法務省におけるデジタル人材確保・育成計画(概要)
はじめに
法務省が担うべき施策は、観光立国実現に向けた出入国手続の迅速化・円滑化、
世界一安全な日本創造のための再犯防止対策の強化、震災復興支援や社会保障・税
に関わる番号制度への対応等のための登記インフラの充実を始めとして、国民生活
に密接に関連する広範な分野に及び、法務行政が果たすべき使命は、ますます重要
なものとなっている。これらの重要な施策を遂行するためには、土台となる情報シ
ステムの適切な開発・運用及びサイバーセキュリティ対策の総合的な強化に向けた
取組が必要不可欠である。また、先般の新型コロナウイルス感染症への対応を契機
に、法務行政のデジタル化の遅れが浮き彫りとなり、迅速なデジタル化も強く要請
されている。
このため、法務省では、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和5年6
月9日閣議決定。以下「重点計画」という。)及び「情報システムの整備及び管理
の基本的な方針」(令和3年12月24日デジタル大臣決定)に記載された事項を
着実に実施するデジタル人材の確保・育成について、
計画的に取り組む必要がある。
本計画は、上記内容を踏まえ、サイバーセキュリティ・情報化審議官等の下、情
報システムの適切な開発・運用とサイバーセキュリティ対策及びこれらと一体とな
った業務改革等に必要な体制を整備し、その担い手である、IT・セキュリティに
関する一定の専門性を有し、DXや業務改革(BPR)、データ利活用等を進める
ために必要な人材を確保・育成することを目的として、以下のとおり「法務省にお
けるデジタル人材確保・育成計画」を策定するものである。
法務省においては、本計画の着実な実施に向けて取り組むとともに、政府デジタ
ル人材の確保・育成状況等を踏まえ、必要に応じて、適切かつ柔軟に本計画の見直
しを行っていくこととする。
1 体制の整備と人材の拡充
法務省では、情報システムの適切な開発・運用とサイバーセキュリティ対策及び
これらと一体となった業務改革等に関して、平成28年度から、最高責任者である
情報化統括責任者(CIO)及び最高情報セキュリティ責任者(CISO)を補佐
し、省内全体を指揮監督するサイバーセキュリティ・情報化審議官を設置するとと
もに、同審議官を情報化統括・情報セキュリティ副責任者(副CIO・CISO)
及び法務省CSIRTの運用責任者に指名し、体制の強化を図ってきた。
その後、IT・セキュリティに係る統括部局及び情報システムを所管する部局の
うち、特に社会的な影響の大きい情報システムを所管する部局について、機構・定
員要求を行うことで体制の拡充を進めてきており、これら取組については継続して
実施していく。さらに、DXや業務改革(BPR)、データ利活用等の推進が見込
まれる部局においても必要な体制を整備できるよう、
必要な機構・定員要求を行う。
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2 有為な人材の確保
(1) 新規採用者の確保
職員を採用する際は、組織ごとの採用方法・採用基準等により、それぞれの所
掌業務において求められる適性、能力の有無等を考慮して選定することを前提と
するが、各組織の必要性に応じて、採用者のうち、「政府デジタル人材」の候補
として育成していく者については、面接において、選定要素の一つとして、IT
・セキュリティに関する知識、資格及び経験の有無、IT・セキュリティ関係業
務への意向等についても、確認する。また、各組織の必要性に応じて、人物本位
を前提として、国家公務員採用試験総合職デジタル区分及び一般職試験デジタル
・電気・電子区分合格者から積極的に採用する。
また、各組織の必要性に応じて、民間企業等においてIT・セキュリティ関係
業務に従事した経験のある者を「政府デジタル人材」の候補として採用すること
も検討することとし、その場合は、経験したIT・セキュリティ関係業務の内容
や資格等を確認するとともに、法務省における一般行政事務に従事することへの
意向等についても確認し、採用後は、一般行政事務についての育成も併せて行う
ものとする。
(2) 法務省内における人材の確保
在職中の職員についても、各組織の必要性に応じて、人事に関する面談等によ
り、IT・セキュリティ関係業務への意向、IT・セキュリティに関する業務経
験、資格、知識、スキルの有無等を確認し、その能力、適性等を踏まえた上で、
「政府デジタル人材」の候補となり得る職員を選考することとする。
(3) 法務省外からの専門人材の確保
法務省においては、データの利活用等による更なる国民の利便性向上に向けた
サービスの見直しを行う必要性に鑑み、システム刷新等のプロジェクトを完遂す
るために、民間企業等におけるIT・セキュリティ関係業務に携わった経験のあ
る者のうち、情報システムの利用、開発、運用等に特に高い専門的かつ技術的な
知識や経験を持つ人材をデジタル統括アドバイザーとして採用するなど、省外か
らの専門人材の活用を積極的に行う。
3 法務省におけるデジタル人材育成支援プログラム
法務省では、IT・セキュリティに関する一定の専門性を有する「政府デジタル
人材」の育成を図るため、「政府デジタル人材」の候補となり得る職員について、
IT・セキュリティに関する部署におけるキャリアパスを念頭に置いて、
デジタル
庁及び内閣官房内閣サイバーセキュリティセンター(以下「NISC」という。)
において実施する各種研修を受講させるとともに、デジタル庁やNISC等の省
外の機関に出向させることとする。
また、研修修了者に対しては、業務経験も踏まえスキル認定を行う。
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4 人事ルート例(キャリアパスのイメージ)
「政府デジタル人材」は、IT・セキュリティに関する一定の専門性のみならず、
法務行政に関する十分な知識・経験を有する必要があるため、その育成に当たって
は、IT・セキュリティに関係する部署における業務経験(キャリアパス)のみな
らず、
法務行政を担う各組織・部署における業務を各役職段階別に経験させるなど、
法務行政全般に関する十分な経験、知識及び能力の習得を図ることとする。
IT・セキュリティに関係する部署におけるキャリアパスの一例は、以下のとお
りである。各組織は、本計画の趣旨を踏まえた上で、以下のキャリアパスの検討を
進めるなどして、政府デジタル人材の確保・育成を行う。
(1) キャリアパス像の一例
ア 採用・係員クラス
・ 研修: レベルA及びレベルBの研修
・ 配属: 大臣官房秘書課政策立案・情報管理室又は各組織における情
報システム関連部署の係員
・ 出向: デジタル庁又はNISC
イ 係長クラス
・ 研修: レベルB以上の研修
・ 配属: 大臣官房秘書課政策立案・情報管理室又は各組織における情
報システム関連部署の係長
・ 出向: デジタル庁又はNISC
ウ 課長補佐クラス
・ 研修: レベルC以上の研修
・ 配属: 大臣官房秘書課政策立案・情報管理室又は各組織における情
報システム関連部署の室長補佐又は課長補佐
・ 出向: デジタル庁又はNISC
エ 管理職
・ 配属: 大臣官房秘書課政策立案・情報管理室又は各組織における情
報システム関連部署の室長又は課長
オ サイバーセキュリティ・情報化審議官等
・ 研修: サイバーセキュリティ・情報化審議官等研修
(2) キャリアパスの省内配属先として、IT・セキュリティについて経験すること
が想定される部署及び役職の一例
・情報システム・セキュリティについて経験することが想定される課室と役職
1 大臣官房秘書課政策立案・情報管理室
・ 室長
・ 室長補佐
・ 法務専門職
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・ 係長
・ 技術専門職
2 民事局総務課登記情報センター室
・ 室長
・ 室長補佐
・ 法務専門職
・ 係長
3 民事局商事課
(遺言書保管係)
・ 課長補佐
・ 係長
4 矯正局総務課情報通信企画官
・ 企画官
・ 課長補佐
・ 係長
5 矯正管区(東京、大阪)第一部総務課
・ 係長
6 保護局総務課
・ 課長
・ 企画調整官
(情報システム管理係、刑事情報連携係)
・ 課長補佐
・ 法務専門職
・ 係長
7 最高検察庁総務部情報システム管理室
・ 室長
・ 室長補佐
・ 係長
8 出入国在留管理庁総務課情報システム管理室
・ 室長
・ 室長補佐
・ 法務専門職
・ 係長
9 公安調査庁総務部総務課
・ 上席公安調査専門職
・ 課長補佐
・ 公安調査専門職
・ 上席調査官
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5 幹部職員を含む一般行政職員の情報リテラシー向上
近年のサイバー空間における脅威の深刻化や多様な働き方の促進を踏まえ、新た
な脅威も含めたセキュリティインシデントの発生を未然に防ぎ、また、発生したセ
キュリティインシデントに迅速かつ確実に対応する等、組織全体のセキュリティ能
力向上のためには、情報システムの適切な開発・運用、セキュリティ体制の整備、
セキュリティ対策の実施や政府デジタル人材の確保・育成だけでなく、幹部職員を
含む一般行政職員の情報リテラシー向上による底上げも必要不可欠である。
法務省では、「令和5年度法務省対策推進計画」に基づき、情報セキュリティポ
リシーに基づく教育や自己点検等をより効果的に実施するとともに、幹部職員を含
む一般行政職員のIT・セキュリティに関するリテラシー向上のために、PDCA
サイクルにのっとり、IT・セキュリティ教育の評価、内容及び実施方法の見直し、
並びに改善を行うなどして、有効なIT・セキュリティ教育を実施するとともに、
次の研修を積極的に受講させることとする。
(1) 全職員向け研修
・ 研修内容 : 情報システム統一研修(デジタル庁)
・ 受講対象者 : 一般行政職員
・ 受講予定者数: 2,000名程度(令和5年度目標。延べ人数)
・ 実施時期 : 通年
・ 実施方法 : eラーニング、集合研修又はウェブ研修
また、上記研修のほか、サイバーセキュリティ月間に合わせて、法務本省内に
所属する一般行政職員を対象とした情報セキュリティ研修(集合研修)を実施す
ることとし、一般行政職員100名以上の受講を目標とする。
(2) 標的型訓練メール
・ 受講対象者 : 法務省職員
・ 受講予定者数: 4,000名程度
・ 実施時期 : 年1回程度
・ 実施方法 : 外部委託
(3) 幹部職員向け研修
・ 受講対象者 : 省内の幹部職員(企画官級以上の職員が対象)
・ 受講予定者数: 140名程度
・ 実施時期 : 年1回程度
・ 実施方法 : 集合研修又はウェブ研修
(4) その他の各種研修等
各研修実施機関において実施している新規採用職員向け研修、管理職等の各役
職段階別研修、選抜・登用研修等の各種研修において、当該研修受講者に応じて
求められるIT・セキュリティに関するリテラシー向上のための講義、eラーニ
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ング等を実施する。
また、所管各庁等の各職場単位においても、必要性に応じて、IT・セキュリ
ティに関するリテラシー向上のための職員向け研修等を実施する。
(5) 研修教材等の提供
大臣官房秘書課政策立案・情報管理室は、必要に応じて、各研修実施機関、本
省局部課等、所管各庁等に対し、法務省独自に実施した研修若しくはデジタル庁
又はNISC等が実施した研修における教材並びにIT・セキュリティに関する
各種参考資料等を随時送付する。

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