矯正施設で活躍する心理職の声、あつめました。
法 務 技 官
と し て 働 く
少年鑑別所の法務技官
しかく少年鑑別所勤務(採用4年目)私は、昔は警察官になりたいと思っていました。しかし、ニュースやドラマを見る中で、非行や犯罪をした人の心境や動機といった、心の動きに関心が向くようになり、法務技官を志すようになりました。非行少年が、これまでの人生や他者に対してどのように感じ、考えているのかを知った上で、一人一人に合った処遇を考え、非行から立ち直ろうとする姿を見ることができるのが、少年鑑別所での仕事の魅力だと思います。新たな気付きとの出会い少年鑑別所での鑑別業務は、面接や心理検査、行動観察など多角的な視点から、少年の心理状態を把握します。そして、非行に至った要因を検討し、鑑別結果通知書という書面にまとめます。要は処遇前のアセスメントを行うことが役割ですが、それと同時に、少年が自分の気持ちに目を向けたり、行動を顧みたりできるようにして、一つでも多くの気付きを得てもらうことも、鑑別の醍醐味であると感じています。相談できる仲間の存在鑑別業務の難しさは、限られた時間・空間でケースを理解することだと思います。少年の全てを知ることは不可能ですが、だからといって無責任なことは言えず、自分の見立てが合っているのか不安になることがあります。そうしたときに、気軽に相談できる同僚がいることはとても心強く、また、切磋琢磨できる仲間がいるからこそ、向上心を持って仕事に励むことができています。専門性を地域で生かす鑑別のほかに、地域援助という相談業務も担っています。保護観察所や家庭裁判所など、関係機関からの依頼もありますが、地域住民の方から電話で依頼を受けることも多いです。支援の対象者に、面接や心理検査によるアセスメントを行うことは鑑別業務と変わりませんが、加えて、法教育を行ったり、ワークブックを使って問題行動に至るサイクルから抜け出す方法を一緒に考えたりするなど、介入も行っています。
しかく少年鑑別所勤務(採用21年目)少年鑑別所は「法務少年支援センター」として、地域における非行・犯罪の防止や健全育成に関する活動の支援にも取り組んでいます。思春期の子どもたちの行動理解に関する知識・ノウハウを蓄積してきた少年鑑別所の強みを生かしています。地域に根差して地域援助では、個人のほか、学校や児童福祉機関等の関係機関からの心理相談に応じています。また、少年院での勤務経験が豊富な職員が、中学校で夏休み前に非行防止教室をしたり、教職員の方に研修したりしています。最近は、インターネットでの検索のほか、過去に利用された方の「口コミ」や関係機関の紹介で電話・来談される方も多く、法務少年支援センターが地域に浸透しつつあることを実感しています。ワークブック地域援助では、面接や心理テストのほか、問題の種別に応じたワークブックも活用しています。平易な言葉が使われており、職員と一緒に考えながら個別に取り組むので、本人の意欲があれば一定の効果が期待できます。また、終了後、ワークブックは自宅に持ち帰るため、対象者にとっては、自分が考えたことをいつでも読み返すことができるという利点もあります。現在、性的な問題行動、暴力や薬物乱用等の防止を目的とした6種類のワークブックがあります。今後、より多くの問題に対応できるように、新たなワークブックの作成に向けて検討が進められています。地域援助で使用する「法務少年支援センター」の建物
ワークブック
鑑別結果通知書の内容を検討する「判定会議」の様子
(注記)「法務技官」には心理職以外もおり、このパンフレットでは「法務技官(心理)」のことを「法務技官」と記載しています。
しかく刑務所勤務(採用22年目)刑務所の法務技官は、受刑者に面接や心理検査を実施し、性格や能力の特徴、生活歴、作業適性、保安上の課題、出所後の生活見込みなどを調べ、書類にして処遇方針を策定しています。これを処遇調査と言い、結果をまとめた書類は、刑務所での処遇の基礎資料となるので、その人らしさが伝わるよう工夫しています。処遇調査で面接できるのは短時間ですが、受刑者が自身に向き合い、なぜ事件を起こしたかを自らの言葉で語る大切な機会です。抵抗が強く、語ることが難しい受刑者も多いですが、最初はぶっきらぼうだった受刑者が、面接で過去を振り返る中、「もう少し、まともに生きたい」と絞り出すようにつぶやく場面にも出会いました。このような変化の芽生えは、私たちが真摯に受刑者の語りに耳を傾けることで生まれてくると実感しています。芸術療法の中で受刑者に対し、治療教育的な関与を行うこともあります。私の働く刑務所では、集団適応が困難な受刑者に対し、大学教授の講師や、刑務官とともに、音楽療法やコラージュ療法を行ってきました。普段は他者との関わりを避け、言葉での自己表現をしづらい受刑者が、芸術療法ではしみじみと思い出を語ったり、他の受刑者と合奏を楽しんだりするなど、普段とは違う一面を見せてくれます。こうした様子を、生活指導を担当する刑務官と共有することで、多面的な受刑者理解が進むよう努めています。多職種協働の中で受刑者の抱える問題は複雑で、改善更生は一筋縄ではいきません。刑務所では、刑務官を始め、医療、福祉、教育、作業など専門性の異なる職員がチームを組み、受刑者の改善更生に向け協働しています。私もその一員であり、他の専門職の考え方に刺激を受けつつ、自分は心理職として目の前の受刑者に対して何ができるか、自問自答しながら勤務しています。こうした多職種連携は、刑務所勤務の魅力の一つと感じています。
しかく刑務所勤務(採用5年目)私は、調査センターという、通常よりも精密な処遇調査を行う刑務所で働いています。面接の中では、本人の視点から人生を振り返り、犯罪によって本人が何をしようとしていたのか、今後、再犯をしないためにどのように変われば良いのかを一緒に考えています。心理検査等も活用しながら、本人の特性を多角的に理解し、その問題点と強みを見極めるとともに、それらが今後の立ち直りに役立ち、生かせるようにつなぐことに、やりがいを感じています。受刑者は、調査期間を終えると処遇を行う別の刑務所に移送されますが、刑期を終えた時に、もう一度、社会で頑張ろうと思えるような手助けができたらと考えています。受刑者とのカウンセリング刑務所の生活にうまく適応できない受刑者には、法務技官がカウンセリングなどを行っています。これまでの人生で傷付き体験を重ね、不信感が強く、何かと被害的に受け止めやすいといった共通点が彼らにはあり、対応に苦慮することが少なくありません。2年以上面接を続けていたある受刑者が、出所後、手紙で近況を知らせてくれたことがあります。そこには、「大変だけど、今は人生捨てたものじゃないと思えている。」といった旨の記載がありました。自分の人生を恨み、周りを憎み、投げやり気味となっていた彼の言葉とは思えず非常に驚くとともに、可能性を感じる経験となりました。成長とやりがい自分の無力さを痛感させられることも多い難しい業務です。しかし、アセスメントとトリートメントの両方の力が試されるものであり、非常にやりがいを感じています。変化の可能性に焦点を当て、彼らの社会復帰に貢献できるよう、今後も努力を続けていきたいと思います。
しかく刑務所勤務(採用10年目)改善指導と呼ばれる、受刑者への専門的な指導を担当しています。複数名の受刑者を教室に集め、法務教官などと協力してグループワークを行います。中でも、性犯罪や薬物犯罪に関しては、エビデンスのある認知行動療法をベースとしたプログラムを行っており、指導者や受刑者同士で意見を交わしながら自己理解を進められるようにしています。犯行時及び事件当時の状況等についても振り返り、再犯防止に向けて気を付けるべきリスクを踏まえた上で、社会復帰後、どのように生活していくかという計画を立てます。改善指導は、長期間同じ受刑者と関わります。実際に変化(改善)という結果を出すことの難しさに直面させられま刑務所の法務技官
少年院の法務技官
しかく少年院勤務(採用12年目)民間企業で働いていた頃、過重労働や対人摩擦を背景として、多くの同僚が離休職していく中で、メンタルケアの必要性を痛感しました。その経験をきっかけに、臨床心理士になることを志し、大学院へ進学しました。入学当初は、医療現場の心理士になる将来を思い描いていたのですが、大学院で、元法務技官の先生による講義を受けました。その中で、非行や犯罪からの立ち直りに、心理学の知識や技術を役立てられるとすれば、大きな達成感や充実感を得られるのではないかと感じ、矯正の道に進むことを決めました。他職種と関わる少年鑑別所で採用され、刑事施設での勤務を経て、現在は、少年院で勤務しています。少年院は、非行少年に矯正教育を行う場所です。そして、法務教官という、矯正教育の専門家が、少年たちと密に関わりながら、改善更生に向けて働き掛けています。少年院で法務技官に求められる役割には、1法務教官へのコンサルテーション、2多職種連携というものがあると思います。非行を正しく捉え、適切な処遇をするためには、知能や発達特性、トラウマ、愛着といった、心理学領域の概念を理解することが前提となります。このため1のコンサルテーションの役割は大切です。また、再非行抑止のためには、少年の立ち直りを支えられるような社会環境を整備することも重要です。このため、少年鑑別所や保護観察所といった関係機関と情報共有しながら、2の連携を強化する役割を担っています。法務技官のやりがい法務技官にも異動があり、少年鑑別所や刑務所、少年院など、いろいろな矯正施設で働くことになります。面接や心理検査等を通じて、対象者に直接援助する職場もあれば、現在の私のように、コンサルテーションを通じた後方支援や連携を求められる職場もあります。このように、臨床家として様々な経験を積めますので、やりがいを感じられる仕事だと思います。法務省矯正局
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法務少年
支援センターすが、同時に、長丁場の改善指導だからこそ得られるやりがいもあります。興味を持って関わること担当していたグループの受刑者が事件当時の状況を振り返った時のことです。内容を聴くと、明らかにうつ症状が表れていたように思われたので、その見立てに基づいた助言を行いました。すると、その受刑者はハッと気付いた様子で、当時の状況や出所後のリスクとその対処方法についての理解をより深めていくことができました。その後、受刑者が作成した感想文を読む機会があり、私の助言を取り上げた上で「受けて良かったです。」と感謝を示してくれていたことが心に残っています。こうしたやり取りは、受刑者を「その行動(事件)を起こした人」といったニュートラルな視点で見て、興味を持って関わることで生まれることが多いと思います。法務技官を志す方は、普段から人と関わったりニュースを見たりした際、「なぜだろう」、「どうしてだろう」と相手を知ろうとする意識を持っておくと、法務技官として受刑者や非行少年と向き合ったときに役立つと思います。
受刑者の処遇方針などを検討する処遇審査会の様子
保護者説明会の様子
法務技官のこと
法務少年支援センターのこと
法務省専門職員採用試験のこと
法務省人間科学系インターシップのこと
もっと知りたい方はHPへ
法務技官広報用資料 令和5年8月大阪矯正管区

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