第二次再犯防止推進計画について
令 和 5 年 3 月 1 7 日
閣 議 決 定
再犯の防止等の推進に関する法律(平成28年法律第104
号)第7条第1項の規定に基づき、第二次再犯防止推進計画を
別紙のとおり定める。
第二次再犯防止推進計画
令和5年3月 17 日 I目 次
I 第二次再犯防止推進計画策定の目的
第1 再犯防止の現状と再犯防止施策の重要性
第2 第二次推進計画策定の経緯
II 基本方針及び重点課題
第1 基本方針
第2 重点課題
第3 計画期間と迅速な実施
III 今後取り組んでいく施策
第1 就労・住居の確保等を通じた自立支援のための取組(推進法第 12 条、
第 14 条、第 15 条、第 16 条、第 21 条関係)
1.就労の確保等
(1) 現状認識と課題等
(2) 具体的施策
1 職業適性の把握と就労につながる知識・技能等の習得
2 就職に向けた相談・支援等の充実
3 協力雇用主の開拓・確保及びその活動に対する支援の充実
4 就労した者の離職の防止及び離職した者の再就職支援
5 一般就労と福祉的就労の狭間にある者の就労の確保
2.住居の確保等
(1) 現状認識と課題等
(2) 具体的施策
1 矯正施設在所中の生活環境の調整の充実
2 更生保護施設等の機能の充実・一時的な居場所の確保 II3 地域社会における定住先の確保
第2 保健医療・福祉サービスの利用の促進等のための取組
(推進法第 17 条、
第 21 条関係)
1.高齢者又は障害のある者等への支援等
(1) 現状認識と課題等
(2) 具体的施策
1 関係機関における福祉的支援の実施体制等の充実
2 保健医療・福祉サービスの利用に関する地方公共団体等との連携
の強化
3 被疑者等への支援を含む効果的な入口支援の実施
4 保健医療・福祉サービスの利用の促進等のための研修・体制の整備
2.薬物依存の問題を抱える者への支援等
(1) 現状認識と課題等
(2) 具体的施策
1 薬物乱用を未然に防止するための広報・啓発活動の充実
2 刑事司法関係機関等における効果的な指導の実施等
3 治療・支援等を提供する保健医療機関等の充実及び円滑な利用の
促進
4 薬物事犯者の再犯防止施策の効果検証及び効果的な方策の検討
第3 学校等と連携した修学支援の実施等のための取組(推進法第 11 条、第
13 条関係)
1.学校等と連携した修学支援の実施等
(1) 現状認識と課題等
(2) 具体的施策
1 児童生徒の非行の未然防止等
2 非行等による学校教育の中断の防止等
3 学校や地域社会において再び学ぶための支援
第4 犯罪をした者等の特性に応じた効果的な指導の実施等のための取組
(推進法第 11 条、第 13 条、第 21 条関係)
1.特性に応じた効果的な指導の実施等
(1) 現状認識と課題等
(2) 具体的施策 III1 刑事司法関係機関におけるアセスメント機能の強化と関係機関等
が保有する情報の活用
2 特性に応じた指導等の充実
i 性犯罪者・性非行少年に対する指導等
ii ストーカー・DV 加害者に対する指導等
iii 暴力団からの離脱、社会復帰に向けた指導等
iv 少年・若年者に対する可塑性に着目した指導等
v 女性の抱える困難に応じた指導等
vi 発達上の課題を有する犯罪をした者等に対する指導等
vii 各種指導プログラムの充実
3 犯罪被害者等の視点を取り入れた指導等
第5 民間協力者の活動の促進等のための取組(推進法第5条、第 22 条、第
23 条関係)
1.現状認識と課題等
2.持続可能な保護司制度の確立とそのための保護司に対する支援
(1) 具体的施策
1 持続可能な保護司制度の確立に向けた検討・試行
2 保護司活動のデジタル化及びその基盤整備の推進
3 保護司適任者に係る情報収集及び保護司活動を体験する機会等の
提供
4 地方公共団体からの支援の確保
5 国内外への広報・啓発
3.民間協力者(保護司を除く)の活動の促進
(1) 具体的施策
1 民間ボランティアの活動に対する支援の充実
2 民間協力者との連携強化
3 民間の団体等の創意と工夫による再犯防止活動の促進
4 民間協力者の確保及びその活動に関する広報の充実
第6 地域による包摂を推進するための取組(推進法第5条、第8条、第 24
条関係)
1.現状認識と課題等 IV2.地方公共団体との連携強化等
(1) 国と地方公共団体の役割
1 国の役割
2 都道府県の役割
3 市区町村の役割
(2) 具体的施策
1 地方公共団体による再犯の防止等の推進に向けた取組の支援
2 地方再犯防止推進計画の策定等の支援
3 地方公共団体との連携の強化
3.支援の連携強化
(1) 具体的施策
1 更生保護に関する地域援助の推進
2 更生保護地域連携拠点事業の充実等
3 法務少年支援センターにおける地域援助の充実
4.相談できる場所の充実
(1) 具体的施策
1 刑執行終了者等に対する援助の充実
2 更生保護施設による訪問支援事業の拡充
第7 再犯防止に向けた基盤の整備等のための取組(推進法第 18 条、第 19
条、第 20 条、第 22 条関係)
1.再犯防止に向けた基盤の整備等
(1) 現状認識と課題等
(2) 具体的施策
1 関係機関における人的・物的体制の整備
2 業務のデジタル化、効果検証の充実等
3 再犯防止関係者の人材育成等
4 広報・啓発活動の推進
IV 再犯の防止等に関する施策の指標
第1 再犯の防止等に関する施策の成果指標
第2 再犯の防止等に関する施策の動向を把握するための参考指標 1I 第二次再犯防止推進計画策定の目的
第1 再犯防止の現状と再犯防止施策の重要性
我が国の刑法犯の認知件数は、
平成8年以降毎年戦後最多を記録し、
平成
14 年
(285 万 3,739 件)
にピークを迎えたが、
平成 15 年以降は減少を続け、
令和3年(56 万 8,104 件)には戦後最少となった。
この数字は、諸外国と比較しても、我が国の治安の良さを示しており、令
和4年3月に公表された内閣府の世論調査では、
8割を超える国民が現在の
日本は治安が良く、安全で安心して暮らせる国だと回答している。
他方、
刑法犯により検挙された再犯者数は減少傾向にあるものの、
それを
上回るペースで初犯者数も減少し続けているため、
検挙人員に占める再犯者
の人員の比率(再犯者率)は上昇傾向にあり、令和3年には 48.6 パーセン
トと刑法犯検挙者の約半数は再犯者という状況にある。
このような再犯の傾向は、第一次の再犯防止推進計画(以下「第一次推進
計画」という。
)を策定した平成 29 年当時においても同様であり、政府は、
新たな被害者を生まない安全・安心な社会を実現するために、再犯の防止等
に向けた取組が重要であるとの認識の下、第一次推進計画を策定し、これに
基づき、様々な取組を行ってきた。
国・地方公共団体・民間協力者等の連携が進み、より機能し始めた再犯の
防止等に向けた取組を更に深化させ、推進していくためには、これまでの取
組を検証して必要な改善を図るとともに、新たな施策をも含めた、第二次再
犯防止推進計画(以下「第二次推進計画」という。
)を策定することが必要
とされる。
第2 第二次推進計画策定の経緯
〔第一次推進計画の策定〕
平成 28 年 12 月、再犯の防止等に関する国及び地方公共団体の責務を明
らかにするとともに、
再犯の防止等に関する施策を総合的かつ計画的に推進
していくための基本事項を示した「再犯の防止等の推進に関する法律」(平成 28 年法律第 104 号、以下「推進法」という。
)が制定、施行された。
政府は、
推進法において、
再犯の防止等に関する施策の総合的かつ計画的
な推進を図るための計画を策定することとされ、これを受け、平成 29 年 12
月、
再犯の防止等に関する政府の施策等を定めた初めての計画である第一次
推進計画を閣議決定した。
第一次推進計画は、5つの基本方針の下、1就労・住居の確保、2保健医
療・福祉サービスの利用の促進、3学校等と連携した修学支援、4特性に応
じた効果的な指導、
5民間協力者の活動促進、
6地方公共団体との連携強化、 27関係機関の人的・物的体制の整備、という7つの重点課題と 115 の具体的
施策により構成され、その計画期間は平成 30 年度から令和4年度までの5
年間とされた。
令和元年 12 月、政府は、第一次推進計画に基づき実施している再犯防止
施策のうち、より重点的に取り組むべき課題への対応を加速化させるため、
犯罪対策閣僚会議において、
「再犯防止推進計画加速化プラン」
(以下「加速
化プラン」という。
)を決定した。加速化プランでは、1「満期釈放者対策
の充実強化」
、2「地方公共団体との連携強化の推進」
、3「民間協力者の活
動の促進」
の3つの取組を加速化させることとし、
具体的な成果目標として、
「令和4年までに、満期釈放者の2年以内再入者数を2割以上減少させる」
こと、及び、
「令和3年度末までに、100 以上の地方公共団体で地方再犯防止
推進計画が策定されるよう支援する」ことが設定された。
〔第一次推進計画に基づく取組〕
政府は、
第一次推進計画や加速化プランに基づき、
地方公共団体や民間協
力者等の理解・協力も得て、各種施策に取り組み、一定の成果も上がってき
た。
例えば、就労の確保については、矯正施設・保護観察所とハローワークが
連携した就労先確保に向けた取組等により、
矯正施設在所中から支援を受け
て就職した者の数が増加し、住居の確保については、更生保護施設等による
住居確保支援や矯正施設在所中の生活環境の調整の強化等により、
適当な帰
住先が確保されていない刑務所出所者数が減少している。また、満期釈放者
対策の充実強化については、
矯正施設在所中の生活環境の調整の強化や更生
保護施設退所者に対する継続的な相談支援等の実施により、
加速化プランに
おいて設定された上記目標が達成された。
さらに、
地方公共団体の取組としては、
国と地方公共団体の協働による地
域における効果的な再犯防止施策の在り方について調査するための
「地域再
犯防止推進モデル事業」の実施や、協議会等を通じた同事業の成果や好事例
等の共有等が行われるとともに、令和4年 10 月1日現在で 402 の地方公共
団体で地方再犯防止推進計画等が策定され、
地域の実情に応じた様々な取組
が進められている。また、民間協力者等の取組については、民間資金の活用
などにより、
地域における草の根の支援活動など多様な活動が更に広がった。
こうした一つ一つの取組の結果、
「再犯防止に向けた総合対策」
(平成 24
年犯罪対策閣僚会議決定)において設定された「出所年を含む2年間におい
て刑務所に再入所する割合
(2年以内再入率)
を令和3年までに 16%以下に
する」という数値目標を令和元年出所者について達成するに至った。 3〔第一次推進計画に基づく取組の検証〕
政府は、第二次推進計画の策定を見据え、法務副大臣を議長とし、関係省
庁の課長等や外部有識者を構成員とする「再犯防止推進計画等検討会」(以下「検討会」という。
)において、4回にわたる議論等を経て、第一次推進
計画下における取組状況や成果を検証するとともに、
今後の課題について整
理した。
その結果、
「個々の支援対象者に十分な動機付けを行い、自ら立ち直ろう
とする意識を涵養した上で、それぞれが抱える課題に応じた指導・支援を充
実させていく必要があること」、「支援を必要とする者が支援にアクセスでき
るよう、支援を必要とする者のアクセシビリティ(アクセスの容易性)を高
めていく必要があること」、「支援へのアクセス自体が困難な者が存在するた
め、訪問支援等のアウトリーチ型支援を実施していく必要があること」、「地
方公共団体における再犯の防止等に向けた取組をより一層推進するため、国と地方公共団体がそれぞれ果たすべき役割を明示するとともに、国、地方公
共団体、民間協力者等の連携を一層強化していく必要があること」などの課
題が確認された。
その上で、検討会は、これらの課題を踏まえ、第二次推進計画の策定に向
けた基本的な方向性として、以下の3つを取りまとめ、議論を進めた。
1 犯罪をした者等が地域社会の中で孤立することなく、
生活の安定が図ら
れるよう、
個々の対象者の主体性を尊重し、
それぞれが抱える課題に応じ
た"息の長い"支援を実現すること。
2 就労や住居の確保のための支援をより一層強化することに加え、
犯罪を
した者等への支援の実効性を高めるための相談拠点及び民間協力者を含
めた地域の支援連携(ネットワーク)拠点を構築すること。
3 国と地方公共団体との役割分担を踏まえ、
地方公共団体の主体的かつ積
極的な取組を促進するとともに、国・地方公共団体・民間協力者等の連携
を更に強固にすること。
〔第二次推進計画の策定〕
政府は、
検討会における更に計4回にわたる議論等を経て、
第二次推進計
画の案を取りまとめ、ここに第二次推進計画を定めるに至った。 4II 基本方針及び重点課題
第1 基本方針
第一次推進計画では、
犯罪をした者等が、
円滑に社会の一員として復帰す
ることができるようにすることで、
国民が犯罪による被害を受けることを防
止し、
安全で安心して暮らせる社会の実現に寄与するという目的を達成する
ために、個々の施策の策定・実施や連携に際し、実施者が目指すべき方向・
視点として、推進法第3条の「基本理念」を踏まえ、以下の5つの基本方針
が設定された。
本基本方針は、施策の実施者が目指すべき方向・視点として、第二次推進
計画においても踏襲する。
〔5つの基本方針〕
1 犯罪をした者等が、
多様化が進む社会において孤立することなく、
再び
社会を構成する一員となることができるよう、
あらゆる者と共に歩む
「誰
一人取り残さない」
社会の実現に向け、
関係行政機関が相互に緊密な連携
をしつつ、
地方公共団体・民間の団体その他の関係者との緊密な連携協力
をも確保し、再犯の防止等に関する施策を総合的に推進すること。
2 犯罪をした者等が、
その特性に応じ、
刑事司法手続のあらゆる段階にお
いて、
切れ目なく、
再犯を防止するために必要な指導及び支援を受けられ
るようにすること。
3 再犯の防止等に関する施策は、生命を奪われる、身体的・精神的苦痛を
負わされる、
あるいは財産的被害を負わされるといった被害に加え、
それ
らに劣らぬ事後的な精神的苦痛・不安にさいなまれる犯罪被害者等が存
在することを十分に認識して行うとともに、
犯罪をした者等が、
犯罪の責
任等を自覚し、
犯罪被害者の心情等を理解し、
自ら社会復帰のために努力
することの重要性を踏まえて行うこと。
4 再犯の防止等に関する施策は、
犯罪及び非行の実態、
効果検証及び調査
研究の成果等を踏まえ、必要に応じて再犯の防止等に関する活動を行う
民間の団体その他の関係者から意見聴取するなどして見直しを行い、社
会情勢等に応じた効果的なものとすること。
5 国民にとって再犯の防止等に関する施策は身近なものではないという
現状を十分に認識し、
更生の意欲を有する犯罪をした者等が、
責任ある社
会の構成員として受け入れられるよう、
再犯の防止等に関する取組を、分かりやすく効果的に広報するなどして、広く国民の関心と理解が得られ
るものとしていくこと。 5第2 重点課題
第一次推進計画では、
推進法第2章が規定する基本的施策に基づき、
多岐
にわたる再犯防止施策が7つの重点課題に整理された。
第二次推進計画にお
いては、第一次推進計画の重点課題を踏まえつつ、前記第二次推進計画の策
定に向けた基本的な方向性に沿って、
以下に掲げる7つの事項を重点課題と
する。
〔7つの重点課題〕
1 就労・住居の確保等
2 保健医療・福祉サービスの利用の促進等
3 学校等と連携した修学支援の実施等
4 犯罪をした者等の特性に応じた効果的な指導の実施等
5 民間協力者の活動の促進等
6 地域による包摂の推進
7 再犯防止に向けた基盤の整備等
第3 計画期間と迅速な実施
推進法第7条第6項が、
少なくとも5年ごとに、
再犯防止推進計画に検討
を加えることとしていることから、計画期間は、令和5年度から令和9年度
末までの5年間とする。
第二次推進計画に盛り込まれた施策は、可能な限り速やかに実施するこ
ととし、
犯罪対策閣僚会議の下に設置された再犯防止対策推進会議において、
定期的に施策の進捗状況を確認するとともに、
施策の実施の推進を図ること
とする。
また、
IVの第1に掲げる成果指標については、
第二次推進計画に盛り込ま
れた施策の速やかな実施により、その向上を図り、このうち、出所受刑者の
2年以内再入率及び3年以内再入率を更に低下させることを目標として定
める。 6III 今後取り組んでいく施策
第1 就労・住居の確保等を通じた自立支援のための取組(推進法第 12 条、第
14 条、第 15 条、第 16 条、第 21 条関係)
1.就労の確保等
(1) 現状認識と課題等
不安定な就労が再犯の要因となっていることに鑑み、政府においては、
これまで、
犯罪をした者等の就労を確保するため、
法務省と厚生労働省の
協働による刑務所出所者等総合的就労支援対策の実施、矯正就労支援情
報センター室(通称「コレワーク」
)の設置、刑務所出所者等就労奨励金
制度の導入等に取り組んできた。
さらに、
第一次推進計画策定後は、
就労やその継続の大前提となるコミ
ュニケーション能力等の基本的な能力の強化、職場定着に向けた取組の
強化等にも努めてきた。
その結果、
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けつつも、
矯正施
設在所中から支援を受けて就職した者の数や犯罪をした者等を実際に雇
用している協力雇用主の数が第一次推進計画策定前に比べて増加するな
ど、就労の確保に向けた政府の取組は、着実に成果を上げてきた。
しかしながら、
依然として、
保護観察終了時に無職である者は少なくな
いこと、実際に雇用された後も人間関係のトラブル等から離職してしま
う者が少なくないことなどの課題があるほか、職業訓練を社会復帰後の
就労に結び付くものとしていく必要があるとの指摘もある。
これらの課題に対応するため、適切な職業マッチングを促進するため
の多様な業種の協力雇用主の開拓、寄り添い型の就職・職場定着支援、コ
ミュニケーションスキルやビジネスマナーといった就労やその継続に必
要な知識・技能の習得、社会復帰後の自立や就労を見据えた職業訓練・刑
務作業の実施等を更に充実させる必要がある。
(2) 具体的施策
1 職業適性の把握と就労につながる知識・技能等の習得
ア 職業適性の把握等【施策番号1】
法務省は、矯正施設において、厚生労働省の協力を得て、就労意欲
や職業適性、
個々の受刑者等が持つ能力等を把握するためのアセスメ
ントを適切に実施するとともに、その結果を踏まえ、刑期の早い段階
から、社会復帰後を見据え、職業訓練や就労支援指導を計画的に実施
していく体制の整備を検討する。【法務省、厚生労働省】 7イ 施設内から社会内への一貫した指導・支援スキームの確立
【施策番
号2】
法務省は、
厚生労働省の協力を得て、
効果的に就労支援を実施する
ため、出所後の本人を取り巻く生活環境を踏まえるなどし、矯正施設
在所中から出所後の職場定着までの計画的かつ一貫した指導・支援に
取り組む。
【法務省、厚生労働省】
ウ 就労に必要な基礎的能力等の習得に向けた処遇等【施策番号3】
法務省は、
矯正施設及び保護観察所において、
コミュニケーション
スキルの付与やビジネスマナーの体得を目的とした刑務作業や指導
を行うなど、犯罪をした者等の勤労意欲の喚起及び就職に必要な知
識・技能等の習得を図るための処遇の充実を図る。
【法務省】
エ 刑事施設における受刑者の特性に応じた刑務作業の充実等【施策
番号4】
法務省は、拘禁刑下において、刑務作業が、受刑者の改善更生及び
円滑な社会復帰に必要な場合に行わせるべきものと位置付けられた
ことを踏まえ、
アセスメント結果を基に動機付けを十分に行って就労
意欲を喚起した上で、
個々の受刑者の特性に応じた刑務作業を適切に
課す。また、社会復帰後の自立や就労を見据えて、実社会で必要とな
る社会性や自発性を身に付けさせるためのコミュニケーション能力
やマネジメント能力等を養成する刑務作業等を実施するほか、
高齢の
受刑者や心身に障害のある受刑者のうち、
福祉的支援の対象とならな
い者に対しても、就労につながるよう、その心身の機能の維持・向上
を図る刑務作業等を実施する。
【法務省】
オ 刑事施設における職業訓練等の充実【施策番号5】
法務省は、関係機関や犯罪をした者等の雇用を希望する事業主等
から意見を聴取するなどし、
雇用ニーズに合わせて訓練種目の整理を
行うとともに、
就労に必要なパソコンスキルや職場等への定着に欠か
せない課題解決能力については、
勤労を中心として自立した社会生活
を営んでいく必要がある全ての受刑者に対し、訓練・指導する体制を
構築する。
また、
職業訓練を修了した者に対しては、
可能な限り関連する刑務
作業に就業させることにより、身に付けた知識や技能を維持・向上さ
せるほか、出所前における訓練内容の再指導や、出所後の就労先とな 8る企業と連携した実践的訓練を積極的に実施するなどし、
職業訓練及
び刑務作業が、
受刑者の改善更生及び円滑な社会復帰に資するものと
なるよう、その内容の見直しを含め、より一層の充実強化を図る。
加えて、法務省は、厚生労働省の協力を得て、協力雇用主、生活困
窮者自立支援法(平成 25 年法律第 105 号)における就労準備支援事
業や認定就労訓練事業を行う者等と連携した職業講話や職場定着等
に向けた指導・支援を充実させる。【法務省、厚生労働省】
カ 資格制限等の見直し【施策番号6】
法務省は、
「前科による資格制限の在り方に関する検討ワーキング
グループ」
において実施した資格制限の見直しに関するニーズ調査結
果、各資格等に関する制限内容及びその趣旨等に関する調査結果や、
少年法等の一部を改正する法律(令和3年法律第 47 号)の審議にお
ける資格制限の見直しに関する議論の内容等を踏まえ、
関係省庁と協
力し、前科があることによる資格等の制限やその運用の在り方・方向
性について、総合的な検討を進める。
各府省は、
その検討結果を踏まえ、
所管する資格等の制限やその運
用の在り方について、業務の性質等も考慮して、見直しの要否を検討
し、必要に応じた措置を講じる。
【各府省】
2 就職に向けた相談・支援等の充実
ア 刑務所出所者等総合的就労支援を中心とした就労支援の充実【施
策番号7】
法務省及び厚生労働省は、
犯罪をした者等の適切な就労先の確保の
ため、より効果的な連携体制の在り方を検討するとともに、ハローワ
ーク相談員の矯正施設への駐在や保護観察所等への協力の拡大など、
就労支援対策の一層の充実を図る。また、法務省及び厚生労働省は、
矯正施設出所後の職場定着につなげるため、
矯正施設在所中に内定企
業や就労を希望する業種での就労を体験する職場体験を積極的に実
施する。さらに、法務省及び国土交通省は、矯正施設及び地方運輸局
等の連携による就労支援対策についても、一層の充実を図る。
【法務
省、厚生労働省、国土交通省】
イ 非行少年に対する就労支援【施策番号8】
警察庁は、
非行少年を生まない社会づくりの活動の一環として少年
サポートセンター(都道府県警察に設置し、少年補導職員を中心に非 9行防止に向けた取組を実施)
等が行う就労を希望する少年に対する立
ち直り支援について、
都道府県警察に対する指導や好事例の紹介等を
通じ、少年の就職や就労継続に向けた支援の充実を図る。
【警察庁】
3 協力雇用主の開拓・確保及びその活動に対する支援の充実
ア 多様な業種の協力雇用主の確保【施策番号9】
法務省は、
犯罪をした者等がそれぞれの適性に応じた業種等に就職
できるよう支援するため、
社会における労働需要や矯正施設における
職業訓練等の内容も踏まえつつ、
多様な業種の協力雇用主の確保に努
める。また、各府省は、法務省の協力を得て、対象となる公共調達の
本来達成すべき目的が阻害されないよう留意しつつ、
協力雇用主の受
注の機会の増大を図るとともに、関係する各種事業者団体に対し、所
属する企業等への協力雇用主の拡大に向けた周知を依頼するなど、積極的な広報・啓発活動を推進する。
【各府省】
イ 協力雇用主等に対する情報提供【施策番号 10】
法務省は、コレワークにおいて、協力雇用主等に対して、受刑者等
が矯正施設在所中に習得・取得可能な技能・資格を紹介するとともに、
協力雇用主等の雇用ニーズに合う受刑者等が在所する矯正施設の紹
介や、職業訓練等の見学会の案内をするほか、総務省、厚生労働省、
農林水産省、経済産業省及び国土交通省の協力を得て、協力雇用主の
活動を支援する施策の周知を図るなど、
協力雇用主等に対する情報提
供の充実を図る。また、個人情報等の適正な取扱いを確保しつつ、犯
罪をした者等の就労に必要な個人情報を適切に提供する。
【総務省、
法務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省】
ウ 協力雇用主の不安・負担の軽減【施策番号 11】
法務省は、身元保証制度、刑務所出所者等就労奨励金制度、更生保
護就労支援事業といった各種制度や、
協力雇用主に対する助言や研修
など、
犯罪をした者等を雇用しようとする協力雇用主の不安や負担を
軽減するための支援の充実を図る。
【法務省】
エ 協力雇用主に関する情報の適切な共有【施策番号 12】
法務省は、
各府省や地方公共団体における協力雇用主に対する支援
の実施に資するよう、
各府省や地方公共団体に対する協力雇用主に関
する情報提供の在り方について検討し、適切に情報を提供する。
【法 10務省】
オ 国による雇用等の推進【施策番号 13】
各府省は、
「犯罪をした者等の就労の確保等のための取組に係る参
考指針」を踏まえ、各府省における業務の特性や実情も勘案し、犯罪
をした者等の雇用等に努める。法務省は、各府省におけるこうした取
組を促進するために必要な支援等を行う。
【各府省】
4 就労した者の離職の防止及び離職した者の再就職支援
【施策番号 14】
法務省及び厚生労働省は、矯正施設、保護観察所、更生保護施設、ハ
ローワーク等において、犯罪をした者等に対し、悩みなどを把握した
上で適切な助言を行うなど、離職を防止するための支援や離職後の再
就職に向けた支援の充実を図る。また、寄り添い型の支援を行う更生
保護就労支援事業などにより、犯罪をした者等及び協力雇用主の双方
に対する継続的な支援の充実を図ることで、職場定着を促進するとと
もに、再就職のための円滑な就労マッチングを推進する。
【法務省、厚
生労働省】
5 一般就労と福祉的就労の狭間にある者の就労の確保
ア 障害者・生活困窮者等に対する就労支援の活用【施策番号 15】
法務省及び厚生労働省は、
障害のある犯罪をした者等が、
その就労
意欲や障害の程度等に応じて、障害者支援施策も活用しながら、一般
の企業等への就労や、就労継続支援 A 型(一般の企業等に雇用される
ことが困難な障害者に対して、
雇用契約の締結等による就労の機会の
提供等を行うもの)又は同 B 型(一般の企業等に雇用されることが困
難な障害者に対して、就労の機会の提供等を行うもの)事業における
就労を実現できるよう取り組む。また、生活が困窮している者で、就
労に向けて一定の準備を必要とする犯罪をした者等に対しては、
生活
困窮者自立支援法に基づく生活困窮者就労準備支援事業や生活困窮
者就労訓練事業の積極的活用を図る。
【法務省、厚生労働省】
イ 農福連携に取り組む企業・団体等やソーシャルビジネスとの連携
【施策番号 16】
法務省は、矯正施設及び保護観察所において、厚生労働省、農林水
産省、経済産業省及び国土交通省の協力を得て、農福連携に取り組む
企業・団体等とも連携し、犯罪をした者等のうち、障害等により一般 11の企業等への就労が困難な者に対する働き掛けを通じて就農意欲を
喚起し、農業等への就労促進を図るほか、農福連携関係団体から食材
等の調達を推進する取組を通じ、
双方にとって効果的で持続可能な関
係構築を図る。
また、
高齢者・障害者の介護・福祉、
ホームレス支援、
ニート等の若者支援といった社会的・地域的課題の解消に取り組む企
業・団体等に、協力雇用主への登録を促し、犯罪をした者等の雇用を
働き掛けるなど、
ソーシャルビジネスとの連携を推進する。
【法務省、
厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省】
2.住居の確保等
(1) 現状認識と課題等
適当な帰住先が確保されていない刑務所出所者の2年以内再入率が、
更生保護施設等へ入所した仮釈放者に比べて約2倍高くなっていること
から明らかなように、
適切な帰住先の確保は、
地域社会において安定した
生活を送るための欠かせない基盤であり、再犯の防止等を推進する上で
最も重要な要素の一つといえる。
政府においては、
これまで、
受刑者等の釈放後の生活環境の調整の充実
強化、
更生保護施設の受入れ機能の強化や自立準備ホームの確保など、矯正施設出所後の帰住先の確保に向けた取組を進めてきた。
また、
更生保護
施設や自立準備ホームを退所した後の地域における生活基盤の確保のた
め、居住支援法人との連携方策についても検討を進めてきた。
その結果、
適当な帰住先が確保されていない刑務所出所者数の減少(平成 28 年に比べて令和3年は4割減少)や満期釈放者の2年以内再入者数
の減少(平成 28 年出所者に比べて令和2年出所者は3割減少)など、住
居の確保に向けた政府の取組は、一定の成果を上げてきた。
しかしながら、
依然として、
満期釈放者のうちの約4割が適当な帰住先
が確保されないまま刑務所を出所していることや、
出所後、
更生保護施設
等に入所できても、その後の地域における定住先の確保が円滑に進まな
い場合があるなどの課題もある。
これらの課題に対応するため、矯正施設在所中の生活環境の調整の充
実や更生保護施設等の受入れ・処遇機能の更なる強化、
地域社会での定住
先の確保を円滑に進めるための支援の充実、更生保護施設退所後の本人
への訪問等による専門的・継続的な支援の拡大等の取組を進めていく必
要がある。
(2) 具体的施策 121 矯正施設在所中の生活環境の調整の充実
ア 矯正施設在所中の生活環境の調整の充実【施策番号 17】
法務省は、保護観察所による受刑者等の釈放後の生活環境の調整
に地方更生保護委員会が積極的に関与し、
その者が必要とする保健医
療・福祉サービスを受けることができる地域への帰住を調整する取組
を拡大させるなど、
適切な帰住先を迅速に確保するための取組の充実
を図る。
【法務省】
イ 受刑者等の親族等に対する支援【施策番号 18】
法務省は、
支援が必要な受刑者等の親族等に対し、
受刑者等との適
切な関係の構築という点に配慮しつつ、
出所に向けた相談支援等を実
施する引受人会・保護者会を開催するなど、受刑者等の親族等に対す
る支援の充実を図る。
【法務省】
2 更生保護施設等の機能の充実・一時的な居場所の確保
ア 更生保護施設の整備及び受入れ・処遇機能の充実【施策番号 19】
法務省は、更生保護施設の整備を着実に推進するほか、罪名、嗜癖
等本人が抱える課題や地域との関係により特に受入れが進みにくい
者や処遇困難な者を更生保護施設で受け入れ、
それぞれの課題に応じ
た処遇を行うとともに、
地域社会での自立生活を見据えた処遇を行う
ための体制の整備を推進するなど、
更生保護施設における受入れ及び
処遇機能の充実を図る。
【法務省】
イ 自立支援の中核的担い手としての更生保護施設等の事業の促進及
び委託費構造の見直し【施策番号 20】
法務省は、
宿泊保護はもとより、
更生保護施設退所後に向けた高齢
者又は障害のある者等に対する福祉的支援への移行、
薬物依存症者に
対する回復支援の実施、
満期釈放者や施設退所者等に対する継続的な
通所・訪問支援の実施等、地域における犯罪をした者等の自立支援の
中核的担い手として多様かつ高度な役割が更生保護施設に求められ
るようになり、その活動が難しさを増していることを踏まえ、更生保
護施設等の事業の促進を図るとともに、
更生保護委託費の構造等の見
直しに向けた検討を行う。
【法務省】
ウ 自立準備ホームの確保と活用【施策番号 21】
法務省は、
厚生労働省及び国土交通省の協力を得て、
専門性を有す 13る社会福祉法人や NPO 法人などに対する委託により犯罪をした者等
の一時的な居場所の確保等を推進するほか、
空き家等の既存の住宅ス
トック等を活用するなどして多様な居場所である自立準備ホームの
更なる確保を進めるとともに、
各施設の特色に応じた活用を図る。
【法
務省、厚生労働省、国土交通省】
3 地域社会における定住先の確保
ア 居住支援法人との連携の強化【施策番号 22】
法務省は、
国土交通省の協力を得て、
保護観察対象者等の住居の確
保のため、居住支援法人との連携を強化し、住居提供者に対する不安
軽減に向けた取組を行うとともに、
見守りなど要配慮者への生活支援
を行う居住支援法人との更なる連携の方策を検討する。
また、法務省は、国土交通省の協力を得て、住宅確保要配慮者に対
する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(平成 19 年法律第 112 号)
に基づき、犯罪をした者等のうち、同法第2条第1項が規定する住宅
確保要配慮者に該当する者に対して、
賃貸住宅に関する情報の提供及
び相談の実施に努めるとともに、
保護観察対象者等であることを承知
して住居を提供する場合は、
保護観察対象者等に対する必要な指導等、
法務省による継続的支援が受けられることを周知するなどして、
その
入居を拒まない賃貸人の開拓・確保に努める。
【法務省、
国土交通省】
イ 公営住宅への入居における特別な配慮【施策番号 23】
国土交通省は、保護観察対象者等であることを承知して住居を提
供する場合は、上記(施策番号 22)の法務省による継続的支援が受け
られることを踏まえ、
保護観察対象者等が住居に困窮している状況や
地域の実情等に応じて、
保護観察対象者等の公営住宅への入居を困難
としている要件を緩和すること等について検討を行うよう、
引き続き、
地方公共団体に要請する。また、矯正施設出所者については、通常、
著しく所得の低い者として、
公営住宅への優先入居の取扱いの対象に
該当する旨、引き続き、地方公共団体に周知・徹底を図る。
【国土交通
省】
ウ 住居の提供者に対する継続的支援の実施【施策番号 24】
法務省は、保護観察対象者等であることを承知して住居を提供す
る者に対し、住居の提供に伴う不安や負担を細かに把握した上で、身
元保証制度の活用を含めた必要な助言等を行うとともに、
個人情報等 14の適正な取扱いを確保しつつ、
保護観察対象者等についての必要な個
人情報を提供する。併せて、保護観察対象者等に対し、必要な指導等
を行うなど、
保護観察対象者等であることを承知して住居を提供する
者に対する継続的支援を実施する。
【法務省】
エ 満期釈放者等に対する支援情報の提供等の充実【施策番号 25】
法務省は、帰住先を確保できないまま満期出所となる受刑者等の
再犯を防止するため、矯正施設において、必要が認められる受刑者等
に対し、
更生緊急保護や希望する地域の相談機関に関する情報の提供
等、受刑者等の個別のニーズ等を踏まえた相談支援を行う。また、保
護観察所において、
更生緊急保護の申出のあった満期釈放者等に対し、
地域の支援機関等についての必要な情報の提供を行うほか、
更生緊急
保護として、必要に応じ、更生保護施設や地域の社会資源等を活用し
た居場所の確保に向けた支援を行うとともに、
定住先確保のための支
援を行う。加えて、刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第 67
号)による改正後の更生保護法に基づき、矯正施設在所中に更生緊急
保護の申出があった場合は、
満期出所後直ちに必要な措置を受けられ
るよう、必要な調査や調整を行う。
【法務省】 15第2 保健医療・福祉サービスの利用の促進等のための取組(推進法第 17 条、
第 21 条関係)
1.高齢者又は障害のある者等への支援等
(1) 現状認識と課題等
高齢者の2年以内再入率は他の世代に比べて高く、
また、
知的障害のあ
る受刑者については、一般に再犯に至るまでの期間が短いことなどが明
らかとなっている。
政府においては、
これまで、
必要とされる福祉的支援が行き届いていな
いことを背景として再犯に及ぶ者がいることを踏まえ、矯正施設在所中
の段階から、高齢者又は障害のある者等に対して必要な指導を実施する
などして、
福祉的支援についての理解の促進や動機付けを図ってきた。さらに、これらの受刑者等が矯正施設出所後に必要な福祉サービス等を受
けられるよう、矯正施設、更生保護官署、更生保護施設、地域生活定着支
援センター及びその他の保健医療・福祉関係機関が連携して特別調整等
を実施してきた。
また、
起訴猶予者等に対するいわゆる入口支援についても、
法務省と厚
生労働省による検討会の結果を踏まえ、
令和3年度から、
高齢又は障害に
より福祉的支援を必要とする被疑者・被告人に対し、
検察庁、
保護観察所、
地域生活定着支援センター等が連携して支援を実施する新たな取組を開
始した。
その結果、
矯正施設から出所する者が年々減少する中にあって、
特別調
整の対象者数や地域生活定着支援センターによる支援の実施件数が増加
するなど、福祉的支援に向けた取組は、着実に実績を積み重ねてきた。
しかしながら、高齢者や知的障害、精神障害のある者等、福祉的ニーズ
を抱える者をより的確に把握していく必要があること、福祉的支援が必
要であるにもかかわらず、本人が希望しないことを理由に支援が実施で
きない場合があること、支援の充実に向け、刑事司法関係機関、地域生活
定着支援センター、地方公共団体、地域の保健医療・福祉関係機関等の更
なる連携強化を図る必要があることなどの課題もあり、これらの課題に
対応した取組を更に進める必要がある。
(2) 具体的施策
1 関係機関における福祉的支援の実施体制等の充実
ア 刑事司法関係機関におけるアセスメント機能等の強化【施策番号
26】
法務省は、犯罪をした高齢者又は障害のある者等が円滑に必要な 16福祉サービスを利用できるようにするため、
少年鑑別所におけるアセ
スメント機能の充実を図るとともに、
矯正施設における社会福祉士等
の活用や、保護観察所における福祉サービス利用に向けた調査・調整
機能の強化を図ることにより、
福祉的支援が必要な者の掘り起こしや
福祉サービスのニーズの把握を適切に行う。
また、
検察庁においては、
入口支援の実施に当たって効果的な支援先の選定ができるよう、
可能
な限り弁護人とも協働しつつ、
支援対象者の抱える課題や福祉サービ
スのニーズを適切に把握する。
【法務省】
イ 高齢者又は障害のある者等である受刑者等に対する指導【施策番
号 27】
法務省は、
矯正施設において、
社会福祉士等によるアセスメントを
適切に実施し、福祉的支援の必要が認められる者に対し、支援に関す
る方針を明確にした上で、福祉関係機関等の協力を得ながら、健康運
動指導や福祉サービスに関する知識及び社会適応能力等を習得させ
るための指導を行うとともに、
福祉施設の事前体験等の機会を適切に
設けるなどし、
福祉的支援についての動機付けも含む円滑な社会復帰
に向けた指導を行う。また、福祉的支援の必要が認められるものの就
労が可能な者に対しては、
個人の特性に応じて就労に向けた支援を行
うなど、個々の特性に応じた必要な支援の充実を図る。
【法務省】
ウ 矯正施設、
保護観察所、
更生保護施設、
地域生活定着支援センター、
地方公共団体等の多機関連携の強化等【施策番号 28】
法務省及び厚生労働省は、特別調整の取組について、矯正施設、保
護観察所、地域生活定着支援センター等の多機関連携はもとより、地
方公共団体とも協働しつつ、一層着実な実施を図る。また、特別調整
の対象とはならないものの、
高齢者又は障害のある者等であって自立
した生活を営む上での困難を有する者等に対し、必要な保健医療・福
祉サービスが提供されるようにするため、矯正施設、保護観察所、更
生保護施設、地域生活定着支援センター、地方公共団体、地域の保健
医療・福祉関係機関等の連携の充実強化を図る。
【法務省、厚生労働
省】
2 保健医療・福祉サービスの利用に関する地方公共団体等との連携の
強化
ア 保健医療・福祉サービスの利用に向けた手続の円滑化
【施策番号 29】 17法務省及び厚生労働省は、犯罪をした高齢者又は障害のある者等
が、速やかに、障害者手帳の交付、保健医療・福祉サービスの利用の
必要性の認定等を受け、これを利用することができるよう、地方公共
団体との調整を強化するなどして、
釈放後の円滑な福祉サービスの受
給を促進する。また、法務省は、住民票が消除されるなどした受刑者
等が、矯正施設出所後速やかに保健医療・福祉サービスを利用するこ
とができるよう、引き続き、矯正施設・更生保護官署の職員に対して
住民票に関する手続等の周知・徹底を図る。
【法務省、厚生労働省】
イ 社会福祉施設等の協力の促進【施策番号 30】
厚生労働省は、犯罪をした高齢者又は障害のある者等が地域社会
で生活できるよう、自立に向けた訓練や就労の支援を行うなど、社会
福祉施設等による福祉サービスの提供の充実を図る。
【厚生労働省】
3 被疑者等への支援を含む効果的な入口支援の実施【施策番号 31】
法務省は、保護観察所において、更生緊急保護の枠組みを活用し、検
察庁を含む関係機関との連携により、勾留中の被疑者の段階から、そ
の支援の必要性に応じ、
本人の意思やニーズを踏まえつつ、
住居、
就労
先、
福祉サービス等に係る生活環境の調整を行うとともに、
釈放後に、
重点的な生活指導や福祉サービスに係る調整等を行う。法務省及び厚
生労働省は、これら被疑者・被告人のうち、高齢又は障害により、自立
した生活を営む上で、公共の福祉に関する機関その他の機関による福
祉サービスを受けることが必要な者に対し、
検察庁、
保護観察所、
地域
生活定着支援センター等の多機関連携により、釈放後速やかに適切な
福祉サービスに結び付ける取組について、本人の意思やニーズを踏ま
えつつ、地方公共団体とも協働し、着実な実施を図る。
【法務省、厚生
労働省】
4 保健医療・福祉サービスの利用の促進等のための研修・体制の整備
【施策番号 32】
(ア) 刑事司法関係機関
法務省は、検察庁における社会復帰支援を担当する検察事務官や
社会福祉士、
矯正施設における福祉専門官等及び保護観察所における
更生緊急保護等の社会復帰支援を担当する保護観察官の配置を充実
させるなど、検察庁、矯正施設及び保護観察所における社会復帰支援
の実施体制の充実を図る。また、犯罪をした者等の福祉的支援の必要 18性を的確に把握することができるよう、
刑事司法関係機関の職員に対
する高齢者及び障害のある者等の特性等に関する研修を実施する。
(イ) 更生保護施設
法務省は、犯罪をした高齢者又は障害のある者等の更生保護施設
における受入れやその特性に応じた支援の実施を充実させるための
施設・体制の整備を図る。
(ウ) 地域生活定着支援センター、保健医療・福祉関係機関
厚生労働省は、
地域生活定着支援センターについて、
その実施主体
である地方公共団体と協働し、活動基盤の充実を図るとともに、同セ
ンターの職員に対する必要な研修を実施する。
また、法務省は、地域の保健医療・福祉関係機関の職員等に対し、
刑事司法手続等に関する必要な研修を実施する。
【法務省、厚生労働省】
2.薬物依存の問題を抱える者への支援等
(1) 現状認識と課題等
薬物事犯者は、
犯罪をした者であると同時に、
薬物依存症の患者である
場合があることから、政府においては、これまで、矯正施設や保護観察所
における専門的プログラムの実施といった改善更生に向けた指導を充実
させるとともに、
薬物を使用しないよう指導するだけではなく、
薬物依存
症からの回復に向けて、地域社会の保健医療機関等につなげるための支
援を進めてきた。
また、
薬物依存症は、
薬物の使用を繰り返すことにより本人の意思とは
関係なく誰でもなり得る病気であり、回復可能であることについての普
及啓発、薬物依存の問題を抱える者が地域で相談や治療を受けられるよ
うにするための相談拠点・専門医療機関の拡充、
医療従事者等の育成等を
進めてきた。
さらに、
これまで支援が届きにくかった保護観察の付かない
全部執行猶予判決を受けた者等を含む薬物依存の問題を抱える者に対し、
麻薬取締部による専門的プログラムを実施してきた。
その結果、
覚醒剤取締法違反により受刑した者の2年以内再入率は、平成 27 年出所者が 19.2 パーセントであったところ、
令和2年出所者は 15.5
パーセントまで減少するなど、薬物事犯者に対する再犯の防止等に関す
る施策は、一定の成果を上げてきた。
しかしながら、薬物依存の問題を抱える者等への相談支援や治療等に
携わる人材・機関は、いまだ十分とは言い難い状況にあり、薬物事犯保護
観察対象者のうち保健医療機関等で治療・支援を受けた者の割合は低調 19に推移している。また、大麻事犯の検挙人員が8年連続で増加し、その約
7割を 30 歳未満の者が占めるなど、若年者を中心とした大麻の乱用が拡
大しているなど課題もある。
これらの課題に対応するため、薬物依存の問題を抱える者等への相談
支援や治療等に携わる人材・機関の更なる充実を図るとともに、
刑事司法
関係機関、地域社会の保健医療機関等の各関係機関が、
"息の長い"支援
を実施できるよう、連携体制を更に強化していく必要がある。さらに、増
加する大麻事犯者の再犯の防止等に向けた取組を迅速に進めていく必要
がある。また、薬物依存の問題を抱える者の回復過程においては、その他
の精神疾患に陥る場合があることや、断薬に向けて治療等の継続と就労
を並行して行うことが容易ではない場合があることを念頭に置いて、対
応していく必要がある。
(2) 具体的施策
1 薬物乱用を未然に防止するための広報・
啓発活動の充実
【施策番号 33】
警察庁、法務省、文部科学省及び厚生労働省は、薬物乱用を許容しな
い環境づくりが最大の再犯防止策であることを踏まえ、薬物乱用を未
然に防止するため、
広く国民に対し、
薬物乱用の危険性や有害性、
薬物
乱用への勧誘に対する対応方法等について、効果的な広報・啓発を実
施する。
【警察庁、法務省、文部科学省、厚生労働省】
2 刑事司法関係機関等における効果的な指導の実施等
ア 再犯リスクを踏まえた効果的な指導等の実施【施策番号 34】
法務省は、
厚生労働省の協力を得て、
矯正施設及び保護観察所にお
いて、薬物事犯者の再犯リスク等を適切に把握した上で、専門的プロ
グラムなどの指導を一貫して実施するととともに、
関係機関と連携し
た生活環境の調整や社会復帰支援を充実させる。また、薬物依存の問
題を抱える者の回復過程においては、
アルコールや医薬品への依存に
陥る場合があるとの指摘があることや、犯罪をした者等の中には、ア
ルコールや医薬品への依存が認められる者が一定数いることを踏ま
え、
そうした個々の対象者が抱える問題に応じた指導や支援を併せて
実施する。加えて、指導・支援の効果をより一層高めるため、指導内
容・方法の改善を図るほか、薬物依存症に関する知見を深める機会を
充実させるなどして、指導や支援に当たる職員の育成を進める。
【法
務省、厚生労働省】 20イ 増加する大麻事犯に対応した処遇等の充実【施策番号 35】
法務省は、
厚生労働省の協力を得て、
少年院における大麻に関する
新たな指導教材の作成を行うとともに、
保護観察所における専門的プ
ログラムに大麻に関する指導項目を新設するなど、
大麻事犯に対応し
た処遇の充実を図る。
厚生労働省は、
大麻規制の見直しについての検討を進め、
その検討
結果に基づき、法改正を含む所要の措置を講じるほか、主として若年
者に対して、大麻の危険性等を周知するための広報・啓発活動を推進
する。
【法務省、厚生労働省】
ウ 更生保護施設等による薬物依存回復処遇の充実【施策番号 36】
法務省は、
薬物事犯者の中には、
再犯につながるおそれのある環境
から離脱するため従前の住居に戻ることが適当でない者が多く存在
すること等を踏まえ、
更生保護施設等における薬物事犯者の受入れを
促進するとともに、
薬物依存からの回復に資する処遇を行うための施
設や体制の整備を推進し、
更生保護施設等による薬物依存回復処遇の
充実を図る。
【法務省】
エ 麻薬取締部が実施する薬物乱用防止対策事業の拡大
【施策番号 37】
厚生労働省は、法務省と連携し、
「薬物乱用者に対する再乱用防止
対策事業」として、薬物事犯に係る保護観察の付かない全部執行猶予
判決を受けた者等を対象にプログラム等を実施しているところ、
同事
業の拡充に向けた検討を進める。
【法務省、厚生労働省】
3 治療・支援等を提供する保健医療機関等の充実及び円滑な利用の促進ア 薬物依存の問題を抱える者等に対応する専門医療機関等の拡充及
びその円滑な利用の促進【施策番号 38】
厚生労働省は、薬物依存の問題を抱える者等が、地域において、専
門的な相談や入院から外来までの継続的な治療を受けることができ
るようにするため、
相談支援や専門医療に従事する者の確保及び育成
を進めるとともに、
専門医療機関等の拡充や一般医療機関における適
切な対応の促進を図る。
警察庁、
法務省及び厚生労働省は、
薬物依存の問題を抱える者等を、
保健医療機関等へ適切につなぐことができるようにするため、
各関係
機関間において、情報共有、課題の抽出及び解決方策の検討をするな
どし、連携体制の強化を図る。また、薬物依存の問題を抱える者だけ
ではなく、
その親族を始めとした身近な者が適切な機関に相談できる 21ようにするため、
精神保健福祉センターを始めとした相談支援機関等
の周知を行うなど、支援に関する情報についての広報・啓発活動を推
進する。
【警察庁、法務省、厚生労働省】
イ 自助グループ等の民間団体と共同した支援の強化【施策番号 39】
法務省は、薬物依存からの回復に向けた支援活動を行う自助グル
ープ等の民間団体が果たす役割の重要性に鑑み、
矯正施設及び保護観
察所において、同民間団体との連携を強化し、刑事司法手続が終了し
た後も薬物依存の問題を抱える者等への支援が継続できる体制の整
備を図る。
厚生労働省は、同民間団体の活動を促進するための支援の充実を
図る。
【法務省、厚生労働省】
ウ 薬物依存症に関する知見を有する医療関係者の育成
【施策番号 40】
厚生労働省は、
薬物依存症の回復に向けた一般的な保健医療・福祉
サービスの中での実施体制を充実させるために、
薬物依存症に関する
基本的な知識を有する医療関係者が必要であることを踏まえ、
令和2
年度からは医師臨床研修制度において、
精神科研修を必修化するとと
もに、経験すべき疾病・病態の一つとして「依存症(ニコチン・アル
コール・薬物・病的賭博)
」を位置付けたところであり、引き続き臨床
研修を推進する。
【厚生労働省】
エ 薬物依存症に関する知見を有する福祉専門職や心理専門職等の育
成【施策番号 41】
厚生労働省は、薬物依存への問題を抱える者等への相談支援体制
を充実させるために、
薬物依存の問題を抱える者等の支援ニーズを適
切に把握し、
関係機関につなげるなどの相談援助を実施する福祉専門
職・心理専門職が必要であることを踏まえ、精神保健福祉士、社会福
祉士及び公認心理師の養成課程においても薬物依存症に関する適切
な教育がなされるよう努める。
また、
薬物依存等からの回復に向けて、
地域における継続した支援
が必要であることを踏まえ、
薬物依存を抱える者等への生活支援を担
う支援者に対する研修の充実を図る。
【厚生労働省】
4 薬物事犯者の再犯防止施策の効果検証及び効果的な方策の検討【施
策番号 42】
法務省及び厚生労働省は、刑の一部執行猶予判決を受けた者の再犯 22状況、刑事司法関係機関や保健医療機関等における指導・支援の効果
等を検証するとともに、諸外国において薬物依存症からの効果的な回
復措置として実施されている各種拘禁刑に代わる措置について調査を
行うなどし、新たな取組を試行的に実施することも含め、我が国にお
ける薬物事犯者の再犯の防止等において効果的な方策について検討を
行う。
【法務省、厚生労働省】 23第3 学校等と連携した修学支援の実施等のための取組(推進法第 11 条、第 13
条関係)
1.学校等と連携した修学支援の実施等
(1) 現状認識と課題等
我が国の高等学校への進学率は、98.8 パーセントであり、ほとんどの
者が高等学校に進学する状況にあるが、その一方で、入所受刑者の 33.8
パーセントは高等学校に進学しておらず、23.8 パーセントは高等学校を
中退している。また、少年院入院者の 24.4 パーセントは中学校卒業後に
高等学校に進学しておらず、中学校卒業後に進学した者のうち 56.9 パー
セントは高等学校を中退している状況にある。
社会において、
就職して自立した生活を送る上では、
高等学校卒業程度
の学力が求められることが多い実情にあることに鑑み、政府においては、
これまで、
高等学校の中退防止のための取組や、
高等学校中退者等に対す
る学習相談や学習支援を実施してきた。
また、
矯正施設における高等学校
卒業程度認定試験に向けた指導、少年院在院者に対する高等学校教育機
会の提供や出院後の進路指導、保護観察所における保護司や BBS 会等の
民間ボランティアと連携した学習支援等を実施してきた。
その結果、矯正施設における高等学校卒業程度認定試験の全科目合格
者率が増加するなど、
修学支援のための取組は、
一定の成果を上げてきた。
しかしながら、依然として、少年院出院時に復学・進学を希望している
者のうち、
約7割は復学・進学が決定しないまま少年院を出院しているな
どの課題もある。
これらの課題に対応するため、引き続き、矯正施設において、民間のノ
ウハウや ICT の活用などにより教科指導の充実を図るとともに、少年院
出院後も一貫した修学支援を実施できるよう、矯正施設、保護観察所、学
校等の関係機関の連携を強化していく必要がある。また、非行が、修学か
らの離脱を助長し、又は復学を妨げる要因となっているとの指摘がある
ことも踏まえ、非行防止に向けた取組を強化していく必要がある。
(2) 具体的施策
1 児童生徒の非行の未然防止等
ア 学校における適切な指導等の実施【施策番号 43】
文部科学省は、警察庁、法務省及び厚生労働省の協力を得て、弁護
士会等の民間団体にも協力を求めるなどし、いじめ防止対策推進法
(平成 25 年法律第 71 号)
等の趣旨を踏まえたいじめ防止のための教
育や、人権尊重の精神を育むための教育と併せ、再非行の防止の観点 24も含め、学校における非行防止のための教育、性犯罪の防止のための
教育、
薬物乱用未然防止のための教育及び薬物再乱用防止のための相
談・指導体制の充実、復学に関する支援体制の充実を図る。また、厚
生労働省の協力を得て、
学校生活を継続させるための本人及び家族等
に対する支援や、
やむを得ず中退する場合の就労等の支援の充実を図
るとともに、
高等学校中退者等に対して高等学校卒業程度の学力を身
に付けさせるための学習相談及び学習支援等を実施する地方公共団
体の取組を支援する。
【警察庁、法務省、文部科学省、厚生労働省】
イ 地域における非行の未然防止等のための支援【施策番号 44】
内閣府、警察庁、法務省、文部科学省及び厚生労働省は、非行等を
理由とする児童生徒の修学の中断を防ぐため、
貧困や虐待等の被害体
験などが非行等の一因になることも踏まえ、
地域社会における子供の
居場所作りや子供、
保護者及び学校関係者等に対する相談支援の充実、
民間ボランティア等による犯罪予防活動の促進、
高等学校卒業程度資
格の取得を目指す者への学習相談・学習支援など、児童生徒の非行の
未然防止や深刻化の防止に向けた取組を推進する。
また、同取組を効果的に実施するために、子ども・若者育成支援推
進法(平成 21 年法律第 71 号)に基づき、社会生活を円滑に営む上で
の困難を有する子ども・若者の支援を行うことを目的として、地方公
共団体に「子ども・若者支援地域協議会」の設置及び「子ども・若者
総合相談センター」
としての機能を担う体制の確保について努力義務
が課されていることなどについて、関係機関等に周知し、連携の強化
を図る。
さらに、
法務省は、
一部の少年鑑別所と都道府県警察において協定
を締結し、継続補導対象者へのカウンセリング、心理検査を実施する
などしているところ、これらの取組の拡充を検討するなど、連携の強
化を図る。【内閣官房、内閣府、警察庁、法務省、文部科学省、厚生
労働省】
2 非行等による学校教育の中断の防止等
ア 学校等と保護観察所が連携した支援等【施策番号 45】
法務省及び文部科学省は、保護司による非行防止教室など保護司
と学校等が連携して行う犯罪予防活動を促進し、
保護司と学校等の日
常的な連携・協力体制の構築を図るとともに、保護観察所、保護司、
学校関係者等に対し、連携事例を周知するなどして、学校に在籍して 25いる保護観察対象者に対する生活指導・支援等の充実を図る。
【法務
省、文部科学省】
イ 矯正施設と学校との連携による円滑な学びの継続に向けた取組の
充実【施策番号 46】
法務省は、
矯正施設において、
個々の対象者の希望や事情を踏まえ
つつ、
就労や資格取得と関連付けた修学に対する動機付けを図るほか、
引き続き、民間の学力試験の活用や適切な教材の整備、ICT の活用を
進めるなどして、対象者の能力に応じた教科指導を実施する。また、
法務省は、文部科学省と連携しながら、少年院在院者のうち希望する
者について、
在院中の通信制高校への入学及び出院後の継続した学び
に向けた調整等を行うことにより、
高等学校教育機会の提供について
の取組の更なる充実を図る。
【法務省、文部科学省】
ウ 矯正施設における高等学校卒業程度認定試験の指導体制の充実
【施策番号 47】
法務省及び文部科学省は、矯正施設における高等学校卒業程度認
定試験を引き続き実施する。また、法務省は、ICT の活用を進めるな
どして、矯正施設における同試験に係る指導を強化するとともに、同
試験に合格した少年院在院者等の希望進路の実現に向けた指導の充
実を図る。
【法務省、文部科学省】
3 学校や地域社会において再び学ぶための支援
ア 学校や地域社会における修学支援【施策番号 48】
法務省は、保護司、更生保護女性会、BBS 会、少年友の会等の民間
ボランティアや協力雇用主と連携して、
学校に在籍していない非行少
年等が安心して修学することができる場所の確保を含めた修学支援
を促進する。また、保護観察対象者のうち、修学の継続のために支援
が必要な者については、
矯正施設における修学支援を始めとした施設
内処遇の内容等を踏まえ、矯正施設、保護観察所及び民間ボランティ
ア等が協働して、
本人が抱える課題や実情等に応じた修学支援を実施
するとともに、実施事例を通じて得られた知見を踏まえ、地域社会に
おける効果的な修学支援施策を展開する。
法務省及び文部科学省は、
矯正施設在所者・保護観察対象者のうち、
修学支援の対象となる者に対し、地方公共団体における学習相談・学
習支援の取組の利用を促す。
【法務省、文部科学省】 26イ 矯正施設・保護観察所職員と学校関係者の相互理解の促進等
【施策
番号 49】
法務省及び文部科学省は、矯正施設や保護観察所の職員と学校関
係者との相互理解を深めるため、矯正施設・保護観察所における研修
や学校関係者への研修等の実施に当たって相互に職員を講師として
派遣するなどの取組を推進する。また、矯正施設・保護観察所の職員
や学校関係者に対し、
相互の連携事例の周知・共有を図る。
【法務省、
文部科学省】 27第4 犯罪をした者等の特性に応じた効果的な指導の実施等のための取組(推
進法第 11 条、第 13 条、第 21 条関係)
1.特性に応じた効果的な指導の実施等
(1) 現状認識と課題等
出所受刑者等の2年以内再入率の推移を罪名別
(覚醒剤取締法違反、性犯罪、傷害・暴行、窃盗)
、属性別(高齢、女性、少年)に見ると、それ
ぞれに傾向があり、また、各個人に着目しても、犯罪や非行の内容はもち
ろんのこと、心身の状況、家庭環境、交友関係等、犯罪の背景にある事情
は様々である。
再犯の防止等のためには、罪種ごとに認められる特徴や各個人の特性
を的確に把握し、それらに応じた効果的な指導等を行うことが重要であ
ることから、政府においては、これまで、刑事施設における受刑者用一般
リスクアセスメントツール(G ツール)や保護観察所におけるアセスメン
トツール(CFP)を開発するなど、アセスメント機能の強化を進めるとと
もに、
各種プログラム等の罪種・類型別の専門的指導の充実を図ってきた。
また、
特定少年を含む少年に対して、
早期の段階から非行の防止に向けた
取組を行っていくことが有益であることから、
関係府省間で
「特定少年等
に係る非行対策」を申し合わせ、早期の段階から、学校、刑事司法関係機
関、地域の関係機関等が連携して非行の未然防止に取り組んでいく体制
を強化し、必要な対策を進めてきた。
しかしながら、矯正施設及び保護観察所におけるアセスメント内容等
の関係機関への有機的な引継ぎが必ずしも十分とはいえないこと、刑事
司法手続を離れた者が地域社会で特性に応じた支援を受けることができ
る体制が十分に整っているとはいえないことなどの課題もあり、これら
の課題に対応した取組を進める必要がある。また、
「刑法等の一部を改正
する法律」が成立し、今後、受刑者に対し、改善更生のために必要な作業
と指導を柔軟に組み合わせた処遇が可能となることなどを受け、犯罪被
害者等の視点も取り入れながら、個々の対象者の特性に応じた指導等を
一層充実させていく必要がある。
(2) 具体的施策
1 刑事司法関係機関におけるアセスメント機能の強化と関係機関等が
保有する情報の活用【施策番号 50】
法務省は、
矯正施設及び保護観察所において、
社会情勢や犯罪動向の
変化も考慮した上で、犯罪をした者等の特性や再犯リスク等を踏まえ
た適切な処遇方針を策定するため、更生支援計画書等の公的機関や民 28間団体等が保有する処遇に資する情報を活用した多角的な視点による
アセスメントを行うことも含め、アセスメント機能の強化を図るとと
もに、アセスメント内容の他機関への適切な引継ぎを行う。
法務省は、刑事施設における受刑者用一般リスクアセスメントツール(G ツール)
や少年鑑別所における法務省式ケースアセスメントツー
ル(MJCA)
、保護観察所におけるアセスメントツール(CFP)などを適切
に活用するとともに、AI 技術の活用も含め、アセスメント精度の更な
る向上に向けた検討を行う。
【法務省】
2 特性に応じた指導等の充実
i 性犯罪者・性非行少年に対する指導等
ア 性犯罪者等に対する効果的な指導等の実施【施策番号 51】
法務省は、
厚生労働省の協力を得て、
海外における取組などを参考
にしつつ、
刑事施設における性犯罪再犯防止指導や少年院における性
非行防止指導、
保護観察所における性犯罪再犯防止プログラム等の性
犯罪者等に対する指導等について、指導者育成を進めるなどして、一
層の充実を図るとともに、地域の医療・福祉関係機関等との連携を強
化し、
性犯罪者等に対する矯正施設在所中から出所後まで一貫性のあ
る効果的な指導の実施を図る。また、刑事司法手続終了後も継続的な
支援が実施できるよう、
地方公共団体や民間協力者が利用可能な支援
ツールを提供し、その活用を促進する。
加えて、
法務省は、
海外において導入されている GPS 等により位置
情報を取得・把握する運用や性犯罪対象者の自発的意思によって支援
を受けることのできる社会内サポート体制も参考にしつつ、
性犯罪者
等の処遇の充実方策について検討する。
【法務省、厚生労働省】
イ 子供を対象とする暴力的性犯罪をした者の再犯防止
【施策番号 52】
警察庁は、
法務省の協力を得て、
子供を対象とする暴力的性犯罪を
した者について、刑事施設出所後の所在確認を実施するとともに、そ
の者の同意を得て面談を実施し、必要に応じて、関係機関・団体等に
よる支援等に結び付けるなど、
再犯の防止に向けた措置の充実を図る。
【警察庁、法務省】
ii ストーカー・DV 加害者に対する指導等
ア 被害者への接触防止のための措置【施策番号 53】
警察庁及び法務省は、ストーカー・DV 加害者による重大な事案が 29発生していることを踏まえ、
これら加害者の保護観察実施上の特別遵
守事項や問題行動等の情報を共有し、
被害者への接触の防止のための
指導等を徹底するとともに、必要に応じ、仮釈放の取消しの申出又は
刑の執行猶予の言渡しの取消しの申出を行うなど、
これら加害者に対
する適切な措置を実施する。
【警察庁、法務省】
イ ストーカー加害者等に対するカウンセリング等【施策番号 54】
警察庁は、ストーカー加害者への対応を担当する警察職員につい
て、研修の受講を促進するなどして、精神医学的・心理学的アプロー
チに関する技能や知識の向上を図るとともに、
ストーカー加害者に対
し、医療機関等の協力を得て、医療機関等によるカウンセリング等の
受診に向けた働き掛けを行うなど、関係機関・団体と連携して、スト
ーカー加害者に対する精神医学的・心理学的なアプローチを推進する。
また、法務省は、個々のストーカー・DV 加害者が抱える問題性等
を踏まえ、
矯正施設における改善指導や保護観察所における類型別処
遇ガイドラインに基づく処遇を適切に実施する。
【警察庁、法務省】
iii 暴力団からの離脱、社会復帰に向けた指導等【施策番号 55】
警察庁及び法務省は、警察・暴力追放運動推進センター等と矯正施
設・保護観察所との連携を強化するなどして、暴力団員に対する暴力
団離脱に向けた働き掛けの充実を図るとともに、離脱に係る情報を適
切に共有する。また、警察庁、法務省等の関係省庁は連携の上、暴力団
からの離脱及び暴力団離脱者等の社会への復帰・定着を促進するため、
離脱・就労や預貯金口座の開設支援などの社会復帰に必要な社会環境・
フォローアップ体制の充実を図る。
【警察庁、金融庁、法務省】
iv 少年・若年者に対する可塑性に着目した指導等
ア 刑事司法関係機関における指導体制の充実【施策番号 56】
法務省は、
少年院において、
複数職員で指導を行う体制の充実を図
るとともに、少年鑑別所において、在所中の少年に対し、その自主性
を尊重しつつ、健全育成に向けた支援等を適切に実施するほか、学校
等の関係機関や民間ボランティアの協力も得て、
学習や文化活動等に
触れる機会を付与するなど、
少年の健全育成を考慮した処遇の充実を
図る。また、刑事施設においても、おおむね 26 歳未満の若年受刑者
に対し、少年院における矯正教育の手法やノウハウ、その建物・設備
等を活用しながら、少年・若年者の特性に応じたきめ細かな指導等の 30充実を図る。
【法務省】
イ 関係機関と連携したきめ細かな支援等【施策番号 57】
法務省は、支援が必要な少年・若年者については、児童福祉関係機
関に係属歴がある者、
虐待等の被害体験や発達障害等の障害を有して
いる者が少なくないなどの実情を踏まえ、少年院・保護観察所におけ
るケース検討会を適時適切に実施するなど、学校、児童相談所、児童
福祉施設、福祉事務所、少年サポートセンター、子ども・若者総合支
援センター(地方公共団体が子ども・若者育成支援に関する相談窓口
の拠点として設置するもの)
、地域若者サポートステーション(働く
ことに悩みを抱えている者を対象に、
就労に向けた支援を行う機関)、弁護士・弁護士会、医療機関等関係機関との連携を強化し、きめ細か
な支援等を実施する。
【法務省】
ウ 非行少年に対する立ち直り支援活動の充実【施策番号 58】
警察庁は、
非行少年を生まない社会づくり活動の一環として、
少年
サポートセンター等が民間ボランティアや関係機関と連携して行う、
修学、
就労に向けた支援や社会奉仕体験活動等への参加機会の確保等、
個々の非行少年の状況に応じた立ち直り支援について、
都道府県警察
に対する指導や好事例の紹介等を通じ、その充実を図る。
【警察庁】
エ 保護者との関係を踏まえた指導等の充実【施策番号 59】
法務省は、
保護観察対象少年及び少年院在院者に対し、
保護者との
適切な関係に関する指導・支援の充実を図るとともに、
保護者に対し、
対象者の処遇に対する理解・協力の促進や保護者の監護能力の向上を
図るための指導・助言、保護者会への参加依頼、保護者自身が福祉的
支援等を要する場合の助言等を行うなど、
保護者に対する働き掛けの
充実を図る。また、保護者による適切な監護が得られない場合には、
地方公共団体を始めとする関係機関や民間団体等と連携し、
本人の状
況に応じて、
社会での自立した生活や未成年後見制度の利用等に向け
た指導・支援を行う。
【法務省】
v 女性の抱える困難に応じた指導等【施策番号 60】
法務省は、女性受刑者等について、妊娠・出産等の事情を抱えている
場合があること、虐待等の被害体験や性被害による心的外傷、依存症・
摂食障害等の精神的な問題を抱えている場合が多いことなどを踏まえ、 31矯正施設において、関係機関との連携を強化し、これらの困難に応じ
た指導・支援を効果的に実施するとともに、女性のライフスタイルの
多様化への対応や自身の被害防止の観点からの教育の充実を図る。ま
た、
法務省は、
女性受刑者等のうち、
女性であることにより様々な困難
な問題を抱える者については、矯正施設出所後速やかに地域の保健医
療・福祉サービス等を利用することができるよう、厚生労働省の協力
を得て、困難な問題を抱える女性への支援のための諸制度や社会資源
も活用しつつ、矯正施設在所中から関係機関等と連携した切れ目のな
い社会復帰支援等を行う。
さらに、
法務省は、
矯正施設出所後の自立した社会生活を視野に入れ、
矯正施設において、女性受刑者等の就労意欲を喚起するとともに、女
性の労働状況や特性を踏まえた矯正処遇等を実施するほか、更生保護
施設においても、
女性の特性に配慮した指導・支援を推進するなど、社会生活への適応のための指導・支援の充実を図る。
【法務省、厚生労働
省】
vi 発達上の課題を有する犯罪をした者等に対する指導等
【施策番号 61】
法務省は、犯罪をした者等の中には、発達上の課題を有し、指導等の
内容の理解に時間を要する者や、指導等の内容を理解するために特別
な配慮を必要とする者のほか、虐待等の被害体験を有する者が存在す
ることを踏まえ、その者の特性に応じた指導等の充実を図るとともに、
厚生労働省や民間団体等の協力を得て、発達上の課題を有する者等に
対する指導に関する研修の充実や関係機関との連携強化等を図る。ま
た、知的障害等のある受刑者等について、関係機関との連携を強化し
つつ、
民間の知見も活用するなどし、
その特性に応じた指導・支援の充
実を図る。
【法務省、厚生労働省】
vii 各種指導プログラムの充実【施策番号 62】
法務省は、刑事施設において、拘禁刑の創設の趣旨を踏まえ、自身の
罪や被害者等に向き合い、作業や改善指導に対する動機付けを高める
働き掛けを強化しつつ、アルコール依存を含む依存症の問題や、DV を
含む対人暴力の問題を抱える者等に対し、その特性に応じた柔軟な指
導が可能となるよう改善指導プログラムの充実を図る。また、少年院
において、特定少年に対する成年としての自覚・責任を喚起する指導
や社会人として必要な知識の付与に加え、特殊詐欺等近年の犯罪態様
に対応した指導等の充実を図る。保護観察所においては、飲酒や暴力 32などに関する専門的プログラムの実施や社会貢献活動など、個々の対
象者の特性に応じた指導の一層の充実を図る。
【法務省】
3 犯罪被害者等の視点を取り入れた指導等【施策番号 63】
法務省は、
犯罪をした者等が社会復帰する上で、
自らが犯した罪等の
責任を自覚し、犯罪被害者等の置かれた状況や心情等を理解すること
が不可欠であることを踏まえ、矯正施設において、被害者の視点を取
り入れた教育を効果的に実施するほか、新設される「刑の執行段階等
における被害者等の心情等の聴取・伝達制度」
に必要となる人的・物的
体制を整備するなどして、被害者等の心情等を考慮した矯正処遇・矯
正教育の充実を図る。
また、
保護観察所においても、
犯罪被害者等の心情等伝達制度の一層
効果的な運用に努めるほか、必要となる人的体制を整備するなどして、
新設される犯罪被害者等の心情等を聴取する制度の適切な運用に努め
る。加えて、しょく罪指導プログラムの実施や犯罪被害者等の被害の
回復・軽減に誠実に努めるよう指導監督することなどにより、犯罪被
害者等の思いに応える保護観察処遇の一層の充実を図る。
【法務省】 33第5 民間協力者の活動の促進等のための取組(推進法第5条、第 22 条、第 23
条関係)
1.現状認識と課題等
犯罪をした者等の社会復帰支援は、数多くの民間協力者の活動に支えら
れている。再犯の防止等に関する民間協力者の活動は、刑事司法手続が進行
中の段階から終了した後の段階まで、
あらゆる段階をカバーする裾野の広い
もので、
刑事司法関係機関や地方公共団体といった官の活動とも連携した取
組が行われている。
こうした民間協力者の活動は、
SDGs に掲げられたマルチ
ステークホルダー・パートナーシップを体現し、
「持続可能な社会」・「イン
クルーシブな社会」の実現に欠かせない尊いものでもあり、社会において、
高く評価されるべきものである。
民間協力者のうち、保護司は、犯罪をした者等が孤立することなく、社会
の一員として安定した生活が送れるよう、
保護観察官と協働して保護観察を
行うなどの活動を行っており、地域社会の安全・安心にとっても、欠くこと
のできない存在である。
保護司が担う役割は、
国際的な評価も高く、
第 14 回
国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)のサイドイベントとして開催
した「世界保護司会議」では、
「世界保護司デー」の創設等を盛り込んだ「京
都保護司宣言」が採択されるなど、"HOGOSHI"の輪は、我が国の枠を超え
て世界への広がりを見せている。
また、犯罪をした者等の社会復帰を支援するための地域に根ざした幅広
い活動を行う更生保護女性会や BBS 会等の更生保護ボランティア、
矯正施設
を訪問して矯正施設在所者の悩みや問題について助言・指導する篤志面接委
員、矯正施設在所者の希望に応じて宗教教誨を行う教誨師、非行少年等の居
場所づくりを通じた立ち直り支援に取り組む少年警察ボランティア、
都道府
県からの委託を受けて活動する地域生活定着支援センター、
更生支援計画の
策定等に関わる社会福祉士・精神保健福祉士、刑事弁護や少年事件の付添人
としての活動のみならず社会復帰支援・立ち直り支援にも関わる弁護士、自
らの社会復帰経験に基づいて支援を行う自助グループなど、
数多くの民間協
力者が、それぞれの立場や強みを生かし、相互に連携し、あるいは刑事司法
関係機関や地方公共団体とも連携しながら、
再犯の防止等に関する施策を推
進する上で欠くことのできない活動を行っている。
政府は、
こうした民間協力者が果たす役割の重要性に鑑み、
民間協力者の
活動を一層促進していくことはもとより、
より多くの民間協力者に再犯の防
止等に向けた取組に参画してもらえるよう、
新たな民間協力者の開拓も含め、
積極的な働き掛けを行っていく必要がある。また、民間協力者が、
"息の長
い"支援を行う上で極めて重要な社会資源であることを踏まえ、民間協力者 34との連携を一層強化していく必要がある。
保護司については、
担い手の確保が年々困難となり、
高齢化も進んでいる。
その背景として、
地域社会における人間関係の希薄化といった社会環境の変
化に加え、保護司活動に伴う不安や負担が大きいことが指摘されて久しい。
こうした課題に対応し、
幅広い世代から多様な人材を確保することができる
持続可能な保護司制度の構築に向けて、
保護司組織の運営を含む保護司活動
の支障となる要因の軽減等について検討を進め、
保護司活動の基盤整備を一
層推進していく必要がある。
2.持続可能な保護司制度の確立とそのための保護司に対する支援
(1) 具体的施策
1 持続可能な保護司制度の確立に向けた検討・試行【施策番号 64】
法務省は、
時代の変化に適応可能な保護司制度の確立に向け、
保護司
の待遇や活動環境、
推薦・委嘱の手順、
年齢条件及び職務内容の在り方
並びに保護観察官との協働態勢の強化等について検討・試行を行い、
2年を目途として結論を出し、その結論に基づき所要の措置を講じる。
【法務省】
2 保護司活動のデジタル化及びその基盤整備の推進【施策番号 65】
法務省は、保護司活動に関する事務の多くをオンライン上で実施で
きる体制の構築を目指し、保護司専用ホームページ"H@(はあと)
"の
機能拡充を図るとともに、保護司が使用するタブレット端末等を整備
するなど、保護司活動の一層のデジタル化を図る。
【法務省】
3 保護司適任者に係る情報収集及び保護司活動を体験する機会等の提
供【施策番号 66】
法務省は、保護司候補者を確保するため、総務省、文部科学省、厚生
労働省及び経済産業省の協力を得て、保護観察所において、地方公共
団体、自治会、福祉・教育・経済等の各種団体と連携して、保護司候補
者検討協議会における協議を効果的に実施し、地域の保護司適任者に
関する情報を収集する取組を強化する。
また、
法務省は、
保護観察所に
おいて、保護司活動についての理解を広げるための保護司セミナーや
保護司活動を体験する保護司活動インターンシップなどを通じて、同
協議会で情報提供のあった保護司候補者等に対して、保護司活動につ
いての理解を深めてもらうとともに、実際に保護司として活動しても
らえるよう、積極的に働き掛ける。
【総務省、法務省、文部科学省、厚 35生労働省、経済産業省】
4 地方公共団体からの支援の確保【施策番号 67】
法務省は、総務省と連携し、地方公共団体に対し、保護司適任者に関
する情報提供や職員の推薦、更生保護サポートセンターの設置場所や
自宅以外で面接できる場所の確保、顕彰等による保護司の社会的認知
の向上、保護司確保に協力した事業主に対する優遇措置など、保護司
活動に対する充実した支援が得られるよう働き掛ける。
【総務省、法務
省】
5 国内外への広報・啓発【施策番号 68】
法務省は、幅広い世代から多様な人材を保護司として迎え入れるた
め、保護司セミナーによる地域の関係機関等への広報、若年層にも訴
求する多様な手法による広報を展開するとともに、地方公共団体によ
る保護司への顕彰を促進することなどを通じ、国内における保護司の
社会的認知・評価の向上を図る。
また、
京都保護司宣言を踏まえ、
国際会議等の場で保護司制度やその
活動についての国際発信を推進し、保護司の国際的な認知・評価の向
上を図る。
【法務省】
3.民間協力者(保護司を除く)の活動の促進
(1) 具体的施策
1 民間ボランティアの活動に対する支援の充実
ア 少年警察ボランティア等の活動に対する支援の充実
【施策番号 69】
警察庁は、
少年警察ボランティアの活動を促進するため、
少年警察
ボランティアの活動に対して都道府県警察が支給する謝金等の補助
や、
都道府県警察や民間団体が実施する少年警察ボランティア等に対
する研修への協力を推進するなどして、
少年警察ボランティア等の活
動に対する支援の充実を図る。
【警察庁】
イ 更生保護ボランティアの活動に対する支援の充実【施策番号 70】
法務省は、
更生保護ボランティアの活動を促進するため、
更生保護
女性会や BBS 会といった更生保護ボランティアに対する研修の充実
を図るとともに、
積極的な広報等により、
担い手の確保を図る。
また、
地域の中で困難を抱える人を支援するため、
更生保護ボランティアの
活動に対する支援の充実を図る。
【法務省】 362 民間協力者との連携強化
ア 地域の民間協力者の開拓及び一層の連携等【施策番号 71】
法務省は、
再犯の防止等に関する施策を推進する上で、
民間協力者
が果たす役割の重要性に鑑み、
地域で再犯の防止等に資する取組を行
う NPO 法人、社会福祉法人、企業、弁護士、社会福祉士や、自らの社
会復帰経験に基づいて相互理解や支援をし合う自助グループといっ
た民間協力者の把握に努めるとともに、
そうした民間協力者を積極的
に開拓し、より一層の連携を図る。
また、矯正施設において、民間事業者の協力を得ながら、外部通勤
作業・院外委嘱指導等を活用して、社会内での指導機会の拡大を図る
とともに、保護観察所において、自助グループや当事者団体を含む民
間団体の協力を得ながら、効果的な指導・支援の充実を図るなど、広
く地域の民間協力者と連携した指導等を推進する。
加えて、篤志面接委員や教誨師等、かねてから、犯罪をした者等の
立ち直りに向けた取組を実施してきた民間協力者の特性や役割を踏
まえ、効果的な連携を図る。
【法務省】
イ 弁護士・弁護士会との連携強化【施策番号 72】
法務省は、
犯罪をした者等に対して、
切れ目のない効果的な支援を
実施していく上で、
刑事司法手続が進行中の段階から終了した後まで
継続的な関わりができる弁護士・弁護士会との連携が重要であること
に鑑み、入口支援を始めとする再犯防止・社会復帰支援分野における
弁護士・弁護士会との連携の在り方を検討し、
連携の強化を図る。
【法
務省】
ウ 犯罪をした者等に関する情報提供【施策番号 73】
法務省は、警察庁、文部科学省及び厚生労働省の協力を得て、犯罪
をした者等に対して国や地方公共団体が実施した指導・支援等に関す
る情報その他民間協力者が行う支援等に有益と思われる情報につい
て、個人情報等の適正な取扱いを確保しつつ、民間協力者に対して適
切に情報提供を行う。
【警察庁、法務省、文部科学省、厚生労働省】
3 民間の団体等の創意と工夫による再犯防止活動の促進
【施策番号 74】
法務省は、再犯防止分野において、ソーシャル・インパクト・ボンド
(SIB)
を含む成果連動型民間委託契約方式
(PFS)
事業を推進するとと 37もに、地方公共団体に対しても PFS を活用した再犯防止事業の導入に
向けた支援を行うなどして、民間事業者が持つ資金・ノウハウを活用
した再犯防止活動の促進を図る。
【法務省】
4 民間協力者の確保及びその活動に関する広報の充実
ア 民間協力者の活動に関する広報の充実【施策番号 75】
警察庁及び法務省は、
国民の間に、
再犯の防止等に協力する気持ち
を醸成するため、少年警察ボランティアや更生保護ボランティア等、
民間協力者の活動に関する広報の充実を図る。
【警察庁、法務省】
イ 民間協力者に対する表彰【施策番号 76】
内閣官房及び法務省は、民間協力者による再犯の防止等に関する
活動を更に普及・促進するとともに、新たな活動の道を開く民間協力
者の開拓にも資するよう、再犯を防止する社会づくりに功績・功労が
あった民間協力者を表彰する
「安全安心なまちづくり関係功労者表彰」
を引き続き実施し、効果的な広報に努める。
【内閣官房、法務省】 38第6 地域による包摂を推進するための取組(推進法第5条、第8条、第 24 条
関係)
1.現状認識と課題等
犯罪をした者等が地域社会の中で孤立することなく、自立した社会の構
成員として安定した生活を送るためには、
刑事司法手続段階における社会復
帰支援のみならず、刑事司法手続終了後も、国、地方公共団体、地域の保健
医療・福祉関係機関、民間協力者等がそれぞれの役割を果たしつつ、相互に
連携して支援することで、犯罪をした者等が、地域社会の一員として、地域
のセーフティネットの中に包摂され、
地域社会に立ち戻っていくことができ
る環境を整備することが重要となる。
刑事司法手続を離れた者に対する支援は、主に地方公共団体が主体とな
って一般住民を対象として提供している各種行政サービス等を通じて行わ
れることが想定されるため、
「地域による包摂」を進めていく上では、地域
住民に身近な地方公共団体の取組が求められる。
そのため、
政府においては、
国と地方公共団体の協働による地域における効果的な再犯防止施策の在り
方について調査することを目的として、一部の地方公共団体と連携し、
「地
域再犯防止推進モデル事業」を実施するとともに、その成果等をその他の地
方公共団体に共有するための協議会等を開催するなどしてきた。
こうした国
の取組に呼応し、地方公共団体においても、地方再犯防止推進計画の策定が
進められており、
「地域による包摂」に向けた取組には、一定の進展が見ら
れる。
しかしながら、再犯防止分野において国と地方公共団体が担うべき具体
的役割が必ずしも明確とは言い難い面もあり、
再犯の防止等に関する地方公
共団体の理解や施策の実施状況には依然として地域差が認められること、地方公共団体は再犯の防止等に関する知見・ノウハウ・情報に乏しく、国にお
いて、これらを提供するなどの支援をしていく必要があること、支援へのア
クセシビリティを確保するという観点から、
地域社会における関係機関や民
間協力者等との連携を更に強化していく必要があることなどの課題も見え
てきている。
これらの課題に対応するため、国と地方公共団体が担う役割を具体的に
明示することで、地方公共団体の取組を促進するとともに、地域社会におけ
る国・地方公共団体・民間協力者等による支援連携体制を更に強化していく
ことなどが必要である。
2.地方公共団体との連携強化等
(1) 国と地方公共団体の役割 39国と地方公共団体は、
それぞれ以下の役割を踏まえ、
相互に連携しなが
ら再犯の防止等に向けた取組を推進する。
1 国の役割
各機関の所管及び権限に応じ、
刑事司法手続の枠組みにおいて、
犯罪
をした者等に対し、それぞれが抱える課題を踏まえた必要な指導・支
援を実施する。
また、
再犯の防止等に関する専門的知識を活用し、
刑執
行終了者等からの相談に応じるほか、地域住民や、地方公共団体を始
めとする関係機関等からの相談に応じて必要な情報の提供、助言等を
行うなどして、地域における関係機関等による支援ネットワークの構
築を推進する。
加えて、
再犯の防止等に関する施策を総合的に立案・実施する立場と
して、地方公共団体や民間協力者等に対する財政面を含めた必要な支
援を行う。
2 都道府県の役割
広域自治体として、
域内の市区町村の実情を踏まえ、
各市区町村で再
犯の防止等に関する取組が円滑に行われるよう、市区町村に対する必
要な支援や域内のネットワークの構築に努めるとともに、犯罪をした
者等に対する支援のうち、市区町村が単独で実施することが困難と考
えられる就労に向けた支援や配慮を要する者への住居の確保支援、罪
種・特性に応じた専門的な支援などについて、地域の実情に応じた実
施に努める。
3 市区町村の役割
保健医療・福祉等の各種行政サービスを必要とする犯罪をした者等、
とりわけこれらのサービスへのアクセスが困難である者や複合的な課
題を抱える者が、地域住民の一員として地域で安定して生活できるよ
う、地域住民に最も身近な基礎自治体として、適切にサービスを提供
するよう努める。
また、立ち直りを決意した人を受け入れていくことができる地域社
会づくりを担うことが期待されている。
(2) 具体的施策
1 地方公共団体による再犯の防止等の推進に向けた取組の支援
ア 市区町村による再犯の防止等の推進に向けた取組の促進【施策番
号 77】 40法務省は、
市区町村が、
犯罪をした者等の個々のニーズに応じた伴
走型支援を実施するなどして、
上記の役割を十全に果たすことができ
るよう、都道府県とも連携しつつ、市区町村と刑事司法関係機関との
連携体制を構築し、
犯罪をした者等が必要な行政サービスを受けられ
るための市区町村に対するつなぎや情報の提供、
行政サービスにつな
がった後の助言等の必要な支援を行う。また、市区町村に対し、行政
サービスの提供に当たっては、
重層的支援体制整備事業における相談
支援や支援会議、
基幹相談支援センターによる相談等の活用が考えら
れることを周知する。
さらに、
矯正施設が所在する市区町村等と連携協力し、
再犯防止に
も地方創生にも資する取組を一層推進する。
【法務省】
イ 都道府県による再犯の防止等の推進に向けた取組の促進【施策番
号 78】
法務省は、都道府県が、各地域の実情も踏まえ、域内の市区町村と
連携し、
再犯の防止等に関する取組を切れ目なく実施するために必要
な調整や体制構築を行うなどして、
上記の役割を十全に果たすことが
できるよう、
都道府県に対して適切な情報提供や体制の整備に関する
支援等を行う。
【法務省】
2 地方再犯防止推進計画の策定等の支援【施策番号 79】
法務省は、地方再犯防止推進計画が未策定である地方公共団体に対
し、矯正官署や保護観察所等の刑事司法関係機関や都道府県を通じる
などして、地域の実情に応じて地方再犯防止推進計画を策定できるよ
う支援する。支援に当たっては、地域福祉計画の活用を含む地方再犯
防止推進計画策定の手引を必要に応じて改訂するなどして、策定のた
めに必要な情報を提供する。
また、既に地方再犯防止推進計画を策定済みの地方公共団体に対し
ては、その改訂や取組状況の評価等のために必要な支援を実施する。
【法務省】
3 地方公共団体との連携の強化
ア 犯罪をした者等の支援等に必要な情報の提供【施策番号 80】
法務省は、地方公共団体における再犯の防止等に関する施策の企
画・立案及び評価等に資するよう、各府省の協力を得て、国における
再犯の防止等に関する施策についての情報や関連する統計情報を適 41切に提供するとともに、市区町村単位の統計情報の把握・提供方法に
ついて早期に検討し、その提供を実現する。
また、
法務省は、
地方公共団体が犯罪をした者等に対する支援等を
行うために必要な犯罪をした者等の個人に関する情報等について、それらの情報を提供するための方策を検討した上で、
個人情報等の適正
な取扱いを確保しつつ、適切に提供する。
【各府省】
イ 再犯の防止等の推進に関する知見等の提供及び地方公共団体間の
情報共有等の推進【施策番号 81】
法務省は、
地方公共団体に対して、
犯罪をした者等に対する専門的
な指導・支援等に関する調査研究等の成果を提供するほか、
矯正官署、
保護観察所等の刑事司法関係機関の職員を地方公共団体の職員研修
等へ講師として派遣するなど、
再犯の防止等に関する知見を提供する。
また、協議会の開催等を通じ、先進的な取組や好事例、課題等につい
て各地方公共団体間での共有を図る。
【法務省】
ウ 地域のネットワークにおける取組の支援【施策番号 82】
法務省は、刑事司法手続を離れた者を含むあらゆる犯罪をした者
等が、
地域において必要な支援を受けられるようにするため、
警察庁、
総務省、文部科学省、厚生労働省及び国土交通省の協力を得て、地域
における国・地方公共団体・民間協力者等の多様な機関・団体による
支援ネットワークの構築を推進するとともに、
ネットワークにおける
地方公共団体の取組を支援する。
【警察庁、総務省、法務省、文部科学
省、厚生労働省、国土交通省】
3.支援の連携強化
(1) 具体的施策
1 更生保護に関する地域援助の推進【施策番号 83】
法務省は、刑法等の一部を改正する法律による改正後の更生保護法
の規定に基づき、保護観察所において、更生保護に関する専門的知識
を活用し、
地域住民、
地方公共団体、
民間団体等からの相談に応じて必
要な情報の提供、助言等を行うことを通じ、関係機関等による犯罪を
した者等に対する支援の充実を図る。
【法務省】
2 更生保護地域連携拠点事業の充実等【施策番号 84】
法務省は、
「更生保護地域連携拠点事業」における、犯罪をした者等 42が困ったときに身近に相談できる場所や日常の居場所を地域に確保し
たり支援団体による地域支援ネットワークを構築するなどの支援体制
の整備業務や、犯罪をした者等に対する支援を行う民間協力者からの
相談に応じるなどの支援者支援業務を充実させることにより、地域に
おける"息の長い"支援を推進する。
【法務省】
3 法務少年支援センターにおける地域援助の充実【施策番号 85】
法務省は、法務少年支援センター(少年鑑別所)において、非行・犯
罪をした者や、その支援を行う関係機関等の依頼に適切に対応できる
よう、
地域における多機関連携を一層強化する。
また、
支援を必要とす
る当事者等の利便性向上の観点から、
WEB 面談システムの活用や、
関係
機関に赴くなどのアウトリーチ型の支援等について検討を進めるとと
もに、地域援助に関する制度の周知広報のための取組を積極的に推進
するなどして、地域援助の充実を図る。
【法務省】
4.相談できる場所の充実
(1) 具体的施策
1 刑執行終了者等に対する援助の充実【施策番号 86】
法務省は、
保護観察所において、
刑法等の一部を改正する法律による
改正後の更生保護法の規定に基づき、仮釈放や仮退院の期間を満了し
た者等から、電話やメールによるものを含め相談を受けるなどした場
合、その改善更生を図るために必要があると認めるときは、保護観察
所において、その意思に反しないことを確認した上で、更生保護に関
する専門的知識を活用し、その特性や支援ニーズに応じた情報の提供、
助言等を行うほか、地域の関係機関による支援につながるよう、必要
な調整その他の援助を行う。
【法務省】
2 更生保護施設による訪問支援事業の拡充【施策番号 87】
法務省は、
更生保護施設が、
更生保護施設等を退所した者にとって、
地域社会に定着できるまでの間の最も身近かつ有効な支援者であるこ
とを踏まえ、訪問支援事業を早期に全国展開するなど、更生保護施設
が地域で生活する犯罪をした者等に対して継続的なアウトリーチ型支
援を実施するための体制の整備を図る。
【法務省】 43第7 再犯防止に向けた基盤の整備等のための取組
(推進法第 18 条、
第 19 条、
第 20 条、第 22 条関係)
1.再犯防止に向けた基盤の整備等
(1) 現状認識と課題等
第6までに掲げられた再犯の防止等に関する施策を効果的かつ迅速に
実施するためには、その基盤となる人的・物的体制の整備、施策の実施状
況や効果の検証による施策の不断の見直し、
効果的な広報・啓発活動の実
施等が必要である。
政府においては、
これまで、
新たな官職の設置や専門スタッフの増配置、
矯正施設を始めとする関係施設の整備、刑事情報連携データベースの開
発運用等の体制整備を行うとともに、
「再犯防止啓発月間」や「
"社会を明
るくする運動"強調月間」等を中心とした広報・啓発活動などに取り組ん
できた。
しかしながら、
いまだ課題は多く、
再犯の防止等の関係機関における業
務のデジタル化を含めた体制の整備、施策の効果検証やその結果に基づ
く施策の見直し、
再犯の防止等に関わる人材の育成や官民の関係者・関係
機関の相互理解などの取組を更に進める必要がある。
(2) 具体的施策
1 関係機関における人的・物的体制の整備
ア 関係機関における人的体制の整備【施策番号 88】
警察庁、法務省及び厚生労働省は、関係機関において、本計画に掲
げる具体的施策を適切かつ効果的に実施するために必要な人的体制
の整備を着実に推進する。
【警察庁、法務省、厚生労働省】
イ 関係機関の職員等に対する研修の充実等【施策番号 89】
警察庁、法務省、文部科学省及び厚生労働省は、再犯の防止等に関
する施策が、
犯罪をした者等の円滑な社会復帰を促進するだけでなく、
犯罪予防対策としても重要であり、
安全で安心して暮らせる社会の実
現に寄与するものであることを踏まえ、
刑事司法関係機関の職員のみ
ならず、警察、ハローワーク、福祉事務所等関係機関の職員、学校関
係者等に対する教育・研修等の充実を図る。
【警察庁、法務省、文部科
学省、厚生労働省】
ウ 矯正施設の環境整備【施策番号 90】
法務省は、矯正施設について、引き続き、耐震対策を行いつつ、医 44療体制の充実強化及びバリアフリー化に取り組む。また、被収容者の
特性に応じた処遇の充実強化及び新設される
「刑の執行段階等におけ
る被害者等の心情等の聴取・伝達制度」の適切な運用等のための環境
整備を着実に推進する。
【法務省】
2 業務のデジタル化、効果検証の充実等
ア 矯正行政・更生保護行政のデジタル化とデータ活用による処遇等
の充実のための基盤整備【施策番号 91】
法務省は、受刑者等の情報を管理する業務システムの刷新により、
情報をデジタル化し、一元的管理を推進することで、矯正行政の効率
化を図るとともに、
より精度の高いデータに基づく処遇の実態把握や
再犯防止効果の可視化を通じて矯正処遇の一層の充実を図る。また、
保護司活動の負担低減、データ活用による保護観察の高度化、刑事手
続と保護司活動とのデータ連係等に向けて、
更生保護業務全般のデジ
タル化に取り組み、
保護観察処遇等を一層充実させるための基盤を整
備する。
【法務省】
イ 再犯状況の把握と効果的な処遇の実施に向けた一層の情報連携と
高度利活用【施策番号 92】
法務省は、
再犯の状況をより迅速かつ詳細に把握し、
効果的な処遇
を実施するため、
刑事司法における情報通信技術の活用状況等を踏ま
えて、検察庁・矯正施設・保護観察所等の保有する情報の一層の連携
を促進するとともに、
刑事情報連携データベースの機能等を見直して
その効率化・高度化を図る。また、連携した情報のより効果的な利活
用方策を検討し、犯罪や非行の実態等に関する調査研究を推進する。
【法務省】
ウ 再犯防止施策の効果検証の充実と検証結果等を踏まえた施策の推
進【施策番号 93】
法務省は、就労支援を受けた者のその後の就労継続の状況や薬物
依存のある者を地域における治療・支援につなげることによる効果を
把握する方法を検討するなど、
再犯の防止等に関する施策についての
効果検証の一層の充実を図る。また、効果検証の結果や、社会復帰を
果たした者等が犯罪や非行から離脱することができた要因を踏まえ、
施策の見直しを含め、
再犯の防止等に関する施策の一層の推進を図る。
【法務省】 453 再犯防止関係者の人材育成等【施策番号 94】
法務省は、
研修等を通じ、
地方公共団体や民間協力者等との知見の共
有や相互の情報交換等を行うことで、再犯の防止等に関わる専門人材
や理解者の育成を図る。
また、
相互理解の促進や連携強化のため、
地方
公共団体等との人事交流の積極化を図る。
【法務省】
4 広報・啓発活動の推進
ア 啓発事業等の実施【施策番号 95】
法務省は、各府省、地方公共団体、民間協力者と連携して、再犯防
止啓発月間や"社会を明るくする運動"強調月間を中心として、
広く
国民が犯罪をした者等の再犯の防止等についての関心と理解を深め
るための事業を推進するとともに、検察庁、矯正施設、保護観察所等
の関係機関における再犯の防止等に関する施策や、
その効果について
の積極的な情報発信に努める。また、広く国民各層に訴える広報媒体
や広報手法を用いるよう努める。
【各府省】
イ 法教育の充実【施策番号 96】
法務省は、
文部科学省の協力を得て、
再犯の防止等に資する基礎的
な教育として、
法や司法制度及びこれらの基礎となっている価値を理
解し、法的なものの考え方を身に付けるための教育を推進する。加え
て、法務省は、再犯の防止等を含めた刑事司法制度に関する教育を推
進し国民の理解を深める。
【法務省、文部科学省】 46IV 再犯の防止等に関する施策の指標
第1 再犯の防止等に関する施策の成果指標
しろまる 検挙者中の再犯者数及び再犯者率【指標番号 1】
(出典:警察庁・犯罪統計)
基準値 109,626 人・47.0%(令和 3 年)
うち刑法犯検挙者中の再犯者数及び再犯者率
基準値 85,032 人・48.6%(令和 3 年)
うち特別法犯検挙者中の再犯者数及び再犯者率
基準値 24,594 人・42.3%(令和 3 年)
しろまる 新受刑者中の再入者又は刑の執行猶予歴のある者の数及び割合【指標
番号 2】
(出典:法務省・矯正統計年報)
基準値 13,475 人・83.4%(令和 3 年)
うち再入者数及び再入者率
基準値 9,203 人・57.0%(令和 3 年)
しろまる 出所受刑者の 2 年以内再入者数及び 2 年以内再入率【指標番号 3】
(出典:法務省調査)
基準値 2,863 人・15.1%(令和 2 年出所受刑者)
しろまる 主な罪名(覚醒剤取締法違反、性犯罪(強制性交等・強制わいせつ)、傷害・暴行、窃盗)
・特性(高齢(65 歳以上)
、女性、少年)別 2 年以内
再入率【指標番号 4】
(出典:法務省調査)
基準値(覚醒剤取締法違反、性犯罪、傷害・暴行、窃盗)
15.5%・5.0%・12.3%・20.0%(令和 2 年出所受刑者)
基準値(高齢、女性)
20.7%・11.0%(令和 2 年出所受刑者)
基準値(少年)
9.0%(令和 2 年少年院出院者の 2 年以内再入院率)
9.7%(令和 2 年少年院出院者の 2 年以内再入院及び刑事施設入所率)
しろまる 出所受刑者の 3 年以内再入者数及び 3 年以内再入率【指標番号 5】
(出典:法務省調査)
基準値 4,983 人・25.0%(令和元年出所受刑者) 47しろまる 主な罪名(覚醒剤取締法違反、性犯罪(強制性交等・強制わいせつ)、傷害・暴行、窃盗)
・特性(高齢(65 歳以上)
、女性、少年)別 3 年以内
再入率【指標番号 6】
(出典:法務省調査)
基準値(覚醒剤取締法違反、性犯罪、傷害・暴行、窃盗)
27.3%・11.6%・24.2%・33.0%(令和元年出所受刑者)
基準値(高齢、女性)
29.2%・20.2%(令和元年出所受刑者)
基準値(少年)
13.2%(令和元年少年院出院者の 3 年以内再入院率)
15.6%(令和元年少年院出院者の 3 年以内再入院及び刑事施設入所率)
しろまる 保護観察付
(全部)
執行猶予者及び保護観察処分少年の再処分者数及び
再処分率【指標番号 7】
(出典:法務省・保護統計年報)
基準値 (保護観察付(全部)執行猶予者)
618 人・25.5%(令和 3 年)
基準値 (保護観察処分少年)
1,219 人・16.1%(令和 3 年)
第2 再犯の防止等に関する施策の動向を把握するための参考指標
1.就労・住居の確保等関係
しろまる 刑務所出所者等総合的就労支援対策の対象者のうち、就職した者の数
及びその割合【指標番号 8】
(出典:厚生労働省調査)
基準値 3,130 人・50.3%(令和 3 年度)
しろまる 協力雇用主数、実際に雇用している協力雇用主数及び協力雇用主に雇
用されている刑務所出所者等数【指標番号 9】
(出典:法務省調査)
基準値 24,665 社・1,208 社・1,667 人(令和 3 年 10 月 1 日現在)
しろまる 国及び地方公共団体において雇用した犯罪をした者等の数【指標 10】
(出典:法務省調査)
基準値 - 48しろまる 保護観察終了時に無職である者の数及びその割合【指標番号 11】
(出典:法務省・保護統計年報)
基準値 5,653 人・24.0%(令和 3 年)
しろまる 刑務所出所時に帰住先がない者の数及びその割合【指標番号 12】
(出典:法務省・矯正統計年報)
基準値 2,844 人・16.0%(令和 3 年)
しろまる 更生保護施設及び自立準備ホームにおいて一時的に居場所を確保した
者の数【指標番号 13】
(出典:法務省調査)
基準値 10,291 人(令和 3 年度)
2.保健医療・福祉サービスの利用の促進等関係
しろまる 特別調整により福祉サービス等の利用に向けた調整を行った者の数
【指標番号 14】
(出典:法務省調査)
基準値 826 人(令和 3 年度)
しろまる 検察庁等と保護観察所との連携による入口支援を実施した者の数【指
標番号 15】
(出典:法務省調査)
基準値 -
しろまる 薬物事犯保護観察対象者のうち、
保健医療機関・民間支援団体等による
治療・支援を受けた者の数及びその割合【指標番号 16】
(出典:法務省調査)
基準値 -
3.学校等と連携した修学支援の実施等関係
しろまる 少年院において修学支援を実施し、
出院時点で復学・進学を希望する者
のうち、出院時に復学・進学決定した者の数及び復学・進学決定率【指標
番号 17】
(出典:法務省調査)
基準値 54 人・30.5%(令和 3 年) 49しろまる 保護観察所において修学支援を実施し、保護観察期間中に高等学校等
を卒業若しくは高等学校卒業程度認定試験に合格した者又は保護観察終
了時に高等学校等に在学している者の数及びその割合【指標番号 18】
(出典:法務省調査)
基準値 -
しろまる 矯正施設における高等学校卒業程度認定試験の受験者数、合格者数及
び合格率【指標番号 19】
(出典:文部科学省調査)
基準値(受験者数・合格者数・合格率)
797 人・316 人・39.6%(令和 3 年度)
基準値(受験者数・1 以上の科目に合格した者の数・合格率)
797 人・776 人・97.4%(令和 3 年度)
4.民間協力者の活動の促進等関係
しろまる 保護司数及び保護司充足率【指標番号 20】
(出典:法務省調査)
基準値 46,705 人・89.0%(令和 4 年 1 月 1 日)
しろまる "社会を明るくする運動"行事参加人数【指標番号 21】
(出典:法務省調査)
基準値 867,395 人(令和 3 年)
5.地域による包摂の推進関係
しろまる 地方再犯防止推進計画を策定している地方公共団体の数及びその割合
【指標番号 22】
(出典:法務省調査)
基準値(都道府県、指定都市、その他の市町村(特別区を含む。))
47 団体・100%、18 団体・90.0%、306 団体・17.7%(令和 4 年 4 月 1 日)
6.その他の参考指標
しろまる 出所受刑者の 5 年以内再入者数及び 5 年以内再入率【指標番号 23】
(出典:法務省調査)
基準値 8,175 人・37.2%(平成 29 年出所受刑者) 50注1 「基準値」は、確定している最新の数値である。
2 「基準値 -」は、新規の指標又は指標の内容を変更したことにより、今後、新たに
統計を収集するものである。

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