資 料3 - 1 -
【課題事項に係る具体的施策】
1.推薦・委嘱の手順、年齢条件
〔現状認識〕
「推薦・委嘱の手順」については、従来、退任する保護司が自らの人脈を
活用して後任者を探す方法が主流であったが、平成20年度から、保護司活
動に対する地域の理解を深め、幅広い人材から保護司の候補者を確保すると
ともに、保護司候補者の推薦手続の一層の適正化を図るため、地域の事情に
精通した様々な分野の方々の協力を得て、保護区ごとに保護司候補者検討協
議会を設置している。
「年齢条件」については、少年との世代ギャップの拡大を考慮し、平成1
6年度から再任時上限年齢を76歳未満(新任時65歳以下)とする定年制
を導入した。また 「保護司制度の基盤整備に関する検討会」報告書におい、て、年金(厚生年金)の受給年齢が65歳に引き上げられることや65歳で
も就業中の者が増加していることから、定年退職後に保護司活動に意欲を示
す者の委嘱を促進するため、新任時の年齢制限を1歳程度引き上げることが
効果的であるとの指摘がなされ、平成24年度から新任時の年齢制限を原則
として66歳以下とした。さらに、令和3年度から、保護司本人の希望によ
り、78歳になる前日まで再任を可能とする特例再任の取組を導入した。
このほか、平成28年度から、保護司会が地域住民又は地域の関係機関・
団体に所属する者等に保護司活動を体験する機会を提供する 「保護司活動、インターンシップ」を実施しており、令和4年度からは、保護司が地域の関
、 、
係機関・団体 民間企業等に対し保護司活動等について紹介することにより
いわゆる現役世代を始め保護司適任者を確保する間口の拡大等を目的とし
た 「保護司セミナー」を実施している。、しかしながら 「人となりが分かるから 「保護司会の活動も大事で、協
、 。」、
調性が求められるから 」などといった理由から、依然として、保護司適任。者の確保を保護司の人脈に依存している状況にあり、この方策が地域によっ
ては限界に達しているとの指摘がある。また、平均寿命の延伸に加え、高年
齢者雇用安定法の改正(令和3年4月1日施行)により、70歳までの就業
機会を確保(努力義務)することとされたことなどから、委嘱時(新任時)
の上限年齢との間に齟齬が生じているとの指摘がある。
〔課題事項に対する保護司の主な意見〕
保護司からは、次のような意見が寄せられている。
1適任者確保の在り方
・新任保護司の発掘とともに、現役の保護司の早期退任を防止する方策
が必要である。
・地方公共団体と協働して計画的に適任者確保を進める。
・BBS会員や更生保護女性会員の中から新任保護司を推薦する。
・女性保護司適任者の確保は大きな課題。更生保護における女性の存在
は、更生保護及び犯罪予防啓発の大きな前進となる。
・保護司候補者検討協議会のスムーズな開催に保護観察所が積極的に関
与する。保護司・保護司会任せにしない。
・保護司活動インターンシップを積極的に活用する。
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2公募制の導入
・まずは保護司や保護司会に関する認知度の向上があってのこと。出来
るだけ多くの方々、特に若い方々に知ってもらう必要がある。
・公募制による自薦を試験的に実施する。ただし、どの機関が採否の判
断をするのかが課題。保護観察所が公募・選考するべき。
・公募制に準ずる形で、保護司セミナーの実施や地方公共団体が発行す
る広報誌を通じた方法により、広く人材を求めた方が良い。
・広報等をきっかけに自発的に保護司会や保護観察所に問合せがある。
必要な情報は保護観察所から保護司会へ連絡しているなど、既に公募
的な取扱いがされている。
・保護司は誰でもいいというものではない。お願いした人を推薦してい
くべき。
・保護司委嘱に関しては、候補者の人物像等が把握できる推薦の形が望
ましく、公募制には不安が残る。
・時として保護司会の中で、長年培われてきた事柄に対する新任保護司
のアジテーター的言動に、違和感を覚える保護司も存在する。公募制
は制度というより、各地区の保護司会に委ねた方が良い。
3自薦者への対応
・自薦で保護司になった人は、自身が考えていた保護司活動と実際の活
動にギャップが生じ、早期に退任したり、保護司会の結束を乱すこと
がある。
・自薦の人に生じるギャップについては、事前説明を十分にするほか、
保護司活動インターンシップを活用する。
・自薦の場合は、その人となりが分からないので、保護司会としても、
その人を候補者として推薦すべきか判断に迷ってしまうので、対応手
続をマニュアル化する必要がある。
・自薦者についての保護司適任の判断や不適として断ることの難しさに
ついて検討が必要である。
4年齢条件
・新任について、委嘱時原則66歳以下とされているが、近年の定年延
長により、定年退職後に地域のボランティアに参加しようという世代
を保護司に迎えることが難しくなっている。
・現役世代では、保護司活動の時間を確保することが難しいため、民間
企業の定年延長が進んでいることを踏まえ、委嘱・再任時の上限年齢
を上げたり、特例再任の期間を延ばしてはどうか。
・新任の委嘱時年齢を66歳以下から71歳以下に、上限年齢も76歳
未満から81歳未満へと年齢条件の「5年引き上げ」が望ましい。
・委嘱時の年齢制限をこれまでの委嘱時「原則66歳以下」から 「原、則68歳以下」にする等、引き上げることを検討してはどうか。
、 、
・高齢化が進んでいることを理由に 定年年齢を更に引き上げることは
若い方々の新規委嘱にとって得策でない。若い保護司の中には、世代
間格差や不満を感じることがある。
・社会が大きく変化してきている昨今、委嘱時の年齢については柔軟に
対応すべき。
5任期
・現在の2年から3年に見直してもいいのではないか。
・自薦者を含め保護司になってもらったものの、様々な不具合があった
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としても、解嘱しにくい場合もある。一つの区切りも時として必要。
6再任
・再任の年齢上限の引き上げは保護司・保護司会の高齢化を進行させ、
世代交代を阻害する要因となる。
・委嘱時の年齢条件を70歳以下とし、再任時年齢条件を定めない。7
8歳以降の保護司活動(事件担当を含む )の制約を設けない。。7保護司法(第3条・第7条関係)
・保護司は、人が人として、同じ地域社会の一員として、処遇を通じて
改善更生を支える役割を担っている以上、第3条の条件は当然に具備
していて欲しいものである。
・保護司適任者確保が急務の中、第3条の条件を全てクリアすることを
求めると、困難さも感じる。
・第7条の2年ごとの任期は必要。
〔今後講じていく施策等〕
(1) 保護司活動インターンシップや保護司セミナ
保護司会の推薦によらず、
保護司候補
ーの実施、地方公共団体の広報誌等を通じた広報・周知により
、 既に公募の取組を 実施している保護司会があ
者を募集する いわゆる 既に
ることを踏まえ、保護局において、令和6年度中に公募の取組の好事例を
共有するとともに、保護観察所においては、当該好事例を参考に、保護司
会の意向を十分に踏まえ、公募の取組を試行すること。
(2)保護局において、令和6年度中に 自薦等保護司会の推薦によらない保、ついて、適任者確保の観点から、保護司活動インター
護司候補者の選考に
係るガイドラインを策定するととも
ンシップを活用することなどを含む
に、保護観察所においては、当該ガイドラインを参考に、保護司会の意向
を十分に踏まえ、マニュアルを作成すること。
(3)保護観察所及び保護司会において、令和7年度から、保護司活動インタ
ーンシップや保護司セミナーへの参加、地方公共団体の広報誌等を通じて
保護司に関心を持った者や、地方公共団体の職員や職域団体の関係者であ
った者のうち、現時点では都合により直ちには保護司になることができな
い者について、本人の意向を十分に踏まえ、将来の保護司を始めとする更
生保護ボランティアの候補者として登録するとともに、保護司の地域活動
だけでなく広く地域での更生保護活動についても理解・協力を得られるよ
うに情報提供すること。
(4)上記(3)の登録について、保護観察所及び保護司会において、令和6
年度中から、地方公共団体や職域団体の理解・協力を得て、定年退職等が
見込まれる当該団体の職員等に対して、社会貢献活動としての保護司や更
生保護ボランティアについての説明を行うとともに、適任者である職員等
を推薦してもらえるよう地方公共団体や職域団体等に対して積極的に働き
掛けること。
( 3)社会経済情勢の変化に伴い、定年年齢が延長していることを踏まえ、5令和7年度から、新任委嘱時の上限年齢を撤廃すること。ただし、保護司
会における年齢層のバランスに留意すること。
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( 4)人口減少と高齢化が進み、超高齢社会を迎えた日本社会において、で6きる限り長く保護司活動を継続できることが望ましく、特例再任の取組の
実施状況をよく見極めつつ、退任年齢の引上げについて検討すること。
検討に当たっては、 本人の希望や保護観察等事件の担
年齢のみならず、
当を含めて保護司活動を継続することができるか等を総合的に 判
考慮して
となるよう 次世代の
断できるような仕組み について留意すること。また、
保護司組織 の新陳代謝・活性化
保護司を育成し、層の厚い を構築していく
の観点から、78歳に達した日以降は 役職定年 とす
役職の任期・ について
ることに留意すること。
( 5)上記( 3)及び( 4)の取組について、いわゆる現役世代が、早
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い時期からできるだけ長く保護司活動を継続していくことが重要であるこ
とから、仕事をしながらでも保護司活動が可能となるような環境の整備に
努めること。
( 6)保護司候補者検討協議会について、保護観察所と保護司会が緊密に連8、 ( 、 、 )
携し 保護区より小さな単位 分区・支部 小・中学校区 公民館単位等
での開催や年間に複数回の開催により、丁寧かつ効果的に地域社会の保護
司候補者の確保を実施すること。
( 7)保護司活動インターンシップや保護司セミナーの取組により、保護司9の社会的認知度が高まり、これまでとは異なる層から保護司候補者の確保
に奏功している例もあることから、これらは保護司会主催の取組ではある
ものの、保護司会の意向を十分に踏まえ、保護司会と保護観察所との共催
にするなど、保護観察所が積極的に支援すること。
( 8)保護司委嘱後に保護司活動に関する認識の齟齬が生じることを未然10に防ぐ ため、保護司活動インターンシップや保護司
など適任者を確保する
セミナーの取組においては、個人情報の取扱いに留意しつつ、特に、処遇
活動の実際の状況や保護観察官との役割分担、犯罪予防活動や保護司会の
意義について十分な理解を得られるよう、保護観察所が積極的に支援する
また、保護司活動インターンシップについては、参加者が保護司活
こと。
動に対する理解・関心を高められるようにすること、参加者の保護司とし
ての適格性を十分に確認できるようにすることなどを踏まえ、体系的に保
護司活動を体験する機会を提供すること。
11 幅広い年齢層から保護司の適任者を確保するためには、いわゆる地( 9)域の名士にとどまらない多様な保護司像が求められる。その中にあって、
保護司 は、保護司会の会員として組織的な活動に取り組むことが求めらにれており、その基本的な資質として人格及び行動には誠実さや 協調
信頼性
が求められることはもとより、保護司会の会員として組織的な活動に取性が要請されること、また、多忙とさ
り組むに当たり相互に協力し合うこと
れるいわゆる現役世代の者であっても、地域活動を含む保護司活動のため
に必要な時間を調整・確保できるのであれば保護司の適任者たり得ること
なども踏まえ、保護司法第3条(推薦及び委嘱)第1項各号に掲げる保護
司の具備条件及びその運用の見直しについて検討すること。

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