改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会第2回会議配布資料 5-2
新たな刑事司法制度の構築についての
調査審議の結果(平成26年7月9日
法制審議会新時代の刑事司法制度特別
部会)
新たな刑事司法制度の構築について
の調査審議の結果
新たな刑事司法制度の構築についての調査審議の結果
目 次
.......................................................................................
第1 はじめに 1
.................................
1 新時代の刑事司法制度特別部会における調査審議 1
..........................................................................................
2 結 論 1
..............................
第2 新たな刑事司法制度を構築するための法整備の概要 2
..............................
1 取調べの録音・録画制度の導入(要綱1頁〜2頁) 2
.....................
2 捜査・公判協力型協議・合意制度及び刑事免責制度の導入 3
...............
(1) 捜査・公判協力型協議・合意制度の導入(要綱3頁〜7頁) 3
...................................................
(2) 刑事免責制度の導入(要綱8頁) 4
.................................
3 通信傍受の合理化・効率化(要綱9頁〜12頁) 4
......
4 身柄拘束に関する判断の在り方についての規定の新設(要綱13頁) 5
...............................................................
5 弁護人による援助の充実化 5
.......................................
(1) 被疑者国選弁護制度の拡充(要綱14頁) 5
........................
(2) 弁護人の選任に係る事項の教示の拡充(要綱14頁) 5
........................................................................
6 証拠開示制度の拡充 6
.................................
(1) 証拠の一覧表の交付制度の導入(要綱15頁) 6
.................................
(2) 公判前整理手続の請求権の付与(要綱16頁) 6
.......................................
(3) 類型証拠開示の対象の拡大(要綱17頁) 6
..............................
7 犯罪被害者等及び証人を保護するための方策の拡充 7
.....................
(1) ビデオリンク方式による証人尋問の拡充(要綱18頁) 7
......
(2) 証人の氏名・住居の開示に係る措置の導入(要綱19頁〜22頁) 7
......
(3) 公開の法廷における証人の氏名等の秘匿措置の導入(要綱23頁) 8
8 公判廷に顕出される証拠が真正なものであることを担保するための方策等
.................................................................................
(要綱24頁) 9
........................
9 自白事件の簡易迅速な処理のための方策(要綱25頁) 9
....................................................................................
第3 附帯事項 10
.................................................................................
第4 今後の課題 11
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第1 はじめに
1 新時代の刑事司法制度特別部会における調査審議
法制審議会は,法務大臣から発せられた諮問第92号を受けて,時代に即し
た新たな刑事司法制度を構築するための法整備の在り方について調査審議を行
うため,平成23年6月6日の第165回会議において,新時代の刑事司法制
度特別部会(以下「特別部会」という。
)を設置した。
以後,特別部会において調査審議が行われ,その過程で「時代に即した新た
な刑事司法制度の基本構想」
(以下「基本構想」という。
)が策定された。基本
構想においては,新たな刑事司法制度のあるべき姿として「適正手続の下での
事案の解明と刑罰法令の適正かつ迅速な適用更にはそれと一体をなすものとし
ての誤判の防止という役割を十全に果たし,被疑者・被告人,被害者を始めと
する事件関係者及び国民一般がそれぞれの立場からも納得し得る,国民の健全
な社会常識に立脚したもの」,「できる限り制度の内容等が明確化され,国民に
分かりやすいもの」という姿が示された。そして,基本構想においては,これ
を実現するための制度構築に当たっての検討指針として,
しろまる 被疑者取調べの録音・録画制度の導入を始め,取調べへの過度の依存を改
めて適正な手続の下で供述証拠及び客観的証拠をより広範囲に収集すること
ができるようにするため,証拠収集手段を適正化・多様化する
しろまる 供述調書への過度の依存を改め,被害者及び事件関係者を含む国民への負
担にも配慮しつつ,真正な証拠が顕出され,被告人側においても,必要かつ
十分な防御活動ができる活発で充実した公判審理を実現する
という2つの理念が示された。
特別部会においては,この理念に基づいて,更に調査審議が進められ,平成
26年7月9日,その取りまとめが行われた。
2 結 論
別添の「要綱(骨子)
」に従って法整備を行うべきである。
「要綱(骨子)
」に掲げる制度は多岐にわたるが,そのいずれもが,上記の2
つの理念を実現するために必要な構成要素であるため,それらが一体として現
行制度に組み込まれ,一つの総体としての制度を形成することによって,時代
に即した新たな刑事司法制度が構築されていくものである。
個々の制度の在り方について,様々な立場からの多様な意見が存する中で,
一体としての制度について一致を見るに至ったのは,上記の2つの理念の下に
実現される新たな刑事司法制度を希求し,その実現に向けて歩みを進めようと
の強い思いを共有したからにほかならない。
もとより,制度は,法整備を行うだけでその目的が達せられるものではなく,
その趣旨を十分に踏まえた適切な運用が着実になされなければならない。その
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ため,法整備がなされた後も,刑事司法に関わる関係機関・関係者の真摯,か
つ,不断の努力と国民各層に開かれた議論を通じて,時代に即した新たな刑事
司法制度が真に実現されることを強く希望する。
第2 新たな刑事司法制度を構築するための法整備の概要
時代に即した新たな刑事司法制度の構築のために必要と考える法整備の内容
は,別添の「要綱(骨子)
」のとおりであるが,その概要を以下に示す。
1 取調べの録音・録画制度の導入(要綱1頁〜2頁)
〔録音・録画した記録媒体の証拠調請求義務,録音・録画義務〕
しろまる 検察官は,逮捕・勾留中に下記の対象事件について被疑者調書として作成
された被告人の供述調書の任意性が争われたときは,当該供述調書が作成さ
れた取調べの状況を録音・録画した記録媒体の証拠調べを請求しなければな
らないものとする(要綱一1)。しろまる 下記の例外事由に該当するため録音・録画をしなかったことその他やむを
得ない事情により,上記記録媒体が存在しないときは,その証拠調べを請求
することを要しないものとする(要綱一3)。しろまる 検察官,検察事務官又は司法警察職員は,逮捕・勾留されている被疑者を
下記の対象事件について取り調べるときは,下記の例外事由に該当する場合
を除き,その状況を録音・録画しておかなければならないものとする(要綱
一5)。【対象事件】
裁判員制度対象事件及び検察官独自捜査事件
【例外事由】
1 記録に必要な機器の故障その他のやむを得ない事情により,記録が困難
であると認めるとき
2 被疑者による拒否その他の被疑者の言動により,記録をすると被疑者が
十分に供述できないと認めるとき
3 被疑者の供述状況が明らかにされると,被疑者又はその親族に対し,身
体・財産への加害行為又は畏怖・困惑行為がなされるおそれがあることに
より,記録をすると被疑者が十分に供述できないと認めるとき
4 当該事件が指定暴力団の構成員によるものであると認めるとき
〔実施状況の検討義務〕
しろまる 施行後一定期間経過後に基本構想及び本答申を踏まえて,録音・録画の実
施状況について検討を加え,必要があると認めるときは,その結果に基づい
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て所要の措置を講ずる旨の見直し規定を設ける(要綱二)。2 捜査・公判協力型協議・合意制度及び刑事免責制度の導入
(1) 捜査・公判協力型協議・合意制度の導入(要綱3頁〜7頁)
〔合意・協議の手続〕
しろまる 検察官は,必要と認めるときは,被疑者・被告人との間で,被疑者・被告
人が他人の犯罪事実を明らかにするため真実の供述その他の行為をする旨及
びその行為が行われる場合には検察官が被疑事件・被告事件について不起訴
処分,
特定の求刑その他の行為をする旨を合意することができるものとする。
合意をするには,弁護人の同意がなければならないものとする(要綱一1)。しろまる この制度の対象犯罪は,一定の財政経済関係犯罪及び薬物銃器犯罪とする
(要綱一2)。しろまる 合意をするため必要な協議は,原則として,検察官と被疑者・被告人及び
弁護人との間で行うものとする(要綱一5)。しろまる 検察官は,送致事件等の被疑者との間で協議をしようとするときは,事前
に司法警察員と協議しなければならないものとする。検察官は,他人の犯罪
事実についての捜査のため必要と認めるときは,協議における必要な行為を
司法警察員にさせることができるものとする(要綱一7・8)。〔合意に係る公判手続の特則〕
しろまる 被告事件についての合意があるとき又は合意に基づいて得られた証拠が他
人の刑事事件の証拠となるときは,検察官は,合意に関する書面の取調べを
請求しなければならないものとし,その後に合意の当事者が合意から離脱し
たときは,離脱書面についても同様とする(要綱二)。〔合意違反の場合の取扱い〕
しろまる 合意の当事者は,相手方当事者が合意に違反したときその他一定の場合に
は,合意から離脱することができるものとする(要綱三1)。しろまる 検察官が合意に違反して公訴権を行使したときは,裁判所は,判決で当該
公訴を棄却しなければならないものとする。
検察官が合意に違反したときは,
協議において被疑者・被告人がした他人の犯罪事実を明らかにするための供
述及び合意に基づいて得られた証拠は,原則として,これらを証拠とするこ
とができないものとする(要綱三2・3)。〔合意が成立しなかった場合における証拠の使用制限〕
しろまる 合意が成立しなかったときは,被疑者・被告人が協議においてした他人の
犯罪事実を明らかにするための供述は,原則として,これを証拠とすること
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ができないものとする(要綱四)。〔合意の当事者である被疑者・被告人による虚偽供述等の処罰〕
しろまる 合意をした者が,その合意に係る他人の犯罪事実に関し合意に係る行為を
すべき場合において,捜査機関に対し,虚偽の供述をし又は偽造・変造の証
拠を提出したときは,5年以下の懲役に処するものとする(要綱五)。(2) 刑事免責制度の導入(要綱8頁)
〔証人を尋問する場合における免責決定〕
しろまる 検察官は,
証人尋問の請求に当たり,
必要と認めるときは,
裁判所に対し,
当該証人尋問を次に掲げる条件により行うことを請求することができるもの
とする(要綱一1)。1 その証人尋問によって得られた供述及びこれに由来する証拠は,原則と
して,当該証人に不利益な証拠とすることができないこと。
2 その証人尋問においては,自己が刑事訴追又は有罪判決を受けるおそれ
のある証言を拒否することができないこと。
しろまる 上記請求を受けたときは,裁判所は,尋問事項に,証人が刑事訴追又は有
罪判決を受けるおそれのある事項が含まれないと明らかに認められる場合を
除き,
証人尋問を上記1及び2の条件により行う旨の決定
(以下
「免責決定」
という。
)をするものとする(要綱一2)。〔証人尋問の開始後における免責決定〕
しろまる 検察官は,証人が,刑事訴追又は有罪判決を受けるおそれがあることを理
由として証言を拒絶した場合であって,
必要と認めるときは,
裁判所に対し,
免責決定の請求をすることができるものとする(要綱二1)。しろまる 上記請求を受けたときは,裁判所は,証人が,刑事訴追又は有罪判決を受
けるおそれがあることを理由として証言を拒絶していないと明らかに認めら
れる場合を除き,免責決定をするものとする(要綱二2)。3 通信傍受の合理化・効率化(要綱9頁〜12頁)
〔対象犯罪の拡大〕
しろまる 通信傍受の対象犯罪として,1殺傷犯等関係(現住建造物等放火・殺人・
傷害・傷害致死・爆発物の使用)
,2逮捕・監禁,略取・誘拐関係,3窃盗
・強盗関係,4詐欺・恐喝関係,5児童ポルノ関係の犯罪を追加する(要綱
一別表第2)。 - 5 -
しろまる 新たに追加する対象犯罪については,現行法が規定する傍受の実施要件に
加えて,
「あらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体に
より行われると疑うに足りる状況がある」
ことを要件とする
(要綱一1〜3)。〔特定装置を用いる傍受の導入〕
しろまる 特定装置(傍受した通信や傍受の経過を自動的に記録し,これを即時に暗
号化する機能等を有する装置)を用いることで,立会い・封印を不要とし,
かつ,通信内容の聴取等をリアルタイムで行う方法による傍受とその聴取等
を事後的に行う方法による傍受を可能とする(要綱二1)。しろまる 暗号化・復号化に必要な鍵は,裁判所の職員が作成するものとする(要綱
二3)。しろまる 特定装置を用いて記録がされた傍受の原記録は,傍受の実施の終了後遅滞
なく裁判官に提出すれば足りるものとする(要綱二4)。〔通信事業者等の施設における通信内容の一時記録を伴う傍受の導入〕
しろまる 通信事業者等の施設において傍受を実施する場合にも,通信内容を暗号化
して一旦記録することにより,通信内容の聴取等を事後的に行うことを可能
とする(要綱三1)。しろまる 暗号化・復号化に必要な鍵は,裁判所の職員が作成するものとする(要綱
三3)。しろまる 傍受の原記録についての封印や裁判官への提出については,現行法の規定
による傍受の場合と同様とする。
4 身柄拘束に関する判断の在り方についての規定の新設(要綱13頁)
しろまる 裁量保釈の判断に当たっての考慮事情を明記する。
5 弁護人による援助の充実化
(1) 被疑者国選弁護制度の拡充(要綱14頁)
しろまる 被疑者国選弁護制度の対象を「被疑者に対して勾留状が発せられている場
合」に拡大する。
(2) 弁護人の選任に係る事項の教示の拡充(要綱14頁)
しろまる 司法警察員・検察官・裁判官・裁判所は,身柄拘束中の被疑者・被告人に
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弁護人選任権を告知するに当たっては,刑事施設の長等に弁護士・弁護士法
人・弁護士会を指定して選任を申し出ることができる旨を教示しなければな
らないものとする。
6 証拠開示制度の拡充
(1) 証拠の一覧表の交付制度の導入(要綱15頁)
〔証拠の一覧表の交付義務〕
しろまる 検察官は,検察官請求証拠の開示をした後,被告人又は弁護人から請求が
あったときは,速やかに,検察官が保管する証拠の一覧表を交付しなければ
ならないものとする(要綱一)。〔証拠の一覧表の記載事項〕
しろまる 証拠の一覧表の記載事項は,証拠物については品名・数量,供述録取書に
ついては標目・作成年月日・供述者の氏名,それ以外の証拠書類については
標目・作成年月日・作成者の氏名とする(要綱二1)。しろまる 検察官は,証拠の一覧表を交付することにより,次に掲げるおそれがある
と認めるときは,そのおそれを生じさせる事項を記載しないことができるも
のとする(要綱二2)。1 人の身体・財産に対する加害行為又は畏怖・困惑行為がなされるおそれ
2 人の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれ
3 犯罪の証明又は犯罪の捜査に支障が生じるおそれ
(2) 公判前整理手続の請求権の付与(要綱16頁)
しろまる 検察官,被告人及び弁護人に公判前整理手続及び期日間整理手続の請求権
を付与する(要綱1・2)。しろまる 不服申立ては認めないものとする。
(3) 類型証拠開示の対象の拡大(要綱17頁)
しろまる 類型証拠開示の対象として,以下のものを追加する(要綱一〜三)。1 共犯者の身柄拘束中の取調べについての取調べ状況等報告書
2 検察官が証拠調請求をした証拠物に係る差押調書・領置調書
3 検察官が類型証拠として開示すべき証拠物に係る差押調書・領置調書
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7 犯罪被害者等及び証人を保護するための方策の拡充
(1) ビデオリンク方式による証人尋問の拡充(要綱18頁)
しろまる 裁判所は,次に掲げる者を証人として尋問する場合において,相当と認め
るときは,裁判官が尋問のために在席する場所と同一の構内以外の裁判所の
規則で定める場所に当該証人を在席させて,ビデオリンク方式により尋問を
行うことができるものとする。
1 同一構内に出頭すると精神の平穏を著しく害されるおそれがある者
2 同一構内に出頭すると,自己又はその親族に対し,身体・財産への加害
行為又は畏怖・困惑行為がなされるおそれがある者
3 遠隔地に居住し,同一構内に出頭することが著しく困難である者
(2) 証人の氏名・住居の開示に係る措置の導入(要綱19頁〜22頁)
〔検察官の措置〕
しろまる 検察官は,証人等の氏名・住居を知る機会を与えるべき場合において,そ
の証人等又はその親族に対し,身体・財産への加害行為又は畏怖・困惑行為
がなされるおそれがあるときは,被告人の防御に実質的な不利益を生じるお
それがある場合を除き,条件付けの措置(弁護人には氏名・住居を知る機会
を与えた上で,これを被告人に知らせてはならない旨の条件を付することを
いう。以下同じ。
)をとることができるものとし,証拠書類・証拠物を閲覧
する機会を与えるべき場合においても,それらに氏名・住居が記載されてい
る者で検察官が証人等として尋問を請求するもの若しくは供述録取書等の供
述者(以下「検察官請求予定証人等」という。
)について,同様の要件の下
で,条件付けの措置をとることができるものとする(要綱一1(一)・2(一))。しろまる 検察官は,証人等の氏名・住居を知る機会を与えるべき場合において,上
記加害行為又は畏怖・困惑行為を防止するために必要があるときは,被告人
の防御に実質的な不利益を生じるおそれがある場合を除き,代替開示の措置
(氏名・住居を知る機会を与えず,氏名に代わる呼称,住居に代わる連絡先
を知る機会を与えることをいう。以下同じ。
)をとることができるものとし,
証拠書類・証拠物を閲覧する機会を与えるべき場合においても,検察官請求
予定証人等について,同様の要件の下で,代替開示の措置をとることができ
るものとする(要綱一1(二)・2(二))。〔裁判所の裁定〕
しろまる 裁判所は,検察官がとった条件付けの措置について,要件を満たさないと
認めるときは,被告人又は弁護人の請求により,当該条件を取り消さなけれ
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ばならないものとする(要綱二1(一))。しろまる 裁判所は,検察官がとった代替開示の措置について,要件を満たさないと
認めるときは,被告人又は弁護人の請求により,氏名・住居を知る機会を与
えることを命じなければならないものとし,この場合において,条件付けの
措置の要件を満たすと認めるときは,弁護人に対し,氏名・住居を被告人に
知らせてはならない旨の条件を付することができるものとする(要綱二1
(二))。〔裁判所における訴訟記録・証拠物の閲覧制限〕
しろまる 裁判所における訴訟記録・証拠物の閲覧についても,条件付けの措置及び
代替開示の措置をとることができるものとする(要綱四1)。〔条件違反に対する処置請求〕
しろまる 裁判所・検察官は,条件付けの措置における条件に弁護人が違反したとき
は,弁護士会又は日本弁護士連合会に処置請求をすることができるものとす
る(要綱五1・2)。(3) 公開の法廷における証人の氏名等の秘匿措置の導入(要綱23頁)
〔秘匿決定〕
しろまる 裁判所は,次に掲げる場合において,証人等から申出があり,相当と認め
るときは,証人等の氏名等を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をするこ
とができるものとする(要綱一1)
1 証人等の氏名等が公開の法廷で明らかにされることにより,証人等又は
その親族に対し,身体・財産への加害行為又は畏怖・困惑行為がなされる
おそれがあると認められる場合
2 証人等の氏名等が公開の法廷で明らかにされることにより,証人等の名
誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれがあると認められる場合
〔秘匿決定があった場合の公判手続の特則〕
しろまる 上記決定があったときは,
・ 起訴状及び証拠書類の朗読は,証人等の氏名等を明らかにしない方法で
行い,また,
・ 証人尋問・被告人質問が証人等の氏名等にわたるときは,犯罪の証明に
重大な支障を生じるおそれ又は被告人の防御に実質的な不利益を生じるお
それがある場合を除き,尋問・陳述等を制限することができる
ものとする(要綱二〜四)。 - 9 -
8 公判廷に顕出される証拠が真正なものであることを担保するための方策等
(要綱24頁)
しろまる 証人不出頭等の罪の法定刑を「1年以下の懲役又は30万円以下の罰金」
に引き上げる(要綱一)。しろまる 証人が正当な理由なく召喚に応じないときのほか,そのおそれがあるとき
も,勾引することができるものとする(要綱二)。しろまる 犯人蔵匿等・証拠隠滅等の法定刑を「3年以下の懲役又は30万円以下の
罰金」に,証人等威迫の法定刑を
「2年以下の懲役又は30万円以下の罰金」
に引き上げる(要綱三)。しろまる 組織的な犯罪に係る犯人蔵匿等の法定刑を「5年以下の懲役又は50万円
以下の罰金」に引き上げる(要綱四)。9 自白事件の簡易迅速な処理のための方策(要綱25頁)
しろまる 即決裁判手続の申立てを却下する決定があった事件について,
当該決定後,
証拠調べが行われることなく公訴が取り消され,公訴棄却の決定が確定した
場合等においては,同一事件について更に公訴を提起することができるもの
とする。
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第3 附帯事項
1 取調べの録音・録画制度は,
最も時間を費やして検討が行われた事項であり,
基本構想において「刑事司法における事案の解明が不可欠であるとしても,そ
のための供述証拠の収集が適正な手続の下で行われるべきことは言うまでもな
い」,「公判審理の充実化を図る観点からも,公判廷に顕出される被疑者の捜査
段階での供述が,適正な取調べを通じて収集された任意性・信用性のあるもの
であることが明らかになるような制度とする必要がある」旨の共通認識を確認
した上で,更に検討が進められた。その結果として,検察等における実務上の
運用としての取組方針等をも併せ考慮した上で,制度としては,取調べの録音
・録画の必要性が最も高いと考えられる類型の事件を対象とすることとして,
「要綱(骨子)
」の「1」に掲げる法整備を行うべきとの結論に達したものであ
る。そのため,
「要綱(骨子)
」の「1」において制度の対象とされていない取
調べであっても,基本構想で確認された上記共通認識を実現する観点から,実
務上の運用において,可能な限り,幅広い範囲で録音・録画がなされ,かつ,
その記録媒体によって供述の任意性・信用性が明らかにされていくことを強く
期待する。
取調べの録音・録画制度については,施行後一定期間を経過した段階で,そ
の施行状況について検討を加え,必要があると認めるときは,その結果に基づ
いて所要の措置を講ずるものとしている。その検討等は,基本構想及び本答申
を踏まえて行われるべきである。また,制度自体の運用状況だけでなく,検察
等における実務上の運用としての録音・録画の実施状況や公判における供述の
任意性・信用性の立証状況も検討の対象として,客観的なデータに基づき,幅
広い観点から分析・評価を行うことが重要である。見直し規定の条文化の際に
は,検討の時期を具体的に定めた上で,上記のような趣旨を適切に盛り込むよ
う検討すべきである。
さらに,取調べの録音・録画制度に関しては,性犯罪等の被害者等のプライ
バシー保護の観点から一定の例外事由を設けるべきであるとの意見があったが,
その保護は,証拠開示の制限や公判廷における再生の制限等によって対処する
ことが可能であるとの意見も多く,そのような例外事由は掲げていない。もっ
とも,取調べの録音・録画制度の導入等により,録音・録画の記録媒体が数多
く作成されることとなることからも,少なくとも,当該記録媒体の取扱いに当
たっての被害者等のプライバシー保護には十分な対応・配慮がなされなければ
ならない。法務省,検察庁,警察庁,最高裁判所及び日本弁護士連合会におい
ては,性犯罪等の被疑者の取調べを録音・録画した記録媒体の適切な取扱いを
確保するため,十分な協議・検討を行い,所要の措置を講じるべきである。
2 被疑者・被告人の身柄拘束に関しては,現在の運用についての認識が大きく
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相違し,共通の認識を得るには至らなかったが,身柄拘束に関する判断の在り
方について,現行法上確立している解釈を法文に明記することは,国民に分か
りやすい制度を実現するという観点から意義を有するとの意見を踏まえ,
「要綱
(骨子)
」の「4」に掲げる法整備を行うべきであるとしたものである。したが
って,
「要綱(骨子)
」の「4」は,現在の運用についての特定の事実認識を前
提とするものではなく,あくまで現行法上確立している解釈の確認的な規定と
して掲げているものであり,現在の運用を変更する必要があるとする趣旨のも
のではないことに留意する必要がある。
3 被疑者国選弁護制度の拡充に関しては,現在の被疑者国選弁護制度の報酬は
接見回数を主な要素として算定される仕組みとされているところ,
「要綱
(骨子)」の「5」に掲げる法整備を行うに当たっては,併せて,被疑者国選弁護制度に
おける公費支出の合理性・適正性をより担保するための措置が講じられること
が必要である。
第4 今後の課題
1 新たな刑事司法制度の在り方についての当審議会における検討は,ひとまず
終了する。しかし,制度とは,その運用を重ねる中で,絶えずそのあるべき姿
が追究され,必要に応じて改善がなされていくことを通じて,より良いものに
進化・発展していくことが求められるものである。その意味で,取調べの録音
・録画制度はもとより,
「要綱(骨子)
」に掲げるいずれの制度についても,一
定の運用の経験が蓄積された後に,その実情に関する正確な認識に基づいて,
多角的な検討がなされることを期待する。
2 また,刑事司法制度を取り巻く情勢等は常に変化していくのであり,刑事司
法制度が「時代に即した」ものであり続けるためには,今後,他の新たな制度
の導入についても検討がなされることが必要とされよう。例えば,特別部会で
相当程度具体的な検討を行ったものの,
「要綱(骨子)
」には掲げられていない
事項のうち,犯罪事実の解明による刑の減軽制度や被告人の証人適格などにつ
いては,引き続き検討を行うことが考えられるであろうし,また,以下に掲げ
るものについては,今後,必要に応じて,更に検討を行うことが考えられよう。
しろまる 会話傍受については,振り込め詐欺や暴力団犯罪の捜査,あるいは,コン
トロールド・デリバリーの手法による薬物銃器犯罪の捜査の際に,共謀状況
や犯意に関する証拠を収集する上で必要であり,理論的にも制度化は可能で
あるとの意見があった一方で,通信傍受以上に個人のプライバシーを侵害す
る危険性が大きく,場面を限ったとしてもなお捜査手法として認めるべきで
ないとして制度化自体に反対する意見があったところである。
しろまる 再審請求審における証拠開示については,公判前整理手続の中で規定され
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ているような類型証拠開示と主張関連証拠開示の仕組みを再審請求審の手続
にも導入すべきであるとの意見があった一方で,再審請求審は,当事者主義
がとられている通常審とは根本的に手続の構造が異なっているため,公判前
整理手続における証拠開示制度を転用するというのは,理論的・制度的整合
性がなく,適切でないなどとの意見があったところである。
しろまる 起訴状や判決書における被害者の氏名の秘匿については,被害者の保護と
被告人の防御権との調整の問題として早急に解決しなければならず,制度的
な措置を講じることを検討すべきであるとの意見があった一方で,起訴状や
判決書については,被害者の氏名を必ず記載しなければならないとはされて
おらず,個別の事案ごとの柔軟な運用によって対処すべきであり,引き続き
運用の状況を見守りつつ慎重な検討をすべきであるとの見解もあったところ
である。
しろまる 証人保護プログラムについては,特別部会で取り扱うことが困難な民事・
行政関係にわたる課題が多いことなどに鑑み,特別部会で具体的な制度設計
を行うべき項目とはされなかったものであるが,制度の必要性については,
一定の認識の共有がなされたところである。
【別添】
要綱(骨子)
- 1 -
別添
要綱(骨子)
1 取調べの録音・録画制度の導入
一1 次に掲げる事件については,検察官は,刑事訴訟法第322条第1項本
文に規定する書面であって被告人に不利益な事実の承認を内容とするもの
(被疑者として逮捕若しくは勾留されている間に当該事件について同法第
198条第1項の規定により行われた取調べ又は当該事件について同法第
203条第1項,第204条第1項若しくは第205条第1項(これらの
規定を同法第211条及び第216条において準用する場合を含む。
)の規
定により与えられた弁解の機会(以下「取調べ等」という。
)に際して作成
されたものに限る。
)の取調べを請求した場合において,当該書面について
同法第326条の同意がされず,かつ,当該書面を同法第322条第1項
の規定により証拠とすることができることについて被告人又は弁護人が異
議を述べたときは,当該承認が任意にされたものであることを証明するた
め,当該書面が作成された取調べ等の開始から終了に至るまでの間におけ
る被告人の供述及びその状況を5により記録した記録媒体(映像及び音声
を同時に記録することができるものに限る。以下同じ。
)の取調べを請求し
なければならないものとする。
(一) 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
(二) 裁判所法第26条第2項第2号に掲げる事件であって,故意の犯罪行
為により被害者を死亡させた罪に係るもの((一)に該当するものを除く。)(三) 司法警察員が送致又は送付した事件以外の事件((一)又は(二)に該当する
ものを除く。)2 1の場合において,
検察官が1の記録媒体の取調べを請求しないときは,
裁判所は,決定で,1の書面の取調べの請求を却下しなければならないも
のとする。
3 検察官,検察事務官又は司法警察職員において5(一)から(四)までのいずれ
かに該当することにより1の書面が作成された取調べ等の開始から終了に
至るまでの間における被告人の供述及びその状況を記録媒体に記録しなか
ったことその他やむを得ない事情により,1の記録媒体が存在しないとき
は,1及び2は,これを適用しないものとする。
4 1から3までは,被告人以外の者の公判準備又は公判期日における供述
- 2 -
で取調べ等における被告人の供述をその内容とするものについて,これを
準用するものとする。
5 検察官,検察事務官又は司法警察職員は,1(一)から(三)までに掲げる事件
について,逮捕若しくは勾留されている被疑者を刑事訴訟法第198条第
1項の規定により取り調べるとき又は被疑者に対し同法第203条第1項,
第204条第1項若しくは第205条第1項(これらの規定を同法第21
1条及び第216条において準用する場合を含む。
)の規定により弁解の機
会を与えるときは,次のいずれかに該当する場合を除き,被疑者の供述及
びその状況を記録媒体に記録しておかなければならないものとする。
(一) 記録に必要な機器の故障その他のやむを得ない事情により,記録をす
ることが困難であると認めるとき。
(二) 被疑者が記録を拒んだことその他の被疑者の言動により,記録をした
ならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき。
(三) (二)に掲げるもののほか,犯罪の性質,関係者の言動,被疑者がその構
成員である団体の性格その他の事情に照らし,被疑者の供述及びその状
況が明らかにされた場合には被疑者若しくはその親族の身体若しくは財
産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなさ
れるおそれがあることにより,記録をしたならば被疑者が十分な供述を
することができないと認めるとき。
(四) (二)及び(三)に掲げるもののほか,当該事件が暴力団員による不当な行為
の防止等に関する法律第3条の規定により都道府県公安委員会の指定を
受けた暴力団の構成員による犯罪に係るものであると認めるとき。
二 施行後一定期間経過後に基本構想及び本答申を踏まえて,録音・録画の実
施状況について検討を加え,必要があると認めるときは,その結果に基づい
て所要の措置を講ずる旨の見直し規定を設けるものとする。
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2 捜査・公判協力型協議・合意制度及び刑事免責制度の導入
(1) 捜査・公判協力型協議・合意制度の導入
一 合意及び協議の手続
1 検察官は,特定犯罪に係る事件の被疑者又は被告人が,他人の犯罪事実
(特定犯罪に係るものに限る。
)についての知識を有すると認められる場合
において,当該他人の犯罪事実を明らかにするために被疑者又は被告人が
行うことができる行為の内容,被疑者又は被告人による犯罪及び当該他人
による犯罪の軽重及び情状その他の事情を考慮して,
必要と認めるときは,
被疑者又は被告人との間で,被疑者又は被告人が(一)に掲げる行為の全部又
は一部を行う旨及び当該行為が行われる場合には検察官が被疑事件又は被
告事件について(二)に掲げる行為の全部又は一部を行う旨の合意をすること
ができるものとする。合意をするには,弁護人の同意がなければならない
ものとする。
(一) 被疑者又は被告人による次に掲げる行為
イ 刑事訴訟法第198条第1項又は第223条第1項の規定による検
察官,検察事務官又は司法警察職員の取調べに際して当該他人の犯罪
事実を明らかにするため真実の供述をすること。
ロ 当該他人の刑事事件の証人として尋問を受ける場合において真実の
供述をすること。
ハ 当該他人の犯罪事実を明らかにするため,検察官,検察事務官又は
司法警察職員に対して証拠物を提出すること。
(二) 検察官による次に掲げる行為
イ 公訴を提起しないこと。
ロ 特定の訴因及び罰条により公訴を提起し又はこれを維持すること。
ハ 公訴を取り消すこと。
ニ 特定の訴因若しくは罰条の追加若しくは撤回又は特定の訴因若しく
は罰条への変更を請求すること。
ホ 即決裁判手続の申立てをすること。
ヘ 略式命令の請求をすること。
ト 刑事訴訟法第293条第1項の規定による意見の陳述において,被
告人に特定の刑を科すべき旨の意見を陳述すること。
2 1に規定する「特定犯罪」とは,次に掲げる罪(死刑又は無期の懲役若
しくは禁錮に当たる罪を除く。
)をいうものとする。
(一) 刑法第2編第5章(公務の執行を妨害する罪)
(第95条を除く。),
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第17章(文書偽造の罪)
,第18章(有価証券偽造の罪)
,第18章の
2(支払用カード電磁的記録に関する罪)
,第25章(汚職の罪)
(第1
93条から第196条までを除く。),第37章(詐欺及び恐喝の罪)若
しくは第38章(横領の罪)に規定する罪又は組織的な犯罪の処罰及び
犯罪収益の規制等に関する法律第3条(同条第1項第1号から第4号ま
で,第13号及び第14号に係る部分に限る。),第4条(同項第13号
及び第14号に係る部分に限る。),第10条(犯罪収益等隠匿)若しく
は第11条(犯罪収益等収受)に規定する罪
(二) (一)に掲げるもののほか,租税に関する法律,私的独占の禁止及び公正
取引の確保に関する法律,金融商品取引法に規定する罪その他の財政経
済関係犯罪として政令で定めるもの
(三) 次に掲げる法律に規定する罪
イ 爆発物取締罰則
ロ 大麻取締法
ハ 覚せい剤取締法
ニ 麻薬及び向精神薬取締法
ホ 武器等製造法
ヘ あへん法
ト 銃砲刀剣類所持等取締法
チ 国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防
止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律
(四) 刑法第2編第7章(犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪)に規定する罪又は組
織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第7条(組織的な
犯罪に係る犯人蔵匿等)に規定する罪((一)から(三)までに掲げる罪を本犯
の罪とするものに限る。)3 1の合意には,被疑者若しくは被告人又は検察官において1(一)若しくは
(二)に掲げる行為に付随し,又はその目的を達するため必要な行為を行う旨
を含めることができるものとする。
4 1の合意は,検察官,被疑者又は被告人及び弁護人が連署した書面によ
り,その内容を明らかにして行うものとする。
5 1の合意をするため必要な協議は,検察官と被疑者又は被告人及び弁護
人との間で行うものとする。ただし,被疑者又は被告人及び弁護人に異議
がないときは,協議の一部を被疑者若しくは被告人又は弁護人のいずれか
一方のみとの間で行うことができるものとする。
6 5の協議において,検察官は,被疑者又は被告人に対し,他人の犯罪事
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実を明らかにするための供述を求めることができるものとする。この場合
においては,刑事訴訟法第198条第2項の規定を準用するものとする。
7 検察官は,刑事訴訟法第242条(同法第245条において準用する場
合を含む。
)の規定により司法警察員が送付した事件,同法第246条の規
定により司法警察員が送致した事件又は司法警察員が現に捜査していると
認める事件の被疑者との間で5の協議をしようとするときは,
あらかじめ,
司法警察員と協議しなければならないものとする。
8 検察官は,1の合意をすることにより明らかにすべき他人の犯罪事実に
ついて司法警察員が現に捜査していることその他の事情を考慮して,当該
他人の犯罪事実についての捜査のため必要と認めるときは,6により供述
を求めることその他の5の協議における必要な行為を司法警察員にさせる
ことができるものとする。この場合において,司法警察員は,検察官の個
別の授権の範囲内において,1による合意の内容とする1(二)に掲げる行為
に係る検察官の提案を,被疑者又は被告人及び弁護人に提示することがで
きるものとする。
二 合意に係る公判手続の特則
1 被告人との間の合意に関する書面等の取調べ請求の義務
(一) 検察官は,被告事件について,公訴の提起前に被告人との間でした一
1の合意があるとき又は公訴の提起後に被告人との間で一1の合意が成
立したときは,遅滞なく,一4の書面の取調べを請求しなければならな
いものとする。
(二) (一)により一4の書面の取調べを請求した後に,当事者が三1(二)により
その合意から離脱する旨の告知をしたときは,検察官は,遅滞なく,三
1(二)の書面の取調べを請求しなければならないものとする。
2 被告人以外の者との間の合意に関する書面等の取調べ請求の義務
(一) 検察官,被告人若しくは弁護人が取調べを請求し又は裁判所が職権で
取り調べた被告人以外の者の供述録取書等が,その者が一1の合意に基
づいて作成し又はその者との間の一1の合意に基づいてなされた供述を
録取し若しくは記録したものであるときは,検察官は,遅滞なく,一4
の書面の取調べを請求しなければならないものとする。この場合におい
て,その合意の当事者が三1(二)によりその合意から離脱する旨の告知を
しているときは,検察官は,併せて,三1(二)の書面の取調べを請求しな
ければならないものとする。
(二) (一)前段の場合において,当該供述録取書等の取調べの請求後又は裁判
所の職権による当該供述録取書等の取調べの後に,一1の合意の当事者
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が三1(二)によりその合意から離脱する旨の告知をしたときは,
検察官は,
遅滞なく,
三1(二)の書面の取調べを請求しなければならないものとする。
(三) 検察官,被告人若しくは弁護人が証人として尋問を請求した者又は裁
判所が職権で証人として尋問する者との間でその証人尋問についてした
一1の合意があるときは,検察官は,遅滞なく,一4の書面の取調べを
請求しなければならないものとする。
(四) (三)により一4の書面の取調べを請求した後に,一1の合意の当事者が
三1(二)によりその合意から離脱する旨の告知をしたときは,検察官は,
遅滞なく,
三1(二)の書面の取調べを請求しなければならないものとする。
三 合意違反の場合の取扱い
1 合意からの離脱
(一) 一1の合意の相手方当事者がその合意に違反したときその他一定の場
合には,一1の合意の当事者は,その合意から離脱することができるも
のとする。
(二) (一)の離脱は,その理由を記載した書面により,相手方に対し,その合
意から離脱する旨を告知して行うものとする。
2 検察官が合意に違反した場合における公訴の棄却等
(一) 検察官が一1(二)イからヘまでに係る合意(一1(二)ロについては特定の
訴因及び罰条により公訴を提起する旨の合意に限る。
)に違反して,公訴
を提起し,異なる訴因及び罰条により公訴を提起し,公訴を取り消さず,
訴因若しくは罰条の追加,撤回若しくは変更を請求することなく公訴を
維持し,又は即決裁判手続の申立て若しくは略式命令の請求を同時にす
ることなく公訴を提起したときは,判決で当該公訴を棄却しなければな
らないものとする。
(二) 検察官が一1(二)ロに係る合意(特定の訴因及び罰条により公訴を維持
する旨の合意に限る。
)に違反して訴因又は罰条の追加又は変更を請求し
たときは,裁判所は,刑事訴訟法第312条第1項の規定にかかわらず,
その請求を却下しなければならないものとする。
3 検察官が合意に違反した場合における証拠の使用制限
(一) 検察官が一1の合意に違反したときは,被告人が一5の協議において
した他人の犯罪事実を明らかにするための供述及びその合意に基づいて
得られた証拠は,これらを証拠とすることができないものとする。
(二) (一)は,当該証拠を当該被告人又は当該被告人以外の者の刑事事件の証
拠とすることについて,その事件の被告人に異議がない場合には,適用
しないものとする。
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四 合意が成立しなかった場合における証拠の使用制限
一1の合意が成立しなかったときは,被疑者又は被告人が一5の協議にお
いてした他人の犯罪事実を明らかにするための供述は,これを証拠とするこ
とができないものとする。ただし,被疑者又は被告人が一5の協議において
した行為が刑法第103条,第104条若しくは第172条の罪又は組織的
な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第7条第1項(第2号に係
る部分に限る。
)の罪に当たる場合において,それらの罪に係る事件において
用いるときは,この限りでないものとする。
五 合意の当事者である被疑者又は被告人による虚偽供述等の処罰
1 一1(一)イ又はハに係る合意をした者が,その合意に係る他人の犯罪事実
に関し当該合意に係る行為をすべき場合において,検察官,検察事務官又
は司法警察職員に対し,虚偽の供述をし又は偽造若しくは変造の証拠を提
出したときは,5年以下の懲役に処するものとする。
2 1の罪を犯した者が,その行為をした他人の刑事事件の裁判が確定する
前であって,かつ,その合意に係る自己の刑事事件の裁判が確定する前に
自白したときは,その刑を減軽し,又は免除することができるものとする。
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(2) 刑事免責制度の導入
一 証人を尋問する場合における免責決定
1 検察官は,証人尋問を請求するに当たり,その尋問すべき事項に証人が
刑事訴追を受け,又は有罪判決を受けるおそれのある事項が含まれる場合
であって,関係する犯罪の軽重及び情状,当該事項についての証言の重要
性その他の事情を考慮して必要と認めるときは,裁判所に対し,当該証人
尋問を次に掲げる条件により行うことを請求することができるものとする。
(一) その証人尋問において尋問に応じてした供述及びこれに由来する証拠
は,刑事訴訟法第161条の罪又は刑法第169条の罪に係る事件にお
いて用いる場合を除き,証人の刑事事件において,これらを証人に不利
益な証拠とすることができないこと。
(二) その証人尋問においては,
刑事訴訟法第146条の規定にかかわらず,
自己が刑事訴追を受け,又は有罪判決を受けるおそれのある証言を拒む
ことができないこと。
2 1の請求を受けたときは,裁判所は,当該証人に尋問すべき事項に,証
人が刑事訴追を受け,又は有罪判決を受けるおそれのある事項が含まれな
いと明らかに認められる場合を除き,当該証人尋問を1(一)及び(二)に掲げる
条件により行う旨の決定(以下「免責決定」という。
)をするものとする。
二 証人尋問の開始後における免責決定
1 検察官は,証人尋問において,証人が刑事訴訟法第146条の規定によ
り証言を拒絶した場合であって,関係する犯罪の軽重及び情状,証人が刑
事訴追を受け,又は有罪判決を受けるおそれのある事項についての証言の
重要性その他の事情を考慮して必要と認めるときは,裁判所に対し,免責
決定の請求をすることができるものとする。
2 1の請求を受けたときは,裁判所は,当該証人が刑事訴訟法第146条
の規定により証言を拒絶していないと明らかに認められる場合を除き,当
該証人尋問について免責決定をするものとする。
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3 通信傍受の合理化・効率化
一 対象犯罪の拡大
犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(以下「通信傍受法」という。)第3条第1項各号を次の1から3までのように改め,別表を別表第1とし,同
表の次に別表第2を加えるものとする。
1 別表第1又は別表第2に掲げる罪が犯されたと疑うに足りる十分な理由
がある場合において,当該犯罪が数人の共謀によるものであると疑うに足
りる状況があるとき。ただし,別表第2に掲げる罪にあっては,当該犯罪
があらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行
われたと疑うに足りる状況があるときに限る。
2 別表第1又は別表第2に掲げる罪が犯され,かつ,引き続き次に掲げる
罪が犯されると疑うに足りる十分な理由がある場合において,これらの犯
罪が数人の共謀によるものであると疑うに足りる状況があるとき。
ただし,
別表第2に掲げる罪にあっては,当該犯罪があらかじめ定められた役割の
分担に従って行動する人の結合体により行われ,又は行われると疑うに足
りる状況があるときに限る。
(一) 当該犯罪と同様の態様で犯されるこれと同一又は同種の別表第1又は
別表第2に掲げる罪
(二) 当該犯罪の実行を含む一連の犯行の計画に基づいて犯される別表第1
又は別表第2に掲げる罪
3 死刑又は無期若しくは長期2年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪が別
表第1又は別表第2に掲げる罪と一体のものとしてその実行に必要な準備
のために犯され,かつ,引き続き当該別表第1又は別表第2に掲げる罪が
犯されると疑うに足りる十分な理由がある場合において,当該犯罪が数人
の共謀によるものであると疑うに足りる状況があるとき。ただし,別表第
2に掲げる罪にあっては,当該犯罪があらかじめ定められた役割の分担に
従って行動する人の結合体により行われると疑うに足りる状況があるとき
に限る。
別表第2
一1 刑法第108条(現住建造物等放火)の罪又はその未遂罪
2 刑法第199条(殺人)の罪又はその未遂罪
3 刑法第204条(傷害)又は第205条(傷害致死)の罪
4 刑法第220条(逮捕及び監禁)又は第221条(逮捕等致死傷)
の罪
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5 刑法第224条から第228条まで(未成年者略取及び誘拐,営利
目的等略取及び誘拐,身の代金目的略取等,所在国外移送目的略取及
び誘拐,人身売買,被略取者等所在国外移送,被略取者引渡し等,未
遂罪)の罪
6 刑法第235条(窃盗)
,第236条第1項(強盗)若しくは第24
0条(強盗致死傷)の罪又はこれらの罪の未遂罪
7 刑法第246条第1項(詐欺)
,第246条の2(電子計算機使用詐
欺)若しくは第249条第1項(恐喝)の罪又はこれらの罪の未遂罪
二 爆発物取締罰則第1条(爆発物の使用)又は第2条(使用の未遂)の罪三 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護
等に関する法律第7条第6項(児童ポルノ等の不特定又は多数の者に対
する提供等)又は第7項(不特定又は多数の者に対する提供等の目的に
よる児童ポルノの製造等)の罪
二 特別の機能を有する再生・記録装置(以下「特定装置」という。
)を用いる
傍受
1(一) 新たな傍受の実施方法として,
イ 傍受の実施をしている間に行われる通信について,
通信事業者等が,
暗号化した上で,電気通信回線を通じて捜査機関の施設に設置された
特定装置に伝送し,
ロ 検察官又は司法警察員が,特定装置を用いて,イにより伝送された
通信を即時に復号化して,現行規定による傍受の場合と同一の範囲内
で傍受をし,
ハ ロの傍受の際,特定装置の機能により,傍受した通信及び傍受の経
過を記録媒体に自動的に記録し,当該記録を即時に暗号化してその改
変を防止する
という方法を導入し,この方法により傍受を実施するときは,通信事業
者等による立会い(通信傍受法第12条第1項)及び記録媒体の封印(通
信傍受法第20条第1項)を要しないものとする。
(二) 特定装置を用いるときは,(一)ロに代えて,
イ 検察官及び司法警察員が傍受の実施場所に不在の間に(一)イにより伝
送された通信について,特定装置の機能により記録媒体((一)ハの記録
媒体とは別のもの)に一旦記録し,
ロ その後,検察官又は司法警察員が,傍受の実施場所に所在する際に,
特定装置を用いてイの記録媒体の記録内容を復号化して再生しつつ,
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現行規定による傍受の場合と同一の範囲内で傍受をし,
ハ イの記録媒体の記録内容は,その再生終了時に,特定装置の機能に
より,全て即時かつ自動的に消去する
こともできるものとする。
2 1の方法による傍受は,裁判官が,検察官又は司法警察員の申立てによ
り,相当と認めて,傍受令状に当該方法による傍受をすることができる旨
の記載をしたときにすることができるものとする。
3(一) 1の暗号化及び復号化並びに1(一)ハにより暗号化された記録の復号化
に必要な鍵(電磁的記録)は,傍受令状を発付した裁判官が所属する裁
判所の職員が作成するものとする。
(二) (一)により作成された鍵のうち,1(一)イの暗号化に必要な鍵は通信事業
者等が,
1(一)ロ及び1(二)ロの復号化並びに1(一)ハの暗号化に必要な鍵(1(一)ハにより暗号化された記録を検察官又は司法警察員が復号化すること
ができない措置が講じられたもの)は検察官又は司法警察員が,1(一)ハ
により暗号化された記録の復号化に必要な鍵は裁判所が,それぞれ保持
するものとする。
4 1(一)ハにより特定装置を用いて記録がされた記録媒体は,傍受の実施の
終了後,遅滞なく,傍受令状を発付した裁判官が所属する裁判所の裁判官
に提出すれば足りるものとする。
三 通信事業者等の施設における通信内容の一時記録を伴う傍受
1 新たな傍受の実施方法として,
(一) 傍受の実施場所である通信事業者等の施設に検察官及び司法警察員が
不在の間に行われる通信について,通信事業者等が暗号化した上で一時
記録用の記録媒体に一旦記録し,
(二) その後,検察官又は司法警察員が(一)の場所に所在する際に,通信事業
者等が(一)の記録媒体の記録内容を復号化して再生し,検察官又は司法警
察員が現行規定による傍受の場合と同一の範囲内で傍受をし,
(三) 通信事業者等は,(二)による再生が終了したときは,直ちに,(一)の記録
媒体の記録内容を全て消去する
という方法を導入し,(一)については,通信事業者等による立会い(通信傍
受法第12条第1項)を要しないものとする。
2 1の方法による傍受は,裁判官が,検察官又は司法警察員の申立てによ
り,相当と認めて,傍受令状に当該方法による傍受をすることができる旨
の記載をしたときにすることができるものとする。
3 1(一)の暗号化及び1(二)の復号化に必要な鍵は,傍受令状を発付した裁判
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官が所属する裁判所の職員が作成し,これを通信事業者等に提供するもの
とする。
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4 身柄拘束に関する判断の在り方についての規定の新設
裁量保釈の判断に当たっての考慮事情を明記する。
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5 弁護人による援助の充実化
(1) 被疑者国選弁護制度の拡充
被疑者国選弁護制度の対象となるべき場合を「死刑又は無期若しくは長期3
年を超える懲役若しくは禁錮に当たる事件について被疑者に対して勾留状が発
せられている場合」
(刑事訴訟法第37条の2第1項)から「被疑者に対して勾
留状が発せられている場合」に拡大するものとする。
(2) 弁護人の選任に係る事項の教示の拡充
司法警察員,検察官,裁判官又は裁判所は,刑事訴訟法(第272条第1項
を除く。)の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たっては,
同法第78条第1項の規定による弁護人の選任の申出ができる旨を教示しなけ
ればならないものとする。
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6 証拠開示制度の拡充
(1) 証拠の一覧表の交付制度の導入
一1 検察官は,刑事訴訟法第316条の14の規定による証拠の開示をした
後,被告人又は弁護人から請求があったときは,速やかに,被告人又は弁
護人に対し,検察官が保管する証拠の一覧表を交付しなければならないも
のとする。
2 検察官は,1により一覧表を交付した後,証拠を新たに保管するに至っ
たときは,速やかに,被告人又は弁護人に対し,当該新たに保管するに至
った証拠の一覧表を交付しなければならないものとする。
二1 一1及び2の一覧表には,
次の(一)から(三)までに掲げる証拠の区分に応じ,
証拠ごとに,当該(一)から(三)までに定める事項を記載しなければならないも
のとする。
(一) 証拠物 品名及び数量
(二) 供述録取書 当該供述録取書の標目,作成の年月日及び供述者の氏名
(三) 証拠書類((二)に掲げるものを除く。
) 当該証拠書類の標目,作成の年
月日及び作成者の氏名
2 検察官は,1にかかわらず,1の事項を記載した一覧表を交付すること
により,次に掲げるおそれがあると認めるときは,そのおそれを生じさせ
る事項の記載をしないことができるものとする。
(一) 人の身体若しくは財産に害を加え又は人を畏怖させ若しくは困惑させ
る行為がなされるおそれ
(二) 人の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれ
(三) 犯罪の証明又は犯罪の捜査に支障が生ずるおそれ
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(2) 公判前整理手続の請求権の付与
刑事訴訟法第316条の2及び第316条の28の整理手続の規定をそれぞ
れ次のように改めるものとする。
1 裁判所は,充実した公判の審理を継続的,計画的かつ迅速に行うため必要
があると認めるときは,検察官,被告人若しくは弁護人の請求により又は職
権で,第1回公判期日前に,決定をもって,事件の争点及び証拠を整理する
ための公判準備として,事件を公判前整理手続に付することができる。
2 裁判所は,審理の経過に鑑み必要と認めるときは,検察官,被告人若しく
は弁護人の請求により又は職権で,第1回公判期日後に,決定をもって,事
件の争点及び証拠を整理するための公判準備として,事件を期日間整理手続
に付することができる。
3 1若しくは2の決定又は1若しくは2の請求を却下する決定をするには,
裁判所の規則の定めるところにより,あらかじめ,検察官及び被告人又は弁
護人の意見を聴かなければならない。
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(3) 類型証拠開示の対象の拡大
一 共犯者の取調べ状況等報告書
刑事訴訟法第316条の15第1項第8号を次のように改めるものとする。
取調べ状況の記録に関する準則に基づき,検察官,検察事務官又は司法警
察職員が職務上作成することを義務付けられている書面であって,身体の拘
束を受けている者の取調べに関し,その年月日,時間,場所その他の取調べ
の状況を記録したもの(被告人又はその共犯として身体を拘束され若しくは
公訴を提起された者であって第5号イ若しくはロに掲げるものに係るものに
限る。)二 検察官が取調べを請求した証拠物に係る差押調書又は領置調書
刑事訴訟法第316条の15第1項による開示の対象となる証拠の類型と
して次のものを加えるものとする。
押収手続の記録に関する準則に基づき,検察官,検察事務官又は司法警察
職員が職務上作成することを義務付けられている書面であって,検察官請求
証拠である証拠物の押収に関し,その押収者,押収の年月日,押収場所その
他押収の状況を記録したもの
三 類型証拠として開示すべき証拠物に係る差押調書又は領置調書
刑事訴訟法第316条の15に次の項を加えるものとする。
検察官は,押収手続の記録に関する準則に基づき,検察官,検察事務官又
は司法警察職員が職務上作成することを義務付けられている書面であって,
第1項の規定により開示すべき証拠物の押収に関し,その押収者,押収の年
月日,押収場所その他押収の状況を記録したものについて,被告人又は弁護
人から開示の請求があった場合において,当該証拠物により特定の検察官請
求証拠の証明力を判断するために当該開示をすることの必要性の程度並びに
当該開示によって生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し,相当と
認めるときは,速やかに,前条第1号に定める方法による開示をしなければ
ならない。この場合において,検察官は,必要と認めるときは,開示の時期
若しくは方法を指定し,又は条件を付することができる。
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7 犯罪被害者等及び証人を保護するための方策の拡充
(1) ビデオリンク方式による証人尋問の拡充
裁判所は,次に掲げる者を証人として尋問する場合において,相当と認める
ときは,検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き,同一構内(裁判官及び訴
訟関係人が証人を尋問するために在席する場所と同一の構内をいう。
以下同じ。)以外の裁判所の規則で定める場所にその証人を在席させ,映像と音声の送受信
により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって,
尋問することができるものとする。
1 犯罪の性質,証人の年齢,心身の状態,被告人との関係その他の事情によ
り,同一構内に出頭するときは精神の平穏を著しく害されるおそれがあると
認められる者
2 同一構内に出頭するとしたならば,自己若しくはその親族の身体若しくは
財産に害を被り又はこれらの者が畏怖し若しくは困惑する行為がなされるお
それがあると認められる者
3 遠隔地に居住し,その年齢,職業,健康状態その他の事情により,同一構
内に出頭することが著しく困難であると認められる者
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(2) 証人の氏名・住居の開示に係る措置の導入
一 検察官の措置
1(一) 検察官は,刑事訴訟法第299条第1項の規定により証人等(証人,
鑑定人,通訳人又は翻訳人をいう。以下同じ。
)の氏名及び住居を知る機
会を与えるべき場合において,その証人等若しくはその親族の身体若し
くは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為
がなされるおそれがあるときは,弁護人に対し,その証人等の氏名又は
住居を知る機会を与えた上,これを被告人に知らせてはならない旨の条
件を付することができるものとする。ただし,被告人の防御に実質的な
不利益を生ずるおそれがあるときは,この限りでないものとする。
(二) 検察官は,(一)本文の場合において,(一)本文に規定する行為を防止する
ために必要があるときは,被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそ
れがある場合を除き,その証人等の氏名又は住居を知る機会を与えない
ことができるものとする。この場合において,氏名にあってはこれに代
わる呼称を,住居にあってはこれに代わる連絡先を知る機会を与えなけ
ればならないものとする。
2(一) 検察官は,刑事訴訟法第299条第1項の規定により証拠書類又は証
拠物を閲覧する機会を与えるべき場合において,証拠書類若しくは証拠
物に氏名若しくは住居が記載されている者であって検察官が証人等とし
て尋問を請求するもの若しくは供述録取書等の供述者(以下これらの者
を2において「検察官請求予定証人等」という。
)若しくは検察官請求予
定証人等の親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖さ
せ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあるときは,弁護人に対
し,その検察官請求予定証人等の氏名又は住居を閲覧する機会を与えた
上,これを被告人に知らせてはならない旨の条件を付することができる
ものとする。ただし,被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれが
あるときは,この限りでないものとする。
(二) 検察官は,(一)本文の場合において,(一)本文に規定する行為を防止する
ために必要があるときは,被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそ
れがある場合を除き,その検察官請求予定証人等の氏名又は住居を閲覧
する機会を与えないことができるものとする。この場合において,氏名
にあってはこれに代わる呼称を,住居にあってはこれに代わる連絡先を
知る機会を与えなければならないものとする。
3 検察官は,1又は2の措置をとったときは,速やかに,裁判所にその旨
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を通知しなければならないものとする。
二 裁判所の裁定
1(一) 裁判所は,検察官が一1(一)又は2(一)の措置をとった場合において,当
該措置に係る者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しく
はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがな
いと認めるとき,又は被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれが
あると認めるときは,被告人又は弁護人の請求により,決定で,当該措
置に係る条件を取り消さなければならないものとする。
(二) 裁判所は,検察官が一1(二)又は2(二)の措置をとった場合において,当
該措置に係る者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しく
はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがな
いと認めるとき,これらの行為を防止するために当該措置をとる必要が
ないと認めるとき,又は被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれ
があると認めるときは,被告人又は弁護人の請求により,決定で,当該
措置に係る者の氏名又は住居を知る機会を与えることを命じなければな
らないものとする。この場合において,裁判所は,当該措置に係る者若
しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくはこれらの者を畏
怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認めるときは,
被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあると認める場合を除
き,弁護人に対し,当該措置に係る者の氏名又は住居を被告人に知らせ
てはならない旨の条件を付することができるものとする。
2 裁判所は,1の請求について決定をするときは,検察官の意見を聴かな
ければならないものとする。
3 1の請求についてした決定に対しては,即時抗告をすることができるも
のとする。
三 公判前整理手続等における開示への準用
一及び二は,検察官が刑事訴訟法第316条の14若しくは第316条の
15第1項(第316条の21第4項においてこれらの規定を準用する場合
を含む。
)又は同法第316条の20第1項(第316条の22第5項におい
て準用する場合を含む。
)の規定により,証人等の氏名及び住居を知る機会を
与え又は証拠書類若しくは証拠物を閲覧する機会(弁護人に対しては,閲覧
し,かつ,謄写する機会)を与えるべき場合について,これを準用するもの
とする。
四 裁判所における訴訟に関する書類及び証拠物の閲覧制限
1(一) 刑事訴訟法第40条第1項の規定にかかわらず,裁判所は,検察官が
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とった一1(一)若しくは2(一)(三においてこれらを準用する場合を含む。)の措置に係る者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこ
れらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがある場
合において,検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き,相当と認める
ときは,弁護人に対し,訴訟に関する書類又は証拠物に記載されている
当該措置に係る者の氏名又は住居の閲覧又は謄写をさせた上,これらを
被告人に知らせてはならない旨の条件を付することができるものとする。
ただし,被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは,
この限りでないものとする。
(二) 刑事訴訟法第40条第1項の規定にかかわらず,裁判所は,検察官が
とった一1(二)若しくは2(二)(三においてこれらを準用する場合を含む。)の措置に係る者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこ
れらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがある場
合において,検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き,相当と認める
ときは,訴訟に関する書類若しくは証拠物に記載されている当該措置に
係る者の氏名若しくは住居の閲覧若しくは謄写をさせず,又はこれらの
閲覧若しくは謄写をさせた上,これらを被告人に知らせてはならない旨
の条件を付することができるものとする。ただし,被告人の防御に実質
的な不利益を生ずるおそれがあるときは,この限りでないものとする。
2 刑事訴訟法第49条の規定にかかわらず,裁判所は,検察官がとった一
1又は2(三においてこれらを準用する場合を含む。
)の措置に係る者若し
くはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若
しくは困惑させる行為がなされるおそれがある場合において,検察官及び
被告人の意見を聴き,相当と認めるときは,公判調書に記載されている当
該措置に係る者の氏名又は住居の閲覧をさせないことができるものとする。
ただし,被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは,こ
の限りでないものとする。
五 条件違反に対する処置請求
1 検察官は,一1(一)又は2(一)(三においてこれらを準用する場合を含む。)により付した条件に弁護人が違反したときは,弁護士である弁護人につい
ては当該弁護士の所属する弁護士会又は日本弁護士連合会に通知し,適当
な処置をとるべきことを請求することができるものとする。
2 裁判所は,二1(二)(三において準用する場合を含む。
)又は四1により付
した条件に弁護人が違反したときは,弁護士である弁護人については当該
弁護士の所属する弁護士会又は日本弁護士連合会に通知し,適当な処置を
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とるべきことを請求することができるものとする。
3 1又は2の請求を受けた者は,そのとった処置をその請求をした者に通
知しなければならないものとする。
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(3) 公開の法廷における証人の氏名等の秘匿措置の導入
一 証人等特定事項の秘匿決定等
1 裁判所は,次に掲げる場合において,証人等(証人,鑑定人,通訳人若
しくは翻訳人又は供述録取書等の供述者をいう。以下同じ。
)から申出があ
るときは,検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き,相当と認めるとき
は,証人等特定事項(氏名及び住所その他の当該証人等を特定させること
となる事項をいう。以下同じ。
)を公開の法廷で明らかにしない旨の決定を
することができるものとする。
(一) 証人等特定事項が公開の法廷で明らかにされることにより証人等若し
くはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ
若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認められる場合
(二) 証人等特定事項が公開の法廷で明らかにされることにより証人等の名
誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれがあると認められる場合
2 裁判所は,1の決定をした事件について,証人等特定事項を公開の法廷
で明らかにしないことが相当でないと認めるに至ったときは,決定で,1
の決定を取り消さなければならないものとする。
二 起訴状の朗読方法の特例
一1の決定があった事件の公訴事実に証人等特定事項が含まれるときは,
刑事訴訟法第291条第1項の起訴状の朗読は,証人等特定事項を明らかに
しない方法でこれを行うものとする。この場合においては,検察官は,被告
人に起訴状を示さなければならないものとする。
三 尋問等の制限
裁判長は,一1の決定があった場合において,訴訟関係人のする尋問又は
陳述が証人等特定事項にわたるときは,これを制限することにより,犯罪の
証明に重大な支障を生ずるおそれがある場合又は被告人の防御に実質的な不
利益を生ずるおそれがある場合を除き,当該尋問又は陳述を制限することが
できるものとする。訴訟関係人の被告人に対する供述を求める行為について
も,同様とするものとする。
四 証拠書類の朗読方法の特例
一1の決定があったときは,刑事訴訟法第305条第1項又は第2項の規
定による証拠書類の朗読は,証人等特定事項を明らかにしない方法でこれを
行うものとする。
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8 公判廷に顕出される証拠が真正なものであることを担保するための方策等
一 証人不出頭等の罪の法定刑
召喚を受けた証人の不出頭及び証人の宣誓・証言の拒絶の各罪の法定刑を,
1年以下の懲役又は30万円以下の罰金とする。
二 証人の勾引要件
1 証人が,正当な理由がなく,召喚に応じないとき,又は応じないおそれ
があるときは,これを勾引することができるものとする。
2 裁判所は,裁判所の規則で定める相当の猶予期間を置いて,証人を裁判
所に召喚することができるものとする。
三 犯人蔵匿等,証拠隠滅等,証人等威迫の罪の法定刑
1 犯人蔵匿等及び証拠隠滅等の各罪の法定刑を,3年以下の懲役又は30
万円以下の罰金とする。
2 証人等威迫の罪の法定刑を,2年以下の懲役又は30万円以下の罰金と
する。
四 組織的な犯罪に係る犯人蔵匿等の罪の法定刑
組織的な犯罪に係る犯人蔵匿等の罪の法定刑を,5年以下の懲役又は50
万円以下の罰金とする。
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9 自白事件の簡易迅速な処理のための方策
一 公訴取消し後の再起訴制限の緩和
即決裁判手続の申立てを却下する決定(刑事訴訟法第350条の8第3号
又は第4号に掲げる場合に該当することによるものを除く。
)があった事件に
ついて,当該決定後,同法第292条本文の規定による証拠調べが行われる
ことなく公訴が取り消された場合において,公訴の取消しによる公訴棄却の
決定が確定したときは,同法第340条の規定にかかわらず,同一事件につ
いて更に公訴を提起することができるものとする。同法第350条の11第
1項第1号,第2号又は第4号のいずれかに該当すること(同号については,
被告人が起訴状に記載された訴因について有罪である旨の陳述と相反するか
又は実質的に異なった供述をしたことにより同号に該当する場合に限る。)となったことにより同法第350条の8の決定が取り消された事件について,
当該取消しの決定後,同法第292条本文の規定による証拠調べが行われる
ことなく公訴が取り消された場合において,公訴の取消しによる公訴棄却の
決定が確定したときも,同様とするものとする。

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