1家族法制部会 資料3
養育費及び面会交流に関する論点の検討
第1 はじめに
前回会議において,本部会では,まず,養育費や面会交流の問題を念頭に
置きつつ(注1)
,協議離婚やその後の場面において生ずる問題等について
議論することとされた。また,委員からは,議論の前提として,現行制度の
理解やこれまでに行われた論点整理の結果等を委員間で共有する必要性が
指摘された。
本資料は,養育費(親子間の扶養義務一般の問題を含む。
)及び面会交流
のそれぞれに関し,議論の前提となる法的概念の整理(第2)
,父母間での
取決めの促進・確保(第3)
,父母間の取決めの内容の基準等に関する規律
(第4)
,養育費及び面会交流に関する裁判手続等(第5)の順に,
「養育費
不払い解消に向けた検討会議・取りまとめ」
(令和2年12月),「家族法研
究会報告書」
(令和3年2月)等の結果を参考に,法制審議会の調査・審議
の対象となる民事法制に関する論点を中心に整理したものである(注2)。(注1)養育費と面会交流の問題について,両者がいずれも子の成長にとって重要である
ことを指摘する意見がある一方で,例えば,父母の一方から他方に対し,養育費と面会
交流のいずれか一方がされていないことのみを理由に他方にも応じないといった両者
を結び付けた主張がされることがあること等を指摘し,両者が法的に別個の問題であ
ることを前提に検討を進めることが重要であることを指摘する意見もある。
(注2)父母の離婚後の子の養育のためには,民事法制の観点とともに,公的支援を含む
諸々の環境整備の観点が極めて重要であることはいうまでもない。
今回の議論は,
民事
基本法制に関するものになるが,その在り方をめぐっては,公的支援の整備・充実が前
提とならなければ民事基本法制の見直しが難しいと思われる点や,民事基本法制の見
直しを行うことが更なる公的支援の整備・充実を図る前提となるような点もあり,
その
ような関係から,民事基本法制以外の公的支援等に関する事柄についても適宜取り上
げられることになるものと考えられる。 2第2 養育費及び面会交流に関する法的概念の整理
1 現行規定
民法
(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
第766条 父母が協議上の離婚をするときは,
子の監護をすべき者,父又は母と子との面会及びその他の交流,子の監護に要する費用の分担
その他の子の監護について必要な事項は,
その協議で定める。
この場合
においては,子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
2 前項の協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,
家庭裁判所が,同項の事項を定める。
3・4 (略)
(協議上の離婚の規定の準用)
第771条 第766条から第769条までの規定は,裁判上の離婚に
ついて準用する。
(扶養義務者)
第877条 直系血族及び兄弟姉妹は,互いに扶養をする義務がある。
2・3 (略)
現行民法において,
養育費及び面会交流については,
民法第766条に規
定されている。このうち「父又は母と子との面会及びその他の交流」
(面会
交流),「子の監護に要する費用の分担」
(養育費)との文言は,平成23年
の民法等改正において,離婚時における養育費や面会交流の取決めを促進
することを目的に,
「子の監護について必要な事項」の例示として初めて明
示されるに至ったものである。
また,
養育費の負担の前提となる親子間の扶養義務については,
親子間一
般について民法第877条第1項に規定があるが(注1)
,親の未成熟子に
対する扶養義務についての特別な規定は設けられていない。
これらの規定を前提に,
以下,子に対する扶養義務・養育費及び面会交流
の法的概念について検討する(注2)。(注1)一般的に,扶養の方法としては,1金銭扶養(経済的負担)
,2現物扶養(住居
の提供等)
,3同居しての扶養(1及び2を伴う。
)が考えられるが,父母の離婚後の未
成熟子との扶養との関係では,例えば,監護親による3の扶養を前提に,非監護親によ
る1の扶養(養育費)の問題として現れることとなる。 3(注2)その他,我が国も批准している「児童の権利に関する条約」では,
「児童は...で
きる限り...その父母によって養育される権利を有する。」(第7条第1項後段)
などとさ
れている。
2 子の扶養義務・養育費
(1) 現行法の理解
ア 親の子に対する扶養義務
上述のとおり,民法は,親子間の相互の扶養義務について,民法第8
77条第1項に定めているが,
一般的に,
親の未成熟子に対する扶養義
務は,きょうだい間といった他の親族間の扶養義務よりも重いもので
あるといわれている(注)
。すなわち,他の親族間の扶養義務は,自分
の生活に余裕がある場合に余剰分で扶養する義務
(生活扶助義務)
であ
るのに対し,
親の未成熟子に対する扶養義務は,
自分自身の生活が苦し
い場合であっても,
自分と同程度の水準の生活を送らせる義務
(生活保
持義務)であると理解されている。
しかしながら,
このような親の未成熟子に対する「重い扶養義務」に
ついては,
民法第877条第1項の規定上は明確でなく,
他に明文の根
拠はない。また,学説上も,その根拠について定まった見解はない。
(注)
「未成熟子」という概念については,必ずしも一定の見解が定まっているわけでは
ないが,
成年年齢に達した後であっても,
大学生等の経済的に自立することができない
者については「未成熟子」と扱い得るとの考え方が比較的多いと思われる。
もっとも,この点については,子が成年に達した以上,もはや親は「重い扶養義務」
を負っていないと考えるべきであるとの考え方もある。
イ 養育費
我が国の法律では,
「養育費」という語は用いられておらず,養育費
の負担の根拠とされているのは,
民法第766条第1項における
「子の
監護に要する費用の分担」である。つまり,養育費とは,父母がいずれ
も未成熟子に対する重い扶養義務を負っていることを前提に,その義
務を離婚後の父母間で公平に分担するための事前・事後の清算を本質
とするものであることから,
養育費請求権は,
離婚をした父母間に発生
する権利である(注1,2)。このように父母間の権利とされているものの,
一般的に,
養育費請求
権は子の生活・成長のために極めて重要なものだと考えられているが, 4民法に,
養育費や,
その義務を果たすことが重要であること等を示す条
文はない。また,養育費については,民事執行法において権利者に種々
の有利な扱いがされているが,
これは,
民法第752条の規定による夫
婦間の協力及び扶助の義務,民法第760条の規定による婚姻から生
ずる費用の分担の義務及び民法第877条から第880条までの規定
による親族間の扶養義務と同程度のものであり,養育費請求権につい
てこれらより有利な扱いをするものではない(注3)。なお,
未成熟子は親に対して扶養請求権を持つが,実務上,未成熟子
自らが同請求権を行使することは少ないようであり,離婚後の子の生
活等に要する費用分担の問題は,父母間の養育費の負担の問題として
取り上げられることが多いといわれている。
(注1)婚姻中だが別居している父母間における子の監護に要する費用については,婚姻
費用の分担の問題として現れる(民法第760条)。(注2)後記第3.1(1)のとおり,養育費に関する法律関係は,協議,調停,審判等で取
決めがされるまでは,抽象的な状態にとどまる。
(注3)以下の民事執行法第151条の2や,同法第152条(差押禁止債権)
,第20
6条(債務者の給与債権に係る情報の取得)が挙げられる。
しろまる民事執行法(昭和54年法律第4号)
(扶養義務等に係る定期金債権を請求する場合の特例)
第151条の2 債権者が次に掲げる義務に係る確定期限の定めのある定期金債権を
有する場合において,
その一部に不履行があるときは,
第三十条第一項の規定にかか
わらず,
当該定期金債権のうち確定期限が到来していないものについても,
債権執行
を開始することができる。
一 民法第752条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
二 民法第760条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
三 民法第766条
(同法第749条,
第771条及び第788条において準用する
場合を含む。
)の規定による子の監護に関する義務
四 民法第877条から第880条までの規定による扶養の義務
2 (略)
(2) 課題
子の扶養義務及び養育費に関する規律については,
例えば,
以下のよう
な意見があるが,どのように考えるか。また,その他に検討すべき課題は 5あるか。
1 未成熟子に対する扶養については,子を権利者とする子の扶養請求
権を中心に据えた上で,離婚後の父又は母を権利者とする養育費請求
権の位置付けを含めて,法的概念や権利義務関係を再検討・再構築し
てはどうか(注1)。2 「未成熟」という概念を整理した上で(注2)
,親が未成熟子に対して「重い扶養義務」
を負っていることを,
民法において明らかにしては
どうか。
3 未成熟子の扶養請求権や,
養育費請求権は,
子の健やかな成長等を図
るための極めて重要な権利であることを民法上明らかにし,民事手続
法等において特に有利な取扱いをすることを実体的に基礎付けること
としてはどうか。
(注1)仮にこのような方向で検討を進め,例えば,扶養請求権に一本化するような場合
には,現在,監護親が自らの権利として養育費請求権を行使している事象が,監護親が
未成熟子の扶養請求権を代理行使しているものと捉えられることとなる。
(注2)
「未成熟」概念を検討するに当たって,成年に達した後も「未成熟」であるとい
うことを認めることとすると,様々な事情で成人後に就労することができない子がい
る場合に,親の子に対する扶養の範囲をどこで画するかといった問題が生ずる。
3 面会交流
(1) 現行法の理解
面会交流とは,
民法第766条第1項にいう
「父又は母と子との面会及
びその他の交流」のことを意味するものであるが,この「交流」には,面
会をすることのほかにも,
宿泊,
旅行,
テレビ電話,
電話,
手紙,
メール,
写真の交換等さまざまなものがある。
このような面会交流が子の利益を最も優先してされるべきものである
ことは,
民法第766条第1項後段の規定からも明らかである。
現行法上,
父母間の協議や調停,
審判等によって面会交流の内容(特定の給付)が具
体的に取り決められた場合には,非監護親から監護親に対する請求権と
なるが(注1)
,これらがない段階では,権利義務の主体はもとより,面
会交流に関して何らかの権利性があるのかという点についても,議論が
分かれている(注2)。この点については,
平成23年の民法等改正においても,
面会交流の法
的性質について議論されたものの,
議論が分かれていることを理由に,明 6
文化は見送られた経緯がある。
また,民法第766条第1項は父母間ないし親子間の法律関係に関す
る規律であることから,
祖父母等,
父母以外の第三者と子との間の面会交
流に関する取扱いについては議論が分かれている状況であったが,近時,
最高裁第一小法廷令和3年3月29日決定
(注3)は,
第三者の申立てを
認める法令上の根拠がないことを理由に,
「父母以外の第三者は,事実上
子を監護してきた者であっても,
家庭裁判所に対し,
子の監護に関する処
分として上記第三者と子との面会交流について定める審判を申し立てる
ことはできない」と判示した。
(注1)
最高裁第一小法廷平成25年3月28日決定
(民集67巻3号864頁)は,「監
護親に対し,非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審
判は,少なくとも,監護親が,引渡場所において非監護親に対して子を引き渡し,非監
護親と子との面会交流の間,
これを妨害しないなどの給付を内容とするものが一般」であるとする。
(注2)児童の権利条約第9条第3項が「締約国は,児童の最善の利益に反する場合を除
くほか,父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人
的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する。
」と規定していることから,子を
主体とする権利があることは明らかであるとの指摘もある。
(注3)公刊物未掲載。以下の最高裁HP参照。
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=90216
(2) 課題
面会交流に関する規律については,例えば,以下のような意見がある
が,どのように考えるか。また,その他に検討すべき課題はあるか。
1 面会交流が子の利益のためにされるべきことを前提として,面会交
流の法的性質を明示する規律を設けてはどうか(注)。2 祖父母等の親族等を念頭に,子との面会交流を求めることができる
主体の範囲に関する規律を設けてはどうか。
(注)本資料では,民法で規定する「父又は母と子との面会及びその他の交流」について
「面会交流」の略語を用いているが,これについて「親子面会交流」といった他の語に
置き換えるべきでないかとの指摘もある。
なお,
「面会交流」という用語は民法で規定されてはいないが,国際的な子の奪取の 7民事上の側面に関する条約の実施に関する法律において,
「日本国面会交流援助」,「外
国面会交流援助」との語が用いられている。
第3 養育費及び面会交流に関する父母間での取決めの促進・確保
1 現行法における取決め
民法では,養育費(注)及び面会交流それぞれについて,まず,父母間の
協議ないし調停,
審判等による取決めがされ,
その取決めに従って履行され
る(不履行の場合には,
強制執行等の手段が執られる)ことが想定されてい
る。
養育費や面会交流について取決めをすることの法的な意味は,以下のと
おりと解されている。
(注)上記第2.2(2)1において,
「養育費」を「未成熟子の扶養」の問題として捉え直
すことを検討することが課題として掲げられているが,仮にその方向で検討が進めら
れることとなった場合には,以下の第3から第5までにおける「養育費」に関する議論は,「未成熟子の扶養」に関するものと置き換えて考えることができる。
(1) 養育費
親が未成熟子に対して負っている「重い扶養義務」は,自分自身の生活
が苦しい場合であっても自分と同程度の水準の生活を送らせる義務(生
活保持義務)
であることからすると,
離婚後の非監護親がその経済事情等
から子の扶養義務を負わないとされる場合は,相当限定的なはずである
(注1)
。もっとも,親に扶養義務があると考えられる場合であっても,
現行法の下では,子の扶養請求権や,監護親の養育費請求権は,取決めに
よってその内容が具体化するまでは,権利としては発生しているものの,
抽象的な権利にとどまると理解されている。
そして,
抽象的な権利にとどまる限りは,
具体的な金額が定まっていな
いために,
義務者が支払をしなくても遅延損害金が生じることはない。また,扶養料及び養育費について父母間等で取決めをすることができない
場合には,
最終的には家事審判手続で権利を具体化する必要があるが,この場合に,
現在の裁判実務では,
養育費の請求時以降に発生した養育費等
しか支払が命じられないことが多いとの指摘もあり,抽象的な権利の状
態にとどまっている場合には,後で遡って請求することができなくなる
おそれがある。
これに対し,
取決めによって具体的な権利となっていれば,
義務者が支
払を怠れば,
遅延損害金が発生するし,
後で不履行分の支払を求めること 8もできるものと考えられる。
ただし,
この場合に単に取決めがあるだけでは,
不払いがあったとしても,直ちに強制執行を申し立てることができず,
民事執行手続によって回
収するためには,執行認諾文言付きの公正証書や,家事調停調書,家事審
判書等の債務名義が必要となる(注2)。以上をまとめると,以下の表のとおりである。
抽象的な権利 具体的な権利
(債務名義なし)
具体的な権利
(債務名義あり)
遅延損害金 ×ばつ しろまる しろまる×ばつ しろまる しろまる
強制執行 ×ばつ ×ばつ しろまる
(注1)親が扶養義務を負わない場面は相当限定的であるが,例えば,1養育費の権利者
の再婚に伴ってその配偶者と子が養子縁組をした場合や,
反対に,
2義務者が再婚して
再婚相手との間に新たに子をもうけた場合における具体的な扶養の程度等については,
別途検討の必要性が指摘されている。
(注2)扶養料及び養育費に関し,権利者が債務名義を取得することをどのようにして確
保するかは,
今回の検討において重要な論点の一つとなると考えられる。
現行の債務名
義については,民事執行法第22条に規定されている。
しろまる 民事執行法(昭和54年法律第4号)
(債務名義)
第22条 強制執行は,次に掲げるもの(以下「債務名義」という。
)により行う。
一 確定判決
二 仮執行の宣言を付した判決
三 抗告によらなければ不服を申し立てることができない裁判(確定しなければそ
の効力を生じない裁判にあっては,確定したものに限る。)三の二 仮執行の宣言を付した損害賠償命令
三の三 仮執行の宣言を付した届出債権支払命令
四 仮執行の宣言を付した支払督促
四の二 (略)
五 金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給
付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で,債務者が直ちに強制
執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。) 9
六 確定した執行判決のある外国裁判所の判決
(家事事件における裁判を含む。
第二
十四条において同じ。
六の二 確定した執行決定のある仲裁判断
七 確定判決と同一の効力を有するもの(第三号に掲げる裁判を除く。)(2) 面会交流
面会交流については,
上記第1.3(1)のとおり,民法第766条第1項
に基づく父母間の取決めがされていない場合には,その段階での法的性
質や権利性が明らかではなく,具体的に特定の給付の取決めがあること
によって初めて,非監護親に請求権が認められることになる。
なお,
前回会議におけるヒアリングでは,
未成年期に父母の離婚を経験
した子の立場などから,
子が就学しているような状況を念頭に,
面会交流
の実施条件については細かな取決めがされていない方がよいとの指摘も
あったところであるが,
面会交流に関する取決めは,
父母間に権利義務関
係を生じさせるのみであり,子に対して直接的に何らかの法的な義務を
課すものでないことは当然である。
その上で,
具体的な面会交流の取決めの内容は,父母間の関係や,非監
護親と子との関係,子の年齢等によって大きく異なるものと考えられるが,家事審判によって面会交流が命じられるなど,
面会交流の実施が子の
利益に適うと認められる場合には,監護親は面会交流の実施に協力する
義務を負うこととされている。
そして,面会交流の内容として一定の具体的な特定がされている場合
には,
非監護親において,これを債務名義とした強制執行手続(ただし,
間接強制のみ。後記第5.2(2)参照。
)が可能とされている(注)。(注)面会交流については,審判書,調停調書等の債務名義に該当し得る文書があったと
しても,
監護親がすべきことが具体的に特定されていなければ,
強制執行することがで
きないと解されている。
しろまる最高裁第一小法廷平成25年3月28日決定(民集第67巻3号864頁)
「監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる
審判において,面会交流の日時又は頻度,各回の面会交流時間の長さ,子の引渡しの方
法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがない
といえる場合は,上記審判に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができると
解するのが相当である。」 10
(3) 取決めの実情
平成28年度に実施された
「全国ひとり親世帯等調査」
の結果によれば
(注)
,ひとり親世帯について,養育費及び面会交流の取決めをしている
割合は,それぞれ以下のとおりであり,半分にも及んでいない(なお,以
下の【 】内は,同調査において,現に履行されていると回答した割合で
ある。)。
(養育費)
母子世帯 42.9% 【24.3%】
父子世帯 20.8% 【 3.2%】
(面会交流)
母子世帯 24.1% 【29.8%】
父子世帯 27.3% 【45.5%】
特に,
養育費及び面会交流のいずれについても,
協議離婚によってひと
り親世帯となった場合には,
裁判手続による離婚の場合と比較して,
取決
めをしている割合が低くなっていることが指摘されている。
その理由としては,我が国の離婚の約9割を占める協議離婚の中には,
DVや虐待の問題があって夫婦間の協議がおよそ困難な場合があると考
えられるほか,当事者の合意及び届出のみで離婚をすることができると
いう協議離婚の特質上,公的機関からの十分な情報提供や専門家による
支援を受ける機会がないため,取決めの重要性や取決め方法等について
十分に認識しないままで離婚に至っている事例もあると考えられる。
なお,
養育費と面会交流の問題について,
両者は法律的に別問題であり,
一方の履行があった場合にそれが故に他方の履行を強制されるような関
係にはないことを確認すべきであるとの指摘がされている。
また,
同調査では,取決めをしていない理由としては,養育費及び面会
交流のいずれについても
「相手と関わりたくない」
というものが最も多く
なっており,離婚に至る夫婦間の心理的抵抗や葛藤があることがうかが
われるが,子のための取決めの重要性に鑑みると,父母間の取決めを促
進・確保する何らかの施策が必要になるものとも考えられる。なお,父母
間の取決め等を適切に行うためには,
安全・安心への懸念等を解消する必
要があり,
DV・児童虐待といった家庭の問題への対応を含め,総合的対
応を図るべきとの指摘がされている。
(注)このほか,法務省では,未成年時に親の別居・離婚を経験した子に対する調査(本 11部会参考資料1-3参照)
,協議離婚に関する実態調査(同2-1参照)等を実施して
いるが,現時点で,各調査結果相互の関係性等について分析中であることから,本資料
では,従前から言及されることの多い「全国ひとり親世帯等調査」の結果を記載してい
る。
2 課題
この点の規律については,例えば,以下のような意見があるが,どのよう
に考えるか。また,その他に検討すべき課題はあるか(注1)。1 離婚を検討している父母を対象に,公的機関が離婚後の子育てに関す
る法的知識等についての講座・ガイダンス(養育ガイダンス)を実施する
こととし,その受講を確保・促進する方策を講じてはどうか。
2 協議離婚制度の在り方を見直し,
例えば,
ア父母がした取決めを離婚時
に公的機関に自発的に届け出る制度を設けること,イ離婚時に一定の事
項を取り決めることを原則として義務付けること
(努力義務を含む。)(注2),ウ協議離婚の原則的要件とすることなど,離婚後の子の監護につい
て必要な事項の取決めを離婚時に確保・促進する方策を講じてはどうか。
ただし,
この方向性については,
協議離婚をすることのハードルが上が
るとすると,
DV事案等において支配・被支配関係から逃れることが難し
くなるおそれがあることや,離婚時期が遅れることで児童扶養手当等の
ひとり親支援の開始も遅くなるおそれがあること等に十分に配慮した検
討を行う必要がある。
3 離婚前に父母間の協議を期待することが難しい場合があることを踏まえ,定型性の高い養育費については,
離婚時に取決めがされていない場合
にも,
最低限度の養育費請求権が離婚時から自動的・暫定的に具体化する
規律等を設けてはどうか。
4 上記2の父母の離婚時の取決めに基づく権利や,上記3の自動的に具
体化する権利については,
裁判手続等を要せず,
取決めを記載した文書等
を債務名義として直ちに強制執行をすることができることとしてはどう
か。
(注1)ここに掲げたものは,いずれも民事法制の見直しを念頭に置いたものである。こ
の見直しの検討に当たっては,協議離婚前後の場面において関連する行政上の措置や
公的支援の整備等が併せて問題になり得ると考えられる。
(注2)ただし書以下の指摘を考慮すると,仮に,原則として義務付けることとする場合
であっても,
例えば,
父母の双方又は一方が取決めをすることをできない事情があるこ 12とを申し出た場合を例外とするなど,緩やかな例外を設けることなども考えられる。
第4 養育費及び面会交流に関する取決めの内容に関する規律
1 養育費の取決めの内容に関する規律
(1) 現状
養育費の取決めについて,法令上,その金額の算定方法や,算定に当た
っての考慮要素に関する規定は置かれていない。
実務上は,
令和元年12
月「養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究」
(司法研究)で示された「改定標準算定方式」を用いて算定されるのが一般である。もっとも,
同方式(及びこれに基づく「養育費算定表」
)による算定は,金額に幅が
あり特定額で算定することができるわけではないし,
また,
あくまで目安で,法令上の位置付けはなく,
当事者や裁判所を何ら拘束するものではな
い。
このように,
養育費に関して法令に基づく明確な基準がないために,
当事者において,
養育費の金額等の具体的条件について合理性・相当性を
判断しかねることが取決めを躊躇する原因となり得るとの指摘もある。
(2) 課題
この点の規律については,例えば,以下のような意見があるが,どのよ
うに考えるか。また,その他に検討すべき課題はあるか。
養育費について,
父母が取決めの際の基準を明確化するために,
養育費
に関する算定方式や,考慮要素を法定してはどうか。
2 面会交流の取決めの内容に関する規律
(1) 現状
民法第766条第1項は,面会交流に関する取決めについて,
「子の利
益を最も優先して考慮しなければならない。
」と規定しているが,具体的
な基準は示していない。
実務的には,別居親と子の関係,子の意向や生活
への影響等様々な事情を総合考慮して,子の利益の観点から決定されて
いると考えられるが,家庭裁判所の判断基準が明確でないとの指摘があ
る。
また,
父母間の取決め等による面会交流の実務について,不十分な交
流内容が
「相場」
となっているとの指摘がある一方で,面会交流が子の利
益にならない場合にも取決め等に基づく面会交流が実施されている場合
があるとの指摘もされている。
(2) 課題
この点の規律については,例えば,以下のような意見があるが,どのよ 13うに考えるか。また,その他に検討すべき課題はあるか。
面会交流の取決めに関し,その内容(実施の有無,方法,頻度等)に関
する考慮要素や基準等について法定してはどうか。
第5 養育費及び面会交流に関する裁判手続等
1 債務名義の取得段階(家事調停手続及び家事審判手続)
養育費及び面会交流のいずれについても,そもそも父母間に取決めがな
い場合や,
取決めはしているが債務名義がない場合において,
相手が協議に
応じないときは,
債務名義を得るために,
家事調停手続や家事審判手続等の
裁判手続を経る必要がある(注)。裁判所の子の監護に関する処分事件等については,ひとり親にとって手
続面の負担が大きいとの声もあり,裁判手続(家事調停・審判等)につき,
その審理をより迅速化するための制度的方策や,ひとり親の裁判遂行の負
担軽減を図るための制度的課題について検討を進めるべきとの指摘や,養
育費に関する強制執行手続において,ひとり親が自ら権利行使することが
より一層容易となるよう,手続的負担を軽減する見直しを検討すべきとの
指摘がされている。
(注)現在,法制審議会仲裁法制部会では,裁判所外で行われる調停(民間ADR手続)
により成立した和解合意について,裁判所における執行手続を経ることによって民事
執行を可能とすることの是非に関する検討が行われている。
このうち,
家事紛争に係る
和解合意の取扱いについては議論があるところであるが,仮にこのような方向性の見
直しが行われることとなった場合には,債務名義を取得するための選択肢の一つとな
り得る。
(1) 家事審判の申立て
ア 現状
家事調停手続等の家事事件の手続を進めるためには,家庭裁判所に
おいて,
相手方に申立書を送付する必要があるが,
相手方が申立書を受
け取らないような場合には,
送達手続を経ることになる。
そのような場
合には,基本的に,申立人において,相手方の住所,居所,営業所若し
くは事務所,
又は就業場所を把握・特定した上で申立書に記載する必要
がある(注)。もっとも,
別居後の時間が経っているような場合には,
申立人において,相手方の住所等を把握していないことも少なくない。
相手方の本籍
地がわかれば,戸籍の附票によって相手方の住民票上の住所地を知る 14ことができるが,
手続的に煩瑣な面もあり,
申立人にとっては必ずしも
容易とはいえないとの指摘がある。
また,
養育費については,
相手方の住民票上の住所地を把握した場合
でも,
相手方がそこに居住等していなければ,
最終的に公示送達手続に
よって手続を進めることが考えられる。
もっとも,
公示送達をする場合
には,
「当事者の住所,居所その他送達をすべき場所が知れない場合」
(家事事件手続法第36条,
民事訴訟法第110条第1項第1号)
であ
ることを立証するために,実務上,申立人において,実際に住民票上の
住所地の状況を調査し,
表札や水道メーターの確認,
近隣からの聞き取
り等によって,
相手方が居住していないことを確認する必要があり,当該場所が遠方である場合等には,申立人には著しい負担になるとの指
摘がある。
(注)
家事事件手続法第1条第1項第1号は,
申立書には相手方の氏名及び住所を記載
することを求めているが,
同号との関係では,
過去のある時点の住所を記載すること
等によって相手方を特定すれば足りる。
イ 課題
この点の規律については,例えば,以下のような意見があるが,どの
ように考えるか。また,その他に検討すべき課題はあるか(注)。1 子の監護に関する家庭裁判所の手続では,
家庭裁判所が,
直接又は
間接に住民基本台帳ネットワークを活用して相手方の住所地を探知
することとして,
申立人は,
相手方の過去の一定時点における住所地
のみ特定すれば足りることとしてはどうか。
この場合には,
家庭裁判所が把握した住所地につき,
当事者は閲覧
することができないこととしてはどうか。
2 養育費に関する裁判所の手続では,
一定の要件の下で,
公示送達の
ために,申立人による現地調査を要しないような規律を設けてはど
うか。
(注)これらの課題は,民事執行手続の申立て一般にも影響し得るものであるが,養育費
等に限った手続上の特則として認めるのが相当ではないかとの意見がある。
また,特に2については,仮にこのような方向性で検討するとしても,債務名義を作
成する段階では相手方の手続保障の重要性がより高いとして,民事執行手続の場面に
限定した規律とすべきではないかとの意見もある。 15(2) 養育費に関する審理手続
ア 現状
「改定標準算定方式」は,養育費の権利者,義務者双方の収入に基づき,具体的な養育費額を算定する仕組となっていることから,
義務者が
その収入の資料を提出しない場合には,
権利者において,
義務者の収入
に関する資料が必要となる場合が生ずる。
もっとも,
権利者において,
他人の収入に関する資料を取得するのは容易ではない上に,
例えば,裁判所の家事事件手続において,義務者の居住地の自治体や就労先に対
して調査嘱託等を行っても,個人情報保護や守秘義務を理由に応じな
い例もあると指摘されている。義務者の収入に関する資料がない場合
には,
義務者が給与所得者であれば,
いわゆる賃金センサスを用いて義
務者の収入を認定されることもあるが,実際よりも低い収入額になっ
ているとの指摘もある。
また,
義務者が自営業者である場合や,
近しい親族が経営する企業に
勤務している場合には,
仮に,
課税額等に関する資料を入手することが
できたとしても,実態の収入状況とは異なることが少なくないとの指
摘もされている。
イ 課題
この点の規律については,
例えば,以下のような意見があるが,どの
ように考えるか。また,その他に検討すべき課題はあるか。
1 子の監護に関する家庭裁判所の手続において,調査嘱託等を受け
た場合には,
それに対する応諾義務が生じ,それは,他の法令に基づ
く守秘義務や,個人情報保護の観点から拒むことができないもので
あることを明示してはどうか。
2 養育費の算定の場面で,自営業者等の収入を適切に認定するため
の規律を設けることとしてはどうか(注)。(注)仮にこのような方向性で検討を進める場合には,このような規律は,事実の認定に
関する手続的な規律として設ける方向性だけではなく,義務者が自営業者等である場
合の養育費額の算定に関する実体的な規律として設けることも考えられる。
(3) 面会交流に関する審理手続
ア 現状
面会交流の調停手続,審判手続等において,面会交流の実施の可否や,その内容が問題となる事案では,
実際に別居親と子との間で交流を 16させた上で,子の利益に最も適う交流の在り方を決めるべき場合もあ
る。
家庭裁判所の実務では,
裁判所内で試行的に別居親と子とを交流を
させた上で,
その交流状況を観察して,
判断の資料にすることもあるが,
制度的な裏付けがないために監護親の協力がなければそもそも実施す
ることができないし,
また,
多くの場合には1回的な交流を観察するの
みである。
そこで,
当事者による試行の状況を継続的に把握するとともに,
監護
親が必ずしも協力的ではない場合にも,試行的な交流を実現すること
ができる制度の必要性を指摘する意見もある。
イ 課題
この点の規律については,例えば,以下のような意見があるが,どの
ように考えるか。また,その他に検討すべき課題はあるか。
面会交流に関する調停事件や審判事件において,
必要性があり,
かつ
適当な場合には,
家庭裁判所が,
当事者の協議又は家庭裁判所の命令に
より暫定的な面会交流を実施させ,
審判等において,
その結果を考慮す
ることができることとする制度を設けてはどうか。
2 債務名義のある権利の実現の段階(民事執行手続等)
(1) 養育費の回収
ア 現状
権利者が債務名義を有している場合に,養育費の不払いがあったと
きには,強制執行を申し立てることができる。
もっとも,
強制執行の手続を行うためには,
義務者の財産を特定して
申し立てる必要があるが,
その特定は必ずしも容易ではない。
この場合
には,民事執行法に定められている財産開示手続や第三者からの情報
取得手続を用いることとなるが,法律の専門家ではない権利者が自ら
申し立てるのは容易ではないとの指摘がある。
また,
このうち,
債務者の預貯金等債権に関する情報の取得については,金融機関ごとに行う必要があり,
義務者が口座を開設している金融
機関に心当たりがない場合,権利者は複数の金融機関に申し当てる必
要があるが,金融機関が増えるごとに申立て時に予納しなければなら
ない費用が増えることから,厳しい経済状況にあるひとり親は申立て
を躊躇せざるを得ないとの指摘がある。
さらに,これらの手続によって義務者の財産が特定された場合であ
っても,
それらに対して強制執行を行うためには,
改めて個々の財産に 17対して強制執行の申立てを要することとなるが,ひとり親にとって何
度も申立てを要する負担が大きいとの指摘がある。
これらの民事執行手続上の方策のほか,養育費の取決めの実効性を
高める観点からは,家事事件手続法の定める履行勧告と履行命令の制
度がある。家庭裁判所の履行勧告は,相当数の利用があり,履行率を確
保する効果を上げているといわれる。他方,履行命令は,あまり利用さ
れていないが,
その理由として,申立てのための負担や,命令違反の場
合の制裁(10万円以下の過料)の弱さ等を指摘する声もある。
イ 課題
この点の規律については,例えば,以下のような意見があるが,どの
ように考えるか。また,その他に検討すべき課題はあるか(注1)。1 民事執行手続における第三者からの情報取得手続について,養育
費に関するものに限っては,権利者による簡易な1回の申立てによ
って,義務者の給与債権や所有不動産に係る情報及びマイナンバー
と紐付けられた全ての預貯金債権等に係る情報を,法律で定める方
法により一括で把握・取得することができることとしてはどうか。
2 養育費に関する民事執行手続においては,
特例的に,
上記1の手続
によって把握した義務者の債権等について,権利者の手続的負担を
軽減した方法による差押えをすることができることとしてはどうか
(注2)。3 民事執行手続よりも簡易な手段である家庭裁判所の履行勧告制度や,履行命令制度について,
履行命令の口頭申立てを可能にしたり,
過料の金額を引き上げたりするなど,より利便性の高いものとして
はどうか(注3)。(注1)養育費については,諸外国の例を参考として,公的機関による立替払いや,公的
機関による強制徴収の制度を導入してはどうかとの指摘がされており,
法務省・厚生労
働省
「不払い養育費の確保のための支援に関するタスクフォース」
で制度面を中心とし
た論点整理を行って公表している。これらの制度的課題は民事基本法制の枠を超える
ものではあるが,
仮にこれらの制度を導入する場合でも,
公的機関が強制執行の方法を
用いて取立てをすることも考えられることから,強制執行手続の利便性を向上させる
方策は,これらの制度の検討とも関連性が強いものといえる。
(注2)仮にこのような方向性で検討を進める場合であっても,判明した義務者の財産の
うちいずれを差し押さえるかという点について明確な基準を設けることが不可避であ 18るから,
例えば,
執行裁判所が適当な財産を裁量で選択して差押えをするといった制度
は考えられない。したがって,差押えの範囲・順位についての明確な規律を設ける必要
があるが,例えば,1判明した財産の一覧表を提示して権利者に選択させる方法,2財
産の種別ごとに順位を定め,同一順位の財産の間では第三債務者の名称の五十音順に
する(預貯金債権の場合)等の明確な基準を設け,それに従って差押えをする方法,3
判明した財産については一括で全て差押えをする方法等が考えられる。
(注3)このほか,養育費の不払いについては,それが悪質な場合,不利益や制裁(免許
証・パスポートの発給停止等)を課す制度を導入してはどうかとの意見や,裁判所から
の一定の命令に従わないことを罪とする制度
(外国における裁判所侮辱罪)
について検
討の余地があるとの意見などもある。
(2) 面会交流の実施
ア 現状
取り決められた面会交流について履行がされない場合に,
「面会交流
の日時又は頻度,
各回の面会交流時間の長さ,
子の引渡しの方法等が具
体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところ
がない」
ときには,
間接強制
(注)
をすることができるとされている(第3.1(3)「
(注)
」参照)
。もっとも,間接強制をしたとしても,実際に
面会交流が実現しないことがあり,面会交流については直接強制の方
法は認められないと解されていることから,実効性に欠けるとの指摘
がある。
また,
子の利益のためには,安全・安心な面会交流を実現する必要が
あるところ,父母間に高い葛藤がある場合には,安全・安心な面会交流
のためには,専門の第三者機関による十分な支援が必要であるとの指
摘がされているが,
現行法では,
民間の面会交流支援機関について制度
上の位置付けがされていない。
なお,
面会交流について取決めがある場合には,
監護親が面会交流の
実施に協力する法的な義務を負うこととなるが,取決めがあるにもか
かわらず,監護親が面会交流の実施を妨害する言動に終始することは,
監護親としての適格性に疑問を生じさせるとの指摘がされている一方で,父母間の関係等によっては,
面会交流の実施により監護親の心情の
安定を著しく害し,結果として同居している子の心身に悪影響を与え
ることがあるとの指摘がある。
この点について,
子の利益のために必要
な場合には,
家庭裁判所の審判等により,
面会交流についての取決めの
変更が認められることになるが,
それに至らない段階では,
いったんさ 19れた面会交流の取決めは,可能な限り履行されることが望ましいと考
えられる一方で,
監護親に対するハードなアプローチのみでは,
子の利
益に資する交流を実現することは困難との指摘もされている。
(注)
「間接強制とは,債務を履行しない義務者に対し,一定の期間内に履行しなけれ
ばその債務とは別に間接強制金を課すことを警告
(決定)
することで義務者に心理的
圧迫を加え,自発的な支払を促すものです。」「ただし,この制度は,直接強制のよう
に義務者の財産を直接差し押さえるものではありませんので,間接強制の決定がさ
れても義務者が養育費等を自発的に支払わない場合,養育費や間接強制金の支払を
得るためには,別に直接強制の手続をとる必要があります。」(裁判所HP内「間接強
制」から抜粋)
ただし,
本文にも記載したとおり,
面会交流自体について直接強制は認められない
ものと解されている。
イ 課題
この点の規律については,例えば,以下のような意見があるが,どの
ように考えるか。また,その他に検討すべき課題はあるか。
1 民間の面会交流支援機関について民事法に位置付けた上で,必要
な体制等を備えた機関に対する認証制度を導入し,認証された機関
に対して財政面,
運営面等で公的な支援を行うとともに,
裁判所の手
続でも当該機関を利用することができることとしてはどうか。
2 面会交流の審判等において,別居親に対して面会交流を命ずるに
当たり,
DV等の問題に応じ,安全・安心な面会交流の実現のための
プログラムの受講を条件とすることができることとしてはどうか。
3 具体的内容の面会交流を命じる調停や審判が不履行となれば,必
要かつ適切な場合に限って,直接的な強制執行を可能とする規律を
設けたり(注)
,面会交流に関する監護親及び非監護親の態度等が,
親権者や監護者指定に関する判断の考慮要素の一つとなることを明
示したりしてはどうか。
(注)
もっとも,
このような規律のある諸外国においても,
子への悪影響などが考慮され,
実際に面会交流の直接強制等が実施されることは多くないとの指摘もある。
以 上

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