【職域】法務省 広島刑務所尾道刑務支所有井構外泊込作業場
《距離感が違う、熱意が違う、有井には「変わる力」を育む力がある。》
名称・所在地・代表者・沿革等 組織の概要等
法務省広島刑務所
尾道刑務支所有井構外泊込作業場
広島県尾道市向島町9611
有井構外泊込作業場長 土倉
と く ら
英二
え い じ
(場長以下4名)
昭和38. 6 尾道刑務支所から約9キロメート
ル離れた興進産業(株)向島工場へ
受刑者の通役作業を開始
昭和43. 8 興進産業(株)による、向島工場南
側にある同社所有の敷地に、
鉄筋2
階建て、
収容定員102名の寮舎建
築完成
昭和43. 9 受刑者37名をもって、構外泊込
作業を開始
現在に至る。
法務省広島矯正管区管内にある広島
刑務所(広島市所在)の4支所のうち、
尾道刑務支所管下に有井構外泊込作業
場が設立された。
同作業場の設立目的は、
刑務所構外の
泊込処遇施設において、
開放的な日常生
活を運営することにより、
自主自律の精
神をかん養し、
勤労と共同生活を通じて
円滑な社会復帰を図ることにある。
設立の経緯は、
昭和38年に興進産業
(株)向島工場へ通役作業を開始してか
ら4年後の昭和42年10月、
当時の広
島矯正管区長久保豊隆及び松山刑務所
長時代に同刑務所に大井造船作業場を
開設した広島刑務所長後藤信雄の主唱
により、
当時の興進産業(株)代表取締役
河合拾七二氏が協力して、
関係各機関及
び地域住民の理解を得て、
昭和43年9
月に実現したものである。
同作業場では、
刑務作業及び生活指導
のほか、
改善更生のための一般改善指導
も実施しており、
受刑者は一般社会に近
い環境下で、
社会復帰のために必要とな
る知識及び技術の習得に励んでいる。
顕彰理由(概要)
「安心・安全な国」を目指し、全矯正施設がそれぞれの地域社会の中で、再犯防止を
推進している状況において、有井構外泊込作業場は、外塀や施錠設備等の物的戒護がな
く、専ら職員が受刑者の「心」に働き掛けて「自主」、「自律」の精神を醸成すること
に加え、職員の助言の下、契約企業での作業や奉仕活動を行うことにより、地域社会の
一員として受け入れられ、認められる経験を積ませることができる。このような体験に
より出所後の生活の不安を取り除くことまで期待できる。
顕彰理由
1 職務の内容・重要性
刑事施設は、法令に基づき収容される者に対して、一般社会から隔離し、それぞれ
の法的地位に応じた処遇を行うものであるところ、有井構外泊込作業場においては、
塀などの物的戒護がない一般社会に近い寮で共同生活を送り、
約200メートル離れ
た一般企業に、徒歩で通勤し、刑務作業を行うものである。
同作業場においては、
逃走等の保安上のリスクが高いことに加え、
作業は鋼材加工
であり、一般的な刑事施設内の刑務作業に比べ、重大な作業災害のリスクも高い。ま
た、一般人との協働であるため、受刑者の個人情報保護にも特段の配慮を要する。
一方、8時間労働を終えた後、将来の就労に役立つ資格取得学習や炊事をしたり、
また、
休日には地域の清掃活動を行ったりするなど、
釈放後の生活の疑似体験ができ
ることは、矯正処遇の仕上げとして効果的な役割を果たしている。
受刑者の「自覚」や「良心」といった内面に強く働き掛ける処遇は、種々のリスク
があっても、なお、それを上回る効果を上げていると言え、それはとりもなおさず、
社会復帰後の種々の誘惑や困難な状況に打ち勝つ
「力」
を育んでいるものと考えられ
る。
2 職務の特殊性・勤務環境
開放的処遇施設における職務を遂行するに当たっては、
受刑者が自ら法令や社会生
活上のルールを遵守し、
他者の立場や気持ちに配慮した生活態度を確実に保持させる
べく、
職員は率先垂範して行動しなければならず、
そこには危険予知も含めた高い判
断力と受刑者に対する徹底した心情把握・行動観察が求められ、
緊張感の高い勤務環
境といえる。
また、
同作業場勤務職員として4名が配置されているが、
24時間体制で受刑者と
行動を共にするため、
常時少なくとも2名は勤務しており、
月平均11日程度の泊込
勤務となる。
同作業場勤務を経験した職員はいずれも、
公益性の高いやりがいのある
職務であると感想を述べるが、
緊張度の持続性を考慮し、
おおむね2年間で交代させ
ている。
3 公務の信頼の確保・向上
このように、同作業場職員が一般企業と緊密に連携し、厳しい環境の下で尽力し、
50年もの間、逃走事故を発生させることなく、地域の住民に対して、受刑者が一般
社会に適応した生活を送りながら、
外部の企業に通勤して働くことができる姿を示し
続けることは、
「受刑者の立ち直りを支える社会」
が必要不可欠であることを具体的
にイメージできる力となっており、具体的に、どのような支援が可能であり、有効で
あるのかを社会に提案することができていると言える。
「犯罪に戻らない、戻さない」社会づくりを実現するための一例として、公務の信
頼の確保と向上に寄与している。
有井構外泊込作業場は、穏やかな瀬戸内海の向島にある。
平日、寮から約200m離れた向島工場に徒歩で通勤する。
大きな赤いクレーンが目印だ。
常務が出迎える。
朝の訓示「ご安全に」
寮生の顔をしっかりと見る。
気がかりな寮生がいたら、そのままにしておかない。
何かあったのかと、刑務官に連絡する。
24時間接する刑務官に見せない何があったのか。
すぐに手を入れる。
といっても、直接面接して指導する場合もあれば,
ただ見守る場合もある。
そのときの問題に、最適のかかわりを選ぶ。
その絶妙の距離感で、寄り添う。
作業は、鋼材加工作業だ。
扱いは、慎重に、確実に。
作業の指導役は、女性の係長である。
手順を守らせるために、同じことを何度でも注意する。
まるで、母親のように。
「寮生はわが子ですから。」
口癖の常務が、寮生には「母性」が必要とあえて配置した。
月1回、地域の除草・清掃のボランティアをする。
【職域】 法務省 広島刑務所 尾道刑務支所 有井構外泊込作業場 顕彰資料

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