101第3章
人権に関わりの深い
特定の職業に従事する者
に対する研修等 102102
第3章 人権に関わりの深い特定の職業に従事する者に対する研修等
1 研修
(1) 検察職員
検察職員に対しては、経験年数に応じて実施する各種研修において、人権等に関する
講義を実施しているほか、日常業務における上司による指導等を通じ、基本的人権を尊
重した検察活動の徹底を図っている。
令和4年度の研修としては、新任検事を対象とした「新任検事研修」や任官後おおむ
ね3年前後の検事を対象とした「検事一般研修」等において、犯罪被害者や被疑者・被
告人等の人権に関する講義及び国際人権関係条約に関する講義等を実施した。
(2) 矯正施設職員
初任研修課程及び任用研修課程等において、新採用職員、幹部職員等に対し、被収容
者の権利保障・国際準則等、人権啓発、個人情報の保護、犯罪被害者の人権、セクシュ
アルハラスメント等に係る講義を実施しているほか、憲法、成人矯正法等の講義におい
ても人権に関する視点を取り入れている。
また、令和4年度は、専門研修課程において、矯正施設で勤務し、被収容者の処遇等
に従事する職員に対し、相手の立場に立ち、相手の気持ちを考えながら冷静な対応がで
きる能力を習得させるとの観点から、民間プログラムによる実務に即した行動科学的な
視点を取り入れた研修を行った(
「アンガー・マネジメント」研修:刑事施設の中間監
督者及び少年院の専門官等29人。その他別途指定した施設において臨時的に実施。)。
さらに、
参加した研修員を講師として所属する矯正施設においても自庁研修を実施した。
このほか、各矯正施設においては、事例研究、ロールプレイング等の実務に即した自
庁研修を行うなど、職員の人権意識の向上に努めている。
(3) 更生保護官署関係職員
更生保護官署関係職員を対象として、在職年数等に応じて実施している各種研修にお
いて、保護観察官に対しては、犯罪被害者及び保護観察等対象者等の人権等に関する講
義を、社会復帰調整官に対しては、犯罪被害者及び医療観察対象者の人権等に関する講
義を、それぞれ実施するなどしており、令和4年度は延べ353人に対して、人権に関す
る講義を実施した。
保護観察所が実施している全ての保護司を対象とした地域別定例研修や保護司として
の経験年数等に応じた各種研修においても、保護観察等の処遇の場面で人権や個人情報
の取扱い等に配慮するよう啓発に努めている。
(4) 出入国在留管理庁職員
出入国在留管理庁職員を対象に、在職年数等に応じて実施している出入国在留管理庁 103103第3章人権に関わりの深い特定の職業に従事する者に対する研修等
職員研修において、基本的人権の尊重、人権擁護の現状及び人身取引関係の講義科目を
設置しており、令和4年度は、621人が参加した。
また、各地方出入国在留管理官署の業務の中核となる職員を対象とした人権研修にお
いて、人権問題に関する知識を深め、適切な業務処理に資することを目的に、人権に関
する諸条約等についての講義を実施している。
さらに、人身取引及び配偶者からの暴力(DV)事案を取り扱う中堅職員を対象に、
これら事案に対する知識・意識向上のため、人身取引対策及びDV事案に係る事務従事
者研修を実施している。
人権研修並びに人身取引対策及びDV事案に係る事務従事者研修については、令和4
年度は、合計79人が受講した。
(5) 教師・社会教育関係職員
独立行政法人教職員支援機構及び各都道府県等において、人権尊重意識を高めるため
の研修を実施している。
また、社会教育主事講習において人権問題を取り上げ、人権問題に関する正しい知識
を持った社会教育主事の養成を図っている。令和4年度は、全国14か所(計16講習)の
大学その他の教育機関に社会教育主事講習を委嘱した。
(6) 医療関係者
厚生労働省では、医療関係者の養成課程において、人の尊厳を幅広く理解するための
教育内容を含めることを求めるなど、患者等の人権を十分に尊重するという意識・態度
の育成を図った。
(7) 福祉関係職員
主任児童委員を対象に、地域住民や関係機関との連携について考える研修等を実施す
ることで、人権の尊重等についての理解を深めている。
また、児童福祉関係施設におけるこどもの人権を尊重した支援を充実させるため、国
立武蔵野学院附属人材育成センターにおいて研修を行った。
虐待を受けたこどもの保護等に携わる者の研修の充実については、児童虐待問題や非
行・暴力等の思春期問題に対応する第一線の専門的援助者の研修を行う「子どもの虹情
報研修センター
(日本虐待・思春期問題情報研修センター)」、
「西日本こども研修センター
あかし」において、児童相談所、児童福祉施設、市町村、保健機関等の職員を対象とす
る各種の専門研修を行うとともに、平成28年児童福祉法等改正法により、市町村の要保
護児童対策地域協議会の調整機関へ配置される専門職や児童相談所の児童福祉司につい
て研修を義務化するなど、これら職員の資質の向上を図っている。 104104
第3章 人権に関わりの深い特定の職業に従事する者に対する研修等
(8) 海上保安官
海上保安庁では、海上保安大学校等における初任者教育及び職員に対する再研修にお
いて、人権に関する教育を行っている。令和4年度は、899人が受講した。
(9) 労働行政関係職員
厚生労働省では、職員の職位に応じて行われる中央研修において、部落差別(同和問
題)等を中心とする人権の講義を実施している。令和4年度は、957人が受講した。
(10) 消防職員
消防庁消防大学校では、消防本部の幹部職員等に対し、人権問題に関する講義を実施
している。令和4年度は、252人が受講した。
(11) 警察職員
警察では、警察学校や警察署等の職場において、新たに採用された警察職員に対する
採用時教育の段階から、人権の尊重を大きな柱とする「職務倫理の基本」に重点を置い
た教育を行うとともに、
基本的人権に配意した適正な職務執行を期する上で必要な知識・技能を修得させるための各種教育を行っている。
(12) 自衛官
防衛省では、防衛大学校、防衛医科大学校、防衛研究所、統合幕僚学校、陸・海・空
の各自衛隊幹部学校等の各教育課程において、自衛官になるべき者や自衛官に対して、
有事における捕虜等の人権を保護するため、
「戦地軍隊における傷病者の状態の改善に
関する条約」
(明治41年条約第1号。以下「ジュネーヴ条約」という。
)その他の国際人
道法に関する教育を実施している。このうち、
防衛研究所や統合幕僚学校では、
ジュネー
ヴ条約その他の国際人道法に精通した部外講師による講演を実施している。
また、ジュネーヴ条約その他の捕虜等の取扱いに係る国際人道法の適切な実施を確保
するため、捕虜等取扱い訓練を実施しており「武力攻撃事態及び存立危機事態における
捕虜等の取扱いに関する法律」
(平成16年法律第117号)等に基づく業務要領について演
練し、捕虜等の取扱いについての知識、技能の向上を図っている。
(13) 公務員全般
ア 法務省では、中央省庁等の職員を対象とする人権に関する国家公務員等研修会を開
催している。令和4年度は、
「インターネット上の人権侵害」をテーマとして、令和
4年8月2日から10月4日までの期間、リモート形式にて研修を実施し、合計2,864
人が受講した。
また、都道府県及び市区町村の人権啓発行政に携わる職員を対象として、指導者と 105105第3章人権に関わりの深い特定の職業に従事する者に対する研修等
して必要な知識やスキルを習得させることを目的とした人権啓発指導者養成研修会を
実施している。令和4年度は、令和4年10月5日から12月28日までの期間、リモート
形式にて研修を実施し、合計732人が受講した。
イ 人事院では、全府省の新規採用職員を対象として実施している初任行政研修におい
て、人権諸問題に関するカリキュラムを取り入れて研修を実施した。また、法務省が
作成した啓発冊子「人権の擁護」を配布するとともに、その際、人権一般に対する認
識を更に深めるよう指導を行った。
ウ 外務省では、令和4年度は、国際法研修において、国際人権法に関する講義を80人
を対象に実施した。また、在外公館の領事担当官及び在外公館で領事を担当する予定
の赴任予定者(85人)に対し、領事初任者研修の中で「国際的な子の奪取の民事上の
側面に関する条約」
(平成26年条約第2号。以下「ハーグ条約」という。
)に関する講
義、DV被害者対応に関する講義及び人身取引問題に関する講義を行った。同じく、
在外公館の警備対策官(領事業務を兼任する場合が多い)として赴任予定の85人を対
象に、ハーグ条約に関する講義を行った。また、新規採用職員研修等各種研修におい
て、人権や職場での倫理規定に係る講義を行っている。
エ 自治大学校では、地方公共団体の幹部となる地方公務員の政策形成能力等を総合的
に養成することを目的に高度な研修を行っており、
令和4年度の人権教育については、
都道府県・指定都市・中核市・施行時特例市等の職員を対象とした研修において実施
し、81人が受講した。
2 国の他の機関との協力
裁判官の研修を実施している司法研修所では、裁判官に対する研修の際に人権問題に
関する各種講義等を設定している。令和4年度は、446人が受講した。 106106
第3章 人権に関わりの深い特定の職業に従事する者に対する研修等

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