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国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約
の実施に関する法律の実施状況について
法 務 省
外 務 省
平成28年4月1日から平成29年3月31日までの1年間における国際的
な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(平成25年法律
第48号。以下「実施法」という。
)の実施状況は,以下のとおりである。
1 外務大臣に対する援助申請
実施法に基づき,外務大臣に対し,子の返還又は子との面会その他の交流
(以下「面会交流」という。
)を実現するための援助の申請がされた数は55
事案であり,申請に係る子は73名である。
申請ごとの内訳は以下のとおり。
(1)外国返還援助(日本国からの子の返還を実現するための援助)の申請数
は23事案,申請に係る子は28名である。
ア このうち,申請書において子の常居所地国として記載された国・地域ご
との事案数は以下のとおり。
米国7,カナダ2,シンガポール2,リトアニア2,香港2,オースト
ラリア1,タイ1,ドイツ1,フランス1,メキシコ1,ロシア1,スウェ
ーデン1,日本1
イ このうち,申請に係る子の父から申請が行われたものが19事案,母か
ら申請が行われたものが4事案である。
ウ 18事案について援助決定を行い,4事案について却下し,1事案につ
いては審査中となっている。
(2)日本国返還援助(日本国への子の返還を実現するための援助)の申請数
は17事案,申請に係る子は26名である。
ア このうち,申請書において子の所在地として記載された国ごとの事案数
は以下のとおり。
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米国4,韓国3,フィリピン3,ドイツ1,ブラジル1,フランス1,
ペルー1,ロシア1,スウェーデン1,タイ1
イ このうち,申請に係る子の父から申請が行われたものが11事案,母か
ら申請が行われたものが6事案である。
ウ 13事案について援助決定を行い,2事案について却下し,1事案につ
いて申請者による取下げ,1事案について審査中となっている。
(3)日本国面会交流(日本国内に所在する子との面会交流)援助の申請数は
12事案,申請に係る子は14名である。
ア このうち,申請書において申請者の住所又は居所として記載された国ご
との事案数は以下のとおり。
米国5,イタリア1,英国1,カナダ1,タイ1,ドイツ1,フランス
1,リトアニア1
イ このうち,申請に係る子の父方から申請が行われたものが10事案,母
から申請が行われたものが2事案である。
ウ 8事案について援助決定を行い,3事案(注)について却下し,1事案
について他国中央当局に移送し,1事案について審査中となっている。
(注)このうち,1事案については,平成28年3月31日までに申請書を受け付け
たもの。
(4)外国面会交流(日本国以外の条約締約国に所在する子との面会交流)援
助の申請数は3事案,申請に係る子は5名である。
ア このうち,申請書において子の所在地として記載された国ごとの事案数
は以下のとおり。
韓国1, フィジー1,英国1
イ このうち,申請に係る子の父から申請が行われたものが1事案,母から
申請が行われたものが2事案である。
ウ 1事案について援助決定を行い,1事案について申請者による取下げ,
1事案について審査中となっている。
上記の援助決定を行った事案については,
関係国の中央当局とも協力しつつ,
協議のあっせんその他の支援を行った。
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2 裁判所に対する申立て
(注記) 数値は,最高裁判所の実情調査に基づく。
(1)子の返還申立事件
(注記) 子の返還申立事件の件数は,子の数を基準にしている。
ア 申立件数
子の返還申立事件の申立件数は19件である。
(参考)
しろまる 申し立てられた裁判所
東京家裁 13件
大阪家裁 6件
しろまる 子の常居所地国として主張された国・地域の内訳
米国8件,香港3件,オーストラリア2件,イギリス1件,カ
ナダ1件,フランス1件,ロシア1件,ドイツ1件,タイ1件
しろまる 申立人と子との関係
申立人が子の父 16件
申立人が子の母 3件
イ 審理が終了した件数
子の返還申立事件の審理が終了した件数は23件である。
結果の内訳は,認容が6件,却下が4件,調停成立が9件,取下げが
4件である。
却下となった4件のうち,実施法28条1項3号に規定する返還拒否
事由(注1)があると認められたものが2件,実施法28条1項5号に
規定する返還拒否事由(注2)があると認められたものが2件である。
(注記) 前年度までの未済事件が今年度に終了したものも含まれている。
(注1)申立人が当該連れ去りの前若しくは当該留置の開始の前にこれに同意し,
又は当該連れ去りの後若しくは当該留置の開始の後にこれを承諾したこと。
(注2) 子の年齢及び発達の程度に照らして子の意見を考慮することが適当であ
る場合において,子が常居所地国に返還されることを拒んでいること。
(参考)
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しろまる 家庭裁判所における平均審理期間(子の数が基準)
1 裁判により終了したもの 約60.1日
(注記) 家庭裁判所への申立日から裁判日までの期間
2 調停が成立したもの
約55.2日
(注記) 家庭裁判所への申立日から調停の成立日までの期間
3 1及び2に該当する全事件 約57.8日
しろまる 家庭裁判所・高等裁判所を通じた平均審理期間
(子の数が基準)
1 裁判が確定したもの 約131.3日
(注記) 家庭裁判所への申立日から裁判が確定した審級における裁判日
2 一審又は抗告審で調停又は和解が成立したもの
約62.4日
(注記) 家庭裁判所への申立日から調停又は和解の成立日までの期間
3 1及び2に該当する全事件 約95.1日
しろまる 出国禁止命令が発令されていた件数
12件
しろまる 家庭裁判所の終局決定に対して,
平成29年3月31日までに
高等裁判所に抗告がされた件数
10件
(注記) 抗告事件の件数は,原決定書の数を基準としている。
(注記) 抗告事件は8件が既済となっている。
結果の内訳は,
抗告を棄却したも
のが5件,原決定を取り消し却下したものが1件,和解が1件,当然終了
が1件である。
(注記) 抗告審において子の返還の申立てを却下する決定が確定した件数は1
件であり,同決定では実施法28条1項3号に規定する返還拒否事由があ
ると認められている。
しろまる 終局決定に対して,変更(注)の申立てがされた件数1件(注記) 上記事件は既済となっており,申立てが認容されている。
(注)
子の返還を命ずる終局決定が確定した後に,
当該終局決定をした裁判所
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が,事情の変更によりその決定を維持することを不当と認めるに至ったとき,当事者の申立てにより,
その決定を変更するもの
(実施法117条1項)。(2)子の返還の強制執行申立事件
(注記) 子の返還の強制執行申立事件の件数は,申立書の数を基準としている。
ア 申立件数
間接強制の申立ては3件,代替執行の申立ては3件,解放実施の申立
ては2件である。
イ 既済件数
間接強制申立事件の既済件数は3件であり,全て認容されている。
代替執行申立事件の既済件数は2件であり,全て認容されている。
解放実施申立事件の既済件数は2件であり,
全て執行不能により終了
している。
(3)実施法が適用される面会交流事件
(注記) 実施法が適用される面会交流事件の件数は,子の数を基準にしている。
ア 申立件数
対象期間内に報告のあった,実施法が適用される面会交流事件の申立
件数は5件である。
イ 審理・調停が終了した件数
対象期間内に報告のあった,実施法が適用される面会交流事件の審
理・調停が終了した件数は5件である。
結果の内訳は,認容が3件,調停をしない措置(注)が2件である。
(注記) 前年度までの未済事件が今年度に終了したものが含まれている。
(注)
事件が性質上調停を行うのに適当でないと認めるとき,
又は当事者が不当な
目的でみだりに調停の申立てをしたと認めるときに,
調停をしないものとして,
家事調停事件を終了させるもの(家事事件手続法271条)。
3 返還援助の結果
外務大臣が援助決定を行った事案のうち,本報告書の対象期間内に,子の
返還が実現した事案及び子を返還しないこととなった事案は以下のとおり
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である。
(1)外国返還援助決定を行った事案のうち,子の返還が実現したものは7事
案である。
ア 返還先の国・地域ごとの事案数は以下のとおり。
米国4, イタリア1,香港2
イ このうち,
裁判所における調停により子の返還が実現したものは1事案,
和解により子の返還が実現したものは1事案,第一審における子の返還を
命ずる決定後に子の返還が実現したものは1事案,子の返還を命ずる終局
決定の確定後に子の返還が実現したものは2事案
(注),当事者による任意
の返還が実現したものは1事案,当事者死亡により裁判が当然終了した後
に返還が実現したものは1事案である。
(注)1事案については人身保護請求の認容判決後に子の返還が実現した。
(2)外国返還援助決定を行った事案のうち,子を返還しないこととなったも
のは9事案である。
ア 申請書において子の常居所地国として記載された国ごとの事案数は以下
のとおり。
米国5,シンガポール1,オーストラリア1,ドイツ1,フランス1
イ このうち,裁判所における調停により子を返還しないとの結論に至った
ものは4事案,子の返還申立てが裁判所で却下されたものは3事案,その
ほかに当事者が子の返還を求めないとの意思を表明したものは2事案であ
る。
(3)日本国返還援助決定を行った事案のうち,子の返還が実現したものは9
事案である。
ア 子の連れ去り又は留置が行われていた国ごとの事案数は以下のとおり。
米国3,
スリランカ1,
タイ1,韓国1,ルーマニア1,フィリピン1,
ブラジル1
イ このうち,外国の裁判所における返還命令又は類似の命令等が出された
後に返還が実現したものは5事案,そのほかに当事者の意思により子の返
還が実現したものは4事案である。
(4)日本国返還援助決定を行った事案のうち,子を返還しないこととなった
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ものは2事案である。
ア 子の連れ去り又は留置が行われていた国ごとの事案数は以下のとおり。
スウェーデン1,ブラジル1
イ このうち,外国の裁判所における返還申立の却下により子を返還しない
ことが確定したものは1事案,当事者が子の返還を求めないとの意思を表
明したものは1事案である。
4 面会交流援助の結果
外務大臣が面会交流援助決定を行った事案については,外務省又は外国条
約締約国の中央当局からの連絡に対し,子の同居者から一切の応答がない一
部の事案を除き,
多くの事案について両当事者の連絡の仲介が実現している。
これらの事案の中には,子や親が国境を越えて渡航する形で面会が実現し
た事案や,ビデオ通話による面会が実現した事案などがある。

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