっております。
このイメージ図を作るに当たりましての想定の事例でありますが、甲商事という譲渡人
がいまして、それぞれ上から順にA銀行、B銀行、C銀行というふうに動産譲渡担保の登
記がされているというものになっております。
担保目録等の記載事項についてという右側の部分になりますけれども、部会資料により
ますと、第5の1(2)のア、イ、ウ、エという四つが示されておりまして、この四つの
うち、まずアとイについては、関連付けとは関係なく、各譲渡登記にひもづけがされるべ
き事項というふうな切り分けができると思いました。一方でウとエにつきましては、関連
付けをした上で複数の登記にひもづけがされるべき事項と考えられると思います。その上
で、複数の譲渡登記に共通するものにつきましては、一番右のところを見ていただければ
と思いますけれども、登記番号0001のA銀行を譲受人とする登記、それから、登記番
号0002のB銀行を譲受人とする登記を関連付けて、そこで順位変更の合意があった旨
というのが記録されるというふうな理解を整理させていただいたところであります。一方
でC銀行の登記につきましては、関連付けというのがなされませんので、一番右の記載は
当然なされないということになろうかと思います。
このことは、最後、証明書の範囲というところにも関係してくると思いました。イメー
ジ図の一番下のところにしろまる×ばつで表示をさせていただいているところでありますけれども、
登記事項概要証明書という誰でも取得できる証明書のところにおきまして、一番右の事項
と、一つ飛ばしまして3番目の事項、そして4番目の関連する事項というものが記載をさ
れてくるという想定をしております。これがイメージ図の方の説明ということになります。
続きまして、もう1点の資料であります34-2についてでありますけれども、これは
部会資料の第5の3に関連する部分であります。検討メモというタイトルでお出しをさせ
ていただいております。
まず、1としまして、現在の登記実務上、場所による特定の在り方が限定的であること
に起因する不具合の例をお示しさせていただいております。例1といたしましては、原始
的に所在地による特定が困難と思われるものであります。例2につきましては、後発的に
保管場所が移動があった際に、それに対応ができないという問題点をお示ししたものにな
っております。
部会資料の方の2案のうち【案5.3.2】のように、種類以外の特定事項を全くの任意と
してしまって、申請されたものをそのまま登記するという案につきましては、登記の内容
が余りにも不明確になりますし、当事者や第三者の判断リスクが高まるということで、取
引の安全にも影響することが懸念されると考えております。本部会のこれまでの審議にお
きましても、前回取り上げた登記優先ルール、占有改定劣後ルールに関して、動産譲渡登
記において対抗要件を具備した譲渡担保権を、それ以外の方法、占有改定以外の引渡しも
含めて、対抗要件を具備した譲渡担保権に優先をさせようといった考え方もあり得るとい
う趣旨の御発言もあったと記憶をしており、私もその考えに賛同するものでございますが、
- 4 -
いずれにしても、少なくとも今よりも登記の機能や担うべき役割が増す方向での検討が進
められているということを勘案しますと、登記制度が不安定になるということは避けなけ
ればならないと考えております。
そこで、【案5.3.2】のように動産の所在要件をなくしてしまうのではなく、この検討
メモの1の例1や例2で示したような不具合についてカバーができるような所在の特定方
法を許容する方向で、具体的に困難が生じている範囲内で緩和をしていくのが穏当である
ということで、【案5.3.1】がよろしいのではないかと考えております。
次に、緩和の方向性の検討を試みたものが次のページの2の例ということになってござ
います。1でお示しした例1の困難事例の対応としまして、現状の動産譲渡登記の扱いに
おいて、例えば土地の筆数が多い場合に、所在地として代表地番を記載した上で備考欄に
有益事項として保管場所の名称を記載するということが特定として足りるという運用がな
されています。これを更に拡張しまして、必ずしも所在地番によらずとも、例えば店舗と
しろまるしろまる農場、どこどこ発電所といった要素での特定を許容していく方向が考えられるので
はないかと思いました。また、1の例2に関する対応としましては、あらかじめ動産の移
動を想定した特定の方法、私の方でお出ししました検討メモの2(3)にあるような記載
で特定を許容していくという方向が考えられると思います。
以上が提案の本文3までの意見となります。
委員等提出資料からは離れますが、最後に第5の4の点について一言意見を述べます。
こちらの商号登記を利用した自然人商人への拡大につきましては、動産・債権譲渡担保の
活用が広まるという観点で期待をしていたところではありますけれども、説明記載のとお
りに、同一人で複数の商号登記が可能であるという点で、やはりバグが非常に大きいと思
いますので、見送りについては仕方がないという意味で、賛成を申し上げたいと思います。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございました。
それでは、委員等提出資料も含めまして、以上の点につきまして、どなたからでも結構
でございますので、御意見等を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。
しろまる村上委員 第5の3の動産譲渡登記の特定方法についてでございます。そもそも動産譲渡
登記制度は、登記によって動産が譲渡された事実を公示することで取引の安定化を図るた
めに導入されたものと認識しております。伊見委員も御指摘になりましたけれども、【案
5.3.2】では特定性が低いということで、そうした方法を認めるのはいかがなものかとい
うところはございます。また、動産・債権譲渡特例法導入時の国会の法務委員会での附帯
決議においても、債権回収の手段として濫用されることのないよう十分な配慮することも
明記をされているところでございます。そうしたことを踏まえますと、【案5.3.1】のよ
うな方法の方が適切なのではないかと考えます。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございます。
ほかにございませんでしょうか。
しろまる沖野委員 委員の沖野でございます。今の御指摘の動産譲渡登記の特定方法の場所につい
ての緩和に関してなのですけれども、例えばなのですが、レンタルをしているとかリース
会社とかで、実際の物品が各地に散らばっているという場合です。現実的にはむしろリー
ス料債権の方を押さえるのだと思うのですけれども、動産の方も併せて押さえておきたい
というような場合ですと、特定の倉庫ですとか特定の地域というよりは、もう顧客が散ら
- 5 -
ばっている以上、東京都内のとか、そういうことになってくるかと思うのですが、今ちょ
うど伊見委員から御説明くださった緩和の方法というときには、こういった場合も十分対
応できるということになりますでしょうか。こういうものも、東京都内の顧客の何々とか、
あるいはどこどこ県とかぐらいでもよろしいのであれば、【案5.3.1】の柔軟化で十分い
けると思うのですが、それができないということになると、【案5.3.1】ではできない案
件が残るのかなと思いまして、確認させていただく次第です。
しろまる道垣内部会長 これは誰からの方がいいかしらね。まず事務局の感覚を伺えればと思いま
すが。
しろまる笹井幹事 そうですね、今日の段階でお示しした【案5.3.1】、それから【案5.3.2】は、
いずれも、きっちりした基準をお示ししたというよりは、所在場所という要素をどこまで
維持していくかという点について、二つの大きな方向性をお示ししたというものにとどま
っております。そういう意味で、例えば、沖野委員から御指摘があったような「東京都
内」という方法を認めるのかどうかというのは、正に今日御議論いただければと思ってい
たところではありますけれども、ただ、「東京都内」でいいということになれば、「日本
国内」でもいいのかとかいうことになって、その保管場所という要件には意味がなくなっ
ていくと思います。そういう意味では、【案5.3.1】というのはもう少し限定されたもの
をイメージしているものとしてお示しをしていたところです。
もし今、沖野委員から御指摘があったように、目的物が特定の倉庫の中に入っていると
いう場面だけではないケースももちろん想定することができて、そういったものも含めて
登記の対象にするのだということになれば、それはどちらかというと、今日お示しした中
では【案5.3.2】の方で対応していくということになるのかなと感じます。
しろまる道垣内部会長 その点につきまして、伊見さんは何かございますか。
しろまる伊見委員 伊見でございます。その点については、実は私も揺れながらこの資料を作って
御説明をさせていただいておりました。メモの一番最後の下線を引かせていただいたとこ
ろですけれども、例えば東京都千代田区何番地と書いた上で、そのほかに譲渡人が所有、
賃借する保管場所のような書き方になっていくと、これはもう恐らく東京都の千代田区麹
町以外の全国各地に散らばる保管場所を想定してもいいのではないかということで、一つ
の提案として示させていただいたものになっておりますが、それが全国ということに及ん
だ際に、その特定としてどうなのかというところは、私も必ずしも自信を持っていないと
ころでありまして、皆様方に教えていただければという趣旨での提案となっております。
しろまる道垣内部会長 この点については、もう少し後で、実質的にどういうふうなのがよいと皆
さんがお考えになるかということをお伺いしたいと思うのですけれども、その前に、何人
かから手が挙がっていますので、発言をお願いしたいと思います。青木則幸さん、まず、
お願いいたします。
しろまる青木(則)幹事 今の御議論に少しかぶってしまうところがありますけれども、やはり
【案5.3.1】の柔軟化の程度ということについてでございます。例えば、設定者の全ての
営業所に存在する全ての在庫商品という形の特定の仕方をもしするとすれば、それは【案
5.3.1】の意図されている特定には当たらないということなのでしょうか、それとも一応、
設定者の方が真に全ての在庫商品を担保に付けるという意思があれば、特定になっている
と考えてよろしいのでしょうか、そこのところを質問させていただければと思います。
- 6 -
しろまる道垣内部会長 それは解釈の問題だと思いますので、青木さんが、どのようなのがよいと
お考えなのかの御発言を頂いた方がよろしいかと思いますが、どうでしょうか。
しろまる青木(則)幹事 御承知のように包括担保のニーズというのはいろいろなところで説かれ
ております。国際的な議論などでも出てくるところでございますので、そのような対応が
できる方がいいのではないかと思っております。
しろまる道垣内部会長 分かりました。実質的な話はまた更に続けたいと思いますが、日比野さん、
お願いいたします。
しろまる日比野委員 ありがとうございます。【案5.3.1】、【案5.3.2】から少し離れてしまうの
ですけれども、それでもよろしいですか。
しろまる道垣内部会長 結構です。
しろまる日比野委員 分かりました。ありがとうございます。
第5の2のところです。部会資料28で、実体法について発言したことを登記のところ
でもさせていただくということになるのですけれども、我々金融分野の立場としますと、
分割譲渡もニーズとしてあるというところを前回お話しさせていただいたとおりでござい
ます。したがいまして、実体法について分割譲渡ができるように考慮を頂きたいというこ
とと同時に、登記においても分割譲渡について御検討いただきたいということをこの場で
改めて発言させていただければと思います。
しろまる道垣内部会長 分割譲渡ですか。
しろまる笹井幹事 根譲渡の分割譲渡。
しろまる日比野委員 失礼しました。根譲渡担保の分割譲渡が部会資料28で採用をしないという
ことになったことに関して、その場で御発言させていただいたのですけれども、この登記
制度のところについても、実体法で整備をすると同時に登記制度の方においても整備を頂
きたいという趣旨で御発言をさせていただきました。
しろまる道垣内部会長 分かりました。それは新たな問題点なのですが、その前に何人かの方から、
保管場所との関係でどこまで包括的なことを認めるのかということで、青木さんからは包
括的な方法で可能であるというふうに認めるべきであるという積極的な御意見を頂きまし
た。そうなると【案5.3.2】でも、緩和の極みになりますから、一緒かなという感じもし
ますけれども、ほかの皆さん方で、やはり一定の制約を付ける方がいいのではないのとい
うか、それとも、別に保管場所はいろいろなところに行ってしまうのだから、どこだって
いいではないのということなのか、その点について皆さんのお考えはいかがでしょうか。
しろまる井上委員 井上です。今の点、包括性は種類に関しても問題になると理解しています。例
えば、「在庫全て」とか、極端なことを言えば「設定者の持っている動産全て」とか、そ
ういう包括性にはもちろん限界があるだろうと思っておりまして、設定者のビジネスモデ
ルにもよるかもしれませんけれども、特定の種類の在庫といわなければ特定が認められな
い場合もあるのではなかろうかと思います。
ただ、そういう意味で、対象物やビジネスに応じて「種類」によってどのぐらい特定し
なければいけないかが変わり得る結果、包括性には限界があってしかるべきだと思う反面、
その包括性を限定するために、あるいはそれ以外に対象を特定する目的で、場所を必須と
するべきかに関しては、そこまではいえないと思っております。典型例として、先ほど沖
野委員がおっしゃったレンタル物件のような例についても登記できるようにすべきではな
- 7 -
いかと考えますので、その点で、関東全域あるいは日本全国というような場所的要素を形
式的に満たすからといって特定がなされるとは限らない反面、先ほどの例のように、特定
の設定者が顧客にリースしている特定の種類の物品であれば、場所が全く特定されていな
くても十分な特定があると思われますので、その点で場所をマストにすることには抵抗が
あります。
ほかの例として、これは集合動産譲渡担保ではないことがほとんどだと思いますけれど
も、私が聞いた例では、宝石の譲渡担保で設定者にそのまま利用を許しているという状況
で、そういう意味では身に着けて使うために場所的にはいろいろ移動すると、旅行先にも
持って行くという管理方法もあり得ますが、そういう高価な宝石などについても登記がで
きないのは適切ではないと思いますし、そういった例は多くはないかもしれませんけれど
も、場所をマストにすることには問題があると思います。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございます。井上さんから、場所を必須にするのには問題があ
るということでしたが、その前に、ビジネスモデルとか設定者の商売上の状況とかによっ
て、種類による特定といってもいろいろ変わってくるよねというふうな話が前半部にあっ
たと思います。その点についてはどのような基準を設けるべきだとお考えになるか、ある
いはもう種類も、これで特定されているよねと社会通念上思えるようなことであればいい
と言わざるを得ないのだから、必須の要件とか、あるいはここまでの緩和が許されるとい
うふうな基準を設けることは妥当でないとお考えになるか、その辺りはいかがでしょうか。
しろまる井上委員 ありがとうございます。柔軟性と予測可能性のバランスの問題が重要だと思う
のですけれども、実際上、登記したのにその登記が有効でなかったという事態は担保権者
にとっては是非とも避けたいことではありますので、その意味では、実際に行われるであ
ろう登記の9割だか99%だかに関しては、比較的定型的、安定的な特定の仕方がなされ
るであろうと期待されます。その意味では、ある程度類型的な特定の仕方が、ガイドライ
ンのような形で示されるかどうかはともかく、実際には用いられると思います。登記実務
において、事前の登記確認のようなことがなされるのかどうかも含めて、いろいろな方法
があり得ると思うのですが、実際上安定的な運用が必要だと思います。
ただ、限界的な事例、先ほどの宝石のような事例や、リース会社が顧客にリースする物
品のような事例については、特定性が高いのであれば、何かの要素をマストにしなくても
いいのではないかという意味で、そのような限界的な1%の事例において、どのように担
保権者が安心して担保制度・登記制度を使えるようになるのかは、これは工夫が必要だと
思っております。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございました。
しろまる片山委員 慶應大学の片山でございます。実務上のニーズがどこまであるのかというのは
必ずしも測りかねるところではありますが、アバウトに考えますと、一つには、先ほどの
リース物件のように、種類という意味で、その特定はできるが、所在場所がいろいろなと
ころに拡散しているという場合もあるでしょうし、2つには、逆に場所という意味で、倉
庫とか、あるいは事務所なら事務所という場所で特定できるが、その中では様々な什器等
全てが含まれていて種類の特定は難しいという場合もあるのかと思いますので、私のイメ
ージとしては、種類又は保管場所というような、「又は」という形で、両方に捉えるよう
な枠組みがあってもいいのかなとは思っているところでございます。
- 8 -
しろまる道垣内部会長 片山さんは、結局は何かを必須にするというのは難しいということなので
しょうか。
しろまる片山委員 はい。【案5.3.2】ですと種類だけを必須にするという選択肢なのですけれど
も、別な方向の選択肢として、場所だけという選択肢もあっていいのかなと思った次第で
す。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございます。このような形の要件設定をある程度しなければな
らないと事務局がお考えになった理由の一つに、井上さんからも少し出たのですけれども、
特定方法を当事者に委ねると、登記が事後的に無効と判断されるリスクがあるということ
が懸念されるという話があって、それを避けるためには、ある程度の枠組みというか、そ
ういうのを示さざるを得ないのではないかということがあるのではないかと思います。た
だ、無効になるリスクがあると思ったら一生懸命特定すればいいだけであって、そんなこ
とに配慮してあげる必要があるのかというのもいえないわけではないような気もします。
その辺りの実務的な感覚と申しますか、いかがなのでしょうか。やはり法律ないし何らか
の形で、これは有効であって、あるいはこの要件が満たされていないと有効にならないと
いうことで、また逆に、満たされていれば有効になるということを明確に示すというのが
安定のためには必要だとお考えになられますでしょうか。いかがでしょうか。
しろまる藤澤幹事 すみません、実務家ではないので、実務的な観点ではないと思うのですけれど
も、今の点について三つほどコメントさせていただきたいと思いました。
まず一つ目は、占有改定によって対抗要件を具備する場合の特定方法については、下級
審裁判例などで、例えば「A会社の本店」というような形で、物理的な場所を特定しない
のだけれども、観念的に場所を特定して目的物を特定するという方法が認められています。
しかし、現在の登記だとそれができなくて、どこか地番などを示さなくてはいけないため、
占有改定の場合と登記をする場合とを比較すると、特定のしやすさに少し差が生じてしま
っているというところがあります。改正に際しては、その差を埋めて、登記の場合にも占
有改定と同じような特定方法ができるというふうにしないと、登記優先ルールなどを導入
するときに、登記を選びたい人のハードルになってしまうのかなと思っていまして、【案
5.3.1】の方向は少なくとも必須なのではないかと考えております。
その上で、2番目に、伊見委員が御提出くださったメモの中にあった、ホワイトボード
方式が尚早であるというコメントについてなのですけれども、これは道垣内先生が御説明
くださったように、やはり当事者に全部任せてしまうとなると、登記手続を引き受ける専
門家の先生方において、自分の書いた登記の記載が事後的に無効とされる可能性があって
非常に不安であるといったようなところがあるのかなと感じました。
そこで、現在の動産譲渡登記規則もそうなっていると思うのですけれども、幾つかの特
定のパターンを規則の中で示して、場所による場合とか種類による場合とか、チェックボ
ックスで選べるようにするのはいかがでしょうか。その上で、「この方式を採った場合に
はこのくらい書いておけば大丈夫」といったガイドラインがあるといいのではないかと思
いました。
最後に、沖野先生がおっしゃった、場所が散り散りである場合についてなのですけれど
も、場所によって目的物を特定する趣旨が、外から見てそれが担保目的物なのかどうかが
分かるということ、第三者がきちんと判断できるようにすることにあるのだとすれば、例
- 9 -
えば、散り散りの場合にはシールとか明認方法みたいなものを施すことで、これが担保目
的物ですよということが分かるようにしておけば良いような気もします。そして、そのシ
ールの画像を登録しておけるようにするとか、そういうやり方はないかなと思いました。
しろまる道垣内部会長 分かりました。なかなか難しい問題があるような気がしますね。つまり、
対抗要件具備したつもりになっても具備できていないというリスクは、実は占有改定にお
いて既に存在していて、占有改定の合意においてどこまでの特定が必要かというのが明確
に議論されているわけではないだろうと思うのです。ただ、しかし契約解釈によって、こ
の物について占有改定による引渡しがなされているということになると、対抗要件が具備
されるということになる。その意味では、占有改定による引渡しのときには自由に当事者
の任意の方式によることになっているのだろうと思うのです。ただし、それを譲渡登記制
度に乗せるときにどうするのかということで、これが一緒にならなければいけないかとい
うのがまた難しい問題で、登記は占有改定の公示力を高めるために、占有改定では公示力
がないから、それを高めるためにこの制度をやって、これをやっているときには一定の効
力を認めるのだということになりますと、占有改定については完全に契約の解釈、合意の
解釈の問題だけれども、譲渡登記については一義的な明確性がより高まるということが必
要になるという制度設計も可能なのかもしれないと思います。それをどういうふうに考え
ていくのかということだろうと思います。すみません、要らない話で。
日比野さん、お願いいたします。
しろまる日比野委員 ありがとうございます。先ほどの部会長からの問い掛けに対してというとこ
ろなのですけれども、既に複数の委員の先生方からも出ているとおり、場所をどのぐらい
の記載事項まで許容するかということによっては、それを求めること自体が特定という観
点において余り必要にならないものもあろうかと思いますし、逆に、例えばダイヤとか、
あるいは伊見委員からお示しいただいた、保管場所の所在地自体が随時移動するようなも
のの場合であれば、ほかの要素による特定の方が、よりその特定の明確性のためには資す
るということになろうかと思います。ですので、保管場所の要件自体を必要的なものとし
なければいけないということはないのだと思います。
ただ、実務の立場からすると、これは何回か前の部会でもお話ししたとおり、登記した
ものが事後的に無効になるというのはできれば極力避けたいというニーズは当然ございま
す。もっとも、その方策については法律事項として規律するというのが唯一の解ではない
というような気もしまして、藤澤先生が先ほどおっしゃったような方法のように、規則な
どで、例えば、この特定要素を使うのであればこのようなものを登記せよとすることもあ
るでしょうし、それ以外に実務家、有識者で何かガイドラインのようなものができるので
あれば、そういったものに依拠して特定をしていくということもあろうかと思います。
なので、すみません、いろいろ申し上げましたけれども、保管場所を必須とした上でど
こまで緩めるかというような議論の仕方ではなくてもいいのかなとは思いました。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございます。
ほかにございませんでしょうか。3の問題につきましてはいろいろ意見が出て、藤澤さ
んがおっしゃったような、完全に自由にするというのではなくて、いろいろなパターンと
いうのが、それはあると、井上さんのおっしゃったビジネスモデルとか、そういうふうな
話にも関係してくるのかもしれませんけれども、そのような形にするというのが一つの方
- 10 -
法としてあるわけですね。あと1点、皆さんの意見を伺いたいのですが、有効性について、
例えば今、藤澤さんがおっしゃったようなパターンを幾つか作るとしたときに、パターン
に載っていなければ登記所で譲渡登記の部署で却下されるという制度設計でいいとお考え
なのか、それとも、それはフリーパスだと、だけれども、載っていなければ後から無効に
なる可能性があるよねというだけの話だとお考えになるのか、それはいかがなのでしょう
か。今はどちらかといえば、通れば安心というところですよね。ただ、それのたびに厳格
な審査が要求されて、なかなか大変だというふうな話もあるわけですけれども、それはい
かがですか。特に確定的には、実際の運用かもしれませんので、絶対にこうなるというわ
けではないかもしれませんが、その点はよろしいですか。
しろまる伊見委員 伊見でございます。今の部会長の問い掛けに必ずしも答える形にならないのか
もしれませんけれども、現状におきましても種類による特定において、明確性という言い
方が正しいでしょうか、そこの部分である程度制限がされているということもありますし、
所在につきましても、全く所在要件を撤廃することも含めて、当事者の申請どおりに登記
をするということになる場合であったとしても、さすがに出された文言の明確性といった
ものは審査の対象になるのだろうと思いますので、書かれたものをそのまま登記して、あ
とはそれぞれの判断でということにはなりにくいのだろうとは感じております。
しろまる道垣内部会長 分かりました。
ほかに。その点につきましては、まだいろいろ御意見もあろうかと思いますが、もう一
つ重要な柱として今回出てきたお話の中で、4の登記をすることができる譲渡人について、
商号登記をした商人に拡大するというのが少し技術的に難しいのではないかという話が出
ているのですが、この辺りについて、是非それは拡大しなければおかしいとか、そういう
ふうな御意見等はございますか。あるいは、これでいいだろうということでももちろん結
構なのですが。
いや、別に御意見がなければ、これで結構ですが、登記をして登記優先ルールというの
を作ったときに、一定の人だけ優先できる可能性というのを作っていいのですかね。かな
り根本的な疑問なのですけれども。僕は商人に限定されていても駄目なのではないかと思
うのだけれども、そんなことはないですか。ほとんどの場合、いいではないかという話な
のですが、それはそうなのだけれども、ほとんどの場合いいではないかというのでルール
を作っていいのかなという感じもするのだけれども。
特に御異論がないということで、私だけ異論を述べていても仕方がありませんので、引
っ込めますけれども、技術的にいろいろな難があるということであります。ただ、今後い
ろいろな特定方法というものが、あれは何というんだっけ、個人何とか番号で意地でも保
険証に代えるというようなことをし出すと、個人でも使えるとかいう話になってくるのか
もしれませんが、よく分かりませんが、沖野さん、お願いいたします。
しろまる沖野委員 ありがとうございます。私は本来的には主体は全て使えるようにするべきだと
思っておりますし、個人であればマイナンバーを使ってでもと思っております。商号登記
についても、複数あるからということだったら複数で検索すればいいのではないかとも思
ったりするわけで、一方だけで検索すると出てこないけれども、もう一方だったら出てく
るというときには、そういうときには取引の相手方等は複数の商号できっちり検索するの
ではないかという感じもしますけれども、技術的な制約がなかなか乗り越えられず、それ
- 11 -
を頑張って乗り越えるべき実務のニーズとして現時点でそこまで高くないということであ
れば、仕方がないのかなとは思っております。けれども、それも次善の譲歩というか、そ
ういうものとして仕方がないと思っておりますので、部会長が取り消されるのは残念だと
思っております。ですので、本来は入れるべきだと思ってはおりますけれども、難しいな
ら仕方がないということです。
しろまる道垣内部会長 私は、遡及効のある取消しではなくて撤回。どうでもいいですが。片山さ
ん、お願いいたします。
しろまる片山委員 慶應大学の片山です。撤回されたということで、申し上げる必要はないのかも
しれませんが、もし広く一般に個人も含めるという形の立法をするというのは一つの方法
だと思いますが、そうするとまた別途、保証のときのような議論、消費者の保護のような
形の規定もまた同時に必要になるかとは思いました。立法の方法としては、また一段階難
しい問題を抱え込むという面もあるようにも思いました。
しろまる道垣内部会長 分かりました。譲渡人の方ですから、いいのですかね。譲受人の方は制約
がないということになると、別にエンジョイできる人は一部にはならないということなの
かもしれませんが。
しろまる水津幹事 別のところについて伺ってもよろしいでしょうか。
しろまる道垣内部会長 はい、結構です。
しろまる水津幹事 留保所有権の登記について、質問をさせてください。2では、留保所有権を登
記することができるものとして、登記がされたときは、その動産について引渡しがあった
ものとみなすとあります。ここでの引渡しは、留保買主から留保売主への引渡しであると
思います。そうであるとすると、2の規律は、留保買主から留保売主への譲渡があったこ
とについて適用されるものなのでしょうか。仮にそのとおりであるとすると、留保買主か
ら留保売主への譲渡は、留保売主から留保買主への譲渡が先行してあったことを前提とし
ますので、ここでは、2段階の権利変動が生ずるという理解が採られていることとなりま
す。それとも、ここでは、権利変動のプロセスはブランクにしながら、差し当たり留保買
主から留保売主への引渡しがあったものとみなすということなのでしょうか。よく分かっ
ておりませんので、どうぞよろしくお願いいたします。
しろまる笹井幹事 まず、どういう引渡しがあったものとみなされるのかということについては、
二者間でいえば、留保買主から留保売主に対する引渡しがあったものとみなすことになり
ます。留保売主は留保買主に対して現実の引渡しをしているので、それを前提として買主
から売主に対する引渡しがあったものと登記によってみなされると考えております。その
ときの法的な構成については、今、水津幹事もおっしゃったように、二つの物権変動があ
ったというふうな理解がもちろん有力な見解としてあり得るところだと思いますが、そこ
はいろいろ見解も分かれているので、事務当局として何か特定の立場を採っているという
わけではなくて、そういう意味では今、水津幹事がおっしゃったように、そこはブラック
ボックスにしているという理解であるのかなと思っております。
しろまる道垣内部会長 いかがでしょうか、水津さん、よろしゅうございますか。
留保所有権に関連いたしまして、実は部会資料の13ページに一定の質問事項が事務局
から出ております。つまり、複数の継続的な売買等において複数の動産がその目的物とな
っているときに、範囲を特定するなりの方法による登記というのも認められるのかもしれ
- 12 -
ないのだけれども、その辺りについて特に異論はありませんか。いかがでしょうか。
しろまる井上委員 今御指摘があった13ページに書かれているような形で、一定期間内の継続的
な売買契約の目的動産について一括して所有権留保の登記ができることは必要ではないか
と思います。これは、その一定期間内に何度も売買が継続的になされるときに、売買ごと
に毎回登記をする必要があるかという問題について、1回で良いという提案だと思ってお
りまして、それがなければ、実際は在庫の所有権留保については登記を備えることが極め
て難しくなるのではないかと思いますので、このような形で一括して登記できるというこ
とが必要なのだろうと思うのですけれども、逆に、これは登記に関してまとめて1回で良
いという提案にとどまるといいますか、それを正に述べてあると思うのですが、その結果
として対抗力がどのタイミングで備えられるかは、別の問題だと思います。この点、これ
だけの提案だと、各継続的売買の中で行われる個々の売買毎のタイミングで対抗力が備わ
ることになり得るのかなという感じもしまして、私としては、その前提となる実体法の問
題として、こういった継続的な売買における所有権留保については、それを集合物所有権
留保と呼ぶかどうかはともかく、集合動産譲渡担保と同様に、1回の所有権留保合意に基
づいて、その後、将来にわたって特定の範囲で保管される売買目的物の所有権を留保する
という処分行為がなされ得ることをまず認めた上で、今回御提案されている登記とセット
で、最初の合意プラス登記の時点で、その後特定範囲に入ってくる個別動産についての所
有権留保の対抗力が備えられるという制度があっていいのではないかと思いました。その
上で、集合動産譲渡担保と、今申し上げたような集合動産所有権留保のようなものとの優
劣については、基本的には既になされた優劣の基準に基づいて判断すればいいのではない
かと思いました。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございます。対抗要件の話としては、これはこれでいいとして、
その前提となるところの集合所有権留保というものについて、もう少し実体的な効力とい
うのをどこかに明確に書くということが必要ではないかということだろうと思いますが、
それはそのとおりかなと思います。
しろまる沖野委員 今の井上先生の御指摘と同じ内容なのですけれども、よろしいでしょうか。
ありがとうございます。御質問の御指摘のあった13ページは、肯定というか、これで
よろしいのではないかと思っております。ただ、引渡しとみなすという点については、そ
もそも留保所有権の対抗要件、5ページの3のところで、狭義のというか、そのための所
有権留保は引渡しがなくても対抗することができるということなので、引渡しとみなされ
ることの意義が一番利いてくるのは、拡大されたというか、狭義の代金等に限らない留保
所有権のところであり、それについては、例えば、優劣については9ページの4のところ
ですけれども、譲渡担保とみなして規律を適用するとなっておりますので、譲渡担保と同
じ扱いになるということだと理解しております。そして、一種の集合的な、集合所有権留
保というか、そういうものもやはり認められてしかるべきではないかと考えており、譲渡
担保並びということで、そうしたときに、3ページの総論的なところかと思いますが、2
のところで少し保留になっておりました、どの規律を留保所有権について準用してくるの
かという中に、集合動産譲渡担保に関する規律というのはそれほどのニーズは想定されな
いと書かれているのですけれども、登記のところでは、継続的な売買があったときにまと
めて登記を1回でするというようなことは、むしろ集合動産譲渡担保に類するようなとこ
- 13 -
ろであり、優先関係なんかも同じように利いてくるところがありますので、3ページの第
1の2についても、議論がされ既に指摘もされていましたが、集合動産譲渡担保に関する
規律は少なくとも除外しないというか、ということがほかのところからも利いてくるので
はないかと思っております。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございました。沖野さんがおっしゃるとおりなのですが、なか
なかこれを全部読み込んでいくのは難しいですから、どこかで整理をした方がいいのかも
しれません。
しろまる加藤幹事 先ほど来、登記が無効になるという問題への言及がなされていますが、登記が
無効になるということの意味を確認させてください。譲渡担保権者が第三者対抗要件を備
えることができないという意味でしょうか。
しろまる笹井幹事 私の理解としては、形式的には登記がされているのだけれども、それは対抗要
件としての意味を持っていないので、譲渡担保権が対抗要件を具備したことにはならない、
と理解をしておりました。
しろまる加藤幹事 それでは、譲渡担保権の設定契約自体は有効だという前提なのでしょうか。
しろまる笹井幹事 すみません、そこを漏らしましたが、私の理解では、繰り返しになりますけれ
ども、特定の問題というのは、実体的な契約の有効性の問題と対抗要件の問題という二つ
のレベルであるわけですけれども、【案5.3.2】は、譲渡登記には自由に書けるようにし
ているので、実体法上の有効性と登記の有効性の違いが比較的小さくなってくるというこ
とだと思います。【案5.3.2】においても登記が無効になるというのは、結局、実体的な
譲渡担保契約上の特定が不十分なものであるので、契約自体が無効になっているというこ
となのかと思います。
しろまる加藤幹事 先ほどより先生方から、登記ができなくても占有改定により対抗要件充足でき
る場合もある、とのご指摘があったかと思います。【案5.3.2】をとると、そういった解
釈は成り立たないというのが今の御説明なのでしょうか。
しろまる笹井幹事 恐らく、それは【案5.3.1】を採るのか【案5.3.2】を採るのかによっても違っ
てくると思うのですけれども、【案5.3.1】の場合は、これをどこまで緩和するかという
程度の問題はあるかもしれませんが、所在場所という要件が必要になるので、例えば、本
店だったら本店がどれだけ移動しても大丈夫だという解釈を採ることはできるかもしれま
せんけれども、少なくとも今の特例法上はそういった本店という形で特定することはでき
なくて、地番なりで特定することが必要だと理解されているのだと思います。そうすると、
「本店に所在するこういう種類の動産全部」というような形で特定をした場合には、それ
は占有改定ではできるけれども、登記としてはそれは認められないということになってく
るかと思います。
ただ、先ほど少し申し上げたのは、【案5.3.2】は比較的その辺の違いというものを小
さくしていくというか、登記上必要な特定の方法をかなり自由に認めていこうという方向
性ですので、例えば所在場所みたいな要件がなくなってくる結果、【案5.3.2】において
登記としての意味を持っていないというのは結局、設定契約上の特定も十分にされていな
い、そういったものが無効になるということではないかと思います。
しろまる加藤幹事 ありがとうございました。私の質問の仕方が適切でなかったかもしれないので
すけれども、部会資料28の第4の1の特定範囲に関する御提案と、今の登記の問題とい
- 14 -
う関係が若干分かりにくかったということなのですが、両者の関係をどのように考えれば
いいのでしょうか。これまでの審議では、全く別の問題であるかのように扱われているよ
うな気もしつつ、ただ今の御説明は、そうではないという御回答であったような気もする
のですが。
しろまる笹井幹事 少し御質問の趣旨を十分に理解できないですが。
しろまる加藤幹事 実体法上、譲渡担保権の設定が有効か否かにについては、部会資料28の第4
の1で特定しなければならない範囲について御議論がされたと思います。しかし、担保権
設定契約における特定が必要となる範囲としてどういったものが認められるかということ
についても、結局登記できるかどうかということによって決まってくるという理解でいい
のでしょうか。つまり、対抗要件を充足できるようなものしか事実上、譲渡担保権は有効
に成立しないと考えればいいのでしょうか。
しろまる笹井幹事 いえ、そこは実体法の効力は実体法の効力として決まってくるということだと
思います。
しろまる加藤幹事 なるほど、実体法上の担保権は成立しているけれども登記で対抗要件を具備で
きないものがあり得ると、そういう理解でよろしいでしょうか。
しろまる笹井幹事 はい、そうです。【案5.3.1】の場合は、その差がより大きくなってくるので
はないかと思います。所在場所という要件が必要なので、実体的には特定されているけれ
ども登記ができないという場合が生じてくる。【案5.3.2】だと、所在場所のような必須
の要件をなくしていくので、実体的に有効なものであれば登記ができるようになっていく、
その結果として、その差が小さくなっていくということではないかと理解をしています。
しろまる加藤幹事 ありがとうございます。感想にすぎないのですが、一から制度設計をする際に、
対抗要件を具備できない担保権を作ることに若干の違和感がありました。
しろまる道垣内部会長 占有改定による対抗要件は具備できるのではないですか、登記ができなく
ても。
しろまる加藤幹事 それも先ほど、多少争いがあるとかということだったかと。
しろまる道垣内部会長 特定されなければ、それは占有改定の合意自体が効力を生じませんので、
そのときには、けれども、譲渡担保設定契約自体の特定性がないということになるのでは
ないかと思うのです。登記についてはハードルを少し上げるというのはあり得る選択だろ
うと思うのですけれども。
しろまる加藤幹事 つまり、占有改定できるような意味での特定性というのが譲渡担保権一般に共
通する効力要件として存在し、今はそのプラスアルファとしての登記できるかというとこ
ろを、どれぐらい緩くするかということでよろしいのでしょうか。
しろまる道垣内部会長 私はそう理解しているのですが。
しろまる加藤幹事 ありがとうございます。ただ、登記優先ルールが存在する場合には、すでに藤
澤先生が御指摘された点と関係しますが、登記により対抗要件を充足できる範囲が事実上、
譲渡担保権の設定契約において特定が必要となる範囲を画する機能を持つように思われ、
それが良いのか若干気になりました。
しろまる道垣内部会長 ほかに何かございますか。
しろまる尾﨑幹事 すみません、ちゃぶ台返しをするつもりはないのですけれども、前回も申し上
げた担保目録について申し上げます。今回、動産でしたら占有改定でも対抗要件具備でき
- 15 -
るわけですので、例えば譲渡の場合であれば、それで優先権は確保できるということにな
るでしょうし、債権の場合は、通知、承諾によって優先権が確保できるので、いずれにし
ても登記を見て完全に全ての権利関係が分かるというわけではなく、きちんと確かめない
といけないという状況にあります。また、今回、動産とか債権なので、元々それほど複雑
に担保が取られるということがどこまであるのかということがそもそも疑問な中で、これ
だけの複雑な登記システムを具備する意義がどこまであるのかという疑問は持っておりま
す。権利関係が明確になるのはよいことではありますけれども、それに伴うコストを考え
ますと、本当にこれがその取引が円滑に行われるために資することになるのでしょうか。
前回も少しこのことを申し上げたのですけれども、その後、パブリック・コメント等も経
て、皆さん方の考え方が、そういうものなのだということであれば、もちろんそうなのか
なと思いますけれども、本当にそうなのかなということは少し疑問に思っています。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございました。根本的な問題ではあるのですけれども。
ほかに御意見はございますか。
しろまる青木(則)幹事 今までの話と違う点について申し上げます。登記上の目的物の記載との
関係で担保権の効力がどこまで及ぶかを読み取るという作用には、一つには目的物の特定
の要素があるかと思いますが、もう一つは取り方といいますか、要するに集合物としての
効力が及ぶのかどうかということを読み取るといった要素も本来はあっていいのかなと思
っております。現行の制度では、この点は、動産区分という形で集合動産とか個別動産と
いう区分が登記されているようでありまして、それと目的物の種類の欄が別項目になって
いるようです。これは場合によっては目的物の記載に一本化するみたいなことはあり得な
いのでしょうか。というのは、集合動産であればこういうルールが適用されるということ
を明確化して、それをもう揺るがさないのだということにするのであれば、現状でいいの
かもしれませんけれども、もう少し柔軟な運用を認めていくということであれば、目的物
の記載の中に書き込んでいくというようなこともあるのかなと思っております。
しろまる道垣内部会長 何かありますか。登記簿といいますか、そういうものの設計に関わってく
るのですが、根本的な考え方と密接に関係していることは確かだろうと思います。考え方
そのものとしては多分、青木さんのおっしゃるような考え方で現行もできているのでしょ
うけれども、登記簿上の整理の仕方が少し固いのかもしれませんね。その点については少
し、商事課とか司法書士連合会とか、いろいろな方々のお知恵を拝借しながら、少し事務
局で検討していただければと思います。
ほかによろしいでしょうか。
かなりまだ問題点が残っているということが分かりましたけれども、ここで登記制度の
話を一旦終えまして、実行の話に第6から入ることになります。ただ、実行の話に入るに
当たりまして、村上さんの方から、ここの第6に関連してではないのですが、集合動産譲
渡担保権の実行について御発言があると、かつ、村上さんは御都合でどうしても早めに御
退席にならなければなりませんので、今御発言いただけますでしょうか。
しろまる村上委員 ありがとうございます。まだ部会資料30の議論中にもかかわらず、順序を入
れ替えていただきまして、ありがとうございます。
部会資料31の第1の集合動産譲渡担保権の実行に関しまして、1点意見を申し上げま
す。第1の2ですけれども、ただし書におきまして、実行通知後に加入したものについて
- 16 -
分別管理されていない動産には担保権の効力が及ぶとされているところです。こちらにつ
いて中間試案の補足説明では、ただし書の部分の例外については、適切な分別管理をする
インセンティブを設定者に付与することを企図しているという御説明がされております。
そうした観点はあるとは思っているところですけれども、ただ、設定者が適切な分別管理
を怠ったことで一般債権者にまで影響が及ぶことになるのは、公平性の観点から、どうな
のかという課題意識を持っております。今後、分別管理の在り方について検討する際には、
そうした点も是非御検討いただければと思っております。
しろまる道垣内部会長 村上さんの御発言につきましては、音声の途切れがあったようです。部会
資料31の第1のところで、私ないしは事務局から復唱させていただくようにいたします
ので、その点は御心配いただかないようにしてください。その上で、どうも通信の具合が
悪いので、15分間休憩、3時から開始ということにしたいと思います。
(休 憩)
しろまる道垣内部会長 再開したいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。
「第6 動産譲渡担保権の実行方法に関する規律」というものから審議を再開するわけ
ですが、先ほど申しましたように「1 動産譲渡担保権の各種の実行方法」から「5 受
戻権」までについて最初に議論をしたいと思います。事務当局において部会資料の説明を
お願いいたします。
よろしくお願いします。
しろまる工藤関係官 それでは、「第6 動産譲渡担保権の実行方法に関する規律」について御説
明いたします。
「1 動産譲渡担保権の各種の実行方法」については、中間試案第8-1の内容から変
更はありません。
「2 動産譲渡担保権の私的実行における担保権者の処分権限及び実行通知の要否」に
ついては、中間試案第8-2では、実行通知の到達から1週間の経過後に目的物の処分権
限を取得するものとする【案8.2.1】、実行通知の到達の時に目的物の処分権限を取得す
るものとする【案8.2.1】の(注)、担保権者は被担保債権の不履行によって直ちに目的
物の処分権限を取得するものとする【案8.2.2】の三つの考え方を提示していました。
このうち【案8.2.1】については、1週間という画一的な猶予期間を設けることは相当
とはいえないことなどが問題として指摘されており、また、【案8.2.1】の(注)につい
ても、実行通知の到達後に直ちに私的実行をすることも可能であることなどに照らすと、
担保権者に対して実行通知の送付を法律上義務付ける必要性が高いとまでは言い難いこと
が問題となると考えられます。そこで、今回の御提案では現行法上の扱いを踏襲すること
として、【案8.2.2】に沿った内容をお示ししています。
「3 帰属清算方式による動産譲渡担保権の実行手続等」については、本文(4)を始
めとして、中間試案第8-3から本文の表現ぶりに修正を加えていますが、実質的な内容
にはほぼ修正を加えておりません。
修正を加えた点としまして、中間試案の【案8.3.1】では、担保権者が評価した目的物
の価額と被担保債権額の差額としての暫定清算金の支払いと目的物の引渡しとが引換給付
- 17 -
関係に立つとする考え方を御提案していましたが、暫定清算金の額よりも最終清算金の額
の方が小さい場合において、なお暫定清算金の支払いと目的物の引渡しとを引換給付関係
に立たせることは相当でないと考えられたことから、最終清算金の額よりも暫定清算金の
額の方が小さい場合に限り、暫定清算金の支払と目的物の引渡しとが引換給付関係に立つ
ものとする考え方を本文(3)の隅付き括弧でお示ししています。なお、本文(3)の隅
付き括弧内を採用しない場合には、常に最終清算金の支払と目的物の引渡しが引換給付関
係に立つことになり、中間試案の【案8.3.2】と同様の考え方になります。
また、本文(1)及び(2)の隅付き括弧では、担保権者による確定的な目的物の所有
権の取得等の効果が生ずる時点を、帰属清算の通知及び暫定清算金の提供等がされた時か
ら一定期間が経過した時とする中間試案第8-3の(注1)の考え方をお示ししています。
この考え方の採否については、5の受戻権の採否や第7の2以下の各種の手続の採否と併
せて検討する必要があると考えられます。
そのほかに、(説明)の4では、共同担保関係が存在する場合の実行方法について、被
担保債権の割付けを要求するか否かについて問題提起をしているほか、(説明)の5では、
暫定清算金の「提供」の意義について問題提起をしておりますので、こちらについても御
議論いただければと思います。
「4 処分清算方式による動産譲渡担保権の実行手続等」についても、中間試案第8-
4から本文の表現ぶりに修正を加えていますが、実質的な内容には大きな修正は加えてお
りません。
修正点としまして、3と同様に、最終清算金の額よりも暫定清算金の額の方が小さい場
合に限り、暫定清算金の支払と目的物の引渡しとが引換給付関係に立つものとする考え方
を本文(4)の隅付き括弧でお示ししています。また、中間試案第8-4では、担保権者
が目的物を第三者に処分したときに私的実行の効果が生ずるものとしていましたが、今回
の提案では、処分を譲渡に限定しています。さらに、本文(4)の隅付き括弧の採否にか
かわらず、本文(2)で、第三者に譲渡したことや目的動産の見積価額の通知を義務付け
ることとしています。
中間試案第8-4の(注1)においては、被担保債権の消滅時期や受戻権の消滅時期を、
第三者への処分から一定期間が経過するか、引渡しがされた時とする考え方を示していま
したが、この考え方については、処分清算方式の実行については特に取引の安全の保護な
どが問題となり得ることから、ここでは御提案しておりません。
「5 受戻権」については、中間試案第8-3の(注2)でお示ししたように、担保権
者による確定的な目的物の所有権の取得や被担保債権の消滅といった効果が発生した後に
おいても、なお目的物の受戻しを可能とする制度を設けるか否かを問題提起しています。
隅付き括弧では、仮にこの受戻権を採用した場合に、処分清算方式の実行についても同様
の受戻権を認める考え方や、一定の期間が経過したときは目的物を受け戻すことができな
いものとする考え方を記載しています。本文の受戻権を採用するか否かについては、第7
の2以下の各種の手続の採否と併せて検討する必要があると考えられます。
以上について御議論いただければと思います。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございました。
それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂
- 18 -
ければと思います。よろしくお願いいたします。
しろまる阪口幹事 阪口です。一つ質問と、一つ意見を述べたいと思います。
質問の方は、今回、処分というのを譲渡と表現を変えるというところに関してです。表
現については、幾つか、まだ処分と譲渡が交じっている箇所があるのはどこかで整理する
として、ここでいう譲渡が物権的な意味の譲渡なのか、それとも処分行為、売却という方
が分かりやすいかもしれませんが、それで足りるのかを質問したい。というのは、ここで
譲渡という概念が基準になって法律関係が変わるので、第三者への処分清算でいうところ
の譲渡というのは、売却契約を結べばそれでもう譲渡したことになるのか、それとも所有
権が移転して初めて譲渡というのかということを確認したいということです。
もう一つの意見の方は、この5の受戻権のところです。今回このような形で御提案いた
だいて、ありがとうございます。ただ、最後の部分で、受戻権を行使できる期間中の権利
が別除権か、それとも取戻権かは解釈の問題だと書かれています。最後は解釈の問題かも
しれませんが、ここで取戻権ということになってしまうと、何のためにこの受戻権の制度
を入れるのか分からなくなってしまう。制度趣旨からすると、別除権でないと話が進まな
いことになると思っています。仮にここで、形式的に所有権が移転しているから、受戻権
が残っているとしても取戻権になる、形式的に所有権概念で決めるのだということであれ
ば、2に戻って、一定期間経過後しか所有権移転しないという規律を導入すべきという議
論をもう一遍しなければいけなくなってしまいますので、ここはそうではないということ
で議論させていただきたい。
まず、実際に債務者の手元に物が残っている以上、実行手続中と皆が思うわけですから
別除権とするのが自然で、それが、法律論は置いておいて、生の事実としての根拠です。
また、仮登記担保法においても、受戻権がある期間中は別除権だというのが、文献上はそ
のように言われており、局面や理論構成が違うけれども、実態としては同じことだと思い
ます。ですので、ここは5の受戻権を導入いただくと同時に、5の制度趣旨は別除権とす
ることだということを、強調させていただきたいと思っています。
なお、先ほどの譲渡の関係で、5のゴシック体の最後のただし書のところが、「帰属清
算の通知及び清算金の提供等又は4による動産譲渡担保権の目的である動産の第三者への
譲渡の時から」と書いてあって、表現上は譲渡時が起算点になっていますけれども、譲渡
の通知がされないまま1か月たってしまってはまずいので、譲渡の通知のときからの方が
望ましいのではないかと思っています。
以上、質問と意見です。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございました。受戻権のところにつきましては、また後でお話
をしていただくことといたしまして、まず、大澤さんからも手が挙がっていますので、大
澤さんからのお話をお願いいたします。
しろまる大澤委員 ありがとうございます。今、阪口先生がお話しされたこととほぼ同じ内容の問
題になろうかと思います。多少繰り返しになりますが、御容赦を頂ければと思います。
やはり5の受戻権の扱いのところの一番最後、21ページのなお書きのところ、これが
解釈に委ねられるとなってしまいますと、先ほど、受戻権を定めた意義というものが失わ
れるのではないかという御指摘がございましたが、私も同じように思っておりまして、や
はり譲渡と、特に処分清算におきまして、先ほど御説明もありましたが、帰属清算と異な
- 19 -
って、こちらでは猶予期間を置きませんでしたと、理由は恐らく取引の安全ということだ
とは思いますけれども、取引の安全とひとくくりにいうとすると、第三者が確かに登場は
しますが、実行においての第三者ということですので、債務者に占有がある場合、あるい
は、少なくとも実行手続の中での第三者ということなので、当然いわゆる通常の取引の第
三者とは少し異なる、担保実行がなされているよねというのを認識しながら取引に入って
くる第三者ということになりますので、こちらでも猶予期間ということを考えても、それ
ほど取引の安全という観点での問題点とのバランスを考えても、なお猶予期間を入れても
いいのではないかと。
もし受戻しのところについて取戻しかどうかというのがはっきりしない、解釈で委ねら
れますということになるとすると、そのような受戻しという形であるとするならば、その
中止命令等、今後の事業再生の最後のチャンスとなる部分の余地が非常に失われてしまう
というリスクがあろうかと思いますので、だとするならば元に戻って、18ページの4の
ところになりますが、こちらで猶予期間というものをもう一遍考えてもいいのではないか
と考える次第です。
その猶予期間を考えるに当たっての第三者の要保護性というところにつきましては、そ
ういった担保の実行というところを見ながら入ってくる第三者ということで、2週間程度、
先ほど墨付き括弧で何週間とか、何日からとか、帰属清算のところでございましたけれど
も、同じような形で期限を区切って所有権の移転ということを、通知の後何週間後での所
有権の移転というような形をとってもなお、そういうものだということが法律上、デフォ
ルトルールで定められるのであれば、第三者としても特に問題はないのではないかとも思
います。
一方で、帰属清算と処分清算で明らかにこのような形で変えてしまうということだとす
ると、では帰属清算はやめて処分清算にしましょうかと、処分清算というときには、実務
的には割合と関係会社であるとか普段の取引先、あるいは親密先のようなところにぽんと
短期間で売ると、あえていろいろなところを探して処分清算をするというよりは、短期間
でぽんと売っていくというのが処分清算でのよく見られる形だとも思っておりますので、
なおのこと、では帰属清算から処分清算に変えていきましょうと、特に動産に関しては、
帰属清算で自分で貸金業者の方が売るというのはなかなか難しいというのはありますので、
処分清算が多いだろうと考えてもおりますので、なおのことそういった形になろうかと思
います。それで、加えて受戻権の5番のお話で別除権かどうかは解釈ですねと言われてし
まいますと、そこはなかなかバランスをとれていないのではないかと感じた次第です。
以上です。ありがとうございました。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございました。私は阪口さんのお話を伺ったときに、受戻権の
話とそれ以外の話と申しましたけれども、結局お二人の発言がともに、所有権の移転の時
期というものを遅らせるという形で債務者、設定者の権利を確保するのか、それとも、所
有権の移転時期というものがあって、その後に一定期間の受戻権を認めるという形にする
のかという構造上の問題に関わっておりますので、なかなか二つに分けられないというこ
とが分かりました。大変司会として不手際で、申し訳ございませんでした。
もっとも、阪口さんのお話の最初のところだけを最初に確認をしたいのですが、譲渡と
いうだけでは、譲渡契約の締結なのか所有権の移転なのかはっきりしないのではないかと
- 20 -
いうことから、どういうおつもりですかということについて、事務局から何かございます
でしょうか。
しろまる工藤関係官 今御指摘があった点は、事務局としてはまだ少し悩んでいるところではござ
いまして、恐らく問題意識としましては、物権変動時と契約締結時のどちらに処分清算の
効果が発生するのかというところで、所有権留保特約があったりする場合に違いが生じて
くるということになるかと思います。
その場合に、処分清算というのは第三者が目的物の所有権を確定的に取得することによ
っていろいろな効果が発生するものと考えるとすると、物権変動時に効果が発生するとい
う考え方自体は理屈の上ではあり得るとは思うのですけれども、ただ、それで本当に実質
的に妥当なのかという問題はあり得るかなとは思っておりまして、例えば、所有権留保特
約が付いていて譲渡後に所有権が留保されている間に目的物の価値が低下してしまったと
いうようなときに、価値の低下後の額でしか被担保債権の消滅が生じない、また清算金が
発生しないということになってしまうかと思いますけれども、そういった事態が妥当かと
いう問題というのはあるかと思います。
そういう意味では、逆に、常に契約締結時に処分清算の効果は発生することとして、そ
ういった所有権留保特約によって処分清算の効果の発生時期をずらすことができないとい
う仕組み自体もあり得るのではないかとも思っておりまして、ここはまだ結論は出ていな
いところです。こちらも考えさせていただければと思います。
しろまる阪口幹事 阪口です。仮に5の制度が導入され、かつ墨付き括弧の中に入っていますけれ
ども、処分清算のときも受戻権があるということになったときの処分清算には、占有が債
務者の手元にある場合での処分と、担保権者に占有が動いた後の処分とがあって、後者は
受戻権がないので、特に問題は生じません。他方、債務者の手元に占有がある状態での処
分において、当事者の行動は、普通は買主は、物が本当に確保できるのですかという不安
を抱き、確保したときに代金を払うとなり、代金を払ったときに所有権が買主に移転する
ことになる。つまり、債務者の手元に物がある状態での処分清算というのは、一種の停止
条件付きというか、将来きちんと物が確保できたらお金を払いましょう、そのときに物権
変動させましょうという合意が必然的に付いてくるわけですよね。だから、所有権移転時
期と売買契約時期がずれてきて、受戻権の存否が影響されてしまうものですから、どちら
かはっきりしたいということです。物権変動の問題だから物権変動時ではないのかなとも
思ったのだけれども、部会資料の書き方だけだったらどちらとも読めたので、質問させて
いただきました。私としては、物権変動の方が筋なのではないかと思っています。価値下
落の問題については、また検討したいと思います。
しろまる日比野委員 今の点、4の譲渡のところに関してなのですけれども、観点は違うのですが、
私も阪口先生と同じように、物権変動の時点ということなのかなと思っておりました。こ
の御提案の内容ですと、譲渡したときに被担保債権が消滅するという効果を伴いますので、
契約したタイミングで被担保債権が消滅するというふうにされると、要するに、対価が払
われていないのだけれども被担保債務だけが先に消滅するということになってしまうのか
なと。それは、契約から物権変動までが、通常はその期間が空くという取引実務を前提に
してということになると思うのですけれども、対価が払われたときに物権変動が生じると
いうのが、実務上は通常だと思いますので、そうであれば対価が支払われて物権変動が生
- 21 -
じたところで被担保債務が消滅するという形にしていただく方が、担保権者の立場とする
と安心感があると考えております。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。
しろまる大西委員 よろしくお願いします。15ページの3(4)のところでの趣旨の確認が第1
点なのですが、ここで見積価額が著しく不合理であると認められる場合には効力が生じな
いとあります。ここで書かれている趣旨は、ここに書かれている例以外も含む広い概念と
捉えてよいのか、という質問です。すなわち、見積価額が通常著しく不合理になる場合は、
例えば、設定者が特に高く評価して買ってくれる先を知っている場合に生じると思うので
すが、そういう要素まで含むのかにつき、必ずしもこの記載からは読めなかったことから
お尋ねしています。ここの見積価額の合理性については、あらゆる事情を考慮するもので
あり、ここに書かれている考慮要素に特段限定する趣旨ではないかを確認させてください。
もう1点は、帰属清算はこういう(4)という規定があるのですが、処分清算の場合には、
このような規定がありません。本来でいえば、同じように著しく不合理な見積り、すなわ
ち処分があった場合に、これは同じような規定を入れてもおかしくないともいえるのです
が、そこは、結果的に、目的となる動産の評価額、または清算金の計算において評価され
るので、それで問題ないという趣旨でしょうか。この辺の理解を確認させていただきたい
と思います。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございます。前半のことについて少し御質問内容を確認したい
のですけれども、設定者がよく分かっているので設定者に聞くという話ですけれども、ど
う働くのですか、設定者が言ったとおりにするのは無理がないといって合理性が認められ
るという方向に働くという御趣旨なのか、少し補足をお願いします。
しろまる大西委員 すみません。見積価額が合理的かどうかというのは、いろいろな要素と比較す
るのですが、実際は高く評価される買手がいるということも、それとの比較もあるかと思
うのですが、そういうところがあった場合に、そこも含めて考慮すべきなのかという、見
積りの合理性についてどんな要素で考えるべきかという質問です。
しろまる道垣内部会長 つまり、設定者として、うちが売ればもっと高く売れるぞというのは合理
性を否定する理由になるかということですか。
しろまる大西委員 そういうことです。
しろまる道垣内部会長 もしよろしければ、事務局の方から。
しろまる工藤関係官 1点目御質問いただいた、帰属清算の本文の(4)の著しく不合理であると
認められる場合について、これが考慮要素を限定するものかどうかという点ですけれども、
これは特に限定はしない趣旨で書いておりまして、「その他の動産の評価に係る事情に照
らして」と書いておりますけれども、「その他の」というのは一般に法律上は例示を指す
ときに使われる言い回しかと思っておりますので、ここでもその趣旨で用いており、ここ
にいろいろ書いてある要素は飽くまで例示で他の要素も考慮要素となるという趣旨で書い
ておりました。
また、今おっしゃられた、設定者がこんな高い買手がいるよということを担保権者に伝
えたというような場合で、かつ担保権者側がそれを無視して安いところに売ってしまった
というような場合には、恐らくそれもやはり考慮要素にはなるのだろうとは思っておりま
- 22 -
して、そのときに、その経過というのは担保権者と設定者の交渉の状況というところに当
てはめて考えるというのもあり得るのかなというふうに、今お伺いしていて思った次第で
す。
それから2点目の、処分清算のところで同じように見積価額が不合理なときには効力を
生じないというような規定は設けられないかというところですけれども、ここは確か中間
試案まででも議論があったと思いますけれども、やはり処分清算の場合には第三者が登場
するということで、取引の安全を保護する必要があるということから、効力を生じないと
いうような規定を設けることはここでは御提案はしておりません。ただ、処分清算の本文
の(4)の隅付き括弧を採用する場合には、やはり暫定清算金の算定の合理性を確保する
手段というのは、何かしら必要になってくるのかなとも思っておりますので、そこを採用
するかどうかというところとの組合せでも考える必要があるのかなとは思っております。
しろまる大西委員 分かりました。ありがとうございます。
しろまる片山委員 慶應大学の片山でございます。先ほどの処分清算のところで、譲渡なのか処分
なのか、それとの関係で、物権的な処分効が生じているのかどうかという話と関連するの
かもしれませんが、そもそもこのシステムの中で、いわゆる確定的な所有権移転の帰属、
所有権移転の効果がいつ生じるのかと問題がどこまで意識されなければいけないのか、よ
く分からないところがございます。恐らく現行の判例法のシステムにおいては、換価処分
が完結するという時点が確定的な所有権の移転時期というか、確定的に所有権の帰すうが
決まる時点で、その時点まで受戻しができるというシステムになっているのだと思います。
今回の立て付けというのは、まずは、帰属清算でいうと帰属清算の通知および暫定清算
金の提供の時点で、これは3(2)のところになりますけれども、最終清算金の支払い義
務が発生するということになっています。次に、処分清算の場合、4の(3)のところで
最終清算金の発生、これは恐らく被担保債権の弁済の効力が生じて、最終的な清算金の支
払義務が発生するという時点なのだと思いますが、その時点と確定的な所有権の帰属とい
うものが連動していると考えられていいのでしょうか。さらに、それを前提とした上で、
受戻権に関しては、その後、受戻権を行使するということになるというのは、所有権の帰
属が一旦は確定した後のいわゆる形成権的な意味での受戻権になるのだという形で、いわ
ゆる確定的な所有権の帰属、移転と連動しているという理解でよろしいでしょうか。その
点を確認できればと思いました。よろしくお願いいたします。
しろまる工藤関係官 基本的に今回の部会資料30の第6の3から5までについては、今おっしゃ
られたような発想で制度を組み立てていたというところになります。
しろまる道垣内部会長 山本和彦委員からも手が挙がっているのですが、私の方から一言申します
と、受戻権という言葉の使い方が仮登記担保と譲渡担保の場合とで異なるというのは、私
がかねて述べてきたところであって、仮登記担保の場合には所有権が仮登記担保権者に移
るというのがあって、移った後、一定期間は受戻しができるということになっていて、所
有権が担保権者に帰属した後に特別に受け戻す、それは被担保債権相当額を払って受け戻
すのであって、被担保債権そのものを弁済して払うのではないと、そういう形になってい
たわけです。それに対して、譲渡担保に関する判例において受戻しというのが使われてき
たのは、結構広く使われてきていて、弁済期が到来する前に、あるいは弁済期に被担保債
権に係る債務を払うというのも、受戻しという言葉で使われてきたわけです。それは、恐
- 23 -
らく譲渡担保については所有権の移転というのが一応起こっていると考えるので、はなか
ら受戻しであると考えるという考え方があろうと思います。
さて、今回、原案として出ているのは、工藤さんからも話がありましたように、仮登記
担保と同じように、ある段階で確定的な所有権の移転が譲渡担保権者に対して起こる、そ
して、起こるのだけれども、なお一定期間は特別な取戻しの権利としての受戻権というの
を認めるという構造になっているのですね。しかし、それに対しては、そういう構造をと
ることによって、受戻し期間内は担保権者の完全な所有物になっているだから、別除権で
はなくて取戻権だよねと言われたのでは、それは困る。そう考えるとき、そもそも実行構
造において、所有権の移転時期というものを遅らせて、被担保債権の弁済期が到来して一
定期間経過してもなお確定的な所有権の移転が生じるまでは受け戻せるという形で仕組む
べきだということが他方の見解としてあるわけですね。そして、どちらがいいでしょうか
というのが、ここで提起されている問題かと思います。
片山さんの質問に対する事務局からの回答は、それはそのとおりなのですが、絶対にそ
うしますというふうなことではなくて、既に反対する意見も幾つか頂いているという状況
かと思います。
しろまる山本委員 今の部会長の御説明で大変明確になったのだと思いますけれども、私自身もこ
の案は、要するに基本的には仮登記担保方式という案だと理解しておりまして、そのこと
について、それがいいかどうかという定見を特に持ち合わせているわけではありません。
ただ、やはりこの項目の最後に書かれてある、取戻権か別除権かというのが解釈に委ねら
れるという話になると、これはかなり混乱を、少なくとも立法直後、最高裁の判例が出る
までは、混乱を招くのではないかということを懸念します。やはりこういう規定を置くの
であれば、立法者としては責任を持って、これが倒産時にどのように扱われるかというこ
とをやはり書くべきではないかというのが私の考えです。
仮登記担保の場合は、私が理解する限り、清算金が支払われるまでは差押え債権者に所
有権は対抗できないという規律が存在し、それは当然、倒産手続開始にも対抗できないと
いうことですので、それが別除権として扱われるというのは、所有権取得が対抗できない
とすれば、ある意味、自然なところはあるわけですが、この制度は恐らくそうはなってい
ないとすると、普通に考えれば取戻権なのだろうと思います。
ただ、そう考えても、中止命令とか禁止命令が作れないわけではないのかなと。普通の
担保権実行中止命令を解釈として持ってくるというのは、すごくきついのだろうと思いま
すけれども、立法するのだったら作れないことはない、つまり、所有権は移転していても、
比喩的にいえば不完全な所有権の移転というか、受戻権が留保された上での所有権の移転
なので、ある種、別除権の延長線上にあって、受戻しは可能であると、その間、占有の移
転を止めるような中止命令ないし禁止命令というのが、立法で作るならあり得なくはない、
理論的に見てもそれほどおかしくないのではないかという印象を持っておりまして、そう
いうものを作ってこういう制度を入れるということは、あるいはあり得るのかな、もちろ
ん、先ほど来出ていますように所有権移転時期を後ろに倒すというのは最もきれいなのだ
ろうと思うのですけれども、それはこれまでも実務上はやはりいろいろ弊害があるという
御指摘があったところのようにも思いますので、そこの一種、妥協案かもしれませんが、
そういうことは考えられなくはないかなという印象を持っているということです。
- 24 -
しろまる道垣内部会長 ありがとうございました。山本さんに1点伺いたいのですが、例えば中止
命令とかそういう制度を作った場合には、作ることによって、実はこれは別除権なのだと
いうことがインプリケーションとして出てくるのか、それとも、取戻権でも出てくるのだ
から、中止命令の制度を作ったからといって別除権だという解釈に必然的になるわけでは
ないという話なのか、それは後者ですか。
しろまる山本委員 書き方にもよると思うのですけれども、別除権であれば、つまり担保権だと構
成されているのであれば、通常は何も規定を置かなくても中止命令の規定は適用になるは
ずなので、別途規定を置いているということは担保権とは考えられていないのだろうとい
うことを、そういうニュアンスを醸し出すところはあるのかと思いますし、さらに、私の
理解ではラジカルな問題は、会社更生の手続開始決定後の取扱いとして、会社更生はもう
更生担保権と取戻権を明確に分けていて、更生担保権は当然に手続開始後は実行できない
という形になります。したがって、手続開始後もその実行、これの占有移転を止めるとい
う制度を会社更生で作るのだとすれば、それは何となくもう、取戻権なのだけれども止め
ますよという性格がやや明確に出るという感じになるのかなとは思っています。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございます。
ほかに、いかがでしょうか。
しろまる片山委員 片山でございます。度々申し訳ございません。受戻権を処分清算で認めるべき
かどうかという点についてですが、先ほど大澤委員の方からは、取引の安全ということは
あるのかもしれないけれども、それはそれほど重視しなくてもいいという趣旨の御発言が
あったのかとは思うのですけれども、やはり処分清算で第三者、買受人に買ってもらうと
いうときに、引渡しまでは受戻しの可能性があるというリスクを伴っているとなると、な
かなか買手が見付からないのではないかと素人考えでは思ってしまうところです。そこで
やはり、仮登記担保もそうですけれども、処分清算の場合については、設定者の方の再建
ということはもちろんあるのかもしれませんが、それ以上に取引の安全を重視して、受戻
しはもうできない、留置権での保護に留めるという方向の処理を考えるべきではないかと
思ってはいたのですが、その点に関して、やはりそれほど取引の安全というのは重視しな
くていいというのが実務の感覚ということでよろしいかどうかも、再度御確認を頂ければ
と存じます。よろしくお願いいたします。
しろまる道垣内部会長 大澤さん、何か御意見がありましたら、お願いします。
しろまる大澤委員 ありがとうございます。もうどうバランスをとるかという問題だとは思ってい
るのですけれども、先ほど少し申し上げたとおり、こういった担保権の実行の中で出てく
る、実行する対象物を買いますという第三者であるということにおいて、もうそれが担保
権実行手続の中に手を突っ込みますというのが第三者としてもお分かりになっているわけ
だと思います。そうしますと、そこのリスクを踏まえてどんな形で買うかということを認
識の上で取引関係に入ってくるという意味で、取引の安全を保護しないでいいと申し上げ
るつもりは余りないのですが、第三者としてもそういったリスクが分かった上で取引関係
に入ってくる、そういった第三者であると考える以上、猶予期間を入れるとか、あるいは
受戻しの余地があるというのは十分分かる、理解できる仕組みの中に入ってきているのだ
と思うので、そういった意味で、前提として仕組みを作っておれば、その仕組みを考えた
上で第三者がどう入るかというふうに整理ができると思っておりまして、その観点で通常
- 25 -
の第三者とはまた少し違うのではないかと考えた次第です。
お答えになっているかどうか分かりませんが、以上です。
しろまる阪口幹事 大澤先生の御意見に補足させていただきます。先ほどの話で、譲渡というのが
物権変動の意味だということであれば、売買契約を結んだだけでは譲渡ではなく、かつ普
通の場合は占有が移転した後の譲渡になるので、5のところで処分清算を含めたとしても
問題が結局発生しない。次に、占有も受けずに先にお金を払って引き取ろうとする買主が
いるとしたら、その買主は保護しなくていいのではないかという感覚です。それは多分、
担保権者の関連会社か何か、そういうダミーのような人だと思いますので。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございました。
さて、大きな対立点といいますか、どちらにするかという問題点として、所有権移転時
期を後ろにずらすという話なのか、それとも所有権は移転するけれども受戻権がある程度
認められるということにするのかということなのですが、もう一つそのときにあるのは、
不動産の譲渡担保については清算金の確定時期というのを、例えば事実審の口頭弁論終結
時とかというふうなものを持ってくることによって、判例では比較的はっきりしているわ
けですが、判例でそういうふうなことが争われるわけではないということを前提にして、
普通はどういうふうに考えるのかというのが多分あって、動産については取り分けそうい
うのがあるのだろうと思うのです。所有権移転時期を後ろにずらすというお考えを採られ
るときに、被担保債権の消滅時期というものについてはどのようにお考えになるのでしょ
うか。お考えがあればお聞かせいただきたいという話です。
今回の事務局の提案として出てきているのは、被担保債権の消滅時期というのを前倒し
にしておかないと、いつまでたっても幾ら減るのかが分からないと、それはあるところで
決めて、その後はそれが終わった後の若干の保護とか、そういう問題として位置付けてい
るわけですね。それに対して、所有権の移転時期自体を後ろにずらしますと被担保債権の
消滅時期も後ろにずらすということになるのですか、それとも、それはまた別問題でしょ
うか。
余り的確な問題提起ではないかもしれませんが。
しろまる大澤委員 そうですね、所有権の移転時期がずれるということは、そこで少し、先ほどの
代金支払いとごっちゃになっているところがあるかもしれませんけれども、所有権の移転
時期がずれるということであれば、それと被担保債権の消滅時期が連動すると考えた方が
良いようにも思います。ただ、そうするとその間の、先ほどのお話ですと、目的物の差額
とかの話が、評価がずれた場合とかの話が出てくるのかもしれませんが、ずれるようには
思っているのですが、そういった意味で所有権移転時期と連動するように思っているので
すけれども、部会長のお考えだと、それだと不都合が起きるのではないかとお考えだとい
うことでしょうか。すみません、余り問題意識が。
しろまる道垣内部会長 すみません、別に不都合が起きますと言っているわけではないのですけれ
ども、そもそも引き渡さない間に価値を確定して、それで消滅するというのも譲渡担保権
者がきつい感じがしますので、どうすべきなのかというのはよく分からないのですが、一
応この時点で所有権の移転が生じて、譲渡担保のプロパーの関係が終わりましたというこ
とになると、その時点の価額で消滅するという結論は比較的導きやすいと思うのですけれ
ども、所有権の移転時期自体が後ろにずれると、消滅時期も後ろにずれるのだろうと思い
- 26 -
ます。それでいいのですか、それとも、被担保債権の消滅に係る評価時期というのはもう
少し前に持ってくるのですかという、単なる質問なのですけれども。
しろまる阪口幹事 阪口です。先ほど代金の話もありましたけれども、普通はその所有権移転時期
と被担保債権の消滅時期が連動すると思うのです。それはそのときに現実にお金が入るの
で、被担保債権が消えるタイミングです。仮に、例えばここが2週間なら2週間、3の墨
付き括弧の部分が2週間となれば、2週間の価額変動リスクをお互いが負うことになる。
しかし、仮にそのような制度を導入するのであれば、ある意味、もう仕方がない話なのか
なと思います。実行時期選択権が担保権者にあるとはいえ、言い方は悪いけれども、動産
担保の価額というのは元々そういうものであって、2週間とかその程度の変動は仕方がな
いのかなという感じはします。
しろまる道垣内部会長 すみません。ほかに、御自由にお願いいたします。
どういうふうな仕組みにするのかという非常に大きな選択に関わっておりますので、是
非とも御意見を頂ければと思いますけれども。
しろまる藤澤幹事 いつ被担保債権を消滅させるかということなのですけれども、この後の議論の
保全処分とも関わってくる点だと思うのですが、もし保全処分みたいなものが若干不十分
だという状態だとしますと、先に被担保債権が消滅して、その後も債務者が目的物を占有
している状態が継続する場合に、債務者には目的物を適切に管理するインセンティブがな
くなりますので、債権者にとって酷な状態が生じかねないかなというような感触は持って
おります。
しろまる道垣内部会長 なるほど。それは逆に、きちんとしていればたくさん減るよという仕組み
にしておいた方がうまくいくのではないかという話ですね。
ほかに何かございませんでしょうか。なかなか抽象論では難しいところかもしれません。
では、今の御意見を踏まえまして、もう少し精緻化をしたいと思います。
ただ1点だけ少し、1点だけということはなくて、いろいろあり得るのですけれども、
17ページの4のところの共同担保の実行についてというのがあります。仮登記担保法と
いうのは、複数の目的物があって共同担保関係が発生するときに、その割付をするという
話になっているわけだけれども、動産譲渡担保について多数の目的物について担保の設定
を受けたような場合には、一体として実行するというだけで、割付をする必要はないので
はないかということが書いてあるのですけれども、これはいかがですか。
私は本当はよく分からなかったのだけれども、つまり、例えば各100万円のものが1
0個あって、それが全部譲渡担保の目的物に取られているけれども、800万円が被担保
債権であるといったときに、八つ以上実行していいのかなあ。つまり、八つ実行したらも
うあとは過剰な実行になるので、認められないということになるのではないかという気が
して、それと割付との関係はどうなっているのかというのがよく分からなかったのだけれ
ども、それはどうなのですか。もしよろしければ。
しろまる工藤関係官 過剰な実行をしてはいけないのではないかという点については、確か仮登記
担保の判例でそういったものがあったような記憶はありまして、すぐどういったものだっ
たのか思い出せないですけれども、そういった議論自体はここでもあり得るかとは思いま
す。
しろまる道垣内部会長 仮登記担保法の割付というときには、あるものに全額を付けるというか、
- 27 -
例えば三つあるものに300万円ずつ付けるというふうなことが予定されているわけでは
ないですよね。
しろまる工藤関係官 仮登記担保法の仕組みは基本的に債権者、担保権者が自由に割付けをできる
という仕組みでして、立案担当者の解説では、幾らを割り付けてもいいというふうに説明
がされていたかと思います。
しろまる道垣内部会長 なるほど、そうすると少しずつたくさんのものに割り付けても、いいとい
うことですか。
しろまる工藤関係官 原則としてはいいことになるけれども、本当にそれでよいのかについては、
判例等で問題提起がされているということになるのかと思います。
しろまる道垣内部会長 なるほど、それはそういうふうな判例法理なら判例法理に委ねるというか。
確かに難しいよね、一部で足りるときには一部しかできないと、ではどの一部なのかとか
いう話になるから。
しろまる阪口幹事 17ページに書かれている割付の問題は、今の過剰の問題を考えてはいなかっ
たのですけれども、実務的には、全く無理ですということではないかと思います。動産と
いうのは数も正直、幾つあるか分からない、つまり、AとBをくっつけてABという商品
で見るか、AとBばらばらで見るかということも含めて、数え方だっていろいろある。不
動産の場合は筆や棟で明確に物が分かれているので、割付可能ということだと思うのです
が、動産担保においては、過剰担保の問題とは別に、割付は、実務的な感覚でいうと、全
く無理と思います。それが理論的に許容されるかどうかというのはコメントできませんけ
れども、実務的にはできませんということだけははっきりしていると思います。
しろまる道垣内部会長 ほかに、よろしゅうございますでしょうか。
それでは、根本的なところの仕組みにつきまして、まだなお意見が一致しているわけで
はございませんので、更に検討を続けていただくということになりますけれども、ひとま
ずここで終えまして、続きに入っていきたいと思います。
「第6 動産譲渡担保権の実行に関する規律」のうちの「6 他の担保権者に対する通
知」というのと「7 清算金の支払に関する処分の禁止」というところに移っていきたい
と思いますので、事務当局におかれましては部会資料の説明をお願いいたします。
しろまる工藤関係官 それでは、「6 他の担保権者に対する通知」について御説明いたします。
今回の御提案では、第8の項目は、後順位担保権者が私的実行をした場合の規律という観
点から整理することとしたため、本文の通知は私的実行の際の規律として第6で取り上げ
ています。
中間試案第10-3では、担保目録制度を導入しないことを前提として、担保権者が設
定者に対する動産譲渡登記を備えた全ての者に対して通知するものとする【案10.3.1】、
担保目録制度を導入することを前提として、担保権者が担保目録上において関連付けられ
た担保権を有する者に対して通知するものとする【案10.3.2】、設定者が当該目的物につ
いて担保権を有する他の担保権者に対して通知するものとする【案10.3.3】をお示しして
いました。ここでは、担保目録制度を導入することや、設定者に通知を義務付ける考え方
は実効性に乏しいとの御指摘があることを踏まえ、【案10.3.2】を採用することとしてい
ます。
また、本文(2)の通知については、動産譲渡登記ファイル上の住所又は事務所を通知
- 28 -
先とする考え方と、動産譲渡登記ファイル上の住所、事務所その他法務省令で定める連絡
先を通知先とする考え方を隅付き括弧で併記しています。後者の考え方につきましては、
例えば電子メールアドレスを任意的な登記事項をすることによって、その記載があるとき
にはメールを送信すれば足りるものとすることが考えられますが、そのような規律を採用
した場合の問題点やニーズも含め、御議論いただければと思います。
「7 清算金の支払に関する処分の禁止」では、仮登記担保法第6条と同様に、後順位
担保権者の清算金請求権に対する物上代位の利益を保護することを目的として、将来債権
である清算金債権の処分を禁止したり、その弁済を後順位担保権者に対して対抗すること
ができないものとしたりする規律を採用するか否かについて、新たに問題提起をしていま
す。
以上について御議論いただければと思います。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございます。
それでは、御自由に御議論いただければと思います。
しろまる藤澤幹事 全く落ちのない話というか、だから何、みたいな感想なのですけれども、6番
で、登記のある人に通知をするというルールがとられていることで登記のインセンティブ
が高まるだろうということが考えられるのですけれども、その中にはやはり留保所有権者
も含まれることでよろしいでしょうか。恐らく、留保所有権者でも、登記をしていない留
保所有権者には通知は行かなくて、登記をしている人には通知が行くということになるの
かなと思いました。
ところが、今の時点では、所有権留保というのは売買契約の付款ですので、いちいち目
的物を特定することは行われていなくて、特定方法とかもそれほど考えずに、売ったもの
の所有権を留保します、みたいな約定がされていると思うのですけれども、留保所有権で
も登記しなければいけないとなると、目的物を特定したりしなければいけなくなって、所
有権留保が大変になりそうだなと思いました。という感想で、すみません、それだけです。
しろまる道垣内部会長 藤澤さんのお話がその方向になるとは思わなかったのです。つまり、別に
大変にならないよね。通知を受けなくていいのだったらば登記をしなければいいだけの話
だから、別にこの制度によって何か負担が増えるわけではないので、大変ではないと思う
のだけれども。
ほかに何かございますでしょうか。落ちのない話なのですけれども、7の「清算金の支
払いに関する処分の禁止」というのは、日本語としてどうなのかという気がします。清算
金の支払いが処分されるわけではないですよね、こういう日本語はあり得るのですか。
しろまる工藤関係官 仮登記担保法第6条の見出しに、こういった日本語が書かれているかと思い
ます。
しろまる道垣内部会長 なるほど、処分の対象は債権であり、けれども弁済が対抗できないという
のを一遍に書こうとするからこういう、訳が分からないと言ったらあれだけれども、日本
語としてどうかというふうな言葉になってしまうのだろうと思うのだけれども。ごめんな
さい。
しろまる阿部幹事 7のところなのですけれども、仮登記担保法の6条の1項と2項、ほぼそのま
まということで、多分問題はないのだろうと思うのですけれども、(1)の「処分するこ
とはできない」というのは、後順位担保権者の物上代位を保護するためということなので、
- 29 -
処分をしたとしても物上代位をしようとする人には対抗することができないと、そういう
趣旨だと理解してよろしいでしょうか、ということを伺いたいと思いました。仮登記担保
法の6条1項も多分、同じ話なのだと思うのですけれども、そちらの趣旨が余り私はよく
分かっていませんでしたので、念のため確認したいと思いました。
しろまる工藤関係官 ここについては確か仮登記担保法の方では、対抗することができないという
意味ではなく、無効とするという趣旨だと解説されていたと記憶しておりまして、対抗す
ることができないというふうにしてしまうと複雑な問題がいろいろ生じてしまうというこ
とで、すみません、複雑な問題がどういった問題だったか今、にわかには思い出せないの
ですけれども、そういったことで無効とするという考え方が採られていたかと思います。
ですので、7で「することができない」と書いたのも、無効とするという趣旨で記載をし
ておりました。
しろまる阿部幹事 分かりました。ありがとうございます。その複雑な問題が何なのかがよく分か
らなかったのですけれども、差し当たり御趣旨は分かりました。
しろまる道垣内部会長 無効とするって、どうして。清算金に対する物上代位権を行使しなかった
ときに、それはどういう法律関係になるのですか。清算金支払ってしまったのでしょう。
しろまる工藤関係官 今のは支払いの方ではなく、(1)の譲渡その他の処分の方です。
しろまる道垣内部会長 なるほど、すみません。そうですか、それなら分かります。申し訳ない。
ほかにございませんでしょうか。
第6、7につきましては、よろしゅうございますか。また何かございましたら、遡って
いただいても結構でございますので、よろしくお願いいたします。
それでは、先を急ぐようで恐縮でございますけれども、「第7 動産譲渡担保権の目的
物の評価・譲渡又は引渡しのための担保権者の権限及び手続に関する規律」について、議
論を行いたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。
しろまる工藤関係官 それでは、「第7 動産譲渡担保権の目的物の評価・譲渡又は引渡しのため
の担保権者の権限及び手続に関する規律」について御説明いたします。
「1 評価又は譲渡に必要な行為の受忍義務」については、中間試案第9-1から実質
的な変更はありません。中間試案で(注)としていた、設定者に対して情報提供義務を課
す考え方については、提供すべき情報の範囲を明確に定めることが困難であることや、担
保権設定契約において定めれば足りると考えられることなどから、ここでは採用しており
ません。
「2 動産譲渡担保権の実行のための保全処分」についても、幾つか細かな点での変更
はありますが、大きな修正はありません。本文(2)から(13)まででは、民事執行法
第187条や第55条を参考として、手続的な規律として考えられるものを挙げておりま
す。また、本文(14)では、この保全処分について緊急換価の手続を設けるか否かにつ
いて、本文(15)では、執行官保管の保全処分後に私的実行をした担保権者又は第三者
がどのようにして執行官から目的物の引渡しを受けるかについて、本文(16)では、劣
後担保権者による保全処分の申立てについて第8の1と同様の規律を採用するか否かにつ
いて、それぞれ問題提起をしております。
「3 動産譲渡担保権の実行のための引渡命令」についても、中間試案第9-3から実
質的な変更はありませんが、清算金の見積額の供託については裁判上の担保供託と位置付
- 30 -
けることとしているほか、本文(2)から(7)まででは、手続的な規律として考えられ
るものを挙げています。本文(5)では、設定者に対する審尋を不要とする例外を設ける
考え方と、例外を設けない考え方を隅付き括弧で併記しており、本文(8)では、2と同
様に、劣後担保権者による申立てについて、第8の1と同様の規律を採用するか否かを問
題提起しています。
「4 動産譲渡担保権の実行後の引渡命令」についても、中間試案第9-4から実質的
な変更はありません。もっとも、第6の3及び4では、最終清算金の額よりも暫定清算金
の額の方が小さい場合に限り、暫定清算金の支払いと目的物の引渡しとが引換給付関係に
立つものとする考え方をお示ししていましたが、ここでは、この手続において最終清算金
の額が争点となるのは相当ではないことから、裁判所は、最終清算金の支払と目的物の引
渡しが引換給付関係に立つときであっても、暫定清算金の支払との引換給付を命じなけれ
ばならないものとしています。本文(2)から(5)まででは、手続的な規律を提案して
いますが、本文(3)では、3と同様に、設定者に対する審尋を不要とする例外を設ける
考え方と例外を設けない考え方を隅付き括弧で併記しています。
以上について御議論いただければと思います。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございます。
それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を伺
いたいと思いますが、問い掛けになっているところもございますけれども、そこに限らな
いで、広く御意見を頂ければと思います。もちろん問い掛けになっているところも御意見
を特に賜りたいとは存じますけれども。
しろまる阪口幹事 阪口です。何度も申し訳ございません。2点ありまして、まず、緊急換価につ
いて問い掛けがあるのですけれども、実務的には必要だろうと思います。後の3の無審尋
発令ができるかどうかという問題とも関係しますけれども、ただ、無審尋発令が認められ
ても確定しないと効力が発生しないという問題があります。典型的には、冷凍食品を担保
に取っているが、債務者が電気代も払えない状況で間もなく電気が切れるというような場
合ですけれども、やはりそこはもう緊急換価をやらざるを得ないのではないか。緊急換価
に関しては、もちろん運用としてそんなに簡単に認めるべきではないと思いますけれども、
制度としては必要だろうと思っています。
もう1点は、ところどころ3か月以内に実行等をしたことを証する文書の提出という規
定があるのですけれども、ほかのところは皆、1か月とか結構短いスパンで規律されてい
るのに、ここだけ3か月は長すぎる。多分民事執行法の条文を持ってきているのですけれ
ども、あちらは不動産なので、ここは1か月ぐらいなのではないかという感覚はあります。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございました。何かその辺りありますか。3か月問題も含めて。
しろまる笹井幹事 承りました。
しろまる道垣内部会長 検討していただくことにしたいと思いますが、ほかにございませんでしょ
うか。
しろまる山本委員 今回、保全処分について手続的な規定を明示していただいたので、細かいとこ
ろばかりですが、4点ばかり気が付いたところを申し上げたいと思います。
まず、2(1)ウの保全処分及び公示保全処分ですけれども、これは恐らく55条のい
わゆる当事者恒定のための保全処分といわれるものをここに入れているのかなと思います。
- 31 -
私の理解が間違っているかもしれませんが、平成15年改正、民事執行法の改正のときに、
当事者恒定のこの保全処分を入れたときは、引渡命令のところの当事者恒定効とパラレル、
民事執行法でいえば83条の2とセットになっていたという印象を何となく持っていたの
ですけれども、仮にそうだとすると、どの程度の必要があるのかよく分かりませんが、こ
の資料の4のところの引渡命令との関係でも、何かそういう当事者恒定効を定めるような
規定というのがセットとしてあり得るのかなと思いました。ただ、これはひょっとすると
単体でも成立し得るような保全処分なのかもしれませんので、私が趣旨を誤解しているだ
けかもしれません。
それから、2点目は2(4)のところで、これは阪口さんが言われたことと少し関係し
ますけれども、3か月が適当かどうかはともかくとして、実行までの期間、一定の期間を
定めるということなのですが、この2(4)のところは、やや異質なものとして、3の引
渡命令の申立てというのが入っています。これが入ると、中間に引渡命令を挟むと、実行
まで6か月、この保全処分を持たせることができるということになりそうな気がしました。
それが適当なのかどうかというのは私はよく分かりませんけれども、そこだけ何でそんな
ことになるのだろうというのがやや疑問で、別にこの引渡命令の申立てをここに入れなく
ても、実行まで3か月ということにすればいいような気もしたというのが2点目です。
それから、3点目が3(5)あるいは4(3)の墨付き括弧のところで、審尋の省略と
いうところです。これは今の阪口さんの話に言及があったように、私はこの審尋を省略で
きる、急ぐために審尋を省略でき、早く効果を発生させるという趣旨だと思うのですが、
それだと(6)、(7)と一体どういう関係に立つのだろう、つまり、即時抗告ができて、
かつそれが確定するまで効力が生じないと。即時抗告をする前提として当然、被申立人に
その保全処分は知らされるわけですから、そうだとすると、結局即時抗告を認めてしまう
と何か月かは確定しないで効力を生じないということになるわけですけれども、それだと
せっかく審尋を省略して急いだ意味がほとんどなくなるのではないかという印象を持ちま
して、3でいえば(5)の墨付き括弧と(6)、(7)の規律というのがやや整合性がと
れていないような印象を受けたということです。
それから、最後に2と3については、(3)のところで、担保権の存在を証する文書と
いうのを申立てについて、付けることになっているのですが、4の引渡命令についてはそ
れがないのですね。これはややバランスを欠いているような印象を持ちました。確かに4
は実行が既に終わっているので、もう担保権がなくなっているといえばなくなっているの
で、出しようがないではないかという趣旨なのかもしれませんけれども、2と3でそうい
う、きちんと担保権がありますよというのを申立ての前提にするのだったら、4の方も何
か、担保権があってそれが実行されたということを証するような文書を最初に付けさせる
というのが筋かなというような印象を持ったということです。
以上、細かい点ばかりですけれども、気が付いた点です。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございました。幾つか御意見、御質問にわたるところがありま
したが、事務局から、いかがでしょうか。
しろまる笹井幹事 特に大丈夫だと思います。御質問がありましたでしょうか。
しろまる道垣内部会長 例えば、3の(5)で無審尋にするのに、即時抗告してというふうなこと
は、ポリシー上の矛盾があるのではないかとか。
- 32 -
しろまる笹井幹事 御指摘いただいたところは、改めて検討させていただきたいと思います。
しろまる道垣内部会長 4について、担保権の存在を証する文書の提示というのは、担保権がもう
実行されているからということであるということですか。
しろまる工藤関係官 担保権の存在を証する文書の提示という規律を入れるかどうかですけれども、
逆に2と3についてそもそもそれが必要かどうかというところも含めて検討中です。民事
執行法187条では、法定文書について担保権の存在を証する文書として提示しなければ
ならないという規律になっていたかと思いますけれども、動産の場合には、そもそも実行
のために法定文書は要求されていないようにも思っておりまして、少しここは検討したい
と思っています。
しろまる山本委員 恐らく、民事執行、執行手続の本体の申立てとパラレルにして、その前に例外
的に百八十何条でしたっけ、の保全処分を申し立てられるので、少なくとも法定文書は、
担保権実行の申立てのときに必要な文書は出してくださいというのがその規律の趣旨だと
思うのですけれども、それがこの場合に妥当するかどうかというのは、今御指摘のように、
かなり怪しいところがあるような気がするとすれば、全部実質的に証明の問題にしてしま
って、いわゆる格式文書みたいなものを最初に提示させるということはなくてもいいとい
う整理も確かに可能だろうとは思います。
しろまる道垣内部会長 ただ、山本さんがおっしゃった、24ページの14から16の間の整合性
の問題とかというのは、全体としてあるような気もする。つまり、引渡命令とか保全処分
とかというふうなものを規定して、てきぱきとやろうよというふうな感じになっている割
には、比較的皆、慎重な形の仕組みになっていて、全然てきぱきしないではないかという
感じは全体としてはするかもしれない。その辺はもう少し考えていただく必要があるのか
もしれないと思いますので。もちろん御意見、今の段階で頂ければ有り難いと思いますが。
しろまる片山委員 慶應大学の片山でございます。27ページの引渡命令についてですが、今の実
務と比較しますと、かなり加重な手続になってしまうのではないかと懸念しております。
処分清算のときには、大抵、売るのに占有が必要だということになるので、引渡命令をま
ず取ってからというのが原則となるというのが、恐らく新しいシステムだと思うのですけ
れども、今まで譲渡担保のメリットの一つは、私的実行だということで、私的実行は執行
裁判所のお世話にならずに担保権の実行が可能であるというのがメリットの一つであった
のですが、新しいシステムですと処分清算に関していうとかなり加重な手続に変わるとい
うことになってしまうと思うのです。もちろん、設定者の清算金の確保も必要だというこ
とで、理解できなくはないのですが、逆にそれを前提としますと、担保権者としては、今
後は、担保権設定契約において、弁済期が到来したら直ちに引き渡しますとか、引揚げに
応じますというような条項を挿入して、この引渡命令を取らなくても引渡しが受けられる
ような、そういう条項を設けるということ予想されるのですが、そうすると、それは一種
の手続回避という側面をもった条項ということになるかと思います。このような条項は、
直ちにやはり効力が認められないということになるのか、それともそうではなくして、そ
れが特約があれば、引渡命令を取らずに占有を取得できる、すなわち実質上の引揚げみた
いなものが可能になると考えていいのか、その辺りをどう考えるべきなのか改めて気にな
りましたので、御教示を頂ければと存じます。よろしくお願いいたします。
しろまる工藤関係官 今御指摘いただいた条項というのは、要するに、清算金が発生するとしても、
- 33 -
それを払うよりも先に目的物を引き渡さなければならないという条項が有効かどうかとい
う論点かと思います。その点について何か今具体的な考え方というのがあるわけではない
のですけれども、いずれにしても現行法の下ですと、仮にその条項が有効であったとして
も、引渡しのときには結局、訴訟等によらなければいけないということになってしまいま
すので、そういう意味では、こういった簡易な手続が設けられることによって迅速に進ん
でいくという面はあろうかと思います。
この手続があるとしても、例えば担保権者の方から、清算金は発生しないので、こうい
う手続もあることですし目的物を引き渡してくださいと求めて、設定者の側が任意に渡す
ということ自体は妨げられないのではないかと思っておりますので、3の実行のための引
渡命令については、飽くまで設定者が協力しない場合にはこういう手続があるという位置
付けになるかと思います。
しろまる道垣内部会長 よろしゅうございますでしょうか。
しろまる青木(哲)幹事 3の実行のための引渡命令と、4の実行後の引渡命令についてですけれ
ども、設定者以外の占有者が目的物を占有している場合にも引渡命令の対象とされている
ということについて、意見を申し上げます。
これらの提案は、恐らく民事執行法188条が準用する83条の不動産競売における引
渡命令を参考にしていると思うのですが、不動産競売の手続においては、登記に基づき登
記名義人が所有者であるということを前提に手続が行われ、登記名義人以外の第三者が所
有権を主張するというような場合には第三者異議の訴えが提起されるということが想定さ
れていて、引渡命令の手続において買受人が所有権を取得したかどうかという、そのこと
自体が争われるということは想定されていないのではないかと思います。
これに対して、ここで提案されている動産譲渡担保権の実行のための、あるいは実行後
の引渡命令については、設定者以外の第三者が目的物を占有している場合に、設定者に所
有権が帰属するということの外形は必ずしもなく、また、競売手続で第三者異議の訴えを
第三者が提起するといった機会もなかったわけであります。そうすると、特に占有者が目
的動産の所有権を主張するというような場面を想定すると、その第三者との関係で、簡易
な決定手続で債務名義を取得できるようにするということが正当化されるのだろうかとい
う点については疑問がございます。
また、先ほど山本和彦委員から少し言及があったのですけれども、第三者がこの目的物
を占有する場合に、動産競売の手続を開始しようと思うと、民事執行法190条1項2号
で目的物の占有者の承諾が必要となります。民事執行法190条2項で動産競売開始許可
決定の制度を設けているのですが、恐らくこのただし書は、目的動産が債務者の占有する
場所に所在する場合にのみ差押えをすることができるということが前提とされているので
はないかと思います。簡易な決定手続による引渡命令を認めるということは、私は動産競
売開始許可決定という簡易な手続で動産競売の手続を開始することができる場合であると
いうことで正当化されるのではないかと考えておりまして、それができない場合、動産競
売の手続を開始することができない場合にまで、この簡易な手続による引渡命令を認める
ということについては、慎重に検討する必要があるのではないかと考えております。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございました。事務局として、今の観点はいかがですか。
しろまる工藤関係官 ここで相手方を占有者にも広げているのは、やはりここで占有者に対して申
- 34 -
立てができないとすると、実効性が失われてしまうという点が理由でして、占有を第三者
に移転するだけで引渡命令が打てなくなってしまうというのは少しどうかなと思ったとこ
ろがあります。今おっしゃられた点は、確かに手続的には問題になるところだと思いまし
たので、その点も含めて更に検討したいと思います。
しろまる道垣内部会長 よろしくお願いいたします。
ほかに、いかがでしょうか。
それでは、これは実際の手続を迅速にするためにどうしたらいいのか、しかし、ほかの
いろいろな制度とのバランスというのもありますので、むちゃはできないわけですので、
考えなければいけないですけれども、もう少し技術的に上手く仕組めないかという話を更
に検討していただくようにしたいと思います。また御意見がございましたら、是非とも事
務局等にお寄せいただければと思います。
それでは、先を急ぐようで恐縮でございますけれども、「第8 劣後担保権者による私
的実行に関する規律」について、御意見を伺いたいと思います。事務当局において部会資
料の説明をお願いいたします。
しろまる工藤関係官 それでは、「第8 劣後担保権者による私的実行に関する規律」について御
説明いたします。
「1 劣後担保権者による私的実行の可否及び要件」では、中間試案第10-1及び2
を併せて取り扱っています。第10の2では、優先担保権者の同意なくされた劣後担保権
者による私的実行の効果について、その効力を生じないものとする【案10.2.1】と、劣後
担保権者又は第三者は優先担保権の負担のある目的物の所有権を取得するものとする【案
10.2.2】を併記していましたが、本文では、結論として【案10.2.1】を採用した上で、中
間試案第10-1のとおり、全ての優先担保権者の同意を得た場合に限って私的実行の効
力が生ずるものとしています。
また、優先担保権者の同意なくされた私的実行について追認を認める考え方を隅付き括
弧でお示ししているほか、説明部分の3において、劣後担保権者が私的実行をするために
は優先担保権の被担保債権の債務不履行を要しないものとすることや、その私的実行の換
価金を弁済期未到来の優先担保権の被担保債権に対して充当できるものとすることについ
て、何らかの規定を置くことができるか否かを問題提起しています。
「2 1の私的実行による各担保権者の被担保債権の消滅」については、中間試案第1
0-4から実質的な修正はありません。パブリック・コメントでは、設定者の利益を保護
することを目的として、本来の優先順位とは異なる充当をするには設定者の承諾を要求す
べきとの御意見もありましたが、民事執行法第85条第1項ただし書においては設定者の
承諾は要求されていないことや、設定者の承諾を要求するとすれば劣後担保権者による私
的実行が活用されにくくなるとも考えられることから、本文では設定者の承諾は要求しな
いこととしています。
以上について御議論いただければと思います。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございます。
それでは、御自由に御議論いただければと思います。
これは、第8の1で劣後担保権者が私的実行をしているつもりで、第三者にも売却しま
したが、止まりませんでしたといったときには、ただ単なる第三者に対する無権限売却と
- 35 -
いうことになるということなのでしょうか。劣後担保権者には何の権限もなくて、ただ単
なる事実としての処分があるということだけで処理されるというのが、この効力を生じな
いということの前提になっているのですかね。
しろまる笹井幹事 そうですね。
しろまる道垣内部会長 そういうことですね。確認です。
しろまる阿部幹事 資料30ページの上の方で、「優先担保権の被担保債権の債務不履行の要否等
について」というところで問い掛けがされているところなのですけれども、私もまず1の
点については、優先担保権の被担保債権が債務不履行となっていることは必要ないという
ことでよいのではないかと思いました。仮に特定の優先担保権者から授権を受けて実行し
ているのだとすると、授権している優先担保権者の被担保債権の弁済期が到来しないとお
かしいという話になりそうですが、ここでは、利益を害されそうな全員の同意を得た上で、
劣後担保権者が自ら担保権を実行しているということになっていると思いますので、実行
している担保権者の被担保債権の弁済期が到来していれば、それで足りるという整理でよ
ろしいのではないかと思いました。
それから、2の問題で、弁済期未到来の優先担保権者の被担保債権にその換価金を充当
できるかという点も、これも充当を認めてよいのではないかと思いました。ここでは、民
事執行法88条のような規定を置くことを私的実行についてできるか、という問題が提起
されていますけれども、この優先担保権者全員の同意を得てする劣後担保権者の私的実行
では、同意をした全員の担保権者の担保権が消えるのだと思います。そうすると、消える
にもかかわらず、換価金の配当といいますか充当というのがないというのは、やはり難し
いのではないかと思いました。中間試案の補足説明では、仮に配当しない場合にどうする
かということで、実行した劣後担保権者から設定者に優先担保権の被担保債権額に相当す
る部分を返還するという考え方が示されていますけれども、そうすると、優先担保権の被
担保債権額は結局、設定者の一般責任財産に混入してしまうわけで、優先担保権者はそこ
には優先弁済権がないということにならざるを得ないかと思います。そういう不利益が嫌
だったら私的実行に同意しなければいい話だと書いてあるのですけれども、そうすると結
局、私的実行に同意することはほとんど担保権を放棄するに等しい意味を持つということ
になりますので、それだと回らないのではないかと思いました。
ですので、結論としては、民事執行法88条と同じように、被担保債権の弁済期が到来
している場合と同じように充当してよいと考えていいのではないかと思いました。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございました。
ほかに御意見はございませんでしょうか。
30ページの13行目のところに、民事執行法88条と同様の規定を置くことが考えら
れるが、なぜ配当手続とは異なる私的実行においてもそうなるのかということは、やはり
民事執行法88条に類似した規定は置くというのが前提になっている文章ですね。分かり
ました、それで。しかし、それが正当化できるかが問題であるというだけの話で。
ほかに何かございませんでしょうか。
しろまる藤澤幹事 劣後担保権者の地位について、1つ意見を申し上げます。劣後担保権者が私的
実行をすることができないということですので、劣後担保権者は法的実行をせざるを得な
いということになるかと思うのですけれども、裁判所の管理の下で実行手続を行うのであ
- 36 -
れば、少し話が戻りますが、保全処分は使えてもいいのではないかと考えました。先ほど
の第7の2(16)のところで、保全処分については全員の同意がないとできないという
ことになっていたと思うのですが、法的実行だけであれば、それを開始するときに保全処
分が使えてもいいのではないか、みたいなことを少し思いました。
しろまる道垣内部会長 これは、今のシステムだと使えないということになっているのでしたっけ。
それはどこで読むのだっけ。
しろまる笹井幹事 25ページの2(16)で、優先する動産譲渡担保権があるときは(1)の保
全処分の申立てができないけれども、ただ、全員の同意を得たときはできるとなっており
ます。
しろまる道垣内部会長 なるほど。ほかに、この点も含めまして、御意見はございませんでしょう
か。
今の藤澤さんの御見解については、いかがですか。
しろまる笹井幹事 一度検討させていただきます。
しろまる道垣内部会長 よろしくお願いいたします。
ほかに何かございませんでしょうか。
しろまる阿部幹事 今の藤澤幹事の御発言ですけれども、確かに譲渡担保権の実行のための保全処
分の要件として、価額減少行為とか何とか、そういうことを言い出すと、それは私的実行
をやりやすくするというだけではなく、法的実行の場合もやはり使う意味があるというこ
とになるかもしれないと思いましたので、藤澤幹事のおっしゃることは一理あるかなと思
いました。他方で、3の動産譲渡担保権の実行のための引渡命令は、これはやはり私的実
行プロパーのものかなと思いましたので、3(8)で全員の同意が必要だとされているの
は、それでよいだろうと思いました。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございます。
ほかにございませんでしょうか。
それでは、以上出ました問題点を更に検討していただいて、また次のクールにお願いす
るということにしたいと思います。
さて、部会資料はもう一個、本日の部会資料というのがございまして、31でございま
す。「担保法制の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(3)」というものな
のですが、こちらの方に入りたいと思います。
それの、まず第1でございますが、「集合動産譲渡担保権の実行」についてというとこ
ろの議論を行いたいと思います。事務局において資料の説明をお願いいたします。
しろまる工藤関係官 それでは、「第1 集合動産譲渡担保権の実行」について御説明いたします。
本文1については、中間試案から実質的な変更はありません。
本文2については、中間試案から大きな変更はありませんが、本文1の通知をした者が
有する集合動産譲渡担保権の特定範囲と他の集合動産譲渡担保権の特定範囲とが重なり合
う場合には、当該他の集合動産譲渡担保権についても固定化が生ずることとし、また、当
該他の集合動産譲渡担保権の固定化は、重なり合っている部分についてのみ生ずるものと
しています。
本文3については、中間試案から実質的な変更はありません。
本文4については、中間試案から大きな変更はありませんが、撤回が認められる終期に
- 37 -
ついて、担保権者が特定範囲に属する動産の一部についてでも実行した場合には、その後
の撤回は認めないこととしています。
本文5については、中間試案から変更はありません。
本文6については、中間試案第11-2において、実行後の再度実行をすることができ
ないものとすることを提案しており、この点は、本文1の通知の到達後に特定範囲に属す
る動産に担保権の効力を及ぼす特約の有効性の問題と考えられることから、本文6では本
文2に反する特約は無効とするものとしています。
本文7については、中間試案第11-3では、集合動産の一部についてのみ固定化を生
じさせるためには、所在場所により特定された範囲を指定しなければならないか、それと
も、種類、所在場所、量的範囲の指定その他の方法により特定された範囲を指定しなけれ
ばならないかを隅付き括弧で両論併記としていましたが、ここでは後者の考え方を採用し
ています。
本文8については、部会資料30の第8の1において、劣後担保権者による私的実行は、
全ての優先担保権者の同意を得た場合を除いて、その効力を生じないものとしていること
を踏まえ、本文1の通知についても同様の規律とすることを御提案しており、ここでも優
先担保権者による追認を認めるか否かについては隅付き括弧を付しています。
本文9については、裁判上の手続と固定化の関係を扱っており、裁判上の手続に係る決
定の執行や差押えがあったときには、当該手続の申立てをした担保権者に限らず、優先担
保権者及び劣後担保権者の担保権についても固定化が生ずるものとした上で、その執行や
差押えが取り消されたときには固定化が覆滅するものとしていますが、その場合の固定化
の範囲については、特定の範囲の全体とする考え方と一部とする考え方を隅付き括弧で併
記しています。
そのほかに、(説明)の10では、時的要素によって集合動産の範囲を特定することが
できるか否かについて問題提起をしています。
以上について御議論いただければと思います。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございます。かなり広い、いろいろなことが規定してあります
けれども、御自由に御議論いただければと思います。
しろまる井上委員 ありがとうございます。井上です。第1のところには、随分いろいろなことが
書いてあるのですけれども、その1から3によると、集合動産譲渡担保の実行は、通知の
一時点で言わば輪切りというかスクリーンショットで固定化して、再度の実行はできない
ということであり、6によると、それは強行規定であると理解しています。
他方、7によると、一部実行した後に残りの実行ができることになっていて、一部実行
の対象の特定は場所的な特定に限らないということになっていますので、例えば、場所的
な特定により、東京の倉庫と大阪の倉庫と福岡の倉庫の果物在庫に集合動産譲渡担保を設
定して、そのうち東京の倉庫の果物在庫だけを実行することはできるし、その後、ほかの
倉庫の果物在庫についての実行もできると、これは今までの議論でも余り異論がなかった
ところだと思うのですけれども、例えば、この三つの倉庫内にあるスイカとメロンの在庫
を夏に実行して、その後、秋にブドウと梨を実行して、冬にミカンとリンゴを実行すると
いったように、その都度、その種類の在庫が極大化した時期を見計らって一部実行を重ね
ていくことが認められるという趣旨だとすると、特定された一部の実行後に残部の実行が
- 38 -
できるという7のルールと、6で2の本文の規定に反する特約が無効であるという考え方
とがうまく整合するのかなと感じた次第です。
その解決方法としては、今の設例とは異なって、A倉庫、B倉庫、C倉庫内のリンゴだ
けに集合動産譲渡担保を設定し、それとは別に、同じA倉庫、B倉庫、C倉庫内のメロン
についても同じ担保権者が別の譲渡担保を設定し、という形で、種類ごとに多数の集合動
産譲渡担保を設定した上で、時期を変えて、一つ一つ全部実行するということはもともと
できそうにも思うので、それができるのならいいではないかという考え方に立ち、倒産し
ていない限りは、同じ倉庫の中の複数回の流動性を捉まえるという担保の実行も認められ
てよいということであれば、この6の強行規定性にそれほどこだわる必要があるのかとい
う方向の解決があり得るのかなと。つまり、集合動産譲渡担保について、輪切り1回だけ
というのは、倒産手続においては制約が必要であるという考え方はもちろんあり得ますが、
それはまた別途議論するのだと思いますけれども、平場では強行法的には考えないという
考えが一つあり得ると思いました。
他方、そうではなく、6の強行法規性というのは非常に重要なルールであるという立場
に立つとすると、一部実行が許され、その後、残部についても実行できるというルールを、
倉庫ごと等、流動性の単位ごとにというか、重ねて再度の実行ができないような形で何ら
かの限界を設けることを考えなければいけないのかなと思いました。ただ、その適切な限
界の設け方がよく分からないという印象です。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございました。
まずは日比野さんのお話を伺って、それからまた事務局に伺いたいと思います。
しろまる日比野委員 ありがとうございます。実は井上先生のお話とかぶることを申し上げようと
しておりました。私が準備していたのは夏物衣料と冬物衣料というものだったのですけれ
ども、特に、例えばバーコードなどで更に商品の特定をするといったことが、仮にできる
のだとすると、論理的には夏物衣料、冬物衣料、翌年に入ってきた夏物衣料、冬物衣料み
たいな特定をした一部実行すらできてしまうということがあろうかと思います。前に申し
上げましたけれども、動産はかなり種類も多様ですし、業種、業態によって実務の在り方
というのもかなり異なりますので、倒産手続は別として、一回実行したら再度実行しては
いけないという規律をあえて作らなくてもいいのではないか、その方がケースに応じた柔
軟な解決が図れるという可能性があるのではないかと思っております。なので、結論とす
ると、6の規律のところについて強行法規として規律する必要はないのではないかと考え
ておりました。
恐らく、一度実行をするとなれば、そもそも事業が継続されることが余りないのではな
いかというイメージがあって、したがってこういう再度の実行というのを禁止するという
発想につながっているということもあるのではないかと思いますが、事業が継続すること
と担保権が実行されることは両立し得るということだと思いますので、先ほどのように整
理してもよいのではと考えておりました。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございました。夏物衣料と冬物衣料問題と、井上さんがおっし
ゃったのは何だっけ。
しろまる井上委員 スイカとメロンとミカンとリンゴと。
しろまる道垣内部会長 スイカはメロンではないのですよ、メロンはミカンではないのですよ、そ
- 39 -
うすると、物権的なのですよ。でも、夏物か冬物かは人によるから、例として議論するに
当たっては、どちらかといえばミカンの方がいいかもしれないと思いますけれども、すみ
ません。
しろまる日比野委員 夏物衣料、冬物衣料というのは、夏と冬というところが言いたかったという
よりは、衣類ですと、例えば品名とか品番号によってより細かな特定ができるので、同じ
シーズン向け衣料みたいなものであったとしても、別の動産として特定ができるという意
味で申し上げておりました。言い方がまずくて失礼しました。
しろまる道垣内部会長 分かっております。どうもすみません。
しろまる阪口幹事 阪口です。私の方はむしろ逆の意見です。まず、元々実行は1回だけだという
のは、複数実行の必要性が本当にあるのですかということも含めて考えられた議論だと思
うのです。先ほど出たとおり、普通は一回実行したら、債務者は倒産するのか、少なくと
もそこに物を入れないのか分かりませんけれども、2回目の実行というのは余り期待でき
ない。そうだとすると、担保権者の方も2回分の与信をしているわけではない、それなの
に2回認める必要があるのですかという疑問がまずあります。
先ほどのスイカ、メロンとリンゴ、ミカンの例でいうと、担保権者はそれぞれの分を足
し算で与信しているのですかというと、普通は足し算の与信をしていないと思うのです。
果物屋さんが夏に仕入れる分の資金を借り入れてメロンを仕入れました、メロンを売りま
した、その売ったお金は、今度冬のミカン等を仕入れたりする資金に動いていく。別に資
金が2倍あるわけではないという中で、2回実行を認める必要性がないのではないですか
ということです。また必要性とは別に期待もできません。仮に必要があると思っても、先
ほど申し上げたとおり、債務者は倒産する、若しくは物を入れないという状態なので、担
保権者としても2回目の実行の回収はあまり期待できない。したがって、また2回分の与
信もしない。こういう関係にある中で、2回認める必要性はないのではないのかというこ
とがあります。
その関係でいうと、7のところで書かれている一部実行については、中間試案の場所的
特定のみという方が明確なのではないかと思います。つまり、部会資料の4頁では集合物
の特定の問題と一部実行の問題が同じ次元で考えられていますけれども、それは別次元の
問題ではないのかと思います。実行できる範囲というのは当然、執行官が判断し、行うこ
とですから、そこでの物の特定性、明確性というのは比較的画一的にできなければいけな
い。もちろんリンゴとミカンとスイカとメロンは区別できますけれども、前に申し上げた、
富士と紅玉は簡単に区別できないのではないかとか、どんどん分かれていくと、何ぼでも
分けて実行できるわけではないと思います。つまり、担保設定時の特定の問題と、執行の
局面での一部実行の可能性というのは、観点が別次元の問題だろうと思います。
その関係でいうと、6で特約無効という規定があるのだけれども、執行の世界というの
は基本、法律の規定に反する合意は無効だと思うのです。執行手続、実行手続との関係で
は、むしろこの書き方は逆ではないか。民事執行法に反する合意は、特段の合意が許され
るという規定がない限りは、普通はできないはずなので、ここの6は書き方が逆なのかな
とは思っています。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございます。御発言の比較的前の方で、場所的なところしか認
めないとおっしゃったところで、少し御発言の趣旨を確認したいのですが、井上さんがお
- 40 -
っしゃったところというのは、阪口さんも設定の仕方の話と一部の話との関係というのを
おっしゃったので、同じことをおっしゃっていたのかもしれませんが、ミカンの譲渡担保
とメロンの譲渡担保とリンゴの譲渡担保とを作ってしまったら、季節ごとに実行ができる。
あるいは説明のところでも、何月何日から何月何日までに納入されるものというふうな形
で複数作れば、何回にも事実上、分けてできるではないかと。そうすると、一部の実行を
認めないと強く言ってみたとしても、集合動産譲渡担保をうまく契約を作れば、事実とし
て一部の実行というのが効率的に、先ほどの夏物、冬物ですが、夏のときと冬のときと分
かれるようにするためには、できるのではないかという話が含まれていたと思うのです。
それに対して、阪口さんが初期の段階で場所的なものに限るとおっしゃったのは、そうい
うものは認めないと、第1倉庫内にあるものというふうになってしまえば、第1倉庫につ
いて固定化を起こして実行したら、その後に入ってくるものが形式的に別の集合動産譲渡
担保契約に基づくものであると考えられても、それは認めないというふうなことを今、含
んでいらっしゃったのか、少し確認したいのですけれども。
しろまる阪口幹事 阪口です。重なっているものがある限りは、ほかのものも使えないと思ってい
ます。出ているとおり、リンゴとミカンについて別々の譲渡担保権を設定すれば、重なっ
ていないという議論はもちろん可能なのですけれども、実際上そんなことをする合理的な
債権者はいない。先ほど申し上げたとおり、与信としてはそんな与信をしていないわけで
すよね、リンゴとミカンを別々に見て足し算をしているわけではなくて、その果物業者が
冬はリンゴを扱い、夏はメロンを扱うという中で、年間でどれだけこの人が資金を必要と
し、また逆に与信できるかを見ているだけです。ミカンとリンゴの別々の譲渡担保という
のは、もちろん恣意的に設定することは可能ですけれども、合理的な人は普通はそんなこ
とはしていないはずなので、できるという問題と、それを認めなければいけないという問
題は別ではないかと思っています。
しろまる道垣内部会長 もちろんそうなのですが、認めないとしたときには、場所的なところに特
に着目して、一部というのは札幌と福岡の倉庫であるというふうに分けているのを一部と
いうのであって、同じ横浜の倉庫を2回やるというのは、それが形式的に中身が違うとい
うふうな、契約が別であるみたいになっていても、それは駄目だという方向なのですか。
しろまる阪口幹事 別だ、駄目だと言いたいですけれども、重なっているかどうかという理屈でい
うと、最初から担保権がミカン専用とメロン専用であれば、重なっていませんから、及ば
ないという理屈でないと説明しにくいのは説明しにくいのです。ただ、僕としては認める
必要がないと思っているので、そこは何とか、できないという説明をしたいとは思います
けれども。
しろまる道垣内部会長 分かりました。ありがとうございました。
ほかに。
しろまる藤澤幹事 阪口先生のおっしゃったことについてコメントさせていただきます。与信と実
行の範囲とを対応させて考えるというのは非常に説得的だと思う一方で、与信と対応させ
て考えるとすれば、少し不都合ではないかと思うところが二つあります。
一つは、果物みたいな生鮮品ですと、何百キロ等、大量の物についてまとめて融資をし
たとしても、倉庫に入ってくるのは順次というようなこともあり得ると思うのです。倉庫
に全部入った時点で実行しようと思ったら、最初に入ってきていたものはもう腐ってしま
- 41 -
うとか、順次実行した方が担保権者の融資に対応した形で実行ができるという場合もあり
得るのではないでしょうか。動産にはいろいろな種類があるのだから、6番の強行規定を
置く必要はないのではないかというようなことを日比野委員がおっしゃっていましたけれ
ども、そのご意見に賛成です。
もう一つは、債権の場合には、与信がどのような形であれ、将来の個別債権について担
保権が設定されていると解して、何度でも実行することができると考えるのだとすると、
なぜ動産だけ制約して債権は制約しなくていいのかということが少し気になっております。
しろまる阪口幹事 阪口です。まず、前半の何百キロ分の融資という話ですけれども、仮に1回実
行したら、設定者はそこに入れるのでしょうか。実際は入れないのではないかと思うので
す。だとすると、結局また与信もできない、結局それは観念的にはできる与信だけれども、
担保権者からしたら、実際それは時期が分かれて入ってくるのだったら、時期が分かれる
単位で融資することにならざるを得ないのではないかと思います。
二つ目の、債権と動産でなぜ違うのかというのは、幾つかの局面で違いが発生しますけ
れども、どちらかというと動産執行は執行官が物を取り扱うという側面も大きいのかなと
私自身は思っています。
しろまる佐久間委員 今の実行の在り方なのですけれども、よく分からなかったのは、井上さんが
最初におっしゃったのは、幾つかの倉庫の中の果物ということで設定していたところ、リ
ンゴとミカンとメロンでしたっけ、それを分ければいいのではないかと、それだったらで
きるのではないかとおっしゃったのですよね。違っていたらごめんなさいですけれども。
それで部会長がおっしゃったのは、例えばミカンとかリンゴとかメロンとか、そういった
ものについて最初から個別に設定していたら、それはそれでできることにならないかとい
うようなことをおっしゃったのではないかと思います。前提が間違っていましたら、ごめ
んなさいと申し上げておきますけれども、私は今の前提でいうと、最初は果物だとしてい
た場合と、ミカン、リンゴ、何とかだと別々に設定した場合は、やはり大分違うのではな
いかと思います。与信がどうのこうのというのはよく分かりませんけれども、例えばミカ
ンといったときにリンゴが入らないのは明らかだと思うのです。それに対して、果物とい
うときに、ミカンという切り取り方とリンゴという切り取り方とメロンという切り取り方
ができるのだとなると、例えばミカンの中で温州ミカンと清見オレンジと、それは違うの
だというのが認められるのか、認められないのかというのも、同じように問題として出て
きてしまうのではないかと思います。更にもっというと、在庫一切という設定の仕方を倉
庫を指定して認めるとなった場合に、その在庫について幾つも種類があったら、それを切
り取っていいのか。これは別ですというふうに分ければ、それでいいのかという問題まで
出てきて、収拾が付かなくなるのではないかという気がします。
したがって、ある指定の仕方、特定の仕方をした場合に、その範ちゅうに入るものにつ
いて実行が一部でもされることになると、それはもうやはり1回で、それで終わりだとし
ておかないと、収拾が付かないのではないかという気がしました。多分、阪口さんがおっ
しゃる与信との見合いというのは大体そこで決まってきているのではないかというふうに、
これは素人ですけれども、感じました。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございました。
井上さんも、井上さんのお立場とは違うかもしれませんが、もし何回も実行するという
- 42 -
のを認めないとするならば、一部ということをきちんと定義をしてといいますか、こうい
う一部実行は認められるのだという形にきちんとしないと、境目がはっきりしなくなって
しまうということですね。それに対して阪口さんが場所的なところに限るという一つの解
決策を出されているのかもしれないと思いますけれども、ほかに御意見はございませんで
しょうか。
しろまる片山委員 片山です。少し視点が変わるのですけれども、6ページのところの後順位の担
保権者、一般債権者の差押えで固定化が生じるという話なのですが、確かに同じ集合動産
を担保に取っている後順位担保権者が実行したときには固定化を生じるということでいい
のかもしれません。それを第三者異議で排除するということになるのだと思います。それ
に対して、一般債権者が差押えするという場合についても同一に考えていいのか疑問を感
じなくはありません。そもそも、何を差し押さえる場合を想定しているのかがよく分から
ないところではありますが、仮に集合動産を全部差し押さえるというケースを想定するの
であれば、同様に固定化が生じるということでいいのかもしれませんが、逆に、集合動産
の構成部分を1個差し押さえるというようなことがあった場合についても、固定化は生じ
るとし、それをわざわざ第三者異議で排除しないと固定化を覆滅することはできないとま
でしなくても、無視していればいいだけのことのような気も致します。一般債権者が差し
押さえた場合に固定化が生じるので、それを第三者異議で排除しなければいけないという
話は、どのようなケースが想定されているのか分からなかったので、御説明を頂ければと
思います。よろしくお願いします。
しろまる道垣内部会長 では、その点だけお願いします。
しろまる工藤関係官 ここの規律の趣旨としては、今御指摘いただいたとおり、たとえ1個であっ
ても、特定範囲に属する動産を一般債権者が差し押さえた場合には固定化してしまうとい
う形にしております。理由としましては、一つ言えることとしては、例えば倉庫が特定範
囲であるときに、倉庫の中に入っている動産全部を差し押さえた場合と一つしか差し押さ
えていない場合とで違う規律を採用するというのは、なかなか切り分けが難しいというこ
とはあるのかなとは思っております。
しろまる道垣内部会長 片山さん、よろしいですか。
しろまる片山委員 1個差し押さえられたぐらいだったら無視できていいのではないかという気も
するのですけれども、やはりそこをわざわざ第三者異議で排除しないと固定化が生じてし
まうという話ですよね。それも大げさな気がするのですが、どうなのですかね。
しろまる道垣内部会長 何%とかと決めるわけですか。それも難しいよね。
しろまる片山委員 まあそうですけれども、では、1個押さえられても一応、固定化が生じてしま
うということですね。
しろまる道垣内部会長 一つの案としてはね。
しろまる片山委員 なるほど。
しろまる道垣内部会長 通常の営業の範囲に属する処分の程度の範囲の差押えという概念をここで
作るかどうかですよね。
しろまる片山委員 そういうことですね。
しろまる道垣内部会長 その辺は以前から問題になっているところなのですが、少し検討を続ける
ことにして、阿部さんに少し話を伺いたいと思いますが。
- 43 -
しろまる阿部幹事 私も一般債権者の動産競売の差押えで全部固定化してしまうというのは、やは
り問題があるという、片山委員と全く同じ問題意識を共有しています。例えば、1個差し
押さえられたのに全部固定化してしまうということになると、もう集合動産担保権者とし
ては債権回収して融資を引き揚げざるを得ないということになりますので、まだ融資が続
けられると思っていても、もう融資を止めなければいけないということになりかねないで
すよね。取り分け、集合動産譲渡担保は根譲渡担保でもある場合もあったりしますので、
そういうときに、今後もまだ取引を続けて、融資を今後も続けられると思っているのに、
実行して引き揚げないといけないということになったら、大変なことではないかと思いま
す。
多分、資料の立て付けとしては、その場合に本文7を準用することで多少その問題を緩
和できるのではないかという発想があるのではないかと思います。7によると、これは特
定された範囲を実行の対象として指定し、という話ですけれども、これを多分、動産執行
の場合も応用して、動産執行に関しては普通、個別動産を執行していると思いますので、
その個別動産のみが実行の対象として指定されているとして、2や3の効力はその範囲に
のみ生ずるということにすれば、それほど大きな問題は生じないということなのかなと思
いました。けれども、それはそれで、そもそも、特定された範囲を競売の対象として指定
しているというよりは、そもそも特定動産が競売されているので、この7になじむのかよ
く分からないですし、また、7を準用した結果としてどういうことが起こるかと考えると、
その動産について、3によって設定者が処分権を失うというのは、まあいいかなと思うの
ですけれども、2はどう適用されるのだろうというのがよく分からなくて、結局、個別動
産が執行の対象になっているだけだと考え、その個別動産に今後、担保権が及ばないとい
うだけだとすると、それはもう固定化しないというのに等しいのではないかというような
気もしました。3を及ぼすことで、執行対象になった財産について設定者の処分権を失わ
せるということにのみ意味があるのかもしれませんが、そうだとすれば、それだけでいい
のではないかと思いました。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございます。7の解釈の方法によって、差し押さえたものが固
定化したと、ほかはまだ固定化していないよといえば、片山さん、阿部さんが危惧してい
るような問題点は生じないようにうまくできるのではないかということだろうと思います
けれども、それで広くやったらそうなのかな。
しろまる山本委員 今の点ですけれども、動産執行というのは通常、場所単位主義という考え方が
採られていて、ある場所にある動産について差押えを申し立てるということに基本的には
なると思います。ですから、例えば第1倉庫に所在する動産についての差押えの申立てが
行われるということになるわけですが、それがこの7の規律との関係において、その所在
場所等によって特定された範囲を実行の対象として指定したときに当たるのかどうかとい
うのが、確かに一つの問題かなとは思います。
その場合でも、もちろん場所を単位として執行はなされるわけですが、個々の差押えは
個々の動産に対してもちろんなされるわけですし、超過差押えの禁止という原則もありま
すので、被差押え債権との関係で、超過してむやみやたらに全部差し押さえられるという
ことはなく、差し押さえる債権が少額であれば、その中の動産1個だけ差し押さえるとい
う事態ももちろん生じ得るわけで、それで全体が固定化してしまうと、その後、倉庫に流
- 44 -
入してくるものについてももう担保権が及ばなくなってしまうという効果は確かに過剰な
ような気がしますので、一般債権動産執行との関係は少し考えられた方がいいのかなとい
う印象は私も持ちました。
しろまる道垣内部会長 結論としては同じような御見解を頂いているのですけれども、そのときに
どなたかがおっしゃったように、集合動産譲渡担保の目的となっている、例えば集合物の
全体を十分な債権額の下で差し押さえるということになったら、それは固定化を生ぜしめ
る以外はないわけですよね。そうすると、それはどういうふうなメルクマールで処理をす
るのが妥当だという感じがされますか、固定化が生じない場合と生じる場合と。山本さん、
涼しい目で真っすぐ見ていらっしゃるけれども、こちらからは期待の目が注がれています
よ。
しろまる山本委員 それは私に言われても、という感じの目で見ていたのですけれども、確かに、
だから、おっしゃるように非常に多額の債権で差し押さえた場合には、基本的にはほとん
ど全部の商品が差し押さえられるということはあると思うのですけれども、その場合に担
保権者にそれを選択させるということは相当でないのですかね。担保権者の側で、実行し
てきた場合には、固定化が生じるという、例えば。
しろまる道垣内部会長 なるほど。ありがとうございます。
しろまる片山委員 片山です。やはり集合物と、それから、その構成部分たる動産、個別動産とが
違うということなので、集合動産を担保に取っている担保権者としては、個別の構成部分
が差し押さえられたら第三者異議の排除は当然できるというこということなのですけれど
も、その問題と固定化の問題とはまた別の問題ではないかとも思いますので、構成部分を
差し押さえられている限りにおいては、仮に1%でも差し押さえあれれば、第三者異議で
排除はできるが、逆に仮に99%差し押さえられても、それによって直ちに固定化は生じ
ないと考えていいような気もしましたが、いかがでしょうか。
しろまる道垣内部会長 それに山本さんがおっしゃった、実行するのも自由である、例えば被担保
債権の弁済期が到来していなくても、一部が差し押さえられたら実行することはできると
いう規律を置くことは可能なのですかね。分かりました。
しろまる阿部幹事 私は、自ら実行までしなくても、例えば配当要求していったら、どの範囲かは
ともかく、一定の固定化が生ずるというのは、ありうると思いました。だから、執行に乗
っかって配当要求して優先弁済権を実現していくのか、それともその執行は無視して、そ
の代わりに固定化しないというふうにするか、どちらかの選択が担保権者においてできる
という規律が相当ではないかと思いました。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございます。
ほかに、その問題でもよろしゅうございますし、第1全体について。
しろまる阪口幹事 二つあり、一つは今の問題です。今の問題は前も申し上げましたけれども、根
担保権の確定の問題にも響いてきます。以前に、目的動産に差押えがあって、担保権者が
ほったらかしたらどうなるのかという、部会資料28の7ページのところで提起させてい
ただいた問題があり、そことうまく整合しないといけないのかなと思っています。他方、
動産が1個差し押さえられたときに担保権者が配当加入したら、普通は無剰余になって取
り消されてしまうのではないか、そうすると、固定効は覆滅するので、実務的にはそれは
それで回るのかなという気もします。したがって、実際どうなるのかを、被担保債権の確
- 45 -
定の問題とセットで考えた方がいいのかなと思っています。これが一つです。
もう一つ、全然別次元の話で申し訳ないのですけれども、第1の2のただし書の分別管
理のところが大きな問題だと思っていますので、少し意見を述べたいと思います。元々中
間試案の段階では、場所的分別が必要ですか、それとも帳簿上の分別で足りますかという
問題提起がされていましたが、その問題が部会資料のどこにも出てきていない形になって
います。そこは明確にしないといけない問題であり、私自身は場所的分別を要求すべきで
はないのかと思っています。
というのは、今日も少し前半に村上委員の方から御意見があったと思いますけれども、
あれの補充ってしていないのではないですか。されましたっけ。
しろまる道垣内部会長 そうか。忘れていました。
しろまる阪口幹事 それは後で。でも、それを先に言ってもらわないと、僕の話がつながらないか
な。先に言っていただいたほうが。
しろまる道垣内部会長 今、何の話をしているかと申しますと、通信状態が悪いときに、早めに第
1について1点、村上さんに発言をお願いいたしまして、そこで問題になりましたのが分
別管理の話でございます。そのことの内容について簡単にまとめておきたいのですが、事
務局からお願いします。
しろまる工藤関係官 私もはっきり明確に村上委員の発言を記憶できているか、少し自信がないと
ころもありますけれども、おっしゃられていたこととしましては、本文2のただし書のと
ころで、分別して管理されていないということでどんどん新しいものが加入してきて担保
の目的になってしまうとすると、やはり一般債権者が害されてしまうことがあるのではな
いかと、その観点からも、この「分別して管理」が何を意味するかについては、慎重に検
討する必要があるのではないかという御意見を伺ったと思います。
しろまる道垣内部会長 それを前提にして、阪口さん、続けてお願いします。
しろまる阪口幹事 阪口です。その一般債権者もそうですし、典型的には動産売買の先取特権者が
一番分かりやすい利害関係人と思います。固定化通知がされた後に入ってくる商品を納め
た売主は、その物に対して動産売買先取特権を行使できる権利を持っている。しかしなが
ら、それが譲渡担保権の対象に入っているということになると、最高裁の判例がそのまま
だとすると、売主が負けることになる。正にその、入ってくるか入ってこないかの大きな
利害を受けてしまうのですけれども、動産売買先取特権者からすると、帳簿上管理してい
る程度で入るか入らないかという基準ではなく、場所的に明確に分けられているかどうか
という基準ではないか。また、場所的に明確になっているからこそ、売主もそれに対して
先取特権を行使していくことができる。売買の対象物が他の動産に混入すると、売買先取
特権者は実際上実行できませんから、混入しない状態になっているというのが、動産売買
先取特権者から見ても、分かりやすい基準なのではないのかと思っていて、その意味でも、
ここは場所的管理の問題が一番判断基準として明確なのかなと思っています。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございます。分別の問題につきましては、ほかにもいろいろ御
意見があろうかと思いますが、その前に、差押えの問題についての意見の、もちろんここ
で確定的な取りまとめができるというわけではないとは思いますけれども、何人かの方か
ら御発言いただきまして、差押えで固定化が生じるというのは少し問題なのではないかと
いう御意見を頂きました。その点について、事務局から何かございますか、それとも、そ
- 46 -
れはそうかもしれない、検討するということでしょうかね。
しろまる笹井幹事 担保権が及んでいるということは、担保権者としてそこから配当を受けるとい
うことができますので、配当加入して配当を受け、それでも固定化が生じずに、その後、
集合物全体から更に満足を受けられるということになると、重複して執行してしまうとい
うことになるので、それをどういうふうに避けるかということを考える必要があるのだと
思います。最後に何人かの先生からおっしゃったように、例えば配当加入したときにはこ
うなるとか、何らかの担保権者がアクションを起こした場合には固定化してしまうという
ようなことはあり得るかもしれませんので、その点は少し考えてみたいと思います。
ただ、その場合に、これは山本委員から御指摘のあったところかもしれませんけれども、
差押えが集合物として差し押さえられたのか、個別のものとして差し押さえられたのかに
よって、全部固定化してしまうと考えるのか、一部分だけにとどまると考えるのかという
辺りも含めて検討する必要があるのかなと思いました。取りあえずは以上です。
しろまる道垣内部会長 反対論も強かったわけですので、もう少しここは検討をしていただくよう
にしたいと思います。この差押えの問題について、更に何か御発言はございますか。
しろまる藤澤幹事 本当に勉強不足で、教えていただきたいという点なのですけれども、差押債権
者の差押えに際して剰余があるかないかということが問題になるかと思うのですけれども、
無剰余か否かの判断というのはどうやってするのかというのが少し気になっております。
先ほど山本先生から超過差押え禁止のルールがあるからというお話があったので、差押え
債権者としては自分の債権の範囲でしか差し押さえることができないのだけれども、それ
に剰余があるかというのを検討するときに、集合動産担保権者の権利がそこに割り付けら
れると考えると、基本、いつも無剰余になってしまうような気がします。例えば、差押債
権者が差し押さえたのが動産の中の5%ぐらいだとして、残り95%のうちの50%ぐら
い使えば譲渡担保権者の被担保債権がカバーされているというようなときでも、その5%
の差押えも無剰余とされてしまうのはどうかという問題意識を持っております。
しろまる道垣内部会長 それは解釈論ですが、無剰余なのでしょうね、不可分性との関係で。いや、
違うのかもしれないですが。山本さん、何かありますか。
しろまる山本委員 その問題は確か前にも議論が、要するに、債権を割り付けるような形にして無
剰余を判断するのか、全額ぽんと持ってきて、全部無剰余だよねというのかという議論は
あったように思います。現在の私の理解するところ、裁判例は後者のような、割付はしな
いで全額持ってきて、無剰余だと。先ほど来のお話で、基本的には少額のものが差し押さ
えられたような場合においては、ほとんどの場合、無剰余になるというのはそのとおりだ
ろうと思います。
ただ、私自身あれなのは、無剰余でも基本的には第三者異議でも同じ基準だと思うので
すけれども、そこまで判断についてタイムラグが一定程度生じるのだろうと思うのです。
そのタイムラグの間は固定化が生じている状態になるので、入ってくる物については担保
権が及んでいない状態になるのではないかということを、それから、債務者の方、設定者
の方も処分できないという状態、その全体について処分できないという状態が生じてしま
うのですが、それが一体どの程度、何日程度、何か月なのか、その辺りが、第三者異議が
確定するということになると、それは少なくとも半年とかそれぐらいは絶対に掛かるのだ
ろうと思うのです。無剰余はもう少し早いのかもしれないけれども、でも、やはり一定の
- 47 -
期間が掛かるのではないかと思うのですけれども、その辺りは私は実務的なところが分か
りませんけれども、それで果たして、結局その間、商売がストップしてしまうということ
になって、もつのだろうかというのが私自身のやや疑問に思っているところではあるので
すけれども。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。
それでは、この辺りを踏まえてもう一度検討していただくことにして、次の問題として
出ているのが分別管理の問題で、場所的な分別管理というのを要求すべきであると。場所
的な分別管理は、されていないときには集合動産譲渡担保の効力が及び続けると考えるべ
きであるというのが阪口さんの方から出ています。ちょっと私が気になるのは、譲渡担保
設定者は分別管理義務を負うのですかね。というのは、譲渡担保権者にとってみれば分別
をしていない方が、及んでいくのだから便利だという話になってしまうのですけれども、
ほかの人からしてみれば、村上さんもおっしゃったし、阪口さんが動産売買先取特権とお
っしゃったけれども、分別してくれなければ困ってしまうわけですよね。さらには、分別
していない効果というのは、実体的に効力が及ぶという効果なのか、本当は固定化以降に
入ってきたものについては及んでいないのだけれども、例えば、あるものが固定化以降に
入ってきたものだということの証明責任がそれを覆す側にあるというだけの話で、実体的
な効力として、消滅が生じたり効力が及ぶというのが生じたりするわけではないというの
も一つの考え方だろうと思うのです。そうしないと、一旦は一緒にしたけれども、あらら、
分別していなかったわ、分別しましょうなんていって分別したのだけど、いや、分別して
いなかった段階で効力が全部に及んだのではないか、という話にもなりかねなくて、そこ
ら辺がよく分からないのです。分別というもののメカニズムが私にはよく分からないので
すが、これはどうなるのですかね。
しろまる工藤関係官 まず、分別義務を負うのか、負わないのかという点でいいますと、恐らくそ
こは義務を負うわけではないということなのかなと思っておりました。ただ、設定者とし
ては分別しておかないと担保権者の方に取られて、処分権を失ってしまうので、自分が処
分できなくなって困るので分別をすると、そういう形なのかなと思います。
実体法上の効果なのか、それとも立証責任の転換ルールなのかという点については、こ
こでは実体法上の効果を発生させる趣旨の規定だという前提で御提案をしておりました。
ただ、そこが具体的にどういう趣旨なのかということについては、幾つか議論があり得る
のかなと。この場合に、例えば混和のルールが適用されるかどうかといったことは不明確
な点もあろうかと思いますし、仮に適用されるとしたら混和の特則みたいな位置付けにな
るかと思いますけれども、そこの位置付けについては恐らく議論があり得るところかとは
思います。
しろまる道垣内部会長 前者に関していうと、不利益を受けるのは設定者ではないですね、所詮固
定化して、もはや破綻ぎみなわけですから、話が出ているような一般債権者とか動産売買
先取特権者であって、分別していなかったら設定者が不利益を被って処分できないから、
義務を課さなくても分別するでしょうとはならないのではないか、というのは論理として。
どうかな、という感じがしますけれども。
今、混和の問題とかも出ましたけれども、そこら辺になってくると、話が結構やっかい
- 48 -
になってくるのですけれども、いかがでしょうか。混和について語ってほしいというわけ
ではないのですが、分別のことについて、いかがでしょうか。
しろまる井上委員 井上です。この分別については、その効果として、事務局の提案のように、分
別していない新規取得動産には実体法上担保権の効果が及ぶという整理とは別に、先ほど
議論がありましたように、分別していないと固定化の対象でないことを主張できない、あ
るいは固定化していないことを主張しようとする側に立証責任が転換されるという整理も
あり得るのですが、ただ、いずれの整理に立っても、どの程度設定者にインセンティブが
あるのかは、実質破綻していれば、事実上ないのではないかという議論はあるかもしれま
せん。けれども、担保権者の立場からすると、設定者の手元にあるものについて固定化の
対象を特定できないと、実行自体がままならぬことになりますので、現在提案されている
規律が望ましいのではないかと思っています。
ただ、分別とは何を意味するのかについては、これは、阪口先生は先ほど物理的な、あ
るいは場所的なですかね、区別をすべきだということではありましたが、例えば、場所的
には一緒くたに置いてあるのだけれども、倉庫内の在庫の箱に納入ラベルが貼ってあって、
その記載により搬入日が分かれば、物理的には一緒くたになっていても、固定化前に搬入
されたか固定化後に搬入されたかが分かるので、分別されていると考えていいのではない
かと思いますし、箱だけからは分からなくても、箱に番号の記載された納入伝票が貼り付
けてある場合に、帳簿と照らし合わせればどの番号からどの番号までが固定化された日ま
でに納入されたかが分かれば、それでもよかろうと思うので、そういう意味では、必ずし
も場所的な方法に限らなくても、きちんとどの箱が固定化された時点で搬入されたかが分
かればよいのかなと思います。
ただ、更に進んで、どの箱が固定化前に搬入されたかは分からないけれども、全く同じ
種類物の箱が100個今、倉庫の中にあり、固定化されたときにはそのうち80個が入っ
ていたけれども、固定化された後に20個が運び込まれたことは、出入管理の伝票からは
っきりしているときに、分別されていないといわなければならないかは悩ましいところで
す。価値的には、それがもし完全な種類物だとすれば、そのうち80個について固定化が
生じ、残りの20個については設定者がなお処分できる、そして、実行についてはそのど
れか80個を対象とすることが許されるという方が、出来上がりとしてはよさそうに思い
ます。
これは、混和の問題とか、混同寄託の法理とやや似ている問題かもしれないのですけれ
ども、そのようなことは認められず、やはり個別にどの箱が固定化後に搬入されたかをト
ラックできなければいけなくて、そうしないと、動産売買の先取特権と同じように優先権
の主張ができないことになるのかは、悩ましいと思っておりますけれども、ただ、ここで
分別というときに、種類物といってもいろいろなものがあるので、完全な種類物である部
品と、個体差があるミカンとは違うのかもしれませんが、少なくとも個性のない種類物の
場合には、個数レベルで固定化時点の範囲が帳簿上特定されていれば、それもここでいう
分別管理に当たるという整理もあってもいい考え方かなと思いました。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございます。この辺はなかなか悩ましい問題が一杯あるのです
が、佐久間さん、お願いします。
しろまる佐久間委員 ありがとうございます。実務のことが全く分からないので、今の井上さんの
- 49 -
御発言に対してとんちんかんなことを申し上げるかもしれませんけれども、伺っていてど
うなのかなと思ったことがあるので、発言させていただきます。倉庫の中に箱があって、
日にちが書いてあったらいいのではないかとか、伝票があればいいのではないかとかとい
うことをおっしゃったかと思うのですけれども、伝票は分かりませんけれども、箱に何年
何月何日と書くのなんて後から何ぼでも書けるので、その正しさというのは全く分からな
いのではないか。伝票だって、それは法的にはやってはいけないのかもしれないけれども、
日にちを何とかするぐらい簡単なのではないか、あり得るのではないかと思うのです。そ
うすると、この場合に分別をしていればというか、設定者がどこかの債権者と結託すると
か、どちらかのとかということになると、そのような、いろいろな事実を積み重ねて後か
ら証明されればいいですよねというようなことでいいのかなというのを疑問に思いました。
場所しかないのかどうか分かりませんけれども、A倉庫とB倉庫とか、A倉庫の右半分、
左半分とかだったら、まあはっきりはしているのだろうけれども。それでも移せば終わり
だということになるのか。でも、よく分からないけれども、程度問題だけれども。記録し
てあればいいというのは、少し感覚としてはどうかなとは思いました。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございました。
ほかに何かございませんでしょうか。
これは中間試案からあるものではあるのですけれども、実はそれほど簡単な話ではない
ですね。混和のルールを適用しますといっても、100あったところにあと20入って1
20になって、100対20だよねということになるのだけれども、その後、20が第三
者に売却されたというふうなときに、どこから売却されたと考えるのかという問題点があ
って、それはずっと信託法上もある問題なのですけれども、複雑な問題が多々ありますけ
れども。
ほかに何かございますでしょうか。
しろまる井上委員 分別のところについてでしょうか。
しろまる道垣内部会長 分別に限りませんで、第1のことが幾つか残っていると思いますので、井
上さん、ほかのところでも結構でございます。よろしくお願いいたします。
しろまる井上委員 ありがとうございます。井上です。部会資料7ページの10はゴシックのご提
案とは対応していないのですかね。時的要素による集合動産の範囲の特定の可否について、
22行目までで、担保設定時に、時的に区切った形で集合動産の範囲を特定することが許
容されるとも考えられるとしつつ、その後、23行目以降からの記述によると、いや、そ
うではないとされています。すなわち、時的要素は、集合動産の範囲の特定の要素ではな
くて、その期間の末日に固定化する特約という解釈、あるいは固定化の効果が生ずるとい
う説明になっていると思うのですけれども、集合動産の特定の問題ではないという点につ
いては、私もそう思います。6月1日から6月30日までに搬入されるものについて集合
動産譲渡担保を設定して、次に7月1日から7月31日までに入るものについて別の集合
動産譲渡担保を設定して、それを10個も20個も設定した上で1つ1つを全部実行だと
いって何度も実行することは、先ほどの議論と同じような問題が生ずるし、そんなことを
認める必要もないと思いますけれども、他方で、この期間の末日に固定化の効果が生ずる
というのが当事者の意図と合致しているのかには、やや疑問があります。30行目には、
固定化の効果とは違って本文2の効果が生ずる旨の特約と書いてあるのですけれども、私
- 50 -
が思うのも同じく、2023年7月以降に入った在庫に及ばないという効果だけでいいの
ではないかということでして、それ以降に入ったものを自由に処分できる、使えることを
意味するにしても、果たして、まだその時点で被担保債権が不履行になっていない場合で
あっても、固定化の効果まで生じさせることが必要なのだろうかと思いました。そもそも、
こんな約定をするのかなとは思うのですけれども、こういう約定を仮にしたときに、その
約定の解釈としては、ただ単純にそれ以降に入ってきたものには担保権が及ばないという
だけで、それまでに入ったものについては通常の事業の範囲内で処分し続けられてよいの
ではないでしょうか。実行通知も何もしない、不履行も起こっていないのに、それまでに
入ったものを処分できなくなることはないのではないか、もしかすると、事務局もそこま
でおっしゃっていないのかもしれませんが、固定化という言葉を使う必要はないのではな
いかと思いました。
しろまる道垣内部会長 これはいかがですか。というのは、私も読み落としていたのですが、6月
30日が来たところで固定化、2の効果が生じるということになると、その固定化のため
には通知は不要であるということになるのですかね、個別請求の。
しろまる笹井幹事 そうですね、はい。
しろまる道垣内部会長 それはそうなの。
しろまる笹井幹事 6月30日までに入ったものを担保に取るということなので、7月1日以降に
入ってきたものにはそもそも及ばない。
しろまる道垣内部会長 だから、井上さんがおっしゃるように、及ばないというのはそうなのだけ
れども、実行通知による固定化ではないので、そのまま被担保債権がノーマルに弁済され
ていれば、そのままだんだんなくなっていって終わってしまうということになりますよね。
しろまる笹井幹事 ここは少し表現が適切でなかったかもしれません。意図としては、処分はでき
る、処分権限まで失うわけではないということです。
しろまる道垣内部会長 3は1の通知が到達したときの効果になっているので、2だけの効果では
3は発生しないというふうになっているのかもしれないけれども、それは読むのが難しい
よね。
しろまる井上委員 私は、2の効果が生ずるということであればいいのですが、固定化と書いてあ
るので、もしかして3の効果までお考えなのかと思ったのです。固定化したら、そのとき
にあるものに個別担保が設定された状況になってしまうということだとすると、それは少
し変ではないかと、そういう趣旨です。
しろまる道垣内部会長 そのとおりだと思います。説明のところの改善なのか、あるいは第1の1、
2、3の辺りの文言をもう少し整理しなければいけないのかということがあると思います
けれども、お願いしたいと思います。
ほかに、第1のところはございますでしょうか。
幾つか大きな問題点みたいなものはあるのですけれども、本文2のところに関連しては、
複数の集合動産譲渡担保の特定範囲が重なっているときには、一方の方が固定化が生じる
と、他方の方もそれに応じて、重なり部分については固定化が生じると、これはこれでよ
ろしゅうございますかね。まあそうでしょうね。
7に関しては先ほど、場所的なところで考えなければいけないのかどうなのかというの
は、実体的にどのような集合動産譲渡担保権を認めるべきなのかということにも関連して、
- 51 -
なかなか微妙な問題があるということかもしれませんが。
ほかによろしゅうございますか。
本日から、6時までお願いをしておるわけですが、それでもこの資料は終わらないかな
という感じはいたします。ただ、第2とか第3とか、その辺りは比較的、軽いと言っては
何でございますが、別に発言を止めるわけではございませんけれども、行けるところまで
は行った方がいいかなと思いますので、「第2 動産譲渡担保権の競売手続による実行
等」について、事務局から御説明いただければと思います。
しろまる工藤関係官 それでは、「第2 動産譲渡担保権の競売手続による実行等」について御説
明いたします。
本文1については、中間試案から実質的な変更はありません。
本文2については、中間試案から大きな変更はありませんが、集合動産譲渡担保権者も
配当要求をすることができる旨を明示しています。
本文3については、動産譲渡担保権者による第三者異議の訴えの提起が否定される場合
の要件につき、民事執行法上の無剰余取消しと同様の規律とすることなどを念頭に置いて
修正をしているほか、部会での御議論や判例を踏まえ、集合動産譲渡担保権者による第三
者異議の訴えの提起を認めることとしています。
本文4については、中間試案第12-4では、通知の主体を執行官とする考え方と差押
債権者又は担保権者とする考え方を併記していましたが、通知の確実な送付を確保するこ
とが望ましいことなどから、執行官を通知の主体とすることとしています。
本文5については、中間試案第12-5では、消除主義を採用し、動産譲渡担保権は競
売による売却によって消滅するものとする【案12.5.1】と、引受主義を採用し、買受人が
動産譲渡担保権の負担を引き受けるものとする【案12.5.2】を併記していましたが、競売
による売却の実効性を確保することが望ましいことや、本文4の通知によって動産譲渡担
保権者の手続保障は図られているとみることができることなどから、【案12.5.1】の消除
主義を採用するものとしています。
そのほかに、(説明)の5では、競売手続における差押えの効力が動産譲渡担保権者に
及ばないことを前提として、私的実行と競売手続の関係を調整する規定を置かないものと
しています。
以上について御議論いただければと思います。
しろまる道垣内部会長 どなたからでも結構でございますので、第2のところにつきまして御意見
を頂ければと思います。
しろまる阿部幹事 第2の5の部分で、中間試案の【案12.5.1】を採用することにしたとされてい
る、つまり引受主義か消除主義かで消除主義にすることにしたというところなのですけれ
ども、仮に消除主義にするのだとすると、優先する担保権者には配当要求の機会が確実に
保障されている必要があって、それを確保しているのは第2の4の登記された債権者に対
する通知だということになっているのではないかと思うのです。けれども、これは、今回
冒頭の話で、登記可能な譲渡人はやはり法人に限定されるのだということになると、設定
者が法人の場合には、登記ができるのだからしろと、していなかったらその担保権者が悪
いという割り切りはできるかと思うのですけれども、設定者が自然人の場合は、そもそも
登記をすることもできないということになると、この通知を受けることもできないという
- 52 -
ことになって、優先権行使の機会を全く確保せず、消除主義を適用してよいのだろうかと
いう問題が生ずるように思いました。
しろまる道垣内部会長 ほかに御意見はございませんでしょうか。
しろまる阪口幹事 細かいことかも分かりませんけれども、部会資料31では、第三者異議のとこ
ろの表現が、これこれの額の合計額以上となる見込みがあるときはこの限りでないという
表現になりました。実務上、他の担保権者若しくは一般債権者が差押えしたときに、執行
官は一定の評価を行いますので、その評価額から一定の費用や共益費用や、優先する人の
分を引いてもまだ剰余があるとなれば、当然この見込みがあるときになりますから、第三
者異議は認められないことになる。
ただ、動産執行の実務上、前に申し上げたことがありますけれども、執行官の評価とい
うのは、その額以上で売らなければいけない義務を負う評価額ではない。法律上は、不動
産競売における買受可能価額のようなものではないので、執行官はそれより低く売っても
構わないことになり、剰余の見込みの有無と、実際上剰余があるかないかの問題がずれる
可能性があるというところが少し気になっています。現実には執行官はそういうことはし
ないような気はしますけれども、不動産と少し違う点に関して、何か書きぶりを変えれば
いいのか、何かをする手当てが要らないかなとは思っています。
しろまる道垣内部会長 この見込みがあるときというのが、それはどういうふうにしてその見込み
があるかどうかを判断するかといったときに、このままですと、いわゆる評価額が基準に
なるということが法文上はクリアに書かれるわけではない。
しろまる阪口幹事 ないですけれども、見込みは普通ありますよね。この書き方だったら、執行官
がそう言っているのに、それで売れる見込みがないなんていう議論は普通はないわけです
から。なので、見込みがあるという表現がかなり軽くなって、かつ、必ずしも執行官がそ
うしなければいけないわけではないという辺りがいいのかなという。現実に執行官はしな
いから大丈夫だということであれば、それはそれでいいのかも分かりませんけれども、執
行官は別に、売る売らないの裁量があるので、その価格以上で俺は売るのだ、それより下
回ったら売らないぞと思えば、その問題は起きはしないので、そこはいいのかなというと
ころだけです。
しろまる道垣内部会長 譲渡担保があって、例えば100万円がその被担保債権額であると、12
0万円だというふうにいって、上回るから第三者異議が出ないでそのまま行きましたとい
うとき、80万円でしか売れませんでしたとなると、これは80万円が譲渡担保権者に行
くだけであって、そのまま別に、無剰余措置が採られたりするわけではなくて、80万円
が譲渡担保権者に交付されるという形になるのですか。
しろまる阪口幹事 表現を少し忘れましたけれども、換価のところで制約は掛かるのですが、今僕
が申し上げているのは、上回るから第三者異議を提起しても仕方がないと思っている局面
が気になったのですけれども。間違っているのかな。
しろまる道垣内部会長 見込額との関係で上回るから、第三者異議をしないでそのまま手続が進ん
でいきますよね。自分の勉強を棚に上げて条文を探させているというのは誠に申し訳ない
です。
しろまる阪口幹事 民事執行法129条2項で、合計額以上になる見込みがないときは差押えを取
り消さなければならないというのがあるので、そうなのですけれども、最後のその売ると
- 53 -
きに取り消すかどうかは、今、よく分かりません。すみません。
しろまる道垣内部会長 取り消すのだとするならば、見込みがないような額で売却するということ
には実際にはならないわけですよね。
しろまる阪口幹事 そうですね、そこはもう一遍調べてみます。
しろまる道垣内部会長 すみません、どうも変なことを伺いました。
ほかに、この第2について、ございませんでしょうか。これは大体こういう動産執行で
配当を認めるという形になって、まあこうだねということなのでしょうか。
では、何かありましたら、また後でお願いをするといたしまして、あと6分なのですが、
第3、第4について一遍にやりましょう。「第3 質権の実行方法に関する見直しの要
否」というのと「第4 所有権留保売買による留保所有権の実行」についてまではやりた
いと思いますので、事務局におきまして説明をお願いいたします。
しろまる工藤関係官 それでは、「第3 質権の実行方法に関する見直しの要否」について御説明
いたします。中間試案の第13では、動産質の実行方法に関し、設定者の利益を保護する
措置を採るとともに、民法第349条を改正し、流質契約の有効性を認める【案13.1】と、
流質契約の有効性を否定する同条を維持する【案13.2】を併記していましたが、ここでも
引き続き、【案3.1】と【案3.2】として両案を併記しています。なお、中間試案では動産
質のみを取り上げていましたが、権利質についても同様の扱いとすることが考えられるこ
とから、【案3.1】では、権利質についても流質契約の有効性を認める考え方を取り上げ
ています。
続きまして、「第4 所有権留保売買による留保所有権の実行」について御説明いたし
ます。中間試案では、留保所有権の実行方法として帰属清算方式及び処分清算方式の私的
実行並びに民事執行法の規定に基づく競売を認めることを提案していたところ、本文では
動産譲渡担保権の規律を準用することとしていますが、実質的な変更はありません。もっ
とも、私的実行時の他の担保権者に対する通知の規律については、狭義の所有権留保につ
いては劣後担保権者の保護のために通知を要求する必要性は乏しいと考えられることなど
から、ここでは準用しないこととしています。
以上について御議論いただければと思います。
しろまる道垣内部会長 ありがとうございました。
それでは、御自由に御議論いただければと思います。
またお恥ずかしい話なのですが、349条というのは現在の普通の解釈論ですと、債権
質についても適用されると考えているのですか。ああ、そうですね。すみませんでした。
自分の本にそう書いてありました。
それほど大きなところではないといったら恐縮でございますけれども、ただ、幾つかや
はり確認をしておきたいところがあるのですが、流質契約を認めるかという事柄に関して、
流質契約を認めようではないかという形で、契約による質権の処分の禁止というのを除外
するという形で出しているのですが、パブコメでは必ずしもその意見が多かったわけでも
ないのですけれども、現行法を維持していいではないかというようなお立場の方はいらっ
しゃいませんでしょうか。
【案3.1】と【案3.2】というのがあって、片方は流質契約の有効性を否定するというこ
との、349条を維持するということなのですが、部会の皆様のお考えはいかがでしょう
- 54 -
か。
しろまる伊見委員 私は【案3.2】の方が妥当であると思います。説明のところにも記載していた
だいておりますとおり、動産質一般について有効性を認めるというような具体的なニーズ
というのが考えられないというところが主な理由でありますし、やはり消費者被害等の誘
引といいますか、発生というところも、この規定を変えることによって懸念されるためで
あります。
しろまる道垣内部会長 伊見さんから一つ御見解を頂きましたが、ほかにはいかがでしょうか。
これは昔から言われているやつで、梅先生は349条というのはそもそも反対されてい
ますし、清算すればいいではないかという意見は昔から強いのですが、梅先生にしても我
妻先生にしても、全体の解釈論としては強い個人というのを想定した解釈論を展開します
ので、そうなるわけですね。それに対して、消費者被害が発生するのではないかという伊
見さんの御発言は十分考えられるところなのですが、いかがでしょうか。
結構今まで【案3.1】の見解がこの部会では出ていたような気もするのですが、本日は
御意見がないということでございまして、もう少し皆さん、お考えくださればと思います。
第4に関してはいかがでしょうか。所有権留保の実行。
特に御意見はございませんでしょうか。それでは、ここで「第5 債権譲渡担保権の実
行」に入りたいところではあるのですが、ここは量としては多いところでございますので、
少し無理かなと思います。また、本日から6時までとさせていただいたときに最初から6
時半ぐらいまでやりますと、それなら6時半と言えよと言われても困りますので、本日は
残念ながら、この辺りで終わらせていただければと思います。
それでは、本日の審議はこの程度にさせていただくことにいたしまして、次回の議事日
程等について事務当局から説明をしていただきます。
しろまる笹井幹事 本日も長い時間ありがとうございました。次回の日程は、7月11日火曜日の
午後1時30分から午後6時まで、場所は法務省地下1階大会議室です。
次回は正式な日程ということになりますので、今日、一部積み残しということになりま
したけれども、倒産手続における取扱いや集合債権譲渡担保権の実行などを扱いたいと思
っております。
しろまる道垣内部会長 それでは、法制審議会担保法制部会の第34回会議を閉会にさせていただ
きます。
本日も熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。また次回もよろしくお願い
いたします。どうも失礼いたします。
-了-

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /