人権の擁護 211352特集 人権擁護に関する世論調査❾ ハンセン病患者・元患者やその家族
ハンセン病患者・元患者やその家族に対する偏見や差別は、今なお社会
に根深く残っています。この偏見や差別を解消するには、ハンセン病に
関する正しい知識と、ハンセン病患者・元患者やその家族が置かれてい
る現実を理解することが必要です。
ハンセン病は、
「らい菌」に感染することで起こる感染症ですが、
「らい菌」
の感染力は弱く、非常に伝染しにくい病気です。仮に感染したとしても発病する
ことは極めてまれで、現在では治療法も確立しているため、万一発病しても、早
期に発見し適切な治療を行えば後遺症が残ることもありません。しかし、かつて
我が国で採られた強制的な隔離政策により、ハンセン病は恐ろしいという誤った
理解が国民の間に広まったことで、ハンセン病患者・元患者やその家族は、社会
からのいわれのない差別や偏見の対象となってきました。
平成13年5月、国のハンセン病政策の転換が遅れたことなどの責任を問う
「らい予防法違憲国家賠償請求訴訟」に対し、国の責任を認める熊本地方裁判所
判決が出されました。この判決
以後、政府は、平成20年6月
に成立した「ハンセン病問題の
解決の促進に関する法律」をも
踏まえ、ハンセン病に関する正
しい知識の普及啓発等に取り組
んできました。
しかし、偏見や差別の根絶に
は至らず、令和元年6月には、
患者・元患者の家族が偏見や差別の被害等を訴えた「ハンセン病家族国家賠償請
求訴訟」に対し、国の責任を認める熊本地方裁判所判決が出されました。これを
受けて、同年7月に公表された「ハンセン病家族国家賠償請求訴訟の判決受入れ
に当たっての内閣総理大臣談話」では、患者・元患者のみならず、家族に対して
も、社会において極めて厳しい偏見、差別が存在し、患者・元
患者とその家族が苦痛と苦難を強いられてきたことに対し、政
府としての深い反省とおわびが示されるとともに、家族を対象
とした新たな補償の措置を講ずること、関係省庁が連携・協力
し、患者・元患者やその家族が置かれていた境遇を踏まえた人603020100くろまる内閣府
「人権擁護に関する世論調査」 (令和4年8月調査)
から
あなたが、
ハンセン病患者・元患者やその家族に関し、
体験したことや、
身の回りで
見聞きしたことで、
人権問題だと思ったことはどのようなことですか。
複数回答(%)40 50
ハンセン病療養所の外で自立した生活を営むのが困難なこと
【22.2%】
交際や結婚を反対されること
【19.3%】
職場、
学校などで嫌がらせやいじめを受けること
【17.4%】
じろじろ見られたり、
避けられたりすること
【17.2%】
差別的な言葉を言われること
【16.7%】
就職・職場で不利な扱いを受けること
【16.3%】
治療や入院を断られること
【10.3%】
宿泊などの施設の利用や、
店舗などへの入店を拒否されること
【7.6%】
アパー
トなどへの入居を拒否されること
【7.5%】
特にない
【55.5%】
22 人権の擁護
権啓発、人権教育などの普及啓発活動の強化に取り組むことが示されました。
厚生労働省の下に有識者や当事者により構成された「ハンセン病に係る偏見
差別の解消のための施策検討会」において、令和5年3月に取りまとめられた
報告書の中でも、関係省庁が連携して啓発や相談等に関する施策を講じること
などが求められています。
法務省の人権擁護機関では、ハンセン病患者・元患
者やその家族が置かれていた境遇を踏まえた人権啓発
活動の強化に取り組んでいます。
例えば、ハンセン病問題に関するシンポジウムを開
催し、当事者の方々による講演や学生等も参加するパ
ネルディスカッションを行うとともに、シンポジウム
の内容を小学生・中学生向けの全国版新聞に掲載するなどして、元患者やその家
族の思いを広く周知しています。また、パネル展やインターネット広告を実施し
たり、啓発動画を配信したりするなど、ハンセン病についての正しい理解の普及
と偏見差別の解消に向けて、関係省庁と連携し、様々な人権啓発活動を実施して
います。ハンセン病患者等に対する差別事案については、人権相談や調査救済
活動に取り組んでいます。
しかくハンセン病患者等に対する差別待遇に関する人権侵犯事件の新規救済
手続開始件数
平成30年 令和元年 令和2年0令和3年1令和4年0ハンセン病患者等に
対する差別待遇0 1啓発動画
「ハンセン病問題
〜過去からの証言、
未来への提言〜」
啓発動画
「ハンセン病問題を知る
〜元患者と家族の思い〜」
インターネットバナー広告
シンポジウム採録記事
(読売中高生新聞)

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