法 務 資 料
第469号
法務省大臣官房司法法制部
ドイツ家庭事件及び非訟事件の
手続に関する法律
ドイツ家庭事件及び非訟事件の
手続に関する法律
は し が き
この資料は、ドイツ家庭事件及び非訟事件の手続に関する法律(Gesetz
über das Verfahren in Familiensachen und in den Angelegenheiten der
freiwilligen Gerichtsbarkeit(FamFG)の2023年1月1日現在の法文)を翻訳し
たものである。
全体監修、概説及び翻訳は、次の方々に委嘱した。ここに、その労に対し、
深く謝意を表する次第である。
しろまる全体監修・概説・翻訳
東京大学大学院法学政治学研究科教授 畑 瑞穂
しろまる全体監修・翻訳
神戸大学大学院法学研究科教授 八田卓也
しろまる翻訳
神戸大学大学院法学研究科教授 青木 哲
しろまる翻訳
神戸大学大学院法学研究科教授 浦野由紀子
しろまる翻訳
東京大学大学院法学政治学研究科教授 垣内秀介
しろまる翻訳
中央大学大学院法務研究科教授 高田裕成
令和5年12月
 法務省大臣官房司法法制部 I目 次
はしがき
[概説]ドイツ家庭事件・非訟事件手続法-概説
1 ドイツ家庭事件・非訟事件手続法の成立.......................................... 1
2 法改正の目的... ........................................................................... 2
3 家庭事件・非訟事件手続法の構造................................................... 3
4 家庭事件・非訟事件手続法の特徴................................................... 5
5 日本法との関係... ........................................................................ 11
[翻訳]ドイツ家庭事件及び非訟事件の手続に関する法律
第1編 総則... .................................................................................... 13
第1章 総則規定(第1条〜第22a条)
................................................... 13
第2章 第一審の手続(第23条〜第37条)
... .......................................... 23
第3章 決定(第38条〜第48条)............................................................ 29
第4章 保全命令(第49条〜第57条)
... ................................................ 33
第5章 上訴... ................................................................................. 36
第1節 抗告(第58条〜第69条)......................................................... 36
第2節 法律抗告(第70条〜第75条)
... ............................................. 41
第6章 手続費用の救助(第76条〜第79条)
... ....................................... 44
第7章 費用(第80条〜第85条)............................................................ 45
第8章 執行... ................................................................................. 47
第1節 総則規定(第86条〜第87条)
... ............................................. 47
第2節 人身の引渡し及び交流の実施に関する裁判の執行
(第88条〜第94条)
............................................................... 48
第3節 民事訴訟法による執行(第95条〜第96条a)
.............................. 51
第9章 外国との関連がある手続......................................................... 52
第1節 国際法上の合意及び欧州連合の法令との関係(第97条)
............ 52
第2節 国際裁判管轄(第98条〜第106条)
.......................................... 52 II第3節 外国の裁判の承認及び執行(第107条〜第110条)
... .................. 55
第2編 家庭事件の手続... ..................................................................... 60
第1章 総則規定(第111条〜第120条)
... ............................................. 60
第2章 婚姻事件の手続、離婚事件及び附帯事件の手続...
........................ 64
第1節 婚姻事件の手続(第121条〜第132条)
... ................................. 64
第2節 離婚事件及び附帯事件の手続(第133条〜150条)
... .................. 68
第3章 親子関係事件の手続(第151条〜第168g条)
................................. 74
第4章 実親子関係事件の手続(第169条〜第185条)
... ........................... 90
第5章 養子事件の手続(第186条〜第199条)
... .................................... 94
第6章 婚姻住居事件及び家財事件の手続(第200条〜第209条)
... ............ 98
第7章 暴力保護事件の手続(第210条〜第216条a)
.............................. 101
第8章 年金調整事件の手続(第217条〜第230条)
... ........................... 103
第9章 扶養事件の手続... ............................................................... 107
第1節 特別の手続規定(第231条〜第245条)
... .............................. 107
第2節 保全命令(第246条〜248条)................................................ 113
第3節 未成年者の扶養についての簡易手続(第249条〜第260条)
... ... 114
第10章 婚姻財産制事件の手続(第261条〜第265条)
... ........................ 119
第11章 その他の家庭事件の手続(第266条〜第268条)
... ..................... 120
第12章 生活パートナーシップ事件の手続(第269条〜第270条)
... ......... 121
第3編 世話事件及び収容事件の手続................................................... 124
第1章 世話事件の手続(第271条〜第311条)
... ................................. 124
第2章 収容事件の手続(第312条〜第339条)
... ................................. 142
第3章 世話裁判所の割当事件の手続(第340条〜第341条)
... ............... 152
第4編 遺産事件及び分割事件の手続................................................... 153
第1章 定義、土地管轄(第342条〜第344条)
... ................................. 153
第2章 遺産事件の手続... ............................................................... 155
第1節 一般的な規定(第345条)
... ................................................ 155
第2節 死因処分の保管(第346条〜第347条)
... .............................. 157 III第3節 死因処分の開封〔Eröffnung〕
(第348条〜第351条)
... ............ 158
第4節 相続証書手続、遺言執行(第352条〜第355条)
... .................. 159
第5節 手続に関するその他の規定(第356条〜第362条)
... ............... 163
第3章 分割事件の手続(第363条〜第373条)
... ................................. 164
第5編及び第6編 略... .................................................................. 168
第7編 自由剥奪事件の手続(第415条〜第432条)
................................. 169
第8編及び第9編 略... .................................................................. 175
[概説]
ドイツ家庭事件・非訟事件手続法
-概説
-1-
ドイツ家庭事件・非訟事件手続法-概説
東京大学教授 畑 瑞穂
1 ドイツ家庭事件・非訟事件手続法の成立
ドイツ「家庭事件及び非訟事件の手続に関する法律(Gesetz über das
Verfahren in Familiensachen und in den Angelegenheiten der freiwilligen
Gerichtsbarkeit〔略称は、FamFG〕)」
(以下では、
「家庭事件・非訟事件手続
法」と呼ぶ。
)は、2008年に成立し、2009年9月1日から施行されている1。か つ て は、 非 訟 事 件 に つ い て は、 主 に、 1898年 に ド イ ツ 民 法 典
(Bürgerliches Gesetzbuch〔 略 称 は、BGB〕
) と と も に 制 定 さ れ た ド イ
ツ 非 訟 事 件 手 続 法(Gesetz über die Angelegenheiten der freiwilligen
Gerichtsbarkeit〔略称は、FGG〕
)が規律していた。また、離婚訴訟等の人
事訴訟事件については、
1877年制定のドイツ民事訴訟法(Civilprozeßordnung
〔略称は、CPO〕
)以来、その中に特則が置かれており(第6編)
、1898年の
BGB制定とともにCPOが改正された(Zivillprozeßordnung〔略称は、ZPO〕
となった)際に、親子関係事件に関する特則も第6編に設けられていた2。家庭事件・非訟事件手続法は、これらをいわば統合して成立した法典であ
り、日本の現行法で言えば、家事事件手続法、非訟事件手続法、人事訴訟法
を合わせたものにおおむね対応する幅広い適用範囲を有するものである。1 制定後間もない時期の解説として、垣内秀介「ドイツにおける新たな家事事件・非訟事
件手続法の制定」法の支配155号35頁[2009]がある。
本稿では、垣内・前掲及び政府草案の理由書(BT-Drucks. 16/6308 S. 161)のほか、主に
以下の文献を参照している。
Keidel et al.,FamFG 20.Aufl. [2020]
Prütting et al,. FamFG 5.Aufl. [2020]
Bumiller et al., FamFG 13.Aufl. [2022]
なお、本稿の性質上、文献の引用は極めて限定的なものである。2 公示催告手続についても、第9編として規定が置かれていた。 -2-2 法改正の目的
家庭事件・非訟事件手続法による改正はかなり大規模なものであったわけ
であるが、このような改正の目的として、政府草案の理由書は以下の諸点を
挙げている3。a) FGGの 不 備 な( 隙 の あ る )
(lückenhaft) 規 定 を ま と ま り の あ る
(zusammenhängend)手続法典へと拡充すること。
その際、判例・学説の知見を考慮し、従来の手続の長所、とりわけその
柔軟性(Elastizität)を維持すべし、とされている。
b) 法 治 国 家 に ふ さ わ し い 手 続 の 形 を 整 え る こ と(Rechtsstaatliche
Ausgestaltung des Verfahrens)。この点については、憲法に基礎づけられ、判例によって形成された手続
関係人のための保障に明文の規律を与えるべし、とされている。
c) 他の手続法典との調和
この点については、見通しのよさと法的安定性のため、他の手続法典と
の不必要な違いは避けるべし、とされている。
d) ユーザーフレンドリー(Anwenderfreundlich)な法律の構成と用語
この点については、手続関係人の実際のニーズに沿うべきであるととも
に、法律の内容、構成及び用語において関心を持った素人にもわかりやす
くあるべしとされ、事実関係解明のための裁判所の特別な責任、手続の対
象のしばしば最も個人的な性格、関係者にとっての手続の重大な意義に対
応しなければならない、とされている。
e) 家庭裁判所の手続において紛争予防・紛争解決の要素を強化すること。
この点については、対象が財産関係である場合も含めて家庭裁判所の手
続における感情的な紛争が特徴として指摘され、より具体的には以下の諸
点が挙げられている。
・裁判所内外における離婚附帯事件の紛争調整を促進すること。3 BT-Drucks. 16/6308 S. 164. -3-・交流・配慮権についての手続を迅速化すること。
・手続保護人(改正法では、手続補佐人)の役割を明確化することに
よって子の関与・協力権を強化すること。
・交流権についての裁判及び裁判所で認可された和解並びに子の引渡し
の裁判を実効性をもって貫徹すること。
・本案から独立した仮の権利保護を導入すること。
・とりわけ別居及び離婚に関連するすべての事件のための「大家庭裁判
所」の管轄権を設けること。
このような家庭事件・非訟事件手続法による法改正については、 2016年
から2017年にかけて包括的な外部評価が行われ、法改正の目的はおおむね
達成され、成功したものと評価されているとのことである4。なお、家庭事件・非訟事件手続法は制定後もしばしば改正されており、
以下でも若干言及するが、はしがきにもある通り、本資料は2023年1月1
日時点の法文に基づくものである。
3 家庭事件・非訟事件手続法の構造
家庭事件・非訟事件手続法は9編からなる。
第1編は総則であり、第2編以下の事件のみならず、連邦法が裁判所の管
轄とした非訟事件(例えば、意思表示の公示送達についての許可事件〔BGB
第132条第2項第2文〕
)の全てにも原則的に適用される(第1条参照)。総則規定の多くは、新しいものというよりは、FGGないし判例・学説上発
展した原則に沿うものであるとされている。
第2編から第8編までは各則である。
第2編は家庭事件(Familiensachen)に関するものである。12章からな
り、従前FGGとZPOに分かれていた各種の家庭事件を包括するものになって
いる。これらの事件は家庭裁判所が管轄している。4 Vgl. Prütting, a.a.O. Einl. Rn.15, 33. -4-第2編第1章は家庭事件の総則規定であり、第113条第1項では、婚姻事
件(第121条参照)と家庭争訟事件(第112条参照)について、家庭事件・非
訟事件手続法の総則規定の多くの適用を排除し、ZPOの規定の多くを準用す
ることが定められている。
第2編第2章以降は、家庭事件の各類型に関するものであり、婚姻事件と
離婚事件及び附帯事件(第2章)
、親子関係事件(第3章)
、実親子関係事
件(第4章)
、養子事件(第5章)
、婚姻住居事件及び家財事件(第6章)、暴力保護事件(第7章)
、年金調整事件(第8章)
、扶養事件(第9章)
、婚
姻財産制事件(第10章)
、その他の家庭事件(第11章)
、及び生活パートナー
シップ事件(第12章)について規定している。
第3編は、世話事件(第1章)
、収容事件(第2章)
、及び世話裁判所
の割当事件(第3章)について規定している。これらの事件は、従前の
後見裁判所(Vormundschaftsgericht)に代わって設けられた世話裁判所
(Betreuungsgericht)が管轄している。
第4編は遺産事件及び分割事件、第5編は登記事件及び企業法事件、第6
編はその他の非訟事件、第7編は自由剝奪事件、第8編は公示催告事件につ
いて規定している。
最後の第9編は、
「終末規定(Schlussbestimmungen)
」であり、州の立法
権限や経過措置について規定している。
本資料では、総則である第1編のほか、各則のうち親族法・相続法に関連
する第2編ないし第4編及び第7編をとりあげている5。なお、裁判所の事物管轄については、家庭事件・非訟事件手続法内ではな
く、裁判所構成法(Gerichtsverfassungsgesetz〔略称は、GVG〕
)に規定さ5 本資料は、法制審議会非訟事件手続法・家事審判法部会に、監修者・翻訳者である垣内=高
田=畑が「東京大学・非訟事件手続法研究会」として提出した「
『家庭事件及び非訟事件の
手続に関する法律』仮訳」
(https://www.moj.go.jp/content/000012230.pdf)
(政府草案理由書
等の要点を含む)と、青木=浦野=八田が提出した「
『家庭事件及び非訟事件の手続に関す
る法律』
(第2編、第3編、第4編及び第7編)」(https://www.moj.go.jp/content/000012248.
pdf)を基礎としつつ、その後の法改正の反映や訳語の再検討を行ったものである。 -5-れている(同法第23a条等)。4 家庭事件・非訟事件手続法の特徴
(1) 統一的な法典
既に述べてきたように、家庭事件・非訟事件手続法は、わかりやすさの
観点から、FGGやZPO等の法令に分散してきた非訟事件や家庭事件を一つ
にまとめるものになっている。
(2) 「大家庭裁判所」とその手続
とりわけ家庭事件については、裁判所の面でも、全てを家庭裁判所が管
轄することになり、
「大家庭裁判所」が実現したとされる。
もっとも、家庭事件の中で、婚姻事件(第121条参照)と家庭争訟事件
(112条参照)については、前述の通り家庭事件・非訟事件手続法の総則
規定の多くの適用を排除し、民事訴訟法の規定の多くを準用することが定
められており(第113条第1項)
、家庭事件について統一的な手続が設けら
れたわけではない。
(3) 統一的な用語
ユーザーフレンドリーな法律用語の観点から、全ての手続について、当
事者ではなく関係人、訴えではなく申立てといった形で統一的な用語が用
いられている。
(4) 関係人概念
手続関係人に関する規律は、家庭事件・非訟事件手続法による改正の重
点の一つとされている。
関係人概念に関する規定は初めて整備されたものであり、総則の規
定(第7条)では、まず、申立てにより開始される手続において申立
人が法律上当然に関係人となる(法律上当然の関係人〔Beteiligte kraft
Gesetzes〕
)とされる(同条第1項)ほか、参加が必要的な関係人(必要
的関係人〔Muss-Beteiligte〕
)として、
「手続によりその者の権利が直接
影響を受ける者」が一般的に挙げられる(同条第2項第1号)とともに、 -6-各則的な規定によって「職権で、又は申立てにより参加させることが必要
な者」が挙げられている(同項第2号)
。この意味での各則的な規定とし
ては、例えば、親子関係事件について、少年局が、民法典第1666条及び第
1666a条による手続においては職権で参加させられ(関係人とされ)
、他の
手続においてはその申立てによって参加が認められる(関係人となる)こ
とが規定されている(第162条第2項)
。さらに、各則的な規定によって、
その他の者について、職権又は申立てによる参加が認められ得る(関係人
となり得る)場合がある(任意的関係人〔Kann-Beteiligte〕
)ことが明ら
かにされている(同条第3項)
。この意味での各則的な規定としては、例
えば、親子関係事件について、子の身上に関する手続において一定の場合
に養育者を職権で関係人として参加させることができることが規定されて
いる(第161条第1項)。そして、申立てによって関係人として手続に参加させなければならない
者又は参加させられることができる者に対しては、参加の機会を保障する
ために、裁判所に知られている場合には、裁判所から手続の開始について
通知をし、申立権について教示することとされている(第7条第4項)。また、関係人については、事実関係の解明と法的審尋の保障等のために
さまざまな規律が設けられている(後述(5)参照)。(5) 職権探知主義と関係人の地位
審理原則としては、FGGと同様に原則として職権探知主義がとられてお
り(第26条)
、法的観点指摘義務を含む裁判所の解明義務(釈明義務)に
ついても規定が置かれている(第28条)。他方、関係人の協力義務についても規定が置かれており(第27条第1
項)6
、裁判所が関係人に協力を強制し得る場合は限られている(本人出頭
に関する第33条第3項等)が、関係人が協力を拒むことは、裁判所の事実
調査ないし探知義務の範囲に影響し得る、と解されている。6 第27条第2項は、ZPO第138条第1項と同様の真実義務・完全義務の規定である。 -7-また、事実関係の解明と法的審尋の保障7
等の観点から、関係人につい
て、記録の閲覧(第13条)
、文書の告知(第15条)
、決定の告知(第41条)、本人の出頭(第33条)
、本人の陳述聴取(第34条)
、事実や証拠調べの結果
についての意見陳述の機会の保障(第30条第4項、第37条第2項)等に関
する規定が置かれている。
(6) 自由な証明と厳格な証明
事実関係の解明に当たって、自由な証明(形式的な規律に拘束されない
証拠調べ)
(第29条)と厳格な証明(民事訴訟法の定める方式による証拠
調べ)
(第30条)のいずれを用いるかは、FGGと同様に、裁判所の義務に
従った裁量(pflichtgemäßem Ermessen)によって判断される(同条第1
項)が、FGGと異なって、裁判所が、ある事実を確定し、それを裁判の基
礎としようとしている場合において、関係人がその事実を争うことを明ら
かにしているとき(同条第3項)のほか、特則が定める場合(同条第2
項)は、民事訴訟法の定める方式による証拠調べをしなければならないと
される。民事訴訟法の定める方式による証拠調べを必要的とする特則は、
実親子関係事件(第177条第2項)
、世話事件(第280条第1項)
、収容事件
(第321条第1項)等に置かれている。
(7) 審理の方式
家庭事件・非訟事件については、審理の非公開が原則とされ(GVG第
170条第1項第1文)
、関係人の意思に反しない限りでの公開の余地が認め
られている(同項第2文)。口頭主義も民事訴訟のようには妥当せず、期日における討論は裁判所の
裁量に委ねられている(第32条)
。直接主義も、口頭の討論や厳格な証明
が行われた場合にのみ妥当することになる。
(8) IT化
手続のいわゆるIT化に関しては、立法当初から電子記録・電子文書に関7 法的審問の保障を定める基本法第103条第1項は、非訟事件にも適用されると解されてい
る。Vgl. Prütting, a.a.O. Einl. Rn.65. -8-する規定が置かれていた(旧第14条)が、いくつかの法改正8
によって、
弁護士等に電子文書の使用を義務付ける、 2026年1月1日以降は記録が電
子化される等の規定が整備されている(第14条ないし第14b条)。なお、電子文書の送達については第15条第2項が引くZPO第173条によ
ることになり、ビデオ会議を用いた期日については第32条第3項が準用す
るZPO第128a条によることになると考えられる。
(9) 子の身上に関する親子関係事件における手続補佐人
子の身上に関する親子関係事件における手続補佐人の規定は、立法当初
から置かれていた(旧第158条)が、近年の法改正9
により、選任が必要的
な場合が拡大されるとともに、手続補佐人の適格についての規定が設けら
れる等の手当てがされている(第158条ないし第158c条)。(10) 交流事件・配慮事件の迅速化
交流事件・配慮事件の迅速化も重点の一つであり、手続開始から1か月
以内に討論の期日を開くこと(第155条第2項第2文)等が定められてお
り、また、
「コッヘム・モデル」と呼ばれる一部の実務慣行にならって、
最初の期日で両親の合意を促す(第156条)ことが想定されている。
さらに、 2016年の法改正10
によって、手続の迅速化を求める異議(第
155b条)と抗告(第155c条)の制度が設けられている。8 E.G. Gesetz zur Förderung des elektronischen Rechtsverkehrs mit den Gerichten (FördElRV)
vom 10. Oktober 2013 (BGBl. I S. 3786); Gesetz zur Einführung der elektronischen Akte in
der Justiz und zur weiteren Förderung des elektronischen Rechtsverkehrs (EAkteJEG)
vom 5. Juli 2017 (BGBl. I S. 2208).9 Gesetz zur Bekämpfung sexualisierter Gewalt gegen Kinder (StGBuaÄndG 2021) vom 16.
Juni 2021 (BGBl. I S. 1810).10 Gesetz zur Änderung des Sachverständigenrechts und zur weiteren Änderung des
Gesetzes über das Verfahren in Familiensachen und in den Angelegenheiten der
freiwilligen Gerichtsbarkeit sowie zur Änderung des Sozialgerichtsgesetzes, der
Verwaltungsgerichtsordnung, der Finanzgerichtsordnung und des Gerichtskostengesetzes
(SachVRÄndG) vom 11. Oktober 2016 (BGBl. I S. 2222). -9-(11) 和解・調停等
和解・調停等に関しては、実体法上、関係人が手続の対象を処分できる
場合は、原則として和解をすることができることが、一般的に明らかにさ
れている(第36条)が、交流及び子の引渡事件については、裁判所の承認
を要する等の特則が置かれている(第136条)。また、 2012年の法改正11
によって、和解判事による和解の試みの規定
(第36条第5項)や調停及び他の裁判外紛争解決手続の促進の規定(第
36a条)を新設する等の手当てがされている。
(12) 終局裁判
終局裁判の方式は、決定に統一されており(第38条)
、民事訴訟法の規
定が大幅に準用されている婚姻事件・家庭争訟事件についても同様であ
る。
決定の効力は、原則として、名宛人とされている関係人に対する告知に
よって生じる(第40条)。なお、決定には、不服申立てについての教示12
を記載することとされて
いる(第39条)。(13) 仮の権利保護
仮の権利保護に関しても新たに詳細な規定が置かれ(第49条以下)
、と
りわけ旧法と異なるのは、本案の係属が要件とならないことである(
「独
立の仮処分命令〔selbständige einstweilige Anordnung〕
」と称される。)。
簡易迅速な手続を可能にするとともに、民事訴訟法との調和を図るものと
される。11 Gesetz zur Förderung der Mediation und anderer Verfahren der außergerichtlichen
Konfliktbeilegung (MediationsGEG) vom 21. Juli 2012 (BGBl. I S. 1577).12 法的救済に関する教示については、2012年の法改正で規定の整備が行われている。Gesetz
zur Einführung einer Rechtsbehelfsbelehrung im Zivilprozess und zur Änderung anderer
Vorschriften (RechtsBehEG) vom 5. Dezember 2012 (BGBl. I S. 2418),
-10-
(14) 上訴
上訴についても、従来民事訴訟法の適用を受けていた事件も対象となる
こと等を踏まえて、大きな改正がされた。
第一審の終局裁判に対する上訴としては、原則として、従来の期間制限
のない通常抗告は廃止されて、
期間制限のある抗告に統一され(第58条)、抗告期間は民事訴訟における控訴と同じく1か月とされた(第63条第1項)。財産権上の事件において抗告可能な価額(600ユーロ)やそれ以下の
価額の場合に第一審が抗告を許可する要件(法律問題の基本的な意義等)
(第61条)も民事訴訟における控訴と同様である。
抗告が提起された場合、家庭事件を除き、第一審裁判所はいわゆる再度
の考案が可能である(第68条第1項)。終局裁判に対する抗告において抗告裁判所となるのは、原則として州上
級裁判所である。
抗告審の裁判に対しては、原則として、法律問題が基本的な意義を有す
る場合等に許可される連邦通常裁判所への法律抗告(第70条以下)のみが
可能である。
他方、付随的な決定や中間的な決定に対して独立の不服申立てが認めら
れる場合については、民事訴訟法(第567条ないし第572条)が準用される
即時抗告によることが個別的に明文で定められており(例えば、第6条第
2項)
、抗告期間は2週間となる。
(15) 裁判の変更・再審等
FGGでは、通常抗告に服する裁判について広く裁判の変更可能性が認め
られていたが、上訴が期間制限のある抗告に統一されたことに伴って、裁
判の変更は、事後的な事情変更の場合に限られることとされた(第48条第
1項)
。なお、各則において裁判の変更に関する特則が設けられている場
合(第166条等)は、その特則が適用されることになる。
また、従来明文規定を欠いていた再審について、民事訴訟法を準用する
規定が設けられた(同条第2項)。 -11-
なお、
(2004年の法改正以降の)FGGと同様に、終局裁判に対する上訴
等による変更の可能性がなく、かつ、裁判所による法的審尋請求権の侵害
があり、これが裁判に影響を及ぼすものであるときは、侵害を受けた関係
人は異議により手続の続行を求めることができるものとされている(第44条)。
(16) その他
強制執行に関しても規定が整備され(第86条以下)
、人身の引渡し及び
交流に関して、新たに秩序金・秩序拘禁を可能にする(第89条)等して、
実効性を高めることが図られている。
また、渉外関係についても規定が整備されている(第97条以下)。5 日本法との関係
以上に見たように、ドイツ家庭事件・非訟事件手続法は、家庭事件・非訟
事件を統合する法典であり、従来訴訟事件であった婚姻事件等も取り込んで
いること、しかし、単に訴訟事件を非訟事件化したわけではなく、大幅に民
事訴訟法の規定を準用していること、必要的な関係人の範囲がかなり広くと
られているように見えること、厳格な証明によるべき場合を法定したこと
等、日本法から見て興味深い点を多く含んでいる。
日本の(旧)非訟事件手続法は、FGGの草案を参照して立案されたもので
あった13
が、現行非訟事件手続法・家事事件手続法の立案準備作業において
も、現にドイツ家庭事件・非訟事件手続法が参照されている14。もちろん、憲法・裁判制度・実体法等の違いがあるため、単純な比較や参
照はできないものの、ドイツ法における立法・判例・学説の動向を引き続き
検討する価値は十分にあると考えられる。本資料がその一助となれば、監修
者・翻訳者一同としては幸いである。13 伊東乾=三井哲夫編『注解非訟事件手続法〔改訂〕』(青林書院、 1995年)105頁〔栗田陸
雄〕参照。14 注5)参照。
[翻訳]
ドイツ家庭事件及び非訟事件の
手続に関する法律
-13-
ドイツ家庭事件及び非訟事件の手続に関する法律
第1編 総則
第1章 総則規定
第1条 適用範囲
この法律は、家庭事件及び連邦法が裁判所の管轄とした非訟事件の手続につ
いて適用される。
第2条 土地管轄
(1) 複数の裁判所が土地管轄権を有するときは、最初に事件に関わることに
なった裁判所が管轄権を有する。
(2) 裁判所の土地管轄権は、管轄権を基礎づける事情の変更があっても維持さ
れる。
(3) 裁判所の措置は、土地管轄権がないことによりその効力を妨げられない。
第3条 管轄違いの場合の移送
(1) 手続が開始された裁判所は、土地管轄権又は事物管轄権を有さない場合に
おいて、管轄裁判所を特定することができるときは、決定で、管轄権を有さ
ないことを宣言して、事件を管轄裁判所に移送しなければならない。移送す
るには、あらかじめ関係人の陳述を聴取しなければならない。
(2) 複数の裁判所が管轄権を有する場合においては、移送は、申立人が選択し
た裁判所に対してする。申立人が選択をせず、又は手続が職権により開始さ
れた場合には、手続が開始された裁判所の指定する裁判所に、事件を移送し
なければならない。
(3) 決定に対しては、不服を申し立てることができない。決定は、管轄権を有
するとされた裁判所を拘束する。
(4) 手続が開始された裁判所における手続において生じた費用は、移送先の裁
判所で生じた裁判費用の一部として扱われる。
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第4条 他の裁判所への移送
裁判所は、重大な事由が存在する場合には、事件を他の裁判所に移送するこ
とができる。ただし、移送を受ける裁判所が、事件を引き受けることをあらか
じめ明らかにしている場合に限る。移送するには、あらかじめ関係人の陳述を
聴取するものとする。
第5条 裁判所による管轄の指定
(1) 次に掲げる場合においては、管轄裁判所は、共通する直近上級裁判所が定
める。
1.管轄権を有する裁判所が当該事件について、裁判権の行使が法律上又は
事実上妨げられているとき(裁判権を行使することができないとき。)。
2.複数の裁判所管轄区域の境界を顧慮したとき、あるいはその他の事実上
の理由により、いかなる裁判所がその手続について管轄権を有するか明ら
かではないとき。
3.複数の裁判所が自ら管轄権を有すると確定力をもって宣言したとき。
4.複数の裁判所(のいずれも)が手続について管轄権を有しないと確定力
をもって宣言した場合において、そのうちの一つが管轄権を有するとき。
5.第4条に定める重大な事由により移送されるべき場合において、裁判所
間で合意が成立しないとき。
(2) 共通する直近上級裁判所が連邦通常裁判所の場合は、管轄裁判所は、最初
にその事件に関わることになった裁判所がその管轄区域に属する上級地方裁
判所が定める。
(3) 管轄裁判所を指定する決定に対しては、不服を申し立てることができな
い。
第6条 裁判所職員の除斥・忌避
(1) 民事訴訟法第41条から第49条までの規定は、裁判所職員の除斥及び忌避に
ついて準用する。先行する行政手続に関与した者もまた除斥される。
(2) 忌避の申立てを却下した決定に対しては、民事訴訟法第567条から第572条
までの規定の準用により、即時抗告をすることができる。
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第7条 関係人
(1) 申立てにより開始される手続においては、申立人は、関係人となる。
(2) 次に掲げる者は、関係人として参加させられなければならない。
1.手続によりその者の権利が直接影響を受ける者
2.この法律又は他の法律に従い、職権で、又は申立てにより参加させるこ
とが必要な者
(3) 裁判所は、この法律又は他の法律に定めるときは、職権で、又は申立てに
より、前項に掲げる者以外の者を関係人として参加させることができる。
(4) その申立てにより関係人として手続に参加させなければならない者又は参
加させられることができる者は、その者が裁判所により知られている場合に
は、手続の開始について通知を受けなければならない。これらの者は、申立
権について、教示を受けなければならない。
(5) 裁判所は、第2項又は第3項による参加の申立てを認めない場合には、決
定で、裁判しなければならない。この決定に対しては、民事訴訟法第567条
から第572条までの規定の準用により、即時抗告をすることができる。
(6) 第2項又は第3項に掲げる者以外の者は、陳述を聴取されるべき者又は情
報を提供すべき者であっても、関係人となることはない。
第8条 関係人能力
次に掲げる者は、関係人能力を有する。
1.自然人及び法人
2.社団、人的団体及び組織。ただし、その者に権利が帰属し得る場合に限
る。
3.官庁
第9条 手続能力
(1) 次に掲げる者は、手続能力を有する。
1.民法典により行為能力を有する者
2.民法典により行為能力を制限されている者。ただし、手続の目的(対
象)について民法典により行為能力を認められている場合に限る。
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3.民法典により行為能力を制限されている者。ただし、その者が14歳に達
しており、その者自身に関わる手続において、民法典によればその者に帰
属する権利を主張する場合に限る。
4.この法律又は他の法律において、手続能力があると定められている者
(2) 行為無能力者又は制限行為能力者が手続能力を有しない場合には、民法典
により権限を付与された者がその者に代わって行為をする。
(3) 社団及び官庁のためには、その法定代理人及び理事が行為をする。
(4) 法定代理人の過失は、関係人の過失と同視される。
(5) 民事訴訟法第53条から第58条までの規定は、これを準用する。
第10条 手続代理人
(1) 関係人は、弁護士代理を必要とする定めがない限り、自ら手続を追行する
ことができる。
(2) 関係人は、弁護士を代理人とすることができる。弁護士代理を必要とする
定めがないときは、弁護士のほか、次に掲げる者に限り、代理人とすること
ができる。
1.関係人又は関係人と結合企業関係にある者(株式法第15条)の従業員。
官庁、公法上の法人及び公の役務を遂行するために設置されたこれらの者
の連合体は、他の官庁、公法上の法人及び公の役務を遂行するために設置
されたこれらの者の連合体の職員を代理人とすることができる。
2.成年に達した家族構成員(公課法第15条、生活パートナーシップ法第11条)、裁判官職に就く資格を有する者、及び、代理が有償での活動に関し
ないものであるときは、他の関係人
3.公証人
(3) 裁判所は、決定で、第2項の定めにより代理人資格を有しない代理人を排
除する。この決定に対しては、不服申立てができない。代理人資格を有しな
い代理人が排除決定までにした手続行為及びこの代理人に対してされた送達
又は通知は、その効力を失わない。裁判所は、第2項第2文第1号及び第2
号に定める代理人が、事実関係及び紛争関係を適切に陳述できない場合に
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は、以後代理をすることを禁じることができる。この決定に対しては、不服
申立てができない。
(4) 連邦通常裁判所においては、関係人は、裁判所職員の除斥及び忌避並びに
手続費用救助の手続を除き、連邦通常裁判所において許可された弁護士を代
理人としなければならない。官庁、公法上の法人及び公の役務を遂行するた
めに設置されたこれらの者の連合体は、他の官庁、公法上の法人及び公の役
務を遂行するために設置されたこれらの者の連合体の裁判官職に就く資格を
有する職員を代理人とすることができる。民事訴訟法第78b条及び第78c条の
規定は、弁護士の付添いについて準用する。
(5) 裁判官は、その所属する裁判所においては、代理人となることができな
い。
第11条 手続代理権
代理権〔委任状〕は、書面により、裁判所の記録に添付されなければならな
い。この書面は、後から提出することもできる。その場合において、裁判所
は、提出のための期間を定めることができる。代理権の欠缺は、手続の段階を
問わず、主張することができる。裁判所は、弁護士又は公証人が代理人となっ
ていないときは、代理権の欠缺につき職権で顧慮しなければならない。以上の
ほか、民事訴訟法第81条から第87条まで及び第89条の規定は、
〔手続代理人に
ついて〕準用する。
第12条 補佐人
関係人は、補佐人とともに期日に出頭することができる。関係人が自ら追行
することのできる手続において手続代理人となる資格を有する者は、補佐人と
なることができる。裁判所は、その事件において補佐人を必要とする事情があ
り、かつ、相当と認めるときは、その他の者を補佐人とすることを許可するこ
とができる。第10条第3項第1文及び第5項の規定は、
〔補佐人について〕準
用する。補佐人の陳述は、関係人が直ちに取り消し、又は更正しないときは、
関係人のした陳述とみなす。
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第13条 記録の閲覧
(1) 関係人は、関係人又は第三者の重大な利益に反する場合を除き、裁判所の
記録を〔裁判所〕事務課で閲覧することができる。
(2) 関係人でない者による閲覧は、その者が正当な利益があることを疎明し、
かつ、関係人又は第三者の保護に値する利益を害することがないときに限
り、許される。民法典第1758条〔開示及び探知の禁止〕の場合においては、
閲覧は禁止される。
(3) 記録の閲覧が保障される場合においては、閲覧権を有する者は、自己の費
用で、事務課に、正本、抄本及び謄本の交付を求めることができる。謄本に
は、申立てにより、認証をしなければならない。
(4) 裁判所は、弁護士、公証人、関係人たる官庁に、記録をその者の職務室又
は事務室において自由に閲覧することを許すことができる。証拠部分を職務
室又は事務室において自由に閲覧することを求める権利は存しない。第1文
による裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
(5) 民事訴訟法第299条第3項の規定は、裁判所の記録が電子的方式によって
作成された場合について準用する。
(6) 決定及び処分の草案、それらの準備のために供された成果物並びに評決に
関する書類は、提出され、又は写しを授受されてはならない。
(7) 記録の閲覧に関する裁判は、裁判所がする。ただし、合議体で取り扱う事
件においては、裁判長が裁判する。
第14条 電子記録、電子文書
(1) 裁判所の記録は、電子的方式によって作成することができる。民事訴訟法
第298a条第2項の規定は、これを準用する。
(2) 関係人の申立て及び陳述並びに書面で提出されるべき第三者の情報、供
述、鑑定、翻訳及び陳述は、電子文書を用いてすることができる。民事訴訟
法第130a条、これに基づいて発される法規命令及び民事訴訟法第298条の規
定は、電子文書について準用する。
(3) 民事訴訟法第130b条及び第298条の規定は、裁判所の電子文書について準
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用する。
(4) 連邦政府及び州政府は、その領域内において、法規命令により、電子記録
の作成を開始する時期を定める。連邦政府及び州政府は、その領域内におい
て、法規命令により、電子記録の作成、記入及び保管のための組織上及び技
術上の大綱を定める。州政府は、法規命令により、当該事項を所轄する州の
最上級部局にこの権限を委譲することができる。
〔州政府は、
〕個別の裁判所
又は手続に限って、電子記録によることを認めることができる。この可能性
が用いられた場合、法規命令により、どの手続において記録が電子的に記入
されるべきかが、公布されるべき行政規則によって規定されることを定める
ことができる。第151条第4号及び第271条による手続において紙文書の形式
で作成された記録は、法規命令で定められた時点から電子文書の形式で記入
を続けることができる。(4a) 裁判所の記録は、2026年1月1日から電子的に記入される。連邦政府及
び州政府は、その領域内において、法規命令により、電子記録の作成、記入
及び保管のための組織上及び技術水準に応じた技術上の大綱並びに遵守され
るべきバリアフリーの要請をそれぞれ定める。連邦政府及び州政府は、その
領域内において、法規命令により、紙文書の形式で作成された記録が紙文書
の形式又は第151条4号及び第271条による手続においては、定められた施行
日から電子文書の形式で記入を続けることを、それぞれ定めることができ
る。州政府は、法規命令により、民事裁判権を所轄する州の最上級部局に、
第2項及び第3項による権限を委譲することができる。連邦政府の法規命令
は、連邦参議院の同意を要しない。
(5) 裁判所の記録が、原本に代わる画像その他の情報媒体に法規命令に定める
方式に従って転記され、当該媒体からの出力と原本との一致を証する書面が
ある場合には、その写し、抄本及び謄本は、当該画像その他の情報媒体から
作成することができる。この場合には、原本に対して付すべき注記は、原本
との一致を証する書面に記載する。
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第14a条 書式、命令への委任
連邦司法・消費者保護省は、連邦参議院の同意を得て、法規命令により、電
子文書の書式を採用することができる。法規命令は、書式に含まれる記載が、
全部又は部分的に、構造化された機械的な読取りが可能な形式で伝達されるべ
きことを定めることができる。書式は、法規命令において定められるべきイン
ターネット上のコミュニケーション・プラットフォームによって、提供されな
ければならない。法規命令は、民事訴訟法第130a条第3項にかかわらず、書式
使用者の同定が、身分証明法第18条、電子身分証明カード法第12条又は滞在法
第78条第5項による電子的身分証明の使用によってもなされ得ることを、定め
ることができる。
第14b条 弁護士、公証人及び官庁の使用義務
(1) 裁判所に書面で提出されるべき申立て及び陳述は、弁護士、公証人、官庁
又は公法上の法人及び公の役務を遂行するために設置されたその連合体に
よって、電子文書として伝達されなければならない。これが技術的な理由に
より一時的に不可能である場合は、一般規定による伝達をすることができ
る。一時的に不可能であることは、代替的な提出とともに又は遅滞なく、疎
明されなければならない。電子文書は、求めに応じて追完されなければなら
ない。
(2) 弁護士、公証人、官庁又は公法上の法人及び公の役務を遂行するために設
置されたこれらの者の連合体によって提出されるその他の申立て及び陳述
は、電子文書として伝達するものとする。一般規定によって伝達された場合
は、求めに応じて電子文書が追完されなければならない。
第15条 告知及び法定の方式によらないでする通知
(1) 期日若しくは期間を記載し、又は期間の進行を開始させる文書は、関係人
に、告知されなければならない。
(2) 告知は、民事訴訟法第166条から第195条までの定めるところによる送達又
は告知を受けるべき者の住所に宛てて書面を郵便に付して発送する方法に
よってすることができる。告知が国内でされるべき場合においては、書面
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は、発送の時から3日間を経過した時に告知されたものとみなす。ただし、
書面が到達せず、又は遅れて到達したことを関係人が疎明したときは、この
限りでない。
(3) 告知が要求されていない場合には、文書は、関係人に〔前2項に定める〕
方式によることなく伝達することができる。
第16条 期間
(1) 期間は、特別の定めがない限り、告知の時から進行を始める。
(2) 民事訴訟法第222条、第224条第2項及び第3項並びに第225条の規定は、
期間について準用する。
第17条 原状回復
(1) その過失なくして法定期間を遵守することができなかった者は、その申立
てに基づき、原状への回復が認められる。
(2) 不服申立てについての教示がされず、又は不完全であった場合には、過失
がないことが推定される。
第18条 原状回復の申立て
(1) 原状回復の申立ては、障害事由が消滅した後2週間以内に限りすることが
できる。関係人が法律抗告を理由づける期間を遵守することを妨げられた場
合は、期間は1月となる。
(2) 原状回復の申立ての形式は、することを怠った法的行為に適用される規定
によって定まる。
(3) 申立てを理由づける事実は、申立て提出に際して、又は申立てについての
手続において疎明しなければならない。することを怠った法的行為は、原状
回復の申立て期間経過前に追完しなければならない。この要件を満たす場合
には、原状回復は、申立てがなくても認められる。
(4) 遵守することができなかった期間の満了から1年を経過した場合には、原
状回復を申し立てること、又は申立てなくして認めることはできない。
第19条 原状回復についての裁判
(1) 原状回復については、怠った法的行為について判断する裁判所が裁判す
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る。
(2) 原状回復を認める裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
(3) 原状回復を認めない裁判に対しては、怠った法的行為に適用される規定に
従い、不服を申し立てることができる。
第20条 手続の併合及び分離
裁判所は、相当と認める場合には、手続を併合し、又は分離することができ
る。
第21条 手続の中止
(1) 裁判所は、重大な事由がある場合、とりわけ裁判の全部又は一部が他に係
属している手続の目的となっている法律関係又は行政機関により確定される
べき法律関係の存在又は不存在に係る場合には、手続を停止することができ
る。民事訴訟法第249条の規定は、これを準用する。
(2) 前項の決定に対しては、民事訴訟法第567条から第572条までの規定の準用
により、即時抗告をすることができる。
第22条 申立ての取下げ及び終了宣言
(1) 申立ては、終局裁判が確定するまで、取り下げることができる。取下げ
は、終局裁判がされた後は、他の関係人の同意を要する。
(2) 既にされた、いまだ確定していない終局裁判は、明示的に取り消されるま
でもなく、取下げによってその効力を失う。申立てがある場合には、裁判所
は、このことを決定で確定する。この決定に対しては、不服を申し立てるこ
とができない。
(3) 申立てに基づく裁判は、全ての関係人が〔裁判をすることなく〕手続を終
結させることを望むことを明らかにする場合には、してはならない。
(4) 第2項及び第3項の規定は、職権で開始することのできる手続には、適用
しない。
第22a条 家庭裁判所及び世話裁判所への通知
(1) 裁判所は、裁判手続によって家庭裁判所又は世話裁判所の行為が必要と
なった場合は、家庭裁判所又は世話裁判所に通知しなければならない。
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(2) 前項に規定する場合のほか、裁判所及び官庁は、それを知ることが家庭裁
判所又は世話裁判所がする措置に必要であると考える場合は、家庭裁判所又
は世話裁判所に個人情報を伝達することができる。ただし、伝達を行わない
ことについての保護に値する関係者の利益が、未成年者及び被世話人の要保
護性又は伝達についての公益を上回ると、伝達をする官署が認める場合を除
く。特別の連邦又は対応する州法の使用に関する法規がこれを禁止する場合
は、伝達は行われてはならない。
第2章 第一審の手続
第23条 手続開始の申立て
(1) 手続開始の申立ては、理由を明らかにしてするものとする。申立てには、
理由を基礎づける事実及び証拠方法を掲げ、並びに関係人として考えられる
者を明らかにするものとする。申立ては、相当な場合には、調停又は他の裁
判外紛争解決手続の試みが申立てに先行しているかの摘示、並びに、そのよ
うな手続が理由があって妨げられたかについての表明を含むものとする。
〔理由中で〕引用した文書は、その原本又は写しを添付するものとする。申
立てには、申立人又はその手続代理人が署名するものとする。
(2) 裁判所は、他の関係人に対して申立てを送付するものとする。
第24条 手続〔開始〕の申請
(1) 職権で手続を開始することができる場合においては、手続開始の申請をす
ることができる。
(2) 前項の申請に応じ〔て手続を開始し〕ない場合には、裁判所は、手続開始
を申請した者に対し、その旨を通知しなければならない。ただし、通知を受
けることについて正当な利益を有することが明らかであるときに限る。
第25条 裁判所事務課における調書記載による申立て及び陳述
(1) 関係人は、書面又は裁判所事務課における調書への記載により、管轄裁判
所に対する申立て及び陳述をなすことができる。ただし、弁護士による代理
が必要とされない場合に限る。
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(2) 裁判所事務課の文書作成官の面前においてすることができる申立て及び陳
述は、いかなる区裁判所の事務課においても調書への記載によってすること
ができる。
(3) 〔調書を作成した〕裁判所の事務課は、申立て又は陳述を提出すべき裁判
所に対して、調書を遅滞なく送付しなければならない。調書が到達するまで
は、手続行為の効果は生じない。
第26条 職権探知
裁判所は、職権で、裁判の基礎とすべき事実を確定するために必要な調査を
しなければならない。
第27条 関係人の協力
(1) 関係人は、事実の調査に協力するものとする。
(2) 関係人は、事実の陳述を、完全に、かつ、真実に従ってしなければならな
い。
第28条 手続指揮
(1) 裁判所は、関係人が適切な時期に裁判の基礎となる全ての事実について陳
述し、不十分な事実の摘示を補充するように促さなければならない。裁判所
は、法的観点につき関係人と異なる評価をし、その法的観点を裁判の基礎と
する場合には、関係人に対してその法的観点を教示しなければならない。
(2) 申立てによって開始される手続においては、裁判所は、方式上の不備を是
正し、事案に即した申立てがされるように努めなければならない。
(3) 裁判所は、前2項による釈明をできる限り早期に与えるとともに、その旨
を記録しなければならない。
(4) 裁判所は、期日及び〔関係人〕本人の陳述聴取につき、記録を作成しなけ
ればならない。予期される記録の分量、事件の困難性その他重大な事由に基
づいて必要である場合には、記録調書のために、裁判所事務課の文書作成官
の立会いを求めることができる。記録には、期日及び本人の陳述聴取の経過
の主要部分が記載されなければならない。第36条第5項による和解判事によ
る和解の試みについては、全ての関係人が同意する旨を述べた場合のみ、記
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録が作成される。記録の作成は、第14条第3項に定める方式により情報媒体
に記録する方法によってすることができる。申立てには、理由を基礎づける
事実及び証拠方法を掲げ、並びに関係人として考えられる者を明らかにしな
ければならない。
第29条 証拠調べ
(1) 裁判所は、必要な証拠調べを相当な方式により実施する。この場合におい
て、裁判所は、関係人の主張に拘束されない。
(2) 公の職務上の秘密についての尋問及び証言拒絶権に関する民事訴訟法の規
定は、情報提供を求められる者に対する質問について準用する。
(3) 裁判所は、証拠調べの結果を記録するものとする。
第30条 民事訴訟法の定める方式による証拠調べ
(1) 裁判所は、義務に従った裁量により、裁判の基礎となる事実を、民事訴訟
法の規定に従った証拠調べによって確定するかどうかを判断する。
(2) 裁判所は、この法律に〔特別の〕規定がある場合においては、民事訴訟法
の定める方式による証拠調べを実施するものとする。
(3) 裁判所は、ある事実を確定し、それを裁判の基礎としようとしている場合
において、関係人がその事実を争うことを明らかにしているときは、その主
張された事実が真実であるかどうかについて民事訴訟法の定める方式による
証拠調べをしなければならない。
(4) 事実関係の解明のために、又は法的審尋の保障のために必要である場合に
は、民事訴訟法の定める方式による証拠調べの結果について、関係人に意見
を陳述する機会を与えなければならない。
第31条 疎明
(1) 事実についての主張を疎明しなければならない者は、全ての証拠方法を用
いることができる。宣誓に代わる保証もまたすることができる。
(2) 〔疎明においては、
〕直ちにすることのできない証拠調べは、
許されない。
第32条 期日
(1) 裁判所は、事件につき関係人と期日において討論することができる。民事
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訴訟法第219条並びに第227条第1項、第2項及び第4項の規定は、これを準
用する。
(2) 呼出しから期日までの間には十分な期間を置くものとする。
(3) 相当な場合には、裁判所は、民事訴訟法第128a条の準用による映像及び音
声中継の方法で、関係人と事件につき討論するものとする。
第33条 関係人本人の出頭
(1) 裁判所は、事実関係の解明のために相当と認める場合には、関係人本人に
期日への出頭を命じ、関係人の陳述を聴取することができる。一つの手続で
複数の関係人本人の陳述を聴取すべき場合において、陳述を聴取すべき関係
人の保護又は他の理由のために必要であるときは、関係人の陳述聴取は、他
の関係人が立ち会わない場で行われなければならない。
(2) 手続能力を有する関係人は、手続代理人が選任されている場合において
も、本人が呼び出されなければならない。手続代理人には、呼出しについて
通知がされなければならない。裁判所は、関係人の出頭が確実でないとき
は、呼出状の送達を命じるものとする。
(3) 適式に呼び出された関係人が正当な理由なく期日に出頭しなかったとき
は、決定で、その者に秩序金を課すことができる。秩序金は、繰り返して課
すことができる。関係人が正当な理由なく繰り返し出頭しなかったときは、
その拘引を命じることができる。
〔出頭しなかった〕後において関係人が十
分に弁明し、理由説明が遅滞したことにつき過失がないことを疎明した場合
には、第1文から第3文までの規定による処分は取り消される。秩序金を
課す決定に対しては、民事訴訟法第567条から第572条までの規定の準用によ
り、即時抗告をすることができる。
(4) 関係人には、不出頭の効果について、呼出状で教示しなければならない。
第34条 関係人本人の陳述聴取
(1) 裁判所は、次に掲げる場合においては、関係人本人の陳述を聴取しなけれ
ばならない。
1.関係人の法的審尋請求権を保障するために必要なとき。
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2.この法律又は他の法律に定めがあるとき。
(2) 関係人本人の陳述聴取は、それにより、その者の健康に重大な被害が生じ
るおそれがある場合、又は関係人がその意思を明らかにすることができる状
態にないことが明白である場合には、しないことができる。
(3) 関係人が指定された陳述聴取の期日に正当な理由なく出頭しなかったとき
は、本人の陳述聴取をしないで手続を終結させることができる。関係人に
は、不出頭の効果について教示しなければならない。
第35条 強制的措置
(1) 一定の作為又は不作為義務を裁判所の命令に基づいて履行させるべき場合
においては、裁判所は、法律に別段の定めがない限り、決定で、義務者に対
して強制金を定めることができる。裁判所は、強制金を取り立てることがで
きない場合には、強制拘禁を命ずることができる。裁判所は、強制金の決定
が功を奏しないことが見込まれるときは、強制拘禁を命じるものとする。
(2) 一定の作為又は不作為義務を定める裁判には、その裁判に従わない場合の
効果を教示しなければならない。
(3) 一回の強制金の金額は、25000ユーロを超えてはならない。強制金を定め
る場合には、同時に、義務者に手続費用を負担させなければならない。民事
訴訟法第802g条第1項第2文及び第2項、第802h条並びに第802j条第1項の
規定は、拘禁の執行について準用する。
(4) 物の引渡し若しくは提出又は代替的作為の実施の義務の強制執行をすべき
場合には、裁判所は、法律に別段の定めのない限り、第1項及び第2項に定
める措置に加えて、又はこれらに代えて、決定で、民事訴訟法第883条、第
886条及び第887条に定める措置を命ずることができる。同法第891条及び第
892条の規定は、これを準用する。
(5) 強制的措置を命ずる決定に対しては、民事訴訟法第567条から第572条まで
の規定の準用により、即時抗告をすることができる。
第36条 和解
(1) 関係人は、手続の対象が関係人の処分を許すものである場合に限り、和解
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を締結することができる。裁判所は、暴力保護事件の場合を除き、関係人に
合意の成立を促すものとする。
(2) 期日において合意が成立したときは、調書を作成しなければならない。和
解の調書に関する民事訴訟法の規定は、これを準用する。
(3) 第1項第1文によってすることができる和解は、民事訴訟法第278条第6
項の定めるところにより、書面で締結することもできる。
(4) 和解についての調書又は決定が誤っている場合には、民事訴訟法第164条
の定めるところにより、更正することができる。
(5) 裁判所は、関係人に、そのために定められ、裁判をする権限を有しない裁
判官(和解判事)の前での和解の試みを指示することができる。和解判事
は、調停を含む紛争解決の全ての方法を行うことができる。前4項の規定
は、和解判事の前での手続について準用する。
第36a条 調停、裁判外紛争解決
(1) 裁判所は、個々の又は全ての関係人に、調停又は他の裁判外紛争解決手続
を提案することができる。暴力保護事件においては、暴力を受けた者の保護
に値する利害を保護しなければならない。
(2) 関係人が調停又は他の裁判外紛争解決手続を行うことを決めたときは、裁
判所は手続を停止する。
(3) 裁判所の命令及び許可の留保は、調停又は他の裁判外紛争解決手続の実施
に妨げられない。
第37条 裁判の基礎
(1) 裁判所は、手続の全趣旨から得られた自由な心証に基づいて、裁判する。
(2) 裁判所は、関係人の権利を害する裁判をするには、その裁判の基礎となる
事実及び証拠調べの結果について、あらかじめその者の意見を聴かなければ
ならない。
-29-
第3章 決定
第38条 決定による裁判
(1) 裁判所は、その裁判により手続の対象の全部又は一部を終結させる裁判
(終局裁判)をする場合には、決定で、裁判をする。登記関係事件について
は、法律で別段の定めをおくことができる。
(2) 決定には、次に掲げる事項を含まなければならない。
1.関係人、その法定代理人及び手続代理人の表示
2.裁判所の表示及び裁判に関与した裁判所構成員の氏名
3.決定主文
(3) 決定には、理由を付さなければならない。決定には、署名をしなければな
らない。決定には、裁判所事務課に交付をした又は決定主文の読み上げによ
る告知をした(決定がされた)日付を、記載しなければならない。
(4) 次に掲げる場合には、理由を付することを要しない。
1.裁判が認諾、放棄に基づく場合又は欠席裁判による場合であって、その
旨が裁判に記載されているとき。
2.関係人の申し立てた内容と同一の裁判をするとき、又は決定が関係人が
明らかにした意思に反しないとき。
3.決定が全ての関係人の面前で口頭で告知され、かつ、全ての関係人が上
訴権を放棄したとき。
(5) 次に掲げる場合には、前項の規定を適用しない。
1.婚姻事件。ただし、離婚を命ずる裁判はこの限りでない。
2.実親子関係事件
3.世話関係事件
4.決定が外国で援用されることが予測されるとき。
(6) 欠席裁判又は認諾裁判の補完に関する規定は、理由を記載せずに作成され
た決定を外国で援用すべき場合について準用する。
第39条 不服申立ての教示
全ての決定には、することのできる上訴、故障申立て又は異議、それらの不
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服申立てを提起すべき裁判所及びその所在地、並びに遵守すべき方式及び期間
についての教示を記載しなければならない。飛越法律抗告については、教示す
ることを要しない。
第40条 〔決定の〕効力の発生
(1) 決定は、その主要な内容に照らし名宛人とされている関係人に対する告知
によって、効力を生ずる。
(2) 法律行為についての許可をその内容とする決定は、裁判の確定によりその
効力を生ずる。このことは、裁判で宣言されなければならない。
(3) 申立てに基づいて法律行為に必要な他の者の授権若しくは同意を代替する
決定又は婚姻の一方当事者若しくは生活パートナーが他方の婚姻当事者若し
くは生活パートナーのために行為をする権限の制限若しくは剥奪(民法典第
1357条第2項第1文、生活パートナー法第8条第2項)を取り消す決定は、
裁判の確定によりその効力を生ずる。危険が差し迫っている場合には、裁判
所は、決定が即時に効力を生ずることを命ずるができる。この決定は、申立
人に告知された時にその効力を生ずる。
第41条 決定の告知
(1) 決定は、関係人に対して告知されなければならない。不服申立てをするこ
とができる決定は、その内容が関係人の明らかにした意思に一致しないもの
である場合には、当該関係人に対して送達されなければならない。
(2) 出頭している関係人に対しては、決定は、その主文を読み上げることに
よっても、告知することができる。この方法により告知したことについて
は、調書に記載しなければならない。この場合には、決定理由を遅滞なく補
充しなければならない。第1文に定める場合においては、決定は、書面に
よっても告知しなければならない。
(3) 決定が法律行為の許可を内容とする場合には、当該法律行為が許可される
者本人に対しても、告知をしなければならない。
第42条 決定の更正
(1) 決定に誤記、計算間違いその他これらに類する明白な誤りがあるときは、
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裁判所は、職権によっても、いつでも更正決定をしなければならない。
(2) 更正決定は、更正を受ける決定〔の原本〕及びその〔全ての〕正本に付記
されなければならない。更正決定が第14条第3項に定める方式による場合に
は、決定は、独立の電子文書に記録されなければならない。その文書は、
〔更正を受ける〕決定と不可分に結合されなければならない。
(3) 更正申立てを却下する決定に対しては、不服を申し立てることができな
い。更正決定に対しては、民事訴訟法第567条から第572条までの規定の準用
により、即時抗告をすることができる。
第43条 追加決定
(1) 手続記録に照らし関係人からされた申立て〔についての裁判〕を全部若し
くは一部脱漏している場合、又は費用の裁判を脱漏している場合には、申立
てにより、追加の裁判をして決定を補充しなければならない。
(2) 追加の裁判の申立ては、決定の書面による告知〔があった日〕から起算し
て2週間の期間内に、しなければならない。
第44条 法的審尋請求権の侵害の救済
(1) 次に掲げる場合には、裁判により不利益を受けた関係人の異議により、手
続を続行しなければならない。
1.当該裁判に対する上訴若しくは不服申立て又はその他の変更の可能性が
与えられておらず、かつ、
2.裁判所による法的審尋請求権の侵害があり、これが裁判に影響を及ぼす
ものであるとき。
終局裁判に先行する裁判に対しては、異議は認められない。
(2) 異議は、法的審尋請求権の侵害を知った時から2週間以内に、しなければ
ならない。侵害を知った時点については、疎明をしなければならない。異議
は、その対象となる裁判の告知から1年を経過した後は、行うことができな
い。異議は、その対象となる裁判を行った裁判所に対して、書面で、又は調
書への記載によってしなければならない。異議は、その対象となる裁判を表
示し、第1項第1文第2号に掲げる要件を示してしなければならない。
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(3) 必要な場合には、他の関係人に対して、意見を陳述する機会が与えられな
ければならない。
(4) 異議が、法律に定める形式又は期間に従わずに行われた場合には、不適法
としてこれを却下しなければならない。異議が理由のないものである場合に
は、裁判所はこれを棄却しなければならない。この裁判は、不服を申し立て
ることのできない決定によってする。この決定には、簡潔に理由を付するも
のとする。
(5) 異議に理由がある場合には、裁判所は、異議に基づいて必要な限度で手続
を続行することにより、侵害を是正する。
第45条 決定の確定
決定は、
適法な上訴又は故障、
〔裁判所の裁判に対する〕異議〔Widerspruch〕
若しくは〔受命裁判官等の裁判に対する〕異議〔Erinnerung〕の申立てのため
に定められた期間の満了前には、確定しない。決定の確定は、
〔定められた〕
期間内にした上訴又は故障、
異議〔Widerspruch〕若しくは異議〔Erinnerung〕
の申立てにより、遮断される。
第46条 確定証明
決定の確定に関する証明書は、手続記録に基づいて、第一審裁判所の事務課
が交付する。上級審の手続の係属中においては、当該審級の裁判所の事務課
が、証明書を交付する。婚姻及び実親子関係事件においては、確定の証明は、
理由を含まない決定正本上に記載して、職権で関係人に交付する。事務課の判
断に対しては、民事訴訟法第573条の規定の準用により、異議申立てをするこ
とができる。
第47条 効力の維持される法律行為
ある者に対して法律行為を行う能力若しくは権能を付与する旨の決定又は意
思表示を受領する能力若しくは権能を付与する旨の決定が不当である場合にお
いて、当該決定の取消しは、取り消されるまでにその者が行い、又はその者に
対して行われた法律行為の効力に影響を及ぼさない。ただし、当該決定が当初
から無効である場合には、この限りでない。
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第48条 〔裁判の〕変更及び再審
(1) 第一審裁判所は、決定の基礎となる事実又は法律状況につきその後本質的
な変更が生じた場合には、継続的効果を有する確定した終局裁判を取り消
し、又は変更することができる。申立てによってのみ開始される手続におい
ては、取消し又は変更は、申立てによってのみすることができる。
(2) 確定裁判によって終結した手続については、民事訴訟法第4編の規定の準
用により、再審〔手続〕を開始することができる。
(3) 法律行為に許可を与え、又は拒絶する決定に対しては、原状回復、第44条
による異議、
〔裁判の〕変更又は再審は許されない。ただし、許可又はその
拒絶が第三者に対して効力を生じた後に限る。
第4章 保全命令
第49条 保全命令
(1) 裁判所は、
〔保全に係る〕法律関係を規律する規定がその措置を許容し、
かつ、直ちに措置をする差し迫った必要がある場合には、保全命令により、
暫定的な措置を命ずることができる。
(2) 保全命令は、現状の保全を命じ、又は仮の地位を定めることができる。
〔保全命令は、
〕関係人に対し一定の行為を命じ、又は禁止し、とりわけ目
的物の処分を禁止することができる。裁判所は、保全命令によって、その命
令の実施に必要な処分をも命ずることができる。
第50条 管轄
(1) 〔保全命令の裁判については、
〕本案事件について第一審の管轄権を有す
る裁判所が管轄権を有する。本案事件が既に係属しているときは第一審裁判
所、抗告裁判所に係属しているときは、抗告裁判所が管轄権を有する。
(2) 特に緊急を要する場合には、裁判所の措置を必要とする場所又は保全命令
が対象とする人若しくは物が所在する場所を管轄する区裁判所も、
〔保全命
令の〕裁判をすることができる。この管轄裁判所は、遅滞なく、職権で、第
1項に定める管轄裁判所に手続を移送しなければならない。
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第51条 〔保全命令の〕手続
(1) 本案事件手続が申立てによってのみ開始することができる場合において
は、保全命令は、申立てによってのみ発することができる。申立人は、申立
てに理由を付し、かつ、発令の要件を疎明しなければならない。
(2) 〔保全命令の〕手続については、仮の救済としての性質に反しない限り、
本案事件について適用される規定の定めるところによる。裁判所は、口頭弁
論を経ないで、裁判することができる。欠席裁判は許されない。
(3) 保全命令の手続は、本案事件が係属している場合においても、独立の手続
である。裁判所は、保全命令の手続において既に実施された個々の手続行為
については、本案事件手続において、これを再び実施することによって新た
な資料を得ることを期待できないときは、実施しないことができる。
(4) 保全命令の費用については、共通規定が適用される。
第52条 本案事件手続の開始
(1) 保全命令が発せられた場合には、裁判所は、関係人の申立てにより、本案
事件手続を開始しなければならない。裁判所は、保全命令の発令とともに、
その満了まで〔本案事件手続開始の〕申立てをすることができない期間を定
めることができる。この期間は、3か月を超えてはならない。
(2) 申立てによってのみ開始される手続においては、裁判所は、申立てによ
り、保全命令を得た関係人に対して、裁判所の定める期間内に本案事件手続
開始の申立てをし、又は本案事件手続のための手続費用救助許可の申立てを
すべきことを命じなければならない。この期間は、3か月を超えてはならな
い。この命令が遵守されないときは、保全命令を取り消さなければならな
い。
第53条 〔保全命令の〕執行
(1) 保全命令〔の執行において〕は、決定に表示された関係人以外の者のため
に、又はその者に対して執行すべき場合に限り、執行文を必要とする。
(2) 裁判所は、暴力保護事件及び特別の必要があるその他の事件においては、
債務者への送達に先立って保全命令を執行することを許すことができる。こ
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の場合においては、保全命令は、発令の時に効力を生ずる。
第54条 〔保全命令の〕裁判の取消し及び変更
(1) 裁判所は、保全命令事件における裁判を取り消し、又は変更することがで
きる。取消し又は変更は、本案事件手続が申立てによってのみ開始される場
合においては、申立てによってのみすることができる。ただし、法律で必要
と定める陳述聴取をあらかじめ経ないで裁判がされたときは、この限りでな
い。
(2) 家庭事件において〔保全命令の〕裁判が口頭弁論を経ないでされたとき
は、申立てにより、口頭弁論に基づいて新たに裁判をしなければならない。
(3) 〔保全命令における裁判の取消し又は変更については、
〕保全命令を発し
た裁判所が管轄権を有する。事件が他の裁判所に移送されたときは、移送を
受けた裁判所が管轄権を有する。
(4) 保全命令事件が抗告裁判所に係属しているときは、第一審裁判所は、抗告
の申し立てられた裁判の取消し又は変更をすることができない。
第55条 執行の中止
(1) 保全命令の執行の停止又は制限は、第54条に定める場合においては〔同条
により管轄権を有する〕裁判所が、第57条に定める場合においては上訴審裁
判所がすることができる。この決定に対しては、不服を申し立てることがで
きない。
(2) 執行の停止又は制限の申立てがされた場合には、
〔裁判所は、
〕これらの申
立てについてまず裁判しなければならない。
第56条 〔保全命令の〕失効
(1) 保全命令は、それと異なる措置が効力を生ずることにより、その効力を失
う。ただし、裁判所がより早い時期〔における失効〕を定めているときは、
この限りでない。家庭争訟事件について、保全命令と異なる終局裁判があっ
た場合には、裁判の確定により〔保全命令は〕効力を失う。ただし、
〔終局
裁判の〕効力が裁判の確定より後に生ずる場合は、この限りでない。
(2) 申立てによってのみ開始される手続においては、保全命令は、次に掲げる
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場合にも、効力を失う。
1.本案事件の申立てが取り下げられたとき。
2.本案事件の申立てを退ける裁判が確定したとき。
3.本案事件について合意による終了宣言がされたとき。
4.他の事情により本案事件が終了したとき。
(3) 保全命令に係る事件の第一審の裁判を最後にした裁判所は、申立てによ
り、第1項及び第2項に定める効果を決定で宣言しなければならない。この
決定に対しては、抗告をすることができる。
第57条 上訴
家庭事件における保全命令の手続についての裁判に対しては、不服を申し立
てることができない。ただし、第151条第6号及び第7号に定める手続の場合
及び第一審裁判所が、口頭による討論に基づいて、次に掲げる事項のいずれか
について裁判をした場合には、この限りでない。
1.子についての親の配慮
2.子の他方の親への引渡し
3.子を養育者又は〔子と〕親密な関係を有する者の下に留め置くことを求
める申立て
4.暴力保護法第1条及び第2条による申立て
5.婚姻住居事件における住居の指定の申立て
第5章 上訴
第1節 抗告
第58条 抗告をすることができる場合
(1) 法律に別段の定めがない限り、この法律に定める事件につき区裁判所及び
地方裁判所がした第一審の終局裁判に対しては、抗告をすることができる。
(2) 終局裁判前の裁判であって、独立の不服申立てをすることができないもの
も、抗告裁判所の判断を受ける。
-37-
第59条 抗告権者
(1) 決定によってその権利を害された者は、抗告をすることができる。
(2) 申立てによってのみされる決定について、申立てが却下された場合には、
申立人のみが抗告をすることができる。
(3) 官庁の抗告権については、この法律その他の法律で特に定めるところによ
る。
第60条 未成年者の抗告権
親の配慮の下にある子又は後見に服する被後見人は、その身上に関する事件
においては、法定代理人を介することなく抗告権を行使することができる。裁
判所が裁判をする前に子又は被後見人の陳述を聴取すべきその他の事件につい
ても、同様とする。本条の規定は、行為能力を有しない者又は裁判がされた時
点において満14歳に達していない者については、適用しない。
第61条 〔最低〕抗告額、許可抗告
(1) 財産権上の事件については抗告対象の価額が600ユーロを超えるときに限
り、抗告をすることができる。
(2) 抗告対象の価額が第1項に定める金額を超えない場合においては、第一審
裁判所が抗告を許可したときに限り、抗告をすることができる。
(3) 第一審裁判所は、次に掲げる場合に抗告を許可する。抗告裁判所は、
〔第
一審裁判所のした〕許可に拘束される。
1.法律問題が基本的意義を有し、又は法の継続形成若しくは判例の統一の
確保のために抗告裁判所の裁判を要するときであって、かつ、
2.関係人が、決定に対して600ユーロを超えない限度で、不服を有すると
き。
第62条 本案事件終了後における抗告の帰趨
(1) 〔抗告審の係属中に〕原裁判に係る事件が終了した場合において、抗告人
が正当な利益を有するときは、抗告裁判所は、申立てにより、第一審裁判所
の裁判が抗告人の権利を害するものであった旨を宣言する。
(2) 次に掲げる場合には、正当な利益が原則として認められる。
-38-
1.重大な基本権侵害が存するとき。2.〔事件が〕蒸し返されることが具体的に予測されるとき。
(3) 第1項及び第2項の規定は、手続補佐人又は手続保護人が抗告を提起した
場合について準用する。
第63条 抗告期間
(1) 抗告は、法律に特別の定めがある場合を除き、1月の期間内に提起しなけ
ればならない。
(2) 抗告は、次に掲げる裁判に対してするときは、2週間の期間内に提起しな
ければならない。
1.保全命令の手続における裁判
2.法律行為の許可の申立てについての裁判
(3) 〔抗告〕期間は、関係人に対する決定の書面による告知から、関係人ごと
に進行を始める。関係人に対して書面による告知ができない場合には、期間
は、遅くとも決定がされた後5月を経過した時から、進行を始める。
第64条 抗告の提起
(1) 抗告は、原決定をした裁判所に提起しなければならない。抗告のための手
続費用救助の許可の申立ては、原決定をした裁判所に提起しなければならな
い。
(2) 抗告は、抗告状の提出又は裁判所事務課における調書への記載によって提
起する。婚姻事件及び家庭争訟事件においては、裁判所事務課における調書
への記載によって抗告を提起することができない。抗告〔状〕には、不服を
申し立てる決定の表示及びその決定に対して抗告をする旨を記載しなければ
ならない。抗告〔状〕には、抗告人又はその訴訟代理人が、署名しなければ
ならない。
(3) 抗告裁判所は、裁判に先立って保全命令を発し、とりわけ原決定の執行停
止を命ずることができる。
第65条 抗告の理由
(1) 抗告は、理由を明らかにしてするものとする。
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(2) 抗告裁判所又はその裁判長は、抗告人に対して、抗告理由提出のための期
間を定めることができる。
(3) 抗告は、新たな事実及び証拠に基づいてすることができる。
(4) 抗告は、第一審裁判所が誤ってその管轄権を認めたことを理由としては、
することができない。
第66条 附帯抗告
関係人は、抗告〔権〕を放棄し、又は抗告期間が経過した後であっても、附
帯抗告をすることができる。附帯抗告は、附帯抗告書を抗告裁判所に提出して
する。附帯抗告は、抗告の取下げがあったとき、又は不適法として抗告の却下
があったときは、その効力を失う。
第67条 抗告〔権〕の放棄、抗告の取下げ
(1) 抗告は、抗告人が、決定の告知後に裁判所に抗告〔権〕を放棄する旨の申
述をした場合には、不適法となる。
(2) 附帯抗告は、附帯抗告人が主たる上訴の提起後に裁判所に附帯抗告〔権〕
を放棄する旨の申述をした場合には、不適法となる。
(3) 他の関係人に対して放棄の申述がされた場合においては、その関係人がこ
れを援用したときに限り、抗告は不適法となる。
(4) 抗告人は、抗告に対する裁判がされるまでの間、裁判所に対する申述によ
り、抗告を取り下げることができる。
第68条 抗告手続の進行
(1) 原裁判所は、抗告を理由があると認めるときは、その決定を更正しなけれ
ばならず、抗告を理由がないと認めるときは、事件を遅滞なく抗告裁判所に
送付しなければならない。家庭事件の裁判に対して抗告がされた場合には、
〔原〕裁判所は、更正をすることができない。
(2) 抗告裁判所は、抗告をすることができる裁判であるかどうか、並びに抗告
が法律に定める方式及び期間を遵守して提起されたかどうかを、調査しなけ
ればならない。これらの要件のいずれかを欠く場合には、抗告を不適法とし
て却下しなければならない。
-40-
(3) 抗告手続は、以上のほか、第一審の手続に関する規定の定めるところによ
る。抗告裁判所は、第一審において既に実施された期日、口頭弁論又は個々
の手続行為については、再び実施することによって新たな資料を得ることを
期待できないときは、これを実施しないことができる。
(4) 抗告裁判所は、決定で、抗告事件を、単独裁判官としての裁判のためにそ
の構成員に移付することができる。民事訴訟法第526条の規定は、これを準
用する。ただし、試用期間中の裁判官に移付することはできない。そのほ
か、抗告裁判所は、子の福祉上の理由から相当と認め、又は子が明らかにそ
の好悪及び意思を表明することができない状態にある場合には、決定で、子
本人の陳述聴取を、受命裁判官であるその構成員に行わせることができる。
子についての直接の印象の獲得についても、同様とする。
(5) 第3項第2文及び第4項第1文の規定は、抗告が次に掲げる裁判に係る本
案手続についてのものであるときは、適用しない。
1.民法典第1666条及び第1666a条の規定による身上配慮の一部又は全部の
剥奪
2.民法典第1684条の規定による交流権の否定
3.民法典第1632条第4項又は第1682条の規定による〔現在の監護者の下へ
の〕居住継続命令
第69条 抗告に対する裁判
(1) 抗告裁判所は、事件について自ら裁判しなければならない。抗告裁判所
は、原決定及び手続を取り消すときは、第一審裁判所が本案につき未だ裁判
をしていない場合に限り、事件を第一審裁判所に差し戻すことができる。手
続に重大な瑕疵があり、裁判をするために多数の、又は費用のかさむ証拠調
べを要する場合であって、関係人の申立てがあった場合にも、同様とする。
第一審裁判所は、抗告裁判所が取消しの理由とした法律上の判断に拘束され
る。
(2) 抗告裁判所の決定には、理由を付さなければならない。
(3) 以上のほか、第一審手続における決定に関する規定は、抗告に対する裁判
-41-
について準用する。
第2節 法律抗告
第70条 法律抗告をすることができる場合
(1) 関係人による法律抗告は、抗告裁判所又は第一審裁判所である上級地方裁
判所がその決定で許可した場合にすることができる。
(2) 次に掲げる場合には、法律抗告を許可しなければならない。法律抗告裁判
所は、許可に拘束される。
1.法律問題が基本的意義を有するとき。
2.法の継続形成又は判例の統一の確保のために法律抗告裁判所の裁判を要
するとき。
(3) 抗告裁判所の決定に対する法律抗告は、次に掲げる事件においては許可を
要しない。
1.世話関係事件であって、世話人の選任、世話の取消し又は〔世話人の〕
同意を要するものとし、若しくは要しないものとする裁判に係るもの
2.収容事件及び第151条第6号及び第7号の規定による手続
3.自由剥奪事件
前文第2号及び第3号の規定は、収用措置又は自由剥奪を命ずる決定に
対する法律抗告に限り、適用する。第1文第3号に定める場合には、前文
の規定にかかわらず、法律抗告は、第417条第1項第2文第5号に定める
手続において自由剥奪措置を斥け又は却下する決定に対してする場合にお
いても、許可を要しない。
(4) 保全命令若しくは仮差押えの発令、変更又は取消しに関する手続における
決定に対しては、法律抗告をすることができない。
第71条 法律抗告の期間及び方式
(1) 法律抗告は、決定の書面による告知から1月の期間内に、抗告状を法律抗
告裁判所に提出して提起しなければならない。法律抗告状には、次に掲げる
事項を記載しなければならない。
-42-
1.法律抗告の対象とする決定の表示
2.その決定に対して法律抗告をする旨の表示
法律抗告状には、署名をしなければならない。法律抗告状には、原決定の
正本又は認証のある謄本を添付するものとする。
(2) 法律抗告については、抗告状に理由が記載されていない場合には、1月の
期間内に、理由を付さなければならない。この期間は、原決定の書面による
告知の時から進行を始める。民事訴訟法第551条第2項第5文及び第6文の
規定は、これを準用する。
(3) 抗告の理由は、次に掲げる事項を含むものでなければならない。
1.原決定に対して不服を申し立て、取消しを申し立てる範囲(法律抗告の
申立て)の表示
2.次に掲げる抗告理由の摘示a) 法令違反の原因となる事情の明確な表示b) 法律抗告が手続に関する法令違反を理由とする場合には、その瑕疵
の原因となった事実の表示
(4) 法律抗告状及びその理由書は、他の関係人に告知されなければならない。
第72条 法律抗告の理由
(1) 法律抗告は、原裁判に影響を及ぼす法令違反があることを理由とする場合
に限り、することができる。法令違反は、法規範が適用されず、又は正しく
適用されなかった場合に認められる。
(2) 法律抗告は、第一審裁判所が誤ってその管轄権を認めたことを理由として
はすることができない。
(3) 民事訴訟法第547条、第556条及び第560条の規定は、これを準用する。
第73条 附帯法律抗告
関係人は、法律抗告〔権〕を放棄し、法律抗告期間を徒過し、又は法律抗告
が許可されなかった場合においても、法律抗告の理由書が告知されてから1月
の期間が経過するまでの間、附帯〔抗告〕書を法律抗告裁判所に提出して附帯
法律抗告をすることができる。附帯法律抗告は、附帯〔抗告〕書に理由を付
-43-
し、署名をしてしなければならない。附帯法律抗告は、法律抗告が取り下げら
れ、不適法として却下され、又は第74a条第1項の規定により却下された場合
には、その効力を失う。
第74条 法律抗告についての裁判
(1) 法律抗告裁判所は、法律抗告をすることができる裁判であるかどうか、並
びに法律抗告が法律に定める方式及び期間を遵守して提起され、かつ、理由
が明らかにされているかどうかを、調査しなければならない。これらの要件
のいずれかを欠く場合には、法律抗告を不適法として却下しなければならな
い。
(2) 原決定にその理由によれば法令違反がある場合においても、他の理由によ
り正当であるときは、法律抗告を棄却しなければならない。
(3) 法律抗告裁判所の調査は、関係人のした申立ての限度でのみする。法律抗
告裁判所は、主張された法律抗告の理由に拘束されない。職権により顧慮す
ることができない手続上の瑕疵については、その瑕疵が第71条第3項及び第
73条第2文により主張された場合に限り、調査することができる。民事訴訟
法第559条及び第564条の規定は、これを準用する。
(4) 本節の規定が別段の定めをする場合を除き、第一審に関する規定は、この
他の手続について準用する。
(5) 法律抗告に理由がある場合には、原決定を取り消さなければならない。
(6) 法律抗告裁判所は、終局裁判をするのに熟するときは、事件について自ら
裁判する。これ以外の場合には、法律抗告裁判所は、原決定及び手続を取り
消し、新たな審理及び裁判をさせるため、抗告裁判所、又は、特別の理由に
より必要があると認めるときは、第一審裁判所に、事件を差し戻す。差戻し
は、原裁判をした裁判所の別の裁判体に対してすることができる。事件の差
戻しを受けた裁判所は、取消しの理由とされた法律上の判断に拘束される。
(7) 裁判の理由の記載は、その理由が、基本的意義を有する法律問題の解明、
法の継続形成又は判例の統一の確保のために適当でない場合には、省略する
ことができる。
-44-
第74a条 却下決定
(1) 法律抗告裁判所は、法律抗告が許可の要件を満たしておらず、かつ、認容
の見込みがないと認めるときは、全員一致の決定により、口頭弁論又は期日
における討論をすることなく、抗告裁判所が許可した法律抗告を却下する。
(2) 法律抗告裁判所又はその裁判長は、法律抗告を却下しようとする旨及びそ
の理由を関係人にあらかじめ教示し、法律抗告人に対して、期間を定めて、
意見を陳述する機会を与えなければならない。
(3) 却下の理由が第2項の規定による指摘に含まれていなかった場合には、第
1項の規定による決定には、理由を付さなければならない。
第75条 飛越法律抗告
(1) 次に掲げる場合には、許可を要することなく抗告に服する第一審の決定に
対して、抗告審を経ないで直ちに法律抗告をすることができる(飛越法律抗告)。
1.抗告審を経ないことについて関係人が同意し、かつ、
2.法律抗告裁判所が飛越上告を許可するとき。
飛越法律抗告の許可の申立て及び同意の表明は、抗告による上訴〔権〕
の放棄の効力を有する。
(2) 飛越法律抗告は、第63条の規定で定める期間内に提起しなければならな
い。民事訴訟法第566条第2項から第8項までの規定は、その他の手続につ
いて準用する。
第6章 手続費用の救助
第76条 〔救助の〕要件
(1) 〔次条〕以下に異なる定めのない限り、訴訟費用の救助に関する民事訴訟
法の規定は、手続費用の救助の許可について準用する。
(2) 手続費用の救助の手続でされる決定に対しては、民事訴訟法第567条から
第572条まで及び第127条第2項から第4項までの規定の準用により、即時抗
告をすることができる。
-45-
第77条 〔救助の〕許可
(1) 裁判所は、手続費用の救助の許可に先立って、他の関係人に意見を陳述す
る機会を与えることができる。申立てにより開始される手続においては、特
別の理由により不適切と認められない限り、申立ての相手方に、手続費用の
救助の許可の要件があると考えるか、意見を陳述する機会を与えなければな
らない。
(2) 動産執行についての手続費用の救助の許可〔の効果〕は、財産情報及び宣
誓に代わる保証の提供の手続を含めて、執行裁判所の管轄区域における全て
の執行行為に及ぶ。
第78条 弁護士の付添い
(1) 弁護士による代理が定められている場合は、関係人に、その選択した代理
の用意のある弁護士を付する。
(2) 弁護士による代理が定められていない場合において、事実及び法律状態の
困難さのために弁護士による代理が必要と認められるときは、関係人に、そ
の申立てに基づき、その選択した代理の用意のある弁護士を付する。
(3) 手続の係属する裁判所の管轄区域において開業していない弁護士は、それ
によって特段の費用が発生しない場合にのみ、付されることができる。
(4) 特段の事情により必要であるときは、関係人に、受託裁判官の面前にお
ける証拠調べ期日での権利行使又は手続代理人とのやり取りの仲介のため
に、その申立てに基づき、その選択した代理の用意のある弁護士を付するこ
とができる。
(5) 関係人が代理の用意のある弁護士を見いださないときは、申立てにより、
裁判長が弁護士を付する。
第79条 (削除)
第7章 費用
第80条 負担すべき費用の範囲
〔本節の定めにより負担しなければならない手続〕費用とは、裁判所費用
-46-
(手数料及び立替金)及び関係人の支出した費用であって手続の追行のため
に必要なものをいう。民事訴訟法第91条第1項第2文の規定は、これを準用す
る。
第81条 費用負担の原則
(1) 裁判所は、衡平な裁量により、関係人に手続費用の全部又は一部を負担さ
せることができる。裁判所は、費用の徴収の免除をすることもできる。家庭
事件においては、
〔裁判所は〕費用について常に裁判しなければならない。
(2) 裁判所は、
〔関係人に費用を負担させる場合において、
〕次に掲げる場合に
は、手続費用の全部又は一部を〔当該〕関係人に負担させるものとする。
1.関係人が故意又は重大な過失によって手続〔開始〕の原因を生じさせた
とき。
2.関係人の申立てに当初から認容の見込みがなく、かつ、そのことが関係
人に明白であったとき。
3.関係人が、重要な事実に関しその責めに帰すべき事由により虚偽の摘示
をしたとき。
4.関係人が、その責めに帰すべき事由により協力義務に違反し、手続を著
しく遅滞させたとき。
5.関係人が、十分に弁明しなかった限りで、第156条第1項第3文に定め
る調停その他の裁判外紛争処理の可能性についての無償の情報提供のため
の面談又は第156条第1項第4文に定める協議への参加を命ずる裁判官の
命令に応じなかったとき。
(3) 未成年者である関係人には、その身上に関する手続の費用を負担させるこ
とができない。
(4) 第三者に対しては、その故意又は重大な過失により裁判所の行為が必要と
なった場合に限り、手続費用を負担させることができる。
(5) 費用の負担につき連邦の法令に特別の定めがある場合には、その定めると
ころによる。
-47-
第82条 費用負担の裁判をする時期
裁判所は、費用についての裁判をするときは、終局裁判においてしなければ
ならない。
第83条 和解、終了及び取下げの場合の費用負担
(1) 手続が和解によって完結した場合において、関係人が費用について特別の
定めをしなかったときは、裁判所費用は、関係人が等しい割合で負担する。
その余の費用は、各自が負担する。
(2) 第81条の規定は、手続がその他の方法で終了した場合又は申立ての取下げ
があった場合について準用する。
第84条 上訴の費用
上訴が目的を達しなかったときは、裁判所は、上訴を提起した関係人にその
費用を負担させるものとする。
第85条 費用額の確定
償還すべき額の確定に関する民事訴訟法第103条から第107条までの規定は、
これを準用する。
第8章 執行
第1節 総則規定
第86条 執行名義
(1) 強制執行は、次に掲げるものに基づいて行われる。
1.裁判所の決定
2.裁判所の承認を得た和解(第156条第2項)
3.関係人が手続の対象を処分し得る限りにおいて、民事訴訟法第794条に
定めるその他の執行名義
(2) 決定は、効力発生とともに執行力を有する。
(3) 執行名義は、執行が名義を発した裁判所によって行われない場合にのみ、
執行文を要する。
-48-
第87条 〔執行の〕手続・抗告
(1) 裁判所は、職権で開始され得る手続においては、職権で執行を開始し、違
反行為の場合に取られるべき執行方法を定める。権利者は執行行為の実施を
申し立てることができ、裁判所は、申立てに応じない場合には、決定で裁判
をする。
(2) 執行は、決定が既に送達されているか、同時に送達される場合にのみ、開
始することができる。
(3) 執行官は、民事訴訟法第757a条による情報及び援助を求める権限を有す
る。民事訴訟法第758条第1項及び第2項並びに第759条から第763条までの
規定は、これを準用する。
(4) 執行手続でされた決定に対しては、民事訴訟法第567条から第572条までの
規定の準用により、即時抗告をすることができる。
(5) 第80条から第82条まで及び第84条の規定は、
費用の裁判について準用する。
第2節 人身の引渡し及び交流の実施に関する裁判の執行
第88条 原則
(1) 執行は、
[引渡等の目的である]人が執行開始の時点において常居所とす
る地を管轄する裁判所によって行われる。
(2) 少年局は、相当な場合においては、裁判所に援助を与える。
(3) 手続は、
〔他の手続に〕優先して、迅速に行われなければならない。第
155b条及び第155c条の規定は、これを準用する。
第89条 秩序措置
(1) 人身の引渡し及び交流の実施を目的とする執行名義に違反する行為がされ
たときは、裁判所は、義務者に対して秩序金及び、秩序金を取り立てること
ができない場合のために、秩序拘禁を命ずることができる。秩序金が功を奏
する見込みがないときは、裁判所は、秩序拘禁を命ずることができる。[秩序金又は秩序拘禁を命ずる]命令は、決定でする。
(2) 人身の引渡し又は交流の実施を命ずる決定には、その決定に違反した場合
-49-
の効果を教示しなければならない。
(3) 一回の秩序金の金額は、 25000ユーロを超えてはならない。民事訴訟法第
802g条第1項第2文及び第2項、第802h条及び第802j第1項の規定は、拘禁
の執行について準用する。
(4) 義務者が、違反行為をその責めに帰することができないものとする事由を
明らかにしたときは、秩序措置の決定をしない。責めに帰することができな
いものとする事由が後に明らかにされた場合には、
[秩序措置の]決定は取
り消される。
第90条 直接強制の適用
(1) 次に掲げる場合には、裁判所は、執行のために、明示の決定により、直接
強制を命ずることができる。
1.秩序措置の決定が功を奏しなかったとき。
2.秩序措置の決定が功を奏する見込みがないとき。
3.裁判を即時に執行することが必要不可欠であるとき。
(2) 交流権を行使するために子を引き渡すべき場合においては、子に対する直
接強制の適用を許可してはならない。その他の場合においては、子の福祉に
鑑みて正当と認められ、かつ、より平穏な方法によっては義務の履行強制が
不可能である場合に限り、子に対する直接強制の適用を許可することができ
る。
第91条 裁判官の捜索決定
(1) 義務者の住居は、裁判官の決定に基づく場合に限り、義務者の同意なく捜
索することができる。ただし、決定をすることが捜索の成功を妨げるおそれ
がある場合には、この限りでない。
(2) 第94条に基づき民事訴訟法第802g条によってされる拘禁命令の執行につい
ては、第1項の規定を適用しない。
(3) 義務者が捜索に同意し、又は義務者に対する決定が第1項第1文の規定に
よって発せられ、若しくは第1項第2文の規定により必要とされないとき
は、その住居を共同で占有する者は、捜索を受忍しなければならない。共同
-50-
占有者に対し不当に苛酷な方法は、避けなければならない。
(4) 第1項による決定は、執行に際して提示されなければならない。
第92条 執行手続
(1) 秩序措置の決定は、あらかじめ義務者の陳述を聴取してしなければならな
い。陳述聴取により執行が不可能又は著しく困難となる場合を除き、直接強
制の命令についても、同様とする。
(2) 秩序措置の決定又は直接強制の命令をするときは、義務者に手続費用を負
担させなければならない。
(3) 秩序措置の決定又は直接強制の命令をするためには、第165条による手続
を事前に経ることを要しない。同条の手続を行うことは、秩序措置の決定又
は直接強制の命令を妨げない。
第93条 執行の停止
(1) 裁判所は、次に掲げる場合には、決定で、執行を一時停止若しくは制限
し、又は執行処分を取り消すことができる。
1.原状回復の申立てがあったとき。
2.手続について再審の申立てがあったとき。
3.裁判に対して抗告が提起されたとき。
4.裁判の変更の申立てがあったとき。
5.あっせん手続(第165条)実施の申立てがあったとき。
抗告審においては、執行の一時停止についてまず裁判しなければならな
い。この決定に対しては、不服を申し立てることができない。
(2) 民事訴訟法第775条第1号及び第2号並びに第776条の規定は、執行の停止
又は制限並びに執行処分の取消しについて準用する。
第94条 宣誓に代わる担保
引渡しの目的である人が発見されない場合には、裁判所は、義務者に、その
所在について宣誓に代わる担保を立てさせることができる。民事訴訟法第883
条第2項及び第3項の規定は、これを準用する。
-51-
第3節 民事訴訟法による執行
第95条 民事訴訟法の適用
(1) 前節までの本章各節に異なる定めがない限り、強制執行に関する民事訴訟
法の規定は、次に掲げる執行について準用する。
1.金銭債権のためのもの
2.動産又は不動産の引渡しのためのもの
3.代替的又は不代替的作為の実施のためのもの
4.受忍及び不作為の強制のためのもの
5.意思表示をすることのためのもの
(2) 本法律の規定に定めるところにしたがい、決定が〔強制執行手続におけ
る〕判決に代替する。
(3) 金銭債権のための名義に係る義務者が、執行がその者に償うことができな
い不利益をもたらすことを疎明したときは、裁判所は、その者の申立てによ
り、裁判において、確定前の執行を排除しなければならない。民事訴訟法第
707条第1項及び第719条第1項の場合には、執行は同じ要件の下でのみ停止
され得る。
(4) 物の引渡し若しくは提出又は代替的作為の実施の義務の執行がされるべき
場合は、裁判所は、法律に別段の定めがない限り、決定で、民事訴訟法第
883条及び第885条から第887条までによる方法と並んで、又はそれらの方法
に代えて、
民事訴訟法第888条に規定されている方法を命じることができる。
第96条 暴力保護法による手続及び住居指定事件における執行
(1) 義務者が、暴力保護法1条による不作為命令に違反する場合、権利者は、
すべての持続的な違反行為の除去のために、執行官の援助を求めることがで
きる。執行官は、民事訴訟法第758条第3項及び第759条に従って手続を行わ
ねばならない。執行官は、民事訴訟法第757a条による情報及び援助を求める
ことができる。民事訴訟法第890条及び第891条は、それとともに、適用可能
である。
(2) 暴力保護事件(ただし、手続の対象が婚姻住居事件の領域の規制である場
-52-
合に限る。
)及び婚姻住居事件における保全命令については、有効期間中、
民事訴訟法第885条第1項に定める引渡しを繰り返しすることができる。義
務者への新たな送達は必要としない。
第96a条 実親子関係事件における執行
(1) 確定した決定又は裁判上の和解により〔執行〕名義を得た、民法典第
1598a条による一般的に受け入れられた科学的原則に従って行われる検体採
取、とりわけ唾液又は血液検体の採取を受忍することを求める請求権の執行
は、検体採取の方法を検査されるべき者に要求することができない場合に
は、することができない。
(2) 正当な理由なく検査の拒絶が繰り返される場合は、直接強制も適用される
ことができ、とりわけ強制的な検査への勾引が命じられることができる。
第9章 外国との関連がある手続
第1節 国際法上の合意及び欧州連合の法令との関係
第97条 〔国際法の〕優先及び〔欧州法の〕維持
(1) 国際法上の合意の定めは、直接に適用可能な国内法となっている場合に
は、この法律の規定に優先する。欧州連合の法令の定めは、その効力を妨げ
られない。
(2) 第1項の規定に定める合意及び法令の国内法化及び執行のために定められ
た規定は、その効力を妨げられない。
第2節 国際裁判管轄
第98条 婚姻事件、離婚事件と附帯事件の併合
(1) 次に掲げる場合には、ドイツの裁判所は婚姻事件の管轄権を有する。
1.婚姻の一方当事者がドイツ人であり、又は婚姻の時にドイツ人であった
とき。
2.婚姻の両当事者がともにその常居所を〔ドイツ〕国内に有するとき。
3.婚姻の一方当事者が無国籍であって〔ドイツ〕国内にその常居所を有す
-53-
るとき。
4.婚姻の一方当事者がその常居所を〔ドイツ〕国内に有するとき。ただ
し、婚姻当事者の属するいずれの国の法令によっても、
〔ドイツで〕され
るべき裁判が承認されないことが明らかである場合には、この限りでな
い。
(2) 民法典施行法13条第3項第2号に定める婚姻の取消しにかかる手続につ
いては、婚姻の時16歳に達していたが、18歳に満たない婚姻当事者が〔ドイ
ツ〕国内に常居所を有するときにも、ドイツの裁判所は管轄権を有する。
(3) 第1項に定めるドイツの裁判所の管轄権は、離婚事件と附帯事件が併合さ
れている場合には、附帯事件に及ぶ。
第99条 実親子関係事件
(1) 次に掲げる場合には、第151条第7号の手続を除き、ドイツの裁判所は、
管轄権を有する。
1.子が、ドイツ人であるとき。
2.子が、その常居所を〔ドイツ〕国内に有するとき。
これに加えて、ドイツの裁判所は、子がドイツの裁判所による保護を必要
とするときにも管轄権を有する。
(2) 後見の命令についてドイツの裁判所及び外国の裁判所がともに管轄権を有
し、かつ、後見事件がその外国において係属している場合において、被後見
人の利益にかなうときは、国内における後見の命令をしないことができる。
(3) 後見の命令についてドイツの裁判所及び外国の裁判所がともに管轄権を有
し、かつ、後見が〔ドイツ〕国内において実施されている場合において、
被後見人の利益にかない、後見人が同意し、かつ、その外国が後見を承継す
る用意がある旨を明らかにしたときは、後見事件の係属する裁判所は、事件
を、後見の命令について管轄権を有する外国の裁判所に、委譲することがで
きる。後見人が同意を拒絶し、又は複数の後見人が共同で後見を遂行してい
る場合において、そのうちの一人が同意を拒絶したときは、後見事件の係属
する裁判所に代わって、その上級裁判所が、
〔委譲の〕裁判をする。この決
-54-
定に対しては、不服を申し立てることができない。
(4) 第2項及び第3項の規定は、第151条第5号及び第6号の規定による手続
について準用する。
第100条 実親子関係事件
ドイツの裁判所は、子、母、父又は、受胎期間に母と同居していたことにつ
いて宣誓に代わる担保を提供した男〔のいずれか〕が、次のいずれかに該当す
るときは、管轄権を有する。
1.ドイツ人であるとき。
2.その常居所を〔ドイツ〕国内に有するとき。
第101条 養子事件
ドイツの裁判所は、養親となる者、養親となる婚姻当事者の一方又は子が次
のいずれかに該当する場合には、管轄権を有する。
1.ドイツ人であるとき。
2.その常居所を〔ドイツ〕国内に有するとき。
第102条 年金調整事件
ドイツの裁判所は、次に掲げる場合には、管轄権を有する。
1.申立人又は相手方がその常居所を〔ドイツ〕国内に有するとき。2.〔ドイツ〕国内の請求権について裁判をしなければならないとき。
3.ドイツの裁判所が申立人と相手方との間の離婚を命じたとき。
第103条 生活パートナーシップ事件
(1) ドイツの裁判所は、次に掲げる場合には、生活パートナーシップ事件のう
ち、生活パートナーシップ法に基づく生活パートナーシップの終了又は生活
パートナーシップの存在または不存在の確認を目的とするものについて、管
轄権を有する。
1.生活パートナーの一方がドイツ人であり、又は生活パートナーシップの
開始の時にドイツ人であったとき。
2.生活パートナーの一方がその常居所を〔ドイツ〕国内に有するとき。
3.生活パートナーシップが、ドイツの所轄官庁において開始されたとき。
-55-
(2) 第1項の規定によるドイツの裁判所の管轄権は、終了事件と附帯事件が併
合される場合には、附帯事件に及ぶ。
(3) 第99条、第101条、第102条及び第105条の規定は、これを準用する。
第104条 世話及び収容措置事件、成年者の保護
(1) ドイツの裁判所は、
〔世話又は収容措置の〕対象者又は成年の被保護人が
次のいずれかに該当するときは、管轄権を有する。
1.ドイツ人であるとき。
2.その常居所を〔ドイツ〕国内に有するとき。
これに加えて、ドイツの裁判所は、
〔世話又は収容措置の〕対象者又は成
年の被保護人がドイツの裁判所による保護を必要とするときにも管轄権を有
する。
(2) 第99条第2項及び第3項の規定は、これを準用する。
(3) 第1項及び第2項の規定は、第312条第4号の規定による手続について
は、適用しない。
第105条 〔前条までに規定する手続以外の〕その他の手続
ドイツの裁判所は、この法律に定めるその他の手続について、土地管轄権を
有するドイツの裁判所があるときは、管轄権を有する。
第106条 非専属管轄性
この節に定める〔国際裁判〕管轄は、専属管轄ではない。
第3節 外国の裁判の承認及び執行
第107条 婚姻事件にかかる外国の裁判の承認
(1) 外国において、婚姻の無効を宣言し、婚姻を取り消し、離婚によって婚姻
関係を終了させ、若しくは婚姻継続中に別居を命じ、又は、関係人間の婚姻
の存在若しくは不存在を確認する裁判は、州の司法行政機関が承認要件の存
在を確認したときに限り、承認される。裁判の時婚姻の両当事者が属する国
の裁判所又は官庁のした裁判は、州の司法行政機関による確認によることな
く承認される。
-56-
(2) 〔承認の〕管轄権は、婚姻の一方当事者がその常居所を有する州の司法行
政機関が有する。婚姻当事者がいずれも国内にその常居所を有しない場合に
は、新たに婚姻又は生活パートナーシップを開始しようとする州の司法行政
機関が管轄権を有する。州司法行政機関は、婚姻又は生活パートナーシップ
の開始の申請がされたことを証する文書の提出を求めることができる。他に
管轄権を有する州がないときは、ベルリン州の司法行政機関が管轄する。
(3) 州政府は、州の司法行政機関が本条の規定により有する権限を、法規命令
により、一名又は数名の上級地方裁判所所長に委ねることができる。州政府
は、第1文の規定による授権を、法規命令により、州の司法行政機関に委ね
ることができる。
(4) 〔承認の〕決定は、申立てに基づいてする。申立ては、承認をすることに
ついて法律上の利益を有することを疎明した者が、することができる。
(5) 州司法省が申立てを斥けたときは、申立人は、上級地方裁判所にその決定
を求める申立てをすることができる。
(6) 州の司法行政機関が承認の要件が満たされている旨を確認した場合に
は、申立てをしなかった婚姻当事者は、上級地方裁判所にその決定を求める
申立てをすることができる。州の司法行政機関の決定は、申立人に対する告
知によって効力を生ずる。州の司法行政機関は、決定において、その定める
期間の満了後に初めて効力を生ずる旨を定めることができる。
(7) 〔上級地方裁判所の決定を求める申立てについての〕管轄権は、州の司法
行政機関の所在する地を管轄する上級地方裁判所の民事部が有する。裁判所
の決定を求める申立ては、執行停止の効力を有しない。第4章及び第5章、
第14条第1項及び第2項並びに第48条第2項の規定は、この手続について準
用する。
(8) 前項までの規定は、裁判の承認要件が存在しないことの確認が求められる
場合について準用する。
(9) 承認要が存在すること又は存在しないことの確認は、裁判所及び行政庁を
拘束する。
-57-
(10) 外国の裁判に基づいて、婚姻の無効、取消し、離婚、別居、存在又は不存
在が1941年11月1日においてドイツの家族登録簿(婚姻登録簿)に記載され
ていた場合には、その記載は、本条の規定による承認とみなす。
第108条 その他の外国の裁判の承認
(1) 婚姻事件の裁判及び養子の効力に関する法律第1条第2項の裁判を除
き、外国の裁判は、特別の手続を必要とせずに承認される。
(2) 法律上の利益を有する関係人は、財産権に関しない事件に係る外国の裁判
の承認又は非承認についての裁判を申し立てることができる。第107条第9
項の規定は、これを準用する。ただし、養子縁組の承認又は非承認について
は、養子となる者が縁組の時に満18歳に達していなかった場合には、養子の
効力に関する法律の規定を適用する。
(3) 第2項第1文の規定による申立てに係る裁判については、次に掲げる地を
管轄する裁判所が、土地管轄権を有する。
1.申立ての時に申立ての相手方又は裁判の名宛人である者が常居所とする地2.第1号の規定による管轄が存しない場合においては、申立ての時に〔承
認の可否についての〕確認の利益が認められ、又は保護の必要が存在する地本項に定める管轄は、専属とする。
第109条 承認拒否事由
(1) 次に掲げる場合には、外国の裁判は承認されない。
1.外国の裁判所がドイツ法によれば管轄権を有しないとき。
2.関係人が事件の本案について陳述しておらず、そのことを援用する場合
において、その関係人に対して、手続を開始するための書類が適式に通知
されず、又はその権利を行使するのに適切な時期に通知されなかったと
き。
3.裁判が、ドイツでされた裁判若しくは承認要件を満たす先行する外国裁
判と抵触し、又は裁判の基礎となる手続が先にドイツで係属した手続と抵
-58-
触するとき。
4.裁判の承認が、ドイツ法の本質的原則と明らかに抵触する結果をもたら
し、とりわけ承認することが基本権と抵触するとき。
(2) 第98条第1項第4号の規定は、婚姻の一方当事者の常居所が裁判をした国
にあるときは、外国の婚姻事件の裁判の承認を妨げない。第98条の規定は、
婚姻の両当事者が共に国籍を有する国が承認した外国の婚姻事件の裁判の承
認を妨げない。
(3) 第103条の規定は、登録簿を編製する国が承認した外国の生活パートナー
シップ事件の裁判の承認を妨げない。
(4) 次に掲げる事件に関する外国の裁判は、相互の保証を欠く場合において
も、承認されない。
1.家庭争訟事件
2.生活パートナーシップにおける保護及び扶助の義務を定める事件
3.生活パートナーの共通の住居及び家財に係る法律関係を定める事件
4.生活パートナーシップ法第6条第2文並びに民法典第1382条及び第1383
条の規定による裁判
5.生活パートナーシップ法第7条第2文並びに民法典第1426条、第1430条
及び第1452条の規定による裁判
(5) 外国の裁判が法令に適合しているかどうかについては、調査してはならな
い。
第110条 外国の裁判の執行可能性
(1) 外国の裁判は、承認の要件を満たさないときは、執行することができな
い。
(2) 外国の裁判が第95条第1項に掲げる義務を内容とするときは、決定で、そ
の執行を許す旨を命じなければならない。決定には、理由を付さなければな
らない。
(3) 第2項の規定による決定については、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄
する区裁判所のほか、民事訴訟法第23条の規定によればその債務者に対して
-59-
訴えを提起することができる区裁判所が、管轄権を有する。決定は、外国の
裁判が、その裁判をした裁判所に適用される法令により確定した後に、初め
てすることができる。
-60-
第2編 家庭事件の手続
第1章 総則規定
第111条 家庭事件
家庭事件とは、次に掲げる事件をいう。
1.婚姻事件
2.親子関係事件
3.実親子関係事件
4.養子事件
5.婚姻住居事件及び家財事件
6.暴力保護事件
7.年金調整事件
8.扶養事件
9.婚姻財産制事件
10.その他の家庭事件
11.生活パートナーシップ事件
第112条 家庭争訟事件
家庭争訟事件とは、次の各号に掲げる家庭事件をいう。
1.第231条第1項の規定による扶養事件並びに第269条第1項第8号及び第
9号の規定による生活パートナーシップ事件
2.第261条第1項の規定による婚姻財産制事件及び第269条第1項第10号の
規定による生活パートナーシップ事件
3.第266条第1項の規定によるその他の家庭事件及び第269条第2項の規定
による生活パートナーシップ事件
第113条 民事訴訟法の規定の適用
(1) 婚姻事件と家庭争訟事件には、第2条から第22条まで、第23条から第37条
まで、第40条から第45条まで、第46条第1文及び第2文、第47条、第48条並
びに第76条から第96条までの規定を適用しない。民事訴訟法の総則規定及び
-61-
地方裁判所の手続についての規定は、これを準用する。
(2) 証書訴訟及び手形訴訟に関する民事訴訟法の規定並びに督促手続に関する
民事訴訟法の規定は、家庭争訟事件について準用する。
(3) 婚姻事件と家庭争訟事件には、民事訴訟法第227条第3項の規定を適用し
ない。
(4) 婚姻事件には、次に掲げる事項についての民事訴訟法の規定を適用しな
い。
1.事実に関する陳述をしないこと又は拒否したことの効果
2.訴えの変更の要件
3.手続方法の指定、早期第一回期日、書面による事前手続及び答弁
4.和解弁論
5.裁判上の自白の効力
6.認諾
7.証書の真正に関する陳述をしないこと又は拒否したことの効果
8.相手方の宣誓の放棄、並びに証人又は鑑定人の宣誓の放棄
(5) 民事訴訟法の適用においては、次に掲げる通りに読み替える。1.「訴訟」は、
「手続」2.「訴え」は、
「申立て」3.「原告」は、
「申立人」4.「被告」は、
「相手方」5.「当事者」は、
「関係人」
第114条 弁護士による代理、代理権
(1) 家庭裁判所及び高等裁判所において、婚姻事件及び附帯事件における婚姻
当事者並びに独立の家庭争訟事件における関係人は、弁護士によって代理さ
れなければならない。
(2) 連邦通常裁判所において、関係人は連邦通常裁判所において許可された弁
護士によって代理されなければならない。
(3) 官庁、公法上の法人及び公の役務を遂行するために設置されたこれらの者
-62-
の連合体は、自身の職員又は他の官庁、公法上の法人若しくは公の役務を遂
行するために設置されたこれらの者の連合体の職員を代理人とすることがで
きる。連邦通常裁判所において、代理権を授与された者は裁判官職に就く資
格を有しなければならない。
(4) 次に掲げるものついては、弁護士により代理されることを要しない。
1.保全命令の手続
2.扶養事件において、少年局が補佐人、後見人又は補充保護人として代理
している関係人
3.離婚を同意すること及び離婚申立ての取下げに同意すること、並びに離
婚の同意を撤回すること
4.離婚から附帯事件を分離する申立て
5.手続費用の救助についての手続
6.民事訴訟法第78条第3項に掲げる場合
7.年金調整法第3条第3項の規定による年金調整の実施の申立て、並びに
年金調整法第15条第1項及び第3項の規定並びに第19条第2項第5号の規
定による選択権に関する陳述
(5) 婚姻事件における任意代理人は、その手続のための特別の代理権を必要と
する。離婚事件のための代理権は、附帯事件にも及ぶ。
第115条 攻撃防御方法の却下
婚姻事件と家庭争訟事件において、適切な時期に提出されなかった攻撃防御
方法は、その提出を許すことが、裁判所の自由な心証によると、手続の終了を
遅延させることになり、かつ、遅れたことが重大な過失による場合に、これを
却下することができる。それ以外の場合、その攻撃防御方法は、総則規定にか
かわらず、許されなければならない。
第116条 決定による裁判、裁判の効力
(1) 裁判所は家庭事件において決定で裁判をする。
(2) 婚姻事件における終局裁判は確定により効力を生ずる。
(3) 家庭争訟事件の終局裁判は確定により効力を生ずる。裁判所は、
〔裁判
-63-
が〕即時に効力を生ずることを命ずることができる。裁判が扶養給付の義務
づけを含む場合には、裁判所は、
〔裁判が〕即時に効力を生ずることを命ず
るものとする。
第117条 婚姻事件及び家庭争訟事件における上訴
(1) 婚姻事件及び家庭争訟事件において、抗告人は抗告を理由付けるために、
特定された申立てをなし、かつ、その申立てに理由を付さなければならな
い。この理由は抗告裁判所に提出されなければならない。抗告理由の提出期
間は、2か月とし、決定の書面による告知の時から、遅くとも決定がされた
後5か月を経過した時から、進行を始める。民事訴訟法第520条第2項第2
文及び第3文並びに第522条第1項第1文、第2文及び第4文の規定は、こ
れを準用する。
(2) 民事訴訟法第514条、第516条第3項、第521条第2項、第524条第2項第2
文及び第3文、第527条、第528条、第538条第2項並びに第539条の規定は、
抗告の手続について準用する。抗告の手続及び法律抗告の手続においては、
和解弁論を要しない。
(3) 抗告裁判所が第68条第3項第2文の規定により個別の手続を省略しようと
する場合、裁判所は事前に関係人にその旨を教示しなければならない。
(4) 口頭弁論を終結する期日において終局裁判を言い渡す場合、理由は調書に
記載することもできる。
(5) 民事訴訟法第233条及び第234条第1項第2文の規定は、抗告及び法律抗告
の理由提出期間を遵守することができなかった場合における原状回復につい
て準用する。
第118条 再審
民事訴訟法第578条から第591条までの規定は、婚姻事件及び家庭争訟事件の
手続の再審について準用する。
第119条 保全命令及び仮差押え
(1) 家庭争訟事件には、保全命令に関するこの法律の規定を適用する。民事訴
訟法第945条の規定は、第112条第2号及び第3号による家庭争訟事件につい
-64-
て準用する。
(2) 裁判所は、家庭争訟事件において仮差押えを命じることができる。民事訴
訟法第916条から第934条まで及び第943条から第945条までの規定は、これを
準用する。
第120条 執行
(1) 婚姻事件及び家庭争訟事件における執行は、強制執行に関する民事訴訟法
の規定に準じて行う。
(2) 終局裁判は、効力の発生とともに、執行力を有する。義務者が、執行によ
り、回復できない不利益を受けることを疎明した場合、裁判所は、当該義務
者の申立てにより、終局裁判において、その確定前に、執行を停止し又は制
限しなければならない。民事訴訟法第707条第1項の場合及び第719条第1項
の場合には、同一の要件においてのみ執行を停止し又は制限することができ
る。
(3) 婚姻を締結する義務及び婚姻生活を回復する義務は、執行に服しない。
第2章 婚姻事件の手続、離婚事件及び附帯事件の手続
第1節 婚姻事件の手続
第121条 婚姻事件
婚姻事件とは、次に掲げる事項を目的とする手続をいう。
1.離婚(離婚事件)
2.婚姻の取消し
3.関係人間における婚姻関係の存在又は不存在の確認
第122条 土地管轄
次に掲げる順序で、
〔次に掲げる裁判所が〕専属管轄権を有する。
1.婚姻の一方当事者が婚姻当事者の共同の未成年子の全てとともに常居所
とする地を管轄する裁判所
2.婚姻の一方当事者が婚姻当事者の共同の未成年子の一部とともに常居所
とする地を管轄する裁判所。ただし、婚姻の他方当事者と常居所をともに
-65-
する婚姻当事者の共同の未成年子がない場合に限る。
3.婚姻当事者の最後の共通常居所地を管轄する裁判所の管轄区域に、婚姻
の一方当事者が、事件係属が生じた時点において常居所を有するときは、
その裁判所
4.相手方の常居所地を管轄する裁判所
5.申立人の常居所地を管轄する裁判所
6.第98条第2項の場合には、婚姻締結時に16歳に達し、18歳に満たない婚
姻当事者の居所を管轄する裁判所
7.ベルリンのシェーネベルク区裁判所
第123条 複数の婚姻事件が係属した場合の移送
同一の婚姻に関する複数の婚姻事件が、異なる裁判所の第一審に係属してい
る場合において、これらの手続のうちの一つのみが離婚事件であるときは、
その他の婚姻事件は職権により離婚事件の裁判所に移送されなければならな
い。それ以外のときには、最初に係属した婚姻事件の裁判所に移送する。民事
訴訟法第281条第2項及び第3項第1文の規定は、これを準用する。
第124条 申立て
婚姻事件の手続は、申立書の提出により係属する。訴状についての民事訴訟
法の規定は、これを準用する。
第125条 手続能力
(1) 行為能力を制限された婚姻当事者は、婚姻事件において手続能力を有す
る。
(2) 行為能力を欠く婚姻当事者は、法定代理人により手続を追行する。法定代
理人が離婚の申立て又は婚姻取消しの申立てをするには、家庭裁判所又は世
話裁判所の許可を要する。
第126条 複数の婚姻事件、婚姻事件と他の手続
(1) 同一の婚姻に関する複数の婚姻事件は、互いに併合することができる。
(2) 婚姻事件を他の手続と併合することはできない。第137条の適用はこれを
妨げない。
-66-
(3) 同一の手続において婚姻取消しの申立てと離婚の申立てがされ、双方の申
立てに理由があるときは、婚姻取消しのみを宣言しなければならない。
第127条 制限的職権探知主義
(1) 裁判所は、職権で、裁判の基礎とすべき事実を確定するために必要な調査
をしなければならない。
(2) 離婚の手続又は婚姻取消しの手続において、関係人によって主張されてい
ない事実は、この事実が婚姻の維持に資するものである場合又は申立人が異
議を述べない場合にのみ、これを顧慮することができる。
(3) 離婚の手続において、裁判所が民法典第1568条による特段の事情を顧慮す
ることができるのは、離婚を拒絶する婚姻当事者によって主張された場合に
限る。
第128条 婚姻当事者本人の出頭
(1) 裁判所は婚姻当事者本人の出頭を命じ、その陳述を聴取するものとする。
婚姻の一方当事者の陳述聴取は、その者の保護その他の理由から必要な場
合、婚姻の他方当事者が立ち会わない場でしなければならない。裁判所は、
民事訴訟法第448条の要件を満たさない場合にも、職権で、婚姻の一方又は
両当事者を関係人として尋問することができる。
(2) 共同の未成年子がある場合、裁判所は、親の配慮及び交流権についても、
婚姻当事者の陳述を聴取し、相談手続を利用できることを教示しなければな
らない。
(3) 婚姻当事者が、出頭をすることができない場合、又は裁判所の所在地から
遠隔の地にいるため出頭を要求することができない場合、陳述聴取又は尋問
は受託裁判官がすることができる。
(4) 婚姻当事者が出頭しない場合には、尋問期日に証人が出頭しない場合と同
様に手続を進めることができる。秩序拘禁は許されない。
第129条 行政官庁又は第三者の協力
(1) 管轄の行政官庁が婚姻の取消しを申し立てるとき又は民法典第1306条に違
反する場合において当該第三者が婚姻の取消しを申し立てるときは、その申
-67-
立ては婚姻の両当事者に対してなされなければならない。
(2) 民法典第1316条第1項第1号の場合において、婚姻当事者又は当該第三者
が申立てをしたときは、その申立てについて管轄の行政官庁に通知がなされ
なければならない。この場合、管轄の行政官庁は、自ら申立てをした場合で
なくても、手続を追行し、とりわけ独立して申立てをなし、上訴を提起する
ことができる。第1文及び第2文の規定は、関係人間の婚姻関係の存在又は
不存在の確認を求める申立ての場合について準用する。
第129a条 優先と迅速化の要請
優先と迅速化の要請(第155条第1項)は、婚姻能力を欠くことを理由とす
る婚姻の取消しの手続について準用する。陳述聴取(第128条)は、遅くとも
手続開始後1か月以内に行うものとする。第155条第2項第4文及び第5文の
規定は、これを準用する。裁判所は、期日において少年局の陳述を聴取する
が、婚姻当事者がその時点において成年に達している場合はこの限りでない。
第130条 関係人の欠席
(1) 申立人に対する欠席裁判は、申立てが取り下げられたものとみなされる旨
を示してしなければならない。
(2) 相手方に対する欠席裁判及び記録の現状に基づく裁判はすることができな
い。
第131条 婚姻の一方当事者の死亡
婚姻の一方当事者が、婚姻事件の終局裁判が確定する前に、死亡した場合、
手続はその本案において終結したものとする。
第132条 婚姻取消しの場合の費用
(1) 婚姻の取消しが宣言された場合、手続の費用は相消され(gegeneinander
aufheben)なければならない。婚姻締結の際に婚姻の一方当事者だけが婚姻
の取消可能性を知っていたこと、又は婚姻の一方当事者が他方当事者による
若しくは他方当事者の知っていた詐欺若しくは強迫により婚姻を締結するに
至ったことを考慮して、第1文による費用負担が不当であると認めるとき
は、裁判所は、衡平な裁量により、これと異なる費用負担をさせることがで
-68-
きる。
(2) 第1項の規定は、管轄の行政官庁の申立てにより、又は民法典第1306条に
違反する場合において当該第三者の申立てにより、婚姻が取り消されたとき
は、適用しない。
(3) 未成年の関係人には費用を負担させることができない。
第2節 離婚事件及び附帯事件の手続
第133条 申立書の記載事項
(1) 申立書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
1.共同の未成年子の名前及び生年月日並びに常居所の情報
2.婚姻当事者が、共同の未成年子に対する親の配慮、交流及び扶養義務に
ついて、並びに婚姻に基づく法律上の扶養義務について、婚姻住居及び家
財をめぐる法律関係について、取り決めをしたかどうかの表示
3.婚姻の両当事者が関係人である家庭事件が別に係属しているかどうかの
摘示
(2) 申立書には、婚姻証明書及び共同の未成年子の出生証明書を添付するもの
とする。
第134条 離婚への同意及び離婚申立ての取下げへの同意、撤回
(1) 離婚への同意及び離婚申立ての取下げへの同意は、裁判所事務課の調書へ
の記載により、又は口頭弁論における裁判所の調書への記載により、その旨
の意思表示をすることができる。
(2) 離婚への同意は、離婚についての裁判の口頭弁論終結まで撤回することが
できる。撤回は、裁判所事務課の調書への記載により、又は口頭弁論におけ
る裁判所の調書への記載により、その旨の意思表示をすることができる。
第135条 附帯事件についての裁判外紛争解決
裁判所は、 婚 姻 当 事者が個別に又は共同で、 裁判所が指定する者又は
機関において、 係属している附帯事件に関する調停その他の裁判外の紛
争解決手続の利用可能性について行われる無償の情報提供のための面談
-69-
(Informationsgespräch)に参加すること、及び参加の証明書を提出すること
を、命ずることができる。この命令は、独立して不服申立てをすることができ
ず、強制手段を用いて実現することができない。
第136条 手続の中止
(1) 裁判所は、その自由な心証により婚姻の継続の見込みが認められる場合、
職権で手続を中止するものとする。婚姻当事者の別居期間が1年を超える場
合、婚姻の両当事者の異議に反して手続を中止することはできない。
(2) 申立人が手続の中止を申し立てた場合、裁判所は、手続が中止される前
に、離婚を宣言することができない。
(3) 手続の中止は1回のみ繰り返すことができる。中止期間は、合計で、1年
を超えてはならず、別居期間が3年を超える場合は、6か月を超えてはなら
ない。
(4) 裁判所は、手続の中止とともに、原則として、婚姻当事者に対して、婚姻
の相談手続の利用を勧めるものとする。
第137条 離婚事件と附帯事件の併合
(1) 離婚と附帯事件は、併せて審理及び裁判をしなければならない(併合)。(2) 次に掲げる事件は、離婚の場合に裁判をする必要があり、かつ、離婚事件
の第一審の口頭弁論の遅くとも2週間前に、婚姻の一方当事者により係属が
生じた場合には、附帯事件とする。年金調整について、年金調整法第6条か
ら第19条まで及び第28条が規定する場合には、申立てを要しない。
1.年金調整事件
2.共同の子に対する扶養義務又は婚姻に基づく法律上の扶養義務に関する
限りにおいて、未成年者の扶養についての簡略化された手続を除く、扶養
事件
3.婚姻住居事件及び家財事件
4.婚姻財産制事件
(3) 親の配慮の移転若しくは剥奪、婚姻当事者の共同の子を対象とする交流権
若しくは引渡し又は婚姻の一方当事者の他方当事者の子との交流権に関する
-70-
親子関係事件は、婚姻の一方当事者が離婚事件の第一審の口頭弁論終結前に
併合されることを申し立てた場合に、附帯事件とするが、裁判所が、子の福
祉の理由から併合が適当でないと認める場合は、この限りでない。
(4) 第2項又は前項の要件に該当する手続は、移送の場合に、離婚事件の裁判
所に係属することにより、附帯事件となる。
(5) 第2項の規定による附帯事件が分離された場合、その事件は、引き続き附
帯事件である。複数の附帯事件が分離された場合、分離された附帯事件の間
に併合状態が継続する。第3項の規定による附帯事件は、手続の分離後は、
独立の手続として継続する。
第138条 弁護士の付添い
(1) 離婚事件において申立ての相手方が弁護士により代理されていない場合に
おいて、裁判所がその自由な心証により当該関係人の保護のために不可欠で
あると認めるときは、裁判所は、離婚事件及び附帯事件である親子関係事件
について、職権で、当該関係人の権利を擁護するために、第一審において弁
護士を付さなければならない。民事訴訟法第78c条第1項及び第3項の規定
は、これを準用する。弁護士の付添い〔命令〕の前に、関係人本人の陳述聴
取をし、その際に、家庭事件を離婚事件と同時に審理し、裁判をすることが
できること及びその要件を指摘するものとする。
(2) 付された弁護士は、補佐人の地位を有する。
第139条 その他の関係人及び第三者の引込み
(1) 婚姻当事者以外に関係人がある場合、準備書面、正本又は謄本は、書類の
内容が当該関係人に関するものである限りでのみ、当該関係人に通知又は送
達される。上訴を提起する権限を有する第三者への裁判の送達についても、
同様とする。
(2) 婚姻当事者以外の関係人は、その者が関係人である家庭事件が審理の対象
ではない限りで、口頭弁論への参加から排除することができる。
第140条 手続の分離
(1) 扶養附帯事件又は婚姻関係財産附帯事件において、婚姻当事者以外の者が
-71-
手続の関係人となる場合、附帯事件は分離されなければならない。
(2) 裁判所は、附帯事件を併合状態から分離することができる。手続の分離
は、次に掲げる場合にのみすることができる。
1.年金調整附帯事件又は婚姻関係財産附帯事件において、婚姻の解消の前
に裁判をすることができないとき。
2.年金調整附帯事件において、年金請求権の存在又は額についての訴訟が
他の裁判所に係属しているために、手続が中止されているとき。
3.親子関係附帯事件において、裁判所が子の福祉の理由から手続の分離を
適当であると認める場合又は手続が中止されているとき。
4.離婚申立ての手続係属から3か月が経過し、婚姻の両当事者が、年金調
整附帯事件において必要な関与行為を行い、かつ、一致してその分離を申
し立てたとき。
5.離婚の言渡しが非常に遅延し、更なる遅延により附帯事件の意義を顧慮
すると受忍しがたい苛酷さが生ずるであろう場合であって、婚姻の一方当
事者が分離を申し立てたとき。
(3) 裁判所は、前項第3号に掲げる場合において、婚姻の一方当事者の申立て
により、親子関係附帯事件との関係のために必要であると認めるときは、扶
養附帯事件も分離することができる。
(4) 第2項第4号及び第5号に掲げる場合において、別居の開始から最初の1
年が経過する前の期間は考慮しない。民法典第1565条第2項の要件を充たす
場合は、この限りでない。
(5) 手続の分離の申立ては、裁判所事務課の調書への記載により、又は口頭弁
論における裁判所の調書への記載によりすることができる。
(6) 裁判は独立の決定でなされる。この決定に対しては、独立して不服を申し
立てることができない。
第141条 離婚申立ての取下げ
離婚の申立てが取り下げられた場合、取下げの効力は附帯事件にも及ぶ。子
の福祉への危険のために親の配慮又はその一部を両親の一方、後見人又は保護
-72-
人(Pfleger)に移転することに関する附帯事件並びに取下げの効力が生じる
前に関係人が継続を望む意思を明示的に表示した附帯事件については、この限
りでない。これらの附帯事件は、独立の家庭事件として継続する。
第142条 一つの終局裁判、離婚申立ての棄却
(1) 離婚の場合において、併合された家庭事件の全てについて一つの決定で裁
判をしなければならない。欠席裁判がなされるべき場合も、同様とする。
(2) 離婚申立てが棄却されたときは、附帯事件は対象を失う。第137条第3項
の附帯事件及び裁判の前に関係人が明示的に継続の意思を表示した附帯事件
についてはこの限りでない。これらの附帯事件は、独立の家庭事件として継
続する。
(3) 第1項に規定する決定が年金調整についての裁判を含む場合、その限り
で、言渡しの際には決定主文を参照することで足りる。
第143条 故障申立て
第142条第1項第2文の場合に、欠席裁判に対する故障申立てとその他の決
定に対する上訴が提起されたときは、まず故障申立て及び欠席裁判について審
理及び裁判をしなければならない。
第144条 附帯上訴の放棄
婚姻の両当事者が離婚を宣言する裁判に対する上訴を放棄したときは、その
裁判の取消しを附帯事件における上訴に附帯する方法により求めることも、上
訴が提起される前に放棄することができる。
第145条 上訴の範囲の拡張及び附帯上訴の期間と制限
(1) 第142条の規定により一体としてなされた裁判が、抗告又は法律抗告によ
りその一部について不服を申し立てられた場合、一体的な裁判の一部であっ
て、他の家庭事件に関するものは、上訴の範囲の拡張又は附帯上訴の方法に
より、上訴理由の告知後1か月が経過するまでに限り、不服を申し立てるこ
とができる。告知が複数なされたときは、最後の告知を基準とする。上訴理
由が法律上要求されていないときは、上訴を提起した書面の告知が上訴理由
の告知に代わるものとする。
-73-
(2) この期間内に上訴の範囲の拡張又は附帯上訴がなされたときは、期間をさ
らに1か月延長する。前文の規定は、延長された期間内に新たな上訴の範囲
の拡張又は附帯上訴がなされた場合について準用する。
(3) 年金保険者の不服申立てに附帯して、離婚判決に対する不服申立てをする
ことはできない。
第146条 差戻し
(1) 離婚の申立てを棄却する裁判が取り消され、かつ、附帯事件について裁判
を要するときは、上訴裁判所は棄却した裁判所に事件を差し戻すものとす
る。差戻しを受けた裁判所は、取消しの理由とされた法律上の判断に拘束さ
れる。
(2) 事件の差戻しを受けた裁判所は、取消しの裁判に対して法律抗告が提起さ
れているとき、申立てにより、附帯事件についての審理を命ずることができ
る。
第147条 取消しの範囲の拡張
法律抗告により裁判の一部が取り消される場合、法律抗告裁判所は、関係人
の申立てにより、取り消される裁判との関係のために必要であると認める範囲
においても裁判を取り消し、事件をさらなる審理及び裁判のために抗告裁判所
に差し戻すことができる。離婚を宣言する裁判の取消しの申立ては、上訴理由
の送達又は法律抗告の許可決定の送達後、送達が複数なされるときは最後の送
達後、1か月以内に限りすることができる。
第148条 附帯事件の裁判の効力の発生
離婚を宣言する裁判の確定前は、附帯事件の裁判は効力を生じない。
第149条 手続費用の救助の許可の拡張
離婚事件についての手続費用の救助の許可は、明示的に除外されていない限
り、年金調整関係附帯事件に及ぶ。
第150条 離婚事件及び附帯事件の費用
(1) 離婚が宣言された場合、離婚事件及び附帯事件の費用は、相消されなけれ
ばならない。
-74-
(2) 離婚申立てが棄却(却下)又は取り下げられた場合、申立人が離婚事件及
び附帯事件の費用を負担する。婚姻の両当事者による離婚の申立てが取り下
げられ若しくは棄却(却下)された場合、又は手続がその本案において終結
した場合、離婚事件及び附帯事件の費用は、相消されなければならない。
(3) 第140条第1項の規定により分離されない附帯事件において、婚姻当事者
のほかに関係人がある場合、その者は自ら裁判所外の費用を負担する。
(4) 前3項の場合において、とりわけ婚姻当事者の和諧の観点から、又は附
帯事件として追行された扶養事件若しくは婚姻関係財産事件の結果の観点
から、費用の分担が衡平でないと認めるとき、裁判所は、衡平な裁量によ
り、費用について異なる配分をすることができる。その際、裁判所は、関係
人が第135条の規定による情報提供のための面談(Informationsgespräch)へ
の参加を命ずる裁判官の命令に応じなかったことを、十分に弁明しなかった
限り、顧慮することができる。関係人が費用について合意したとき、裁判所
は、その合意の全部又は一部を裁判の基礎とするものとする。
(5) 前4項の規定は、手続が分離され、別々に裁判がなされるべき附帯事件に
ついて適用する。附帯事件が独立の家庭事件として継続するときは、附帯事
件について適用される費用規定が適用されなければならない。
第3章 親子関係事件の手続
第151条 親子関係事件
親子関係事件とは、家庭裁判所が管轄する手続で、次に掲げる事項に関する
ものをいう。
1.親の配慮
2.交流権及び子の境遇についての情報を得る権利
3.子の引渡し
4.後見
5.未成年者又は既に懐胎された子のための、保護又はそれ以外の代理人の
裁判による選任
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6.民法典第1631b条の規定(第1795条第1項第3項及び第1813条第1項と
併せて適用される場合を含む。
)による自由の剥奪を伴う収容及び自由の
剥奪を伴う措置の許可
7.精神病患者の収容に関する州法の規定による未成年者に対する自由の剥
奪を伴う収容、自由の剥奪を伴う措置又は強制的な医療措置の許可又は命令8.少年裁判所法の規定による職務
第152条 土地管轄
(1) 婚姻事件の係属中は、婚姻当事者の共同の子に関する限り、ドイツの裁判
所のうち、婚姻事件が第一審に係属している又は係属していた裁判所が専属
管轄権を有する。
(2) 前項の場合を除き、子の常居所地を管轄する裁判所が管轄権を有する。
(3) ドイツの裁判所の管轄権が前2項の規定により存しないときは、扶助の必
要性が判明した地を管轄する裁判所が管轄権を有する。
(4) 第1867条の規定と併せて適用される第1693条及び第1802条第2項第3文に
掲げる措置については、扶助の必要性が判明した地を管轄する裁判所も管轄
権を有する。裁判所は、命じられた措置を、後見又は保護が係属している裁
判所に通知するものとする。
第153条 婚姻事件の裁判所への移送
婚姻事件が係属していている場合において、婚姻当事者の共同の子に関する
親子関係事件が他の裁判所で第一審に係属しているときは、この親子関係事件
は、職権で婚姻事件の裁判所に移送しなければならない。民事訴訟法第281条
第2項及び第3項第1文の規定は、これを準用する。
第154条 子の居所が一方的に変更された場合の移送
両親の一方が他方の事前の同意なく子の居所(Aufenthalt)を変更したとき
は、第152条第2項の規定により管轄権を有する裁判所は、子の以前の常居所
地の裁判所に手続を移送することができる。当該他方の親に居所指定権が帰属
しない場合及び居所の変更が子又は世話をしている親の保護のために必要で
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あった場合は、この限りでない。
第155条 優先と迅速化の要請
(1) 子の居所、交流権又は子の引渡しに関する親子関係事件並びに子の福祉へ
の危険を理由とする手続は、優先的に、かつ、迅速に遂行されなければなら
ない。
(2) 裁判所は、前項に規定する手続において、事件について期日に関係人と討
論する。この期日は、遅くとも手続の開始から1か月以内に開くものとす
る。裁判所は、この期日に少年局の陳述を聴取する。期日の延期は、やむを
得ない事由がある場合にのみすることができる。延期理由は、延期の申立て
において疎明されなければならない。
(3) 裁判所は、手続能力のある関係人本人が期日に出頭することを命ずるもの
とする。
(4) 裁判所が、第1項に規定する手続を、調停その他の裁判外紛争解決手続の
遂行のために、中断した場合において、合意による取り決めに達しないとき
は、原則として、3か月後に手続を再開する。
第155a条 共同の親の配慮の移転のための手続
(1) 本条の以下の規定は、民法典第1626a条第2項の規定による手続に適用さ
れる。共同の親の配慮の移転の申立てには、子の生年月日及び出生地を記載
しなければならない。
(2) 第155条第1項の規定は、これを準用する。裁判所は、民事訴訟法第166条
から第195条までの規定に従って共同の親の配慮の移転の申立てを他方の親
に送達し、その者のために意見陳述の期間を定めるが、この期間は母につい
ては早くとも子の出生から6週間後に満了する。
(3) 民法典第1626a条第2項第2文の場合、裁判所は、少年局の陳述聴取をす
ることなく、また、両親本人の陳述聴取をすることなく、書面による手続で
裁判をするものとする。第162条は適用しない。裁判所は、社会法典第8編
第87c条第6項第2文により管轄する少年局に対し、社会法典第8編第58条
に規定する目的のために、子の生年月日及び出生地並びに出生証明書の時点
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における子の名前が摘示された裁判を、法定の方式によらないで通知する。
(4) 前条第2項の規定は、関係人の陳述により又はその他の方法で共同の親の
配慮の妨げになり得る事由が裁判所に判明した場合についてを準用する。た
だし、同項第2文による期日は、当該事由の判明後遅くとも1か月後に行う
ものとし、しかし、第2項第2文に定める母の意見陳述期間が経過する前に
は行わないものとする。前条第3項及び第156条第1項の規定は、これを準
用する。
(5) 行為能力が制限されている親の法定代理人による配慮の意思表示及び同意
は、討論の期日において裁判所の調書への記載によりすることもできる。民
法典第1626d条第2項の規定は、これを準用する。
第155b条 手続の迅速化を求める異議〔Beschleunigungsrüge〕
(1) 第155条第1項に規定する親子事件の関係人は、それまでの手続の期間が
上記の規定による優先及び迅速化の要請に適合しないことを主張することが
できる(手続の迅速化を求める異議)
。この場合、関係人は、手続が優先的
に及び迅速に遂行されていないことを示す事情を提出しなければならない。
(2) 裁判所は、手続の迅速化を求める異議について遅くとも異議を受理してか
ら1月以内に、決定で裁判をする。裁判所は、手続の迅速化を求める異議に
理由があると認める場合には、遅滞なく手続を優先的かつ迅速に遂行するた
めの適切な措置を講じなければならない。とりわけ保全命令の発令を検討し
なければならない。
(3) 手続の迅速化を求める異議は、裁判所構成法第198条第3項第1文に規定
する遅滞に対する異議〔Verzögerungsrüge〕とみなす。
第155c条 手続の迅速化に関する抗告〔Beschleunigungsbeschwerde〕
(1) 第155b条第2項第1文の規定による決定に対して、関係人は、書面による
告知の後2週間以内に、抗告により不服申立てをすることができる。第64条
第1項の規定は、これを準用する。裁判所は、更正を行う権限を有しない。
裁判所は、遅滞なく次項の抗告裁判所に記録を提出しなければならない。
(2) 区裁判所が第155b条第2項第1文により決定をした場合、手続の迅速化に
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関する抗告については高等裁判所が裁判をする。高等裁判所又は連邦通常裁
判所が決定をした場合には、同じ裁判所の別の裁判体が裁判をする。
(3) 抗告裁判所は、遅滞なく、記録の現状に基づいて裁判をする。裁判は遅く
とも1か月以内になされるものとする。第68条第2項の規定は、これを準用
する。抗告裁判所は、従前の手続の期間が第155条第1項に規定する優先と
迅速の要請に則しているかどうかを確認する。抗告裁判所が要請に則してい
ないことを確認した場合には、不服申立てがされた決定をした裁判所は、抗
告裁判所の法律上の判断に留意して、遅滞なく、優先的に、かつ、迅速に手
続を遂行しなければならない。
(4) 裁判所が第155b条第2項第1文に規定する1か月の期間内に手続の迅速化
を求める異議についての裁判をしなかった場合、関係人は、2か月の期間内
に、第2項の規定により抗告裁判所に手続の迅速化に関する抗告を提起する
ことができる。この期間は手続の迅速化を求める異議が裁判所に受理された
時から進行を始める。前2項の規定は、これを準用する。
第156条 合意の促し
(1) 裁判所は、別居及び離婚の際の親の配慮、子の居所、交流権又は子の引渡
しに関する親子関係事件において、子の福祉に反しない場合には、手続が
いかなる程度にあるかを問わず、関係人の合意を促すものとする。裁判所
は、とりわけ親の配慮及び親の責任の遂行についての合意案を作成するため
に、児童・少年援助を担当する相談機関及び相談サービスによる相談手続を
利用できること指摘する。裁判所は、両親が個別に又は共同で、裁判所が指
定した者又は機関における、調停その他の裁判外紛争処理の可能性に関する
無償の情報提供のための面談に参加し、参加証明書の提出を命ずることがで
きる。さらに、裁判所は、両親が第2文に規定する相談手続に参加すること
を命ずることができる。第3文及び第4文に規定する命令は、独立して不服
申立てをすることができず、強制手段を用いて実現することができない。
(2) 関係人が子の交流又は引渡しについて合意に達した場合において、裁判所
が承認するときは、合意による取決めは、和解として記録されなければなら
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ない(裁判所の承認を得た和解)
。裁判所は、交流についての取決めが子の
福祉に反しない場合には、それを承認する。
(3) 子の居所、交流権又は子の引渡しに関する親子関係事件において、第155
条第2項の規定による期日に合意による取り決めに達しなかった場合、裁判
所は、関係人及び少年局と保全命令の発令について討論しなければならな
い。相談手続への参加、調停その他の裁判外紛争処理の可能性に関する無償
の情報提供のための面談への参加又は書面鑑定を命じた場合、裁判所は、交
流権に関する親子関係事件において、保全命令により交流を取り決め、又は
交流を排除するものとする。裁判所は、保全命令を発する前に、子本人の陳
述を聴取するものとする。
第157条 子の福祉への危険についての討論、保全命令
(1) 民法典第1666条及び第1666a条の手続において、裁判所は、子の福祉への
危険に対して、とりわけ公的支援によりどのように対処するのか、及び必要
な支援を受け入れない場合に生じ得る結果について、両親と、適切な場合に
は子とも、討論するものとする。
(2) 裁判所は、前項の規定による期日に両親本人が出頭することを命じなけれ
ばならない。裁判所は、関係人の保護その他の理由により必要であるとき
は、両親の一方が立ち会わない場で討論を実施する。
(3) 民法典第1666条及び第1666a条の規定による手続において、裁判所は遅滞
なく保全命令の発令について審理をしなければならない。
第158条 手続補佐人の選任
(1) 裁判所は、子の身上に関する親子関係事件において、子の利益を擁護する
ために必要である限り、未成年の子のために専門的な適格性及び人的な適格
性を有する手続補佐人を選任しなければならない。手続補佐人は可能な限り
早く選任されなければならない。
(2) 手続補佐人の選任は、次に掲げる裁判が考えられる場合には、常に必要で
ある。
1.民法典第1666条及び第1666a条の規定による身上配慮の一部又は全部の
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剥奪
2.民法典第1684条の規定による交流権の否定
3.民法典第1632条第4項又は第1682条の規定による留め置くことの命令
(3) 手続補佐人の選任は、次に掲げる場合には、原則として必要である。
1.子の利益がその法定代理人の利益と著しく相反するとき。
2.子を監督している者から子を引き離すべきとき。
3.手続が子の引渡しを目的とするとき。
4.交流権の本質的制限が考えられるとき。
これらの場合において、裁判所が手続補佐人の選任をしないときは、終局
裁判にその理由を付さなければならない。
(4) 選任は、選任の取消し、手続を終結させる裁判の確定、又はそれ以外によ
る手続の終結とともに終了する。裁判所は、次に掲げる場合に、選任を取り
消す。
1.手続補佐人が選任の取消しの申立てをし、解任の妨げとなる重大な事由
がないとき。
2.職務の継続が子の利益を危うくするとき。
(5) 手続補佐人の選任又はその取消し、並びにこれらの措置の拒絶に対して
は、独立して不服を申し立てることができない。
第158a条 手続補佐人の適格
(1) 第158条第1項に規定する専門的な適格性を有するのは、家族法、とりわ
け親子法、親子関係事件における手続法及び児童・少年援助法の分野におけ
る基礎的知識、並びに子の発達心理学に関する知識を有し、子にとって適切
な対話技術を有する者である。前文に基づき必要とされる知識及び能力は、
裁判所が求める場合には、証明されなければならない。この証明は、とりわ
け社会教育、教育学、法律学又は心理学の職業資格、及び手続補佐人として
の活動に特化された追加資格によってすることができる。手続補佐人は、
定期的に、少なくとも2年ごとに、継続研修を受け、裁判所が求める場合に
は、その証明を提出しなければならない。
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(2) 第158条第1項に規定する人的な適格性を有するのは、良心的に、先入観
にとらわれず、かつ、独立して、子の利益を擁護することが保証される者で
ある。人的な適格性を有しないのは、とりわけ、刑法第171条、第174条から
第174c条まで、第176条から第178条まで、第180条、第180a条、第181a条、
第182条から第184c条まで、第184e条から第184g条まで、第184i条から第184l
条まで、第201a条第3項、第225条、第232条から第233a条まで、第234条、
第235条又は第236条の規定に基づく犯罪行為のために有罪判決が確定した者
である。第2文の要件を審査するために、裁判所は、当該者の拡張無犯罪証
明書(連邦中央登録法第30a条)を提出させるか、又は当該者の同意を得て
その他の方法で既に提出された拡張無犯罪証明書を閲覧するものとする。
このような証明書は、3年以上前のものであってはならない。記録されなけ
ればならないのは、選任された手続補佐人の拡張無犯罪証明書を閲覧したこ
と、発行日及び拡張無犯罪証明書に第2文に掲げられた犯罪行為による確定
有罪判決に関する記録がないことを確認したことに限る。
第158b条 手続補佐人の職務と法的地位
(1) 手続補佐人は、子の利益を確認し、裁判手続においてこれを主張しなけれ
ばならない。このために書面により意見を陳述するものとする。手続補佐人
は、手続の対象、経過及び予想される帰結を、適切な方法で子に知らせなけ
ればならない。手続が終局裁判により終了した場合、手続補佐人は、裁判所
の決定について子と討論するものとする。
(2) 裁判所は、必要である限り、手続補佐人に対し、子の両親及び子と親密な
関係を有する者(Bezugsperson)と話合いをすること、並びに手続対象に
ついて合意による取決めの成立に向け協力することという職務を委託するこ
とができる。裁判所は、委託の態様と範囲を具体的に定め、委託の理由を付
さなければならない。
(3) 手続補佐人は、選任されることにより、関係人として手続に参加させられ
る。手続補佐人は、子の利益のために、上訴を提起することができる。手続
補佐人は、子の法定代理人ではない。
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第158c条 報酬、費用
(1) 手続補佐人が職業として手続補佐を行う場合、各審級における職務の遂行
ごとに350ユーロの一時金の支払を受ける。第158b条第2項の規定に基づく
職務の委託がされた場合、報酬は550ユーロに増額される。報酬は、手続補
佐を機として生じた費用の償還請求権にも充てられる。
(2) 第277条第1項の規定は、非職業的手続補佐人の費用の償還について準用
する。
(3) 費用償還と報酬は、常に国庫から支出しなければならない。第292条第1
項及び第5項の規定は、これを準用する。
(4) 手続補佐人には、費用を負担させることができない。
第159条 子本人の陳述聴取
(1) 裁判所は子本人の陳述を聴取しなければならず、子本人の印象を獲得しな
ければならない。
(2) 裁判所は、次に掲げる場合に限り、第1項の規定による本人の陳述聴取及
び本人の印象の獲得を行わないことができる。第3号は、民法典第1666条及
び第1666a条の規定に基づく、子の身上に関する手続には適用しない。裁判
所は、この手続において、子が明らかにその好悪及びその意思を表明するこ
とができない状態にある場合であっても、子本人の印象を獲得しなければな
らない。
1.行わないことについて重大な理由があるとき。
2.子が明らかにその好悪及びその意思を表明することができない状態にあ
るとき。
3.子の好悪、結びつき及び意思が裁判にとって重要でなく、かつ、本人の
陳述聴取が他の理由で適切でもないとき。
4.手続が専ら子の財産にのみ関するものであり、本人の陳述聴取が事件の
性質上適切でないとき。
(3) 裁判所が、子本人の陳述聴取又は子本人の印象の獲得を行わない場合、終
局裁判にその理由を付さなければならない。陳述聴取又は本人の印象の獲得
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が、専ら差し迫った危険があることを理由として行われないときは、その後
遅滞なく追完されなければならない。
(4) 子の発達、教育又は健康に重大な不利益を及ぼすおそれがない限りで、手
続の対象、経過及び予想される帰結を、子の年齢に応じた適切な方法で、
子に知らせるものとする。子には意見を陳述する機会が与えられなければな
らない。裁判所が第158条の規定により子のために手続補佐人を選任した場
合、本人の陳述聴取及び本人の印象の獲得は、手続補佐人の在廷の下で行わ
れるものとする。その他の点について、本人の陳述聴取の具体化は、裁判所
の裁量による。
第160条 両親の陳述聴取
(1) 子の身上に関する手続において、裁判所は、両親に対し本人の陳述を聴取
するものとする。民法典第1666条及び第1666a条の規定による手続において
は、両親本人の陳述を聴取しなければならない。
(2) その他の親子関係事件において、裁判所は、両親の陳述を聴取しなければ
ならない。親の配慮が帰属しない親について、陳述聴取により(事案の)解
明の見込みがない場合は、この限りでない。
(3) 陳述聴取は、重大な理由がある場合に限り、しないことができる。
(4) 陳述聴取が、専ら差し迫った危険があることを理由として行われないとき
は、遅滞なく追完されなければならない。
第161条 養育者の協力
(1) 裁判所は、子の身上に関する手続において、子が相当長期間家庭養育
(Familienpflege)の下で生活しているときは、子の利益のために、養育者
を関係人として手続に加えることができる。前文の規定は、子が、民法典
第1682条の規定による裁判に基づいて、同条に掲げられた婚姻当事者、生活
パートナー又は交流権を有する者とともに生活している場合について準用す
る。
(2) 子が相当長期間家庭養育の下で生活しているときは、前項に掲げられた者
の陳述を聴取しなければならない。
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第162条 少年局の協力
(1) 子の身上に関する手続において、裁判所は、少年局の陳述を聴取しなけれ
ばならない。陳述聴取が、差し迫った危険があることを理由として行われな
いときは、遅滞なく追完されなければならない。
(2) 少年局は、民法典第1666条及び第1666a条の規定による手続において関係
人となる。それ以外の場合、少年局は、その申立てにより手続の関係人とな
る。
(3) 子の身上に関する手続においては、少年局に対し、期日を通知しなければ
ならず、裁判所の全ての裁判を通知しなければならない。少年局は決定に対
して抗告をすることができる。
第163条 鑑定人による鑑定
(1) 第151条第1号から第3号の規定による手続においては、適格な鑑定人に
よる鑑定が行われなければならず、その鑑定人は、少なくとも心理学、心理
療法学、児童・少年精神医学、精神医学、医学、教育学又は社会教育学の職
業資格を有しているものとする。その鑑定人が教育学又は社会教育学の職業
資格を有している場合は、十分な診断及び分析のための知識の習得が認定さ
れた追加資格によって証明されなければならない。
(2) 裁判所は、子の身上に関する手続において、鑑定人が鑑定書の作成の際に
関係人の間における合意が成立するようにも促すべきことを命ずることがで
きる。
第163a条 子の尋問の排除
子は証人として又は関係人として尋問されない。
第164条 裁判の子への告知
子が満14歳に達し、かつ、行為無能力ではない場合、子が抗告権を行使する
ことのできる裁判は、子自身に告知しなければならない。子の発達、教育又は
健康に不利益を及ぼすおそれがあるときは、裁判の理由を子に通知しないもの
とする。第38条第4項第2号は、これを適用しない。
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第165条 あっせん手続
(1) 両親の一方が、共同の子との交流についての裁判所の決定又は裁判所の承
認を得た和解の実現を両親の他方が不可能又は困難にしていることを主張し
ている場合、裁判所は、一方の親の申立てにより、両親のあっせんをする。
既にあっせん手続又は後続する裁判外の相談手続が不調に終わっていると
き、裁判所は、あっせん手続をしないことができる。
(2) 裁判所は、遅滞なく両親をあっせん期日に呼び出す。裁判所は、前文の期
日に両親本人が出頭することを命じる。裁判所は、呼出状において、あっせ
ん手続が不調の場合に第5項の規定により生じ得る法律効果を指摘する。裁
判所は、適切な場合には、少年局も期日に呼び出す。
(3) 裁判所は、あっせん期日において、交流が行われないことが子の福祉にど
のような効果を持つことがあるのかについて、両親と討論する。裁判所は、
交流が不可能又は困難となる場合に生じ得る法律効果を、とりわけ秩序罰が
科され、又は親の配慮が制限若しくは剥奪され得ることを指摘する。裁判所
は、児童・少年援助を担当する相談機関及び相談サービスによる相談手続を
利用することができることを両親に指摘する。
(4) 裁判所は、両親が交流の実施について合意に達するよう促すものとする。
裁判所の承認を得た和解が成立した場合、この和解が従前の取り決めに代わ
る。合意が得られない場合、争点が記録に留められなければならない。
(5) 交流の合意による取り決めに達せず、かつ、その後の裁判外の相談手続の
利用について合意に達しない場合、又は両親の少なくとも一方があっせん期
日に出頭しなかった場合、裁判所は、不服申立てのできない決定で、あっせ
ん手続が不調であることを確認する。この場合において、裁判所は、秩序罰
を科すこと、交流の取り決めを変更すること、又は配慮に関する措置をとる
ことが、なされるべきかどうかを審理する。対応する手続が職権で、又は1
か月以内になされた両親の一方の申立てにより開始された場合、あっせん手
続の費用は、後続する手続の費用の一部として扱われる。
-86-
第166条 裁判及び裁判所の承認を得た和解の変更及び見直し
(1) 裁判所は、裁判又は裁判所の承認を得た和解を、民法典第1696条の基準に
従い変更する。
(2) 子の保護のための法による長期にわたる措置であって、職権により変更す
ることができるものは、裁判所が適切な間隔で見直しをしなければならな
い。
(3) 裁判所は、民法典第1666条から第1667条までの規定による措置をしない場
合、適切な間隔で、原則として3か月後に、その決定の見直しを行うものと
する。
第167条 未成年者の収容と未成年者に対する自由の剥奪を伴う措置に適用さ
れる規定
(1) 第151条第6号の規定による手続には、第312条第1号及び第2号の規定に
よる収容事件に適用される規定を適用し、第151条第7号の規定による手続
には、第312条第4号の規定による収容事件に適用される規定を適用する。
手続保護人は、手続補佐人と読み替える。手続補佐人の選任は常に必要であ
る。
(2) 前項に規定する親子関係事件について、未成年者に対する後見又は収容
を伴う保護が開始されている裁判所とは異なる裁判所が管轄権を有する場
合、この裁判所は、前項に規定する手続を管轄する裁判所に対し、後見又は
保護の命令及び取消し、収容を職務事項とする定めの削除並びに後見人又は
保護人の変更を通知する。前項に規定する手続を管轄する裁判所は、他方の
裁判所に収容措置、その変更、延長及び取消しを通知する。
(3) 事件本人は、満14歳に達している場合、行為能力の有無に関わらず手続能
力を有する。
(4) 第1項第1文に掲げられた手続において、身上配慮の権利を有する親、身
上についての法定代理人及び養親の本人の陳述を聴取しなければならない。
(5) 収容のための引渡しの際に、少年局は、両親、後見人又は保護人を、これ
らの者の求めにより援助しなければならない。
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(6) 第151条第6号及び第7号の規定による手続において、鑑定人は、児童及
び少年の精神科及び精神療法の医師であるものとする。第151条第6号の規
定による手続において、鑑定は、施設における育成に関して実績のある精神
療法士、心理学者、教育学者又は社会教育学者が行うこともできる。自由の
剥奪を伴う措置の許可の手続においては、医師の診断で足りる。第1文の規
定は、これを準用する。
(7) 自由の剥奪を伴う収容及び自由の剥奪を伴う措置は、遅くとも6か月の経
過後には終了するが、明らかに長期の保護の必要性がある場合において、以
前に期間の延長がされていないときは、遅くとも1年後には終了する。
第167a条 民法典第1686a条の規定による手続についての特別規定
(1) 民法典第1686a条の規定による交流権又は情報の提供を求める権利の付与
の申立ては、申立人が、子の母と懐胎期間中に同衾した旨の宣誓に代わる保
証をしている場合にのみすることができる。
(2) 何人も、民法典第1686a条の規定による交流権又は情報の提供を求める権
利に関する手続において、生物学的な父子関係の明確化に必要である限り
で、検査を、とりわけ血液検体の採取を、受忍しなければならないが、検査
を受けることを要求できない場合はこの限りでない。
(3) 第177条第2項第2文及び第178条第2項の規定は、これを準用する。
第167b条 民法典第1631e条に基づく許可手続、命令への授権
(1) 民法典第1631e条第3項による手続において、両親が手術を支持する旨の
意見を提出し、かつ、許可を妨げる明白な理由がないときは、裁判所は、書
面による手続で許可をする。裁判所が書面による手続で裁判をする場合、少
年局の陳述聴取、両親本人の陳述聴取及び手続補佐人の選任を行わないもの
とする。第162条は適用されない。
(2) 両親が手術を支持する旨の見解を裁判所に提出しない場合、又は前項によ
る許可を妨げる理由が明白である場合、裁判所は、期日において関係人と討
論する。裁判所は、児童・少年援助を担当する相談機関や相談サービスによ
る相談手続を利用することができることを指摘する。裁判所は、両親に対し
-88-
て、性的発達に特異性のある子への対応について相談をし、その証明書を裁
判所に提出することを命ずることができる。この命令は、独立して不服申立
てをすることができず、強制手段を用いて実現することができない。
(3) 州政府は、法規命令により、前2項に基づく手続についての管轄を高等裁
判所の所在地を管轄する家庭裁判所又は他の家庭裁判所に割り当てる権限を
有する。この権限はそれぞれの州政府によって州の司法行政機関に委譲する
ことができる。複数の州は、この規定に基づく手続について、州をまたぐ裁
判所の管轄を合意することができる。
第168条 後見人の選択
(1) 裁判所が後見人を選任しなければならない場合、その選択の際に、著しい
遅滞が生ずることなくすることができるときは、事件本人である子にとって
近親の家族及び親しい者の陳述を聴取するものとする。
(2) ある者を名誉職としての後見人として又は職業後見人として選任する前
に、裁判所は連邦中央登記法第41条に従い情報を得なければならない。裁判
所は、選任後、適切な間隔を置いて、長くとも2年ごとに、情報を得ること
により、後見人の適格が存続しているのかを審査する。
(3) 第291条の規定は、満14歳に達し、行為無能力ではない被後見人について
準用する。
第168a条 決定主文の内容及び決定の効力の発生
(1) 後見人の選任の場合、決定主文は次の各号に掲げる事項をも含む。
1.職業後見人を選任する場合、職業後見人であることの表示
2.団体後見人を選任する場合、団体後見人であることの表示及び後見団体
の表示
3.少年局を選任する場合、管轄局の表示
4.民法典第1776条又は第1777条に基づく保護人の選任の場合、保護人の表
示及びその委託された事務
5.民法典第1781条に基づく選任の場合、仮後見人であることの表示
(2) 後見人の選任の内容又は存続についての決定は、後見人への告知により効
-89-
力を生ずる。第287条第2項の規定は、これを準用する。
第168b条 選任証書
(1) 後見人はその選任に関する証書を受け取る。その証書には、次に掲げる事
項を含むものとする。
1.被後見人の表示及び後見人の表示
2.民法典第1776条又は第1777条の場合には、保護人に委託された事務
3.民法典第1789条第2項第3文による代理権の制限に関する記載
4.民法典第1801条による免除に関する記載
(2) 少年局が民法典第1751条第1項第2文、第1786条又は第1787条に従い後見
人となる場合、裁判所は遅滞なく後見が開始されたことに関する証明書を付
与しなければならない。
(3) 後見人は、その職務の終了後、選任証書又は証明書を返還しなければなら
ない。
第168c条 重要な事務についての陳述聴取
裁判所は、著しい遅滞が生ずることなくすることができるときは、重要な事
件における裁判の前に、被後見人の最も近親の家族の陳述を聴取するものとす
る。
第168d条 支払の確定のための手続
第292条第1項及び第3項から第6項までの規定は、後見人への支払の確定
のための手続について準用する。
第168e条 後見の終了
後見の終了の有無及び時期について疑いや見解の相違がある場合、裁判所
は、決定で、後見の終了及び終了の時点を確認する。
第168f条 未成年者のための保護
後見に適用される規定は、未成年者のための保護について準用する。決定主
文及び選任証書には、保護人の表示と保護人に委託された事務の表示が含まれ
る。
-90-
第168g条 身分登録局の通知義務
(1) 未成年の子を遺して死亡した者がある場合、父の死亡後に子が出生した場
合、戸籍上の身分が不明である未成年者が発見された場合、若しくは妊娠葛
藤法第25条第1項の規定による秘密出産により子が出生した場合において、
その旨が身分登録局に届けられたとき、又は身分登録法第45b条第2項第3
文の場合において法定代理人の同意を欠くときは、身分登録局はその旨を家
庭裁判所に通知しなければならない。
(2) 子の配慮権を共同で有する両親が婚氏を持たず、かつ、子の出生から1か
月以内に子の出生氏が定められていないときは、身分登録局はその旨を家庭
裁判所に通知する。
第4章 実親子関係事件の手続
第169条 実親子関係事件
実親子関係事件とは、次に掲げる手続をいう。
1.親子関係の存在又は不存在の確定、とりわけ父子関係の認知の有効又は
無効の確定を目的とする手続
2.遺伝学的親子関係の検査に対する同意の代替及び検体採取の受忍命令を
目的とする手続
3.実親子関係についての鑑定意見の閲覧又は謄本の交付を目的とする手続
4.父子関係の否認を目的とする手続
第170条 土地管轄
(1) 子の常居所地を管轄する裁判所が専属管轄権を有する。
(2) ドイツの裁判所の管轄権が前項の規定により存しない場合は、母の常居所
を基準とし、なお管轄が存しないときは父の常居所を基準とする。
(3) 前2項の規定により管轄が存しない場合は、ベルリンのシェーネベルク区
裁判所が専属管轄権を有する。
第171条 申立て
(1) 手続は、申立てにより開始する。
-91-
(2) 申立てには、手続の目的と関係者(die betroffenen Personen)を表示する
ものとする。民法典第1600条第1項第1号から第4号までの規定による父子
関係の否認を目的とする手続においては、父子関係を否定する事情及びその
事情が判明した時点を記載するものとする。
第172条 関係人
(1) 次に掲げる者は関係人となる。
1.子
2.母
3.父
(2) 少年局は、第176条第1項第1文に掲げる場合、その申立てにより関係人
となる。
第173条 補佐人による子の代理
少年局が補佐人として子を代理する場合には、配慮権を有する一方の親によ
る代理は認められない。
第174条 手続補佐人
裁判所は、実親子関係事件における未成年である関係人のために、その利益
を擁護するために必要な限り、手続補佐人を選任しなければならない。第158
条から第158c条までの規定は、これを準用する。
第175条 討論の期日、本人の陳述聴取
(1) 裁判所は、実親子関係についての証拠調べの前に、期日において、事件に
ついて討論するものとする。裁判所は、手続能力のある関係人本人の出頭を
命ずるものとする。
(2) 裁判所は、遺伝学的親子関係の検査に対する同意の代替及び検体採取の受
忍命令(民法典第1598a条第2項)についての裁判の前に、両親及び満14歳
に達した子本人の陳述を聴取するものとする。裁判所は、より年少の子本人
の陳述を聴取することができる。
第176条 少年局の陳述聴取
(1) 民法典第1600条第1項第2号の規定による否認の場合及び民法典第1600条
-92-
第1項第4号の規定による否認の場合において、否認が法定代理人によりな
されるときは、裁判所は少年局の陳述を聴取するものとする。
その他の場合において、関係人が未成年であるときは、少年局の陳述を聴
取することができる。
(2) 裁判所は、前項第1文の規定による否認がなされた場合及び同項第2文の
規定による陳述聴取がなされた場合には、少年局に裁判を通知しなければな
らない。少年局は、決定に対して抗告をすることができる。
第177条 制限的職権探知、法定の方式による証拠調べ
(1) 父子関係の否認を目的とする手続において、関係人によって主張されな
かった事実は、父子関係の存続に資するものとして適する場合、又は、父子
関係の否認を求める関係人が異議を述べない場合にのみ、顧慮することがで
きる。
(2) 第169条第1号及び第4号の規定による手続において、実親子関係につい
ては、法定の方式による証拠調べを行わなければならない。関係人が他の関
係人の同意を得て実親子関係についての鑑定を得た場合において、裁判所が
その鑑定意見でなされた事実の確認の正確性と完全性に疑いを持たず、か
つ、関係人が同意したときは、その鑑定を、鑑定人による鑑定に代えて利用
することができる。
第178条 実親子関係の確定のための検査
(1) 何人も、実親子関係の確定に必要な限りで、検査を、とりわけ血液検体の
採取を、受忍しなければならないが、その者に検査を要求することができな
い場合はこの限りでない。
(2) 民事訴訟法第386条から第390条までの規定は、これを準用する。正当な理
由なく検査の拒絶が繰り返される場合は、直接強制も適用することができ、
とりわけ検査への強制的な勾引を命じることができる。
第179条 複数の手続
(1) 同一の子に関する複数の実親子関係事件は、相互に併合することができ
る。第237条の規定による扶養事件は、父子関係の存在の確定を目的とする
-93-
手続と併合することができる。
(2) その他の場合においては、実親子関係事件相互の併合及び実親子関係事件
と他の手続との併合は、することができない。
第180条 裁判所の調書への記載による意思表示
父子関係の認知、母の同意及び認知の撤回は、討論の期日においても裁判所
の調書への記載によりその意思表示をすることができる。子の出生の時点にお
いて子の母と婚姻していた夫、子又は法定代理人について必要とされる同意に
ついて同様とする。
第181条 関係人の死亡
終局裁判の確定前に関係人が死亡した場合、裁判所は、他の関係人に対し、
関係人が1か月の期間内に裁判所に対する意思表示により請求したときに限り
手続が継続することを、教示しなければならない。裁判所が定めた期間内に手
続の継続を請求する関係人がない場合、手続はその本案において終結したもの
とする。
第182条 決定の内容
(1) 民法典第1600条第1項第2号の規定による否認の結果として、民法典第
1592条の規定による父子関係の不存在を確認する決定が確定したときは、こ
の決定は否認を求めた者が父であることの確認を含む。この効力は、決定主
文において、職権で宣言しなければならない。
(2) 裁判所は、父子関係の不存在の確認を求める申立てを、申立人又は他の関
係人を父と確定したことを理由に棄却する場合、その旨を決定主文において
宣言する。
第183条 父子関係の否認の場合の費用
父子関係の否認を求める申立てが認容された場合、関係人は、未成年の子を
除き、裁判所費用を等しい割合で負担する。裁判所外の費用は、関係人が各自
で負担する。
第184条 決定の効力、裁判の変更の否定、抗告についての補充規定
(1) 実親子関係事件における終局裁判は、確定により効力を生ずる。裁判の変
-94-
更は許されない。
(2) 実親子関係について裁判がなされた場合には、決定は全ての者のために、
全ての者に対して効力を有する。
(3) 実親子関係事件の終局事件に対しては、手続の関係人であった者又は関係
人とされるべきであった者も抗告をすることができる。
第185条 手続の再審
(1) 実親子関係について判断をした確定決定に対する原状回復の申立ては、関
係人が実親子関係について新しい鑑定意見を提出し、その鑑定意見が単独で
又は前の手続において収集された証拠と併せて異なる判断を導くであろうと
認められる場合にも許される。
(2) 再審の申立ては、前の手続で勝訴した関係人も提起することができる。
(3) 申立てについては、第一審として裁判をした裁判所が専属管轄権を有す
る。不服申立てのなされた決定が、抗告裁判所又は法律抗告裁判所によって
されたときは、抗告裁判所が管轄権を有する。申立てが無効の申立て又は民
事訴訟法第580条の規定による原状回復の申立てと併合されたときは、民事
訴訟法第584条の規定を適用する。
(4) 民事訴訟法第586条の規定は、これを適用しない。
第5章 養子事件の手続
第186条 養子事件
養子事件とは、次に掲げる事項に関する手続をいう。
1.養子縁組
2.養子縁組への同意の代替
3.養子縁組関係の解消
4.民法典第1308条第1項の規定による婚姻禁止の解除
第187条 土地管轄
(1) 第186条第1号から第3号までの規定による手続については、養親となる
者又は共同で養親となる者の一人の常居所地を管轄する裁判所が専属管轄権
-95-
を有する。
(2) 前項の規定によりドイツの裁判所に管轄が生じないときは、子の常居所を
基準とする。
(3) 第186条第4号の規定による手続については、婚姻しようとする者の一方
の常居所地を管轄する裁判所が専属管轄権を有する。
(4) 養子効力法(Adoptionswirkungsgesetz)の第6条第1項第1文及び第2
項の規定は、未成年者に関わる養子事件において、次に掲げる場合について
準用する。
1.養親となる者及び養子となる者の常居所が外国にあるとき。
2.申立て前2年間の養子となる者の常居所が外国にあったとき。
(5) 前4項の規定により管轄が存しないときは、ベルリンのシェーネベルク区
裁判所が管轄権を有する。裁判所は、重大な事由が存在する場合には、事件
を他の裁判所に移送することができる。
第188条 関係人
(1) 次に掲げる者は関係人となる。
1.第186条第1号の規定による手続において、a) 養親となる者及び養子となる者b) 養子となる者が未成年であり、かつ、民法典第1747条第2項第2文若
しくは第4項の場合に該当しない場合、又は民法典第1772条に規定する
場合は、養子となる者の両親c) 民法典第1749条第2項の場合に該当しない限りにおいて、養親となる
者の婚姻の相手方若しくは生活パートナー及び養子となる者の婚姻の相
手方若しくは生活パートナー
2.第186条第2号の規定による手続において、その同意が代替されるべき者3.第186条第3号の規定による手続において、a) 養親及び養子b) 未成年の養子の実親
-96-
4.第186条第4号の規定による手続において、婚姻しようとする者
(2) 少年局と州の少年局は、その申立てにより関係人となる。
第189条 専門家の意見
(1) 未成年者が養子とされる場合、裁判所は、当該子と養親となる者の家族が
養子縁組に適しているかどうかについて、専門家の意見を得なければならな
い。
(2) 専門家の意見は、当該子をあっせんし、又は養子縁組あっせん法第9a条
第2項の規定による相談手続証明書を交付した養子縁組あっせん機関から得
なければならない。養子縁組あっせん機関が従事していないときは、少年局
から専門家の意見を得なければならない。
(3) 専門家の意見は、無償で提出されなければならない。
(4) 裁判所は、当該子をあっせんした養子縁組あっせん機関に、裁判を通知し
なければならない。
第190条 (削除)
第191条 手続補佐人
裁判所は、養子事件において、未成年である関係人の利益を擁護するために
必要である限り、その者のために手続補佐人を選任しなければならない。第
158条から第158c条までの規定は、これを準用する。
第192条 関係人の陳述聴取
(1) 裁判所は養子縁組の手続又は縁組関係の解消の手続において養親となる者
及び子の本人の陳述を聴取しなければならない。
(2) 前項のほか、関係人の陳述を聴取するものとする。
(3) 未成年である関係人の陳述聴取は、その成長、教育又は健康に不利益が生
じるおそれがある場合、又は年少のために陳述聴取による解明の見込みがな
い場合、これをしないことができる。
第193条 その他の者の陳述聴取
裁判所は、養子縁組の手続において養親となる者の子及び養子となる者の子
の陳述を聴取しなければならない。第192条第3項の規定を準用する。
-97-
第194条 少年局の陳述聴取
(1) 養子事件において、養子となる者又は養子が未成年であるときは、裁判所
は少年局の陳述を聴取しなければならない。第189条の規定により少年局が
専門家の意見を提出した場合は、この限りでない。
(2) 裁判所は、少年局の陳述聴取をした場合又は少年局が専門的意見を提出し
た場合、裁判を少年局に通知しなければならない。少年局は、決定に対して
抗告をすることができる。
第195条 州の少年局の陳述聴取
(1) 養子縁組あっせん法第11条第1項第2号及び第3号に掲げる場合、裁判所
は、養子縁組を宣言する前に、養親となる者の常居所地を管轄領域とする州
の少年局の中央養子縁組機関の陳述をも聴取しなければならない。中央養子
縁組機関が関与していないときは、それに代えて、第194条の規定により意
見を述べる機会を有する少年局又は第189条の規定により専門家の意見を提
出した少年局の所在地を管轄する州の少年局に対し陳述聴取をしなければな
らない。
(2) 裁判所は、前項の規定により陳述を聴取しなければならなかった全ての裁
判を当該州の少年局に通知しなければならない。州の少年局は、決定に対し
て抗告をすることができる。
第196条 併合の禁止
養子事件を他の手続と併合することはできない。
第196a条 申立ての却下
養子縁組あっせん法第9a条により必要な相談手続についての証明書が提出
されていない場合、裁判所は養子縁組の申立てを却下する。
第197条 養子縁組についての決定
(1) 裁判所が養子縁組を宣言する決定においては、縁組の根拠となる法律上の
規定を示さなければならない。民法典第1747条第4項の規定により両親の一
方の同意を要しないと認めるときは、その旨を同様に決定において示さなけ
ればならない。
-98-
(2) 前項の場合、決定は、養親となる者への送達により効力を生じ、養親とな
る者の死亡後は子への送達により効力を生ずる。
(3) この決定に対しては、不服を申し立てることができない。裁判の変更又は
再審は許されない。
第198条 その他の手続における決定
(1) 養子縁組の事前同意又は同意の代替についての決定は、確定により初めて
効力を生ずる。差し迫った危険があるときは、裁判所は、決定が即時に効力
を生ずることを命じることができる。この決定は、申立人に告知された時に
効力を生ずる。裁判の変更及び再審は許されない。
(2) 養子縁組関係を解消する裁判所の決定は、確定により初めて効力を生ず
る。裁判の変更及び再審は、これを認めない。
(3) 民法典第1308条第1項の規定による婚姻禁止を解除する決定に対しては、
不服を申し立てることができない。婚姻が締結された場合、裁判の変更及び
再審は、これを認めない。
第199条 養子効力法の適用
養子効力法の規定の適用は、これを妨げない。
第6章 婚姻住居事件及び家財事件の手続
第200条 婚姻住居事件、家財事件
(1) 婚姻住居事件とは、次に掲げる手続をいう。
1.民法典第1361b条による手続
2.民法典第1568a条による手続
(2) 家財事件とは次に掲げる手続をいう。
1.民法典第1361a条による手続
2.民法典第1568b条による手続
第201条 土地管轄
次に掲げる順位で、
〔次に掲げる裁判所が〕専属管轄権を有する。
1.婚姻事件の係属中において、婚姻事件の第一審が係属している又は係属
-99-
していた裁判所
2.婚姻当事者の共通の住居地を管轄する裁判所
3.相手方の常居所地を管轄する裁判所
4.申立人の常居所地を管轄する裁判所
第202条 婚姻事件裁判所への移送
婚姻住居事件又は家財事件が別の裁判所の第一審に係属している場合に、婚
姻事件が係属したときは、婚姻住居事件又は家財事件は、職権により婚姻事件
の裁判所に移送しなければならない。民事訴訟法第281条第2項及び第3項第
1文の規定は、これを準用する。
第203条 申立て
(1) 手続は、婚姻の一方当事者の申立てによって開始される。
(2) 家財事件の申立ては、分割分を求める対象財産の記載を含むものとする。
第200条第2項第2号による家財事件の申立てには、さらに、その厳密な摘
示も含む、全ての家財の目録が添付されるものとする。
(3) 婚姻住居事件の申立ては、子が婚姻の両当事者の家政において生活してい
るか否かについての摘示を含むものとする。
第204条 関係人
(1) 第200条第1項第2号に定める婚姻住居事件には、その住居の賃貸人、土
地所有者、第三者(民法典第1568a条第4項)及び、その住居について婚姻
の両当事者又は一方当事者と共有関係にある者もまた、関係人となる。
(2) 子が婚姻の両当事者の家政において生活しているときは、少年局は、その
申立てにより、婚姻住居事件の関係人となる。
第205条 婚姻住居事件における少年局の陳述聴取
(1) 婚姻住居事件において、裁判所は、子が婚姻の両当事者の家政において生
活しているときは、少年局の陳述を聴取するものとする。陳述聴取が、専ら
差し迫った危険を理由として行われないときは、遅滞なく追完されなければ
ならない。
(2) 裁判所は、前項第1文の場合には、少年局に裁判を通知しなければならな
-100-
い。決定に対して、少年局は不服を申し立てることができる。
第206条 家財事件に関する特別規定
(1) 裁判所は、家財事件において、各婚姻当事者に次に掲げることを命ずるこ
とができ、かつ、そのために相当な期間を定めることができる。
1.その者が分配を求める家財を記載すること。
2.その厳密な名称を含む全ての家財の目録を提出すること、又は提出され
た目録を補充すること。
3.特定の事情について説明すること、自己の摘示を補充すること、又は、
他の関係人の主張に対して意見を表明すること。
4.特定の証拠を提出すること。
(2) 前項による期間の経過後に初めて主張された事情は、裁判所の自由な心証
によればそれによって手続の終了が遅延しないとき、又は、婚姻当事者が遅
延につき十分に弁明したときにのみ、顧慮することができる。
(3) 婚姻の一方当事者が第1項に定める命令を遵守しないとき、又は、前項に
よって事情が顧慮されないときは、裁判所は、その限りにおいて、事実関係
のさらなる解明のための義務を負担しない。
第207条 討論の期日
裁判所は、期日において、婚姻の両当事者と共に、事件について討論するも
のとする。裁判所は、婚姻の両当事者本人の出頭を命ずるものとする。
第208条 婚姻の一方当事者の死亡
婚姻の一方当事者が手続終結前に死亡したときは、手続は、本案において終
了したものとみなす。
第209条 裁判の実施、効力
(1) 裁判所は、終局裁判によって、その実施に必要な命令を定めるものとす
る。
(2) 婚姻住居事件及び家財事件の終局裁判は、確定によりその効力を生ずる。
裁判所は、第200条第1項第1号による婚姻住居事件において、
〔裁判が〕即
時に効力を生ずることを命ずるものとする。
-101-
(3) 裁判所は、
〔裁判が〕即時に効力を生ずることを命ずるとともに、相手方
への送達前における執行を許可することもできる。この場合に、
〔裁判の〕
効力は、裁判が裁判所の事務課に公示のために交付された時点で生ずる。こ
の時点は、裁判に記載されなければならない。
第7章 暴力保護事件の手続
第210条 暴力保護事件
暴力保護事件とは、暴力保護法第1条及び第2条に定める手続をいう。
第211条 土地管轄
申立人の選択に従い、
〔次に掲げる裁判所が〕専属管轄権を有する。1.〔暴力〕行為が行われた地を管轄する裁判所
2.申立人及び相手方の共通の住居地を管轄する裁判所
3.相手方の常居所地を管轄する裁判所
第212条 関係人
暴力保護法第2条に定める手続において、子が〔申立人及び相手方の〕家政
で生活している場合には、少年局は、その申立てによって関係人となる。
第213条 少年局の陳述聴取
(1) 暴力保護法第2条に定める手続において、子が〔申立人及び相手方の〕家
政で生活している場合は、裁判所は、少年局の陳述を聴取するものとする。
陳述聴取が、専ら差し迫った危険を理由として行われないときは、遅滞なく
追完されなければならない。
(2) 裁判所は、前項前段の場合に、少年局に裁判を通知しなければならない。
決定に対して、少年局は抗告をすることができる。
第214条 保全命令
(1) 裁判所は、申立てに基づき、保全命令により、暴力保護法第1条又は第2
条の定める仮の定めをすることができる。即時の措置のための差し迫った必
要は、暴力保護法第1条に定める行為が行われたとき、又は、具体的な事情
により行われることが予想されるときには、通常存在する。
-102-
(2) 前項の規定に基づく決定は、職権で送達される。
〔裁判所の〕事務課は、
裁判所執行官に送達を委任する。保全命令発令の申立ては、口頭による討論
を経ない発令の場合には、執行の委任とみなされる。申立人の申立てによ
り、送達は執行前になされてはならない。
第214a条 和解の承認
関係人が和解をする場合に、裁判所は、暴力保護法第1条第2項第1文と併
せて適用する場合も含め、暴力保護法第1条第1項に定める相応の措置を自ら
命ずることができた限りにおいて、和解を承認しなければならない。裁判所の
承認に対して不服を申し立てることができない。
第215条 終局裁判の実施
暴力保護法第2条に定める手続において、裁判所は、終局裁判で、その実施
に必要な命令を定めるものとする。
第216条 〔裁判の〕効力、送達前の執行
(1) 暴力保護事件における終局裁判は、確定によりその効力を生ずる。裁判所
は、
〔裁判が〕即時に効力を生ずることを命ずるものとする。
(2) 裁判所は、
〔裁判が〕即時に効力を生ずることを命ずるとともに、相手方
への送達前における執行を許可することもできる。この場合に、
〔裁判の〕
効力は、裁判が裁判所の事務課に公示のために交付された時点で生ずる。こ
の時点は、裁判に記載されなければならない。
第216a条 裁判の通知
通知を行わないことについての関係人の一人の保護に値する利益が、他の関
係人の要保護性又は通知をすることについての公の利益に優越しない限り、裁
判所は、暴力保護法第1条及び第2条に定める命令並びにその変更又は取消し
を、命令の実施に関わる管轄警察署その他の公的機関に対して、遅滞なく通知
する。関係人は、通知について告知されるものとする。本条の規定は、第214a
条に定める承認された和解について準用する。
-103-
第8章 年金調整事件の手続
第217条 年金調整事件
年金調整事件とは、年金調整に関する手続をいう。
第218条 土地管轄
次に掲げる順位で、
〔次に掲げる裁判所が〕専属管轄権を有する。
1.婚姻事件の係属中において、婚姻事件の第一審が係属している又は係属
していた裁判所
2.婚姻の両当事者の共通の常居所地を管轄する裁判所、又は、婚姻当事者
の共通の常居所地を管轄する裁判所の管轄地区に婚姻の一方当事者が引き
続き常居所を有するときは、その裁判所
3.相手方の常居所地又は居所地を管轄する裁判所
4.申立人の常居所地又は居所地を管轄する裁判所
5.ベルリンのシェーネベルク区裁判所
第219条 関係人
次に掲げる者は、関係人となる。
1.婚姻の両当事者
2.調整されるべき年金請求権が存する年金保険者
3.調整を目的とした年金請求権が設定されるべき年金保険者
4.婚姻の両当事者の遺族及び相続人
第220条 手続法上の情報提供義務
(1) 裁判所は、前条に基づいて関係人となるべき者及び年金保険者、並びに、
情報を提供することのできる他の機関に対し、年金請求権の原因及び額につ
いて、情報を求めることができる。
(2) 裁判所が〔照会〕書式を送付する場合は、この書式が情報提供の際に用い
られなければならない。前段の規定は、自動的に作成される年金保険者の情
報については適用しない。
(3) 裁判所は、婚姻当事者又はその遺族若しくは相続人が年金調整に含まれ
るべき年金請求権の確定に必要な協力行為を年金保険者に提供すべきこと
-104-
を、命ずることができる。
(4) 年金保険者は、明確で追試し得る算定を含む年金調整法第5条によって必
要とされる価額及び分割の基準となる規定を通知する義務を負う。裁判所
は、職権で又は関係人の申立てにより、年金保険者に対し、価算出の細目を
明らかにするよう求めることができる。
(5) 本条に掲げる者及び機関は、裁判所の要請及び命令に従う義務を負う。
第221条 討論、手続の中止
(1) 裁判所は、期日において、婚姻の両当事者と共に、事件について討論する
ものとする。
(2) 裁判所は、年金調整に含まれるべき年金請求権の存在又は額について訴訟
が係属している場合には、
〔年金調整事件〕手続を停止しなければならない。
(3) 年金請求権について争いがあるが、前項の要件を満たさない場合は、裁判
所は、
〔年金調整事件〕手続を停止し、かつ、婚姻の一方当事者又は両当事
者に対し、訴えの提起のための期間を定めることができる。この訴えが提起
されないか適時に提起されないときは、裁判所は、訴えでもって主張できた
であろう主張を、顧慮しないことができる。
第222条 外部分割の実施
(1) 年金調整法第14条第2項、第15条第1項及び第19条第2項第5号による選
択権は、裁判所の定める期間内に行使しなければならない。
(2) 年金調整権利者は、年金調整法第15条第1項による自己の選択権を行使す
る場合は、同時に、選択された年金保険者が予定される分割に同意している
ことを、前項に基づき定められた期間内に証明しなければならない。
(3) 裁判所は、終局裁判において、年金調整法第14条第4項に基づいて支払わ
れるべき元本の額を定める。
(4) 年金調整法第16条に基づく外部分割については、前3項の規定は適用され
ない。
第223条 離婚後における調整請求の申立ての必要性
裁判所は、年金調整法第20条から第26条までの規定に基づく離婚後における
-105-
調整請求については、申立てがある場合にのみ裁判する。
第224条 年金調整についての裁判
(1) 年金調整に関する終局裁判は、確定により初めてその効力を生ずる。
(2) 終局裁判には、理由を付さなければならない。
(3) 離婚の際の価額調整が、年金調整法第3条第3項、第6条、第18条第1項
若しくは第2項又は第27条によって行われない場合、裁判所は、決定主文に
おいてこのことを定める。
(4) 離婚の際における価額調整後に、離婚後の調整請求のために年金請求権が
なお残っているときは、裁判所は、理由中でこの年金請求権を指定する。
第225条 離婚の際の価額調整の変更の許容性
(1) 離婚の際の価額調整の変更は、年金調整法第32条にいう年金請求権につい
てのみ、することができる。
(2) 婚姻期間の終了後に、年金請求権の調整価額に遡及的に影響し、重大な価
額変更をもたらす法律上又は事実上の変更があった場合は、裁判所は、申立
てにより、この年金請求権に関する裁判を変更する。
(3) 前項に定める価額変更は、それが年金請求権の従前の調整価額の少なくと
も5%に相当し、かつ、年金額においては、基準となる受給額として、社会
法典第4編第18条第1項に基づく婚姻期間の終了時を基準とする受給月額の
1%を超えるとき、その他の全ての場合には、元本価格として、その120%
を超えるときは、重要である。
(4) 変更は、それによって調整権利者の年金のために基準となる待機期間が満
たされる場合にも、することができる。
(5) 変更は、婚姻の一方当事者又はその遺族に有利にされなければならない。
第226条 離婚の際の価額調整の変更の実施
(1) 申立権を有するのは、婚姻当事者、その遺族、及び、変更によって影響を
受ける年金保険者である。
(2) 申立ては、婚姻の一方当事者が、継続的な年金を、変更されるべき年金請
求権に基づいて受け取ることが予想される開始時点又は変更に基づいて期待
-106-
することのできる開始時点より早くとも12か月前に、することができる。
(3) 年金調整法第27条の規定は、これを準用する。
(4) 変更は、申立てがされた月の翌月1日から効力を生ずる。
(5) 変更の申立てをした婚姻の一方当事者が終局裁判の確定前に死亡した場合
は、裁判所は、申立権を有するその他の関係人に対して、申立権を有する関
係人が1か月の期間内に裁判所に対する意思表示により手続を求める場合に
限り手続が続行されることを教示しなければならない。申立権を有する関係
人が手続の続行を期間内に求めない場合は、手続は、本案において終了した
ものとみなす。婚姻の他方当事者が死亡した場合は、手続はその相続人に対
して続行される。
第227条 その他の変更
(1) 年金調整法第20条から第26条までの規定による離婚後の年金調整請求につ
いての裁判の変更には、第48条第1項が適用される。
(2) 第225条及び第226条の規定は、変更が排除されていない場合に、年金調整
についての婚姻当事者間の合意について準用する。
第228条 抗告の許容性
年金調整事件において、第61条は、費用負担の裁判の取消しについてのみ、
適用される。
第229条 家庭裁判所と年金保険者との間の電子的法情報交換
(1) 裁判所及び第219条第2号又は第3号に基づき関係人となった年金保険者
が年金調整において必要な情報を交換するために、電子的伝達のために定め
られた手続(伝達手続)に参加する場合に限り、次に掲げる規定が適用され
る。電子的伝達は、第三者に委託することができる。
(2) 伝達手続は、次のいずれにも該当しなければならない。
1.連邦で統一されていること。
2.情報の真正性と完全性を保障していること。3.一般に接続可能なネットワークの使用の際には、伝達される情報の信頼
性を確保する暗号化方式を用いること。
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(3) 裁判所は、年金保険者に対して第220条に基づく情報提供の要請を、年金
保険者は、裁判所に対して第220条に基づく情報提供及び第222条第1項に基
づく意思表示を、伝達手続において伝達するものとする。
(4) 年金調整事件における裁判所の裁判は、年金保険者に、伝達手続において
送達されるものとする。
(5) 年金保険者に対する裁判の送達の証明のためには、自動的に作成される受
領確認が裁判所に対して電子的に伝達されることで足りる。送達の時点につ
いて基準となるのは、この受領確認に示された時点である。
第230条 (削除)
第9章 扶養事件の手続
第1節 特別の手続規定
第231条 扶養事件
(1) 扶養事件とは、
〔次に掲げる事項に関する〕手続をいう。
1.親族関係によって生ずる法律上の扶養義務
2.婚姻によって生ずる法律上の扶養義務
3.民法典第1615l条又は第1615m条に基づく請求権
(2) 連邦児童手当法第3条第2項第3文及び所得税法第64条第2項第3文によ
る手続も、扶養事件である。第235条から第245条までの規定は適用しないも
のとする。
第232条 土地管轄
(1)〔次に掲げる裁判所が〕専属管轄権を有する。
1.未成年者の扶養についての簡易手続を除く、婚姻当事者の共通の子のた
めの扶養義務に関する扶養事件、又は、婚姻によって生ずる扶養義務に関
する扶養事件については、婚姻事件の係属中は、婚姻事件が第一審で係属
している又はしていた裁判所
2.未成年の子又は民法典第1603条第2項第2文により〔未成年の子と〕同
様に扱われる子のための扶養義務に関する事件については、子又は未成年
-108-
の子のために行為する権限を有する親の一方の常居所地を管轄する裁判
所。ただし、子又は親の一方が常居所を外国に有する場合はこの限りでな
い。
(2) 前項による管轄権は、他の裁判所の専属管轄権に優先する。
(3) 第1項による管轄が存しない限りにおいて、管轄は、民事訴訟法の規定に
より定まる。この場合において、普通裁判籍についての規定中「住所」とあ
るのは、
「常居所」と読み替える。申立人の選択に従い、
〔次に掲げる裁判所
も〕管轄権を有する。
1.婚姻によって生ずる法律上の扶養義務に関する請求権、又は民法典第
1615l条に基づく請求権を理由とする親の一方から他方に対する申立てに
ついては、子の扶養についての手続が第一審で係属している裁判所
2.親の双方に対して扶養義務の履行を請求する子の申立てについては、親
の一方に対する申立てについて管轄権を有する裁判所
3.申立ての相手方が国内に裁判籍を有しない場合は、申立人の常居所地を
管轄する裁判所
第233条 婚姻事件裁判所への移送
前条第1項第1号による扶養事件が他の裁判所に第一審で係属している間
に、婚姻事件が係属したときは、当該扶養事件は、職権により婚姻事件の裁判
所に移送されなければならない。民事訴訟法第281条第2項及び第3項第1文
の規定は、これを準用する。
第234条 補佐人による子の代理
子が、補佐人としての少年局によって代理されているときは、配慮権を有す
る親による代理は排除される。
第235条 関係人の手続法上の情報提供義務
(1) 裁判所は、申立人及び申立ての相手方に対し、扶養料算定のために重要で
ある限りにおいて、その収入、財産、個人的及び経済的事情について情報を
提供し、特定の証拠資料を提出するよう命ずることができる。裁判所は、申
立人及び申立ての相手方に対し、情報が真実に適合し完全であることを書面
-109-
で保証するよう命ずることができる。この保証は、代理人がすることはでき
ない。裁判所は、第1文又は第2文に基づく命令により、相当な期間を定め
るものとする。裁判所は、同時に、第3項に基づく義務の負担並びに次条及
び第243条第2文第3号の規定により生じ得る効果を教示しなければならな
い。
(2) 裁判所は、関係人の一方が請求し、関係人の他方が、手続の開始前に、求
めに反して、民法典の規定に基づき存する情報提供義務に相当な期間内に従
わなかった場合は、前項による措置をとらなければならない。
(3) 申立人及び申立ての相手方は、手続中に第1項による命令の対象であった
事情に著しい変更が生じたときは、求めがなくとも裁判所にこれを通知する
義務を負う。
(4) 本条による裁判所の命令に対しては、独立して不服を申し立てることがで
きず、強制手段を用いて実現することができない。
第236条 第三者の手続法上の情報提供義務
(1) 裁判所は、関係人が定められた期間内に前条第1項による義務を履行しな
いか、完全に履行しない場合は、次に掲げる者に対し、扶養料の算定のため
に重要である限りにおいて、収入の額についての情報提供及び特定の証拠資
料を求めることができる。
1.雇用者
2.社会保険給付者、及び、芸術家社会保険組合
3.老齢及び労働能力減少の際の年金給付並びに填補及び障害補償のための
給付を行うその他の者又は機関
4.保険会社
5.財務官署
(2) 裁判所は、前項の要件が存し、他の関係人が求めるときは、前項による措
置をとらなければならない。
(3) 第1項による命令は、関係人に通知されなければならない。
(4) 第1項に掲げられた者及び機関は、裁判所の命令に従う義務を負う。民事
-110-
訴訟法第390条は、官庁が関わらない場合について準用する。
(5) 本条による裁判所の命令に対しては、関係人は、独立して不服を申し立て
ることができない。
第237条 父子関係の確認の場合における扶養
(1) 男性に対し子のための扶養料の支払を求める申立ては、民法典第1592条第
1号及び第2号又は第1593条に基づく父子関係が存しない場合は、子が未成
年であり、民法典第1600d条による父子関係の確認の手続が係属していると
きに限り、することができる。
(2) 父子関係の確認の手続が第一審で係属する裁判所が専属管轄権を有する。
(3) 第1項の場合において、扶養料は、最低扶養料の額で、かつ、民法典第
1612a条第1項第3文による年齢区分に従い、民法典第1612b条又は第1612c
条による給付を顧慮してのみ請求できる。子は、これより少ない扶養料を求
めることができる。そのほかの場合は、この手続において扶養料の引下げ又
は引上げを要求することはできない。
(4) 父子関係を確認する決定が確定する前、又は男性による父子関係の認知が
効力を生ずる前は、扶養料の給付義務の負担に関する宣言は、効力を生じな
い。
第238条 裁判所の裁判の変更
(1) 本案についてされた裁判所の終局裁判が、将来履行期の到来する回帰的給
付の義務負担を含む場合は、各当事者はその変更を申し立てることができ
る。申立ては、申立人が裁判の基礎とされた事実関係又は法律関係に重要な
変更を生じる事実を主張する限りにおいて、することができる。
(2) 申立ては、前の手続の事実審理の終結後に生じた理由であって、故障の申
立てによってこれを主張することができない又はできなかった理由にのみ基
づくことができる。
(3) 変更は、申立てが係属した以降の期間についてすることができる。申立て
は、扶養料の増額を目的とする場合は、民法典の規定により過去の扶養料を
求めることができる期間についてもすることができる。申立ては、扶養料の
-111-
減額を目的とする場合は、申立人によって対応する情報提供の要求又は放棄
の要求がされた翌月1日以降の期間についてもすることができる。係属の1
年より前の期間については、減額を求めることはできない。
(4) 事実関係又は法律関係に重要な変更がある場合は、裁判は、その基礎を維
持しつつ、適合させられなければならない。
第239条 和解及び証書の変更
(1) 民事訴訟法第794条第1項第1号による和解又は執行証書が、将来履行期
の到来する回帰的給付の義務を含む場合は、各当事者はいずれも、その変更
を申し立てることができる。申立ては、申立人が変更を正当とする事実を主
張する限りにおいて、することができる。
(2) 変更についてのその他の要件及び範囲は、民法典の規定によって定まる。
第240条 第237条及び第253条による裁判の変更
(1) 第237条又は第253条による確定した終局裁判が将来履行期の到来する回帰
的給付の義務を含む場合は、第255条による争訟手続の実施の申立てが既に
なされていない限り、各当事者はその変更を申し立てることができる。
(2) 扶養料の減額の申立てが、
〔裁判の〕確定後1か月以内にされない場合
は、変更は、申立てが係属した以降の期間についてのみすることができる。
1か月の期間内に、他の関係人による扶養料の増額の申立てが係属した場合
は、この期間は、この手続の終結前は進行しない。期間の経過後になされた
減額の申立ては、申立人によって対応する情報提供の要求又は放棄の要求が
された翌月1日以降の期間についてもすることができる。第238条第3項第
4文の規定は、これを準用する。
第241条 加重責任
〔扶養料の〕減額を目的とする変更の申立ての係属は、民法典第818条第4
項の適用において、給付額の返還を求める訴えの係属と同視される。
第242条 執行の暫定的停止
民事訴訟法第769条の規定は、
〔扶養料の〕減額を求める変更の申立てが係属
している場合、又はそのために手続費用救助許可の申立てがなされている場合
-112-
について準用する。決定に対しては、不服を申し立てることができない。
第243条 費用の裁判
費用負担に関する民事訴訟法の規定と異なり、裁判所は、扶養事件におい
て、衡平な裁量により、関係人の手続費用の負担について裁判する。この場合
は、とりわけ次に掲げる事項が顧慮されなければならない。
1.扶養義務負担の期間を含む関係人の勝敗の割合
2.義務がなかった場合を除き、関係人が、手続の開始前に、収入に関する
情報提供又は証拠の提出についての相手方の求めに対して応じなかった又
は完全には応じなかった事情
3.関係人が、定められた期間内に第235条第1項に基づく裁判所の求めに
応じなかった事情又は完全には応じなかった事情
4.民事訴訟法第93条による即時の認諾
第244条 成年であることを理由とする異議の禁止
子が満18歳に達した後に、義務者が子を扶養しなければならない場合は、民
法典第1612a条の定めるところにより決定又は民事訴訟法第794条に基づくその
他の〔債務〕名義において確定された扶養料請求の執行に対して、もはや未成
年ではないとの異議を申し立てることはできない。
第245条 外国における強制執行のための〔物価変動に〕スライドさせた扶養
名義の算定
(1) 民法典第1612a条により最低扶養料の百分率で示された額の扶養料を定め
る扶養名義が外国において執行されるべき場合は、申立てにより、その名義
に基づき負担される扶養額が算定されるものとする。
(2) 算定については、名義に執行力のある名義の正本を付与する義務を負う裁
判所、官庁又は公証人が管轄権を有する。
(3) 執行文の付与についての裁判の不服申立てに関する規定は、算定について
の裁判の不服申立てについて準用する。
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第2節 保全命令
第246条 保全命令についての特別規定
(1) 裁判所は、第49条とは異なり、申立てにより、保全命令によって、扶養料
支払又は裁判手続費用の予納金の支払の義務を定めることができる。
(2) 裁判は、事実関係の解明又は手続の和解的解決にとり必要と思われる場合
は、口頭弁論に基づいてなされる。
第247条 子の出生前の保全命令
(1) 保全命令の方法で、既に子の出生前に、最初の3か月間に子に与えられる
べき扶養料及び民法典第1615l条第1項により母に帰すべき金額についての
支払の義務を定めることができる。
(2) 子のための扶養料については、母も申立てをすることができる。民法典
第1600d条第2項及び第3項の規定は、これを準用する。前項の場合におい
て、子の出生前の一定の時点までにその金額を供託すべきことを命ずること
もできる。
第248条 父子関係の確認における保全命令
(1) 男性に子又はその母のための扶養料の支払を求める保全命令発令の申立て
は、民法典第1592条第1号及び第2号又は第1593条に基づく父子関係が存し
ない場合は、民法典第1600d条による父子関係の確認の手続が係属している
ときに限り、することができる。
(2) 前項の場合、父子関係の確認の手続が第一審で係属する裁判所が管轄権を
有する。抗告裁判所に係属している場合は、抗告裁判所が管轄権を有する。
(3) 民法典第1600d条第2項及び第3項の規定は、これを準用する。
(4) 裁判所は、男性に対し、扶養料のために一定額の担保を供すべきことを命
ずることもできる。
(5) 父子関係の確認の申立てが取り下げられ、又は、既判力をもって棄却され
たときは、保全命令も失効する。この場合において、保全命令を得た者は、
男性に対し、保全命令の実施によって彼に生じた損害を賠償しなければなら
ない。
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第3節 未成年者の扶養についての簡易手続
第249条 簡易手続の許容性
(1) 請求を受けた親と共に一つの家政で生活しているのでない未成年の子の
扶養料は、民法典第1612b条又は第1612c条による給付を顧慮する前の扶養料
が、民法典第1612a条第1項による最低扶養料の1.2倍を超えない限りにおい
て、申立てにより、簡易手続で定められる。
(2) 簡易手続は、申立て又はその内容についての通知が申立ての相手方に送達
される時点において、子の扶養請求権について裁判所が裁判をしたか、裁判
所の手続が係属しているか、強制執行に適した債務名義が作成されている場
合には、許されない。
第250条 申立て
(1) 申立ては、次に掲げる事項を含まなければならない。
1.関係人、その法定代理人及び手続代理人の表示
2.申立てがされる裁判所の表示
3.子の生年月日の摘示
4.いつの時点からの扶養料を請求するかについての摘示
5.過去の扶養料を請求する場合は、民法典第1613条第1項又は第2項第2
号の要件がいつ生じたかについての摘示
6.請求される扶養料の額の摘示
7.児童手当及びその他の顧慮されるべき給付(民法典第1612b条又は第
1612c条)についての摘示
8.子と申立ての相手方との間に、民法典第1591条から第1593条までの規定
による親子関係が存在する旨の陳述
9.子が申立ての相手方と共に一つの家政で生活していない旨の陳述
10.子の収入額についての摘示
11.請求権が、固有の権利、譲渡された権利又は再譲渡された権利のいずれ
に基づいて主張されるかについての陳述
12.子が社会法典第12編による扶助、社会法典第2編第19条第1項第2文に
-115-
よる市民手当、社会法典第8編による教育扶助若しくは編入扶助、扶養料
立替法による給付若しくは民法典第1607条第2項若しくは第3項による扶
養料を得た期間について、扶養を求めない旨の陳述、又は、扶養料が、譲
渡された権利に基づき、若しくは、社会法典第12編第94条第4項第2文、
社会法典第2編第33条第2項第4文若しくは扶養料立替法第7条第4項第
1文によって要求される限りにおいて、申し立てられた扶養料がその子へ
の若しくはその子のための給付を超えない旨の陳述
13.簡易手続による確定が前条第2項によって排除されていない旨の陳述
(2) 申立ては、前項及び前条に掲げられた要件を充たさない場合は、却下され
なければならない。却下に先立ち、申立人の陳述を聴取しなければならな
い。却下に対しては、不服を申し立てることができない。
(3) 申立ての相手方のその他の子の簡易手続が裁判所に係属する場合は、裁判
所は、同時の裁判を目的として、手続を併合しなければならない。
第251条 裁判所の措置
(1) 申立人の主張によれば簡易手続が許されると認められる場合は、裁判所
は、申立ての相手方への申立ての送達又は申立ての内容の通知を命ずる。裁
判所は、同時に、申立ての相手方に次に掲げる事項を教示する。
1.いつの時点から、及び、いくらの額の扶養料が確定され得るか。この場
合は、次に掲げる事項を示さなければならない。a) 第1、第2及び第3の年齢区分における最低扶養料に基づく扶養料の
確定が顧慮される子の年齢による期間b) 民法典第1612a条の場合において、各々の最低扶養料の百分率〔で示
された割合〕c) 民法典第1612b条又は第1612c条により顧慮されるべき給付
2.請求されている扶養料が、申立てにおいて記載された子の収入を顧慮し
たかどうかにつき、裁判所が審査していないこと。
3.扶養料について、1か月以内に異議を述べなければ、これに基づいて申
立人が強制執行を行いうる確定決定がされ得ること。
-116-
4.次条に基づき、いかなる異議を述べることができるか。とりわけ、支払
能力が制限されているか、又は支払能力がない旨の異議は、次条第4項に
定める情報が与えられ、かつ、収入についての証明が添付される場合に限
り、提起できること。
申立てが外国に送達される場合は、裁判所は、第2文第3号による期間を
定める。
(2) 民事訴訟法第167条の規定は、これを準用する。
第252条 申立ての相手方の異議
(1) 申立ての相手方は、簡易手続の適法性について異議を述べることができ
る。異議に理由がある場合は、裁判所は申立てを却下する。異議に理由がな
い場合は、裁判所は、次条に定める確定決定をもって却下しなければならな
い。
(2) 前項第1文に掲げられた以外の異議、とりわけ第3項及び第4項に基づく
異議は、申立ての相手方がどの範囲で扶養料給付のための用意があるか、及
び、その限りにおいて扶養請求に対する履行の義務を負う旨を同時に陳述す
る場合に限り、述べることができる。
(3) 履行したとの異議は、申立ての相手方がどの範囲で扶養を履行したかを明
らかにし、同時に、相応する証拠を提出する場合に限り、述べることができ
る。
(4) 支払能力の制限又は欠如の異議は、申立ての相手方がその収入と財産につ
いての情報を提供し、同時に過去12か月間の収入を証明する場合に限り、述
べることができる。社会法典第2編又は社会法典第12編により生計維持のた
めの給付を受けている申立ての相手方は、これについての現在の承認決定書
を提出しなければならない。自営業、貿易業並びに農業及び林業からの収入
の場合は、証拠として、最後の所得税納税告知書、及び、最後の会計年度に
ついての損益計算書又は収入余剰計算書を提出しなければならない。
(5) 異議は、
〔額の〕確定決定がされていない限りにおいてのみ、顧慮するこ
とができる。
-117-
第253条 確定決定
(1) 申立てが適法であり、かつ、異議又は前条第2項から第4項までによって
することができる異議が述べられない場合、扶養料は、第251条第1項第2
文第3号に示された期間の経過後に決定で確定される。申立ての相手方が前
条第2項に基づいて扶養料を支払う義務を負った場合も、決定で確定がされ
る。決定において、申立ての相手方が確定された扶養料を扶養権利者に支払
わなければならないことが言い渡されなければならない。決定において、そ
れまでに生じた償還可能な手続費用も、直ちに算出することができる限りに
おいて、確定されなければならない。この場合に、申立人は、その算出のた
めに必要な摘示を裁判所に通知すれば足りる。
(2) 決定において、どのような異議を抗告で主張できるか、及び、どのような
要件の下で変更を求めることができるかを教示しなければならない。
第254条 異議についての通知
申立ての相手方が、適法に異議(第252条第2項から第4項まで)を述べた
場合は、裁判所は、申立人にこれを通知して、関係人の申立てにより争訟手続
が実施されることを教示する。
第255条 争訟手続
(1) 前条の場合に、関係人の申立てにより争訟手続が実施される。
(2) 関係人が争訟手続の実施を申し立てた場合は、扶養事件における申立て
の到達後と同様に、手続が進められなければならない。第252条による異議
は、答弁とみなす。
(3) 手続は、確定の申立ての送達(第251条第1項第1文)によって、係属し
たものとみなす。
(4) 第253条第1項第2文による確定決定が先行した場合は、将来の回帰的給
付のために、扶養料が総額で定められるものとし、かつ、その限りにおいて
確定決定は取り消されるものとする。
(5) 簡易手続の費用は、争訟手続の費用の一部として扱われる。
(6) 争訟手続の実施の申立てが、前条による通知の到達後6か月が経過する前
-118-
にされない場合は、第253条第2文による確定決定を超える確定の申立て、
又は、第252条第2項による申立ての相手方が義務を負う旨の表示を超える
確定の申立ては、取り下げられたものとみなす。
第256条 抗告
抗告では、簡易手続の適法性又は不適法性、第252条第2項から第4項まで
に基づく異議の適法性及び一般原則に従って不服を申し立てることができる限
りにおいて、費用負担の裁判又は費用確定の誤りについての異議のみを主張す
ることができる。抗告は、確定決定がされる前に述べられなかった第252条第
2項から第4項までに基づく異議に基づく場合は、することができない。
第257条 特別の手続規定
簡易手続においては、申立て及び陳述は、裁判所事務課の文書作成官の面前
で述べることができる。書式が設けられている限りにおいて、書式に記入され
る。文書作成官は、裁判所及び日付を摘示して、申立て又は陳述を受理したこ
とを記載する。
第258条 機械による処理のための特則
(1) 簡易手続では、機械による処理をすることができる。民事訴訟法第702条
第2項第1、第3及び第4文の規定は、これを準用する。
(2) 機械による処理の場合、決定、処分及び正本には、裁判所の公印を押す。
署名は要しない。
第259条 書式
(1) 連邦司法・消費者保護省は、手続の簡素化及び統一のために、法規命令に
より、連邦参議院の同意を得て、簡易手続のための書式を設ける権限を有す
る。手続を機械によって処理する裁判所及び手続を機械によらずに処理する
裁判所のために、異なる書式を設けることができる。
(2) 前項により、書式が関係人の申立て及び陳述のために設けられている限
り、関係人はこれを使用しなければならない。
第260条 区裁判所の指定
(1) 州政府は、それがより迅速でより安価な処理に役立つ場合は、未成年者の
-119-
扶養についての簡易手続を、法規命令により、複数の区裁判所の地区を一つ
の区裁判所に割り当てる権限を有する。州政府は、その権限を、法規命令に
より、州の司法行政機関に委譲することができる。
(2) 州政府又は州の司法行政機関が前項により手続を他の区裁判所に割り当て
なかったとすれば管轄権を有したであろう区裁判所において、子は、当該他
の〔=前項により簡易手続の管轄裁判所とされた〕区裁判所におけると同様
の効力で、申立て及び陳述を提出し又は述べることができる。
第10章 婚姻財産制事件の手続
第261条 婚姻財産制事件
(1) 婚姻財産制事件とは、第三者が手続の関係人となる場合であっても、婚姻
財産法に基づく請求権に関わる手続をいう。
(2) 民法典第1365条第2項、第1369条第2項、第1382条、第1383条、第1426
条、第1430条及び第1452条に基づく手続、並びに、 2010年2月4日の選択剰
余共同制の婚姻財産制に関するドイツ連邦共和国とフランス共和国との間の
条約第5条第2項、第12条第2項第2文及び第17条と併せて適用される民法
典第1519条に基づく手続もまた、婚姻財産制事件である。
第262条 土地管轄
(1) 婚姻事件の係属中は、婚姻事件が第一審において係属している又は係属し
ていた裁判所が、専属管轄権を有する。この管轄権は、他の裁判所の専属管
轄権に優先する。
(2) 前項に規定する場合のほか、管轄は、民事訴訟法により定まる。この場合
において、普通裁判籍についての規定中「住所」とあるのは、
「常居所」と
読み替える。
第263条 婚姻事件の裁判所への移送
婚姻財産事件が他の裁判所に第一審で係属している間に、婚姻事件が係属し
たときは、当該婚姻財産事件は、職権により婚姻事件の裁判所に移送されなけ
ればならない。民事訴訟法第281条第2項及び第3項第1文の規定は、これを
-120-
準用する。
第264条 支払猶予及び対象財産の引渡しの手続
(1) 民法典第1382条及び第1383条、並びに、 2010年2月4日の選択剰余共同制
の婚姻財産制に関するドイツ連邦共和国とフランス共和国との間の条約第12
条第2項第2文及び第17条と併せて適用される民法典第1519条に基づく手続
においては、裁判所の裁判は、確定により初めてその効力を生ずる。変更又
は再審は排除される。
(2) 清算請求権の支払猶予の申立てについてされる決定において、裁判所は、
債権者の申立てにより、債務者が清算請求権の支払につき義務を負担するこ
とをも宣告することができる。
第265条 統一的裁判
婚姻財産法上の清算請求権についての手続において、民法典第1382条第5項
又は第1383条第3項に基づく申立てがされた場合、裁判は、統一的な決定に
よってなされる。
第11章 その他の家庭事件の手続
第266条 その他の家庭事件
(1) その他の家庭事件とは、管轄権が労働裁判所に与えられておらず、手続
が、民事訴訟法第348条第1項第2文第2号aからkまでに列挙された事件種
別のいずれか、住居所有権若しくは相続権に関するものでない場合であっ
て、既に他の規定により家庭事件とされているものでない限り、次に掲げる
請求権に関する手続をいう。
1.互いに婚約し又はかつて婚約していた者の間の婚約の終了に関する請求
権、並びに、民法典第1298条及び第1299条の場合における婚約当事者の一
方と第三者との間の請求権
2.婚姻〔関係〕から生じる請求権
3.互いに婚姻し若しくはかつて婚姻していた者の間の請求権、又は、婚姻
当事者の一方と親の一方の間の別居、離婚若しくは婚姻の取消しに関する
-121-
請求権
4.親子関係から生じる請求権
5.交流権から生じる請求権
(2) 民法典第1357条第2項第1文に基づく申立てに関する手続もまた、その他
の家庭事件である。
第267条 土地管轄
(1) 婚姻事件の係属中は、婚姻事件が第一審において係属している又は係属し
ていた裁判所が、専属管轄権を有する。この管轄権は、他の裁判所の専属管
轄権に優先する。
(2) 前項に規定する場合のほか、管轄は、民事訴訟法に従って定まる。この場
合において、普通裁判籍についての規定中「住所」とあるのは、
「常居所」
と読み替える。
第268条 婚姻事件裁判所への移送
その他の家庭事件が他の裁判所に第一審で係属している間に、婚姻事件が係
属したときは、当該その他の家庭事件は、職権により婚姻事件の裁判所に移
送されなければならない。民事訴訟法第281条第2項及び第3項第1文の規定
は、これを準用する。
第12章 生活パートナーシップ事件の手続
第269条 生活パートナーシップ事件
(1) 生活パートナーシップ事件とは、次に掲げる事項を対象とする手続をい
う。
1.生活パートナーシップ法に基づく生活パートナーシップの取消し
2.生活パートナーシップの存否の確定
3.共通の子に関する親の配慮、交流権又は引渡し
4.養子縁組及び養子縁組についての同意の代行
5.生活パートナーシップ法第14条又は第17条による住居の割当に関する事件 -122-
6.生活パートナーシップ法第13条又は第17条による家財事件
7.生活パートナーの年金調整
8.生活パートナーの共通の未成年の子のための法律上の扶養義務
9.生活パートナーシップによって設定された法律上の扶養義務
10.第三者が手続の関係人となる場合であっても、生活パートナーシップの
財産制に基づく請求権
11.民法典第1365条第2項、第1369条第2項、第1382条、及び第1383条と併
せて適用される生活パートナーシップ法第6条に基づく裁判
12.民法典第1426条、 1430条若しくは1452条と併せて、又は、民法典第1519
条及び2010年2月4日の選択剰余共同制の婚姻財産制に関するドイツ連邦
共和国とフランス共和国との間の条約第5条第2項、第12条第2項第2文
若しくは第17条と併せて適用される、生活パートナーシップ法第7条に基
づく裁判
(2) その他の生活パートナーシップ事件とは、管轄権が労働裁判所に与えられ
ておらず、手続が、民事訴訟法第348条第1項第2文第2号aからkまでに列
挙される事件種別の手続、住居所有権若しくは相続権に関するものであっ
て、既に他の規定により生活パートナーシップ事件とされているものでない
限り、次に掲げる事項を対象とする手続をいう。
1.民法典第1298条から第1301条までの規定と併せて適用される2018年12月
18日以前に適用された生活パートナーシップ法第1条第4項第2文による
請求権
2.生活パートナーシップに基づく請求権
3.互いに生活パートナーシップにある若しくはあった者の間、又は、生活
パートナーの一方と親の一方との間の、生活パートナーシップの解消又は
取消しに関連する請求権
(3) 民法典第1357条第2項第1文と併せて適用される生活パートナーシップ法
第8条第2項に基づく申立てについての手続もまた、その他の生活パート
ナーシップ事件である。
-123-
第270条 準用規定
(1) 離婚手続に適用される規定は、前条第1項第1号に規定する生活パート
ナーシップ事件について、当事者間の婚姻の存否の確定手続に適用される規
定は、前条第1項第2号に規定する生活パートナーシップ事件について準用
する。第111条第2号、第4号、第5号及び第7号から第9号までに規定す
る家庭事件にその都度適用される規定は、前条第1項第3号から第12号まで
に規定する生活パートナーシップ事件について準用する。
(2) 第111条第10号に規定するその他の家庭事件に適用される規定は、前条第
2項及び第3項に規定するその他の生活パートナーシップ事件について準用
する。
-124-
第3編 世話事件及び収容事件の手続
第1章 世話事件の手続
第271条 世話事件
世話事件とは、次に掲げる事件をいう。
1.世話人の選任の手続及び世話の終了の手続
2.同意留保命令の手続
3.成年者の法的世話(民法典第1814条から第1881条まで)に関するその他
の手続。ただし、収容事件を除く。
第272条 土地管轄
(1) 次に掲げる順位で、
〔次に掲げる裁判所が〕専属管轄権を有する。
1.世話人が既に選任されている場合には、世話が係属している裁判所
2.事件本人の常居所地を管轄する裁判所
3.保護の必要性が生じている地を管轄する裁判所
4.事件本人がドイツ人である場合には、ベルリンのシェーネベルク区裁判所(2) 第300条の規定による保全命令又は仮の処分については、保護の必要性が
判明した地を管轄する裁判所も管轄権を有する。この場合には、裁判所は、
前項第1号、第2号又は第4号の規定に基づき管轄権を有する裁判所に対
し、命じられた措置について通知するものとする。
第273条 常居所の変更の場合の移送
第4条第1文に規定する移送をする重大な事由は、原則として、事件本人の
常居所が変更し、世話人の職務が主に新たな常居所で行われるべきである場合
に、認められる。1年を超えて他の場所に事実上滞在する場合は、常居所の変
更と同様とする。
第274条 関係人
(1) 次に掲げる者は関係人となる。
1.事件本人
-125-
2.その職務範囲に関する限りで、世話人
3.その職務範囲に関する限りで、民法典第1814条第3項第2文第1号に規
定する任意代理人
(2) 手続保護人は、選任されることにより、関係人として手続に関与する。
(3) 管轄官庁は、その申立てにより、次の各号に掲げる事項に関する手続に関
係人として参加させられなければならない。
1.世話人の選任又は同意留保命令
2.第1号に掲げられた種類の裁判の範囲、内容又は存在
(4) 次に掲げる者は関係人となることができる。
1.前項に掲げられた手続において、事件本人の利益のために、事件本人が
その婚姻の相手方又は生活パートナーと継続して別居していない場合は事
件本人の婚姻の相手方又は生活パートナー、並びに、事件本人の両親、養
親、祖父母、卑属、兄弟姉妹及び事件本人にとって親しい者
2.国庫の代理人。ただし、国庫の利益が手続の結果に関わり得る場合に限
る。
第275条 事件本人の手続上の地位
(1) 世話事件においては、事件本人は、行為能力の有無に関わらず、手続能力
を有する。
(2) 裁判所は、手続を開始する際に、事件本人に対して、世話人の職務、予
想される手続の進行及び世話人の選任により一般的に生じ得る費用につい
て、できる限り受け手にとって適切に教示する。
第276条 手続保護人
(1) 裁判所は、事件本人の利益を擁護するために必要なときは、事件本人のた
めに適格な手続保護人を選任する。次に掲げる場合には、原則として、その
選任が必要である。
1.第34条第2項と併せて適用される第278条第4項の規定により事件本人
に対し本人の陳述聴取が行われないとき。
2.世話人の選任又は同意留保命令が事件本人の表示された意思に反して行
-126-
われるとき。
(2) 前項第2文の場合において、手続保護人の選任について事件本人の利益が
存在しないことが明らかであるときは、手続保護人の選任をしないことがで
きる。選任をしないときは、その理由を付さなければならない。
(3) 手続保護人は事件本人の希望、予備的にその推定される意思を確認し、こ
れを裁判手続において主張しなければならない。手続保護人は手続の対象、
経過及び予想される帰結を、適切な方法で事件本人に知らせ、必要に応じ
て、事件本人が手続においてその権利を行使する際に、事件本人を援助しな
ければならない。手続保護人は、事件本人の法定代理人ではない。
(4) 手続保護人には自然人が選任されなければならない。職業活動として手続
保護を行う者は、名誉職として手続保護を行う適格な者がいない場合にの
み、手続保護人に選任されるものとする。
(5) 事件本人の利益が弁護士その他の適格な手続代理人によって代理される場
合、手続保護人の選任を行わず、又はその選任を取り消すものとする。
(6) 手続保護人の選任は、それ以前に取り消されていない場合、裁判の確定そ
の他の事由による手続の終結により終了する。
(7) 手続保護人の選任又はその取消し並びにこれらの措置の拒絶に対して
は、独立して不服を申し立てることができない。
(8) 手続保護人には、費用を負担させることができない。
第277条 手続保護人の報酬と費用の償還
(1) 手続保護人は無報酬で行われる。手続保護人は民法典第1877号第1項から
第2項及び第4項第1文の規定に基づき費用の償還を受ける。前払金は請求
することができない。
(2) 手続保護が例外的に職業として行われる場合、このことは選任の際に確認
されなければならない。職業として従事する手続保護人の報酬及び費用償還
の請求権は、後見人及び世話人報酬法第2条第2項第1文及び第3条から第
5条までの規定に従う。
(3) 裁判所は、保護業務の実施に必要な時間が予測可能であり、手続保護人に
-127-
よりその時間が全て費やされることが保証される場合には、前項の規定によ
る費用償還及び報酬に代えて、手続保護人のために概算額を承認することが
できる。その金額を算出する際には、予想される必要な時間について、後見
人及び世話人報酬法第3条第1項に定められた時間当たりの単価に、見積も
られた時間当たり4ユーロの定額経費を加えた額の報酬を与えられなければ
ならない。この場合において手続保護人は、費やした時間と利用した方法を
証明することを要しない。追加的な費用の償還請求権及び報酬請求権は認め
られない。
(4) 手続保護人の費用償還と報酬は、常に国庫から支出しなければならない。
第292条第1項及び第5項の規定は、これを準用する。
第278条 事件本人に対する本人の陳述聴取
(1) 裁判所は、世話人を選任し、又は同意留保を命ずる前に、事件本人に対し
本人の陳述聴取をし、その希望を尋ねなければならない。裁判所は、事件本
人について本人の印象を獲得しなければならない。裁判所は、事件本人が請
求したとき、又は事案の解明に資する場合において事件本人からの異議がな
いときは、事件本人の通常の環境において本人の印象を獲得するものとす
る。
(2) 裁判所は、陳述聴取において、手続、伝達された鑑定結果、世話人と
して考えられる人又は機関、職務範囲、及び、裁判所が世話又は同意留
保命令の取消し又は延長について判断をしなければならない期限につい
て、事件本人と討論する。適切な場合には、事件本人に対し、事前代理
権〔Vorsorgevollmacht〕を利用することができること、その内容、及び
連邦公証人規則第78a条第2項の規定により事前代理権中央登録簿〔der
zentralen Vorsorgeregister〕にその登録をすることができることを教示しな
ければならない。裁判所が第276条の規定により事件本人のために手続保護
人を選任したときは、本人の陳述聴取は手続保護人の在廷の下で行うものと
する。
(3) 第1項の規定による手続行為は、自ら事件本人の印象を獲得しなくとも裁
-128-
判をすることができると認められる場合に限り、司法共助の方法により行う
ことができる。
(4) 本人の陳述聴取により、事件本人の健康に重大な不利益が生ずるおそれが
あることを理由に、第34条第2項の規定に基づき、これをしないものとする
場合、この判断は医学的鑑定意見に基づいてのみすることができる。この理
由により本人の陳述聴取が行われないときは、本人の印象を獲得する必要も
ない。
(5) 裁判所は、事件本人が第1項の規定による手続行為に協力することを拒絶
した場合には、管轄官庁を通じて事件本人を勾引することができる。
(6) 官庁は、裁判所が裁判により明示的に命じた場合にのみ、実力を用いるこ
とができる。管轄官庁は、必要な場合に、警察の執行機関の援助を求める権
限を有する。
(7) 事件本人の住居を、事件本人の同意なく、強制的に開扉し、立ち入り、捜
索することができるのは、裁判所が、このことを陳述聴取のための事件本人
の勾引について明示的に命じた場合に限る。差し迫った危険があるときは、
前文の規定による命令は、管轄官庁がすることができる。この規定は、基本
法第13条第1項の規定による住居の不可侵に対する基本権を制限するもので
ある。
第279条 その他の関係人、世話官庁及び法定代理人の陳述聴取
(1) 裁判所は、世話人を選任し、又は同意留保を命ずる前に、その他の関係人
の陳述を聴取しなければならない。
(2) 裁判所は、世話人を選任し、又は同意留保を命ずる前に、管轄官庁の陳述
を聴取しなければならない。陳述聴取は、次条の規定に基づき鑑定の前に行
うものとし、とりわけ次に掲げる基準に則して行うものとする。
1.事件本人の人的、健康的及び社会的状況
2.適切な他の支援を含めた世話の必要性(民法典第1814条第3項)
3.名誉職として行う者の優先を顧慮した世話人の選択(民法典第1816条)
4.これらに関する事件本人の見方
-129-
(3) 裁判所は、事件本人が請求する場合には、著しい遅滞が生じることなくす
ることができる限り、事件本人の近しい者の陳述を聴取しなければならな
い。
(4) 裁判所は、未成年者のために世話人を選任し、又は同意留保を命ずる場合
(民法典第1814条第5項及び第1825条第4項)には、事件本人の法定代理人
の陳述を聴取しなければならない。
第280条 鑑定
(1) 世話人を選任し、又は同意留保を命ずる前に、これらの措置の必要性につ
いて鑑定により法定の証拠調べがなされなければならない。鑑定人は、精神
科の医師又は精神科の領域で経験のある医師であるものとする。
(2) 鑑定人は、鑑定結果を報告する前に、事件本人に対しその本人の検査又は
問診をしなければならない。鑑定人は、鑑定意見を作成する際に、前条第2
項第2文の規定による陳述聴取の結果があるときは、これを顧慮しなければ
ならない。
(3) 鑑定意見は、次の各号に掲げる事項を含まなければならない。
1.病気又は障害の進行を含む状況
2.実施された検査及びその基礎とされた研究上の知見
3.事件本人の身体的及び精神的状態
4.病気や障害に基づき医学的見地から必要な援助の必要性
5.予想される措置の期間
第281条 医師の診断、鑑定が不要な場合
(1) 事件本人が世話人の選任の申立てをし、鑑定の実施を放棄した場合で、か
つ、とりわけ世話人の職務範囲の観点から鑑定が不相応である場合には、前
条の規定による鑑定人による鑑定に代えて、医師の診断で足りる。
(2) 前条第2項の規定を準用する。
第282条 要介護の確定のための鑑定意見が存在する場合
(1) 社会法典第11編第18条の規定に基づく要介護の確定のための既存の医学的
鑑定意見を利用することにより、事件本人において、病気又は障害を原因と
-130-
して、どの範囲で世話人の選任のための要件が存在するのかを確定すること
ができる限りで、裁判所は、世話人を選任する手続において、鑑定(第280
条第1項)を行わないことができる。
(2) 裁判所は、この鑑定意見及びそのために提出された所見を、新たな鑑定を
避けるために、介護保険基金〔Pflegekasse〕に請求することができる。裁
判所は、請求の際に、鑑定意見と所見の利用目的を述べなければならない。
裁判所は、伝達された情報が利用目的に適しないことを確認した場合、その
情報を遅滞なく消去しなければならない。
(3) 裁判所は、世話人を選任する手続において得られた鑑定意見及び所見が、
新たな鑑定の全部又は一部に代替するものとして適したものであるとの確信
に至った場合、これを転用する前に、事件本人又は手続のための保護人の同
意を得なければならない。同意がされない場合、裁判所は伝達された情報を
遅滞なく消去しなければならない。
(4) 裁判所は、前3項に規定する要件の下で、世話人を選任するためのその他
の要件の存在を確信する場合、第280条の規定による鑑定を全てしないこと
ができる。
第283条 検査のための勾引
(1) 裁判所は、事件本人が鑑定意見の準備のために検査を受けること及び管轄
官庁を通じて検査を受けさせるために勾引されることを命ずることができ
る。事前に事件本人に対し本人の陳述聴取をするものとする。
(2) 官庁は、裁判所が裁判により明示的に命じた場合にのみ、実力を用いるこ
とができる。管轄官庁は、必要な場合に、警察の執行機関の援助を求める権
限を有する。
(3) 事件本人の住居を、その同意なく、強制的に開扉し、立ち入り、捜索する
ことができるのは、裁判所が、このことを、検査のための勾引について明示
的に命じた場合に限る。この命令の前に、事件本人に対する本人の陳述聴取
をしなければならない。この命令は、差し迫った危険があるときは、管轄官
庁が、事前に事件本人の陳述聴取をすることなく行うことができる。この規
-131-
定は、基本法第13条第1項の規定による住居の不可侵に対する基本権を制限
するものである。
第284条 鑑定のための収容
(1) 裁判所は、鑑定人の陳述聴取後に、鑑定意見の準備に必要な範囲で、事件
本人を一定期間施設に収容し、観察することを、決定することができる。事
件本人に対して、事前に、本人の陳述聴取をしなければならない。
(2) 収容は、6週間を超えてはならない。この期間が鑑定に必要な知見を得る
ために十分でない場合、裁判所は、決定で、収容を通算で3か月まで延長す
ることができる。
(3) 前条第2項及び第3項の規定を準用する。前2項の規定による決定に対し
ては、
民事訴訟法第567条から第572条までの規定による即時抗告がなされる。
第285条 世話処分又は事前代理権の調査及び引渡
(1) 世話人を選任する前に、裁判所は、事件本人の事前代理権又は世話処分が
事前代理権中央登録簿に登録されているかどうかについて、情報を得るもの
とする。裁判所は、差し迫った危険があることのみを理由に情報を取得しな
かったときは、事後的に遅滞なく情報を取得しなければならない。
(2) 民法典第1820条第1項第2文、第4項第1文及び第2文並びに第5項第3
文に規定された場合において、所定の文書の写しの提出命令又は委任状の引
渡命令は、決定で行う。民法典第1816条第2項第4文に規定されている世話
処分の送付命令についても同様とする。
第286条 決定主文の内容
(1) 世話人を選任する場合、決定主文には次に掲げる事項をも含む。
1.個別の職務事項の挙示による世話人の職務範囲の表示
2.社団世話人を選任する場合には、社団世話人である旨の表示及び社団の
表示
3.官庁世話人を選任する場合には、官庁世話人である旨の表示及び官庁の
表示
4.職業世話人を選任する場合には、職業世話人である旨の表示
-132-
(2) 同意留保を命ずる場合、決定主文には同意を必要とする意思表示の範囲の
表示を含む。
(3) 決定主文には、前2項の規定による措置の取消し又は延長について、裁判
所がどの時点までに裁判をしなければならないのかを表示しなければならな
い。
第287条 決定の効力発生
(1) 世話人選任の範囲、内容又は存在についての決定、同意留保の命令につい
ての決定又は第300条の規定による保全命令の発令についての決定は、世話
人に告知されたときに効力を生ずる。
(2) 世話人に告知することができない場合又は危険が差し迫っている場合に
は、裁判所は、決定が即時に効力を生ずることを命ずることができる。この
場合において、決定は次に掲げる時点に効力を生ずる。
1.決定及び〔決定に〕即時に効力を生じさせる命令が事件本人又は手続保
護人に告知された時点
2.決定及び〔決定に〕即時に効力を生じさせる命令が第1号の告知のため
に裁判所事務課に交付された時点
〔決定が〕即時に効力を生じる時点は、決定に記載しなければならない。
(3) 民法典第1829条第2項の規定による許可をその内容とする決定は、世話人
又は任意代理人への告知及び手続保護人への告知後、2週間の経過により初
めて効力を生じる。
第288条 告知
(1) 決定理由の事件本人への告知は、医師の診断により、事件本人の健康に重
大な不利益が生ずることを避けるために必要であると認められる場合、これ
を行わないことができる。
(2) 裁判所は、世話人選任の決定若しくは同意留保命令についての決定、又は
これらの措置の範囲、内容又は存在についての決定を、常に管轄官庁に告知
しなければならない。その他の決定は、決定がされる前に管轄官庁の陳述聴
取がされた場合には、管轄官庁に告知されなければならない。
-133-
第289条 (削除)
第290条 選任に関する証書
(1) 世話人は、選任に関する証書を受け取る。その証書には、次に掲げる事項
を含むものとする。
1.事件本人及び世話人の表示
2.社団世話人又は官庁世話人が選任された場合には、その旨の表示及び社
団又は官庁の表示
3.個別の職務事項の挙示により表示される世話人の職務範囲
4.同意留保が命じられた場合には、同意を必要とする意思表示の範囲
5.保全命令により仮の世話人が選任された場合には、保全措置の終了
6.民法典第1859条及び第1860条による免除についての記載
(2) 事件本人の正当な利益を守るために必要であり、かつ、法的取引の保護に
反しない限り、裁判所は、世話人の申立てにより、世話人の職務領域に関す
る記載又は同意留保命令を、限定的にのみ示す追加の証書を作成する。
(3) 世話人は、その任務の終了後、選任証書及び前項の規定による追加の証書
を裁判所に返還しなければならない。
第291条 世話人の選択の審査
事件本人は、社団又は官庁が世話の実施を委託した者の選択について、裁判
所の裁判により審査することを請求することができる。裁判所は、事件本人の
提案が重大な事由なく応じられなかった場合、又は選択された者が世話の実施
に適していないと認められる場合、社団又は官庁に対して別の者を選択させる
ことができる。第35条は、これを適用しない。
第292条 世話人に対する支払、命令権限の付与
(1) 裁判所は、世話人又は事件本人の申立て又は裁量に基づき、決定で、次に
掲げる事項を定めることができる。
1.世話人が国庫からの支払を求めることができるとき(民法典第1879条)
又は財産配慮が世話人に委託されていないときに限り、世話人に支払われ
る前払金、又は世話人に償還される費用若しくは概算費用
-134-
2.名誉職世話人に許可される報酬又は分割払金(民法典第1876条)
3.後見人及び世話人の報酬に関する法律に基づき職業世話人又は世話社団
に許可される報酬
(2) 裁判所は、後見人及び世話人の報酬に関する法律第15条第2項第1文の要
件が存する場合は、世話人又は世話社団の申立てに基づき、前項第3号に
よって許可される報酬を、将来の期間についても、決定で確定することがで
きる。報酬の支払は、後見人及び世話人の報酬に関する法律第15条第1項第
1文の定める期間毎に当該期間についてされる。確定〔された額〕は、2年
を超えない範囲で予め確定された一定期間ごとに、定期的に見直さなければ
ならない。
(3) 申立てには、事件本人の個人的状況及び経済状況が記載されるものとす
る。民事訴訟法第118条第2項第1文及び第2文の規定は、これを準用す
る。裁判所の自由な心証によれば、事件本人の個人的状況及び経済状況の調
査に要する費用が国庫から支弁されるべき請求権の額又は事件本人が前もっ
てなすべき支払の額と均衡しないと判断される場合は、裁判所は、追加の審
理をすることなく給付されるべき額を確定し、又は事件本人がなすべき支払
の確定を見合わせることができる。
(4) なすべき支払が確定される前に、事件本人の陳述を聴取しなければならな
い。
(5) 確定の申立てがされないときは、国庫から請求されうる支払について、現
金支出に関する証人への補償の際の手続についての規定を準用する。
(6) 州政府は、法規命令により、本条第1項及び第2項による申立てのために
書式を設ける権限を有する。書式が設けられている限り、職業世話人又は世
話社団は、これを使用しなければならず、かつ、書式がそのために定められ
ている限り、電子的文書として提出しなければならない。そうでなければ、
民法典第1875条第2項及び後見人及び世話人の報酬に関する法律第1条の意
味において適式な主張は、存しない。州政府は、第1文による権限を、法規
命令により、州の司法行政機関に委譲することができる。
-135-
第292a条 国庫への支払
(1) 裁判所は、前条第1項による確定と同時に、事件本人が民法典第1880条第
2項及び第1881条第1文に基づいて国庫に対してなすべき支払の額及び時点
を確定する。裁判所は、それが目的に適うときは、
〔国庫に対して〕なすべ
き支払の額及び時点を、
〔本条の確定と〕別に確定することができる。民事
訴訟法第120条第2項及び第3項並びに第120a条第1項第1文から第3文ま
での規定を準用する。
(2) 事件本人が死亡した場合は、裁判所は、その相続人が民法典第1881条第2
文に基づき国庫に対してなすべき支払の額及び時点を確定する。相続人は、
そのために必要な情報を裁判所に提供する義務を負い、とりわけ、裁判所に
対して、その求めに応じて相続財産に属する財産の目録を提出し、最もよく
知るところ及び良心に従って可能な限り完全に内容を申告したことについ
て、宣誓に代わる保証をしなければならない。
(3) 裁判の前に、事件本人又はその相続人の陳述を聴取しなければならない。
第293条 世話又は同意の留保の拡張
(1) 世話人の職務範囲の拡張及び同意を要する意思表示の範囲の拡張について
は、これらの措置の命令に関する規定を、準用する。裁判所は、事件本人が
請求するとき又は事案の解明に必要なときに限り、管轄官庁の陳述を聴取し
なければならない。
(2) 次に掲げる場合は、第278条第1項による事件本人の陳述聴取及び鑑定又
は医師の診断の実施(第280条及び第281条)を要しない。
1.これらの手続行為が6か月以内に行われているとき。
2.第1項によって意図された拡張が本質的でないとき。
世話人の職務範囲の本質的な拡張は、とりわけ、身上監護又は民法典第
1815条第2項若しくは又は第1829条から第1832条までに掲げられた職務が、
初めて全部又は一部含まれる場合に存在する。
(3) 前項にかかわらず、裁判所は、事件本人の病態及び障害の変化ではなく、
事件本人の生活環境の変化又は他の支援の効果が不十分であることを理由に
-136-
世話人の職務範囲を拡張する場合は、鑑定や医師の診断の実施を見合わせる
ことができる。
(4) 前3項の規定は、職務範囲の拡張が、民法典第1817条による更なる世話人
の選任と結びつけられる場合について準用する。
第294条 世話又は同意の留保の取消し及び制限
(1) 第279条第1項、第3項及び第4項並びに第288条第2項第1文の規定は、
世話又は同意の留保の命令の取消し及び世話人の職務範囲又は同意を要する
意思表示の範囲の制限について準用する。裁判所は、事件本人が請求すると
き又は事案の解明のために必要なときに限り、管轄官庁の陳述を聴取しなけ
ればならない。
(2) 裁判所が、第281条第1項第1号により鑑定の実施を見合わせた場合にお
いて、世話の取消し又は職務範囲の制限についての事件本人の申立てが初め
て斥けられるべきときは、鑑定は追完されなければならない。
(3) 世話又は同意の留保の取消しについて、裁判所は、これらの措置の命令の
後、遅くとも7年の間に、裁判しなければならない。その措置が事件本人の
明らかにされた意思に反して命じられた場合には、その命令から遅くとも2
年の間に、その取消しについての最初の裁判がなされなければならない。
第295条 世話又は同意の留保の延長
(1) 世話人の選任又は同意の留保の命令の延長については、これらの措置の最
初の命令に関する規定を準用する。鑑定の新たな実施は、事件本人に対する
本人の陳述聴取及び医師の診断から、世話の必要性の範囲が明らかに減少し
ておらず、
〔その措置の〕延長が事件本人の明らかにされた意思に反しない
ことが判明する場合には、見合わせることができる。裁判所は、事件本人が
請求するとき又は事案の解明のために必要なときに限り、管轄官庁の陳述を
聴取しなければならない。
(2) 世話又は同意の留保の延長については、裁判所は、これらの措置の命令の
後、遅くとも7年の間に、裁判しなければならない。その措置が事件本人の
明らかにされた意思に反して命じられた場合には、最初の延長については遅
-137-
くとも2年の間に、裁判しなければならない。
第296条 世話人の解任及び新たな世話人の選任
(1) 裁判所は、事件本人が世話人の解任(民法典第1868条)について異議を述
べる場合は、事件本人及び世話人に対して、本人の陳述聴取をしなければな
らない。
(2) 新たな世話人を選任する(民法典第1869条)前に、裁判所は、事件本人に
対して本人の陳述聴取をしなければならない。事件本人が世話人の交代につ
いて同意したときは、第1文は適用されない。第279条第1項、第3項及び
第4項の規定は、これを準用する。裁判所は、事件本人が請求するとき又は
事案の解明のために必要なときに限り、管轄官庁の陳述を聴取しなければな
らない。
第297条 不妊手術
(1) 裁判所は、不妊手術への同意に対する許可(民法典1830条第2項)の前
に、事件本人に対する本人の陳述聴取をし、事件本人について本人の印象を
獲得しなければならない。裁判所は、事件本人に対し、予想される手続の進
行について教示をしなければならない。
(2) 裁判所は、事件本人が請求する場合、又は事案の解明に資する場合、管轄
官庁の陳述を聴取しなければならない。
(3) 裁判所は、その他の関係人の陳述を聴取しなければならない。事件本人が
請求する場合、裁判所は、著しい遅滞が生ずることなくすることができると
きは、本人の近しい者の陳述を聴取しなければならない。
(4) 前3項の規定による手続行為は、受託裁判官がこれを行うことはできな
い。
(5) 事件本人が弁護士その他の適格な手続代理人によって代理されていない限
り、手続保護人は、常に選任される必要がある。
(6) 許可は、医学的、心理学的、社会学的、特殊教育学的及び性教育学的観点
を含む鑑定人の鑑定意見が法定の方式による証拠調べとして得られた後にな
されなければならない。鑑定人は、鑑定意見を作成する前に、事件本人に対
-138-
して、本人の検査又は問診をしなければならない。鑑定人と〔不妊手術を〕
実施する医師は別人でなければならない。
(7) 許可は、不妊手術に対する同意についての裁判のために選任された世話人
及び次に掲げる者に告知されたときに効力を生ずる。
1.手続保護人
2.手続保護人が選任されていない場合は、手続代理人
(8) 許可についての裁判は常に事件本人自身に告知しなければならない。事件
本人への理由の告知は省くことができない。裁判は、常に管轄官庁に告知し
なければならない。
第298条 民法典第1829条の場合における手続
(1) 裁判所は、前もって事件本人に対して本人の陳述聴取をしたときに限り、
世話人又は任意代理人の同意、不同意又は同意の撤回(民法典第1829条第1
項、第2項及び第5項)を許可することができる。裁判所は、その他の関係
人の陳述を聴取するものとする。裁判所は、
〔手続の〕著しい遅延なしに可
能である場合には、事件本人の求めにより、事件本人に近しい者の陳述を聴
取しなければならない。
(2) 手続の対象が民法典第1829条第2項に基づく許可である場合は、常に手続
保護人の選任を要する。
(3) 許可の前に、鑑定人による鑑定が実施されなければならない。鑑定人は、
〔事件本人の〕治療にもあたる医師ではないものとする。
第299条 その他の許可手続における本人の陳述聴取
裁判所は、民法典第1833条第3項又は第1820条第5項第2文に基づく裁判の
前に、事件本人に対して本人の陳述聴取をしなければならない。裁判所は、第
1850条から第1854条までに基づく裁判の前に、事件本人に対して本人の陳述聴
取をするものとする。
第300条 保全命令
(1) 裁判所は、次のいずれにも該当する場合に、保全命令により仮の世話人を
選任し、又は仮の同意の留保を命ずることができる。
-139-
1.世話人の選任又は同意の留保の命令のための要件が満たされていると解
される急迫の事情があり、即時の措置が差し迫って必要であること。
2.事件本人の状態についての医師の診断があること。
3.第276条の場合において、手続保護人が選任され、かつ、その陳述が聴
取されていること。
4.事件本人に対して本人の陳述聴取がされたこと。
第278条第3項とは異なり、司法共助の方法による事件本人の陳述聴取は
することができる。
(2) 裁判所は、解任のための要件が満たされていると解される急迫の事情があ
り、即時の措置が差し迫って必要である場合には、保全命令により世話人を
解任することができる。
第301条 緊急性が高まった場合における保全命令
(1) 遅滞のおそれがある場合に、裁判所は、事件本人に対する本人の陳述聴取
並びに手続保護人の陳述聴取及び選任の前であっても、前条に基づく保全命
令を発することができる。これらの手続行為は遅滞なく追完されなければな
らない。
(2) 裁判所は、遅滞のおそれがある場合は、世話人の選択に際し、民法典第
1816条第2項及び第3項に拘束されない。
第302条 保全命令の期間
保全命令は、裁判所がそれより早い時点を定めない限り、6か月後に失効す
る。保全命令は、その都度の鑑定人の陳述聴取を経たさらなる保全命令によ
り、通算して1年間まで延長することができる。
第303条 抗告に関する補充規定
(1) 管轄官庁は、次に掲げる事項についての裁判に対して、抗告権を有する。
1.世話人の選任又は同意の留保の命令
2.前号に掲げる措置の範囲、内容又は存在
(2) 次に掲げる者は、第一審において関係人となっていた場合、事件本人のた
めに、職権によってされた裁判に対する抗告権を有する。
-140-
1.事件本人がその婚姻の相手方又は生活パートナーと継続して別居してい
ない場合は事件本人の婚姻の相手方又は生活パートナー、並びに、事件本
人の両親、祖父母、里親、卑属及び兄弟姉妹
2.事件本人が親しい者
(3) 手続保護人は、抗告権を有する。
(4) 世話人又は事前代理人は、その職務範囲に関する裁判に対して、事件本人
の名においても、抗告を提起することができる。複数の世話人又は事前代理
人がその職務を共同して執行しているときは、そのいずれもが事件本人のた
めに単独で抗告を提起することができる。
第304条 国庫の抗告
(1) 国庫の利益が決定に関わる限りにおいて、国庫の代理人は、抗告権を有す
る。国庫の代理人が、世話人が計算を誤ってなしたこと、又は、民法典第
1816条第5項に基づき選任された世話人の代わりに、一人又は複数の他の適
切な者が職業活動としてではなく被世話人を世話することができることを主
張した場合は、世話人の解任を斥ける決定に対し、国庫の代理人は抗告をす
ることができる。
(2) 国庫の代理人による抗告の提起のための期間は3か月間であり、国庫に対
する無方式の通知(第15条第3項)とともに開始する。
第305条 被収容者の抗告
事件本人は、収容されている場合は、収容されている地区の区裁判所にも、
抗告を提起することができる。
第306条 同意の留保の取消し
同意の留保を命ずる決定が不当なものとして取り消される場合に、事件本人
によって又は事件本人に対してされた法律行為の効力は、影響を受けない。
第307条 世話事件における費用
世話事件において、民法典第1814条から第1881条までに基づく世話措置が斥
けられ、不当なものとして取り消され、制限され、又はそのような措置につい
ての裁判がされずに手続が終結するときは、裁判所は、事件本人の出費が目的
-141-
にかなった権利の追行のために必要であった限りにおいて、その全部又は一部
を国庫に負担させることができる。
第308条 裁判の通知
(1) 裁判所は、事件本人の正当な利益を顧慮し、それが事件本人の福祉、第三
者又は公共の安全のために重大な危険を回避するために必要である限りにお
いて、裁判を、他の裁判所、官庁又はその他の公的機関に通知する。
(2) 裁判所の手続の進行中に、手続の終結前に前項による通知を必要とする知
見が得られる場合は、既に得られた知見について、この通知が遅滞なく行わ
れなければならない。
(3) 裁判所は、通知と同時に、事件本人、事件本人の手続保護人及び事件本人
の世話人に対して、通知の内容及び受領者を教示する。事件本人への教示
は、次に掲げる場合には行われない。
1.教示により、手続の目的又は通知の目的が危険にさらされるであろうと
き。
2.医師の診断によれば、これにより事件本人の健康に対する重大な不利益
があるおそれがあるとき。
3.裁判所の直接的な印象によれば、事件本人が明らかに教示の内容を理解
できる状態にないとき。
前文による事由がなくなった場合は、直ちに教示が追完されなければなら
ない。
(4) 通知の内容、その伝達の種類及び方法、その受領者、事件本人への教示、
又はそれがされない場合にはその理由並びに手続保護人及び世話人への教示
は、記録しなければならない。
第309条 住民登録署への通知
事件本人の居所の指定に及ぶ同意の留保が命じられる場合に、裁判所は、世
話人を摘示してこれを住民登録局に通知しなければならない。第1文による同
意の留保が取り消された場合、又は、世話人の変更が生じた場合も、通知がさ
れなければならない。
-142-
第309a条 世話官庁への通知
(1) 裁判所は、事件本人の死亡により世話が終了したときは、これを世話官庁
に通知しなければならない。
(2) 裁判所は、世話人の適性又は信頼性に関する事情を、世話官庁に通知する
ことができる。それと同時に、裁判所は、通知したこと及びその内容を世話
人に教示する。世話人に対する教示は、これによって通知の目的が危険にさ
らされるときは、行われない。教示は、前文による事由がなくなった場合は
直ちに追完されなければならない。
第310条 自由の剥奪を伴う収容又は措置中の通知
自由の剥奪を伴う収容又は措置の期間中、裁判所は、居所の指定又は上記の
収容措置についての決定を含む世話人の選任、その世話の取消し及び世話人に
ついてのあらゆる変更について、収容措置が実施された施設の管理者に通知し
なければならない。
第311条 刑事訴追のための通知
この法律のその他の規定、裁判所構成法施行法第16条並びに少年裁判所法第
70条第1項第2文及び第3文に掲げられた場合を除き、裁判所は、事件本人の
人物を知ることのできる裁判又は手続から得られた知見を、通知されないこと
についての事件本人の保護に値する利益が優越しない限りで、犯罪行為又は秩
序違反の追及のためにのみ、職権で、他の裁判所又は官庁に通知することがで
きる。第308条第3項及び第4項の規定は、これを準用する。
第2章 収容事件の手続
第312条 収容事件
収容事件とは、次に掲げる事項の許可又は命令に関する手続をいう(収容措置)。
1.民法典1831条第1項及び第2項の規定(同条第5項と併せて適用される
場合を含む。
)による自由剥奪を伴う収容
2.民法典1831条第4項の規定(同条第5項と併せて適用される場合を含
-143-
む。
)による自由剥奪を伴う措置
3.民法典第1832条第1項、第2項及び第4項の規定(同条第5項と併せて
適用される場合を含む。
)による強制的医療措置(病院で入院治療をする
ために収容することを含む。)、又は
4.精神病者の収容に関する州法の規定による成年者に対する自由剥奪を伴
う収容、自由剥奪を伴う措置又は強制的医療措置
第313条 土地管轄
(1) 第312条第1号から第3号までの規定による収容事件については、次に掲
げる順位で、
〔次に掲げる裁判所が〕専属管轄権を有する。
1.世話人選任の手続が開始された裁判所又は世話手続が係属している裁判所2.事件本人の常居所地を管轄する裁判所
3.収容措置の必要性が生じている地を管轄する裁判所
4.事件本人がドイツ人である場合には、ベルリンのシェーネベルク区裁判所(2) 保全命令又は保全処分については、収容措置の必要性が判明した地を管轄
する裁判所も管轄権を有する。保全命令又は保全処分の場合には、裁判所
は、前項第1号又は第2号の規定により管轄権を有する裁判所にその旨を通
知するものとする。
(3) 第312条第4号の規定による収容措置については、収容措置の必要性が生
じている地を管轄する裁判所が専属管轄権を有する。事件本人が既に自由剥
奪を伴う収容のための施設にいる場合には、施設の所在地を管轄する裁判所
が専属管轄権を有する。
(4) 収容を含む世話人選任手続が係属している裁判所以外の裁判所が、収容事
件について管轄権を有するときは、世話人選任手続が係属している裁判所
は、収容事件を管轄する裁判所に、世話の取消し、収容を職務事項とする定
めの削除及び世話人の変更を通知する。収容事件を管轄する裁判所は、他方
の裁判所に、収容措置、その変更、延長及び取消しを通知する。
-144-
第314条 収容事件の移送
裁判所は、事件本人が他の裁判所の管轄区域に滞在し、かつ、収容の措置が
その地で実施されるべき場合において、当該他の裁判所が手続を引き受ける用
意がある旨を表明したときは、収容事件を移送することができる。
第315条 関係人
(1) 次に掲げる者は関係人となる。
1.事件本人
2.世話人
3.民法典第1814条第3項第2文第1号に規定する任意代理人
(2) 手続保護人は、選任されることにより、関係人として手続に関与する。
(3) 管轄官庁は、その申立てにより、関係人として手続に参加させられなけれ
ばならない。
(4) 次に掲げる者は、事件本人の利益のために関係人となることができる。
1.事件本人とその婚姻の相手方又は生活パートナーが継続的な別居をして
いない場合における事件本人の婚姻の相手方及び生活パートナー、事件本
人がその親及び子と同居しているか、又は手続の開始時に同居していた場
合における事件本人の親及び子、並びに養親
2.事件本人が指名した、その者にとって親しい者
3.事件本人が生活する施設の管理者
州法により、その他の者及び機関が関係人となり得ることを規定すること
ができる。
第316条 手続能力
収容事件においては、事件本人は、行為能力の有無に関わらず、手続能力を
有する。
第317条 手続保護人
(1) 裁判所は、事件本人の利益を擁護するために必要なときは、事件本人のた
めに適格な手続保護人を選任しなければならない。その選任は、とりわけ事
件本人の陳述聴取を見合わせるべき場合に、必要である。医学的強制措置に
-145-
対する同意の許可又はその命令の場合には、手続保護人の選任は常に必要で
ある。
(2) 裁判所が事件本人のための手続保護人を選任しないときは、収容措置を許
可し又は命ずる裁判にその理由を付さなければならない。
(3) 手続保護人は事件本人の希望、予備的にその推定される意思を確認し、裁
判手続においてこれを主張しなければならない。手続保護人は手続の対象、
経過及び予想される帰結を、適切な方法で事件本人に知らせ、必要に応じ
て、事件本人が手続においてその権利を行使する際に、事件本人を援助しな
ければならない。手続保護人は、事件本人の法定代理人ではない。
(4) 手続保護人には自然人が選任されなければならない。職業活動として手続
保護を行う者は、名誉職として手続保護を行う用意のある適切な者がいない
場合にのみ、手続保護人に選任するものとする。
(5) 事件本人の利益が弁護士その他の適格な手続代理人によって代理されると
きは、手続保護人の選任を行わず、又はその選任を取り消すものとする。
(6) 手続保護人の選任は、それ以前に取り消されていない場合、裁判の確定そ
の他の事由による手続の終結により終了する。
(7) 手続保護人の選任又はその取消し並びにこれらの措置の拒絶に対して
は、独立して不服を申し立てることができない。
(8) 手続保護人には、費用を負担させることができない。
第318条 手続保護人の報酬と費用の償還
第277条の規定は、手続保護人の報酬と費用の償還について準用する。
第319条 事件本人に対する本人の陳述聴取
(1) 裁判所は、収容措置の前に、事件本人に対し本人の陳述聴取をし、事件本
人について本人の印象を獲得しなければならない。裁判所は、必要がある限
りで、事件本人の通常の環境において本人の印象を得る。
(2) 裁判所は、陳述聴取において、手続、送付された鑑定結果、予想される収
容期間について、事件本人と討論する。裁判所が第317条の規定により事件
本人のために手続保護人を選任したときは、本人の陳述聴取は手続保護人の
-146-
在廷の下で行うものとする。
(3) 本人の陳述聴取により事件本人の健康に重大な不利益が生ずるおそれがあ
ることを理由に、第34条第2項の規定に基づき、これを行わない場合、この
判断は医学的鑑定意見に基づいてのみすることができる。この理由により本
人の陳述聴取をしないときは、本人の印象を獲得する必要もない。
(4) 第1項の規定による手続行為は、司法共助の方法によって行わないものと
する。
(5) 裁判所は、事件本人が第1項の規定による手続行為に協力することを拒絶
したときは、管轄官庁を通じて事件本人を勾引することができる。
(6) 官庁は、裁判所が明示的に命じた場合にのみ、実力を用いることができ
る。管轄官庁は、必要な場合には、警察の執行機関の援助を求める権限を有
する。
(7) 事件本人の住居を、その同意なく、強制的に開扉し、立ち入り、捜索する
ことができるのは、裁判所がこのことを、陳述聴取のための事件本人の勾引
について明示的に命じた場合に限る。差し迫った危険があるときは、管轄官
庁が第1文の規定による命令をすることができる。この規定は、基本法第13
条第1項の規定による住居の不可侵にする基本権を制限するものである。
第320条 その他の関係人及び管轄官庁の陳述聴取
裁判所は、その他の関係人の陳述を聴取しなければならない。裁判所は、管
轄官庁の陳述を聴取するものとする。
第321条 鑑定意見の取得
(1) 収容措置の前に、その措置の必要性について、鑑定意見を取得することに
より法定の証拠調べが行われなければならない。鑑定人は、鑑定を実施する
前に、事件本人に対し本人の検査又は問診をしなければならない。鑑定意見
は、予想される収容措置の期間をも含むものとする。鑑定人は、精神科の医
師であるものとする。鑑定人は、精神科の領域で経験のある医師でなければ
ならない。医学的強制措置に対する同意の許可又はその命令の場合、鑑定人
は、強制的な治療を行う医師ではないものとする。
-147-
(2) 第312条第2号又は第4号の規定による自由剥奪を伴う措置については、
医師の診断で足りる。
第322条 検査のための勾引、鑑定のための収容
第283条及び第284条の規定は、検査のための勾引及び鑑定のための収容につ
いて準用する。
第323条 決定主文の内容
(1) 収容措置の許可又は命令をする場合、決定主文には次に掲げる事項も含む
ものとする。
1.収容措置の詳細な表示
2.収容措置が終了する時期
(2) 医学的強制措置に対する同意の許可の場合又はその命令の場合には、決定
主文に、当該措置の実施及び文書化が医師の責任であることの摘示も含むも
のとする。
第324条 決定の効力発生
(1) 収容措置の許可又は命令についての決定は、確定により効力を生ずる。
(2) 裁判所は、決定が即時に効力を生じることを命ずることができる。この場
合において、決定は、次に掲げる時点に効力を生ずる。
1.決定及び〔決定に〕即時に効力を生じさせる命令が、事件本人、手続保
護人、世話人又は民法典第1814条第3項第2文第1号に規定する任意代理
人に告知された時点
2.決定及び〔決定に〕即時に効力を生じさせる命令が、決定の執行のため
に第三者に通知された時点
3.決定及び〔決定に〕即時に効力を生じさせる命令が、告知のために裁判
所事務課に交付された時点
〔決定が〕即時に効力を生じる時点は、決定に記載されなければならな
い。
第325条 告知
(1) 決定理由の事件本人への告知は、医師の診断により、事件本人の健康に重
-148-
大な不利益が生ずることを避けるために必要である場合には、これを行わな
いことができる。
(2) 収容措置を許可し、又は命ずる決定は、事件本人が収容される施設の管理
者にも告知されなければならない。裁判所は、収容措置を許可し、命じ、又
は取り消す裁判を、管轄官庁に告知しなければならない。
第326条 収容のための引渡し、入院のための移送
(1) 管轄官庁は、第312条第1号の規定による収容のための引渡しの際に、又
は、第312条第3号の規定による移送の際に、世話人又は民法典第1814条第
3項第2文第1号に規定する任意代理人を、これらの者の求めにより援助し
なければならない。
(2) 官庁は、裁判所が裁判により明示的に命じた場合にのみ、実力を用いるこ
とができる。管轄官庁は、必要な場合に、警察の執行機関の援助を求める権
限を有する。
(3) 事件本人の住居を、その同意なく、強制的に開扉し、立ち入り、捜索する
ことができるのは、裁判所がこのことを、収容のための引渡し又は第312条
第3号の規定による移送について、明示的に命じた場合に限る。命令の前に
事件本人に対し本人の陳述聴取をしなければならない。差し迫った危険があ
るときは、管轄官庁による命令は、事前に事件本人の陳述聴取をすることな
く発することができる。この規定は、基本法第13条第1項の規定による住居
の不可侵に対する基本権を制限するものである。
第327条 執行の事務
(1) 事件本人は、第312条第4号による収容措置の執行における個々の事務の
規律のための措置に対して、裁判所の裁判を申し立てることができる。申立
てにより、斥けられ又はなされない措置の発令のための義務の負担も、要求
することができる。
(2) 申立ては、事件本人が、措置、措置の拒絶又は不作為によりその権利が侵
害されるべきことを主張する場合にのみ、することができる。
(3) 申立ては、執行を猶予する効力を有しない。裁判所は、執行を猶予する効
-149-
力を命ずることができる。
(4) 決定には、不服を申し立てることができない。
第328条 執行の中止
(1) 裁判所は、第312条第4号による収容の執行を中止することができる。中
止には、条件をつけることができる。中止は、6か月を超えないものとす
る。中止は、1年の期間まで延長することができる。
(2) 裁判所は、事件本人が条件を履行しない場合、又は、事件本人の状態がそ
れを必要とする場合には、中止を撤回することができる。
第329条 収容措置の期間及び延長
(1) 収容措置は、それが前もって延長されない場合は最長1年間の経過によ
り、明らかに長期の収容の必要性がある場合は最長2年間の経過により、終
了する。医学的強制措置の同意の許可又はその命令は、前もって延長されな
いときは、6週間の期間を超えてはならない。
(2) 最初の命令又は許可についての規定は、収容措置の許可又は命令の延長に
ついて準用する。通算して4年を超える収容においては、裁判所は、事件本
人をこれまで治療し若しくは鑑定した者又は事件本人が収容されている施設
で勤務している者を、鑑定人に任命しないものとする。
(3) 通算で12週を超える医学的強制措置の同意の許可又はその命令について
は、裁判所は、事件本人をこれまで治療し若しくは鑑定した者又は事件本人
が収容されている施設で勤務している者を、鑑定人に任命しないものとす
る。
第330条 収容措置の取消し
収容措置の許可又は命令は、その要件がなくなった場合は取り消されなけれ
ばならない。第312条第4号による収容措置を取り消す前に、裁判所は、管轄
官庁の陳述を聴取するものとする。ただし、それが、手続の少なからざる遅滞
をもたらす場合は、この限りでない。
第331条 保全命令
裁判所は、次の各号のいずれにも該当する場合は、保全命令により、仮の収
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容措置を命じ又は許可することができる。
1.収容措置の許可又は命令の要件が満たされていると解される急迫の事情
があり、かつ、即時の措置が差し迫って必要であること。
2.事件本人の状態及び措置の必要性についての医師の診断が存すること。
診断を行う医師は、精神科の医師であるものとする。医師は、精神科の領
域で経験を有していなければならない。ただし、第312条第2号及び第4
号に定める自由剥奪を伴う措置についてはこの限りでない。
3.第317条の場合において、手続保護人が選任され、かつ、その陳述が聴
取されていること。
4.事件本人に対して本人の陳述聴取がされたこと。
第319条第4項と異なり、司法共助の方法による事件本人の陳述聴取はする
ことができる。
第332条 緊急性が高まった場合における保全命令
遅滞のおそれがある場合に、裁判所は、事件本人に対する本人の陳述聴取並
びに手続保護人の陳述聴取及び選任の前であっても、前条による保全命令を発
することができる。これらの手続行為は遅滞なく追完されなければならない。
第333条 保全命令の期間
(1) 保全命令は、6週間の期間を超えてはならない。この期間が十分でない場
合は、保全命令は、鑑定人の陳述聴取をした後、さらなる保全命令により延
長することができる。複数回の延長は、第1文及び第2文の要件の下でする
ことができる。保全命令は、通算して3か月を超えてはならない。鑑定の準
備のための収容(第322条)はこの通算期間に含まれる。
(2) 保全命令は、医学的強制措置の同意の許可又はその命令の場合は、2週間
の期間を超えてはならない。複数回の延長をする場合は、通算して6週間を
超えてはならない。
第334条 保全処分
第331条、第332条及び前条は、民法典第1867条により収容措置がとられるべ
き場合について準用する。
-151-
第335条 抗告に関する補充規定
(1) 次に掲げる者は、第一審において関係人となっていた場合、事件本人のた
めに、抗告権を有する。
1.事件本人がその婚姻の相手方又は生活パートナーと継続して別居してい
ない場合には事件本人の婚姻の相手方又は生活パートナー、事件本人が親
又は子の下で生活し又は手続開始時に生活していた場合には事件本人の親
及び子、里親
2.事件本人によって指名された、事件本人が親しい者
3.事件本人が生活している施設の管理者
(2) 手続保護人は、抗告権を有する。
(3) 世話人又は事前代理人は、その職務範囲に関する裁判に対して、事件本人
の名においても、抗告を提起することができる。
(4) 管轄官庁は、抗告権を有する。
第336条 事件本人による抗告の提起
事件本人は、自己が収容されている地区の区裁判所にも、抗告を提起するこ
とができる。
第337条 収容事件における費用
(1) 収容事件において、第312条第1号から第3号までによる収容措置が斥け
られ、不当なものとして取り消され、制限され、又は措置についての裁判が
されずに手続が終結するときは、裁判所は、事件本人の費用の全部又は一部
を、それが目的にかなった訴訟追行のために必要であった限りにおいて、国
庫に負担させることができる。
(2) 第312条第4号に基づく精神病患者の収容についての州法による収容措置
の申立てが斥けられ、又は取り下げられ、かつ、管轄行政官庁が申立てを行
う理由に根拠のないことが手続によって明らかになった場合は、裁判所は、
事件本人の費用を行政官庁が属する団体に負担させなければならない。
第338条 裁判の通知
第308条及び第311条の規定は、通知について準用する。第330条第1文によ
-152-
る収容措置の取消し及び第328条第1項第1文による収容の中止は、事件本人
が生活する施設の管理者に通知されなければならない。
第339条 近親者への通知
裁判所は、収容措置の命令又は許可及びその延長を、事件本人の近親者又は
事件本人が親しい者に遅滞なく通知しなければならない。
第3章 世話裁判所の割当事件の手続
第340条 世話裁判所の割当事件
世話裁判所の割当事件とは、それが世話事件又は収容事件とならない限りに
おいて、次に掲げる手続をいう。
1.未成年者又は既に懐胎された子のための保護を除く、保護に関する手続
2.成年者のためのその他の代理人の裁判上の選任に関する手続
3.世話裁判所に割り当てられるその他の手続
第341条 土地管轄
裁判所の管轄は、世話裁判所の割当事件においては、第272条により定まる。
-153-
第4編 遺産事件及び分割事件の手続
第1章 定義、土地管轄
第342条 定義
(1) 遺産事件とは、次に掲げる事項に関わる手続をいう。
1.死因処分の特別の公の保管
2.遺産の保全(遺産保護を含む。)3.死因処分の開封
4.相続人の捜索
5.法律の規定により遺産裁判所に対してなされるべき意思表示の受領
6.相続証書、遺言執行者証明書その他、遺産裁判所により交付されるべき
証明書
7.遺言執行
8.遺産管理
9.その他法律により遺産裁判所の職務とされている職務
(2) 分割事件とは、次に掲げる事件をいう。
1.裁判所が、本編の規定にしたがい、遺産分割及び、婚姻若しくは生活
パートナーシップによる財産共同制又は継続財産共同制を終了させる合有
財産の分割において遂行しなければならない職務
2.土地登記法第36条及び第37条並びに船舶登録法第42条及び第74条の規定
による、婚姻若しくは生活パートナーシップによる財産共同制又は継続財
産共同制に服する合有財産の分割に関する証明書に係る手続
第343条 土地管轄
(1) 被相続人の死亡時の常居所地を管轄する裁判所が、土地管轄権を有する。
(2) 被相続人が、その死亡時に国内に常居所を有しなかったときは、被相続人
の国内の最後の常居所を管轄する裁判所が、管轄権を有する。
(3) 第1項及び前項による管轄が認められない場合において、被相続人がドイ
ツ人であるか、遺産帰属財産が国内に存在するときは、ベルリンのシェーネ
-154-
ベルク区裁判所が管轄権を有する。ベルリンのシェーネベルク区裁判所は、
重大な事由に基づき事件を他の遺産裁判所に移送することができる。
第344条 特別の土地管轄
(1) 遺言の特別の公の保管については、次に定める裁判所が管轄権を有する。
1.公証人の前で遺言が作成された場合について、当該公証人の職務所在地
を管轄する裁判所
2.市町村の長の前で遺言が作成された場合について、当該市町村所在地を
管轄する裁判所
3.遺言が民法典第2247条により作成された場合について、いずれの裁判所
も〔jedes Gericht〕
被相続人は、いつでも、第1文によれば土地管轄を有しない裁判所におけ
る保管を要求することができる。
(2) 第349条第2項第2文による共同遺言の新たな特別の公の保管は、先に死
亡した者の遺産について管轄権を有する裁判所において行われる、ただし、
生存している婚姻当事者又は生活パートナーが他の区裁判所における保管を
要求した場合にはこの限りではない。
(3) 第1項及び前項の規定は、相続契約の特別の公の保管について準用する。
(4) 遺産の保全については、その管轄地に保全の必要性が存在する裁判所のい
ずれもが、管轄権を有する。(4a) 遺産の分割については、被相続人の最後の常居所地を管轄する区裁判所
の管轄区域内に職務所在地を有する公証人のいずれもが、管轄権を有する。
被相続人が国内に常居所を有しなかったときは、遺産帰属財産の所在地を管
轄する区裁判所の管轄区域内に職務所在地を有する公証人のいずれもが管轄
権を有する。土地管轄権を有する複数の公証人のうち、分割の申立てを最初
に受けた公証人が、
〔遺産分割の〕仲裁を担う。分割の関係人間の合意は、
その効力を妨げられない。
(5) 財産共同制における合有財産の分割については、合有財産に対する持分が
遺産に属する場合には、当該遺産の分割について管轄権を有する公証人が、
-155-
管轄権を有する。その他の場合には、第122条第1号から第5号までにより
管轄権を有する裁判所の管轄区域内に職務所在地を有する公証人のいずれも
が、管轄権を有する。以上により管轄が認められない場合には、合有財産に
属する対象財産の所在地を管轄する区裁判所の管轄区域内に職務所在地を有
する公証人のいずれもが、管轄権を有する。前項第3文及び第4文の規定
は、これを準用する。
(6) 前条により管轄権を有する裁判所と異なる裁判所のもとで死因処分の公の
保管がされている場合には、当該裁判所〔そのもとで死因処分の公の保管が
されている裁判所〕が死因処分の開封について管轄権を有する。
(7) 相続を放棄する旨の意思表示並びに、放棄期間の徒過を取り消す旨、相続
の承認又は放棄を取り消す旨及び〔これらの〕取消しを取り消す旨の意思表
示の受領については、これらの意思表示をする者の常居所地を管轄する遺産
裁判所も管轄権を有する。意思表示についての調書の原本又は公に認証さ
れた方式によってされた意思表示の原本は、当該裁判所から、
〔第343条によ
り〕管轄権を有する遺産裁判所に送付されなければならない。
第2章 遺産事件の手続
第1節 一般的な規定
第345条 関係人
(1) 相続証書の発行手続における関係人は、申立人である。さらに次に掲げる
者を関係人に加えることができる。
1.法定相続人
2.問題となる死因処分の内容によれば、相続人として顧慮される者
3.相続権に関する訴訟が係属中の場合には、申立人の相手方
4.死因処分が無効である場合には相続人になる者
5.その遺産に対する権利が手続により直接影響を受ける、その他全ての者
これらの者は、その申立てがある場合には、関係人に加えられなければな
らない。
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(2) 前項の規定は、民法典第1507条に基づく証明書並びに、土地登記法第36条
及び第37条に基づく証明書、並びに船舶登録法第42条及び第74条に基づく証
明書の発行について準用する。
(3) 遺言執行者の選任及び、遺言執行者証書の発行の手続における関係人は、
遺言執行者である。裁判所は、次に掲げる者を関係人に加えることができ
る。
1.相続人
2.共同遺言執行者
これらの者は、その申立てがある場合には、関係人に加えられなければな
らない。
(4) その他の申立てに基づき行われるべき遺産手続〔Nachlassverfahren〕に
おいては、次に掲げる手続について、それぞれに掲げる者を関係人に加えな
ければならない。
1.遺産保護又は遺産管理について、遺産保護人又は遺産管理人
2.遺言執行者の解任について、遺言執行者
3.相続法上の期間の定めについて、その者との関係で期間が定められる者
4.財産目録作成期間の定め若しくは延長について、その者との関係で期間
が定められる相続人、並びに民法典第2008条の場合にはその婚姻の相手方
又は生活パートナー
5.宣誓に代わる保証を受けることについて、宣誓に代わる保証をすべき
者、並びに民法典第2008条の場合にはその婚姻の相手方又は生活パート
ナー
裁判所は、手続によりその権利が直接に影響を受けるその他の者全てを、
関係人として手続に参加させることができる。その申立てがある場合にはこ
れらの者は手続に参加させなければならない。
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第2節 死因処分の保管
第346条 特別の公の保管に関する手続
(1) 死因処分の特別の公の保管での引受け、及び死因処分の引渡しは、裁判官
により命令されなければならず、裁判官及び裁判所事務課の文書作成官に
よって共同で行われなければならない。
(2) 保管は、裁判官及び文書作成官が共同で封印することにより行う。
(3) 被 相 続 人 に 対 し て は、 保 管 さ れ た 死 因 処 分 に つ い て の 寄 託 証
〔Hinterlegungsschein〕が交付されるものとする、共同遺言の場合にはいず
れの被相続人も固有の寄託証を取得し、相続契約の場合には、いずれの契約
当事者も固有の寄託証を取得する。
第347条 保管についての通知
(1) 裁判所が、自筆証書遺言又は危急時遺言について特別の公の保管を開始し
た場合には、当該裁判所は、中央遺言登録簿〔Zentrale Testamentregister〕
を管理する登録官庁に対して、連邦公証人法第78d条第2項第2文の意味に
おける保管情報を電子的方法により遅滞なく通知する。前文の規定は、特
別の公の保管を受けていない自筆証書による共同遺言及び相続契約につい
て、これらが、第1死亡者の死亡の後に開封され、第1死亡者の死亡に伴い
開始する相続に関する指示のみを含むものではない場合に、準用する。
(2) 第349条第2項第2文及び第4文の規定により共同遺言又は相続契約につ
いて再び特別の公の保管が開始された場合には、第344条第2項又は第3項
により管轄権を有する裁判所が、中央遺言登録簿を管理する登録官庁に対し
て保管情報を通知する。その際、
〔以前になされた公の保管についての登録
情報が〕現存する限りは、当該登録情報に関連づけをする。
(3) 特別の公の保管の対象となった死因処分が、特別の公の保管から返還され
た場合には、特別の公の保管を実施していた裁判所が、このことを登録官庁
に通知する。
(4) (削除)
(5) (削除)
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(6) (削除)
第3節 死因処分の開封〔Eröffnung〕
第348条 遺産裁判所による死因処分の開封
(1) 裁判所は、被相続人の死亡を知った場合には直ちに、その保管下にある遺
言を開封しなければならない。開封については調書を作成しなければならな
い。死因処分が封印されていた〔verschlossen〕場合には、調書において、
封印に損傷がなかったか否かを確認しなければならない。
(2) 裁判所は、死因処分の開封のために期日を定め、法定相続人及びその他の
関係人を期日に呼び出すことができる。出席者には、死因処分の内容を口頭
で告知しなければならない。死因処分は、出席者の閲覧に供することもでき
る。要求があった場合には、出席者の閲覧に供さなければならない。
(3) 裁判所は、関係人に対し、当該関係人に関係する死因処分の内容を書面に
より告知しなければならない。ただし、前項の期日に出席した関係人につい
てはこの限りではない。
第349条 共同遺言及び相続契約の開封の場合の特則
(1) 共同遺言の開封においては、生存している婚姻当事者又は生活パートナー
の処分については、処分の内容を分けることができる限り、関係人に告知し
てはならない。
(2) 共同遺言が特別の公の保管下にあった場合には、死亡した婚姻当事者又は
生活パートナーの処分について認証された謄本が作成されなければならな
い。遺言は再び封印し、第344条第2項により管轄権を有する裁判所におい
て改めて特別の公の保管下に戻さなければならない。
(3) 遺言が先に死亡した婚姻当事者又は生活パートナーの相続についての指示
のみを内容とする場合、とりわけ遺言が、婚姻当事者又は生活パートナーを
互いに相続人にする旨の意思表示のみである場合には、前項は適用しない。
(4) 前3項の規定は、相続契約について準用する。
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第350条 他の裁判所による死因処分の開封
第344条第6項の規定により管轄権を有する裁判所が死因処分を開封した場
合には、当該裁判所は、当該死因処分及び開封調書の認証された謄本を遺産裁
判所に送らなければならない。死因処分の認証された謄本が、死因処分を開封
した裁判所の元にとどめ置かれなければならない。
第351条 死因処分の開封期間
遺言、共同遺言、又は相続契約が30年以上の期間公の保管下に置かれていた
場合には、保管をしている官署は職権により、被相続人がまだ生存しているか
どうかを確認するものとする。保管をしている官署が、被相続人がまだ生存し
ていることを確認できなかった場合には、死因処分は開封されなければならな
い。第348条から第350条までの規定を準用する。
第4節 相続証書手続、遺言執行
第352条 相続証書の交付申立てにおける摘示、正しいことの証明
(1) 法定相続人として相続証書の交付を申し立てる者は、次に掲げる事項を摘
示しなければならない。
1.被相続人の死亡時
2.被相続人の最後の常居所及び国籍
3.自己の相続権の根拠となる関係
4.自己の相続を妨げるような、又は自己の相続分を減少させるような者が
存在する又はしたか、及び存在する又はした場合には、いかなる者か
5.被相続人による死因処分が存在するか、及び存在する場合にはいかなる
死因処分か
6.自己の相続権に関する訴訟が係属しているか
7.自己が相続を承認した事実
8.自己の相続分の割合
申立人の相続を妨げたり、申立人の相続分を減少させたりする者が存在し
なくなった場合には、申立人は、その者がいかにして存在しなくなったかを
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申告しなければならない。
(2) 死因処分に基づき相続証書の交付を申し立てる者は、次に掲げる事項を摘
示しなければならない。
1.自己の相続権の根拠となる処分
2.被相続人のその他の死因処分が存在するか、及び存在する場合には、い
かなる死因処分か
3.前項第1文第1号、第2号及び第6号から第8号まで並びに第2文所定
の事項
(3) 申立人は第1項第1文第1号及び第3号並びに第2文による摘示内容が正
しいことを公文書により証明し、また、前項の場合には、自己の相続権の根
拠となる文書を提出しなければならない。これらの文書を調達することがで
きない場合及び、過度の困難をもってしか調達することができない場合に
は、他の証拠方法の摘示で足りる。被相続人が死亡時に剰余共同制の財産状
態において生活していたことの証明、並びに、その他第1項及び前項により
必要となる摘示〔の内容が正しいこと〕の証明につき、申立人は、自己の摘
示が正しいことの妨げとなる事実を知らないことについて、裁判所又は公証
人に対して宣誓に代わる保証をしなければならない。遺産裁判所は、必要が
ないと認める場合には、申立人に対して、宣誓に代わる保証をすることを免
除することができる。
第352a条 共同の相続証書
(1) 相続人が複数いる場合には、申立てに基づき、共同の相続証書が交付され
なければならない。この申立ては、相続人のそれぞれがすることができる。
(2) 申立てにおいては、相続人及びその相続分を摘示しなければならない。相
続分の摘示は、全ての申立人が、申立てにおいて、相続証書への相続分の記
載を放棄する場合には、必要ない。
(3) 申立てが全ての相続人によってなされていない場合には、申立てにおい
て、その他の相続人が相続を承認した旨の摘示がなされなければならない。
前条第3項の規定は、申立人のその他の相続人に関係する摘示についても、
-161-
適用される。
(4) 前条第3項による宣誓に代わる保証は、遺産裁判所が一人又は複数の相続
人による保証で足りると認めた場合を除き、全ての相続人がこれをしなけれ
ばならない。
第352b条 先位相続人のための相続証書の内容、遺言執行者の摘示
(1) 先位相続人に対して交付される相続証書においては、後位相続が指示され
ていること、いかなる要件の下で後位相続が開始されるか及び、誰が後位相
続人かが記載されなければならない。被相続人が、後位相続人に後位相続開
始時点での残余財産を与える旨を定めていた場合、又は先位相続人が相続財
産について自由な処分権限を有する旨を定めていた場合には、その旨が相続
証書に記載されなければならない。
(2) 被相続人が遺言執行者を指定していた場合には、その旨が相続証書に記載
されなければならない。
第352c条 対象財産を限定した相続証書
(1) 相続財産に、外国に存在する財産が属する場合には、国内に存在する財産
に限定した相続証書の交付の申立てをすることができる。
(2) その権利者の登記・登録のための登記簿又は登録簿がドイツの官庁により
運用されている財産は、国内に存在するものとみなす。その請求のための訴
えについてドイツの裁判所が管轄権を有する請求権は、国内に存在するもの
とみなす。
第352d条 公の催告
遺産裁判所は、他者に帰属する相続権の届出のための公の催告をすることが
できる。通知の方法や届出期間については、公示催告手続について適用される
規定〔第433条以下〕に従う。
第352e条 相続証書の申立てについての裁判
(1) 相続証書は、遺産裁判所が、申立てを理由づけるのに必要な事実〔の存
在〕が確認されたと判断した場合にのみ、交付することができる。その裁判
は、決定でなされる。決定は、された時に効力を生じる。決定の告知を要し
-162-
ない。
(2) 決定が関係人の表示された意思に反する場合には、決定は当該関係人に対
し告知されなければならない。この場合には裁判所は、決定の即時の効力発
生を停止し、決定の確定まで相続証書の交付を留保しなければならない。
(3) 相続証書が既に交付されていた場合には、決定に対する抗告は、相続証書
の没収が申し立てられる場合に限りすることができる。
第353条 相続証書の没収又は失効宣言〔Kraftloserkläung〕
(1) 没収のための手続において相続証書が即時に入手できない場合には、遺産
裁判所は、決定で当該相続証書の失効を宣言しなければならない。当該決定
は第435条の規定に準じて公示されなければならない。連邦公報における公
表から1か月の経過により失効宣言は効力を生じる。決定の公表後は、これ
を取り消すことはできない。
(2) 相続証書の没収又は失効宣言の手続においては、裁判所は、手続の費用に
ついて裁判しなければならない。費用についての裁判は終局裁判とともにな
されるものとする。
(3) 相続証書が既に没収されている場合には、没収決定に対する抗告は、同じ
文言の新しい相続証書の交付の申立てがなされる場合に限り、することがで
きる。いずれか不明であるときは、抗告は、同じ文言の新しい相続証書の交
付の申立てとみなす。
第354条 その他の証明書
(1) 前2条の規定は、民法典第1507条及び第2368条、土地登記法第36条及び第
37条、並びに船舶登録法第42条及び第74条による証明書の交付について準用
する。
(2) 遺言執行者が遺産の管理において制限を受ける場合又は、被相続人が、遺
言執行者が遺産について債務を負うことについて制限を受けない旨を指示し
た場合には、このことが民法典第2368条の規定による証明書において記載さ
れなければならない。
-163-
第355条 遺言執行
(1) 遺産裁判所が第三者に対し民法典第2198条第2項の規定による意思表示の
ための期間を定める決定、又は遺産裁判所が遺言執行者に指名された人物に
対し職務の受任のための期間を定める決定に対しては、民事訴訟法第567条
から第572条までの規定の準用により即時抗告をすることができる。
(2) 第40条第3項の規定は、複数の遺言執行者の意見が相違した場合に法律行
為の実施について裁判所が下す決定について準用する。抗告は2週間の期間
以内に提起されなければならない。
(3) 複数の遺言執行者が職務を共同で遂行する場合、裁判所が被相続人による
遺産の管理に関する指示を無効にする決定、及び裁判所が遺言執行者の意見
の相違について判断する決定に対しては、各遺言執行者が独立に抗告をする
ことができる。
第5節 手続に関するその他の規定
第356条 通知義務
(1) 裁判所は、子供が民法典第1640条第1項第1文及び第2項により目録を作
成しなければならない。財産を死亡を原因として取得したことを知った場合
には、当該財産取得につき家庭裁判所に通知をする。
(2) 第344条第4項の規定により裁判所が遺産の保全のための措置を命じた場
合には、このことにつき、第343条に基づき管轄権を有する裁判所に対して
連絡をするものとする。
第357条 開封された死因処分の閲覧、相続証書又はその他の証明書の正本
(1) 法律上の利益を疎明した者は、開封された死因処分を閲覧する権限を有す
る。
(2) 法律上の利益を疎明した者は、自らに対し裁判所により相続証書又はその
他の証明書の正本が交付されることを要求することができる。第354条によ
り交付された裁判所による証明書及び、遺言執行者の選任及び解任に関する
決定についても同様である。
-164-
第358条 遺言書の提出の強制
民法典第2259条の場合には、遺言の提出の命令は、決定で行われる。
第359条 遺産管理
(1) 相続人による遺産管理の命令の申立てを認める決定に対しては、不服を申
し立てることができない。
(2) 遺産債権者による遺産管理の命令の申立てを認める決定に対しては、相続
人(共同相続の場合にはそれぞれの相続人)及び、遺産を管理する権限を有
する遺言執行者のみが、抗告をすることができる。
第360条 財産目録調整期間〔Inventarfrist〕の定め
(1) 相続人に対し財産目録調整期間を定める決定に対する抗告提起のための期
間は、それぞれの遺産債権者について、財産目録調整期間の決定の申立てを
した遺産債権者に決定が知らしめられた時点から開始する。
(2) 前項の規定は、新たな財産目録調整期間の指定について判断をする決定又
は相続人による財産目録調整期間の延長の申立てについて判断をする決定に
ついて準用する。
第361条 宣誓に代わる保証
遺産債権者が、相続人に対し、民法典第2006条に規定されている宣誓に代わ
る保証をするよう要求した場合には、宣誓に代わる保証をするための期日の決
定は遺産債権者及び相続人のいずれによっても申し立てることができる。この
期日には両者が呼び出されなければならない。債権者の出席は必要ではない。
民事訴訟法第478条から第480条まで及び第483条の規定は、これを準用する。
第362条 遺留分請求権の猶予
第264条の規定は、遺留分請求権の猶予(民法典第2331a条及び第1382条)に
関する手続について準用する。
第3章 分割事件の手続
第363条 申立て
(1) 複数の相続人がいる場合には、公証人は申立てに基づき関係人の間での遺
-165-
産の分割を仲介する。ただし、分割の権限を有する遺言執行者がいる場合に
はこの限りではない。
(2) 共同相続人の全て、相続分の取得者及び、相続分に対し質権又は用益権を
有する者が申立権限を有する。
(3) 申立てにおいては関係人及び分割対象物の総体〔Teilungsmasse〕を挙げ
るものとする。
第364条 (削除)
第365条 呼出し
(1) 公証人は、申立人及びその他の関係人を審理期日に呼び出さなければなら
ない。公示送達による呼出しはすることができない。
(2) 呼出しにおいては、関係人のいずれかが欠席しても分割について審理がな
されること、及び、期日が延期された場合又は審理の続行のための新たな期
日が定められた場合には新たな期日への呼出しは行わなくてもよいことの教
示を含むものとする。分割のための資料が存在する場合には、呼出しにおい
て、資料は公証役場において閲覧することができることが教示されなければ
ならない。
第366条 裁判外の合意
(1) 出席した関係人が分割の前に合意に達した場合、とりわけ分割の方法につ
いて合意に達した場合には、公証人は、合意を文書に記録しなければならな
い。ある関係人のみが出席した場合の当該関係人による提案についても同様
である。
(2) 全ての関係人が出席した場合には、公証人は、これらの関係人の間に成立
した合意の有効性を確認しなければならない。欠席した関係人が、裁判所の
調書又は公の認証がなされた文書により同意した場合にも、同様とする。
(3) 関係人が期日に出席しなかった場合には、公証人は、当該関係人が前項第
2文による同意をしなかったときには、当該関係人に対してこの者に関係す
る文書の内容を知らせ、同時に、当該関係人に対して、文書を公証人役場に
おいて閲覧することができること及び、文書の写しを要求できることを、通
-166-
知しなければならない。当該通知においては、当該関係人が公証人が定めた
期間内に新たな期日の指定を申し立てなかった場合又は、
〔指定された〕新
たな期日に出席しなかった場合には、彼が文書の内容に同意したものとみな
される旨、教示がなされなければならない。
(4) 関係人が期間内に新たな期日の指定を申立て、かつ、彼がこの期日に出席
した場合には審理が続行されなければならない。その他の場合には、公証人
は、合意の有効性を確認しなければならない。
第367条 原状回復
原状回復についての規定(第17条、第18条及び第19条第1項)は、前条の場
合において関係人が過失なく、期間内に新たな期日の指定を申し立てること又
は、新たな期日に出席することを妨げられた場合について準用する。
第368条 分割案、確認
(1) 事件の状態に鑑み分割を行うことが可能になった場合には直ちに、公証人
は分割案を作成しなければならない。出席した関係人が分割案の内容に同意
した場合には、公証人は、分割を文書に記録〔beurkunden〕しなければな
らない。全ての関係人が出席している場合には、公証人は、分割の有効性を
確認しなければならない。欠席した関係人が、裁判所の調書又は公の認証が
なされた文書により同意した場合にも、同様とする。
(2) 欠席した関係人がいる場合には、公証人は、第366条第3項及び第4項に
従って手続を進めなければならない。前条の規定は、これを準用する。
(3) (削除)
第369条 くじによる分配
くじによる分配の合意が成立した場合には、別の定めがない限り、欠席した
関係人のために、公証人が選任した代理人がくじを引く。
第370条 争いがある場合の中止
審理において争いのある点が浮かび上がった場合には、当該争点について調
書を作成し、手続を当該争点が解決されるまで停止しなければならない。争い
のない点が文書化できる場合には、公証人は第366条並びに第368条第1項及び
-167-
第2項に従って手続を進めなければならない。
第371条 有効性が確認された合意及び分割の効力、執行
(1) 第366条第1項による合意及び第368条による分割は、有効性を確認する決
定〔Bestätigungsbeschluss〕の確定により効力を生じ、全ての関係人との関
係で契約による合意又は分割と同じように拘束力を有する。
(2) 第366条第1項による合意並びに分割に基づき、これらが効力を生じた
後、執行がなされる。民事訴訟法第795条及び第797条の規定が適用されなけ
ればならない。
第372条 上訴
(1) 第366条第3項の期間を定める決定、及び原状回復について裁判する決定
に対しては、民事訴訟法第567条から第572条までの規定の準用により、即時
抗告をすることができる。
(2) 有効性を確認する決定に対する抗告は、手続についての規定が遵守されな
かったことのみを根拠とすることができる。
第373条 財産共同制の分割
(1) 本章の規定は、婚姻若しくは生活パートナーシップによる財産共同制又は
継続財産共同制の終了による合有財産の分割について準用する。
(2) 第345条第1項並びに第352条、第352a条、第352c条から第353条まで及び
第357条の規定は、土地登記法第36条及び第37条の規定並びに船舶登録法第
44条及び第74条の規定による、婚姻による財産共同制、生活パートナーシッ
プ財産共同制、又は継続的財産共同制の合有財産の分割についての証明書を
付与し、没収し、又は失効させる手続について準用する。
-168-
第5編 
登記事件及び企業法事件の手続
(第374条〜第409条) 略第6編 その他の非訟事件の手続(第410条〜第414条) 略 -169-
第7編 自由剥奪事件の手続
第415条 自由剥奪事件
(1) 自由剥奪事件とは、手続が連邦法上異なって規律されていない限り、連邦
法に基づいて命じられた自由の剥奪に関する手続をいう。
(2) 自由の剥奪は、ある者から、その意思に反し又は意思を喪失した状態で、
とりわけ留置場又は病院の閉鎖された部分のような隔離された施設におい
て、自由が剥奪される場合に、存在する。
第416条 土地管轄
自由を剥奪されるべき者の常居所地を管轄する裁判所のほか、自由の剥奪の
必要が生じている地を管轄する裁判所が、管轄権を有する。その者が既に隔離
された施設において留置されている場合は、施設が存する地を管轄する裁判所
が、管轄権を有する。
第417条 申立て
(1) 裁判所は、管轄行政官庁の申立てによってのみ、自由の剥奪を命ずること
ができる。
(2) 申立てには理由を付さなければならない。理由は次に掲げる事実を含まな
ければならない。
1.事件本人の身元
2.事件本人の常居所
3.自由の剥奪の必要性
4.自由の剥奪が必要な期間
5.国外退去、強制送還、入国拒否のための身体拘束の手続においては、事
件本人の立退義務、並びに、国外退去、強制送還、入国拒否の要件及び貫
徹可能性
行政官庁は、国外退去のための身体拘束の手続において、申立てととも
に、事件本人の記録を提出するものとする。
(3) 前項第2文に定める事実は、最終の事実審の終了までに補充されることが
-170-
できる。
第418条 関係人
(1) 自由を剥奪される者(事件本人)及び自由の剥奪の申立てを行った行政官
庁は、関係人となる。
(2) 手続保護人は、その選任により、関係人として手続に加えられるものとす
る。
(3) 次に掲げる者は、事件本人の利益のために関係人となることができる。
1.事件本人が婚姻の相手方又は生活パートナーと継続して別居していない
場合には、事件本人の婚姻の相手方又は生活パートナー、事件本人が親及
び子の下で生活し又は手続開始時に生活していた場合には、事件本人の親
及び子、里親
2.事件本人によって指名された、事件本人の親しい者
第419条 手続保護人
(1) 裁判所は、事件本人の利益の擁護のために必要であるときは、事件本人
〔のため〕に手続保護人を選任しなければならない。選任は、とりわけ事件
本人の陳述聴取がなされないときは、必要である。
(2) 手続保護人は事件本人の希望、予備的にその推定される意思を確認し、こ
れを裁判手続において主張しなければならない。手続保護人は手続の対象、
経過及び予想される帰結を、適切な方法で事件本人に知らせ、必要に応じ
て、事件本人が手続においてその権利を行使する際に、事件本人を援助しな
ければならない。手続保護人は、事件本人の法定代理人ではない。
(3) 手続保護人の選任は、事件本人の利益が弁護士又はその他の適切な手続代
理人によって代理されているときは、なされないか、取り消されるものとす
る。
(4) 選任は、前もって取り消されていないときは、自由の剥奪についての決定
の確定又は手続のその他の終結をもって、終了する。
(5) 手続保護人の選任又は選任の取消し及びこれらの措置の拒絶に対して
は、独立に不服を申し立てることができない。
-171-
(6) 第277条の規定は、手続保護人の報酬及び費用償還について準用する。手
続保護人には、費用を負担させることができない。
第420条 陳述聴取、拘引
(1) 裁判所は、自由の剥奪を命ずる前に、事件本人に対して本人の陳述聴取を
しなければならない。事件本人が陳述聴取の期日に出頭しないときは、第33
条第3項とは異なり、事件本人の即時の拘引を命ずることができる。裁判所
は、これについて、不服申立てのできない決定によって裁判する。
(2) 事件本人に対する本人の陳述聴取は、医師の鑑定によればこれにより事件
本人の健康に対する重大な不利益が心配される場合、又は、事件本人が対感
染症保護法にいう伝染性の疾病に罹患している場合には、しないことができ
る。
(3) 裁判所はその他の関係人の陳述を聴取しなければならない。陳述聴取は、
それが著しい遅延又は不相当な費用なくしてなし得ない場合には、しないこ
とができる。
(4) 病院の隔離された部分における自由の剥奪は、鑑定医の陳述聴取後にの
み、命ずることができる。自由の剥奪の申立てをした行政官庁は、申立て
に、医師による鑑定意見を付すものとする。
第421条 決定の主文の内容
自由の剥奪を命ずる決定の主文は、次に掲げる事項をも含む。
1.自由の剥奪の詳細な表示
2.自由の剥奪が終了する時点
第422条 決定の効力発生
(1) 自由の剥奪を命ずる決定は、確定により効力を生ずる。
(2) 裁判所は、決定が即時に効力を生ずることを命ずることができる。この場
合において、決定は、次に掲げる時点に効力を生ずる。
1.決定及び〔決定に〕即時に効力を生じさせる命令が、事件本人、管轄行
政官庁若しくは手続保護人に告知された時点。
2.決定及び〔決定に〕即時に効力を生じさせる命令が、裁判所の事務課に
-172-
告知の目的で交付された時点。
〔決定が〕即時に効力を生ずる時点は、決定に記載されなければならな
い。
(3) 自由の剥奪を命ずる決定は、管轄行政官庁によって執行される。
(4) 刑事執行法第171条、第173条から第175条まで、及び、第178条第3項の規
定は、国外退去のための身体拘束の手続について滞在法第62a条に別段の定
めがある場合を除き、入国拒否のための身体拘束(滞在法第15条)又は国外
退去のための身体拘束(滞在法第62条)が、職務上の援助の方法で刑務所に
おいて執行される場合について準用する。
第423条 告知の不実施
事件本人への決定の理由の告知は、医師の診断によれば、これをしないこと
が事件本人の健康への重大な被害を避けるために必要である場合には、しない
ことができる。
第424条 執行の中止
(1) 裁判所は、自由の剥奪の執行を中止することができる。裁判所は、事前に
行政官庁及び施設の管理者の陳述を聴取しなければならない。1週間までの
中止については、裁判所の裁判を要しない。中止には、条件をつけることが
できる。
(2) 裁判所は、事件本人が条件を履行しない場合、又は、事件本人の状態がそ
れを必要とする場合には、中止を撤回することができる。
第425条 自由の剥奪の期間及び延長
(1) 自由の剥奪を命ずる決定において、他の制定法において自由の剥奪につい
てより短い最長期間が定められていない限り、自由の剥奪につき1年以内の
最長期間を定めなければならない。
(2) 期限内に、裁判官の命令によって自由の剥奪の延長が命じられないとき
は、事件本人は、解放されなければならない。解放は、裁判所に通知されな
ければならない。
(3) 最初の命令についての規定は、自由の剥奪の延長について準用する。
-173-
第426条 取消し
(1) 自由の剥奪を命ずる決定は、自由の剥奪の理由がなくなったときは、前条
第1項に定める期間の経過前に、職権によって取り消されなければならな
い。取り消す前に、裁判所は、管轄行政官庁の陳述を聴取しなければならな
い。
(2) 関係人は、自由の剥奪の取消しを申し立てることができる。裁判所は、決
定により、申立てについて裁判する。
第427条 保全命令
(1) 裁判所は、自由剥奪命令の要件が充たされていると解される急迫の事情が
あり、かつ、即時の措置が差し迫って必要である場合には、保全命令によ
り、仮の自由の剥奪を命ずることができる。仮の自由の剥奪は、6週間の期
間を超えてはならない。
(2) 遅滞による危険のある場合には、裁判所は、事件本人に対する本人の陳述
聴取並びに手続保護人の選任及び陳述聴取の前に、保全命令を発することが
できる。手続行為は遅滞なく追完されなければならない。
第428条 行政措置、裁判官による審査
(1) 自由を剥奪するものであって、かつ、裁判官の命令に基づかない全ての行
政措置に際し、管轄行政官庁は、裁判官による裁判を遅滞なく得なければな
らない。自由の剥奪が、自由の剥奪の翌日の満了までに、裁判官の裁判に
よって命じられなかった場合には、事件本人は解放されなければならない。
(2) 行政官庁の措置が前項第1文によって取り消される場合は、これについて
もこの編の規定による裁判所の手続において裁判されなければならない。
第429条 抗告についての補充規定
(1) 管轄官庁は、抗告権を有する。
(2) 次に掲げる者は、第一審において関係人となっていた場合には、事件本人
のために抗告権を有する。
1.事件本人が婚姻の相手方又は生活パートナーと継続して別居していない
場合には事件本人の婚姻の相手方又は生活パートナー、事件本人が親及び
-174-
子の下で生活し又は手続開始時に生活していた場合には事件本人の親及び
子、里親
2.事件本人によって指名された、事件本人の親しい者
(3) 手続保護人は、抗告権を有する。
(4) 事件本人が既に隔離された施設にいる場合には、抗告は、施設の存する地
区の裁判所にも提起することができる。
第430条 費用の弁償
行政官庁による自由の剥奪の申立てが斥けられ又は取り下げられ、かつ、
申立てを行う理由に根拠がなかったことが手続によって明らかになった場合に
は、裁判所は、事件本人の費用を、それが目的にかなった訴訟追行のために必
要であった限りにおいて、行政官庁が属する団体に負担させなければならな
い。
第431条 裁判の通知
第308条及び第311条の規定は、裁判の通知について準用する。この場合にお
いて、
「世話人」とあるのは、
「行政官庁」に読み替えるものとする。第426条
第1文による自由剥奪措置の取消し及び第424条第1項第1文によるその執行
の中止は、事件本人がいる隔離された施設の管理者に通知しなければならな
い。
第432条 近親者への報告
自由の剥奪及びその延長の命令について、裁判所は、事件本人の近親者又は
事件本人の親しい者に遅滞なく通知しなければならない。
-175-
第8編 公示催告事件の手続(第433条〜第484条) 略第9編 終末規定(第485条〜第493条) 略 法務資料 第469号 令和5年12月発行
法務省大臣官房司法法制部
東京都千代田区霞が関一丁目1番1号
電話 03(3580)4111(大代表)

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