北海道の少年院と少年鑑別所のニュースレター
Rapport
ら ぽ ー と少年院から働ける人材を社会へ・就労支援の新たな取組・就労支援ナビゲーターに聞く・女子少年院における就労支援北海少年院農園芸科による「花いっぱいコンクール」出展花壇
2019.12
Vol. 95
[特集] 「少年院法」には、在院者の社会復帰支援が少年院長の役割として明記されています。それを受けて、全国の少年院では適切な住居の確保や医療、修学、就労など出院後の生活を支援するための取組を充実させています。かつて、少年院では、主に在院者に対し矯正教育を行い、在院者の健全育成を促すような指導の充実に力点が置かれていたように思います。一方、現在では、こうした教育活動をひとりひとりの在院者の社会復帰支援に結びつけることが重視されており、当院でも日頃から関係機関と密接に、連携する体制の構築に取り組んでいます。例えば、薬物依存のある在院者に対しては、薬物非行防止指導を確実に実施した上で、出院後、地域の医療機関に円滑に引き継ぐため、在院中から医療機関の職員と綿密なカンファレンスを行うことにより共通理解を深めるとともに、保護者をはじめとした関係者に対しても、きめ細やかな説明を行うなどして、出院後の治療に対する協力を促すことが求められています。当院においては、帰住予定地の医療機関と連携し、定期的に医療スタッフの面接を受けさせながら、在院中から治療を開始し、在院者自身の治療意欲を高めつつ、出院後の切れ目のない支援につなげています。また、保護者に対しても、地域における依存症患者家族の会を紹介し、当院職員も同行して勉強会に参加していただくなどして、依存症に対する理解を深める機会を設けています。このような取組をとおして、当初は楽観的だったり投げやりだったりした在院者も、考えを改め、自分の置かれた状況を正しく認識して、治療を前提とした社会復帰について、主体的に考えることができるようになっていくように感じます。北海少年院首席専門官 大門 貴彦社会復帰支援について〜これからの少年院に求められること〜 また、最近では、虐待や育児放棄により、保護者のもとに帰住させることが適当とは言い難く、出院後の帰住先を見つけることが困難なケースが多く見られます。このようなケースについては関係機関との連携が特に重要となってきます。これまでは、引き受けてくれる施設や外部機関を探し、見つかった場所に帰住調整を進めるといった受身の調整が中心でしたが、現在は、在院者本人の希望を聞きながら個別具体的に検討を重ね、本人にとってベストな社会復帰の形を作っていく、より積極的な帰住調整が求められています。加えて、在院者の成育歴などを見ると、将来に明るい展望を見いだせず、生活意欲の低いケースも多いため、協力雇用主や職親プロジェクト参加企業の協力を得て、お手本となる大人に出会い、自分の将来に目を向けさせ、進路を前向きに考えさせるための働きかけを展開することとしています。このように、これからの少年院は、教育を充実させることに加え、社会復帰後を見据えたコーディネートを確実に行う力が求められています。つまり、単に指導するだけにとどまらない、コーディネーターとしての役割も求められているのだと考えています。3級(新入時教育)
〜これまでの生活の振り返り〜
2級(中間期教育)
〜課題の解決と人間的成長〜
1級(出院準備教育)
〜社会復帰への最終準備〜
家庭裁判所や少年鑑別所から,家族
関係や交友関係,学校での様子,職歴
等さまざまな情報を引継ぎ,新入時保
護者会を開催して家族関係の調整を始
めます。
本人の社会復帰に向け,どのような
道が考えられるか,関係機関の意見を
聞きながら,教育の計画を立てます。
社会復帰に向けた支援はここからスタ
ートします。
本人の希望をもとに,関係者の意見
や帰住先の状況等を踏まえつつ,具体
的な進路を決めていきます。また,中
間期保護者会を通して,保護者の非行
に対する理解を深めつつ,家族関係の
修復を図ります。
大型特殊自動車運転免許及び車両系
建設機械運転技能講習,介護職員初任
者研修等のさまざまな資格取得指導や
個別的な生活指導を通して,失くした
自信を取り戻させつつ,社会復帰への
意欲を高めさせ,キャリアカウンセリ
ングや就労・修学支援により,堅実で
現実的な将来設計を立てさせます。
内定を受けた会社の職場見学及びイ
ンターンシップ,保護観察所及びサポ
ートステーション,自助グループ等の
関係機関訪問,入学試験のための受験
外出等,円滑な社会復帰に向け,具体
的な準備を進めていきます。
施設内処遇から施設外処遇へと,切
れ目のない支援を実践します。
退院者等からの相談制度
少年院では,施設を出院した後も,社会
生活上の問題についてサポートしていくた
め,退院者等からの相談制度が設けられて
います。退院者本人はもちろんのこと,保
護者や雇用主といった関係者からの相談に
もしっかりと対応していきます。
北海少年院における社会復帰支援
切れ目のないサポート体制を目指して 就労支援の新たな取組北海少年院スタディツアー・就労支援説明少年院出院者の再犯防止に向けた取組の充実が重要課題と位置付けられている現在、少年院においては、在院者に対し、資格取得に向けた指導等を行うとともに、就労支援スタッフによるキャリアカウンセリング、公共職業能力安定所と連携した就労支援を実施しているほか、コレワーク(矯正就労支援情報センター室)により、企業へのサポート体制が構築されつつあります。このような流れをさらに充実させるため、当院では、コレワークと連携し、7月22日に、「北海少年院スタディツアー」を企画しました。ツアーは、これまで少年院出院者を雇用したことのない企業の方々に、少年院で在院者がどのような生活を送っているのかを知っていただくことに加え、在院者を雇用する際に利用できる制度等をお伝えすることにより受け入れに当たっての不安を解消していただくこととしました。当日は、当院の教育活動の説明だけでなく、札幌保護観察所にも参加していただき、協力雇用主を支援する各種制度の説明や刑務所出所者等の雇用経験豊富な事業主の方による講演を行いました。ツアーに参加していただいた企業の方々からは、「在院者を雇用したいと考えています」、「少年院にいる間にうちの職場を見学してもらうこともできます」といった感想も寄せられ、今回の取組を通じて、少年院出院者の雇用への理解が深まったという感触が得られました。少年院から働ける人材を社会へ
〜雇用してくださる企業に対するサポート体制の構築を見据えて〜 そこで、10月21日には就労支援説明会を実施し、企業の方々と当院在院者が直接対話する場を設けました。当日は、説明会参加企業の方々から、業務などについて説明をしていただいた後に、在院者からの質問に答えていただく、分科会を開きました。また、在院者の就労支援を実施する際の不安の解消を図るとともに、在院者を支援していく、ヨコのツナガリの輪を作っていきたいと考え、分科会終了後に、参加企業と保護観察所や公共職業安定所をはじめとした関係機関、当院職員による意見交換会も合わせて行いました。少年院出院者を雇用してうまくいった事例とうまくいかなかった事例について共有することができましたので、今後も、少年院出院者を雇用したことのある企業の方々をお招きして、意見交換を行う場を設定するなど在院者が出院後も企業とツナガリ、サポートしていける体制の構築に努めることとしています。これらの取組のほか、就労支援の必要な在院者の中には適当な保護者がいないケースもあることから、当院では日本財団が主催する職親プロジェクトにも参加することとし、在院者の身元引受可能な雇用主の下で健全な社会生活を実現するため、在院中から職場体験をさせること(インターンシップ)にも着手しています。当院が思い描く理想的な就労支援のイメージは、この在院者だから、あのヒトのところで社会復帰できるよう調整するという、信頼できる大人であるヒトに直接ツナグことです。引続き、多くの方々の御理解をいただきながら、「少年院から働ける人材を社会へ」を合言葉に、在院者の就労支援の充実を図るとともに、雇用してくださる企業に対するサポート体制を構築していきたいと思っていますので、御協力のほど、よろしくお願いします。 当院では、出院後の社会生活を仕事中心の堅実なものにするため、在院期間中の様々な機会を通して、ハローワーク等による就労支援の活用を働き掛けています。そこで、当院の就労支援に関する課題等を整理し、更にその実効性を高めるため、日頃,在院者の就労支援に御協力いただいている帯広公共職業安定所(ハローワーク帯広)の就労支援ナビゲーター森池壱之さんに,今後の就労支援の在り方についてお話を伺いました。❘就労支援中の当院在院者の印象はいかがでしょうか。出院後の一般企業への就職については、現実社会の基準と自己評価が乖離していると感じています。例えば、北海道の新規高等学校卒業者の平均賃金は、16万7千円ですが、「最低でも25万円以上は欲しいし、自分はそれくらいもらえる能力がある。」など、実現が難しい希望が語られることが多いです。少年院入院前の生活の影響なのでしょうか、同年代の若者との金銭感覚のずれや、企業担当者から見て自分はどのような評価をされるのかといった、第三者的な視点で省みることが難しい印象を受けます。また、将来に対する見通しも、長期的な目標達成より目前の小さな利益の方が得を感じるなどやや短絡的であると感じています。❘企業担当者の方は在院者に対してどのような印象を持っているのでしょうか。雇用実績のある会社は好印象を持っているようですが、実績のない会社はどう扱ってよいのか不安を感じているように思います。挨拶、時間厳守、意欲や素直さなどををしっかりアピールするとともに、保護観察所の職場定着支援等の本人や会社へのサポート体制も周知していくことが大切であると感じています。❘出院後の支援についてお聞かせください。就労支援対象者は、出院後も積極的にハローワークを活用して欲しいですね。在院中に就労先が決まらない場合でも、あきらめずに最寄りのハローワークに足を運び相談してみて欲しいです。一人で悩むよりも良い結果につながる場合が多いと思います。刑務所出所者等の支援においても、帰住先のハローワークで継続相談した者は高い割合で就職につながっています。❘就労ではなく進学を目指す在院者もいますが。状況が許すなら学び直しには大賛成です。知識を学んだり、学校生活を過ごす中で、将来の選択肢が広がることはもちろん、自分や他者に対する考え方の幅が広がることが期待できます。ただし、一時の流行に左右されるのではなく、これからの将来につながる学びや資格取得を目指すことが大切だと思います。就労支援ナビゲーター森池さんに聞く【帯広少年院】就労支援ナビゲーター 森池 壱之さん
女子少年院における就労支援の取組
【紫明女子学院】
紫明女子学院では,在院者が社会復帰に向けたはじめの一歩を踏み出しやすいよう,就労に関す
る様々な指導を行っています。
1 就労意欲の向上
在院者の多くは,世の中にどのよう
な仕事があるか,仕事にはどのような
苦労や喜びがあるのかを知らないこと
が多く,自分の働く姿が想像できずに
います。仕事に関する視聴覚教材を見
たり,職業に関する講話を聞いたりし
て様々な職業や働く人について知るこ
とで,在院者の「できるかも」,「や
りたいかも」の気持ちを見付け,育て
たいと考えています。 ネイリストによる職業講話
「就職」に必要な知識・技術等の習得
〜求人情報の探し方〜
やりたい仕事が見付かっても,ど
うやって応募するのかを知らない場
合があります。そこで,アルバイト
情報誌やハローワークの求人票を用
いて,その見方を学んだり,実際に
ハローワークに行って求人検索をし
たりすることで,仕事の探し方を身
に付けます。
〜応募・面接の受け方〜
情報誌の求人に応募する場合を想
定して,電話の掛け方の練習をしま
す。面接時の応答の仕方,相手に好
印象を与える外見や話し方等,可能
な限り練習の機会を設けています。
在院中にハローワークを利用して求
人に応募し,面接を受けに行くこと
もあります。 就活メイク教室
「就労継続」に必要な知識・技術の習得
〜職業体験実習〜
働くことの喜びや苦労を経験し,
働く上で今の自分に足りないものや
必要なものを考えられるよう,実際
に近隣のスーパーや介護施設等で体
験実習をしています。
〜ハローワーク等の見学〜
就職や働く上で困ったときに相談
できる場所や支援内容について学べ
るよう,ハローワークのほか,地域
若者サポートセンター等へ実際に見
学に行きます。
はじめの一歩目をなかなか踏み出
せなかったり,一歩進んでも二歩下
がってしまったりする在院者もいま
すが,彼女たちが更生への長い道の
りを歩き続けられるよう,私達はこ
れからもきめ細かな指導を行ってい
きたいと思います。
スーパーでの職業体験実習23
北海道の少年院と少年鑑別所のニュースレター らぽーと 95号
編集・発行
札幌矯正管区第三部
発行責任者
第三部長 齊田 浩
発行日
2019/12
札幌市東区東苗穂 1-2-5-5
電話 011(783)3911 内線 54
FAX 011(780)2207
次号担当庁は月形学園です
法務省ホームページもご覧ください
http://www/moj.go.jp/
9月1日,職員の家族に向けた施設見学会が開催されました。少年鑑別
所職員の家族の多くは,少年鑑別所を見学したことはなく,在所者がどのよ
うな生活をしているのか知らないため,皆,真面目な表情で所長の説明に
耳を傾けていました。今後,市民を対象とした募集参観を予定しております
が,このような広報活動を通して,旭川少年鑑別所が旭川法務少年支援
センターという役割も担っていることを知っていただき,できるだけ多くの市
民の皆さんにとって身近な存在として認識していただけるようになりたいと
思っております。
恒例となっている一日支所長行事を
行いました。今年は釧路市役所の奥山
福祉部長に担っていただき「人との出会
いから学んだこと」というテーマで講演い
ただきました。実感のこもったお話に,少
年たちも聞き入っていました。奥山部長
のほか,お越しいただいた地域の方々に
深く感謝いたします。
9月2日,閉庁式を挙行し,46年の
歴史に一つの区切りをつけることとな
りました。閉庁式を通じて,当園が,い
かに月形町を始めとする地域社会の
皆様の温かな御支援に恵まれて46
年間を歩んできたかを実感しました。
改めて御礼申し上げます。
農園芸科では,今年も観賞用かぼちゃ
が豊作でした。
大きく育ったオレンジ色のジャンボかぼ
ちゃには,ジャック・オー・ランタンらしい顔
を描き,色とりどりで小ぶりなおもちゃかぼ
ちゃにも,ハロウィンを意識した様々な装
飾を施し,日ごろより大変お世話になって
いる近隣の福祉施設,子育て支援セン
ターなどに寄贈させていただきました。
JICA帯広研修員と当院在院者との国
際交流会を開催しました。昨年に続き2
回目となった同交流会ですが,本年は当
院農耕地における馬鈴薯の収穫及び昼
食会を実施しました。最初は緊張した様
子でしたが,コミュニケーションを続ける中
で次第に打ち解け,お互いの国の文化を
尊重することで,言語等の違いを越えて
心が通い合うこと等に気付く貴重な経験と
なりました。
8月19日から21日までの3日
間,法務省専門職員(人間科
学系)のインターンシップを当所
で実施し,3名の学生が参加し
ました。それぞれ心理学を専攻
し,少年鑑別所の業務に非常に
高い関心を抱いておられまし
た。インターンシップへの応募は
法務省HPに掲載しておりますの
で,よろしくお願いいたします。
帯広少年院
0155-24-5787
北海少年院
0123-23-3147
紫明女子学院
0123-22-5141
月形学園
0126-53-2736
札幌少年鑑別所
011-784-7441
函館少年鑑別支所
0138-51-5652
旭川少年鑑別所
0166-31-5468
釧路少年鑑別支所
0154-41-5808
秋晴れ の中,毎年恒例のディ
キャンプが行われました。ジンギス
カンのバーベーキュー,当院で収
穫した馬鈴薯も一緒に焼いて。少
年と職員が一緒に美味しくいただき
ました。炭の焚き付けから調理,後
片付けと,少年たちにはとても楽し
く,貴重な経験となりました。
10月20日に函館矯正展が
開催されました。その中で少
年鑑別所コーナーがあり,性
格検査を実施しました。また,
11月9日には,例年実施して
いる一般市民を対象としての
施設見学を実施しました。

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