いじめ
平成25年6月の
「いじめ防止対策推進法」
の成立を受け策定された
「いじめ
の防止等のための基本的な方針」
(平成29年3月改定)
に基づき、
いじめの未
然防止や早期発見・早期対応のための様々な取組が進められています。
最近のこどものいじめは、
SNS上などで行われ、
周りから
一層見えにくくなっていることに加え、
ささいなきっかけから
深刻ないじめへとエスカレートすることが少なくありません。
いじめをするこどもやいじめを見て見ぬふりをするこども
が生じる原因や背景は様々ですが、
その根底には、
他人に対
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くろまる内閣府
「人権擁護に関する世論調査」 (令和4年8月調査)
から
あなたが、
こどもに関し、
体験したことや、
身の回りで見聞きしたことで、
人権問題だと思ったことはどのようなことですか。 複数回答(%)いじめを受けること
【65.2%】
特にない
【12.0%】
児童買春・児童ポルノなどの対象となること
【23.7%】
虐待を受けること
【53.9%】
体罰を受けること
【34.8%】
いじめ、
体罰や虐待について、
周りの人が気がついているのに
何もしないこと
【56.0%】
学校や就職先の選択などに関するこどもの意見について、
大人がその意見を無視すること
【31.4%】
いじめや体罰など、こどもが被害者となる事案が後を絶ちません。
こどもは一人の人間として最大限に尊重され、守られなければなりま
せん。
文部科学省が実施した令和3年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上
の諸課題に関する調査」によれば、小・中・高等学校における暴力行為の発生件
数は7万6,441件、いじめの認知件数は61万5,351件であり、依然として憂慮
すべき状況にあります。また、令和4年に警察がいじめに起因する事件で検挙・
補導した人員は、223人となっています。
法務省の人権擁護機関が調査救済活動を行う人権侵犯事件においても、令和4
年には、学校における
いじめ事案が1,047件、
教育職員による体罰に
関する事案が75件、児
童に対する暴行・虐待
事案が216件と高水準
で推移しています。
こども〜いじめ・体罰・児童虐待・性被害〜❷4 人権の擁護
する思いやりやいたわりの希薄さがあると思われます。
お互いの異なる点を個
性として尊重するなどの人権尊重意識を養っていくことが重要です。
体 罰
体罰は、
「学校教育法」
第11条ただし書で禁止されています。
体罰は、
児童生
徒の心身に深刻な悪影響を与え、
力による解決の志向を助長し、
いじめや暴力行
為等の土壌を生むおそれがあり、
いかなる場合でも決して許されません。
児童虐待
近年、全国の児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数は一貫して増
加し、令和3年度には20万7,660件となっています。こどもの生命が奪われる
など重大な児童虐待事件も後を絶たず、児童虐待の防止は社会全体で取り組むべ
き重要な課題です。
令和4年6月には、
「児童福祉法等の一部を改正する法律」が成立し、こども
や家庭への包括的な相談支援等を行う「こども家庭センター」の設置や、訪問に
よる家事支援等のこどもや家庭を支える事業の創設を行うなど、対策の強化が進
められています。また、令和4年12月には、
「民法等の一部を改正する法律」が
成立し、親権者による懲戒権の規定の削除や、体罰等のこどもの心身の健全な発
達に有害な影響を及ぼす言動の禁止などの改正がされています。1345
しかくいじめに関する人権侵犯事件の新規救済手続開始件数
しかく教育職員による体罰に関する人権侵犯事件の新規救済手続開始件数
平成30年 令和元年 令和2年
2,955 2,944 1,126
平成30年 令和元年 令和2年
201 141 83
令和3年
1,169
令和3年51学校におけるいじめ
教育職員による体罰
平成30年 令和元年 令和2年
453 413 341
令和3年253令和4年216令和4年
1,047
令和4年75児童に対する暴行・虐待
しかく児童虐待に関する人権侵犯事件の新規救済手続開始件数2特集 人権擁護に関する世論調査
人権の擁護 5
6 人権の擁護
性被害
啓発冊子
「みんなともだち
マンガで考える
『人権』」啓発冊子「『いじめ』 させない
見逃さない」
児童買春、インターネット上における児童ポルノの氾濫等、児童を性的に商売
の道具にする商業的性的搾取や性的虐待の問題が世界的に深刻になっています。
平成26年7月に施行された「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び
処罰並びに児童の保護等に関する法律」においては、自己の性的好奇心を満たす
目的で児童ポルノを所持、保管する行為や、ひそかに児童の姿態を描写すること
により児童ポルノを製造する行為を処罰する罰則が設けられています。令和4年
4月には、教員による性暴力等からこどもを守るための措置等を定めた「教育職
員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」が施行されました。
また、AV出演被害対策など(3ページ参照)
、こどもの性被害を防止するた
めの様々な取組が行われています。
さらに、令和5年6月、
「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」等が成
立し、いわゆる性交同意年齢を13歳から16歳に引き上げるほか、16歳未満の
者に対してわいせつ目的で面会要求する行為や正当な理由なく性的な部
位・
下着などを撮影する行為が新たに処罰対象となるなど、
性被害・性暴
力の実態及びこれに対する社会の意識の変化に対応した改正が行われて
います
(詳しい改正内容は法務省ホームページをご覧ください。)。
法務省の人権擁護機関の取組
法務省の人権擁護機関では、
こどもたちの人権意識を育てるため、
「全国中学
生人権作文コンテスト」、「人権教室」や「人権の花運動」
(48ページ以下参照)
を学校等と連携し、
実施しているほか、
啓発冊子の配布や動画の配信等の様々な
人権啓発活動に取り組んでいます。
また、
平成18年度から、
全国の小・中学校の児童・生徒に
「こどもの人権SOS
ミニレター」
(便箋兼封筒)
を配布しています。
このレターを通じて先生や保護者
にも相談できないこどもの悩みごとを的確に把握し、
学校や関係機関とも連携を
法務省ホームページ
「法改正等の概要」
人権の擁護 7
こどもの人権SOSミニレター事業の取組結果について
啓発動画「『誰か』
のこと じゃない。」くろまる相談内容 いじめ・・・・・・・・・2,125件
(24.4%)
虐 待・・・・・・・・・・・311件
( 3.6%)
体 罰・・・・・・・・・・・・ 35件
( 0.4%)
その他・・・・・・・・・6,239件
(71.6%)
[内訳]
こどもの人権SOSミニレター
1,500
2,000
1,0005000
小1 小2 小3 小4 小5 小6 中1 中2 その他中3件数841
1,488
1,385
1,130
1,010
476 463
361 282
1,274
ポスター
「こどもの人権110番」1345
図りながら、
様々な人権問題の解決に当たっています。
さらに、
専用相談電話
「こどもの人権110番」
(フリ
ーダイヤル0120‐007‐110
(全国共通))や、
「イン
ターネット人権 相 談 受 付 窓口(SOS ‐ eメール)」(https://www.jinken.go.jp/kodomo)、若年層の
利用が多いSNSを活用した人権相談を通じて、
法務
局職員や人権擁護委員がこどもからの相談に応じ、こどもの人権侵害事案の早期発見に努めています。
人権相談等を通じて、
人権侵害の疑いのある事案
を認知した場合には、
人権侵犯事件として調査を行
い、
事案に応じた適切な措置を講じています。
集計期間:令和4年度
集計対象:全国の小・中学校の児童
・生徒から寄せられたこどもの人権
SOSミニレター
くろまる相談件数:8,710件
くろまる学年別相談件数2特集 人権擁護に関する世論調査
8 人権の擁護
児童虐待の相談対応件数や不登校、
小中高生の自殺、
ネットいじめの件数が
過去最高水準となるなど、
新型コロナウイルス感染症の流行が及ぼす影響とも
あいまって、
こどもや子育てを取り巻く環境は、
厳しいものとなっています。
こうしたこどもを取り巻く厳しい環境等を背景に、
令和3年12月に閣議決定
された
「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針」
において、
常にこど
もの視点に立ち、
こどもの最善の利益を第一に考え、
こどもに関する取組・政
策を我が国社会の真ん中に据える
「こどもまんなか社会」
を目指すための新た
な司令塔として、
こども家庭庁を創設することが明記されました。
これを受け、
「こども家庭庁設置法」
等が令和4年6月に成立し、
令和5年4月から、
こども
の権利利益の擁護等を任務とするこども家庭庁が設置されました。
こども家庭庁設置法等と併せて、
こども施策を社会全体で総合的かつ強力
に実施していくための包括的な基本法として
「こども基本法」
が成立し、
令和5
年4月に施行されました。
こども基本法は、
次代の社会を担う全てのこどもが、
生涯にわたる人格形成の基礎を築き、
自立した個人としてひとしく健やかに成
長することができ、
こどもの心身の状況、
置かれている環境等にかかわらず、その権利の擁護が図られ、
将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の
実現を目指し、
こども政策を総合的に推進することを目的としています。
そして、
憲法や
「児童の権利に関する条約」
(児童の権利条約、
58ページ参照)
の趣旨
を踏まえ、
こども施策に通底する基本理念として、
以下の六つを定めています。
1 全てのこどもについて、
個人として尊重されること・基本的人権が保障
されること
・差別的取扱いを受けることがないようにすること
2 全てのこどもについて、
適切に養育されること
・生活を保障されること・愛され保護されること等の福祉に係る権利が等しく保障されるとともに、
「教育基本法」
の精神にのっとり教育を受ける機会が等しく与えられること
3 全てのこどもについて、
年齢及び発達の程度に応じ、
自己に直接関係す
る全ての事項に関して意見を表明する機会・多様な社会的活動に参画す
る機会が確保されること
4 全てのこどもについて、
年齢及び発達の程度に応じ、
意見の尊重、
最善
の利益が優先して考慮されること
5 こどもの養育は家庭を基本として行われ、
父母その他の保護者が第一
義的責任を有するとの認識の下、
十分な養育の支援・家庭での養育が困難
なこどもの養育環境の確保
6 家庭や子育てに夢を持ち、
子育てに伴う喜びを実感でき
る社会環境の整備
こうした基本理念の下、
常にこどもの視点に立ち、
こどもの
最善の利益を図るための司令塔であるこども家庭庁において、
こども基本法に基づき、
政府全体のこども施策を更に強力に推
進し、
こどもの権利利益の擁護に取り組んでいます。
こども基本法
資料
人権の擁護 91345
保護者の信仰に起因したこどもの悩みの
解決に向けた取組
資料
「旧統一教会」
問題に端を発して、
社会的に問題となってい
る宗教2世・
3世と呼ばれるこどもや若者が抱える様々な悩
みについては、
取り分け被害が潜在化しやすく、
法的トラブル
に加え、
精神的な困難や貧困など複合的であることから、これらの被害を救済するため、
関係各機関が緊密な連携を図り
つつ、
適切な対策を講じることとしています。
問題解決のヒ
ントとなるQ&Aは法務省ホームページをご覧ください。
こどもは自ら声を上げることが困難であることから、
虐待やいじめなどの具
体的事象を早期に発見し、
救済につなげることが重要となります。
また、
潜在
的な悩みをすくい上げて救済につなげていくには、
教育の役割も重要です。
法務省の人権擁護機関では、
「こどもの人権110番」、「こどもの人権SOSミ
ニレター」
及びSNSによる人権相談を端緒に、
保護者の信仰に起因してこども
の権利・利益が脅かされているといった相談があれば、
これを的確に把握し、
関係機関との連携を含めて実効的な相談対応等を積極的に実施することとし
ています。
教育の観点では、
「人権教室」
を始めとするこどもを対象とした啓発
活動を推進することとしており、
特に、
人権教室では、
こどもが様々な権利の
享有主体であることの認識を得ることができるよう、
児童の権利条約(58ページ参照)
に規定されている生命、
生存及び発達に対する権利、
こどもの最
善の利益の考慮、
こどもの意見の尊重及び差別の禁止等について周知すると
ともに、
文部科学省とも連携し、
保護者の信仰に起因した潜在的な悩みを相談
できる各種の窓口を案内しています。
また、
法テラスでは、
「旧統一教会」
問題やこれと同種の問題に関する相談
に対応する
「霊感商法等対応ダイヤル」
(フリーダイヤル0120‐005931)を設置し、
こどもを含む相談者の悩みの内容等に応じて適切な窓口を案内して
います。
同ダイヤルでは、
心理的なケアを図りつつ悩みごとをこども等から丁寧
に聴取できるよう、
スクールカウンセラー等の経験を有する公認心理師が、必要に応じ、
相談に対応しています。
「旧統一教会」
問題関係省庁連絡会議においても、
こども・若者の救済に関
する施策として、
こどもを守る地域ネットワークとしての要保護児童対策地域
協議会を活用し、
個別事案について、
重層的な支援を行っていくこととしてい
ます。
引き続き、
こどもたちの
「声なき声」
を聞き漏らすことなく
救済につなげていくために、
教育・啓発や相談体制の充実を
図っていきます。2特集 人権擁護に関する世論調査
法務省ホームページ
「お悩みの解決の
ヒン
トとなるQ&A」

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