法制審議会刑事法(情報通信技術関係)部会16第12回会議配布資料
取りまとめに向けたたたき台
(諮問事項「二」関係)
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第2-1 留置施設等との間における映像と音声の送受信による勾留質問・弁
解録取の手続を行うための規定の創設
1 裁判所と留置施設等との間における映像と音声の送受信による勾留質
問の手続
裁判官は、勾留を請求された被疑者に対し被疑事件を告げこれに関す
る陳述を聴く手続を行う場合において、裁判所に引致してこれを行うこ
とが困難となる事情があるときは、被疑者をその留置されている刑事施
設に在席させ、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しな
がら通話をすることができる方法によって、当該手続を行うことができ
るものとし、この場合においては、その冒頭において、これを刑事訴訟
法第207条第1項の裁判官として同法第61条の規定により行うもの
である旨を告げるものとすること。
2 検察庁と留置施設等との間における映像と音声の送受信による弁解録
取の手続
検察官は、被疑者をその留置されている刑事施設に在席させて、映像
と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすること
ができる方法によって、刑事訴訟法第205条第1項の規定による弁解
の機会の付与を行うときは、その冒頭において、これを同項の検察官と
して同項の規定により行うものである旨を告げるものとすること。
3 その他所要の規定の整備
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第2-2 映像と音声の送受信による裁判所の手続への出席・出頭を可能とす
る制度の創設
1 映像と音声の送受信による公判前整理手続期日等への出席・出頭
(1) 検察官・弁護人・裁判長ではない裁判官の出席・出頭
ア 裁判所は、相当と認めるときは、検察官及び弁護人の意見を聴き、
同一構内(裁判長が公判前整理手続期日又は期日間整理手続期日(以
下「公判前整理手続期日等」という。
)における手続を行うために在
席する場所と同一の構内をいう。イ及び(2)において同じ。
)以外に
ある場所であって裁判所の指定するものに検察官又は弁護人を在席
させ、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら
通話をすることができる方法によって、公判前整理手続期日等にお
ける手続を行うことができるものとし、この場合において、裁判所
の指定した場所に在席した検察官又は弁護人は、その公判前整理手
続期日等に出頭したものとみなすものとすること。
イ 裁判所は、同一構内以外にある場所に合議体の構成員(裁判長を
除く。
)を在席させ、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に
認識しながら通話をすることができる方法によって、公判前整理手
続期日等における手続を行うことができるものとすること。
(2) 被告人の出頭
裁判所は、相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意
見を聴き、同一構内以外にある場所であって裁判所の指定するものに
被告人を在席させ、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認
識しながら通話をすることができる方法によって、公判前整理手続期
日等における手続を行うことができるものとすること。
2 映像と音声の送受信による公判期日への出席・出頭
(1) 被告人・弁護人の出頭
ア 裁判所は、次の(ア)又は(イ)のいずれかに該当すると認める場合に
おいて、事案の軽重、審理の状況、当該公判期日において予定して
いる手続の内容、弁護人の数その他の事情を考慮し、やむを得ない
事由があり、被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがなく、
かつ、相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を
聴き、同一構内(裁判官及び訴訟関係人が公判期日における手続を
行うために在席する場所と同一の構内をいう。
このアにおいて同じ。)以外にある場所であって裁判所の指定するものに被告人を在席させ、
映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話を
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することができる方法によって、公判期日における手続を行うこと
ができるものとし、この場合において、裁判所の指定した場所に在
席した被告人は、その公判期日に出頭したものとみなすものとする
こと。
(ア) 被告人に疾病又は傷害があり、その程度、必要な医療の内容そ
の他の事情により、被告人が同一構内に出頭するときは、その症
状を著しく悪化させ、又は当該場所に在席する者その他の者を感
染させるおそれがあるとき。
(イ) 被告人の経歴、犯罪性のある者との関係その他の事情により、
公判期日への出頭に伴う移動に際し、被告人に危害を加え又は被
告人を奪取し若しくは解放する行為が行われるおそれがあるとき。
イ 弁護人は、裁判所がアの方法により公判期日における手続を行う
ときは、被告人が在席する場所に在席することができるものとし、
この場合において、弁護人は、その公判期日に出頭したものとみな
すものとすること。
(2) 被害者参加人・その委託を受けた弁護士の出席
ア 裁判所は、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から申出が
ある場合において、被告人又は弁護人の意見を聴き、審理の状況、
被害者参加人の数、被害者参加人が予定している訴訟行為の内容そ
の他の事情を考慮し、相当と認めるときは、裁判官及び訴訟関係人
が公判期日における手続を行うために在席する場所以外の場所であ
って裁判所の指定するものに被害者参加人を在席させ、映像と音声
の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることが
できる方法によって、その手続を行うことができるものとすること。
イ アの申出は、あらかじめ、検察官にしなければならないものとし、
この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知
するものとすること。
ウ 被害者参加人から委託を受けた弁護士は、裁判所がアの方法によ
って公判期日における手続を行うときは、被害者参加人が在席する
場所に在席して当該公判期日に出席することができるものとするこ
と。
3 映像と音声の送受信による裁判員等選任手続期日への出席・出頭
(1) 裁判所は、相当と認めるときは、検察官及び弁護人の意見を聴き、
呼び出すべき裁判員候補者の全部又は一部を裁判官及び訴訟関係人が
裁判員等選任手続を行うために在席する場所以外の場所であって裁判
所の指定するものに在席させ、映像と音声の送受信により相手の状態
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を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、裁判員
等選任手続を行うことができるものとし、この場合においては、裁判
所が指定した場所に在席した裁判員候補者は、その裁判員等選任手続
の期日に出頭したものとみなすものとすること。
(2) 裁判所は、相当と認めるときは、検察官及び弁護人の意見を聴き、
裁判官及び訴訟関係人が裁判員等選任手続を行うために在席する場所
以外の場所であって裁判所の指定するものに被告人を在席させ、映像
と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をするこ
とができる方法によって、その裁判員等選任手続を行うことができる
ものとすること。
4 その他所要の規定の整備
【検討課題】
(1) 映像と音声の送受信による公判期日への被告人の出頭
一定の軽微事件の公判期日の一部や控訴審の公判期日等、被告人の公判
期日への出頭が開廷要件とされていない場合(刑事訴訟法第284条、第
285条及び第390条参照)についても、被告人が出頭するときは、2
(1)と同様とするか。
(2) 被害者参加人・その委託を受けた弁護士の出席
被害者参加人から委託を受けた弁護士は、被害者参加人が2(2)により
映像と音声の送受信により公判期日に出席する場合以外の場合でも、映像
と音声の送受信により出席をすることができるものとするか。
(3) その他
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第2-3 証人尋問等を映像と音声の送受信により実施する制度の拡充
1 証人尋問を映像と音声の送受信により実施する制度
(1) 裁判所は、証人を尋問する場合において、次に掲げる場合であって、
相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、同
一構内(裁判官及び訴訟関係人が証人を尋問するために在席する場所
と同一の構内をいう。以下同じ。
)以外にある場所に証人を在席させ、
映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をす
ることができる方法によって、
尋問することができるものとすること。
ア 鑑定に属する供述を求める場合であって、証人の職務の内容、勤
務地、勤務の状況その他の事情により、証人が証言をすべき期日に
同一構内に出頭することが著しく困難であり、かつ、証人の重要性、
審理の状況その他の事情により、当該期日に尋問することが特に必
要であると認めるとき。
イ 証人に疾病又は傷害があり、その程度、必要な医療の内容その他
の事情により、証人が出頭のために現在場所から移動するときはそ
の症状を著しく悪化させるおそれがあると認めるとき。
ウ 証人が刑事施設又は少年院に収容中の者であって、次のいずれか
に該当するとき。
(ア) 証人の収容の理由、年齢、処遇の状況、精神状態その他の事情
により、証人が出頭のために現在場所から移動するときはその精
神の平穏を著しく害し又は適切な処遇の実施に著しい支障を生じ
るおそれがあると認めるとき。
(イ) 証人の経歴、犯罪性のある者との関係その他の事情により、同
一構内への出頭に伴う移動に際し、証人を奪取し又は解放する行
為が行われるおそれがあると認めるとき。
(2) 裁判所は、証人を尋問する場合において、刑事訴訟法第157条の
6第1項又は第2項に規定する方法によって尋問するについて、検察
官及び被告人に異議がなく、証人の重要性、審理の状況、当該方法に
よって尋問をすることの必要性その他の事情を考慮し、相当と認める
ときは、当該方法によって、尋問することができるものとすること。
(3) 裁判所は、同一構内以外にある場所に証人を在席させ、映像と音声
の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることがで
きる方法によって尋問する場合には、訴訟を指揮するために必要とな
る措置の内容その他の事情を考慮し、適当と認める場所に証人を在席
させるものとすること。
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2 鑑定を命ずる手続を映像と音声の送受信により実施する制度
(1) 裁判所は、鑑定を命ずる際に鑑定人を尋問し、又は鑑定人に宣誓を
させる場合において、相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁
護人の意見を聴き、同一構内以外にある場所に鑑定人を在席させ、映
像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をする
ことができる方法によって、尋問し、又は宣誓をさせることができる
ものとすること。
(2) (1)の場合には、裁判所は、訴訟を指揮するために必要となる措置
の内容その他の事情を考慮し、適当と認める場所に鑑定人を在席させ
るものとすること。
3 通訳を映像と音声の送受信により実施する制度
(1) 裁判所は、通訳人に通訳をさせる場合において、相当と認めるとき
は、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、同一構内以外にある
場所に通訳人を在席させ、映像と音声の送受信により相手の状態を相
互に認識しながら通話をすることができる方法によって、通訳をさせ
ることができるものとすること。
(2) 裁判所は、通訳人に通訳をさせる場合において、やむを得ない事由
があり、かつ、相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の
意見を聴き、同一構内以外にある場所に通訳人を在席させ、裁判所、
検察官並びに被告人及び弁護人が通訳人との間で音声の送受信により
同時に通話をすることができる方法によって通訳をさせることができ
るものとすること。
(3) (1)及び(2)の場合には、裁判所は、訴訟を指揮するために必要とな
る措置の内容その他の事情を考慮し、適当と認める場所に通訳人を在
席させるものとすること。
4 その他所要の規定の整備
【検討課題】
(1) 証人尋問を映像と音声の送受信により実施する制度
証人尋問を映像と音声の送受信により実施することができる場合とし
て、1(1)に「日本国内に所在させて証人として尋問することができない
ことにつきやむを得ない事由があり、その者の供述が犯罪事実の存否の証
明に欠くことができないと認めるとき」
(国外所在類型)を加えることと
するか。例えば、
1 当該証人が偽証をした場合について、我が国の偽証罪による捜査・訴
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追・処罰を確保し得るか
2 1が困難であるとして、当該証人の所在地国の偽証罪に相当する罪に
よる捜査・訴追・処罰を確保し得るか、それが1に代替するといえるか
3 証言の信用性を適切に評価するために必要な証拠を収集し得るか
などの点について、どのように対処することができるか。
(2) その他

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