1「旧統一教会」問題関係省庁連絡会議の取りまとめ(案)
被害者の救済に向けた総合的な相談体制の充実強化のための方策
令和4年 11 月 10 日
「旧統一教会」問題関係省庁連絡会議
1 「旧統一教会」問題関係省庁連絡会議設置の経緯等
「旧統一教会」問題関係省庁連絡会議(以下「本連絡会議」という。)は、
令和4年8月(以下、月日の記載については令和4年を指す。)、「法務大臣
を始め関係大臣において、悪質商法などの不法行為の相談、被害者の救済に、
連携して万全を尽くす」との内閣総理大臣の指示1
を受け、「旧統一教会」2について社会的に指摘されている問題に関し、悪質商法などの不法行為の相談、
被害者の救済を目的として、
関係省庁間で情報を共有するとともに、
被害者へ
の救済機関等のあっせんなど関係省庁による連携した対応を検討するため、
法務大臣の主宰により設置された【別添1参照】。
その構成員については、設置目的を踏まえ、当初、内閣官房(孤独・孤立対
策担当室長)、消費者庁(次長)、警察庁(生活安全局長)、法務省(大臣官
房司法法制部長、人権擁護局長)により構成され、その後、相談体制を更に強
化すべく3
、総務省(大臣官房地域力創造審議官、行政評価局長)、外務省(領
事局長)、文部科学省(初等中等教育局長)、厚生労働省(子ども家庭局長、
社会・援護局長)が加えられた。
10 月 17 日、政府は、1旧統一教会に対する宗教法人法に基づく報告徴収・
質問権の行使による事実把握・実態解明、
2被害者の救済に向けた総合的な相
談体制の充実強化、3今後同様の被害を生じさせないための消費者契約等の
法制度の見直しをしっかりと進めていくことを表明した4
。本連絡会議は、こ
のうち2に関する取組であるところ、
今般、
これまでの相談状況や様々な指摘
等を踏まえ、被害者の救済に向けた総合的な相談体制の充実強化に向けた方
策を取りまとめることとした(以下「本取りまとめ」という。)。
2 連絡会議の開催経過
(1) 第1回関係省庁連絡会議(8月 18 日)
ア 概要
第1回会議では、関係省庁が連携して相談対応に当たることを確認し
た上、体制を整備し、9月初旬から相談対応のための集中強化期間(以
下「相談集中強化期間」という。
)を設けることを申し合わせた。
イ 相談集中強化期間
資料4 2この相談集中強化期間は、その後の調整により、9月5日から、当
面、同月 30 日を目途として実施することとされ、この期間中、フリーダ
イヤルによる「合同電話相談窓口」を設置して即時連携できる態勢をと
るとともに、
「法テラス・サポートダイヤル」、「消費者ホットライン」
等の既存の相談窓口においても、相互の連携を強化して相談を受け付け
ることとされた。
ウ 合同電話相談窓口
合同電話相談窓口は、
フリーダイヤルにより、
内容を限定することなく
幅広く相談を受け付けた上、
相談者の話をよく聞き、
どのような問題に直
面しているかを見極め、
その内容に応じて、
問題解決に最も資すると思わ
れる適切な既存の相談窓口や制度を案内することを目的に運営すること
とした。これに備え、本連絡会議は、既存の各相談窓口の機能や関連する
制度等についての情報を集約・整理し、共有した上、各相談窓口に伝達し
た。これにより、各相談窓口は、合同電話相談窓口から案内された相談に
ついて適切に対応するとともに、同窓口を介さずに直接寄せられた相談
についても、
内容に応じて他の相談窓口を案内するなど、
合同電話相談窓
口と同様の対応を行うこととされた。
また、この取組に関し、日本弁護士連合会も連携を表明し5
、9月5日
から、
「霊感商法等の被害に関する無料法律相談の受付」を開始した6。(2) 第2回関係省庁連絡会議(9月 30 日)
第2回会議7
では、
合同電話相談窓口における9月5日から同月 22 日まで
の相談状況についての報告を踏まえ、
当面の間、
相談集中強化期間を延長す
るとともに、
1関係省庁は引き続き連携して相談対応を行うこと、
2相談の
趣旨を的確に把握してその解決に資する案内をするよう努めること、3相
談内容が宗教に関わることのみを理由として消極的な対応をしないことを
改めて確認する旨申し合わせ、それぞれ関係機関に対して必要な通知を行
うこととしたほか、その時点で取り組むべきと考えられた施策を取りまと
めた。
3 合同電話相談窓口における相談状況(9月5日から 10 月 31 日まで)
【別
添2参照】
(1) 全体の動向
合同電話相談窓口において受け付けた相談の累計は、
10 月 31 日の時点で
3,650 件であったが、
全体の約4割が一般的な御意見や他団体に関する相談
であったところ、
これらを除いた
「旧統一教会によるとされた被害に関する
相談」は 2,367 件であった。その内訳としては、約7割(68%)が「金銭的 3トラブル」に関する相談であり、次いで約2割(21%)が「親族間の問題」
と「心の悩み」に関する相談であった。また、この 2,367 件について、合同
電話相談窓口からの案内先の内訳を見ると、全体の約7割(68.4%)が法テ
ラス(正式名称:日本司法支援センター((注記)独立行政法人に準じた組織))
であり、
消費者ホットライン
(約 7.5%)、よりそいホットライン
(6.5%)、警察(6.3%)8
と続いている。
相談者の年齢については、96.6%が成年(18 歳以上)である一方、未成
年(18 歳未満)からの相談は 0.1%、不明が 3.3%であった。このように、
把握の限りでは、
未成年者からの相談は僅かであったものの、
寄せられた相
談全体の中には、後記(3)のとおり、相談者が未成年であった頃の経験やそ
の影響についての相談など、こどもに関する相談もあった。
また、相談者の性別については、42%が男性、57.6%が女性、0.4%が不
明であった。
(2) 金銭的トラブル
「旧統一教会によるとされた被害に関する相談」のうち「金銭的トラブ
ル」に関する相談状況の分析は以下のとおりである。
「直近の金銭支出時期」
(何らかの理由により金銭支出を行ったとする者
がこれを行ったとする最後の時期)については、20 年よりも前であったと
する相談が 37%と多い一方で、5年以内であったとする相談も合計 25%あ
った。
「相談主体」
については、
50%が信者の親族であるとする者からの相談で
ある一方、元信者であるとする者からの相談は 24%、信者であるとする者
からの相談は7%あった。
次に、「金銭支出の目的」については、物品であるとする相談が 54%、
献金であるとする相談が 47%、役務であるとする相談が 12%、不明が 15%
であった。なお、本項目は、複数の目的に関して支出した場合、重複して計
上されている。
「金銭支出の経緯」については、約7割が不明であるが、判明した範囲で
は、
霊感商法的言動によるとする相談が約3割であるほか、
強要的な言動に
よるとする相談も若干あった。
「相談者又は金銭支出者の状況」については、その大半が不明であるが、
生活保護費や年金を旧統一教会に対する金銭支出に充てている、自己破産
後も献金を続けている、金銭支出により預金が消失したといった相談も寄
せられている。
(3) 金銭的トラブル以外の相談(親族間の問題・心の悩み) 4「旧統一教会によるとされた被害に関する相談」
のうち約2割が
「親族間
の問題」と「心の悩み」に関する相談であり、「よりそいホットライン」や
「精神保健福祉センター」のほか、
「生活困窮者自立支援機関」への案内も
一定数存在した。
信者や元信者からは、
教団以外の人間関係がなく孤立している、
長期間信
じていたものを否定したことで喪失感がある、過去の活動で迷惑をかけた
ことに後悔しているといった心の悩みに関する相談や、信仰により家族関
係が破綻したという親族関係の悩みに関する相談、多額の金銭支出により
生活が苦しいといった生活困窮を訴える相談があった。
また、
信者の家族やいわゆる2世信者等からは、
幼少期からの環境等によ
りうつ病を発症したので医療機関などを紹介してほしい、家庭環境により
精神的に不安定であるといった心の悩みに関する相談や、信者である配偶
者に自己の年金をつぎ込まれて生活が苦しい、親がこどもの貯蓄も献金し
てしまったため生活が苦しく修学が困難であるといった生活困窮や修学に
関する相談のほか、若い頃に関係者から1週間断食をさせられたことがあ
ったとの相談もあった。
4 今後の取組
(1) 取組の方向性
前記のとおり、
「旧統一教会によるとされた被害に関する相談」
のうち
「金
銭的トラブル」
に関する相談が約7割を占め、
紹介先の相談窓口として、
「法
テラス」が大多数を占めたほか、「消費者ホットライン」や「警察」を紹介
した相談も一定数認められた。相談の多くは、法的に複雑な問題を含み、法
律の専門家による助力を求めるものであり、
こうした相談対応を充実・強化
するためには、まず、法テラスを相談対応の中核と位置付け、その抜本的な
充実・強化(総合法律支援の推進)を図ることが不可欠と考えられた。
また、相談の中には、「親族間の問題」や「心の悩み」についての相談も
約2割あり、
「金銭的トラブル」と重複する相談も少なくなかった。これら
については、精神的・福祉的支援が重要である。そして、相談者自身、相談
開始時点において、
金銭的トラブル等の法律支援を必要とする悩みと、
精神
的・福祉的支援を必要とする悩みとを、共に抱えている場合も少なくなく、
相談後に必要となる支援も、これらの複合的な観点が必要となる場合が想
定される。
そこで、相談対応の中核となる法テラスに、精神的・福祉的支援の観点も
取り込んだ総合的な支援体制を構築するとともに、
関係省庁が連携し、
これ
らの複合的な支援に関連する機関・団体(民間団体も含む。)との間に網羅
的なネットワークを構築して、切れ目のない支援を行っていくことが必要 5となる。
また、とりわけ、いわゆる2世信者や3世信者については、法的なトラブ
ルに加え、精神的・心理的な困難や貧困などの問題があるとされる上、こど
もについては声を上げにくいといった事情があるため、関係各機関におい
て、こうした認識の下、緊密な連携を図りつつ、適切な対策を講じる必要が
ある。
これらの方向性に基づき、
以下に述べる一連の取組を推進することに
より、
相談対応体制全体に対する信頼を確保し、
潜在的な相談を掘り起こし
て救済につなげていく。
(2) 法テラスの抜本的な充実・強化
ア 概要
法テラスにおいては、
相談者の多様なニーズに応え、
問題の総合的解決
を図るため、111 月 14 日に、合同電話相談窓口の機能等を継承した対応
窓口を設置する。
また、
2日本弁護士連合会との連携に基づくこの種の問
題について経験や理解のある弁護士の紹介、3無料法律相談や弁護士費
用等の立替えを行う民事法律扶助の積極的な活用、4心理専門職等を活
用したワンストップ型相談会等を実施していく。
また、
法テラスでは、
これらの各取組を推進するための対応部署を新設
し、
その部署において、
対応窓口の業務を先行して始動させた上、
弁護士・
心理専門職等を配置し、
相談事例の分析や支援策の企画・立案等も行うこ
とができるよう、早急に準備を進めるなどして、人的・物的体制を強化す
るとともに、法テラスの所管省庁である法務省を始めとする関係省庁が
連携しつつ、各相談機関が有する知見の共有や適切な窓口の相互紹介に
よるネットワークを形成すること等により、法律支援のみにとどまらな
い総合的支援に向けた道筋を強力にサポートしていく。
イ 相談受付方法
対応窓口においては、様々な困難に直面している方々からのアクセス
を容易にするため、複数の媒体を活用するなどして強力な広報活動を実
施するとともに、法テラスとしてフリーダイヤルを設けることとしてお
り、さらに、メール等による対応を検討するなど、相談受付方法の充実強
化を図る。
ウ 取り扱う相談内容
合同電話相談窓口に旧統一教会関係以外の団体に関する相談が少なか
らず寄せられるなど、旧統一教会問題と同様の悩みや問題を抱えた者が
相当数存在することがうかがわれる。
そこで、
対応窓口や対応部署におい
ては、旧統一教会問題のみならず、これと同種の問題をも取り扱う。こう
して多くのケースを取り扱い、
必要なノウハウを蓄積することを通じ、旧 6
統一教会問題への対応力も向上させる。
エ 対応部署における心理専門職等の配置
これまでの相談状況等を踏まえると、金銭的トラブル等の法律支援を
必要とする悩みと、
精神的支援や福祉的支援を必要とする悩みとを、
共に
抱えている者も少なくない。
また、
いわゆる2世問題を踏まえたこどもに関する相談や、
在外邦人に
関する相談対応も、十分に想定する必要がある。
そこで、法テラスにおいては、単なる法律支援にとどまらず、他の必要
な支援についても総合的・一体的な相談対応を行うとともに、
国外に居住
する日本人の被害者等への支援を実施すべく、新設する対応部署に心の
悩みに対応できる心理専門職を速やかに配置するほか、困窮の問題に対
応できるソーシャルワーカー、
こどもの専門家、
国際的な問題への対応に
際して不可欠となる通訳人等の専門家についても、可能なものから順次
配置し、また配置に向けた検討を行う。
オ ネットワークの形成
法テラスの対応窓口や対応部署を中核としつつ、
総合的・一体的な相談
対応を可能とするため、
消費生活センター等をはじめとする関係機関・団
体を網羅的にネットワーク化し、
相互に知見を共有して、
総合的な相談体
制を構築する。この機関・団体には、既に同様の取組を進めて豊富な知見
を有する日本弁護士連合会等の民間団体等も含む。また、関係機関・団体
相互の人的交流も積極的に検討する。
カ データの収集・分析等による知見の共有
関係機関・団体も含め、
ネットワーク全体の相談対応能力の向上のため
には、データの収集・分析による知見の共有が不可欠である。そこで、法
テラスに新設する対応部署においては、法テラスに寄せられた相談等の
その後の対応状況について、
2世信者・3世信者の抱える課題の実態把握
も含め、
相談者の意向やプライバシー等にも配慮しながら、
民間団体等を
含む関係機関・団体からデータの提供を受けるなどして収集・分析し、知
見を蓄積した上、関係機関・団体ともこれを共有して、全体としての相談
対応能力の一層の向上に努める。
キ 本連絡会議を通じた体制・環境の整備
本連絡会議の構成員は、
それぞれが関係する機関や団体が、
前記カによ
り共有された知見等に基づき、相談対応力を向上させるよう取り組むと
ともに、
法テラスを中心としたネットワークの形成や、
問題の総合的解決
に向けた更なる取組等に必要な体制・環境の整備を行う。
(3) 消費生活相談等の強化 7合同電話相談窓口からの紹介先として、
法テラスに次いで
「消費者ホット
ライン」
が多かったことをも踏まえると、
消費生活センター等が行う消費生
活相談も重要である。
まず、
相談対応に当たる消費生活相談員などの職員・スタッフの対応実態
を把握した上で、
スキルや対応力の向上、
意識改革に向けた研修などの取組
の強化を図るとともに、必要な人員の確保に努める。また、SNSなどを活
用し、
消費生活センター等の存在を周知するとともに、
必要な注意喚起等を
行うとともに、
「消費者力」を高めることや、個別のトラブルの手口や対処
法に関する教材9
を充実し、出前講座において普及啓発を図るなど幅広い世
代に対する被害の未然防止のための消費者教育の充実・強化に取り組む。さらに、裁判手続には相応の時間がかかることなど各種コストが見込まれる
ことから、これを軽減するために裁判外の紛争解決手続(ADR)の充実も
求められる。この点、国民生活センター紛争解決委員会は、重要消費者紛争
(消費者と事業者との間で起こる紛争のうち、その解決が全国的に重要で
あるもの)について、和解の仲介や仲裁を行っているところ、さらなる迅速
化を図っていく。
(4) 警察による適切な関与
合同電話相談窓口からの紹介先として、警察も一定数あったことを踏ま
えると、警察における相談対応の充実・強化に向けた更なる取組10
も重要で
あり、相談対応に当たっては、迅速・確実な組織対応を徹底するとともに、
関係機関・団体との一層緊密な連携を図るなど、
当該相談の解決に向けた必
要な措置を講じる。
また、
各都道府県警察に寄せられた相談や通報において、
刑罰法令に抵触
する行為が認められる場合は、法と証拠に基づき、迅速かつ適正に対処す
る。
(5) 精神的・福祉的支援の充実
ア 支援の必要性
前記3(3)の合同電話相談窓口に寄せられた相談等を踏まえると、信者
や元信者については、孤独・孤立への手当や、信仰を否定したことによる
喪失感や罪悪感などについての心のケア、生活困窮に対する自立支援が
必要である。
また、
信者の家族やいわゆる2世信者・3世信者については、
様々な家庭環境から生じた精神的・心理的な困難に対する心のケアや、貧困、修学に対する支援、虐待対応などが必要である。これらを踏まえ、以
下では、まず、対象がこどもであるか否かにかかわらず、取り組むべき施
策について記載し、こどもについては更に後記(6)で記載することとす 8る。
イ 精神保健福祉センターにおける相談や精神科医療機関の紹介対応
精神保健福祉センターにおいては、関係機関との連携を適切に行いつ
つ、精神保健福祉相談や精神科医療機関の紹介対応に引き続き適切に取
り組む11。ウ 生活困窮者自立支援(就労支援・修学支援を含む)
貧困に関しては、既に市町村、福祉事務所及び自立相談支援機関に対
し、関係機関との適切な連携が求められている12
ところであるが、とりわ
け就労支援や修学支援が重要と考えられるところ、生活困窮者自立支援
制度において、ハローワークや地域若者サポートステーションを通じた
就労支援や、高等教育の修学支援新制度等の修学支援と必要に応じて連
携するとともに、
自立相談支援機関の就労支援員による支援等や、
学習支
援、育成環境の改善の助言、進路選択(教育、就労)に関する関係機関と
の情報提供等のこどもの学習・生活支援を推進する。
これらを含めた生活
困窮者自立支援一般の機能強化のため、各地方公共団体における相談支
援員の加配等による相談支援体制の強化等に必要な補助を実施するほ
か、生活困窮者等を支援する民間団体の活動を助成する。
エ 孤独・孤立対策のためのチャットボットの充実
相談に導くツールとして、
インターネット等の活用は有効と考えられる。
この点、内閣官房孤独・孤立対策担当室では、孤独・孤立対策ウェブサイ
トにおいて、
孤独・孤立対策に資するとされた相談先や支援制度を掲載し、
利用者の悩みに応じた適切な相談先や支援制度を案内するチャットボッ
トを提供している。
合同電話相談窓口における相談状況を踏まえて
「宗教
団体から金銭的被害を受けた」
等の選択肢を設けるなど、
チャットボット
の充実を図る。
オ 法テラスとの連携強化
法テラスにおいては、利用者に対して適切な窓口を紹介するとともに、
心の悩みに対応できる心理専門職を速やかに配し、生活困窮に対応でき
るソーシャルワーカー等の配置を検討するなどして関係機関・団体との
連携を強化し、
こうした連携に基づく相談対応等に関する情報の収集・分
析やワンストップ型相談会等支援策を実施することとしており、上記イ
からエまでの関係機関等においても、法テラスのこのような取組への理
解を深め、法テラスとの連携強化を一層進めて、法的支援のみならず、相
談者のニーズに応じた精神的・福祉的支援を含む充実した総合支援が図
られるようにする。
(6) こども・若者の救済 9ア 虐待、いじめ、貧困等の具体的事象の発見
こどもは自ら声を上げることが困難であり、まずは、虐待、いじめ、貧
困等の具体的事象を早期に発見し、
救済につなげることが重要である。このことは、
旧統一教会問題に限らず、
こどもに関する施策全般に共通する
課題として、引き続き、関係機関が連携して対応に当たる必要がある。
そこで、
1厚生労働省においては、
市町村及び児童相談所の虐待対応の
現場において適切に対応できるよう、既に発出した通知文書13
において、
「児童の虐待の防止等に関する法律(平成 12 年法律第 82 号)第2条各
号に該当する行為を保護者が行った場合には、宗教の信仰等保護者の意
図にかかわらず児童虐待に該当しうるものである」とした上、
「保護者の
宗教の信仰といったことを理由とするものであっても、
例えば、
身体的暴
行を加える、
適切な食事を与えない、
重大な病気になっても適切に医療を
受けさせない、言葉による脅迫、子どもの心・自尊心を傷つけるような言
動を繰り返し行うといったことは、
児童虐待に該当しうる」
とした内容の
徹底に努めるとともに、具体的な対応の留意点を整理したQ&Aを作成
する。宗教を背景とした事案も含めたSNSによる相談体制の整備も合
わせて行う。また、2学校におけるスクールカウンセラー、スクールソー
シャルワーカーによる支援の推進14
や、3法務局におけるこどもの人権擁
護活動の強化15
等を更に徹底していく。
また、一人では相談することが難しい高齢者や障害者等の配慮を要す
る消費者について、消費者被害防止の観点から地域の様々な主体がネッ
トワークを形成して見守る活動である「見守りネットワーク」
(消費者安
全確保地域協議会)
の設置は、
こどもたちを含めた家族の見守りにも有効
な場面があると考えられる。そこで、4「見守りネットワーク」を設置す
る自治体に対する財政面での支援や、より効果的な見守りのための担い
手の養成講座の実施、地域での効果的な取組の実現に向けた施策に取り
組む。
併せて、5社会経験が乏しい若者に対して大学生協と連携して霊感商
法等の情報を提供したり、6前記(5)エのチャットボットの充実も含め、
若年層に親しみやすいデジタル技術を活用するなどした周知啓発にも取
り組む。
イ 心の悩みに対するケア
虐待、いじめ、貧困等が疑われる事案を含め、こどもの心の悩みに対す
る幅広い手当てが必要となる事案が想定されるところ、これについても
関係各機関が連携した対応を行う。
学校においては、
スクールカウンセラ
ー及びスクールソーシャルワーカーによる支援を推進する16
。また、前記
(5)イの精神保健福祉センターにおける精神保健福祉相談や精神科医療 10機関の紹介対応の推進はこどもの保護にとっても大切である。
ウ 若者の就労、修学支援
若者に対する就労支援及び修学支援として、ハローワークや地域若者
サポートステーションを通じた就労支援、大学等に進学できる機会を確
保するための給付型奨学金や授業料等の減免による高等教育の修学支援
新制度等を通じた修学支援にも取り組む。
このほか、
前記(5)
ウのとおり、
生活に困窮している世帯を対象に実施している生活困窮者自立支援制度
におけるこどもの学習・生活支援についても推進する。
エ 教育の充実
教育の役割も重要である。
学校現場における教育はもとより、
これとの
連携の下に行われる法務省の人権擁護機関による「人権教室」17
、出前講
座等の消費者教育は、こども・若者が視野を広げ、多角的なものの考え方
を身につける上で、極めて重要である。こうした取組は、結果として、潜
在的な悩みを抱えるこども・若者自身が自己の悩みに気づき、
相談へと向
かうきっかけともなることが期待される。
講座等の実施に当たっては、
オンラインによる講座等、
デジタル技術の
活用も積極的に行う。
オ 法テラスとの連携強化
法テラスにおいては、こどもの悩みに応じた適切な窓口を紹介すると
ともに、こどもの心情等に配慮することのできるこどもの専門家の配置
を検討するなどして関係機関・団体との連携を強化し、
こどもの実効的な
救済の実現に努めることとしており、
上記の関係機関等においても、
法テ
ラスのこのような取組への理解を深め、法テラスとの連携強化を一層進
めて、
法的支援のみならず、
相談者のニーズに応じた心の悩みに対するケ
ア、学習・生活支援を含む総合支援が図られるようにする。
(7) その他
ア 在外邦人の保護18
各在外公館においては、在外邦人からの様々な相談に応じ、日本の家
族への連絡を支援するなどして問題の解決を図るほか、要件を満たした
場合の帰国費用の貸付け、一部公館で契約している精神医療専門家との
連携を行っている。また、海外に在留している可能性が高く、長期にわ
たってその所在が確認されていない邦人について、その所在を長期間把
握できていない親族
(三親等内)
の求めに応じ、
可能な限り確認する
「所
在調査」を行っている。これらの取組について、周知・広報や情報収集
に努めるとともに、法テラスを始めとする関係機関等との連携を図る。
イ 行政相談における対応、地方公共団体との連絡調整 11全国 50 か所の総務省行政相談センターにおいても、どこに相談した
らよいか分からないものを含め寄せられた相談について丁寧に内容を
聞き取った上で法テラスを始めとする関係機関等を案内するなど、適切
な対応を継続する19。また相談対応に係る関係省庁が地方公共団体の担当部署に宛てて発
出した協力依頼通知を、各団体内で総合調整などを担当する総務担当部
長にも情報提供することにより担当部署間で連絡を密にするなど、当該
通知に基づく適切な対応を要請する。20
ウ 現行法を活用した国民向けのわかりやすい法的整理のQ&Aの周知
悩みや問題を抱える者を相談につなげるためには、
国民に対し、
現行法
を最大限活用することにより、
救済の可能性を示すほか、
各種制度やその
相談窓口を分かりやすく周知する必要がある。
既に、
法務省のホームペー
ジにおいては、現行法を活用した国民向けの分かりやすい法的整理のQ
&A(「お悩み解決のヒントとなるQ&A」)を公表21
しているところ、
今後、法テラスと連携しつつ、内容を随時更新するとともに、様々な媒体
を用いてその周知を図る。
エ 研修等の実施
本取りまとめに記載された相談や教育等に携わる全ての関係者が、十
分な理解と認識に基づき、
適切な対応を行うため、
法テラスを中心とした
ネットワーク等を通じて共有された知見等に基づき、各研修等の機会を
通じ、必要な知識と技能を身につける。これに際しては、地方に在住する
関係者の便宜等も考慮し、オンライン研修等の活用も積極的に検討する。
以 上 121
〔8月 10 日、内閣総理大臣記者会見〕
「2点の指示をいたしました。第1に、憲法上の信教の
自由は尊重しなければなりませんが、宗教団体も社会の一員として関係法令を遵守しなければ
ならないのは当然のことであり、仮に法令から逸脱する行為があれば、厳正に対処すること。第
2に、法務大臣始め関係大臣においては、悪質商法などの不法行為の相談、被害者の救済に連携
して、万全を尽くすこと。これらを岸田政権として徹底し、国民の皆さんから信頼される行政運
営を行ってまいります。」2
現在は世界平和統一家庭連合。本取りまとめでは「旧統一教会」という。3〔8月 24 日、内閣総理大臣記者会見〕
「被害者救済の観点から、相談の体制や相談機関を強化
する方向でしっかり検討し、連携して対応に万全を期すよう指示を出したところです。」4
〔10 月 17 日、衆議院予算委員会宮﨑政久議員に対する総理答弁〕総理は、同日、永岡桂子文
部科学大臣、
葉梨康弘法務大臣、
河野太郎内閣府特命担当大臣に対し、
本文記載の内容について、
それぞれ指示を行った。5日本弁護士連合会は、8月 29 日、
「霊感商法及びその他反社会的な宗教的活動による被害実態
の把握と被害者救済についての会長声明」において、本連絡会議について取り上げた上、
「国の
このような取組は、
被害者救済の第一歩として評価できるものであり、
当連合会としても抜本的
かつ実行的な解決策の構築に向けて、
積極的に連携協力をしていく所存である。」と述べている。
https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2022/220829.html6https://www.nichibenren.or.jp/news/year/2022/220905.html7関係者として日本弁護士連合会の担当者も出席し、取組状況について説明がなされた。8紹介先として警察を案内した相談の中には、犯罪が疑われるのではないかと考えられる相談
もある一方、
いわゆる見守り支援等に関する相談なども相当数ある。
具体的にどのような相談が
刑法等の刑罰法規に触れる疑いがあるかどうかについては慎重に決せられるべき事柄であり、
その件数や内容について明らかにすることは困難である。9消費者教育の推進に関する法律(平成 24 年法律第 61 号)に基づく消費者教育推進会議に設
けられる「消費者力」育成・強化ワーキングチームにおいて、幅広い世代に対応した「消費者
力」を身に付けるための新たな教材を開発するほか、典型的なトラブル事例について手口や対
処法に関する教材の充実、関係団体等と連携した啓発の強化を行う。1010 月7日、警察庁は、各都道府県警察の長らに対し、「『旧統一教会』問題への更なる取組の
推進について」との通達を発出した。11厚生労働省社会・援護局障害保険福祉部は、10 月6日、都道府県知事等に宛てた「精神保健
福祉センターにおける相談対応について」
において、
他の関係機関が発出した各通知を引用した
上、
「関係機関との連携を適切に」行うように協力を依頼している。12厚生労働省社会・援護局は、10 月6日、都道府県知事等に宛てた「市町村、福祉事務所及び
自立相談支援機関における相談対応について」
において、
他の関係機関が発出した各通知を引用
した上、
「関係機関との連携を適切に」行うよう協力を依頼している。1310 月 6 日付け厚生労働省子ども家庭局が各都道府県知事及び市町村長に宛てた通知文書参 13照。14文部科学省初等中等教育局は、10 月6日、各都道府県教育委員会教育長等に宛てた通知文書
(以下「10 月6日付け文科省通知」という。
)において、
「SC((注記)スクールカウンセラー)及びSSW((注記)スクールソーシャルワーカー)
の配置拡充を含めた教育相談体制の充実に向けた施策を
講じていく」とした上、
「学校においては、宗教に関係することのみを理由として消極的な対応
をすることなく、課題を抱える児童生徒の早期発見、早期支援・対応等に努める」とした。15法務省人権擁護局は、10 月 6 日、法務局人権擁護部長等に宛てた通知文書において、
「子ど
もの人権 110 番」、「子どもの人権 SOS ミニレター」及び SNS(LINE)による人権相談を端緒
に、宗教との関わりに起因してこどもの権利・利益が脅かされているといった相談があれば、こ
れを的確に把握」し、関係機関との連携を含む「実効的な相談対応等を積極的に実施する」とし
た。1610 月6日付け文科省通知においては、
「児童生徒の心のケアを図る必要があると考えられる
事案があった場合には、
学校内の関係者が情報を共有し、
SC や SSW と共にチーム学校として、
教育相談に取り組むこと」としている。17児童の権利に関する条約には、生命に対する権利、児童の最善の利益の考慮、児童の意見の
表明の権利の確保、差別の禁止などが規定されている。法務省の人権擁護機関においては、この
ような観点を踏まえた人権啓発活動を行っていく。
また、
こうした取組を実施するに当たっては、
宗教を理由とする偏見・差別があってはならないことや、
信仰告白を強要することは信教の自由
の侵害にもつながることについても配慮した内容とする。18外務省では、
10 月3日、
領事事務を行っている全ての在外公館に対し、
在外邦人からの
「旧
統一教会」関連の所在調査依頼や支援要請を受けた場合には、遅滞なく随時外務本省に報告・
相談しながら、適切に対応するよう訓令を発出した。19総務省行政評価局行政相談企画課及び行政相談管理官室は、9 月 30 日、全国 50 か所の総務
省行政相談センター(管区行政評価局、四国行政評価支局、行政評価事務所、行政監視行政相談
センター)宛てに、行政相談における「旧統一教会」問題への対応について通知した。209 月 7 日付け及び 10 月7日付けで総務省地域力創造グループ地域政策課長が各都道府県及
び各市区町村の総務部長宛てに「
『旧統一教会』問題・相談集中強化期間における相談対応への
適切な対応について」を発出した。21https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken03_00200.html
「旧統一教会」問題関係省庁連絡会議の開催について
令和4年8月 15日
関 係 省 庁 申 合 せ
令 和 4 年 9 月 1 日
一 部 改 正
1 「旧統一教会」
(現在は世界平和統一家庭連合)について社会的に指摘されている問題に
関し、
悪質商法などの不法行為の相談、
被害者の救済を目的として、
関係省庁間で情報を共
有するとともに、被害者への救済機関等のあっせんなど関係省庁による連携した対応を検
討するため、法務大臣の主宰により、
「旧統一教会」問題関係省庁連絡会議(以下「連絡会
議」と言う。
)を開催する。
2 連絡会議の構成は、次のとおりとする。ただし、議長は、必要があると認めるときは、関
係者の出席を求めることができる。
議 長 法務大臣
議長代理 法務事務次官
構 成 員 内閣官房孤独・孤立対策担当室長
警察庁生活安全局長
消費者庁次長
総務省大臣官房地域力創造審議官
総務省行政評価局長
法務省人権擁護局長
法務省大臣官房司法法制部長
外務省領事局長
文部科学省初等中等教育局長
厚生労働省子ども家庭局長
厚生労働省社会・援護局長
3 連絡会議の下に幹事会を置く。
幹事会の構成員は、
関係行政機関の職員で議長の指定する
官職にある者とする。
4 連絡会議及び幹事会の庶務は、法務省人権擁護局において処理する。
5 前各項に定めるもののほか、
連絡会議の運営に関する事項その他必要な事項は、
議長が定
める。
別添1
相談状況の分析(9月5日〜10月31日)
しろまる
相談類型
しろまる
相談実績
合同電話相談窓口からの紹介先
しろまる
相談者の年齢
成年
(18歳以上)
未成年
不明
96.6%0.1%3.3%
しろまる
相談者の性別
男性
女性
不明
42.0%
57.6%0.4%紹介先
件数
割合
法テラス
1,246
68.4%
消費者ホットライン1367.5%
よりそいホットライン1196.5%
警察1156.3%
法務局(人権相談)432.4%
精神保健福祉センター382.1%
生活困窮者自立支援機関321.8%
その他925.0%1金銭的トラブル
(39%)
2〜7
金銭的トラブル以外
(18%)89旧統一教会関係以外
御意見等
(43%)
旧統一教会関係の相談
旧統一
教会関
係以外
の相談1金銭的
トラブル2身体的被
害及びその
危険、行
為の強制3生活苦4誹謗中傷・嫌がらせ5個人情報
の悪用6心の悩み
(心の健
康に関する
問題も含む)7
親族間
の問題8行政に関
する相談9その他
1,61596537225195311558421806うち旧統一教会によるとされた被害に関する相談
2,367件
(相談実績の1〜7)
(注記)
相談内容が複数ある場合は重複して計上しているため、受付相談件数とは一致しない。
受付相談件数
3,650件(累計)
全体の動向
令和4年11月10日
「旧統一教会」問題関係省庁連絡会議1金銭的トラブル
(68%)7親族間の問題
(13%)6心の悩み(8%)2〜5
その他
(11%)
別添2
しろまる
直近の金銭支出時期
しろまる
相談主体
信者
元信者
親族
知人等
不明7%24%50%16%3%1年以内17%2〜5年以内8%6〜10年以内10%11〜20年以内16%20年越え37%不明12%しろまる
金銭支出の目的
(注記)
しろまる
相談者又は金銭支出者の状況
金銭的トラブル以外の相談例(752件)
御意見等(1,785件)
しろまる
類型
生活保護
自己破産
年金費消
預金消失
不明0.3%1.3%1.2%14.2%
83.0%
8行政に
関する相談
9その他
旧統一教会
関係以外の
相談31%24%45%物品
献金
役務
不明54%47%12%15%
(注記)
同一の相談での対象が複数の場合は重複して計上。・2世信者であるが、幼少期からの環境等によりうつ病を発症したので医療機関
などを紹介してほしい。・2世信者であるが、家族から離れて暮らしたい。独立したい。・信者である配偶者に自分の年金を献金につぎ込まれ、生活が苦しい。・退会しようとしたところ、脅迫のような行為を受けた。・両親が収入の多くを献金してしまうため、経済的に苦しく、就学が困難である。・2世信者であるが、高校生のころ関係者から1週間断食をさせられたことがあっ
た。
金銭的トラブル(1,615件)・信者であった10年間、祝福結婚、先祖解怨などの名目で、数百万円から10万程度の献金を多数回繰
り返してきたが、取り戻せるか。・信者である家族が、これまで1億円を超える献金をしたため、自己破産したほか、私はその家族のために
借入れも行っている。返金を求めたい。・信者である家族は、ここ数年1,000万円弱の献金をするため、生命保険を担保に借金し、公共料金も
支払えていない。どうしたら良いか。・私は信者でないが、数年前、除霊のためと言われて壺を買い、健康食品等も購入した。返金を求めたい。
霊感商法的言動
強要的言動
不明29%3%68%しろまる
金銭支出の経緯
しろまる
相談例
他団体(18%)
団体規制(12%)
対応等への意見(7%)
信者の擁護(3%)
国葬(3%)
主訴不明
(57%)
しろまる
内容

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