14-1改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会第5回会議配布資料
取調べの違法・不当を理由として、供
述の信用性が否定された事例
配布資料14-1
取調べの違法・不当を理由として、供述の信用性が否定された事例((注記)1)
番号 起訴罪名
供述の信用性が
争われた
供述調書等
供述の信用性が
争われた取調べ
に係る録音・録画
の実施の有無
公判請求時又は
略式命令請求時
の身柄区分
録音・録画記録媒
体の証拠調べ請求
の有無
判決の要旨
(取調べの違法・不当を理由として供述の信用性を否定した判断のみ)
1 覚醒剤取締法違反 検察官調書 有 身柄 有
しろまる 取調べの録音・録画記録媒体によれば、被告人は、2回目以降の注射の際の内心につき、共犯者の暴力により共犯者に恐怖心を抱いて
いたことを前提に、共犯者を怒らせて殴られたくないという気持ちが大部分を占めていた旨明確に述べていたことが認められる。
しろまる しかしながら、検察官調書には、共犯者の暴力やこれに対する被告人の恐怖心については何ら記載がない上、「共犯者を怒らせて殴ら
れたくないという気持ち」と「まだ共犯者のことが好きで、共犯者の望むことをしてあげたいという気持ち」が等しく存在するかのように
記載されている。2麻薬及び向精神薬
取締法違反、関税
法違反
検察官調書 有 身柄 有
しろまる 被告人の捜査段階の検察官調書は、検察官が被告人と共犯者との間の連絡状況に関する証拠の内容を不正確に理解し、その一部のみを
取り出して被告人に供述を求めるなど相当に問題がある部分もある。例えば、検察官調書のくろまる×ばつ行目からの捜査復命書を示しての供述
は、やりとりが三つのメッセージに分割されているのを無視してその一部のみ無理のある日本語訳とともに被告人に示し、それについての
供述を求めるという明らかな誤導があって全く信用できず、しろいしかくしろさんかく行目からの同様の供述部分についても同様である。
しろまる 他方で、検察官調書のにじゅうまる頁▽項の記載は、先に述べたような供述録取上の問題があるとは認められず、問題がある記述部分とは別個の
事項に関する供述が録取されている。供述の内容に不自然な点はなく、この供述部分については、別の検察官調書でも既に同様の内容が現
れていて同趣旨の供述が捜査初期から重ねられているという事情もある。そうすると、被告人の検察官調書は、当該記載部分の限りでは信
用できる。
3 詐欺
警察官調書
検察官調書
警察:無
検察:有
身柄 有
しろまる くろまるくろまる×ばつの話はしろいしかくしろいしかく頃には嘘だと分かっていた旨が記載されているが、被告人の取調べを行ったしろさんかくしろさんかく×ばつの話を信じていた旨の供述をしていた被告人について、なぜ上記供述と反対の内容の供述調書が多数作成されているのか、取調べ
担当警察官・検察官からも合理的な説明はなされておらず、この点も、被告人の上記供述調書の内容の信用性に疑問を抱かせるものであ
る。
4 詐欺 検察官調書 有 身柄 有
しろまる 検察官の取調べの録音・録画記録媒体や取調べ担当警察官の公判供述を踏まえれば、各供述調書中の詐欺の認識に係る部分に関して
は、捜査官の誘導的質問に応じる形で、後から考えればそう思われる旨評価として答えたものも含めて、犯行前からそのように認識してい
たかのように事実として記載されているものもあり、被告人が読み聞かされた内容を肯定しているとはいえ、被告人が真に供述したいと考
えている内容を直截に記載したものとは認め難い。5((注記)2)6((注記)2)
7 窃盗
警察官調書
検察官調書
警察:有
検察:有
身柄
警察:有
検察:有
しろまる 取り調べた録音・録画記録媒体の内容に照らすと、被告人は、警察段階での取調べにおいて、被害者の気持ちを考えろなどと怒鳴られ
るなどしており、その際の被告人の供述については、任意性までは否定されないにせよ、信用性は著しく低いといわざるを得ない。
しろまる また、検察官取調べにおいてもその影響は残存していたといえ、信用性が十分確保できる状況にはなかったといわざるを得ない。
8 覚醒剤取締法違反 警察官調書 無 身柄 無
しろまる 被告人の取調べを担当したくろまるくろまる×ばつ日の取調べ状況につき、しろいしかくしろいしかくと供述するので
あって、警察官調書の記載が被告人の供述内容を正確に反映したものになっているとは認め難い。
法人税法違反、
地方法人税法違反無在宅無財務事務官調書
しろまる 財務事務官との言動の関係では、被告人が、財務事務官からくろまるくろまる×ばつ旨の説明を受け、しろいしかくしろいしかく日の時点で被告会社の預金通帳
に一時的に預金がなくなっていたことから脱税に当たると追及されて、あたかもしろいしかくしろいしかく日時点で脱税の故意があったかのような不正確な供述
が録取された疑いが否定できない。
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配布資料14-1
取調べの違法・不当を理由として、供述の信用性が否定された事例((注記)1)
番号 起訴罪名
供述の信用性が
争われた
供述調書等
供述の信用性が
争われた取調べ
に係る録音・録画
の実施の有無
公判請求時又は
略式命令請求時
の身柄区分
録音・録画記録媒
体の証拠調べ請求
の有無
判決の要旨
(取調べの違法・不当を理由として供述の信用性を否定した判断のみ)
9 強制性交等致傷 検察官調書 有 身柄 無
しろまる くろまるくろまる×ばつ
するにとどまり、強固な強制性交等の意図を有していたのであれば通常行うと考えられる行為には出ていないのであるから、上記供述は客
観的事実にそぐわず、不合理である。
しろまる 加えて、被告人は、取調官に迎合した結果、被告人の真意ではないにもかかわらず、被害者の意思に反してでも強制的に性交しようと
する意図があった旨の供述調書が作成された可能性が否定できない。
しろまる そうすると、被告人が強制わいせつ致傷の被疑事実で逮捕されてから一貫して被害者との性交の意図を認める内容の供述をしていたこ
とや、勾留後は弁護人の援助を受けながら取調べに臨んでいたこと等の事情を踏まえても、被告人の上記供述に被告人の強制性交等の故意
を認めるに足りるだけの信用性を認めることはできない。
10 器物損壊
警察官調書
検察官調書
警察:有
検察:有
身柄
警察:有
検察:有
しろまる 被告人が捜査段階で本件を認めるかの供述をするまでには、虚偽の自白を誘発する危険性の高いものを含め、取調べ担当警察官からの
不適切な誘導が相当程度影響した可能性は否定できないところ、そのような過程も経て獲得された被告人の自認供述は、本件の重要な客観
的状況と整合しておらず、また、核心的ないし重要な部分に関して少なからず変遷し、あるいは曖昧な部分も多岐にわたることなども併せ
れば、被告人の自認供述を、被告人が真実自己の記憶に従ってしたものと認めることはできない。
(注記)2 番号「5」及び「6」の事件は、被告人及び被告人が代表取締役を務める被告会社が起訴され、併合審理された事件である。
(注記)1 調査対象事件(令和元年6月1日から令和4年8月31日までの間に第一審判決があった事件であって、同年10月24日までに確定したもの)のうち、取調べの違法・不当を理由として供述の信用性が否定されたことが判決書によって確認できる事例を
抽出して作成した。
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