共有私道の保存・管理等に関する事例研究会 第2回 議事要旨
1 日時 令和3年12月24日(金)午前10時00分〜12時00分
2 ウェブ会議システムを利用して開催
3 出席者 松尾座長、秋山委員、伊藤委員、角松委員、白井委員、水津委員、野村委員、
柳澤委員、大谷関係官、宮﨑関係官、山根関係官、千葉関係官
【ファイル1】
管理・変更とその費用負担について、どこまで立ちいって検討すべきかについて、もしご
意見があれば伺いたい。現在の改訂案では、管理か変更かを識別する際に、費用負担につい
ても考慮要因にはなりうると記載いただいている。
管理にあたるか変更にあたるかの判定にあたって費用負担の要素も加味すべきかどうか
については記載をすることで良いと思うが、反対もあったと思う。
保存行為と管理行為との区別については、むしろ費用は考慮されうる要素になると思う
が、私はこの記載でも構わないと思っている。
変更行為と管理行為の区別において、
費用を考慮し得ないということではないと思う。例えば、効用の著しい変更に当たるかどうかというレベルで考慮することは差し支えないは
ずであるし、
保存行為の定義を共有物の現状を維持する行為とするのであれば、
その現状を
維持するに当たるかを判断する際に費用を考慮するということは考えられるが、独立の考
慮要素として用いるということではないと思う。
団地に関する記載については、
団地の要件が適用されるので、
区分所有法が適用されると
いう点を詳しく記載したらよいのではという意見が寄せられたが、適用されるかもしれな
いという意見はあるものの、
よく用いられているということはないようなので、
基本的には
原案どおりとすることで良いのではないか。
地役権について言及しているが、その中でライフラインの設置についても記載されてい
る。しかし、見出しは「通行地役権」とされているので、見出しを「通行等地役権」などと
すべきではないか。
また、
受忍についても記載されているが、
民法第286条が前提としている積極的作為も
あるので、
ライフラインの話を入れるのであれば、
受忍させることしかできないというので
はなく、
地役権に基づいて、
積極的義務をこの場合にだけ設けることができるという記載を
追加した方が良いのではないか。
ライフラインに言及することによって、
通行地役権の記載
と設備の設置等に関する地役権の記載が混ざっているが、後半部分に特有の議論もあるか
と思う。
全員の同意を必要となるような工事を行う際には、一般的には裁判所の許可を得る必要
があると記載されているが、
改正民法の下では、
軽微変更は全員同意はいらないこととされ
た。
軽微変更に該当する行為を行う場合に、
家庭裁判所の許可を得る必要はないのかという
点について確認したい。
少なくとも、全員の同意が必要となる工事であれば裁判所の許可が必要となるという記
載であり、軽微変更について言及するものではないと理解している。
軽微変更について、裁判所の許可は必要なのか。民法第103条の文言からすれば、裁判
所の許可なしにできる管理行為に軽微変更は含まれていないと読む方が合理的であると思
われる。もっとも、解釈の余地があるとは思う。
その点については、
解釈の余地があるなら決め打ちはあまりよくないのではないか。
ガイ
ドラインにおいて議論しようというものではない。
例えば、
「私道について変更にあたるような行為を行う際には」と記載をすれば、軽微変
更は除かれるということになると思う。
所有者不明土地管理命令のところでも同じように問題になるので、併せて検討いただい
たらよいと思う。
「管理(清算)
」と記載されているが、これだとわかりにくいと思う。旧法の管理は新法
の清算にあたるということにもなり、わかりやすい表記があると良い。
また、
相続人がはっきりしていない場合に利用できるのかがわからないので、
タイトルを
変えてはどうか。
【ファイル2】
共有物の管理の決定において会議を開催する必要はないことを記載すべきかという点に
ついては、できるだけ会議を開くべきとの意見があるなど、解釈の余地があるため、原文の
ままとしたい。
結論に異論はないものの、改正民法の下でも、農地を宅地造成することは、軽微変更には
当たらない変更行為ということでよいとすると、事例5は、改正民法の下では、アスファル
ト舗装工事が軽微変更行為と同様に、農地を宅地にする工事も軽微変更に当たると理解さ
れてしまわないかが不安である。
混乱を生じさせる可能性があるなら、最高裁判決の事案に関する記載を削るということ
でよいと思う。
事例5について、形状に関して、アスファルト面を施工するなら、
「ある程度の変更を伴
うものの、道路としての形状は維持されており」とあるが、
「道路としての形状が維持され
ており」とは、どのような状態を指しているのだろうか。この部分は必要なのだろうか。道
路としての形状という言い方でよいのかというところに違和感を覚える。
形状の変更はあるけども、
著しくはないとすることで良いのではないか。
形状は確かに変
更されているが、
道路であることに変わりはないことから、
その変更の程度は著しくないと
することで良いのではないか。
道路としての構造は変わっていないことを示す趣旨であるから、変更はあるが著しくは
ないということでよいのではないか。
事例5において、
加工を施し付合させてということで民法第 242 条が言及されているが、
加工なのか付合なのかがよく分からない。
新しいものができあがったわけではなく、土地にアスファルトがくっついたので付合で
はないか。
ここで「加工」と用いられているのは、民法上の加工とは異なるものとして用いられてい
ると理解している。
後半において、
「付合」が記載されていないところがあったので、修正されたい。
また、
事例2において、
「地役権は他人の土地を自己の便益」
とあるが、
「自己の土地の便益」
と条文に則して修正いただきたい。
【ファイル3】
下水道の排水管を設置する場合には、各戸から下水道の導管を公共下水道に通すという
形は少なく、私道中に汚水枡を設置し、これに各戸から排水管をつなぎ、その枡から公共下
水道の下水管に流されていくという方式が一般のようである。
そのため、
現在の事例19及
び事例20の次に、このような汚水枡を設置するような事例を追加してはどうかと考えて
いる。
事例11について、持分に応じた使用ができるために掘削をすることができるというこ
とか。
使用できるという規定から、
直ちに同意を得る必要がないというところまでいかない
のではないかと思う。
保存行為というのは違和感があるため、
管理行為ではないという評価
が間に入るのではないか。
持分に応じた使用がどこまでなのかというところだと思うが、単に使用するという中に
は一定の期間の工事が入っているのだろうと思う。保存行為ではないと思う。
使用するということと、
他の共有者の同意が必要かというところは別なのではないか。どのように使うかは管理に関する事項ではないか。
とりあえずミニマムのところで行くのが良いと思う。それぞれの持分に従った使用の範
囲で私道の工事はできるとして、
他の人の使用に影響を与える場合には、
明示または黙示の
合意がない限り、
自己の持分を超える使用の対価を償還する必要が生じるなどはするが、そうでない場合には自分の管を埋設することは可能ではないかということを記載することで
良いと思う。
【ファイル4】
事例の検討の2つめと3つめの記載に
「従来通行できた」
という内容を入れておくのはど
うか。少なくとも、従来通行できた自動車や自転車が通行できなくなるという場合は、効用
を大きく変えるものであるいうことだけを書いて、従来は通行していなかった場合につい
ては特に言及しないという修正をするのが良いと思う。
事例31のゴミボックスのケースについて、どこかの家の前に設置されることもあり得
るが、
そうすると従来の私道の使用方法が変わることになるため、
このゴミボックスの新設
自体は管理に関する事項に該当するとしても、改正民法第252条第3項の特別の影響を
及ぼす可能性がある。しかし、同項は、いったん持分の過半数の決定があって使用している
人を対象としているため、最初に過半数の決定があったかどうかがこのケースで言えるか
が明確ではないようにも思われる。
改正民法第252条3項が適用されるのは、共有者間の決定に基づいて共有物を使用す
る場合なので、
共有者間の決定が先行して、
それで使用しているという状況が想定される。
しかし、
仮に共有者間の決定がなかったとしても、
ゴミボックスを目の前に置かれた土地の
所有者を保護する必要はあるようにも思われるので、特別の影響を及ぼすべき時にあたる
としたほうが良いのではないかと思うが、これが改正民法第252条第3項から導けるか
は難しいようにも思われる。
個人的には、
特別の影響を及ぼすべきような決定がない場合に、
いきなり個人の家の前に
ゴミボックスを設置するなどといった使用をするということは、そもそも多数決による管
理の範囲に馴染んでおらず、多数決でできる範囲を超えているのではないかと思う。
基本的には管理に該当するという整理でよく、いやがらせ目的なら権利濫用などの一般
条項で処理するということになるのではないか。
ゴミボックスの設置を共有物の変更と評価するのは難しいと思う。ゴミボックスを前に
設置された土地の所有者がかわいそうであれば、改正民法第252条第3項で解決するの
がよいのではないか。黙示的に共有者間の決定があると考えることもできると思う。
かわいそうだから変更にあたるとするのは難しいと思うが、使用方法について黙示的な
合意があると考えることは問題ないと思う。
実際に起きる紛争類型は、
出入りが困難になる場合ではなく、
目の前にゴミボックスが置
かれること自体が嫌だというものが想定されると思う。
現在の記述を、
そういうところで困
っている人が素直に読むと、
出入りで困難になるしか書いてないので、
ごみボックスを置か
れることが嫌だというのは特別の影響にあたらないと読まれる可能性があるように思う。
この事例とその解説部分の場面は、
やや発展した事例になっていて、
対象者が嫌がってい
ることを前提にした記述である。
そのため、
その人が反対しているときであることが分かり
やすくなるような記述とすべきである。
また、
事例32は木の伐採に関する事例であり、
私道上の木を切ること自体は変更だが、
軽微変更に該当するため、
過半数で決定することができるという解釈が記載されている。通行の妨げになっている場合なら、保存行為として全員が切れるということもあるのか。
通行の妨げというところを書くと前提が異なってくるように思う。通行の妨げというこ
となら保存行為である可能性も出てくる。
そのため、
通行の妨げにならない樹木の管理であ
ったり、樹種の変更をしたりなどのことについて示すことが望ましいと思う。
道路を中心にして考えた場合に、どういう樹木を植えるかというのは、広く言えば、街路
樹を植えるということ自体、道路の管理であって、その樹木は、1つ1つ見れば財物ではあ
るが、管理行為といってもいい話だろうと思う。逆にそのように解さなければ、例えば、落
ち葉の管理が大変だから木を切りたいというときに、それは変更であるということになっ
て、実際上の不都合が大きいと思う。
他方で、
樹木を伐採することは軽微変更であると一般的に言ってしまうと、
通路である以
上樹木は大事だという意見はあり得ないと逆に読めてしまうのではないか。
例えば、イチョウ並木がきれいなところで、そのイチョウを伐採するというのは、形状や
紅葉の著しい変更に該当するようにも思われるし、特に意図して植えたわけでもない木が
育ってしまったというときに、その木を切ることは軽微変更かなとも思われる。
伐採が変更に該当する場合もあると思われる。軽微な場合には過半数で切ることもでき
るが、そのようにいうことができない場合もあると思われる。
そうすると、
伐採することにより、
形状又は効用に著しい変更を伴うものではないと評価
できる場合には、などと記載するのが良いのではないか。
通行の妨げという記載があると、
保存行為との混同が生じるため、
これは削除した方が良
いと思われる。むしろ、樹木を伐採することが、形状又は効用に著しい変更を伴うものでは
ないと考えられる場合には、
軽微変更だから過半数でいいけれども、
そうでない場合には、
全員同意をすることもあるという記述にした方が良いと思われる。
また、樹種を特定しない記載としていただきたい。
末尾に付いている参考文献の項目は、改正民法ができたことで改訂されるものも多いと
考えられ、
それらを全て記載することは難しいと思われるので、
削除することでご了承を願
いたい。
以 上

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