令和5年度簡裁訴訟代理等能力認定考査
考 査 問 題
< 注 意 >
1 別に配布した解答用紙の該当欄に、受験地、受験番号及び氏名を必ず
記入してください。
2 考査時間は、2時間です。
3 考査問題は、記述式です。
4 問題の解答は、所定の解答用紙に記入してください。解答用紙への解
答の記入は、黒インクの万年筆又はボールペン(インクが消せるものを
除く。
)を使用してください。解答用紙の解答欄に受験者の氏名又は特
定人の答案であると判断される記載がある場合には、その解答用紙の答
案は、採点されません。また、解答用紙の筆記可能線の外側に解答をし
た場合には、当該筆記可能線の外側に記載された部分は、採点されませ
ん。
5 解答用紙に受験地、受験番号及び氏名を記載しなかった場合は、採点
されません(考査時間終了後、これらを記載することは、認められませ
ん。)。
6 解答用紙は、書き損じても、補充しません。
7 不正行為があった場合には、その解答は無効とします。
8 考査問題に関する質問には、一切お答えしません。
9 考査問題は、考査時間終了後、持ち帰ることができます。
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第1問 (別紙)記載の〔Xの言い分〕及び〔Yの言い分〕に基づき、以下の小問(1)から
小問(7)までに答えなさい。
なお、附帯請求については考慮しないものとし、物件目録については記載を要し
ない。また、令和5年4月1日において施行されている法令に基づいて解答するも
のとし、法令改正に伴う経過措置等を考慮する必要はない。さらに、借地借家法の
適用を考慮する必要はない。
小問(1) XがYに対して訴えを提起する場合の訴訟物及びその個数を解答用紙の第1欄
(1)に記載しなさい。
小問(2) 小問(1)の訴えに係る訴訟(以下「本件訴訟」という。)において、Xが訴状
に記載すべき請求の趣旨(付随的申立てを除く。)を解答用紙の第 1 欄(2)に記
載しなさい。
小問(3) 本件訴訟において、
Xが主張すべき請求原因の要件事実を解答用紙の第1欄(3)
に記載しなさい。
なお、いわゆる「よって書き」は、記載することを要しない。また、記載に当
たっては、次の【記載例】のように、1要件事実ごとに適宜番号等を付して整理
して記載し、
2請求原因が複数ある場合には請求原因ごとに分けた上で記載する
こと。なお、要件事実のうち同一のものについては、適宜、他の請求原因の要件
事実の記載を引用して差し支えない
(以下、
小問(4)及び小問(5)において同じ。)。
【記載例】
請求原因1
1 Aは、Bに対し、令和〇年〇月〇日、1000万円を贈与した。
2 ・・・
請求原因2
1 請求原因1の1と同じ。
2 ・・・
小問(4) 本件訴訟において、
Yが主張すべき抗弁について、
標題を付した上でその要件
事実を解答用紙の第1欄(4)に記載しなさい(ただし、〔Yの言い分〕の4にあ
る下線部の言い分については考慮しないものとする。)。
なお、抗弁の標題を付すに当たっては、次の【記載例】のように、1抗弁の法
的内容が分かるように記載し、2小問(3)において解答した請求原因が複数ある
場合には、どの請求原因に対する抗弁であるかを明記すること。また、抗弁につ
いては、
令和5年9月10日の本件訴訟の第2回口頭弁論において主張がされた
ものとする。
【記載例】
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錯誤による取消しの抗弁(請求原因1に対し)
1 ・・・
2 ・・・
小問(5) 本件訴訟において、
Xが主張すべき再抗弁について、
標題を付した上でその要
件事実を解答用紙の第1欄(5)に記載しなさい(ただし、〔Xの言い分〕の6に
ある下線部の言い分については考慮しないものとする。)。
なお、再抗弁の標題を付すに当たっては、1再抗弁の法的内容が分かるように
記載し、2小問(4)において解答した抗弁が複数ある場合には、どの抗弁に対す
る再抗弁であるかを明記すること。
小問(6) Yは、本件訴訟において、〔Yの言い分〕の4にある下線部の言い分を抗弁と
して主張することができるか。
判例の立場を前提とした場合の結論及びその実体
法上の理由を解答用紙の第1欄(6)に記載しなさい。
小問(7) Xは、本件訴訟において、
〔Xの言い分〕の6にある下線部の言い分を再抗弁
として主張することができるか。結論及びその理由を解答用紙の第1欄(7)に記
載しなさい。
(以下の問題は、第1問と独立した問題として解答すること。)
第2問 次の〔設例〕に基づき、以下の小問(1)から小問(4)までに答えなさい。
〔設例〕
1 Xは、Yに対し、令和4年2月1日、無利子で100万円を貸し付けた。その際、
XとYは、前記貸金の返還時期を同年12月1日と定めた。なお、XがYに貸し付け
た100万円は、Yが事業のために負担したものではない。
2 Xは、Zとの間で、令和4年2月1日、Zが前記1の貸金について連帯して保証す
る旨を合意した。当該合意は書面によってされた(以下、当該書面によってされた契
約を「本件契約」という。)。
3 令和4年12月1日は到来したが、Yは、Xに対し、前記1の貸金100万円を返
済しなかった。Xは、令和5年4月5日、Yに100万円を支払うよう催告しようと
したが、Yは既に勤務していた会社を退社しており、就業場所はおろか、Yの所在す
ら不明となっていることが判明した。また、Yにはみるべき財産がないことが判明し
た。
4 Xは、令和5年7月20日、司法書士P(簡裁訴訟代理業務を行うに必要な能力を
有する旨の法務大臣の認定を受けているものとする。)の事務所を訪れ、司法書士P
に対し、Yに貸し付けた100万円の回収方法について相談をした。
司法書士Pは、Xと話し合った上で、本件契約に基づき、Zに対し、100万円の
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支払を求める訴えを提起することとした。
5 司法書士Pは、Xの訴訟代理人として、令和5年9月15日、Zに対して100万
円の支払を求める訴えを簡易裁判所に提起した。
6 司法書士Pは、前記5の訴えが係属した後に、所有権の登記名義人がZである土地
及び給与債権に対し、保全処分を申し立てた。
小問(1) 〔設例〕
の5の下線部にある訴えの訴訟物及びその個数を解答用紙の第2欄(1)
に記載しなさい。
小問(2) 〔設例〕の5の下線部にある訴えに係る訴訟において、Xが主張すべき請求原
因の要件事実を解答用紙の第2欄(2)に記載しなさい。
なお、
記載に当たっては、
第1問小問(3)において指定されたとおりに記載すること。
小問(3) 〔設例〕の6の下線部にある保全処分に関し、以下の1から3までについて解
答しなさい。
1 司法書士Pが申し立てた保全処分及び当該保全処分を選択した理由を解答用
紙の第2欄(3)1に記載しなさい。
2 次の文は、
司法書士Pが申し立てた保全処分で疎明すべき事項についての説
明である。( ア )から( オ )までに入る文言を解答用紙の第2欄(3)
2に記載しなさい。
「保全処分が発令されるには、( ア )及び( イ )を疎明しなければな
らないとされる。本件では、( イ )として、Yに( ウ )がないことを
も疎明しなければならない。その理由は、XはYから弁済を受けるのが本来の
形態であること、Yに( ウ )がある場合にあえてZに保全処分をするまで
の必要性はないからとされる。
Zの財産のうち
( エ )
を対象として保全処分をするためには、
一般的に、
本執行を待っていては( オ )するおそれがあることの疎明が必要であり、
対象財産が( エ )しか判明していないという程度では発令されないことが
多いとされる。また、本件では、Zに( エ )以外にも財産があることから、
当該財産について、保全余力がないことを疎明しなければならない。選択した
対象財産が他の財産に比して債務者に与える損害の程度がより少ないことが要
請されるからである。」
3 次の文は、
司法書士Pが申し立てた保全処分が発令された後の手続に関する
説明である。
( ア )から( カ )までに入る文言を解答用紙の第2欄(3)
3に記載しなさい。
「本件で不動産に対して保全処分を行った場合の執行方法は、( ア )の
( イ )をする方法又は強制管理の方法によって行うとされる。( ア )
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の( イ )をする方法による場合、保全執行裁判所は、保全手続の迅速性の
観点から保全命令を発した裁判所となる。これは、本執行における執行裁判所
が不動産の( ウ )を管轄する地方裁判所となるのとは異なる。次に、本件
で債権に対して保全処分を行った場合の執行方法は、
( エ )
に対し、
( オ )
に対する弁済を禁止する命令を発する方法により行う。保全執行裁判所は、保全命令を発した裁判所である。保全命令の効力が発生するのは、保全命令が
( エ )に( カ )
された時であり、
実務上、
( オ )
に対する
( カ )
は( エ )に対する( カ )から数日後にされている。」
小問(4) 〔設例〕の1から3までの事実関係を前提として、Xは、Yに対し、消費貸借
契約に基づき、100万円の支払を求める訴えを提起したとする。この場合、Y
に対する訴状等の訴訟関係書類の送達は、
どのような方法によって行われること
となるか。解答用紙の第2欄(4)に記載しなさい。
第3問 第2問の〔設例〕の1から5までの事実関係を前提として〔設例〕の5に記載し
た訴えに係る訴訟(以下「本件訴訟」という。)の係属中に、司法書士Q(簡裁訴
訟代理業務を行うに必要な能力を有する旨の法務大臣の認定を受けているものとす
る。)は、Zから、本件訴訟の訴訟代理人となってほしいとの相談を受けたとする。
この事例に基づき、以下の小問(1)及び小問(2)に答えなさい。なお、小問(1)及び小
問(2)は、それぞれ独立した問題として解答すること。
小問(1) 司法書士Qは、
Zから相談を受ける前に、
司法書士会の無料法律相談において、
Xから、〔設例〕の1から3までの事実関係について説明を受け、今後の対応に
ついて相談をされたため、
Xに対してとり得る法的手段を具体的に教示していた
とする。この場合、司法書士Qは、Zの訴訟代理人となることができるか。結論
及びその理由を解答用紙の第3欄(1)に記載しなさい。
小問(2) 司法書士Qは、
Zから相談を受ける前に、
Xから訴外Aに対する動産引渡請求
訴訟に係る訴状の作成業務の依頼を受け、当該業務を行っていたとする(XA間
の訴訟は、既に終了しているものとする。)。この場合、司法書士Qは、Zの訴
訟代理人となることができるか。結論及びその理由を解答用紙の第3欄(2)に記
載しなさい。
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(別紙)
〔Xの言い分〕
1 私は、Yとの間で、K県に所在する別紙物件目録(省略)記載の一筆の土地(以下「本
件土地」という。)に関してトラブルになっています。Yとは、家族ぐるみで付き合い
があって、今回のトラブルがある前は仲良くしていました。私の父であるAは、Yの父
であるBの上司であったようです。
2 私は、本件土地を更地で所有しています。本件土地は、Aの父であるCが所有してい
ましたが、Cは、平成10年3月24日、Aに対し、本件土地を贈与しました。同日、
本件土地について、CからAへの所有権移転登記がされています。
Aは、その後、勤めていた会社を退職し、独りで暮らしていましたが、令和2年9月
11日、突然、亡くなってしまいましたので、私が本件土地を相続により取得したので
す。私以外にAの相続人はいませんでした。
3 私はというと、平成21年4月にL県にある大学に進学したのを機に、L県に転居し
ました。その後、L県内の企業に就職したので、L県でずっと生活をしています。この
ような生活が続きましたし、そろそろL県内に家を買おうと思っていたこともあって、
令和5年になって、本件土地を売却して家の購入資金にしようと考えました。
なお、私は、Aが亡くなった後、本件土地について相続を原因とする所有権移転登記
手続をしようとは思ってはいましたが、ずっとK県を離れてL県で生活していたことも
あって、当該手続をすることなく現在に至っています。したがって、本件土地の所有権
の登記名義人はAのままです。
4 私は、令和5年4月頃、K県に住む友人たちに本件土地を購入しないかと声を掛けた
ところ、友人のDが新しく始める事業の店舗の敷地として使用するために本件土地を代
金120万円で購入したいと申し出ました。そこで、私とDは、令和5年5月3日、本
件土地の現況を見にいったのですが、本件土地が駐車場として使用されていたのです。
本件土地に隣接した土地(以下「本件隣接地」という。)の所有者であるYが、勝手に
本件土地を駐車場として使用して占有していることが判明しました。
5 私は、令和5年5月4日、本件隣接地に住んでいるYを訪問し、本件土地について事
情を確認したところ、あろうことか、Yは、本件土地の所有者は自分であると主張して
きたのです。
6 Yの話によると、Bから50万円を借りていたAは、その返済に代えて、Bに対し、
本件土地の所有権を移転したとのことです。しかし、そんな話は考えられません。そも
そも、Aがお金に困ったことはありませんでしたし、お金に困ったとすれば、Bではな
く親族を頼ったはずです。それに、50万円の借金を返済するために、より高額な本件
土地の所有権を移転したとは考え難いです。さらに、Yの話に出てくるEは、私たち親
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族の中でつまはじき者とされていて、Aを含む親族全員がEのことを一切信用していま
せんでした。Eは初めから無権代理人であったに違いありません。
Yは、BとYが本件土地を長年占有してきたことから、時効により本件土地の所有権
を取得したとも言っています。しかし、先日、AがBとの間で締結した賃貸借契約書が
見つかりました。この賃貸借契約書には、Aが、Bに対し、平成14年7月1日、賃料
を月額10万円とし、賃貸期間を同日から平成34年6月30日(令和4年6月30日)
までとして本件土地を賃貸する旨の記載があります。BとYは、本件土地の賃借人にす
ぎません。
7 Yのせいで、Dは別の土地を購入してしまい、本件土地を売却する機会を逸してしま
いました。本件土地の所有者は私ですので、Yに対し、本件土地を明け渡すように請求
したいと考えています。
〔Yの言い分〕
1 私の父であるBは、Xの父であるAの部下でした。AとBは上司と部下の関係でした
が、Aは、私たち一家と家族ぐるみで付き合いをしていました。そのような関係があり
ましたので、私は、子どもの頃からXのことを知っており、年齢が近かったこともあっ
て仲良くしていました。
2 私は、本件隣接地上の自宅に住んでいます。これは、Bが平成15年頃に建てた家で
すが、Bが平成27年4月21日に急逝してしまったので、私が相続により取得したも
のです。なお、私以外にBの相続人はいませんでした。
3 Aが、Cから、本件土地を贈与されて、本件土地の所有権を取得したことは認めます。
もっとも、その後、Bは、Aから、貸金の返済に代えて本件土地の所有権の移転を受け
たのです。すなわち、平成13年頃、Aは、何かしらの金銭トラブルに巻き込まれてい
たようでして、現金が必要だったと聞いています。そこで、Bは、平成13年12月1
2日、Aに対し、返済期限を定めることなく、無利子で50万円を貸したとのことでし
た。Aは、その後、トラブルを回避できたようでしたが、Bに借りた50万円をそのま
ま返済するのではなく、お礼の意味を込めて本件土地の所有権を移転することとなった
のです。Aの代理人であるEが、Aのためにすることを示して、平成14年7月1日、
Bに対し、50万円の貸金の返済に代えて、本件土地の所有権を移転することにより弁
済しました。その結果、本件土地の所有権はBに移転しました。
Bは、同日以降、本件土地を駐車場として使用し、私も同じように使用しているわけ
です。
4 前記3で述べたとおり、本件土地の所有権はAからBに移転しました。そして、Bは
死亡し、私はBの相続人なのです。そもそも、本件土地の所有権の登記名義人ではない
Xが、私に対し、本件土地を返還するよう求めることなどできるのでしょうか。
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5 仮に、前記3の主張が認められないとしても、Bは、平成14年7月1日から、本件
土地を占有し、引き続き、私も本件土地を占有しています。Bが占有していた期間と私
が占有していた期間を併せた期間を前提に、私は、Xから訴訟が提起されたら、時効に
より本件土地の所有権を取得したと主張したいと思います。
Bや私が、Aから本件土地を借りていたという事実はありません。私がAに支払って
いた月額10万円は、AからK県内に所在する別の土地を借りていたため、その土地の
賃料として支払っていたものです。Xが所持している賃貸借契約書には、本件土地を賃
貸する旨の記載があるとのことですが、この記載は誤記です。実際に、Bが死亡した後
に作成した私とAとの間の賃貸借契約書が手元にありますが、この賃貸借契約書には、
本件土地ではない別の土地を賃貸する旨の記載があります。
6 いずれにせよ、本件土地の明渡しを求めるXの請求は不当です。Xは、K県からL県
に転居しており、K県とは縁を切ったにもかかわらず、本件土地の所有権を主張するな
んて虫が良すぎる話ではありませんか。

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