法務省札幌矯正管区更生支援企画課の広報誌
ほっかいどう矯正だより
第12号(令和4年11月28日)
特集『特別調整の今』第1回 福祉専門官へのインタビュー
昨今、日本の社会における問題として、高齢化が進んでいることが言われています。
それは刑務所においても同様であり、刑務所内での高齢化(矯正では、一般的に65歳
以上を高齢者としています。)も進んでいるところです。また、知的・発達・身体に障
害を抱えた受刑者も少なくありません。そのような受刑者(障害については、少年院に
収容されている少年も)に対し、福祉的支援を行える施設に帰住させようという取組、
「特別調整」制度が開始され、10数年が経過しました。
そこで本年度は、「特別調整」制度について、3号にわたって特集することとし、
「特別調整」制度にそれぞれの立場(地域生活定着支援センター、刑務所、保護観察
所)で携わられている方々から、思うところについてお伺いし、「特別調整」制度の今
後の展開・展望について概観してみたいと思います。
本号では、第1回として、函館少年刑務所 福祉専門官 土 田 芽生子さんにイン
タビューをしましたので、どうぞ御覧ください。
現在の仕事に携わるように
なったきっかけ
高校時代にボランティア活動に参加
して障害について学んだ経験から、保
育士の資格も取得できる福祉系の大学
に進学しました。
卒業後、地元の函館に戻り、高齢の
知的障害者施設、保育園、託児所、訪
問介護等の現場で勤め、介護福祉士、
社会福祉士、精神保健福祉士の資格を
取得できたことを機に函館少年刑務所
の求人に応募しました。
実は、少年を収容できるものの少年
がほぼいないことや、80代の高齢者
まで少年刑務所に収容されているなど
とは知らず、採用面接で「保育士資格
を生かし、少年の改善更生に貢献した
い」と述べてしまいましたが、子供か
ら高齢の方まで接してきた経験は、今
の業務に役立っていると思っています。
長年、特別調整の業務に
携わってきての感想
受刑中から地域生活定着支援セン
ターに関与していただき、福祉サービ
スと出所後の支援者につなぐことがで
きる特別調整は、円滑な社会復帰のた
めにはなくてはならないと思います。
そのため、一人でも多く調整につな
げたいのですが、衣・食・住が担保さ
れている受刑生活の中で特段支障なく
生活が送れていれば、何かしらの障害
が疑われても福祉支援の必要性が表面
化しない場合があったり、二度と受刑
したくないという思いは持っていても、
出所後に制約を受けたくないと考えて
支援を拒否する人もおり、年々手厚い
福祉支援が可能となってきている実感
はありますが、同意が得られなければ
福祉につなげることができないもどか
しさも感じています。1 2 法務省 札幌矯正管区 更生支援企画課
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刑法改正案可決により拘禁刑の創設が盛り込まれ、受刑者の特性に応じて刑務作業の
ほか再犯防止に向けた指導や教育プログラムなどが実施可能となると聞いています。
今後、刑務所が受刑者の特性に合った柔軟な処遇をすることで、特別調整に限らず、
受刑者の社会復帰に向けた支援の充実が図りやすくなることを期待しています。
道民の皆様、関係機関の皆様におかれましては、切れ目ない支援の実現のため、より
一層の御理解と御協力をお願いしたいと思います。
特に印象に残っている事例
当所では、これまでに66人の特別調整対象者が出所しています。特に印象に残って
いるのは、精神年齢9歳と判定を受けた統合失調症にり患している40歳代の知的障害
者のケースです。幻聴や幼少期の交通事故で片麻痺となり身体の不自由さもあいまって、
いらいらしたときの感情表出が「うるせえ、馬鹿野郎」などの暴言や、ガラスを割って
しまうなどの粗暴行為となってしまい、面接もままならず調整が難航しました。
子供に語り掛けるように伝えてみたり、面接ができないときは書面で本人の意向を確
認したり、また、受刑前に関与していた福祉関係者や行政機関などに参加いただき、地
域生活定着支援センターが中心となって検討会を開催するなど様々な試みをしたことを
覚えています。
出所間際まで入院治療も含めて検討がなされていた中、受入施設が決まり、無事に出
所の日を迎えられたときは安堵しましたし、このケースに限らず、多くの福祉・医療関
係者に支えられ、出所後数年経過しても地域で生活できていると聞けたとき、支援につ
なげられた喜びを感じます。3特別調整の今後に期待すること4土田 芽生子 さん 次号:特集『特別調整の今』第2回 予定
函館少年刑務所 福祉専門官
(注記)撮影のためマスクを
外しています

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