G7 日本 2023
司法大臣コミュニケ(仮訳)
(東京宣言)
2023年7月7日 東京
はじめに
1. 我々、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、イギリス(英国)及びアメリカ合衆国(米
国)の法務大臣及び司法長官並びに欧州連合(EU)の司法委員は、2023年7月7日に東京で開
催されたG7司法大臣会合において、ウクライナの司法大臣及び検事総長並びに国連開発計画
(UNDP)及び国連薬物・犯罪事務所(UNODC)の代表者と会った。本会合は、大小全ての国の
利益のために国連憲章を尊重しながら法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化
することを目的とする、日本国法務省が外交一元化の下で推進する司法外交の取組の一環とし
て開催された。
2. 我々は、昨年の議長国ドイツの下、ベルリンで開催されたG7司法大臣会合のモメンタ
ムを維持・強化するとの確固たる決意を確認し、特に前例のない地球規模の課題の中にあって、
我々の社会の礎となる法の支配及び基本的人権の尊重といった共有された価値を着実に推進す
るとの共同コミットメントを再確認した。我々は、全てのパートナーに対して、あらゆる人が恩恵を
受けることができる社会作りに向けて共に取り組むことを呼びかける。
I. 司法インフラ整備等を通じたウクライナ復興支援
3. 我々は、引き続き、明白な国際法違反を構成する、ロシアによる、違法で、挑発に基づ
かず、正当化できないウクライナに対する侵略戦争を最も強い言葉で非難し、ウクライナと共にあ
るという揺るぎないコミットメントを改めて表明する。
4. 我々は、昨年のG7司法大臣会合において採択されたベルリン宣言の堅固なコミットメン
トを再確認するとともに、ベルリン宣言、及び、2023年5月19日に広島サミットで発表されたウク
ライナに関するG7首脳声明に沿って、ロシアによるウクライナに対する侵略戦争の過程で犯され
た残虐犯罪に責任を負う者に対する責任を確保するためのあらゆる努力を行うため、ウクライナ
当局と引き続き協力し、緊密に調整する。我々は、この点に関し、引き続きG7及びそのパートナ
ーによるイニシアチブを支援するため、パートナーと協働する。我々は、被害者及び目撃者が捜
査において果たす重要な役割を認識しつつ、また、ウクライナ当局を支援しつつ、紛争に関連する
性的及びジェンダーに基づく暴力を含む、ウクライナにおける残虐犯罪に関する捜査訴追を支援
するとの我々のコミットメントを再確認する。我々は、2023年7月3日、ユーロジャストにおいて、
ウクライナに対する侵略犯罪の訴追のための国際センターの活動が開始されたことを歓迎する。
5. 加えて、我々は、G7の法務大臣及び司法長官並びに EU 司法委員として、ウクライナの
「ビルド・バック・ベター」に向けた努力、とりわけ、法務・司法分野で行われる改革を支援するとの
コミットメントを再確認する。我々は、このような取組が、法の支配に基づく、より強固で強靭な社
会を再構築する基礎となり、ウクライナのEU加盟プロセスに貢献することを認識する。我々は、G
7ウクライナ大使支援グループによる司法及び汚職対策改革の推進における取組を賞賛する。
我々は、2023年6月21日にロンドンで開催されたウクライナ復興会議等のウクライナを支援す
るために進行中の二国間、多国間及び地域的な取組を歓迎し、これらに引き続き参加するととも
に、ウクライナの復興及び再建に向けたモメンタムを強化するための我々の努力を引き続き連携
させていく。我々は、ウクライナの長期的な再建に関し、ロシアが賠償義務を果たすことを確保す
るべく努力を継続するとともに、ロシアがウクライナに加えた損害を賠償するまで、我々の国内に
おいて、我々のそれぞれの法制度と整合する形で、ロシア政府の資産を凍結し続けることを再確
認する。
6. 我々は、汚職が社会の安定と安全を脅かし、民主主義制度及び価値を毀損し、法の支
配を危険にさらすことを認識しつつ、汚職対策が、G7がウクライナに対して更なる支援を提供して
いくべき極めて重要な分野であると認識する。我々は、国際社会からの支援によるものを含め、
ウクライナにおいて汚職と闘うために行われている多大な努力を歓迎する。我々は、汚職防止の
取組が、資源の公平、透明かつ公正な配分にとって不可欠な要素であり、ウクライナが戦争から
一層強固に立ち直ることを確保するために不可欠であることを強調する。
7. この目的を実現するため、我々は、G7、ウクライナ、及びUNDP、UNODCを含む関連
国際機関の専門家を結集するための柔軟かつ包括的なプラットフォームとして、日本の調整の下、
G7司法大臣の「ウクライナ汚職対策タスクフォース」(ACT for Ukraine)の設立に取り組む。「ウクラ
イナ汚職対策タスクフォース」は、G7ウクライナ大使支援グループ並びに汚職対策に従事する既
存のパートナー及び EU 加盟プロセスを含む継続的なイニシアチブとの緊密な協議及び調整を通
じて、情報共有、ウクライナにおいて進行中及び計画中の汚職対策イニシアチブの棚卸し、ウクラ
イナの汚職対策ニーズの分析、ウクライナのニーズに合わせた効果的な能力構築・技術支援プロ
ジェクトの検討を含むあり得る戦略策定の場として機能する。
8. また、我々は、ウクライナに対し、適切な方法で、能力構築プログラム及び法制度整備
支援の提供を通じて、その法執行機関及び司法機関の能力を向上させるための支援を行う。
我々は、こうした課題について、UNDP、UNDOC、経済協力開発機構(OECD)、欧州評議会、国
際開発法機構及び国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI)等の関連機関によるG7との協力
を歓迎する。
II. 法の支配の推進に向けたG7の法務・司法分野での協力体制構築
9. 我々は、法務・司法分野における国際的な諸課題に対処する上でのG7の重要な役割
を重ねて表明する。我々は、さらに、G7内における、そして関連する機関及びイニシアチブとの間
における協力と調整が、国際社会における法の支配の促進に貢献する鍵となる要素であることを
認識する。我々は、法の支配を全世界に促進するため、国際的なパートナーと共に取り組むこと
にコミットする。
10. 我々は、共有された価値を促進するため、適切な方法で、他国の司法及び汚職対策分
野に対する法制度整備支援及び能力構築を提供し、又は、こうした取組を支援することにコミット
する。我々は、我々の支援は、共有された価値を尊重しつつ、相互理解に基づき、裨益国の社会
的、経済的、文化的、法的その他の背景に適合したものであるべきことを認識する。我々は、法制
度整備支援及び能力構築の提供における協調的アプローチを強化し、相乗効果を追求し、相互
の重複を避けるために、情報を共有し、進行中又は計画中のイニシアチブ間の連携を図るために
必要な措置を探求する。
11. 我々は、国際組織犯罪防止条約(2000年パレルモ条約)で掲げられているように、犯
罪収益の没収及び新たな形での協力を促進すること等により、協力を加速化し、最も深刻な形態
の国際組織犯罪との闘いを強化することに取り組む。
12. 我々は、2030年アジェンダの実施と、全ての人の人権の実現、ジェンダーの平等及び
全ての女性と女児のエンパワーメントの達成を目指す17の持続可能な開発目標の実現へのコミ
ットメントを強調する。こうした背景を踏まえ、我々は、ジェンダーの平等を促進し、あらゆる多様性
を持つ女性及び女児並びにLGBTQIA+の人々の人権及び尊厳を完全に尊重し、促進し、保護
するための世界的なリーダーシップを発揮する上での G7 の役割を再確認する。我々は、ジェンダ
ー平等及びジェンダー平等アクセスを達成するための適切な政策及び計画を策定し、実施し、こ
の点に関し、女性及び女児のエンパワーメントの推進に対する障害を取り除くよう努力する。我々
は、性別を理由とした犯罪並びにあらゆる形態の性的及びジェンダーに基づく暴力を強く非難す
る。
III. インド太平洋における「法の支配」推進に向けたG7とASEAN等との法務・司法分野での連携13. 法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序に対する重大な脅威と挑戦を目の当たりに
する中、我々は、平和、安定及び繁栄を促進するための多国間主義及び国際協力の重要性を再
確認し、共有された価値の推進を含め、世界中の主要なパートナーとの関係を強化するための行
動をとることにコミットする。この文脈において、我々は、包摂的で、繁栄的で、安全で、法の支配
に基づく、また、主権、領土保全、紛争の平和的解決、基本的自由及び人権を含む共有された原
則を保護する、自由で開かれたインド太平洋の重要性を重ねて表明する。我々は、共有された価
値の推進に向けて、ASEAN及びその加盟国を含む地域パートナーとの調整を強化するとの
我々の共有されたコミットメントを強調する。この目的を実現するため、我々は、G7議長国である
日本のイニシアチブの下、本会合の機会に、法務・司法分野におけるASEANとG7の史上初とな
る閣僚級会合である「ASEAN・G7法務大臣特別対話」を開催できたことをうれしく思う。我々は、
ASEAN各国の法務大臣及び司法長官並びにASEAN事務総長と会談する歴史的な機会を強く
歓迎した。
14. 我々は、ASEANの中心性及び一体性に対する揺るぎない支持、並びに、自由で開か
れたインド太平洋(FOIP)と基本的原則を共有するインド太平洋に関するASEANアウトルックに
沿った協力を促進するとの我々のコミットメントを再確認する。我々は、法務・司法分野における共
通の関心事項について議論するため、二国間及び多国間で、ASEAN各国との対話を継続して
いく。その際、我々は、ASEAN各国の多様性を尊重し、強固で永続的な関係の構築に向けて、A
SEAN各国と関与していくことにコミットする。
15. 我々は、このような関係を構築するためには、長期にわたる持続的で建設的かつ有意
義な関与が必要であることを認識する。特に、我々は、相互の信頼と理解を構築する上での役割
を含め、G7及びASEAN各国の次世代の養成及びその間の協力を支援することの重要性を認
識する。
16. この目的を実現するため、我々は、G7議長国である日本のイニシアチブによって創設さ
れた「ネクスト・リーダーズ・フォーラム」を歓迎する。このフォーラムは、G7及びASEAN双方のそ
れぞれの法務・司法を所管する省庁から、当該分野の取組に従事する若い有望な職員を定期的
に結集する。このフォーラムは、私たちの次世代のリーダーが集結し、共通の課題について議論
し、情報、知識及びベストプラクティスの共有を通じて互いに学び合い、それぞれの法制度が、そ
の違いにかかわらず、どのように共通の価値を促進し、実施できるかをよりよく理解する機会を提
供する。我々は、このフォーラムがG7とASEANの未来志向の関係に道を開くとともに、共有され
た価値に基づく対話を更に促進することを確保するべく努めていく。

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