「誰か」
のこと
じゃない。
こ の 冊 子 に は、音 声 コ ー ド
(Uni‐Voice)が 各 ペ ージ(奇 数
ページ右下、
偶数ページ左下)
に印
刷されています。
Uni‐Voice アプリを使用して読み
取ると、記録されている情報を音
声で聞くことができます。
こ の 冊 子 に は、音 声 コ ー ド
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偶数ページ左下)
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刷されています。
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人権の擁護
人権の擁護
よう ご
よう ご
じん
じん けん
けん
The Protection of Human Rights
The Protection of Human Rights
はじめに
「人権」という言葉からあなたはどんな印象を受けますか。
私たちは、
「人権」
とは、
「全ての人々が生命と自由を確保し、
それぞれの
幸福を追求する権利」
あるいは
「人間が人間らしく生きる権利で、
生まれ
ながらに持つ権利」
であり、
誰にとっても身近で大切なもの、
違いを認め
合う心によって守られるものだと考えています。
また、
こどもたちに対して
は、
「命を大切にすること」、「みんなと仲良くすること」
と話しています。
「人権」
は、
誰でも心で理解し、
感じることのできるものです。
しかし、
現実の社会では、
いじめや虐待等によってこどもの命が奪われることや、
インターネット上に個人の名誉やプライバシーを侵害したり、
差別を助長
したりするような投稿がされることがあります。
また、
障害のある人や外
国人、
性的マイノリティ等に対する不当な差別や偏見、
部落差別
(同和問題)やハンセン病問題といった多様な人権問題が依然として存在してい
ます。
どうすればこのようなことをなくせるでしょうか。
この冊子では、
本年6月に公表された
「令和5年版人権教育
・啓発白書」
に基づき、
我が国の主な人権問題とその取組について説明しています。
この冊子が、
多様性が尊重され、
全ての人々がお互いの人権や尊厳を大切
にし、
生き生きとした人生を送ることのできる共生社会の実現に向けて、
様々な人権問題を、
自分以外の
「誰か」
のことではなく、
自分のこととして
考え、
人権を尊重した行動をとるきっかけとなれば幸いです。
令和5年9月
法務省人権擁護局
目 次
❶女性〜性犯罪・性暴力・DV・
ハラスメント〜
❷こども〜いじめ・体罰・児童虐待・性被害〜
❸高齢者
❹障害のある人
❺部落差別
(同和問題)
❻アイヌの人々
❼外国人
外国語による人権相談
資料
第41回全国中学生人権作文コンテスト
資料
こども基本法
資料
保護者の信仰に起因したこどもの悩みの解決に向けた取組
資料
インターネット上の書き込みなどに関する相談・通報窓口のご案内
資料
❽感染症
❾ハンセン病患者・元患者やその家族
1.主な人権課題
❶国際連合
❷世界人権宣言
❸主要な人権関係条約
資料 我が国が締結している主要な人権関係条約
5.国際社会における人権擁護
❶人権侵犯事件の調査救済
人権侵害による被害者の救済事例
内閣総理大臣賞受賞作品
❷人権相談
❸人権啓発
4.法務省の人権擁護機関の活動
❶法務省人権擁護局とその下部機関
❷人権擁護委員
3.法務省の人権擁護機関の仕組み
法務局・地方法務局 所在地等一覧
刑を終えて出所した人やその家族10犯罪被害者やその家族11インターネット上の人権侵害12北朝鮮当局によって拉致された被害者等13ホームレス14性的マイノリティ 15人身取引
(性的サービスや労働の強要等) 16震災等の災害に起因する人権問題172.特集 人権擁護に関する世論調査13245特集 人権擁護に関する世論調査
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
・・・・ 9
・・ 27
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31
・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・52
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・56
・・ 59
・・・・・・・・・・・・・・60
資料 「ビジネスと人権」
に関する我が国の取組・・・・54
2 人権の擁護
1.主な人権課題
この章では、主な人権課題とその取組を取り上げます。
女性の社会参加や活躍の機会が奪われることはあってはなりません。
また、
女性は、
性犯罪・性暴力、
DV、
ハラスメント等の対象となりや
すく、
こうした被害から守ることが必要です。
男女平等の理念は、
「日本国憲法」に明記されており、法制上も「雇用の分野
における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」等によって、男女平
等の原則が確立されています。しかし、今なお、
「男は仕事、女は家庭」といっ
た男女の役割を固定的に捉える意識が社会に根強く残っており、このことが家庭
や職場において様々な男女差別を生む一因となっています。
また、性犯罪・性暴力、配偶者等からの暴力(DV)
、職場におけるセクシュ
アルハラスメントや妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い等の問題も、近年多
く発生しています。
こうした女性の人権問題に対しては、平成28年4月に施行された「女性の職
業生活における活躍の推進に関する法律」により、国と地方公共団体、一定数の
労働者を常時雇用する事業主に対して、女性の活躍状況の把握・課題分析、数値
目標を掲げた行動計画の策定、策定した行動計画及び女性の活躍状況に関する情
報の公表等が義務付けられ、女性が職業生活において十分に能力を発揮し、活躍
できる環境を整備するための取組が進められています。また、パワーハラスメン
トの防止対策が全ての事業主に義務付けられるとともに、労働者が事業主に各種
女性〜性犯罪・性暴力・DV・ハラスメント〜❶くろまる内閣府
「人権擁護に関する世論調査」 (令和4年8月調査)
から
0 10 20 30 40 50
あなたが、
女性に関し、
体験したことや、
身の回りで見聞きしたことで、
人権問題だと思ったことはどのようなことですか。 複数回答(%)男女の固定的な役割分担意識に基づく差別的取扱いを
受けること
【47.0%】
女性が管理職になりにくいなど職場において
差別待遇を受けること
【39.0%】
ドメスティック・バイオレンス
【31.6%】
セクシュアル・ハラスメント
【42.0%】
売春・買春
【13.3%】
「令夫人」「婦人」のように女性だけに用いられる
言葉が使われること
【10.9%】
アダルトビデオなどに出演したことで被害を受けること
【8.1%】
特にない
【18.0%】
人権の擁護 3
啓発動画「『誰か』
のこと じゃない。」ポスター
「女性の人権ホッ
トライン」
ハラスメントに関する相談を行ったこと等を理由とする不利益取扱いの禁止が明
記されており、職場におけるハラスメント防止対策の強化が求められています。
女性に対する暴力等への取組の一つとして、毎年11月12日から25日までの
2週間が「女性に対する暴力をなくす運動」期間とされ、社会の意識啓発等のほ
か、都道府県に設置された配偶者暴力相談支援センターや性犯罪・性暴力被害者
のためのワンストップ支援センター等において、相談や支援が行われています。
さらに、毎年4月を「若年層の性暴力被害予防月間」と定め、SNS等を活用し
た若年層への啓発活動が行われています。また、AV出演被害対策については、
いわゆるAV出演被害防止・救済法に基づき、出演契約に係る特則等の周知、相
談支援の充実、広報啓発の実施、厳正な取締り等が推進されています。
法務省の人権擁護機関では、専用相談電話「女性の人権ホットライン」
(ナビ
ダイヤル0570‐070‐810(全国共通)
)を設置し、法務局職員や人権擁護委員
が、DVや職場等における各種ハラスメント、ストーカー被害、AV出演被害等
といった女性をめぐる様々な人権問題に関する相談に応
じ、人権侵害の疑いを認知した場合には、人権侵犯事件
として調査救済活動を行うほか、啓発動画の配信等の人
権啓発活動に取り組んでいます。
しかく女性に対する暴行・虐待に関する人権侵犯事件(注)
の新規救済
手続開始件数1345
平成30年 令和元年 令和2年
1,182 947 629
令和3年435令和4年430女性に対する暴行・虐待
(注)人権侵犯事件については、40〜44ページをご覧ください。2特集 人権擁護に関する世論調査
いじめ
平成25年6月の
「いじめ防止対策推進法」
の成立を受け策定された
「いじめ
の防止等のための基本的な方針」
(平成29年3月改定)
に基づき、
いじめの未
然防止や早期発見・早期対応のための様々な取組が進められています。
最近のこどものいじめは、
SNS上などで行われ、
周りから
一層見えにくくなっていることに加え、
ささいなきっかけから
深刻ないじめへとエスカレートすることが少なくありません。
いじめをするこどもやいじめを見て見ぬふりをするこども
が生じる原因や背景は様々ですが、
その根底には、
他人に対
0 10 20 30 40 50 60 70
くろまる内閣府
「人権擁護に関する世論調査」 (令和4年8月調査)
から
あなたが、
こどもに関し、
体験したことや、
身の回りで見聞きしたことで、
人権問題だと思ったことはどのようなことですか。 複数回答(%)いじめを受けること
【65.2%】
特にない
【12.0%】
児童買春・児童ポルノなどの対象となること
【23.7%】
虐待を受けること
【53.9%】
体罰を受けること
【34.8%】
いじめ、
体罰や虐待について、
周りの人が気がついているのに
何もしないこと
【56.0%】
学校や就職先の選択などに関するこどもの意見について、
大人がその意見を無視すること
【31.4%】
いじめや体罰など、こどもが被害者となる事案が後を絶ちません。
こどもは一人の人間として最大限に尊重され、守られなければなりま
せん。
文部科学省が実施した令和3年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上
の諸課題に関する調査」によれば、小・中・高等学校における暴力行為の発生件
数は7万6,441件、いじめの認知件数は61万5,351件であり、依然として憂慮
すべき状況にあります。また、令和4年に警察がいじめに起因する事件で検挙・
補導した人員は、223人となっています。
法務省の人権擁護機関が調査救済活動を行う人権侵犯事件においても、令和4
年には、学校における
いじめ事案が1,047件、
教育職員による体罰に
関する事案が75件、児
童に対する暴行・虐待
事案が216件と高水準
で推移しています。
こども〜いじめ・体罰・児童虐待・性被害〜❷4 人権の擁護
する思いやりやいたわりの希薄さがあると思われます。
お互いの異なる点を個
性として尊重するなどの人権尊重意識を養っていくことが重要です。
体 罰
体罰は、
「学校教育法」
第11条ただし書で禁止されています。
体罰は、
児童生
徒の心身に深刻な悪影響を与え、
力による解決の志向を助長し、
いじめや暴力行
為等の土壌を生むおそれがあり、
いかなる場合でも決して許されません。
児童虐待
近年、全国の児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数は一貫して増
加し、令和3年度には20万7,660件となっています。こどもの生命が奪われる
など重大な児童虐待事件も後を絶たず、児童虐待の防止は社会全体で取り組むべ
き重要な課題です。
令和4年6月には、
「児童福祉法等の一部を改正する法律」が成立し、こども
や家庭への包括的な相談支援等を行う「こども家庭センター」の設置や、訪問に
よる家事支援等のこどもや家庭を支える事業の創設を行うなど、対策の強化が進
められています。また、令和4年12月には、
「民法等の一部を改正する法律」が
成立し、親権者による懲戒権の規定の削除や、体罰等のこどもの心身の健全な発
達に有害な影響を及ぼす言動の禁止などの改正がされています。1345
しかくいじめに関する人権侵犯事件の新規救済手続開始件数
しかく教育職員による体罰に関する人権侵犯事件の新規救済手続開始件数
平成30年 令和元年 令和2年
2,955 2,944 1,126
平成30年 令和元年 令和2年
201 141 83
令和3年
1,169
令和3年51学校におけるいじめ
教育職員による体罰
平成30年 令和元年 令和2年
453 413 341
令和3年253令和4年216令和4年
1,047
令和4年75児童に対する暴行・虐待
しかく児童虐待に関する人権侵犯事件の新規救済手続開始件数2特集 人権擁護に関する世論調査
人権の擁護 5
6 人権の擁護
性被害
啓発冊子
「みんなともだち
マンガで考える
『人権』」啓発冊子「『いじめ』 させない
見逃さない」
児童買春、インターネット上における児童ポルノの氾濫等、児童を性的に商売
の道具にする商業的性的搾取や性的虐待の問題が世界的に深刻になっています。
平成26年7月に施行された「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び
処罰並びに児童の保護等に関する法律」においては、自己の性的好奇心を満たす
目的で児童ポルノを所持、保管する行為や、ひそかに児童の姿態を描写すること
により児童ポルノを製造する行為を処罰する罰則が設けられています。令和4年
4月には、教員による性暴力等からこどもを守るための措置等を定めた「教育職
員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」が施行されました。
また、AV出演被害対策など(3ページ参照)
、こどもの性被害を防止するた
めの様々な取組が行われています。
さらに、令和5年6月、
「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」等が成
立し、いわゆる性交同意年齢を13歳から16歳に引き上げるほか、16歳未満の
者に対してわいせつ目的で面会要求する行為や正当な理由なく性的な部
位・
下着などを撮影する行為が新たに処罰対象となるなど、
性被害・性暴
力の実態及びこれに対する社会の意識の変化に対応した改正が行われて
います
(詳しい改正内容は法務省ホームページをご覧ください。)。
法務省の人権擁護機関の取組
法務省の人権擁護機関では、
こどもたちの人権意識を育てるため、
「全国中学
生人権作文コンテスト」、「人権教室」や「人権の花運動」
(48ページ以下参照)
を学校等と連携し、
実施しているほか、
啓発冊子の配布や動画の配信等の様々な
人権啓発活動に取り組んでいます。
また、
平成18年度から、
全国の小・中学校の児童・生徒に
「こどもの人権SOS
ミニレター」
(便箋兼封筒)
を配布しています。
このレターを通じて先生や保護者
にも相談できないこどもの悩みごとを的確に把握し、
学校や関係機関とも連携を
法務省ホームページ
「法改正等の概要」
人権の擁護 7
こどもの人権SOSミニレター事業の取組結果について
啓発動画「『誰か』
のこと じゃない。」くろまる相談内容 いじめ・・・・・・・・・2,125件
(24.4%)
虐 待・・・・・・・・・・・311件
( 3.6%)
体 罰・・・・・・・・・・・・ 35件
( 0.4%)
その他・・・・・・・・・6,239件
(71.6%)
[内訳]
こどもの人権SOSミニレター
1,500
2,000
1,0005000
小1 小2 小3 小4 小5 小6 中1 中2 その他中3件数841
1,488
1,385
1,130
1,010
476 463
361 282
1,274
ポスター
「こどもの人権110番」1345
図りながら、
様々な人権問題の解決に当たっています。
さらに、
専用相談電話
「こどもの人権110番」
(フリ
ーダイヤル0120‐007‐110
(全国共通))や、
「イン
ターネット人権 相 談 受 付 窓口(SOS ‐ eメール)」(https://www.jinken.go.jp/kodomo)、若年層の
利用が多いSNSを活用した人権相談を通じて、
法務
局職員や人権擁護委員がこどもからの相談に応じ、こどもの人権侵害事案の早期発見に努めています。
人権相談等を通じて、
人権侵害の疑いのある事案
を認知した場合には、
人権侵犯事件として調査を行
い、
事案に応じた適切な措置を講じています。
集計期間:令和4年度
集計対象:全国の小・中学校の児童
・生徒から寄せられたこどもの人権
SOSミニレター
くろまる相談件数:8,710件
くろまる学年別相談件数2特集 人権擁護に関する世論調査
8 人権の擁護
児童虐待の相談対応件数や不登校、
小中高生の自殺、
ネットいじめの件数が
過去最高水準となるなど、
新型コロナウイルス感染症の流行が及ぼす影響とも
あいまって、
こどもや子育てを取り巻く環境は、
厳しいものとなっています。
こうしたこどもを取り巻く厳しい環境等を背景に、
令和3年12月に閣議決定
された
「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針」
において、
常にこど
もの視点に立ち、
こどもの最善の利益を第一に考え、
こどもに関する取組・政
策を我が国社会の真ん中に据える
「こどもまんなか社会」
を目指すための新た
な司令塔として、
こども家庭庁を創設することが明記されました。
これを受け、
「こども家庭庁設置法」
等が令和4年6月に成立し、
令和5年4月から、
こども
の権利利益の擁護等を任務とするこども家庭庁が設置されました。
こども家庭庁設置法等と併せて、
こども施策を社会全体で総合的かつ強力
に実施していくための包括的な基本法として
「こども基本法」
が成立し、
令和5
年4月に施行されました。
こども基本法は、
次代の社会を担う全てのこどもが、
生涯にわたる人格形成の基礎を築き、
自立した個人としてひとしく健やかに成
長することができ、
こどもの心身の状況、
置かれている環境等にかかわらず、その権利の擁護が図られ、
将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の
実現を目指し、
こども政策を総合的に推進することを目的としています。
そして、
憲法や
「児童の権利に関する条約」
(児童の権利条約、
58ページ参照)
の趣旨
を踏まえ、
こども施策に通底する基本理念として、
以下の六つを定めています。
1 全てのこどもについて、
個人として尊重されること・基本的人権が保障
されること
・差別的取扱いを受けることがないようにすること
2 全てのこどもについて、
適切に養育されること
・生活を保障されること・愛され保護されること等の福祉に係る権利が等しく保障されるとともに、
「教育基本法」
の精神にのっとり教育を受ける機会が等しく与えられること
3 全てのこどもについて、
年齢及び発達の程度に応じ、
自己に直接関係す
る全ての事項に関して意見を表明する機会・多様な社会的活動に参画す
る機会が確保されること
4 全てのこどもについて、
年齢及び発達の程度に応じ、
意見の尊重、
最善
の利益が優先して考慮されること
5 こどもの養育は家庭を基本として行われ、
父母その他の保護者が第一
義的責任を有するとの認識の下、
十分な養育の支援・家庭での養育が困難
なこどもの養育環境の確保
6 家庭や子育てに夢を持ち、
子育てに伴う喜びを実感でき
る社会環境の整備
こうした基本理念の下、
常にこどもの視点に立ち、
こどもの
最善の利益を図るための司令塔であるこども家庭庁において、
こども基本法に基づき、
政府全体のこども施策を更に強力に推
進し、
こどもの権利利益の擁護に取り組んでいます。
こども基本法
資料
人権の擁護 91345
保護者の信仰に起因したこどもの悩みの
解決に向けた取組
資料
「旧統一教会」
問題に端を発して、
社会的に問題となってい
る宗教2世・
3世と呼ばれるこどもや若者が抱える様々な悩
みについては、
取り分け被害が潜在化しやすく、
法的トラブル
に加え、
精神的な困難や貧困など複合的であることから、これらの被害を救済するため、
関係各機関が緊密な連携を図り
つつ、
適切な対策を講じることとしています。
問題解決のヒ
ントとなるQ&Aは法務省ホームページをご覧ください。
こどもは自ら声を上げることが困難であることから、
虐待やいじめなどの具
体的事象を早期に発見し、
救済につなげることが重要となります。
また、
潜在
的な悩みをすくい上げて救済につなげていくには、
教育の役割も重要です。
法務省の人権擁護機関では、
「こどもの人権110番」、「こどもの人権SOSミ
ニレター」
及びSNSによる人権相談を端緒に、
保護者の信仰に起因してこども
の権利・利益が脅かされているといった相談があれば、
これを的確に把握し、
関係機関との連携を含めて実効的な相談対応等を積極的に実施することとし
ています。
教育の観点では、
「人権教室」
を始めとするこどもを対象とした啓発
活動を推進することとしており、
特に、
人権教室では、
こどもが様々な権利の
享有主体であることの認識を得ることができるよう、
児童の権利条約(58ページ参照)
に規定されている生命、
生存及び発達に対する権利、
こどもの最
善の利益の考慮、
こどもの意見の尊重及び差別の禁止等について周知すると
ともに、
文部科学省とも連携し、
保護者の信仰に起因した潜在的な悩みを相談
できる各種の窓口を案内しています。
また、
法テラスでは、
「旧統一教会」
問題やこれと同種の問題に関する相談
に対応する
「霊感商法等対応ダイヤル」
(フリーダイヤル0120‐005931)を設置し、
こどもを含む相談者の悩みの内容等に応じて適切な窓口を案内して
います。
同ダイヤルでは、
心理的なケアを図りつつ悩みごとをこども等から丁寧
に聴取できるよう、
スクールカウンセラー等の経験を有する公認心理師が、必要に応じ、
相談に対応しています。
「旧統一教会」
問題関係省庁連絡会議においても、
こども・若者の救済に関
する施策として、
こどもを守る地域ネットワークとしての要保護児童対策地域
協議会を活用し、
個別事案について、
重層的な支援を行っていくこととしてい
ます。
引き続き、
こどもたちの
「声なき声」
を聞き漏らすことなく
救済につなげていくために、
教育・啓発や相談体制の充実を
図っていきます。2特集 人権擁護に関する世論調査
法務省ホームページ
「お悩みの解決の
ヒン
トとなるQ&A」 10 人権の擁護
介護の際に虐待を受けた、無断で財産を処分されたなどの事案が発生
しています。豊かな知識と経験を基にこれからも社会に貢献したい、
地域の人たちと交流し、趣味を楽しみたい...。高齢者が生き生きと暮
らせる社会の実現を目指して、高齢者についての理解を深め、高齢者
を大切にする心を育てる必要があります。
高齢者❸ 我が国は、平均寿命の
大幅な伸びや少子化等を
背景として、人口の4人
に1人が65歳以上の者
となっています。このよ
うな中、介護者等による
身体的・心理的虐待とい
った高齢者の人権問題が
大きな社会問題となって
います。
平成7年12月、国民
一人一人が生涯にわたっ
て安心して生きがいを持って過ごすことができる社会を目指して「高齢社会対策
基本法」が施行され、平成8年7月には、同法に基づき、
「高齢社会対策大綱」
が策定されました(現行の大綱は平成30年2月閣議決定)。 また、
高齢者の尊厳を守るため、
平成18年4月に施行された
「高齢者虐待の防
止、
高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」
に基づき、
高齢者虐待の防止
や虐待の早期発見・早期対応のための施策が進められています。
さらに、
平成30年12月には、
「障害の有無、
年齢等にかかわらず、
国民一人一人
が、
社会の対等な構成員として、
その尊厳が重んぜられるとともに、
社会のあらゆ
る分野における活動に参画する機会の確保を通じてその能力を十分に発揮し、
もって国民一人一人が相互に人格と個性を尊重しつつ支え合い
ながら共生する社会」
の実現に向けて、
「ユニバーサル社会の
実現に向けた諸施策の総合的かつ一体的な推進に関する法
律」
が施行されました。
同法に基づいて、
関係省庁が連携しな
0 10 20 30 40 50
くろまる内閣府
「人権擁護に関する世論調査」 (令和4年8月調査)
から
あなたが、
高齢者に関し、
体験したことや、
身の回りで見聞きしたことで、
人権問題だと思ったことはどのようなことですか。 複数回答(%)悪徳商法、
特殊詐欺の被害が多いこと
【44.7%】
高齢者が邪魔者扱いされること
【31.7%】
働く能力を発揮する機会が少ないこと
【28.4%】
経済的に自立が困難なこと
【27.9%】
病院での看護や介護施設において劣悪な処遇や虐待を受けること
【33.6%】
アパー
トなどへの入居を拒否されること
【22.2%】
高齢者の意見や行動が尊重されないこと
【14.9%】
特にない
【13.5%】
家庭内での看護や介護において嫌がらせや虐待を受けること
【22.0%】
差別的な言葉を言われること
【17.8%】
人権の擁護 11
啓発冊子
「ともに生きる時代へ 高齢社会と人権」
啓発動画「
『誰か』のこと じゃない。
−支え合う共生社会の実現に向けて−」
がら、
ユニバーサル社会の実現に向けた取組を推進しています。
加えて、
令和元年6月に取りまとめられた
「認知症施策推進大綱」
に基づき、認知症になっても希望を持って日常生活を過ごせる社会を目指し、
認知症の方や家
族の視点を重視しながら、
「共生」と「予防」
を車の両輪とした施策を推進してい
ます。
法務省の人権擁護機関では、
高齢者を含む全ての人々の人権が尊重される社会
の実現に向けて、
啓発冊子の配布や動画の配信等の各種人権啓発活動を実施し
ています。
また、
普段、
法務局に出向くことが困難な入所者やその家族が、
施設内で気軽
に相談できるよう、
老人福祉施設等の社会福祉施設において、
特設の人権相談所
を開設するなどの取組を行っています。
そのほか、
高齢者と身近に接する機会の多い社会福祉事業従事者等に対し
て、
人権相談活動について周知・説明し、
人権侵害事案を認知した場合の情報提
供を呼び掛けるなど連携を図っています。 1345
平成30年 令和元年 令和2年
319 251 185
高齢者に対する暴行・虐待
42 31 23
令和3年13116
令和4年8123
高齢者福祉施設における
人権侵犯
しかく高齢者に関する人権侵犯事件の新規救済手続開始件数2特集 人権擁護に関する世論調査
12 人権の擁護
障害のある人が車椅子での乗車を拒否されたり、アパートの入居を断
られたりする事案が発生しています。障害のある人に対する十分な理
解と配慮が必要です。
障害のある人❹職場、
学校などで嫌がらせやいじめを受けること
【43.3%】
差別的な言葉を言われること
【38.9%】
じろじろ見られたり、
避けられたりすること
【40.7%】
就職・職場で不利な扱いを受けること
【38.2%】
交際や結婚を反対されること
【19.0%】
宿泊施設や公共交通機関の利用、
店舗などへの入店を拒否されること
【13.2%】
スポーツ・文化活動・地域活動に気軽に参加できないこと
【14.9%】
アパー
トなどへの入居を拒否されること
【12.5%】
特にない
【18.4%】
悪徳商法の被害が多いこと
【8.8%】
あなたが、
障害者に関し、
体験したことや、
身の回りで見聞きしたことで、
人権問題だと思ったことはどのようなことですか。
障害のある人を含む全
ての人々にとって住みよ
い平等な社会づくりを進
めていくためには、国や
地方公共団体が障害のあ
る人に対する各種施策を
実施していくだけでな
く、社会の全ての人々が
障害のある人について十
分に理解し、必要な配慮をしていくことが求められています。
「障害者基本法」では、
「共生社会」の理念の普及を図るため、毎年12月3日か
ら9日までの期間を「障害者週間」と定めており、この期間を中心に、国、地方
公共団体が民間団体等と連携し、全国各地で様々な行事や取組を集中的に開催し
ています。
また、障害のある人の尊厳を守るため、平成24年10月に施行された「障害者
虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づき、障害者虐
待の防止や虐待の早期発見、早期解決のための施策が進められています。
平成28年4月に施行された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法
律」に基づき、各行政機関等や事業者において、不当な差別的取扱いの禁止や合
理的配慮の提供を始めとする、障害を理由とする差別の解消に向けた取組が行わ
れており、令和3年5月には、事業者による合理的配慮の提供についての努力義
務を義務へと改めることなどを内容とする改正法が成立しました(令和6年4月
1日に施行)。 平成29年2月には、東京オリンピック・パラリンピック競
技大会を契機として、
「心のバリアフリー」とユニバーサルデ
ザインの街づくりを推進することなどを定めた「ユニバーサ
ルデザイン2020行動計画」が策定され、この計画に基づき、
障害のある人やその支援団体の評価結果をも踏まえながら、
0 10 20 30 40 50
くろまる内閣府
「人権擁護に関する世論調査」 (令和4年8月調査)
から
複数回答(%) 人権の擁護 13
啓発冊子
「障害のある人と人権」
啓発動画「『誰か』
のこと じゃない。」施策の実施・改善等が図られてきたほか、平成30年12月に施行された「ユニ
バーサル社会の実現に向けた諸施策の総合的かつ一体的な推進に関する法律」
の下、ユニバーサル社会の実現に向けた取組が推進されています。
令和4年5月には、全ての障害のある人が、あらゆる分野の活動に参加する
ことができるよう「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施
策の推進に関する法律」が施行されました。
政府は、全ての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく相互に人
格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、障害者基本法に基
づき策定された「障害者基本計画(第5次)」に沿って、障害のある人の自立及
び社会参加の支援等のための施策を推進しています。
法務省の人権擁護機関では、車椅子や障害者スポーツ体験、パラリンピアン
による講話と組み合わせた人権教室など、様々な人権啓発活動に取り組んでい
ます。
また、普段、法務局に出向くことが困難な入所者やその家族が、施設内で気
軽に相談できるよう、障害者支援施設等において、特設の人権相談所を開設す
るなどの取組を行っています。さらに、障害のある人と身近に接する機会の多
い社会福祉事業従事者等に対して、人権相談活動について周知・説明し、人権
侵害事案を認知した場合の情報提供を呼び掛けるなど連携を図っています。1345
平成30年 令和元年 令和2年
235 163 125
40 38 28
令和3年11222
令和4年10727
障害のある人に対する
差別待遇
障害者福祉施設における
人権侵犯
しかく障害のある人に関する人権侵犯事件の新規救済手続開始件数2特集 人権擁護に関する世論調査
14 人権の擁護
「あの人は同和地区出身だから...。」「部落出身だから...。」などと
言われて結婚を妨げられたり、差別的な発言や落書きがされたりする
などの事案が依然として存在しています。部落差別(同和問題)
を解
消することが必要です。
部落差別
(同和問題)
は、
日本社会の歴史的過程で形作られた身分差別によ
り、
日本国民の一部の人々が、
長い間、
経済的、
社会的、
文化的に低い状態に置か
れることを強いられ、
同和地区と呼ばれる地域の出身者であることなどを理由に結
婚を反対されたり、
就職などの日常生
活の上で差別を受け
たりするなどしてい
る、
我が国固有の人
権問題です。
この問題の解決を
図るため、
国は、地方公共団体と共に、
昭和44年から33年間、
特別措置法に基づき、
地域改善対策を行ってきました。
その結果、
同和地区の劣悪な環境に対する物的な基盤整備は着実に成果を上げ、
一般地区との格差は大きく改善されました。
しかしながら、
インターネット上の差別的な書き込み等の事案は依然として存
在しています。
平成28年12月に施行された
「部落差別の解消の推進に関する法
律」
(部落差別解消推進法)
に基づき実施し、
令和2年6月に公表した部落差別の
実態に係る調査の結果
(https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken04̲00127.
html)
においても、
部落差別
(同和問題)
に関する正しい理解が進む一方で、
イン
ターネット上で特定個人や不特定者を対象とする誹謗中傷等
の差別的表現が書き込まれたり、
結婚・交際の場面における
差別的取扱いの事案が発生したりするなど、
偏見・差別意識
が依然として残っていることや、
インターネット上で部落差別
関連情報を閲覧した者の一部には差別的な動機が見られるこ
部落差別(同和問題)❺部落差別(同和問題)
0 10 20 30 40 50
くろまる内閣府
「人権擁護に関する世論調査」 (令和4年8月調査)
から
部落差別・同和問題に関し、
体験したことや、
身の回りで見聞きしたことで、
人権問題だと思った
ことはどのようなことですか。 部落差別・同和問題を知っているとする者に、
複数回答(%)交際や結婚を反対されること
【40.4%】
差別的な言葉を言われること
【32.3%】
就職・職場で不利な扱いを受けること
【27.5%】
身元調査をされること
【24.3%】
インターネッ
トを利用して差別的な情報が掲載されること
【14.9%】
差別的な落書きや貼り紙などをされること
【12.5%】
えせ同和行為が行われること
【12.0%】
特にない
【24.3%】
人権の擁護 15
啓発動画「『誰か』
のこと
じゃない。」となどが明らかとなっています。
部落差別
(同和問題)
については、
同法及び附帯
決議のほか、
上記の調査結果を踏まえ、
適切に対応していくことが必要です。
法務省の人権擁護機関では、
部落差別
(同和問題)
解消のため、
部落差別解消
推進法の施行を周知するとともに、
啓発動画を配信するなどの各種人権啓発活
動に取り組んでいます。
また、
部落差別
(同和問題)
をめぐる人権侵害事案に対
し、
人権相談及び人権侵犯事件の調査・処理を通じ、
その被害の救済及び予防を
図っています。
関係行政機関からの通報等により、
インターネット上で特定の地域
を同和地区であると指摘するなどの内容の情報を認知した場合は、
違法性を判
断した上で、
その情報の削除をプロバイダ等に要請するなど、
適切な対応に努め
ています。
えせ同和行為の排除
しかく部落差別(同和問題)に関する人権侵犯事件の新規救済手続開始件数
平成30年 令和元年 令和2年244令和3年308令和4年433部落差別
(同和問題)に関する人権侵犯
92 221
部落差別(同和問題)の解消を阻む大きな要因になっているものに、いわゆ
るえせ同和行為の横行があります。これは、同和問題を口実にして企業や官公
署等に不当な利益や義務のないことを求める行為(例えば、高額の書籍を売り
つけるなど)を指します。
えせ同和行為に対しては、行政機関や企業等が密接に連携し、不当な要求に
は、き然とした態度をとることなどが必要です。
国は、昭和62年に全省庁参加の下、
「えせ同和行為対策中央連絡協議会」を設
置し、また、地方においても、全国の法務局・地方法務局を事務局として「えせ
同和行為対策関係機関連絡会」を設置するなど、えせ同和行為を排除するため
の取組を行っています。
また、法務省では、えせ同和行為への具体的な対応に関する手引を作成し、
法務省ホームページで公開(https://www.moj.go.jp/co
ntent/001361670.pdf)するとともに、えせ同和行為の実
態を把握するため、昭和62年から11回にわたってアンケート
調査を実施しています(直近の平成30年度の調査結果は、
https://www.moj.go.jp/content/001290375.pdf)。13452特集 人権擁護に関する世論調査 16 人権の擁護
アイヌの人々に対する理解を深め、偏見や差別をなくすことが必要
です。
アイヌの人々❻ アイヌの人々は、
固有の言語や伝統的な儀式・祭事、
「ユカラ」
などの多くの口
承文芸等、
独自の豊かな文化を持っていますが、
近世以降のいわゆる同化政策
等により、
今日では、
その文化の十分な保存・伝承が図られているとは言い難い
状況にあります。
特に、
アイヌ語を理解し、
アイヌの伝統等を担う人々の高齢化が
進み、
これらを次の世代に継承していく上での重要な基盤が失われつつあります。
政府は、
平成19年9月に採択された
「先住民族の権利に関する国際連合宣
言」
や、
平成21年7月の
「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」
による報
告を踏まえ、
総合的かつ効果的なアイヌ政策を推進しています。
また、
令和元年5月に施行された
「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実
現するための施策の推進に関する法律」
では、
アイヌの人々が民族としての誇り
を持って生活することができ、
その誇りが尊重される社会を実現することを目的
として、
アイヌの人々への、
アイヌであることを理由とした差別の禁止に関する基
本理念や、
アイヌ政策を総合的かつ継続的に実施するための支援措置などが定
められています。
政府は、
同法に基づき、
従来の文化振興や福祉政策に加え、地域振興、
産業振興、
観光振興を含めた施策を推進しています。
令和2年7月、
アイヌ文化の復興・創造の拠点として、
北海道白老郡白老町に
「民族共生象徴空間」
(愛称:ウポポイ)
が開業しました。
こちらは、
アイヌの暮
らしや伝統芸能を様々な視点から体感することのできる場となっています。
法務省の人権擁護機関では、
アイヌの人々に対する理解と認識を深め、
アイヌ
の人々に対する偏見や差別の解消を目指して、
啓発動画を配信するなどの様々な
人権啓発活動に取り組んでいます。
また、
令和4年5月から
「アイヌの方々のため
の相談事業」
との連携を開始するなど、
人権相談や調査救済活動に取り組んで
います。
人権の擁護 17
20 40 60020 40 60 800くろまる内閣官房・内閣府「アイヌに対する理解度に関する世論調査」
アイヌの人々に対する差別や偏見の有無
差別や偏見があると思う理由 差別や偏見が「あると思う」と答えた者に、
複数回答(%)(令和4年11月調査)
から1345
令和2年0令和3年0令和4年1アイヌの人々に対する
差別待遇
平成30年 令和元年0 0しかくアイヌの人々に対する差別待遇に関する人権侵犯事件の
新規救済手続開始件数
しかくアイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律
(平成31年法律第16号)
第4条 何人も、アイヌの人々に対して、アイヌであることを理由として、差別
することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。
啓発動画
「アコロ青春 a=kor
アコロ
〔アイヌ語で「私たちの」〕」2特集 人権擁護に関する世論調査
経済格差や教育格差があるイメージがあるから
【27.9%】
友人・知人など身近な人が差別を受けているから
【2.3%】
報道などを通じてアイヌの人々が差別を受けているという話を聞いたことがあるから
【62.8%】
昔、
学校の授業でアイヌの人々が差別を受けていると聞いて、
今もそのイメージがあるから
【27.6%】
自分のこどもから、
学校の授業でアイヌの人々が差別を受けていることを学んだと聞いたから
【1.5%】
漠然と差別や偏見があるイメージがあるから
【39.9%】
わからない
【49.7%】
あると思う
【21.3%】
ないと思う
【28.7%】
18 人権の擁護
啓発動画「『誰か』
のこと
じゃない。」啓発冊子
(マンガ)
「私たちの身近にある
ヘイ
トスピーチ」
啓発動画
「ヘイトスピーチ、
許さない。
(インターネット編)」外国人❼文化等の多様性を認め、外国人の生活習慣等を理解・尊重し、偏見や
差別をなくしていく必要があります。
我が国に在留する外国
人は、
令和4年末現在で
約308万人であり、
過去
最高となっています。
こう
した中、
言語、
宗教、
習慣
等の違いから、
外国人を
めぐって様々な人権問題
が発生しています。
法務省の人権擁護機関では、
多くの言語に対応した
「外国語人権相談ダイヤ
ル」、「外国語インターネット人権相談受付窓口」
及び
「外国人のための人権相談
所」
を設置して人権相談に応じるほか、
外国人に対する偏見や差別の解消を目指
して、
人権啓発活動や調査救済活動に取り組んでいます。
また、
特定の民族や国籍の人々を排斥する差別的言動が、
いわゆるヘイトスピー
チであるとして社会的に関心を集めたことから、
平成28年6月に
「本邦外出身者
に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」
が施行され
ましたが、
ヘイトスピーチは今もなお解消されていません。
こうした言動は、
人々
に不安感や嫌悪感を与えるだけでなく、
人としての尊厳を傷つけたり、
差別意識を
生じさせたりすることになりかねず、
許されるものではありません。
なお、
同法が
審議された国会の附帯決議のとおり、
「本邦外出身者」
に対するものであるか否
かを問わず、
国籍、
人種、
民族等を理由として、
差別意識を助長し又は誘発する目
的で行われる排他的言動は決してあってはならないものです。
法務省の人権擁護機関では、
関係省庁や地方公共団体との情報共有も行いなが50403020100
くろまる内閣府
「人権擁護に関する世論調査」 (令和4年8月調査)
から
あなたが、
日本に居住している外国人に関し、
体験したことや、
身の回りで見聞き
したことで、
人権問題だと思ったことはどのようなことですか。 複数回答(%)風習や習慣などの違いが受け入れられないこと
【27.8%】
就職・職場で不利な扱いを受けること
【22.1%】
差別的な言葉を言われること
【19.5%】
職場、
学校などで嫌がらせやいじめを受けること
【19.1%】
じろじろ見られたり、
避けられたりすること
【18.8%】
アパー
トなどへの入居を拒否されること
【12.5%】
交際や結婚を反対されること
【12.3%】
宿泊などの施設の利用や、
店舗などへの入店を拒否されること
【5.1%】
特にない
【38.3%】
人権の擁護 19
令和2年60令和3年59令和4年47外国人に対する差別待遇
平成30年 令和元年
62 72
しかく外国人に対する差別待遇に関する人権侵犯事件の新規救済手続開始件数
(注記)この電話は民間の多言語電話通訳サービス提供事業者に接続の上、管轄の法務局・地方法務局につながります。
https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken21.html#01
0570‐090911
外国語による人権相談
資料
所在地
福岡市
高松市
松山市
開設場所 受付日時 対応言語 お問合せ先
対応時間 平日
(年末年始を除く) 9:00〜17:00
対応時間
対応言語
平日
(年末年始を除く) 9:00〜17:00
英語・中国語・韓国語・フィリピノ語・ポルトガル語・ベトナム語・ネパール語・
スペイン語・インドネシア語・タイ語
Language English, Chinese, Korean, Filipino, Portuguese, Vietamese, Nepail,
Spanish, Indonesian, and Thai
アクロス福岡3階こくさいひろば
福岡市中央区天神 1−1−1
(注記)令和5年度末をもって終了予定
愛媛県国際交流センター
松山市道後一万 1−1
アイパル香川
(香川国際交流会館)
会議室
高松市番町 1−11−63
毎月 第2土曜日
13:00 〜 16:00
毎月 第3金曜日
13:00 〜 15:00
(予約制)
毎月 第4木曜日
13:30 〜 15:30
英語
英語、
中国語、
ベトナム語、
ポルトガル語
高松法務局
人権擁護部087(821)7850福岡法務局
人権擁護部092(739)4151松山地方法務局
人権擁護課089(932)0888英語1345
ら、
「ヘイトスピーチ、
許さない。」をキャッチコピーとした各種人権啓発活動や、
ヘイトスピーチによる被害等についての人権相談、
調査救済活動に取り組んでい
ます。
外国語人権相談ダイヤル
(全国共通)
(Foreign‐language Human Rights Hotline) 外国人のための人権相談所
(Human Rights Counseling Centers for Foreigners) 外国語インターネッ
ト人権相談受付窓口
(Human rights counseling services on the Internet) 全国の法務局・地方法務局(60ページ参照)において、通訳を介するなどして面談による
人権相談に応じています
(上記以外の言語にも対応可)。法務局・地方法務局の窓口以外でも、以下のとおり人権相談所を開設しています。2特集 人権擁護に関する世論調査
You can get the Human Rights Counseling Leaflet for Foreigners from the Ministry of Justice
website at:https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken21.html
20 人権の擁護❽しかく疾病患者に対する差別待遇に関する人権侵犯事件の新規救済手続開始件数
平成30年 令和元年 令和2年44令和3年68令和4年49疾病患者(ハンセン病患者等
を除く。)に対する差別待遇
26 15
啓発動画「『誰か』
のこと
じゃない。」感染症
感染症に対する知識や理解の不足から、社会生活の様々な場面で、差別
やプライバシー侵害などの人権問題が発生しています。感染症について
の正しい知識を持ち、この問題についての関心と理解を深めていくこと
が必要です。
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は、性的接触に留意すれば、日常生活で感染す
る可能性はほとんどありません。治療法の進歩により、仮にHIVに感染したとし
ても、早期発見及び早期治療を適切に行うことで、エイズの発症を予防し、他人
への感染リスクも大きく低下させることができます。
また、肝炎は、その多くがB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスに起因するも
ので、主に血液や体液を介して感染します。感染を予防するためには、血液や体
液が付いた器具を共用しないこと、血液や体液が傷や粘膜に直接触れるのを防ぐ
ことが重要であり、そのほかに普段の生活の中で感染することはありません。
しかし、これらの正確な情報が十分に理解されていない結果として、偏見や差
別に苦しんでいる感染者や患者、その家族等も少なくありません。
さらに、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種については、様々な事情で
接種を受けることができない人、受けることに注意が必要な人がいますので、そ
れぞれの事情に配慮した感染対策を考え、接種を受けていないことのみを理由と
した差別的取扱い(未接種が一目で分かるような指示をする、接種を拒否した人
の契約を打ち切る、実習等に参加させないなど)をしないようにする必要があり
ます。また、マスクについては、個人の主体的な選択を尊重し、着用は個人の判
断が基本とされていますので、本人の意思に反してマスクの着脱を強いることが
ないよう、配慮が必要です。
政府は、感染症に関連する偏見や差別をなくすため、
感染症についての正しい知識の普及啓発を行っています。
法務省の人権擁護機関でも、感染症に関連する偏見
や差別をなくすために、人権啓発活動や人権相談、調
査救済活動に取り組んでいます。
人権の擁護 211352特集 人権擁護に関する世論調査❾ ハンセン病患者・元患者やその家族
ハンセン病患者・元患者やその家族に対する偏見や差別は、今なお社会
に根深く残っています。この偏見や差別を解消するには、ハンセン病に
関する正しい知識と、ハンセン病患者・元患者やその家族が置かれてい
る現実を理解することが必要です。
ハンセン病は、
「らい菌」に感染することで起こる感染症ですが、
「らい菌」
の感染力は弱く、非常に伝染しにくい病気です。仮に感染したとしても発病する
ことは極めてまれで、現在では治療法も確立しているため、万一発病しても、早
期に発見し適切な治療を行えば後遺症が残ることもありません。しかし、かつて
我が国で採られた強制的な隔離政策により、ハンセン病は恐ろしいという誤った
理解が国民の間に広まったことで、ハンセン病患者・元患者やその家族は、社会
からのいわれのない差別や偏見の対象となってきました。
平成13年5月、国のハンセン病政策の転換が遅れたことなどの責任を問う
「らい予防法違憲国家賠償請求訴訟」に対し、国の責任を認める熊本地方裁判所
判決が出されました。この判決
以後、政府は、平成20年6月
に成立した「ハンセン病問題の
解決の促進に関する法律」をも
踏まえ、ハンセン病に関する正
しい知識の普及啓発等に取り組
んできました。
しかし、偏見や差別の根絶に
は至らず、令和元年6月には、
患者・元患者の家族が偏見や差別の被害等を訴えた「ハンセン病家族国家賠償請
求訴訟」に対し、国の責任を認める熊本地方裁判所判決が出されました。これを
受けて、同年7月に公表された「ハンセン病家族国家賠償請求訴訟の判決受入れ
に当たっての内閣総理大臣談話」では、患者・元患者のみならず、家族に対して
も、社会において極めて厳しい偏見、差別が存在し、患者・元
患者とその家族が苦痛と苦難を強いられてきたことに対し、政
府としての深い反省とおわびが示されるとともに、家族を対象
とした新たな補償の措置を講ずること、関係省庁が連携・協力
し、患者・元患者やその家族が置かれていた境遇を踏まえた人603020100くろまる内閣府
「人権擁護に関する世論調査」 (令和4年8月調査)
から
あなたが、
ハンセン病患者・元患者やその家族に関し、
体験したことや、
身の回りで
見聞きしたことで、
人権問題だと思ったことはどのようなことですか。
複数回答(%)40 50
ハンセン病療養所の外で自立した生活を営むのが困難なこと
【22.2%】
交際や結婚を反対されること
【19.3%】
職場、
学校などで嫌がらせやいじめを受けること
【17.4%】
じろじろ見られたり、
避けられたりすること
【17.2%】
差別的な言葉を言われること
【16.7%】
就職・職場で不利な扱いを受けること
【16.3%】
治療や入院を断られること
【10.3%】
宿泊などの施設の利用や、
店舗などへの入店を拒否されること
【7.6%】
アパー
トなどへの入居を拒否されること
【7.5%】
特にない
【55.5%】
22 人権の擁護
権啓発、人権教育などの普及啓発活動の強化に取り組むことが示されました。
厚生労働省の下に有識者や当事者により構成された「ハンセン病に係る偏見
差別の解消のための施策検討会」において、令和5年3月に取りまとめられた
報告書の中でも、関係省庁が連携して啓発や相談等に関する施策を講じること
などが求められています。
法務省の人権擁護機関では、ハンセン病患者・元患
者やその家族が置かれていた境遇を踏まえた人権啓発
活動の強化に取り組んでいます。
例えば、ハンセン病問題に関するシンポジウムを開
催し、当事者の方々による講演や学生等も参加するパ
ネルディスカッションを行うとともに、シンポジウム
の内容を小学生・中学生向けの全国版新聞に掲載するなどして、元患者やその家
族の思いを広く周知しています。また、パネル展やインターネット広告を実施し
たり、啓発動画を配信したりするなど、ハンセン病についての正しい理解の普及
と偏見差別の解消に向けて、関係省庁と連携し、様々な人権啓発活動を実施して
います。ハンセン病患者等に対する差別事案については、人権相談や調査救済
活動に取り組んでいます。
しかくハンセン病患者等に対する差別待遇に関する人権侵犯事件の新規救済
手続開始件数
平成30年 令和元年 令和2年0令和3年1令和4年0ハンセン病患者等に
対する差別待遇0 1啓発動画
「ハンセン病問題
〜過去からの証言、
未来への提言〜」
啓発動画
「ハンセン病問題を知る
〜元患者と家族の思い〜」
インターネットバナー広告
シンポジウム採録記事
(読売中高生新聞)
人権の擁護 23
刑を終えて出所した人やその家族101345
刑を終えて出所した人やその家族に対する不当な差別的取扱いの事案
等が発生しています。社会復帰のためには、本人の強い更生意欲と
併せて、周りの人々の理解と協力が必要です。
しかく刑を終えた人に対する差別待遇に関する人権侵犯事件の新規救済手続開始件数
令和2年5令和3年4令和4年4刑を終えた人に対する
差別待遇
平成30年 令和元年
10 11
刑を終えて出所した人やその家族に対する偏見や差別は根強く、就職や住居
の確保における不当な差別的取扱い等、社会復帰を目指す人たちにとって、現
実は極めて厳しい状況にあります。刑を終えて出所した人たちが、地域社会の
一員として安定した社会生活を営むためには、本人の強い更生意欲と併せて、
家族はもとより、職場、地域社会の理解と協力が必要です。
令和5年3月、
「再犯の防止等の推進に関する法律」に基づき、第二次「再犯
防止推進計画」が策定され、
「就労・住居の確保等」や「民間協力者の活動の
促進等」、「地域による包摂の推進」等を重点課題として位置づけ、再犯防止の
ための様々な施策が推進されています。
法務省では、犯罪や非行をした人の改善更生について国民の理解・協力を促
進し、犯罪や非行のない地域社会を築くため、地域住民の理解と参加を得て 社
会を明るくする運動 を実施しており、
「幸福の黄色い羽根」を運動のシンボル
として掲げ、全国各地で啓発活動を行っています。
法務省の人権擁護機関では、刑を終えて出所した人やその家族に対する偏見や
差別をなくし、社会復帰に資するよう人権啓発活動や人権相談、調査救済活動に
取り組んでいます。2特集 人権擁護に関する世論調査
犯罪被害者やその家族11
令和2年4令和3年0令和4年2犯罪被害者等に関する
人権侵犯
平成30年 令和元年8 6しかく犯罪被害者等に関する人権侵犯事件の新規救済手続開始件数
犯罪被害者やその家族は、犯罪そのものやその後遺症によって精神的、経済
的に苦しんでいるにもかかわらず、追い打ちを掛けるように、興味本位のうわ
さや心ない中傷等により名誉が傷つけられたり、私生活の平穏が脅かされたり
するなどの問題が指摘されています。
こうした犯罪被害者等の権利利益の保護が図られる社会を実現させるため、
平成16年12月に「犯罪被害者等基本法」が成立しました。同法に基づき、平成
17年12月に「犯罪被害者等基本計画」が作られ(令和3年3月第4次基本計
画策定)
、同基本計画に掲げられた施策が進められています。
また、毎年11月25日から12月1日までの1週間を「犯罪被害者週間」とし
て、犯罪被害者等が置かれている状況や犯罪被害者等の名誉又は生活の平穏へ
の配慮の重要性等について、理解を深めてもらうことを目的とした活動が展開
されています。
法務省の人権擁護機関では、犯罪被害者やその家族の人権に対する配慮と保
護を図るため、人権啓発活動や人権相談、調査救済活動に取り組んでいます。
犯罪被害者やその家族は、直接的な被害のほかに、興味本位のうわさ
や心ない中傷により傷つけられたり、プライバシーが侵害されたりす
るなどの二次的な被害を受けることがあります。犯罪被害者とその家
族の人権に配慮することが必要です。
24 人権の擁護
インターネット上の人権侵害 1345 インターネットの普及に伴い、その匿名性や情報発信の容易さから、個人に対
する誹謗中傷、名誉やプライバシーの侵害、差別を助長する表現の掲載など、人
権に関わる様々な問題が発生しています。こうした行為は人を傷つけるものであ
り、書き込みをした人が罪に問われることもあります。インターネット上の誹謗
中傷が社会問題化していることを契機として、誹謗中傷に対する非難が高まると
ともに、これを抑止すべきとの国民の意識が高まる中、近時の誹謗中傷の実態へ
の対処として、令和4年7月、侮辱罪の法定刑の引上げが行われました。引き続
き、一般のインターネット利用者等に対して、人権に関する正しい理解を深める
ための啓発活動を推進していくことが必要です。
小学生・中学生等の青少年のインターネットの利用が年々増加している一方、
SNS等を利用した誹謗中傷や違法ダウンロードなど、こどもが加害者や被害者
になり、トラブルに巻き込まれる事案も発生しています。そうした状況を踏ま
え、平成21年4月から施行されている「青少年が安全に安心してインターネッ
トを利用できる環境の整備等に関する法律」が改正され、平成30年2月から、
18歳未満の青少年利用者に
対して有害情報のフィルタ
リング有効化措置を行うこ
となどが携帯電話事業者等
に義務付けられました。
毎年2月から5月には、
「春のあんしんネット・新学
期一斉行動」として、スマー
トフォンやSNS等の安全・
安心な利用を呼び掛ける啓
発活動が集中的に行われています。
また、いわゆるリベンジポルノ等による被害の発生・拡大
を防止するため、私的に撮影された性的画像を公表する行為
や公表目的で提供する行為に対する罰則及び被害者に対する支
他人を誹謗中傷する情報が掲載されること
【67.7%】
他人に差別をしようとする気持ちを起こさせたり、
それを助長するような情報が掲載されること
【42.8%】
プライバシーに関する情報が掲載されること
【42.5%】
SNS などによる交流が犯罪を誘発する場となっていること
【37.0%】
リベンジポルノが存在すること
【31.5%】
捜査の対象となっている未成年者の実名や顔写真が掲載されること
【17.9%】
特にない
【14.7%】
インターネット上において、個人に対する誹謗中傷、名誉やプライバ
シーの侵害などの人権問題が起きています。インターネットを正しく
使用し、人権侵害をなくすことが必要です。2特集 人権擁護に関する世論調査
くろまる内閣府
「人権擁護に関する世論調査」 (令和4年8月調査)
から
あなたが、
インターネッ
トに関し、
体験したことや、
身の回りで見聞きしたことで、
人権問題だと思ったことはどのようなことですか。8060 7050403020100
複数回答(%)12人権の擁護 25
26 人権の擁護
援体制の整備等を内容とする「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関す
る法律」が平成26年12月に施行され、同法に基づく取締りが進められています。
法務省の人権擁護機関では、青少年を中心に深刻化するインターネット上の
人権侵害への取組として、中学生などを対象に携帯電話会社が実施するスマ
ホ・ケータイ安全教室と連携した人権教室を全国各地で実施しているほか、中
学生・高校生とその保護者を対象とした啓発冊子の配布や啓発動画の配信、シ
ンポジウムの開催などの人権啓発活動を行っています。また、SNS事業者団体
等と共同して、
「#No Heart No SNS」をスローガンに、SNS利用に関する人
権啓発サイトを開設し、情報モラルの向上を図るとともに、インターネット上
の人権侵害に関する各種相談窓口を整理したフローチャートを掲載して、人権
相談窓口の周知・広報を行うなど、対策の強化に取り組んでいます。
インターネット上の人権侵害情報について相談を受けた場合は、相談者の意
向に応じて、相談者自身が行うプロバイダへの発信者情報開示請求やその情報
の削除依頼の方法について助言するほか、調査の結果、その情報が名誉毀損や
プライバシー侵害等に該当すると認められるときは、プロバイダ等にその情報
の削除を求めるなどの対応に努めています。
啓発冊子
「あなたは、
大丈夫?考えよう!インターネットと人権」
啓発動画
「インターネットは
ヒトを傷つけるモノじゃない。」SNS 利用に関する人権啓発サイト
「#No Heart No SNS」
令和2年
1,693
令和3年
1,736
令和4年
1,721
インターネットに関する
人権侵犯
平成30年 令和元年
1,910 1,985
しかくインターネットに関する人権侵犯事件の新規救済手続開始件数
人権の擁護 271345
資料2特集 人権擁護に関する世論調査
上記の資料は、法務省ホームページでも
公開しています。
28 人権の擁護
北朝鮮当局によって拉致された被害者等
平成18年6月、北朝鮮当局による人権侵害問題に関する国民の認識を深める
とともに、国際社会と連携しつつ北朝鮮当局による人権侵害問題の実態を解明
し、その抑止を図ることを目的とする「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵
害問題への対処に関する法律」が施行されました。この法律では、国及び地方公
共団体の責務等が定められるとともに、毎年12月10日から16日までの1週間
を「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」とすることとされました。
同週間中、政府主催国際シンポジウムを始めとする様々なイベントの開催や、
電車内の中吊り広告やインターネット広告、新聞広告等の各種メディアによる周
知・広報などの様々な活動が行われています。13
政府主催国際シンポジウム
ポスター
「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」
北朝鮮当局による日本人拉致は、我が国に対する主権侵害であるとと
もに、重大な人権侵害です。拉致問題は、我が国の喫緊の国民的問題
です。これを始めとする北朝鮮当局による人権侵害問題への対処が、
国際社会を挙げて取り組むべき課題とされる中、この問題についての
関心と認識を深めていくことが大切です。
人権の擁護 291345
ホームレス
平成14年に制定された「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」で
は、ホームレスの自立の支援等に関してはホームレスの人権に配慮することが定
められています。
また、同法に基づき、平成30年7月にホームレスの実態に関する全国調査の
結果を踏まえて策定した「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」では、
ホームレス及び近隣住民の双方の人権に配慮しつつ、啓発広報活動、人権相談等
の取組により、ホームレスの人権の擁護を推進することが必要であること等が盛
り込まれています。
これらも踏まえ、法務省の人権擁護機関では、ホームレスに対する偏見や差別
の解消を目指して、人権啓発活動や人権相談、調査救済活動に取り組んでいます。14
ホームレスとなった人々に対して、嫌がらせや暴行を加える事案が発
生しています。ホームレスの人権に配慮するとともに、地域社会の理
解と協力が必要です。
政府は、性的マイノリティに対する不当な差別や偏見はあってはならないとの
認識の下、多様性が尊重され、全ての人が生き生きとした人
生を送ることのできる共生社会の実現を目指しており、公共
施設、医療、就業、学校、社会福祉等の様々な場面で生じて
いる性的マイノリティに関する様々な課題について、関係府
省が横断的に連携しながら、取組を進めてきました。
性的マイノリティ(性的少数者)であることを理由とする偏見や差別
により、苦しんでいる人々がいます。これらの人々は、社会の中で偏
見の目にさらされ、昇進を妨げられたり、学校生活でいじめられたり
するなどの差別を受けています。
しかくホームレスに対する人権侵犯事件の新規救済手続開始件数
令和2年1令和3年1令和4年0ホームレスに対する
人権侵犯
平成30年 令和元年1 31
5 性的マイノリティ2特集 人権擁護に関する世論調査
30 人権の擁護
「Myじんけん宣言・性的マイノリティ編」
特設サイト16 人身取引
(性的サービスや労働の強要等)
こうした中、令和5年6月に、
「性的指向及びジェンダーアイデンティティの
多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」が成立・施行されました。同法
に規定する「全ての国民が、その性的指向又はジェンダーアイデンティティにか
かわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるも
のである」との基本理念にのっとり、関係府省が連携しながら、各種施策が進め
られていくこととなります。
法務省の人権擁護機関では、性的マイノリティに関する偏見や差別の解消を強
調事項として掲げ、講演会等の開催や啓発冊子の配布等の各種人権啓発活動を実
施するとともに、人権相談、調査救済活動に取り組んでいます。また、令和5年
3月には、企業・団体における性的マイノリティに関する取組を促進するととも
に、社会全体の性的マイノリティの方々に対する理解の増進に資するよう、企
業・団体の取組事例を紹介する特設サイト「Myじんけん宣言・性的マイノリテ
ィ編」を開設しています。
人身取引(性的サービスや労働の強要等)は重大な人権侵害であり、
人道的観点からも迅速・的確な対応が求められています。これは、人
身取引が、その被害者に対して深刻な精神的・肉体的苦痛をもたらし、
その被害の回復は非常に困難だからです。
政府は、令和4年12月に策定された「人身取引対策行動
計画2022」に基づき、人身取引対策に係る情勢に適切に対
処し、政府一体となった総合的かつ包括的な人身取引対策を
しかく性的マイノリティに関する人権侵犯事件の新規救済手続開始件数
令和2年17令和3年9令和4年9性的マイノリティに関する
人権侵犯
平成30年 令和元年
19 17
人権の擁護 311345
ポスター
「人身取引対策」 リーフレット
「人身取引対策」
推進しています。また、同計画に基づき、関係閣僚から成る「人身取引対策推進
会議」を随時開催し、我が国における人身取引の実態の把握、人身取引の防止・
撲滅及び被害者の保護を推進するとともに、このような取組について広報を行い、
被害に遭っていると思われる者を把握した際の通報を呼び掛けるなど、関係省庁
が協力して取組を進めています。
法務省の人権擁護機関では、人身取引についての関心と理解を深めるため、各
種人権啓発活動を実施するとともに、人権相談、調査救済活動に取り組んでいま
す。
震災等の大きな災害の発生時に、不確かな情報に基づいて他人を不当
に扱ったり、偏見や差別を助長するような情報を発信したりするなど
の行動は、人権侵害に当たり得るだけでなく、避難や復興の妨げにも
なりかねません。
平成23年3月11日に発生した東日本大震災は、被災地域が東日本全域に及び、
甚大な人的・物的被害をもたらした未曾有の大災害です。地震と津波に伴い発生
した東京電力福島第一原子力発電所事故は、被害をより深刻なものとしました。
また、東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う風評に基づく偏見や差別が今な
お懸念されています。
法務省の人権擁護機関では、風評に基づく差別的取扱い等、
災害に伴って生起する様々な人権問題に対処するとともに、
新たな人権問題の発生を防止するため、被災者の心のケアを
含めた人権相談に応じています。また、シンポジウムの開催、
啓発動画の配信等の各種人権啓発活動を実施しています。
震災等の災害に起因する人権問題172特集 人権擁護に関する世論調査
2.特集 人権擁護に関する世論調査
くろまる「人権擁護に関する世論調査」とは
「人権擁護に関する世論調査」は、人権擁護に関する国民の意識を把握し、今
後の施策の参考とするため、昭和33年からおおむね5年ごとに実施されていま
す。13回目となる今回の調査は、令和4年8月4日から同年9月11日まで全
国18歳以上の日本国籍を有する者3,000人を対象に実施されました(有効回収
数1,556人、有効回収率51.9%)。 ここでは、令和4年11月に内閣府から発表された調査結果を基に、人権教
育・啓発に関する国民の意識を概観します。
くろまる個別の人権問題に関する意識について
日本における人権問題について、関心があるのはどのようなことか聞いたとこ
ろ、各回答の割合は、
「インターネット上の誹謗中傷などの人権侵害」が53.0%
と最も高く、以下、
「障害者」
(50.8%)、「こども」
(43.1%)等の順となって
います。
前回調査においても、
「インターネットによる人権侵害」が43.2%と高い水準
にありましたが、近時、誹謗中傷などの問題が深刻化していることからインタ
ーネット上で発生している様々な人権問題に対し、一層の関心が寄せられてい
ることがうかがわれます。
なお、各人権課題に関し、体験したことや、身の回りで見聞きしたことで、
人権問題だと思ったことはどのようなことか聞いた結果については、各人権課
題のページにそれぞれ掲載しています。
32 人権の擁護 1345
0 20 40 60
くろまる内閣府
「人権擁護に関する世論調査」 (令和4年8月調査)
から
今回調査
平成29年10月調査
インターネッ
ト上の誹謗中傷などの人権侵害
障 害 者
こ ど も
女 性
風 評 に 基 づ く 偏 見 や 差 別 な ど
災 害 に 伴 う 人 権 侵 害
HIVや肝炎、新型コロナウイルス感染症
な ど の 感 染 者・医 療 従 事 者 や そ の 家 族
北 朝 鮮 当 局 に よ っ て 拉 致 さ れ た
被 害 者 や そ の 家 族
犯 罪 被 害 者 や そ の 家 族
LGBTQな ど の 性 的 マ イ ノリティ((注記))
部 落 差 別 ・ 同 和 問 題
外 国 人
性的サービスや労働の強要などの人身取引
ハ ン セ ン 病 患 者・元 患 者 や そ の 家 族
ホ ー ム レ ス
ア イ ヌ の 人 々
特 に な い
刑 を 終 え て 出 所 し た 人 や そ の 家 族
性同一性障害者
性的指向
高 齢 者2特集 人権擁護に関する世論調査53.043.250.851.132.628.823.316.919.315.515.017.917.014.016.715.014.814.613.010.510.511.210.011.89.66.75.47.626.230.136.727.110.843.133.742.530.6(注記) 平成 29 年 10 月調査では、
項目を
「性同一性障害者」と
「性的指向」
に分けていた。
あなたが、
日本における人権問題について、
関心があるのはどのようなことですか。 複数回答(%)人権の擁護 33
あなたは、
人権問題の解決に向けて、
国は、
どのようなことに力を入れていけばよいと思いますか。
複数回答(%)今回調査
平成29年10月調査57.659.844.244.041.933.036.832.819.724.23.42.031.238.646.943.1
くろまる人権問題の解決のための方策について
人権問題の解決に向けて、国は、どのようなことに力を入れていけばよいと
思うか聞いたところ、
「学校内外の人権教育を充実する」
(57.6%)、「人権意識
を高め、
人権への理解を深めてもらうための啓発広報活動を推進する」
(46.9%)、
「人権が侵害された被害者の救済・支援を充実する」
(44.2%)
を挙げた者
の割合が高くなっています。
10 20 30 40 50 600 70くろまる内閣府
「人権擁護に関する世論調査」 (令和4年8月調査)
から
学 校 内 外 の 人 権 教 育 を 充 実 す る
犯 罪 の 取 締 り を 強 化 す る
人権に関する情報の収集及び提供を充実する
特 に な い
人 権 意 識を高め、人 権 へ の 理 解を深めて
もらうた め の 啓 発 広 報 活 動 を 推 進 す る
人 権 が 侵 害 さ れ た 被 害 者 の
救 済 ・ 支 援 を 充 実 す る
人 権 問 題 に 対 応 す る 専 門 の
相 談 機 関・施 設 を 充 実 す る
地 方 自 治 体、民 間 団 体 な ど の
関 係 機 関 と 連 携 を 図 る
34 人権の擁護
あなたは、
人権尊重意識が人々の間に広く深く浸透するためには、
国がどのような方法で
啓発広報活動を行うことが効果的であると思いますか。 複数回答(%)67.570.332.941.823.817.923.519.122.326.818.224.316.815.615.422.010.213.27.311.922.631.749.541.9今回調査
平成29年10月調査1345
また、
人権尊重意識が人々の間に広く深く浸透するためには、
国がどのような
方法で啓発広報活動を行うことが効果的であると思うか聞いたところ、
「テレビ・ラジオ」
(67.5%)、「SNSを含むインターネット」
(49.5%)、「新聞・雑
誌」
(32.9%)
を挙げた者の割合が高くなっています。
20 40 600 80くろまる内閣府
「人権擁護に関する世論調査」 (令和4年8月調査)
から
テ レ ビ ・ ラ ジ オ
S N S を 含 む イ ン タ ー ネ ッ ト
新 聞 ・ 雑 誌
多 様 な 立 場 の 人 が 参 加 で き る 交 流 会
講 演 会、シ ン ポ ジ ウ ム、研 修 会 な ど
広 報 誌・パ ン フ レ ッ ト・ポ ス タ ー
自 由 な 意 見 の 交 換 が で き る 会 合
高 齢 者・障 害 者 疑 似 体 験
映 画 ・ ビ デ オ
資 料 、 写 真 な ど の 展 示
電 車 や バ ス な ど に お け る 車 内 広 告 や
車 体 広 告、駅 で の 広 告 な ど の 交 通 広 告
少 人 数 の 討 論 会 や 双 方 向 型 の 研 修
プ ロ グ ラ ム な ど の ワ ー ク シ ョ ッ プ2特集 人権擁護に関する世論調査
人権の擁護 35
36 人権の擁護
人権擁護委員
全国市町村に約14,000名
人権擁護委員の組織体
(委員相互の連絡・調整、
研究、
意見交換など)
法務局所在地以外の
府県庁所在地
(ほか北海道の函館・旭川・釧路)
42か所
支局 支局
法務省
(人権擁護局)
地方法務局
(人権擁護課)
法務局
(人権擁護部)
東京・大阪・名古屋・
広 島・福 岡・仙 台・
札幌・高松の8か所
全国人権擁護委員連合会
ブロック人権擁護委員
連合会
(8か所)
都道府県人権擁護委員
連合会
(50か所)
人権擁護委員協議会
(314か所)
261か所
法務省の人権擁護機関の構成図(令和5年6月1日現在)
3.法務省の人権擁護機関の仕組み
「1.主な人権課題」で述べたとお
り、私たちの周りでは人権に関わ
る様々な問題が起きています。こ
の章では、このような問題に取り
組むために設けられている法務省
の人権擁護機関の仕組みを紹介し
ます。
法務省人権擁護局とその下部機関❶ 国民の人権擁護に携わる国の行政機関として、法務省に人
権擁護局が、その下部機関として、法務局に人権擁護部、地
方法務局に人権擁護課がそれぞれ設けられており、人権擁護
のための活動を行っています。また、法務局・地方法務局の
下部機関である支局でも人権擁護の業務を行っています。
人権の擁護 37
人権擁護委員は、
あなたの街の相談パートナーです。
相談は無料で、
秘密
は厳守します。
困ったことがあったら、
気軽に相談してください。
人権擁護委員
人権擁護委員はこうして委嘱されます。
人格識見が高く、広く社会の実
情に通じ、人権擁護について
理解のある人
求意見
人権擁護委員候補者
人権擁護委員市町村特別区市町村特別区
求意見
長 議会委嘱
推薦 推薦依頼
意見
意見
法務大臣
法務局長
又は
地方法務局長
弁護士会
人 権 擁 護
委員連合会
このシンボルマークは、法務省の人権擁護機関が
行う啓発広報活動に統一性・独自性を持たせると
ともに、人権擁護活動についての親近感を深め、
啓発広報活動をより効果的にすることを目的とし
て、平成4年12月から使用されています。
人 権 擁 護 活 動
シンボルマーク
❷ 1345 人権擁護委員は、法務大臣が委嘱した民間のボランティアの方々です。人権擁
護委員制度は、様々な分野の方々が、地域の中で人権尊重思想を広め、住民の人
権が侵害されないように配慮し、人権を擁護していくことが望ましいという考え
から創設されたものであり、こうした官民連携の取組は、諸外国でも例を見ない
ものです。
現在、約14,000名の委員が全国の各市町村(東京都においては特別区を含
む。
)に配置され、それぞれの地域において、経歴や専門分野をいかした積極的
な活動を行っています。2特集 人権擁護に関する世論調査
38 人権の擁護
人権擁護委員は、法務局における人権相談所に加え、市役所等の公共施設、社
会福祉施設や商業施設等においても、特設人権相談所を随時開設して、住民から
の人権相談に応じています。
相談等を通じて、被害者から「人権を侵害された」という申告等があった場合
は、法務局職員と協力して、人権侵犯事件の調査に当たり、当事者の関係を調整
するなど、事案の円満な解決を図っています。
また、地域住民に人権について関心を持ってもらえるような人権啓発活動(小
学生や幼稚園児等を対象に、思いやりの大切さを教える「人権教室」
(48ページ
参照)や「人権の花運動」
(49ページ参照)
、地元企業等における人権研修の講
師等)や地元FM放送局での人権擁護委員の活動の紹介など、
各地域に根ざした活動を行っています。
あなたの街の人権擁護委員については、お近くの法務局・
地方法務局又はその支局にお尋ねください。
被災地における活動(仮設住宅訪問) 人権の花運動
地元FM放送での人権啓発
地元企業での研修講師
しかく人権擁護委員の活動の様子
人権の擁護 391345
ポスター
「人権擁護委員制度」
面接による人権相談
全国人権擁護委員連合会は、人権擁護委員法が施行された日(昭和24年6月
1日)を記念して、毎年6月1日を「人権擁護委員の日」と定め、この日の前後
に特設人権相談所の開設や地域住民の皆さんに人権への理解を深めてもらうため
の人権啓発活動の実施など、全国各地で取組を展開しています。
人権擁護委員として人権擁護活動を行ってみませんか。詳しくは、お近くの法
務局・地方法務局又はその支局にお尋ねください。
外枠に「かたばみ」の葉をあしらい、中
に菊形の「人」の文字を配したデザイン。
「かたばみ」は、地をはって広がっていく
根強い植物であり、人権尊重思想が広がっ
ていくようにとの願いが込められています。
6月1日は
「人権擁護委員の日」
です。
人権擁護委員のき章2特集 人権擁護に関する世論調査
40 人権の擁護省務法の関機護擁権人
いろいろな措置が
あります。
人権尊
重のための啓発も
行います。いろいろな措置が
あります。
人権尊
重のための啓発も
行います。被害の
申 告侵犯事実の有無を判断置措のめたの済救調 査認定できない場合もあります。しかく調査救済の流れ
「アフターケア」
「アフターケア」
「処理結果通知」
「処理結果通知」
4.法務省の人権擁護機関の活動
人権侵犯事件の調査救済❶ 調査の結果、事案に応じて、法律的なアドバイス等をする
「援助」や当事者間の話合いを仲介等する「調整」、人権侵害
を行った者に対して改善を求めるための「説示」、「勧告」、実
効的な対応をすることができる者に対してする「要請」等の7
種類の救済措置のうち、適切な措置を講じます。救済措置のう
ち「援助」と「調整」については、効果的なタイミングを考え、
調査の途中であっても講じます。
また、事案に応じ、事件の関係者に人権についての啓発をす
ることもあります。救済手続終了後は、被害者に処理結果を通
知し、必要に応じ、関係行政機関と連携し、関係者と連絡をと
るなどして、被害者のためのアフターケアを行うなどします。
人権が侵害された疑いのある事件を人権侵犯事件と呼んでいます。法務省の人
権擁護機関では、被害者からの救済の申出があれば、
「人権侵犯事件調査処理規
程」
(法務省訓令)に基づき速やかに救済手続を開始します。また、新聞・雑誌等
から人権侵害の疑いのある事実を知ることにより、救済手続を開始することもあ
ります。
救済手続の中で、人権侵害の有無を確認するための調査を行います。ただし、
この調査は、飽くまで関係者の協力による任意のものであり、警察官や検察官が
行うようないわゆる強制捜査ではありません。
法務省の人権擁護機関では、どのようにして皆さんの人権を守ってい
るのでしょうか。その活動は、大きく分けて、人権侵犯事件の調査救
済、人権相談及び人権啓発です。この章では、法務省の人権擁護機関
の活動を紹介します。
人権の擁護 41
しかく令和4年人権侵犯事件数
(新規救済手続開始)
の種類別内訳
法務省の人権擁護機関は、令和4年中に次のような救済措置を講じました。
人権侵害による被害者の救済事例1345
令和4年
新規開始件数
7,859件
学校におけるいじめ
1,047件
13.3%
プライバシー侵害
1,462件
18.6%
労働権関係
1,138件
14.5%
その他
1,800件 22.9%
強制・強要
803件 10.2%
住居・生活の安全関係
606件 7.7%
暴行・虐待
1,003件 12.8%
中学生の生徒が、親から、殴られるなどの暴行を受けており、児童相談所への保護を求め
て交番に行きたいとして、
「LINEじんけん相談」に相談があった事案です。
法務局は、直ちに、当該生徒の最寄りの警察署及び児童相談所に対し、情報を提供すると
ともに、対応を依頼しました。
その結果、当該生徒は、警察に保護された後、児童相談所の施設に入所することとなり、
当該生徒の安全を速やかに確保することができました。
(措置:
「援助」)❷虐待 中学生に対する虐待
小学生の児童が、同級生から、吃音をからかわれるなどのいじめを受けていたにもかかわ
らず、学校が十分な対応を行っていないことにより、不登校を余儀なくされているとして、
当該児童の親から相談があった事案です。
法務局が調査した結果、担任教諭が、当該児童から複数回相談を受けていたにもかかわら
ず、学校長に報告しなかったため、学校における対応が適切に行われず、当該児童に対する
いじめが続いたことが認められました。
法務局は、学校長に対し、いじめによる被害防止に向けた取組に一層努めるよう要請しま
した。
(措置:
「要請」)❶いじめ 小学校におけるいじめ2特集 人権擁護に関する世論調査
❹セクシュアルハラスメント
研修の受講者が、講師から、研修中に性的な発言を受けたとして、相談があった事案です。
法務局が調査した結果、研修中に、講師が当該受講者に対し、性的な発言を行ったことが
認められました。
法務局は、講師に対し、当該発言が当該受講者の意に反する性的な言動であって、セク
シュアルハラスメントに該当することを指摘するとともに、人権尊重の理念等を説明したと
ころ、講師からは反省の意が示されました。
(措置:
「啓発」)❺パワーハラスメント 職場の上司から部下に対するパワーハラスメント
講師による受講者に対するセクシュアルハラスメント
こどもが通学する小学校において、同級生が乱暴な行為をしていることに対し、学校が十
分な対応をしていないとして、保護者から相談があった事案です。
法務局が調査した結果、学校は、当該同級生への対応を行っているところであり、今後は
当該保護者にも当該対応等を説明していきたいと考えていることが判明しました。
法務局が、学校に対し、当該保護者の当該いじめ対応に係る要望を伝えるとともに、当該
保護者に対し、学校の対応等を説明したところ、保護者はこれに理解を示し、両者の信頼関
係が構築されました。
(措置:
「調整」)❸学校の指導 小学校における不十分な指導
被用者が、上司から、事務以外の用途として供されていた場所において、一人で勤務す
るよう人事異動を命じられたことに対し、勤務先との話合いを求めていたにもかかわらず、
机を搬出され、強制的に勤務場所を変更させられたとして、相談があった事案です。
法務局が調査した結果、被用者に対する当該命令は、合理的な理由なく行われたもので
あり、当該被用者を職場の人間関係から切り離すことにより、被用者に精神的苦痛を与え
たものであって、パワーハラスメントに該当するものであることが認められました。
法務局は、当該上司に対し、良好な就業環境を維持すべき立場であったにもかかわらず、
当該行為を行ったことは人権擁護上看過できないとして、その行為の不当性を自戒するこ
とを求めるとともに、パワーハラスメントについての理解を深め、今後、同様の行為を行
うことのないよう説示しました。
(措置:
「説示」)❻DV 夫から妻に対する暴力・暴言
夫から暴力等を受けている妻を一次的に保護しているとして、人権擁護委員から相談が
あった事案です。
法務局が調査した結果、妻が夫に対して強い恐怖心を抱いていることが認められたこと
から、速やかに婦人相談所に情報提供を行い、必要な措置を求めました。
その結果、妻及びそのこどもは、婦人相談所に保護され、安全が確保されるとともに、
関係機関による情報共有が図られ、妻らに対する支援体制を構築するこ
とができました。
(措置:
「援助」)42 人権の擁護
近隣住民から、継続的に、部落民、部落へ帰れなどの同和問題に関する差別的な発言を受
けたとして、相談があった事案です。
法務局が調査した結果、当該近隣住民が同趣旨の発言を行ったことが認められ、その調査
中において、当該近隣住民は、今後、そのような言動は行わないと述べました。
法務局は、当該近隣住民に対し、当該発言は他人の人権や尊厳を傷つけるものであり、同
和問題に対する理解と認識を欠いたものであって、人権擁護上看過できな
いものであるとして、基本的人権尊重の理念及び同和問題について正しい
理解と認識を深め、今後、同様の行為を行うことのないよう説示しました。
(措置:
「説示」)1345❽差別待遇関係
外国人が、レンタルバイク店から、外国人であることを理由にバイクの貸出しを拒否され
たとして、
「インターネット人権相談受付窓口」に相談があった事案です。
法務局が調査した結果、当該店舗は、外国人に対し、一律に貸出しを拒否する運用を行っ
ていたことが認められましたが、調査を行う中で、当該運用が外国人に対する不当な差別に
該当する可能性があることを理解し、当該運用の見直しを行いました。
法務局は、当該外国人に対し、当該店舗の運用の見直しについて伝えたところ、当該外国
人はこれに理解を示しました。
(措置:
「調整」)外国人に対するレンタルバイクの貸出し拒否
❾差別待遇関係
(感染症ではない)皮膚疾患により発疹が出ていた公衆浴場の利用者が、当該公衆浴場の従
業員から、他の利用客が嫌がっているため今後は来ないでほしい旨の発言をされたとして、
相談があった事案です。
法務局が調査した結果、当該従業員から当該言動があったことや、当該公衆浴場において、
当該利用者の入浴を拒否することができる法的な根拠はないことが認められました。
法務局は、当該公衆浴場に対し、公共性を有する公衆浴場において、当該利用者の外見を
他の利用者らが嫌がっているという事情のみをもって入浴を拒否することは、営業の自由の
範囲を超えた、当該利用者への不合理な偏見・差別であり、人権擁護上看過できないとして、
今後、同様の対応を行うことがないよう説示しました。
(措置:
「説示」)患者に対する公衆浴場の利用拒否
❿差別待遇関係 同和問題に関する差別的発言
❼ストーカー
中学生の生徒が、同級生及びその家族から、嫌がらせを受けているとして、当該生徒の親
から、相談があった事案です。
法務局が調査した結果、警察が当該同級生らに警告を行っていることや、当該生徒らから
通報があった場合にはすぐに警察官が駆け付ける態勢が執られていることが認められました。
法務局は、当該生徒の親に対し、上記警察の対応状況を伝えた上で、当該同級生らとの話
合いの方法等について助言したところ、当該生徒の親はこれに理解を示しました。
(措置:
「援助」)中学生に対する嫌がらせ行為2特集 人権擁護に関する世論調査
人権の擁護 43
44 人権の擁護
⓫インターネッ
ト上の人権侵害情報関係
被害者から、電子掲示板上で、在日外国人であると指摘されるとともに、在日外国人とい
う属性を理由として蔑称などを用いて侮辱する投稿が複数なされたとして、相談があった事
案です。
法務局が調査した結果、被害者を虫に例えたり、同人の存在を否定するなどの被害者を侮
辱する投稿が複数回にわたってなされていたことから、当該投稿は、被害者の名誉感情を侵
害するものであると認められました。
法務局から、サイト管理者に対し、当該投稿の削除要請を行ったところ、当該投稿が削除
されるに至りました。
(措置:
「要請」)インターネッ
ト上の名誉感情侵害
⓬インターネッ
ト上の人権侵害情報関係
被害者から、電子掲示板上に、氏名とともに電話番号が投稿されているとして、相談が
あった事案です。
法務局が調査した結果、一般に公開されていない被害者の電話番号等が電子掲示板上に掲
載されていたことから、当該投稿は、被害者のプライバシー権を侵害するものであると認め
られました。
法務局から、サイト管理者に対し、当該投稿の削除要請を行ったところ、当該投稿が削除
されるに至りました。
(措置:
「要請」)インターネッ
ト上のプライバシー侵害
法務省の人権擁護機関では、
被害の申告がし
やすいように、
「人権侵犯被害申告シート」(右参照)
を用意し、法務局・地方法務局に備え置
くほか、
法務省ホームページに掲載し、
自宅で
プリントアウトして利用いただけるようにし
ています。
人権侵犯被害申告シート
人権の擁護 45
毎日の生活の中で、
「これは『人権問題』ではないだろうか?」と感じ
たり、偏見や差別、いじめ等に思い悩んだりすることがあったら相談
してください。
法務省の人権擁護機関では、法務局職員や人権擁護委員が人権に関する相談
(人権相談)を受け付けています。相談は無料で、難しい手続は何もありません。
相談内容についての秘密は厳守します。人権相談の開設場所、開設日時等につい
ては、最寄りの法務局・地方法務局又はその支局にお尋ねください。
「みんなの人権110番」
(0570‐003‐110(全国共通))「女性の人権ホット
ライン」
(0570‐070‐810)、「こどもの人権110番」
(0120‐007‐110)も
開設しています。インターネットやLINEでも人権相談を受け付けています。相談
窓口に関する詳細は、裏表紙をご覧ください。
このほか、全国の小・中学生に「こどもの人権SOSミニレター」を配布し、
手紙による相談に応じるなど、様々な手段を用意して、こどもたちが相談しやす
い体制をとっています(6ページ以下参照)。 日本語を自由に話すことの困難な外国人のために、
「外国語人権相談ダイヤ
ル」や「外国人のための人権相談所」等も開設しています(19ページ参照)。人権相談
❷ 1345人権相談・調査救済制度周知用リーフレット2特集 人権擁護に関する世論調査
46 人権の擁護
法務省の人権擁護機関では、昭和41年度から、毎年その年度の啓発活動の重
点目標を掲げ、重点的な人権啓発活動を実施しています。
令和5年度の啓発活動重点目標は、「『誰か』のこと じゃない。」と定めました。
この言葉には、様々な人権問題について、自分以外の「誰か」のことではなく、
自分自身の問題として捉え、人権を尊重することの大切さについて考えてもらい
たいとの思いが込められています。
また、多様性が尊重され、全ての人がお互いの人権や尊厳を大切にし、生き生
きとした人生を送ることのできる共生社会の実現に向けて、17の啓発活動強調
事項を掲げ、人権啓発活動を実施しています。
ポスター
「令和5年度啓発活動重点目標」
法務省の人権擁護機関では、国民一人一人の人権意識を高め、人権への理解を
深めるための様々な活動を行っています。
具体的には、シンポジウム・講演会等のイベントの開催、人権教室や研修の実
施、ホームページや動画配信サイトでの啓発資料の公表、インターネット広告の
実施、テレビ・ラジオの放送、新聞・広報誌への掲載等、様々な活動を行ってい
ます。これらの活動を「人権啓発活動」といいます。
人権啓発活動は、人権侵害を未然に防ぐために必要不可欠なものです。
人権啓発❸啓発活動重点目標
人権の擁護 47
国連は、昭和23年(1948年)の第3回総会で世界
人権宣言(53ページ参照)が採択されたのを記念し、
昭和25年(1950年)12月4日の第5回総会において、
世界人権宣言が採択された12月10日を「人権デー」と
定め、加盟国等に人権の発展を更に推進するよう呼び
掛けています。
我が国では、世界人権宣言が採択された翌年の昭和
24年から、毎年12月10日を最終日とする1週間(12
月4日から同月10日)を「人権週間」と定め、全国的な
人権啓発活動を展開しています。
人権週間
ポスター「第74回人権週間」1345
法務省の人権擁護機関、都道府県、市町村、公益法人等、人権啓発活動を実
施する主体間の横断的なネットワークとして、都道府県単位で「人権啓発活動
都道府県ネットワーク協議会」を、また、市町村単位で「人権啓発活動地域
ネットワーク協議会」を設置しています。
このネットワークでは、構成員による共同啓発活動、人権啓発情報の提供等
を行っています。
人権啓発活動ネットワーク1「女性の人権を守ろう」2「こどもの人権を守ろう」3「高齢者の人権を守ろう」 4
「障害を理由とする偏見や差別をなくそう」5「部落差別
(同和問題)
を解消しよう」6「アイヌの人々に対する偏見や差別をなくそう」7「外国人の人権を尊重しよう」 8
「感染症に関連する偏見や差別をなくそう」9「ハンセン病患者・元患者やその家族に対する
偏見や差別をなくそう」10「刑を終えて出所した人やその家族に対する偏見や
差別をなくそう」11「犯罪被害者やその家族の人権に配慮しよう」12「インターネッ
ト上の人権侵害をなくそう」13「北朝鮮当局による人権侵害問題に対する認識を
深めよう」14「ホームレスに対する偏見や差別をなくそう」15「性的マイノリティに関する偏見や差別をなくそう」16「人身取引をなくそう」17「震災等の災害に起因する偏見や差別をなくそう」
啓発活動強調事項2特集 人権擁護に関する世論調査
人権教室
人権教室は、いじめ等について考える機会を作ることによって、こどもたちに、
相手への思いやりの心や生命の尊さを学んでもらうこと等を目的とし、全国の人
権擁護委員が中心となって実施している人権啓発活動です。
小・中学生等を対象に、人権の花運動(49ページ参照)における学校訪問や
道徳科の授業等を利用して実施しています。
近年は、
「ビジネスと人権」に関する国内外の関心の高まり(54ページ参照)
を背景に、企業経営者や従業員を対象とした「大人の人権教室(企業啓発)」も
数多く実施しています。
また、スポーツ選手等を講師に迎え、ゲームや体験談から、助け合いの精神に
基づいたフェアプレーの精神等を学んでもらう人権スポーツ教室や、車椅子体験、
ボッチャ等の障害者スポーツ体験などを通じて、違いを理解し認め合う「心のバ
リアフリー」を学び、障害の有無にかかわらず共生する社
会の重要性を認識してもらうことを目的とした体験型の人
権教室も実施しています。
さらに、青少年を中心に深刻化するインターネット上の
人権侵害への取組として、携帯電話会社が実施する安全教
室と連携した人権教室なども、積極的に実施しています。
次代を担う中学生を対象に、人権についての作文に取り組むことを通じて、人
権尊重の重要性や必要性について理解を深め、豊かな人権感覚を身に付けてもら
うこと等を目的として、昭和56年度から、全国中学生人権作文コンテストを実
施しています。
令和4年度(第41回)は、6,582校から、76万
8,623編の応募がありました。法務省ホームページでは、
入賞作品を取りまとめた作文集を始め、過去の入賞作品
を題材とした啓発動画や入賞作品の英訳なども掲載して
います(第41回の内閣総理大臣賞受賞作品は、50ペー
ジ以下参照)。全国中学生人権作文コンテスト
第 41 回全国中学生
人権作文コンテスト入賞作文集
48 人権の擁護
人権の花運動は、こどもたちが協力して花の種子や球根を育てることによっ
て、生命の尊さを実感し、その中で、豊かな心を育み、優しさと思いやりの心を
体得することを目的とした人権啓発活動であり、主に小学生を対象に、昭和57
年度から実施しています。
この運動は、育てた花を社会福祉施設等に贈ったり、写生会や鑑賞会を開いた
りすることで、地域の人々とのコミュニケーションを深め、地域の人々にとって
も人権尊重意識を高めてもらうきっかけとなっています。
令和4年度は、3,764校の学校等において、42万1,376人を対象に行いまし
た。
人権の花運動1345
法務省ホームページにて、
上記動画を含む企業向け
コンテンツを案内中
人権教室
人権の花運動
令和4年度は、83万1,383人を対象に人権教室を行いました。2特集 人権擁護に関する世論調査
人権の擁護 49
第41回全国中学生人権作文コンテスト 内閣総理大臣賞受賞作品
大きく息を吸い込む世界へ
まつ ば はる の
広島県 学校法人盈進学園盈進中学校 3年 松葉 悠乃
何を話しているのかわからない。
周りの人が怖い。
そう感じたことがあった。
私は6歳の頃から3年間、
アメリカで暮らした。
生活習慣も言語も違う国で、何もかもが初めてで、
不安ばかりだった。
英語もまったく聞き取れず、
友だちもでき
ず、
孤立した。
アジア人の私を見て、
うわさをしているんじゃないか。
そう思えば思うほど、周りに話しかける勇気を失った。
しかし、
現地の小学校に通い始めて間もなく、
状況
が変わった。
英語ができず、
消極的だった私に、
声をかけてくれる白人の女の子が
いた。
私が寂しくないようにと、
自分から日本語を勉強し、
たどたどしい日本語で
話しかけてくれる笑顔の女の子。
その気持ちがうれしかった。
だから、その子とい
るのが楽しくて、
肌の色や言語の違いが気にならなくなった。
そうして私は、
少し
ずつ積極的に、
周りに話しかけるようになり、
英語も次第に使えるようになった。
家族でラスベガスへ旅行に行った時、私は衝撃的な場面に出くわした。
私の目
の前にいたフードを被った男性に、いきなり白人男性が暴言を浴びせ、唾を吐き
かけた。
フードの男性は抵抗もせず、何事もなかったかのようにそのまま歩いて
いた。
フードの男性は黒人だった。
「ひどいことをされたのになぜ、言い返さない
のだろう」
と思ったが、小学2年生の私はただ怖くて、震えていた。
でも中学3年
生になった今、私は思う。
あの瞬間、まさに目の前で人種差別が起きていたのだ。
人として許されない差別が。
今の私だったらあの時、唾を吐きかけられた黒人男
性に、
何と声をかけるだろうか。
そして、
白人男性に抗議できるであろうか、
と。
2020年5月、
アメリカで、
黒人のジョージ・フロイドさんが、
白人警察官に
よる行き過ぎた拘束により、命を落とした。
私にラスベガスの記憶がよみがえり、
抗議デモなどの報道に接するたびに、胸が締め付けられる自分がいた。
警官に9
分 29 秒も首を押さえつけられる中、フロイドさんは 27 回も
「息ができない」
と訴えた。
「袋の中の魚のように、ゆっくりと
意識を失っていった。
次第に白目になって、体がぐったりし
て命がついに消えた」。検察側証人の証言だ。
フロイドさんは、
この9分間に何を思ったのだろうか。 I can't breathe 。
彼の
言葉が私の頭の中で響くたび、
私は息苦しくなった。
資料
50 人権の擁護 1345
私の息苦しさは限界に達しかけていた。
そのとき、
学校の先輩にその思いをぶつ
けてみた。
その先輩は、
フィリピン人と日本人のダブルで、
生まれつき肌の色が少
し濃い。
小学生の頃、友だちに
「肌が汚い」
とからかわれ心に深い傷を負っていた。
先輩は、
高校卒業後、
アイルランドへ留学したが、
その矢先に、
新型コロナウイルス
(COVID‐19)の問題が世界を駆け巡った。
その流行は、中国が起源とされたため、
アイルランドでは中国人が差別の対象として狙われた。
ある日、
先輩は、
白人から
「COVID‐19 ! 」
と罵られ、
唾を吐かれたり、
石を投げら
れたりしたそうだ。
先輩は、
普段はとてもコミュニカティブで、
多様な国籍を持つ
友人をもつ。
だから先輩は、
「自分には人種に対する差別や偏見はない」
と思ってい
た。
だが、
そのとき、
自分の差別心を突きつけられたという。
「自分が白人から差別
されたことに対する怒りより先に、自分が中国人と間違われたことに対して不快
感を覚えた自分がいた。
その感情を自覚したとき、
自分が一人の人間として、
恥ず
かしいと思った」
と振り返る。
この話を聞いて、
私は思った。「『自分には差別する心
はない』
と思うことで、
差別を見ようとしない自分をつくっているんじゃないだろ
うか。
先輩の話は決して他人ごとではない。
差別は自分の心の中で生まれる。
自分
にも当てはまることだ。
自分の心を常に見つめる自分でなければ、
差別は見抜けな
い。
そう考えられなければ、
私の心はずっと
『I can't breathe』
のままなのだ」
と。
アメリカでは黒人の人口が白人の約5分の1。
だが、
新型コロナウイルスでの死
亡率は白人よりも黒人の方が高い。
命に優劣があってはならないが、
アメリカの一
部の病院では黒人の患者に対して、治療どころか検査さえしてくれないという現
実があったようである。
6歳の私に話しかけてくれた女の子は、
この現実をどうと
らえているだろうか。
Black Lives Matter 確かにそうだ。
でも私は
「All Lives Matter.」
(すべての人
の命は大切だ)
と訴えたい。
フロイドさんが繰り返した
「I can't breathe」
という魂
の叫びといっしょに。
誰もが一人の人間として、
誰にでも分け隔てなく、
他者と対
等に向き合い、
誰もが自分の言葉で、
自分に誇りを持って語れる日々が来るために。
そして、6歳の私に、笑顔で話しかけてくれた女の子のように。I deeply take a
breath and shout my words to the world. 私は大きく息を吸い込み、世界にこう
叫び続ける。
「人はすべて平等で、
すべての人が生きる権利を有する」
と。2特集 人権擁護に関する世論調査
人権の擁護 51
52 人権の擁護
経済社会理事会
(各種機能委員会等
(社会開発委員会等))国連人権諸条約の
委員会
人権理事会
(各種作業部会、
各種特別手続等)
国連人権
高等弁務官
事務所
(事務局)
くろまる諮問委員会
本会議
国連総会
第3委員会
(社会開発・人権)
5.国際社会における人権擁護
「すべての者のために人権及
び基本的自由を尊重するよう
に助長奨励すること」は、国
際連合(国連)の重要な目的
の一つであり、国連では、
様々な枠組みを設けて、人権
の保障に取り組んできました。
冷戦が終結し、グローバル化
が進む現在、改めて、人権の
尊重が平和の基盤であるとい
うことが、世界の共通認識となっており、国際社会全体で人権問題に
取り組もうとする機運が高まってきています。
昭和20年(1945年)に発足した国連は、約70年の歳月を経て、
世界の190か国以上が加盟する大きな国際機関となりました。
国連には、人権の擁護・促進のための様々な機関が設置されており、
国際社会における人権保障の枠組みの中で大きな役割を担っています。
国際連合❶ 人権の擁護 531345
世界人権宣言は、基本的人権尊重の原則を定めたものであり、初めて
人権保障の目標や基準を国際的にうたった画期的なものです。これに
より、世界の人権を守る動きは大きく進んでいます。
世界人権宣言❷ 国連を作ろうという考えは、第二次世界大戦の惨禍の中で生まれました。そし
て、昭和20年(1945年)10月24日に51か国の加盟国により、
「国際の平和
及び安全を維持...人種、性、言語又は宗教による差別なくすべての者のために
人権及び基本的自由を尊重するように助長奨励する」
(国連憲章第1条)こと等
を目的として国連が発足し、令和5年(2023年)3月現在では193か国が国
連に加盟しています。国連には、経済、社会、文化等の特定の分野で活動する
様々な機関がありますが、人権の分野においても、人権関係条約等が定める人権
の保障を確保するための機関が設置されています。平成18年(2006年)3月
には、国連が世界の人権問題により効果的に対処するために、経済社会理事会の
下部組織であったそれまでの人権委員会に代わって、人権理事会が設立されまし
た。これに伴い、全国連加盟国の人権状況を普遍的に審査する枠組みとして、
「UPR(普遍的・定期的レビュー)
」が制度化されました。
20世紀には、世界を巻き込んだ戦争が二度も起こり、特に第二次世界大戦中
においては、特定の人種の迫害、大量虐殺等、人権の侵害や抑圧が横行しまし
た。かつては、人権問題はそれぞれの国の国内問題と考えられていましたが、こ
のような経験から、人権問題は国際社会全体に関わる問題であり、人権の保障が
世界平和の基礎であるという考え方が主流になってきました。
そこで、昭和23年(1948年)12月10日、国連第3回総会において、
「すべ
ての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準」として、
「世界人権宣言」が
採択されました。世界人権宣言は、すべての人々が持っている市民的、政治的、
経済的、文化的分野にわたる多くの権利を内容とし、前文と30の条文から成っ
ています。
国連は、世界人権宣言が採択された12月10日を「人権
デー(Human Rights Day)」と定めています。また、法
務省の人権擁護機関では、毎年12月4日から同月10日の1
週間を「人権週間」と定めています(47ページ参照)。
さん か2特集 人権擁護に関する世論調査
54 人権の擁護
「ビジネスと人権」
に関する我が国の取組
資料
企業活動のグローバル化が進む中、
投資家、
市民社会、
消費者等において、企業に対して人権尊重を求める意識が高まっています。
平成23年
(2011年)
の第
17回国連人権理事会においては、
人権を保護する国家の義務や人権を尊重する
企業の責任、
ビジネス関連の人権侵害に関する救済へのアクセスについての原則
を示した
「ビジネスと人権に関する指導原則:国連
「保護、
尊重及び救済」
枠組み
の実施」が全会一致で支持されました。また、企業が「持続可能な開発目標
(SDGs
(Sustainable Development Goals))」
に取り組む上で、
人権を尊重
した行動をとることを求められています。
このような
「ビジネスと人権」
に対する国内外の関心の高まりを受けて、
政府
は、
企業活動に関連する我が国の法制度や施策等の現状把握、
経済界や労働界
等との議論やパブリックコメント等を経て、
令和2年10月に「『ビジネスと人権』
に関する行動計画」
を策定しました。
行動計画では、
企業活動における人権尊重の促進を図るため、
今後政府が取り
組む施策が記載されているほか、
企業に対し、
人権デュー・ディ
リジェンス
(企業活動における人権への影響の特定、
予防・軽
減、
対処、
情報提供を行うこと)
導入への期待が表明されてい
ます。
また、
行動計画の周知、
人権デュー・ディリジェンスに関
する啓発については、
全府省庁で実施していくこととされてい
ます。
パンフレット
「世界人権宣言70周年」
世界人権宣言啓発書画
この書画は、
書道家小木太法さんとブラジルの画家オタビオ・ロスさん
が世界人権宣言に示された人類の英知に感動し、
その感動を芸術的に
表現しようとしたものです。
こ ぎ たい ほう
人権の擁護 55
法務省の人権擁護機関においても、
企業関係者等を対象に、
行動計画に基づく
企業行動が国際社会を含む社会全体の人権の保護・促進に貢献し、
企業価値の
向上に寄与することへの理解を促進するとともに、
人権的視点に立った企業活動
を促すため、
各種取組を実施しています。
令和4年度には、
企業等を対象とした
人権研修用の動画として
「今企業に求められる
『ビジネスと人権』
への対応」
を作
成しました。
また、
令和3年度に開設した特設サイト
「Myじんけん宣言」
につい
ても、
インターネット動画広告等による周知を行い、
企業等に参加を呼び掛けて
います(「Myじんけん宣言」
とは、
企業・団体及び個人が、
人権を尊重する行動
をとることを宣言する投稿型コンテンツです。
特設サイトでは、
400を超える企
業等の方々が、
自らの人権尊重に対する決意等を
「Myじんけん宣言」
として表明
しています。)。さらに、
企業等が自ら研修を実施するための啓発資料
「今企業に
求められる
『ビジネスと人権』
への対応」
を公表しているほか、
全国の法務局・地
方法務局において、
企業等からの要望に応じて、
法務局職員や人権擁護委員を派
遣して人権研修を実施したり、
企業内で問題となることの多い人権課題をテーマ
とした啓発教材
「企業と人権〜職場からつくる人権尊重社会」
の冊子の配布や動
画の配信を行ったりするなど、
「ビジネスと人権」
に取り組む企業等を支援する
取組を実施しています。
詳しくは、
お近くの法務局・地方法務局又はその支局にお
尋ねください。1345
「今企業に求められる
『ビジネスと人権』
への対応」
(冊子・動画)
「My じんけん宣言」
特設サイト2特集 人権擁護に関する世論調査
56 人権の擁護
A規約は、労働の権利、社会保障についての権利、教育及び文化活動に関する
権利等のいわゆる社会権を主として規定したものです。
社会権とは、人権の保障を名実共に充実したものとするためには、国家が個人
の生活の保障に一定程度の責任を果たすべきであるという認識に立って、国の施
策により個人に認められている権利です。
我が国は、昭和54年(1979年)6月に、この規約を批准しました。
世界人権宣言で規定された権利に法的な拘束力を持たせるため、ニつ
の国際人権規約が採択され、その後も個別の人権保障のための条約と
して様々な条約が採択されています。これらの条約が保障する権利の
内容を周知し、理解を深めていくことが一人一人の人権を守ることに
つながります。
主要な人権関係条約❸ 世界人権宣言が採択された後、この宣言で規定された権利に法的な拘束力を持
たせるため、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」と「市民的及
び政治的権利に関する国際規約」の二つの国際人権規約が起草され、昭和41年
(1966年)の国連総会において全会一致で採択されました。
この二つの国際人権規約は、最も基本的かつ包括的な条約として人権保障のた
めの国際的基準となっています。これに加え、人権に関連する諸条約としては、
人種差別撤廃条約、女子差別撤廃条約、拷問等禁止条約、児童の権利条約、強制
失踪条約、障害者権利条約等があります。また、地域的な人権条約としては、欧
州人権条約、米州人権条約、アフリカ人権憲章等があります。
近年、人権擁護のための世界の取組は盛んになっており、我が国も、国際的に
重要な役割を果たすことが期待されています。
経済的、
社会的及び文化的権利に関する国際規約
(A規約)
人権の擁護 57
B規約は、人は生まれながらにして自由であるという基本的考えの下、個人の
生活を公権力の干渉や妨害から保護するという観点に立った権利、つまり自由権
的権利を中心に規定しています。
具体的には、表現の自由、移動の自由、身体の自由、宗教の自由、集会・結社
の自由に加え、参政権が規定されています。締約国は、全ての個人に対して、い
かなる差別もなしにこれらの権利が尊重され、確保されることを義務として負っ
ています。
我が国は、昭和54年
(1979年)
6月に、
A規約と共にこの規約を批准しました。
市民的及び政治的権利に関する国際規約
(B規約)
人種、民族に対する差別は依然として存在し、このような差別を撤廃するため
には、各国に対し、差別を撤廃するための具体的な措置の履行を義務付ける国際
文書を作成することが必要とされ、昭和40年(1965年)の国連総会におい
て、この条約が採択されました。
人種差別撤廃条約は、締約国が人権及び基本的自由の十分かつ平等な享有を確
保するため、あらゆる人種間の理解を促進する政策を全ての適当な方法により遅
滞なく実施すること等を内容としています。
我が国は、平成7年(1995年)12月に、この条約に加入しました。
あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約
(人種差別撤廃条約)
全ての人間は、そもそも生まれながらに自由かつ平等であることから、男女も
個人として等しく尊重されるべきであるとの基本的理念を実現すべく、昭和54
年(1979年)の国連総会において、この条約が採択されました。
女性であるとの理由のみによって生き方を制約されることなく、個人として男
性と平等な権利・機会・責任を享受できる、完全な男女平等
を実現することを目的として、遅滞なく措置をとることが、
締約国には求められています。
我が国は、昭和60年(1985年)6月に、この条約を批
准しました。
女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約
(女子差別撤廃条約)13452特集 人権擁護に関する世論調査
58 人権の擁護
世界には、貧しさや飢え、戦争等で苦しんでいるこど
もたちがたくさんいます。そのような現実を踏まえ、こ
どもの人権や自由を尊重し、こどもに対する保護と援助
を進めることを目指して、平成元年(1989年)の国連
総会においてこの条約が採択されました。この条約は、
18歳未満の全ての人の基本的人権の尊重を促進すること
を目的としています。
我が国は、平成6年(1994年)4月
に、この条約を批准しました。
児童の権利に関する条約
(児童の権利条約)
拉致を含む強制失踪が犯罪として処罰されるべきものであることを国際社会
において確認するとともに、将来にわたって同様の犯罪が繰り返されることを
抑止する意義を持つこの条約は、平成18年(2006年)に国連総会で採択され
ました。拉致を含む強制失踪を犯罪として定め、その処罰の枠
組みの確保及び予防に向け締約国がとるべき措置等について規
定するものです。
我が国は、平成21年(2009年)7月に、この条約を批准
しました。
強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約
(強制失踪条約)
拷問の禁止については、世界人権宣言及びB規約等において既に規定されてい
ました。しかし、1970年代に、一部の国の軍事独裁政権による拷問と見られる
行為に対し国際的な非難が高まったことを背景に、拷問を実効的に禁止する新た
な国際文書を作成する必要性が強く認識されるようになり、昭和59年(1984
年)の国連総会において、この条約が採択されました。本条約は「拷問」を公務
員等が情報収集等のために身体的、精神的な重い苦痛を故意に与える行為と定義
し、各締約国が拷問を刑法上の犯罪とするとともに、そのような犯罪人の引渡し
等について規定しています。
我が国は、平成11年(1999年)6月に、この条約に加入しました。
拷問及び他の残虐な、
非人道的な又は品位を傷つける
取扱い又は刑罰に関する条約
(拷問等禁止条約)
パンフレット
「よくわかる!こどもの権利条約」
人権の擁護 59
(写真提供 UN/DPI)
名 称
採択年月日
(上)
発効年月日
(下)
締結国・地域・機関数1経済的、社会的及び文化的権
利に関する国際規約
1966年12月16日
1976. 1. 32市民的及び政治的権利に関す
る国際規約
1966年12月16日
1976. 3.233あらゆる形態の人種差別の撤
廃に関する国際条約
1965年12月21日
1969. 1. 44女子に対するあらゆる形態の
差別の撤廃に関する条約
1979年12月18日
1981. 9. 35拷問及び他の残虐な、非人道
的な又は品位を傷つける取扱
い又は刑罰に関する条約
1984年12月10日
1987. 6.26
6 児童の権利に関する条約
1989年11月20日
1990. 9. 27強制失踪からのすべての者の
保護に関する国際条約
2006年12月20日
2010年12月23日
ニューヨークの国連本部で
「経済的、社会的及び文化的
権利に関する国際規約(A規約)」
に調印する園田外務大臣
[昭和53年(1978年)当時]
障害者の権利に関する条約 2006年12月13日
2008. 5. 38172(2021年8月現在)
173(2020年10月現在)
182(2020年10月現在)
189(2020年10月現在)
171(2020年10月現在)
196(2021年11月現在)
71(2023年7月現在)
185(2022年6月現在)
障害者の権利に関する条約
(障害者権利条約) 1345 依然として障害のある人が人権侵害に直面している状況を改善するため、法
的拘束力を有する新たな文書を作成する必要性が強く認識されるようになり、
平成18年(2006年)の国連総会においてこの条約が採択されました。
この条約は、障害のある人の人権・基本的自由の享有の確保等を目的とし、
障害に基づくあらゆる差別の禁止や、障害のある人の社会への参加・包容の促
進、条約実施の監視枠組みの設置等の、障害のある人の権利実現のために締約
国がとるべき措置等について規定しています。
我が国は、平成26年(2014年)1月に、この条約を批准しました。
我が国が締結している主要な人権関係条約
資料2特集 人権擁護に関する世論調査
60 人権の擁護
法務局・地方法務局 所在地等一覧
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あゆみ
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055‐252‐7239
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075‐231‐0131
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札幌市北区北 8 条西 2‐1‐1 札幌第 1 合同庁舎
函館市新川町 25‐18 函館地方合同庁舎
旭川市宮前1条 3‐3‐15 旭川合同庁舎
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福島市本内字南長割 1‐3
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秋田市山王 7‐1‐3 秋田合同庁舎
青森市長島 1‐3‐5 青森第 2 合同庁舎
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金沢市新神田 4‐3‐10 金沢新神田合同庁舎
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京都市上京区荒神口通河原町東入上生洲町 197
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名 称 所 在 地 電 話
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人権の擁護 61
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088‐822‐3331
089‐932‐0888
092‐739‐4151
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099‐259‐0684
0985‐22‐5124
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名 称 所 在 地 電 話
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和歌山市二番丁 3 和歌山地方合同庁舎
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〒 640‐8552
奈良地方法務局
大津地方法務局
和歌山地方法務局
人権の擁護 令和5年9月発行
編集発行 法務省人権擁護局
東京都千代田区霞が関1丁目1番1号 電話(03)3580‐4111
(代表)
(注記)本冊子は、
「令和5年版人権教育・啓発白書」を基にその概要を記載したものです。
みんなの人権110番
(全国共通人権相談ダイヤル)
こどもの人権110番
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女性の人権ホッ
トライン
インターネッ
ト人権相談受付窓口
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差別や虐待、
ハラスメント等、
様々な人権問題についての相談を受け付ける相談電話です。
電話
は、
おかけになった場所の最寄りの法務局・地方法務局につながり、
相談は、
法務局職員又は人権
擁護委員がお受けします。
こどもの人権問題は、周囲の目に付きにくいところで多く起こっています。そして、被害者で
あるこども自身も、その被害を外部に訴えるだけの力がまだ備わっていなかったり、身近な人に
話しにくいといったりした状況等から、重大な結果に至って初めて気付くという例が少なくあり
ません。そこで、こどもが発する信号をいち早くつかみ、その解決に導くための相談を受け付け
ています。
DVを始めとする女性に対する暴力、
各種ハラスメント、
ストーカー被害等、
女性をめぐる様々な
人権問題について、
専門に扱う
「女性の人権ホットライン」
を全国の法務局・地方法務局の本局に
設置して、
女性の人権問題をいち早くつかみ、
その解決に導くための電話相談を受け付けています。
法務省の人権擁護機関では、インターネットでも人権相談を受け付けています。
相談フォームに必要事項を入力して送信していただくと、あなたの住所を管轄する法務局・地
方法務局に相談に関する情報が送信され、後日、メール、電話又は面談により回答します。
インターネッ
ト人権相談 検 索
けん さく
じんけんそうだん
(注記)外国語による人権相談については、
19ページ参照
人権について困ったことがあれば...。
ひ と り で 悩 ま ず に ご 相 談 く だ さ い
人権について困ったことがあれば...。
ひ と り で 悩 ま ず に ご 相 談 く だ さ い
こどもの人権
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