民3法制審議会第194回会議配布資料
調停による和解合意に執行力を付与し
得る制度の創設等に関する要綱案
調停による和解合意に執行力を付与し得る制度の創設等
に関する要綱案
目 次5第1 新法の制定による整備....................................................... 1
1 定義 ...................................................................... 1
2 適用範囲 .................................................................. 1
3 適用除外 .................................................................. 1
4 国際和解合意の執行決定 .................................................... 2105 国際和解合意の執行拒否事由................................................. 3
6 その他 .................................................................... 4
第2 裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の改正による整備 ................. 4
1 定義 ...................................................................... 4
2 適用除外 .................................................................. 4153 特定和解の執行決定 ........................................................ 5
4 特定和解の執行拒否事由 .................................................... 6
5 その他 .................................................................... 7
第3 民事調停事件の管轄に関する規律の見直し..................................... 720 1
第1 新法の制定による整備
1 定義
(1) この法律において,「調停」とは,その名称や開始の原因となる事実の如
何にかかわらず,一定の法律関係(契約に基づくものであるかどうかを問わ
ない。)に関する民事又は商事の紛争の解決をしようとする紛争の当事者の5ため,
当事者に対して紛争の解決を強制する権限を有しない第三者が和解の
仲介を実施し,その解決を図る手続をいうものとする。
(2) この法律において,「調停人」とは,調停において和解の仲介を実施する
者をいうものとする。102 適用範囲
(1) この法律の規定は,調停において当事者間に成立した合意であって,合意
が成立した当時において次に掲げる事由のいずれかに該当するもの
(以下
「国
際和解合意」(仮称)という。)について適用するものとする。
ア 当事者の全部又は一部が互いに異なる国に住所又は事務所若しくは営業15所(当事者が二以上の事務所又は営業所を有する場合にあっては,合意が
成立した当時において,当事者が知っていたか,又は予見することのでき
た事情に照らして,合意によって解決された紛争と最も密接な関係がある
事務所又は営業所。イにおいて同じ。)を有するとき。
イ 当事者の全部又は一部が住所又は事務所若しくは営業所を有する国が,20合意に基づく債務の重要な部分の履行地又は合意の対象である事項と最も
密接な関係がある地が属する国と異なるとき。
ウ 当事者の全部又は一部が日本国外に住所又は主たる事務所若しくは営業
所を有するとき(当事者の全部又は一部の発行済株式(議決権のあるもの
に限る。)又は出資の総数又は総額の百分の五十を超える数又は額の株式25(議決権のあるものに限る。)又は持分を有する者その他これと同等のも
のとして別途定める者が日本国外に住所又は主たる事務所若しくは営業所
を有するときを含む。)。
(2) この法律の規定は,国際和解合意の当事者が,調停による国際的な和解合
意に関する国際連合条約(仮訳)(以下「条約」という。)又は条約の実施30に関する法令に基づき民事執行をすることができる旨の合意をした場合につ
いて適用するものとする。
3 適用除外
この法律の規定は,次に掲げる国際和解合意については,適用しないものと35 2
する。
(1) 民事上の契約又は取引のうち,その当事者の全部又は一部が消費者(消費
者契約法
(平成12年法律第61号)
第2条第1項に規定する消費者をいう。)であるものに関する紛争に係る国際和解合意
(2) 個別労働関係紛争(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成153年法律第112号)第1条に規定する個別労働関係紛争をいう。)に係る
国際和解合意
(3) 人事に関する紛争その他家庭に関する紛争に係る国際和解合意
(4) 日本若しくは外国の裁判所の認可を受け又は日本若しくは外国の裁判所の
手続において成立した国際和解合意であって,
その裁判所が属する国でこれ10に基づく強制執行をすることができるもの。
(5) 仲裁判断としての効力を有する国際和解合意であって,
これに基づく強制
執行をすることができるもの。
4 国際和解合意の執行決定15(1) 国際和解合意に基づいて民事執行をしようとする当事者((5)において「申
立人」
という。)は,債務者を被申立人として,
裁判所に対し,
執行決定(国際和解合意に基づく民事執行を許す旨の決定をいう。以下同じ。)を求める
申立てをしなければならないものとする。
(2) (1)の申立てをするときは,
次に掲げる書面を提出しなければならないもの20とする。
ア 国際和解合意の内容が記載された書面であって,当事者の署名があるも
の等当事者の同一性及び意思を確認することができるもの
イ 調停人又は調停機関が作成した調停が実施されたことを証明する書面そ
の他の国際和解合意が調停において成立したものであることを証明する書25面
(3) (2)の書面については,これに記載すべき事項を記録した電磁的記録(電子
的方式,
磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式
で作られる記録であって,
電子計算機による情報処理の用に供されるものを
いう。以下同じ。)に係る記録媒体の提出をもって,当該書面の提出に代え30ることができるものとする。
(4) (1)の申立てをするときは,
(2)の書面又は(3)の電磁的記録を出力した書面(日本語で作成されたものを除く。以下(4)において同じ。)の日本語による翻訳
文を提出しなければならないものとする。ただし,裁判所は,相当と認める
ときは,被申立人の意見を聴いて,当該書面又は当該電磁的記録の全部又は35 3
一部について日本語による翻訳文の提出を要しないものとすることができる
ものとする。
(5) (1)の申立てを受けた裁判所は,
他の裁判機関又は仲裁廷に対して当該国際
和解合意に関する他の申立てがあった場合において,
必要があると認めると
きは,(1)の申立てに係る手続を中止することができるものとする。この場合5において,裁判所は,申立人の申立てにより,被申立人に対し,担保を立て
るべきことを命ずることができるものとする。
(6) (1)の申立てに係る事件は,
次に掲げる裁判所の管轄に専属するものとする。
ア 当事者が合意により定めた地方裁判所
イ 当該事件の被申立人の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所10ウ 請求の目的又は差し押さえることができる被申立人の財産の所在地を管
轄する地方裁判所
エ 東京地方裁判所及び大阪地方裁判所
(被申立人の普通裁判籍の所在地又
は請求の目的若しくは差し押さえることができる被申立人の財産の所在地
が日本国内にある場合に限る。)15(7) (6)により二以上の裁判所が管轄権を有するときは,
先に申立てがあった裁
判所が管轄するものとする。
(8) 裁判所は,
(1)の申立てに係る事件の全部又は一部がその管轄に属しないと
認めるときは,申立てにより又は職権で,これを管轄裁判所に移送しなけれ
ばならないものとする。20(9) 裁判所は,(7)により管轄する事件について,相当と認めるときは,申立て
により又は職権で,
当該事件の全部又は一部を(7)により管轄権を有しないこ
ととされた裁判所に移送することができるものとする。
(10) (8)及び(9)による決定に対しては,
即時抗告をすることができるものとする。
(11) 裁判所は,後記5により(1)の申立てを却下する場合を除き,執行決定をし25なければならないものとする。
(12) 裁判所は,
口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日を
経なければ,(1)の申立てについての決定をすることができないものとする。
(13) (1)の申立てについての決定に対しては,
即時抗告をすることができるもの
とする。305 国際和解合意の執行拒否事由
裁判所は,前記4(1)の申立てがあった場合において,次に掲げる事由のいず
れかがあると認める場合((1)から(6)までに掲げる事由にあっては,被申立人が
当該事由の存在を証明した場合に限る。)に限り,当該申立てを却下すること35 4
ができるものとする。
(1) 国際和解合意が,当事者の行為能力の制限により,その効力を有しないこ
と。
(2) 国際和解合意が,
当事者が合意により国際和解合意に適用すべきものとし
て有効に指定した法令(当該指定がないときは,裁判所が国際和解合意につ5いて適用すべきものと判断する法令)によれば,当事者の行為能力の制限以
外の無効,取消しその他の事由により効力を有しないこと。
(3) 国際和解合意に基づく債務の内容を特定することができないこと。
(4) 国際和解合意に基づく債務の全部が履行その他の事由により消滅したこと。
(5) 調停人が,法令又は当事者間の合意(公の秩序に関しないものに限る。)10その他調停人又は調停手続に適用される準則に違反した場合であって,
その
違反する事実が重大であり,かつ,当該国際和解合意の成立に影響を及ぼす
ものであること。
(6) 調停人が,当事者に対し,自己の公正性又は独立性に疑いを生じさせるお
それのある事実を開示しなかった場合であって,当該事実が重大であり,か15つ,当該国際和解合意の成立に影響を及ぼすものであること。
(7) 国際和解合意の対象である事項が,日本の法令によれば,和解の対象とす
ることができない紛争に関するものであること。
(8) 国際和解合意に基づく民事執行が,
日本における公の秩序又は善良の風俗
に反すること。206 その他
その他所要の規定を整備するものとする。
第2 裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の改正による整備251 定義
裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律第2条に,
次のような規律を
設けるものとする。
特定和解(仮称) 認証紛争解決手続において紛争の当事者間に成立した和
解であって,
当該和解に基づいて民事執行をすることができる旨の合意がされ30たものをいうものとする。
2 適用除外
後記3は,次に掲げる特定和解については,適用しないものとする。
(1) 消費者(消費者契約法(平成十二年法律第六十一号)第二条第一項に規定35 5
する消費者をいう。)と事業者(同条第二項に規定する事業者をいう。)と
の間で締結される契約に関する紛争に係る特定和解
(2) 個別労働関係紛争(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成十
三年法律第百十二号)第一条に規定する個別労働関係紛争をいう。)に係る
特定和解5(3) 人事に関する紛争その他家庭に関する紛争に係る特定和解
(民事執行法(昭和五十四年法律第四号)
第百五十一条の二第一項各号に掲げる義務に係る金
銭債権に係るものを除く。)
(4) 前記第1の新法の適用対象となる特定和解103 特定和解の執行決定
(1) 特定和解に基づいて民事執行をしようとする当事者
((4)において
「申立人」
という。)は,債務者を被申立人として,裁判所に対し,執行決定(特定和
解に基づく民事執行を許す旨の決定をいう。以下同じ。)を求める申立てを
しなければならない。15(2) (1)の申立てをするときは,次に掲げる書面を提出しなければならない。
ア 特定和解の内容
(成立した和解の条項及び当該和解に基づいて民事執行
をすることができる旨の合意をいう。)が記載された書面であって,当事
者の署名があるもの等当事者の同一性及び意思を確認することができるもの20
イ 認証紛争解決事業者が作成した認証紛争解決手続が実施されたことを証
明する書面その他の特定和解が認証紛争解決手続において成立したもので
あることを証明する書面
(3) (2)の書面については,
これに記載すべき事項を記録した電磁的記録に係る
記録媒体の提出をもって,
当該書面の提出に代えることができるものとする。25(4) (1)の申立てを受けた裁判所は,
他の裁判所又は仲裁廷に対して当該特定和
解に関する他の申立てがあった場合において,必要があると認めるときは,
(1)の申立てに係る手続を中止することができるものとする。
この場合におい
て,裁判所は,申立人の申立てにより,被申立人に対し,担保を立てるべき
ことを命ずることができるものとする。30(5) (1)の申立てに係る事件は,
次に掲げる裁判所の管轄に専属するものとする。
ア 当事者が合意により定めた地方裁判所
イ 当該事件の被申立人の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所
ウ 請求の目的又は差し押さえることができる被申立人の財産の所在地を管
轄する地方裁判所35 6
(6) (5)により二以上の裁判所が管轄権を有するときは,
先に申立てがあった裁
判所が管轄するものとする。
(7) 裁判所は,
(1)の申立てに係る事件の全部又は一部がその管轄に属しないと
認めるときは,申立てにより又は職権で,これを管轄裁判所に移送しなけれ
ばならないものとする。5(8) 裁判所は,(6)により管轄する事件について,相当と認めるときは,申立て
により又は職権で,
当該事件の全部又は一部を(6)の規定により管轄権を有し
ないこととされた裁判所に移送することができるものとする。
(9) (7)及び(8)による決定に対しては,
即時抗告をすることができるものとする。
(10) 裁判所は,後記4により(1)の申立てを却下する場合を除き,執行決定をし10なければならないものとする。
(11) 裁判所は,
口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日を
経なければ,(1)の申立てについての決定をすることができないものとする。
(12) (1)の申立てについての決定に対しては,
即時抗告をすることができるもの
とする。154 特定和解の執行拒否事由
裁判所は,前記3(1)の申立てがあった場合において,次に掲げる事由のいず
れかがあると認める場合((1)から(5)までに掲げる事由にあっては,被申立人が
当該事由の存在を証明した場合に限る。)に限り,当該申立てを却下すること20ができる。
(1) 特定和解が,無効,取消しその他の事由により効力を有しないこと。
(2) 特定和解に基づく債務の内容を特定することができないこと。
(3) 特定和解に基づく債務の全部が履行その他の事由により消滅したこと。
(4) 認証紛争解決事業者又は手続実施者がこの法律若しくはこの法律に基づく25法務省令の規定又は認証紛争解決手続を実施する契約において定められた手
続の準則(公の秩序に関しないものに限る。)に違反した場合であって,そ
の違反する事実が重大であり,かつ,当該特定和解の成立に影響を及ぼすも
のであること。
(5) 手続実施者が,当事者に対し,自己の公正性又は独立性に疑いを生じさせ30るおそれのある事実を開示しなかった場合であって,
当該事実が重大であり,
かつ,当該特定和解の成立に影響を及ぼすものであること。
(6) 特定和解の内容が,
和解の対象とすることができない紛争に関するもので
あること。
(7) 特定和解に基づく民事執行が,公の秩序又は善良の風俗に反すること。35 7
5 その他
その他所要の規定を整備するものとする。
第3 民事調停事件の管轄に関する規律の見直し5知的財産の紛争に関する調停事件は,
民事調停法第3条に規定する裁判所の
ほか,同条の規定(管轄の合意に関する規定を除く。)により次の各号に掲げ
る裁判所が管轄権を有する場合には,
それぞれ当該各号に定める裁判所の管轄
とする。
1 東京高等裁判所,
名古屋高等裁判所,
仙台高等裁判所又は札幌高等裁判所の10管轄区域内に所在する簡易裁判所
東京地方裁判所
2 大阪高等裁判所,
広島高等裁判所,
福岡高等裁判所又は高松高等裁判所の管
轄区域内に所在する簡易裁判所
大阪地方裁判所15

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