1養育費不払い解消に向けた検討会議・取りまとめ
(〜子ども達の成長と未来を守る新たな養育費制度に向けて〜)
令和2年12月24日
法務省養育費不払い解消に向けた検討会議
第 1 はじめに5本検討会議は,本年6月29日の第 1 回会議以降,養育費の不払い解消に向けた幅広い課
題について合計 12 回にわたって集中的に議論を進め,本年9月9日には,現行制度の下で
対応可能な方策や運用上の対応を取りまとめ,まずはスピード感ある取組を進めていくため
の方向性を示す「中間取りまとめ」として法務大臣に提出した。本取りまとめは,専らこの中
間取りまとめの「制度の見直し・制度的在り方の検討を要する事項」をさらに検討したものと10してこれと一体となるものであり,養育費に関する制度上の在り方や新たな立法課題につい
て,本年 9 月以降,先の「法務大臣養育費勉強会取りまとめ」にも示されていた様々な可能
性や選択肢を取り上げて制度面に関する検討を進めた成果を集約したものである。
養育費の不払い問題は,我が国で年間12万組に及ぶ未成年の子どもがいる夫婦の離婚に
より子どもたちが直面している問題であり,全国で約 140 万世帯とされるひとり親家庭で15育つ子どもたちの日々の暮らしに直結する生存保障の問題である。我が国は,高い生活・経済
水準を保っている一方で,ひとり親世帯の貧困率は 48.1%と約半数が相対的貧困の状態と
いう深刻な状況にある。母子世帯において離婚した父親から現在も養育費を受けている割合
は24.3%にとどまっており,父母の離婚後,別居している親から養育費の支払を十分に受
けていないことが,ひとり親世帯の貧困の要因の一つと指摘されている。国際的にみてもひ20とり親世帯の貧困率がOECD加盟国で最高レベルの深刻な状況にあるという我が国の状況
が一刻も早く是正され,養育費の不払い解消を通じ,社会全体として,子ども達の成長と未来
を守っていかなければならないというのが本検討会議の基本認識である。
もっとも,本検討会議で繰り返し指摘された「子どものために離婚後は当然のこととして養
育費が支払われる」「子どものための養育費に親の都合での不払いを許さない」社会の実現25には,乗り越えるべき問題と残された課題がいまだ多い。養育費の不払い問題の解決には,
子どもの権利の確保や行使のために,当事者の負担や簡便性と安全性を十分に図りつつ,各
段階で必要なサポートが重層的に講じられる伴走型支援が必要である。
本取りまとめでは,養育費の不払い問題の抜本的解決を目指して,欧米等で先進的取組が
進んでおり社会的関心の高い不払い養育費の立替払いや強制徴収の問題についても本検討30会議で取り上げられた複数の選択肢を示し引き続き検討していくべきとするなど,法改正な2ど制度面の検討が必要となる方策を幅広く取り上げている。第2の「制度の見直し・制度的在
り方に関する検討」では,時間軸を追って,1養育費の理念・取決め段階,2養育費の取立て・
不払いの支援段階,3養育費の支払の促進策・その他の制度的課題の 3 つのフェーズごと
に,法務省自ら又は法務省が関係省庁等と連携・協議して検討を開始すべき具体的課題を取
り上げた上,本検討会議として概ね方向性に異論のなかった具体的方策,及び,これに関し特5に指摘のあった問題意識・課題等を記載している。ここに掲げたものは,養育費の不払い解消
のために優先度の高い制度的課題であり,我が国の制度全体との整合性や当事者の手続保
障,国民的理解等にも留意しつつ,優先順位をつけて,スピード感をもって更なる検討が進め
られることを期待する。
本検討会議でも繰り返し指摘があったように,養育費問題に取り組む際には,多様な家族10の有り様を前提に,特にDV・虐待等の問題に対する十分な理解と配慮をもって,制度構築や
公的支援を行う必要がある。また,権利者・義務者の置かれている経済的状況等いかんによ
り,養育費問題への対応のみで全てが解決するわけではない。例えば,義務者に収入がなく養
育費の支払が望めない場合などは,ひとり親に対する支援施策と連携した対応等に,引き続
き力を注ぐべきである。情報提供を通じた国民・社会への周知・啓発も欠かせない。15そして,養育費問題の制度上の課題(法的支援を含む)の対応は,運用面の課題以上に,関
係省庁・関係機関の連携した取組が欠かせない。今後の検討プロセスでは,例えば,民事基本
法に関するものは最終的には法制審議会において,行政支援に関するものは法務省が関係
省庁等と連携した枠組みにおいて,それぞれ実現に向けた精査・検討が必要になると思われ
るが,養育費問題が現在進行形の待ったなしの課題であることに改めて留意すべきである。20本検討会議の集中的な検討では,一貫して,子ども達の利益とひとり親の視点を何より重
視してきた。そして,先行する中間取りまとめと今般の本取りまとめにより,本検討会議とし
ての議論は,いったん区切りを迎えることになる。長年,我が国社会の大きな課題でありなが
ら本格的取組が進んでこなかった養育費不払い問題について,ようやく光が当てられ,国民
的関心と注目が向けられている。家族関係の変化・多様化が進む中,まずは養育費の不払い25解消というアプローチから,子ども達の成長と未来を守る新たな社会作り,そして,生まれ育
った家庭環境にかかわらず子ども達を社会が守り育てる環境作りに向けた歩みを,着実に進
めていくべきである。
本検討会議が示すビジョンが,そのように社会を変えていくための第一歩となり,今後,政
府を挙げて,また社会全体として,養育費の不払い解消に向けた検討・対応が加速して実現に30向かっていくことを,強く願ってやまない。3第 2 制度の見直し・制度的在り方に関する検討
(注)以下の各項目では,中間とりまとめと同様,まず,「1,2...」として概ね方向性に
異論のなかった具体的方策を掲げ,さらに必要に応じ,特に指摘のあった問題意識・課
題等を・として記載した。5《I 養育費の理念・取決め段階に関する制度的課題》
第1 子の養育に関する請求権をより強固なものに位置付けるための方策
(養育費請求権の性質や位置付けの明確化)
1 養育費が,単に離婚後の父母間の金銭的な清算の問題ではなく,子の生活と成長のために
極めて重要な権利であることを前提に,民法上,養育費請求権の性質や位置付けを明確に規10定するよう検討すべきである。
このことで,養育費請求権の根拠規定が必ずしも明らかではない現行法が改められ,子の
ための優先的な権利であることがメッセージとして示され,養育費の支払に関する親として
の責任の自覚にもつながる。もっとも,養育費請求権の権利者(子自身または監護親)につい
ては両論があり,更に議論が必要である。15また,養育費の支払と面会交流の実施は法律的に別問題であり,養育費の支払を受けるた
めに面会交流を強制されるような関係にないことが確認されるべきである。
(特に指摘のあった問題意識・課題等)
・養育費をめぐる紛争解決の過程で,子の年齢に応じ,子の意思を考慮することが望まし
いとの指摘がある一方,子が父母間の意向等の違いの板挟みとなり,子の福祉に反する20結果を招くこともあるとの指摘があった。
・ひとり親の監護親が養育費請求を行う余裕がない場合に,子自身が非監護親に対して直
接請求するためのハードルを下げる支援をより一層充実させるべきであるとの意見があ
った。
(養育費を取り決める場合の考慮要素の具体化)252 養育費請求権の性質の議論を踏まえ,子の利益を確保して親の責任を確実に果たさせつ
つ,養育費請求権の発生の有無や金額等につき予見可能性を高めるため,民法に,養育費を
取り決める際の考慮要素を具体的に規定することなどを検討すべきである。
(特に指摘のあった問題意識・課題等)
・養育費請求権の発生時期を明示してはどうか,との意見があった。30・実務で広く用いられている「養育費算定表」(裁判所ホームページで公表)については,4基礎収入算定の際の義務者側の基礎控除の割合が高すぎるとの指摘や,養育費算定表の
見直しについて関係機関・諸団体等で協議をしてはどうか,との指摘があった。
・養育費算定表や養育費計算ツール等の策定を制度化し,特段の事情のない限り,養育費
の金額が概ね自動的に定まるものとしてはどうか,との意見があった。5第2 協議離婚時に夫婦間の取決めを促進する方策
(協議離婚時における親ガイダンスの受講の確保)
1 養育費の取決めの意義,内容に関する事前の情報提供として,離婚を考えている父母に対
し,公的機関の実施する親ガイダンス(養育ガイダンス)を提供して受講を確保する方策を検
討すべきである。10親ガイダンスとしては 公的機関の広報ウェブサイトで動画を提供したり,個別的な支援に
つなげるための個別相談を確保したりするなど,効果的・重層的な対応が重要である。
(特に指摘のあった問題意識・課題等)
・親ガイダンスは,多様な家族の在り方を前提に子の利益が実現するよう,法律・心理・
福祉の専門家も参加して,親や子の心情に十分配慮した内容や,離婚後の生活・親子関15係の実態を踏まえた内容とすることが望ましいとの意見があった。
・離婚に先立って親ガイダンスの受講を必要とすることにより,離婚をしにくくなるおそ
れがあるとの指摘があった。
(協議離婚時の養育費取決め届出制度の創設)
2 父母間で離婚前に協議が調った場合には,離婚届と合わせて,養育費に関する取決めを自20発的に公的機関に届け出る制度を設け,その届出にメリットを付与して,養育費の取決めをす
るインセンティブを与えることを検討すべきである。
(特に指摘のあった問題意識・課題等)
・付与するメリットとしては,例えば,届け出られた取決め内容を公的機関が確認・保管
することとしたり,取決めが届け出られた場合に,当該届出に執行力を付与して,これ25に基づく強制執行を可能にしたりすることなどが考えられる。
(養育費取決めの原則的義務付け・要件化の検討)
3 協議離婚時に養育費の取決めを確保するための制度的方策として,(1)協議離婚時に養育
費を取り決めることを原則として義務付けること,あるいは(2)養育費の取決めがあること
を協議離婚の原則的要件とすることについては,それぞれのメリット・デメリットを考慮し,検30討を行うべきである。5母子世帯のうち養育費の取決めをしている割合が 42.8%,現に養育費を受け取っている
割合が 24.3%にとどまる現状の改善のためには,子のために実効性のある養育費の取決め
が確保される制度整備が望ましいが,どのような制度が我が国において有効に機能するか,
協議離婚の実態等に即した精緻な議論を行う必要がある。
(特に指摘のあった問題意識・課題等)5・取決めを協議離婚の要件とすることについては,(1)DV等の事情により養育費を取り決
めることができず,協議離婚が難しくなる状況が生じること,(2)自治体の窓口において
取決め内容の相当性の判断を行うことは難しいことなどから,慎重な意見があった。
・取立てや公的支援を行う前提として,
離婚時にできるだけ養育費の取決めを確保する方向
付けが重要である。養育費の取決めを協議離婚の要件とはしないまでも,例えば,協議離10婚時の努力義務とすることは考えられるのではないか,との意見があった。
・協議離婚制度の在り方を検討するには,
協議離婚に関する実態調査を検討すべきであると
の指摘があった。
(取決めが困難な場合に夫婦の一方又は双方を支援する方策-法テラスの活用-)
4 養育費問題に悩むひとり親にとって,情報提供・相談の窓口として法テラスへの期待は高15い。ひとり親の立場に寄り添って,相談の機会をより一層確保し,また,支援がより利用しやす
いものとなるよう,引き続き,制度の在り方を検討すべきである。
相談体制の充実として,弁護士等との対面のみでなく,オンラインや電話を用いた相談対応
について,継続実施を検討すべきである。
また,ひとり親などが,養育費確保のために必要な法律相談や弁護士費用等の立替支援を20より利用しやすくなるよう,ひとり親の経済的負担にも配慮した制度的在り方について,日弁
連等とも連携し,検討を行うべきである。
(特に指摘のあった問題意識・課題等)
・オンライン相談の推進に当たってはセキュリティの問題や相談者に通信環境を確保して
もらう必要があるなどの点にも配慮すべきであるとの意見があった。25・養育費は子どもの生存保障の問題であるから,法律相談を利用しやすくするため,一回
の相談時間30分以内,同一問題につき3回までという相談回数の制限を緩和すべきと
の意見があった。他方で,1高齢者・障害者・犯罪被害者など困難な立場の利用者との
関係で,
養育費請求のみが無制限の相談が可能になることの説明・理解に困難を生じる,
2同様の相談を繰り返す相談者に人的物的資源を投入すると,他の支援が必要な方々に30対し,支援が行き届かなくなる,等の慎重な意見もあった。6・全国的に見ると法律家が地域的に偏在していることを踏まえつつ,養育費案件について
事案に応じた選択肢を増やすという観点から,法テラスの地方事務所において,利用者
のニーズに応え,適切な案件の振り分けの下で,弁護士の代理援助のみではなく,家事
調停手続や民事執行手続の申立書作成などの書類作成援助や,書類作成事務についての
相談業務について,司法書士の活用を検討すべきではないか,との意見があった。これ5に対し,案件の振り分けは法的判断を伴い,法テラス職員が行うのは困難である,請求
額の妥当性や執行方法,離婚に伴う各種法律問題などにつき,法的助言や相手方との交
渉・手続の代理等が必要となり書類作成援助で足りなくなることが多いが,法的助言等
を司法書士が行えない以上,改めて弁護士に依頼することになって時間と費用の負担が
更に発生するおそれがあるなどとの意見があった。10・立替金については,生活保護又はそれに準じる経済状態であれば償還免除等を受けられ
る場合もあるが,その範囲を,例えばひとり親で児童扶養手当の一部支給ラインまで拡
大すること等を検討すべきとの意見があった。他方,1ひとり親のみ,高齢者・障害者
・犯罪被害者などより広く償還免除等を行うべきか検討が必要,2償還金は,相互扶助
の精神から将来の利用者に充てる重要な財源であり,一部に広く償還免除等をすれば,15支援が必要な他の利用者にも影響が及ぶことになる点の検討が必要との意見もあった。
・養育費問題を含む様々な法的トラブルについて,法テラスの支援等へのアクセスを高め
るため,利用方法に関する広報を進めるとともに,自治体や社会福祉士等と法テラス・
法律相談センター等との間で相互に連携・協力を図る枠組み・充実した体制の構築を検
討すべきとの意見があった。20第3 裁判・民間ADR等の紛争解決手続での取決めを促進する方策
(裁判手続の負担の軽減及び利便性の向上)
1 現状,裁判所における子の監護に関する処分事件(養育費)等の平均審理期間は5.3か月で
あり,ひとり親にとって手続面の負担が大きいとの声もある。そこで,養育費に関する裁判手25続(家事調停・審判等)について,その審理をより迅速化するための制度的方策や,ひとり親の
裁判遂行の負担軽減を図るための制度的課題について検討を進めるべきである。
(特に指摘のあった問題意識・課題等)
・迅速審理の方策として,例えば,当事者からの提出資料に基づいて算定した養育費を調
停委員会が双方に提案し,合意できないなら直ちに審判をするといったことや,養育費30請求調停・審判事件に限定したファスト・トラックを設けることを進めてはどうか,と7の意見があった。
・ひとり親の負担軽減の観点から,養育費請求に関する裁判手続の管轄裁判所の在り方を
柔軟にすることや,義務者の住所・収入等の把握のために裁判所が行政と連携して主体
的に情報を取得する制度の導入等を検討してはどうか,との意見があった。
・調停を始めとする裁判手続を平日の夜間や土日に実施することを検討してはどうか,と5の意見があった。
・これに対しては,家庭裁判所におけるITの活用も含め,裁判手続のリモート化によっ
て利便性の向上を図る方向を進めることの方がメリット・効果が大きいのではないかと
の指摘があった。
・養育費に関する裁判事件では,当事者の意向等により,面会交流の問題も同時に取り扱10われることがあるが,養育費と面会交流は法律的に別問題であり,両者が交換条件では
ないことが確認されるべきであるとの意見があった。
・裁判所における安全対策に一層配慮してほしいとの意見があった。
(民間 ADR の利用促進)
2 協議離婚において養育費の取決めを確保するための選択肢として,平日の夜間や休日の利15用,電話会議等によるリモート化など柔軟かつ迅速な対応が可能である民間ADRの活用に
対する期待は高い。そこで,家事分野において,民間ADRの利便性や柔軟性を確保した上
で,その利用を促進する制度的方策として,民間ADRにおけるIT利用の推進(ODRの拡充を
含む。)や,民間ADRにおける和解合意への執行力の付与の問題などを,スピード感を持って
検討すべきである。20(特に指摘のあった問題意識・課題等)
・現状では家事事件を専門とする民間ADR機関が少ないことや,ADR機関の質の確保
が重要であることにも留意して,その活性化策を進めるべきである。
・平日の夜間や休日に利用可能な民間ADRのサービスが広がることが望まれる。また,
オンライン申立てやウェブ会議等を用いたODRについて,特に養育費の取決めの場面25で,活用に向けた積極的検討が期待されるとの意見があった。
・裁判所の事後審査により民間ADRの和解合意に執行力を付与し得るものとする方向が
望ましいが,裁判所の審査方法や,異議申立て等による手続保障の問題についても検討
を進めるべきである。また,和解合意に執行力を付与するのは,当該紛争分野に詳しい
専門家が関与した和解合意に限定するのが相当ではないか,との意見があった。30・民間ADRと裁判所が連携して,速やかに執行力ある債務名義が得られる枠組み(例え8ば,弁護士関与のもと,民間ADRを用いて和解合意を行い,債務名義化のために,家
庭裁判所の「即日調停」や調停に代わる審判を活用することなど)も,現行制度の下で
の試行的運用の状況も踏まえ,更に進めるべきではないか,との意見があった。
第4 取決めができない場合に対応するための方策(養育費債権の自動発生等)5(取決めのない場合に養育費債権を自動発生させる仕組みの検討)
1 現行制度では,協議離婚後も,取決め等によりその金額が決められるまでは,養育費の具体
的請求ができないところ,このような空白期間を解消することが望ましい。
そこで,父母間のDVや高葛藤等の事情により離婚時に取決めができない事情がある場合
には,協議離婚の成立により,当面の子の利益のため,暫定的に一定金額の具体的な養育費10請求権を自動発生させる制度を設けることが考えられる。もっとも,我が国において有効に
機能するか,協議離婚制度の在り方にも関わってメリット・デメリットが考えられるため,更な
る検討を続けていくべきである。
(特に指摘のあった問題意識・課題等)
・自動発生させる養育費請求権の法的性質,請求権の内容(金額,支払方法等)について15法的整理・検討を行う必要があり,直ちに強制執行を可能とする債務名義が考えられる
か否かについても,効果的取立て方策と合わせて検討すべきであるとの意見があった。
・制度の対象としては,保護命令事案のほか,精神的暴力等がある場合にも,取決めがで
きない事情があるものとしてより広く含めるべきとの意見があった。
・このような制度を設けた場合,相手方が,養育費の負担を懸念して協議離婚に応じなく20なるおそれがあることや,養育費が自動発生したがゆえに児童扶養手当等の公的支援が
制限されることがないようにすることにも留意する必要があるとの意見があった。
また,
その支払義務者に,負担の予測可能性を高めるための方策,手続保障や不服申立ての機
会を確保する必要があるとの指摘もあった。259
《II 養育費の取立て・不払いの支援段階に関する制度的課題》
第5 強制執行による取立てを実効的なものとするための方策
(強制執行手続の負担軽減や利用促進)
1 養育費の取立てのために裁判所に期待される役割は大きい一方で,ひとり親にとっては強
制執行手続を利用する負担が大きいとの指摘がある。そこで,養育費に関する強制執行手続5において,ひとり親が自ら権利行使することがより一層容易となるよう,手続的負担を軽減す
る見直しを検討すべきである。
(特に指摘のあった問題意識・課題等)
・ひとり親は,法的知識がない中,強制執行における手続や管轄裁判所の選択,対象の特
定等に悩みを抱えており,裁判所のサポートのもと,個別申立てを繰り返すことによる10費用負担の増加を避け,簡易に強制執行を進めたいと考えており,法律サービスや法的
支援の促進と共に,当事者の意向を踏まえた簡易な一括執行申立て制度が有用ではない
かとの意見があった。
2 強制執行の申立てについて,権利者であるひとり親が相手方の住所や財産を把握する負担
の軽減に向けて,例えば,当事者の申立てに基づき裁判所が相手方の住所を探知する制度の15検討など,新たな制度上の措置について検討を進めるべきである。
(特に指摘のあった問題意識・課題等)
・裁判所が支払義務者の住所や財産を探知する制度が必要であるが,マイナンバーや住基
ネットに関するシステムに直接接続して大量の情報を取得することには消極的であり,
裁判所が行政機関に効率的に照会する制度が考えられないかとの意見があった。203 改正民事執行法により新設された第三者からの情報取得手続等の執行手続について,施行
状況を踏まえ,養育費の履行確保の観点から,改善に向けた更なる検討を進めるべきであ
る。
(特に指摘のあった問題意識・課題等)
・第三者からの情報取得手続を利用した場合に,それを契機として財産隠しが行われない25よう,同手続における債務者通知の在り方を検討してはどうかとの意見があった。
4 家庭裁判所の履行勧告の拡充や履行命令の活用について,実効性等の向上に向けた制度的
方策を検討すべきである。
(特に指摘のあった問題意識・課題等)
・履行命令違反の制裁の強化ないしは多様化を検討してはどうかとの意見があった。30・公正証書が債務名義となっている場合にも履行勧告を利用できるよう制度見直しが望ま10れるとの意見があった。
第 6 民間のサービスの利活用による養育費の取立て・不払いの支援方策
(民間サービサーのノウハウの活用)
1 債権回収の専門家である民間サービサー(法務大臣により債権管理回収業の営業の許可を5受けた株式会社。現行法において養育費請求権の管理回収は認められていない。)のノウハウ
の活用について,ひとり親と民間サービサーが個別相対で契約を締結して手数料を徴収する
スキームは,高額の手数料をひとり親が負担することとなる可能性が高く,現実的でない。他
方で,仮に,将来的に,公的機関が関与して養育費請求権を取りまとめる仕組みが整備され,
公的機関を債権者とする大量一括処理が可能となるようなスキームが整備されることとなっ10た場合には,その段階で,民間サービサーに委託して回収事務の効率化・迅速化を図るなど,
民間サービサーのノウハウを活用したスキームの在り方を改めて検討していくべきである。
(特に指摘のあった問題意識・課題等)
・養育費の支払義務を軽視している義務者に早期に責任を自覚させ,支払の動機付けをす
るには,民間サービサーの関与が有効ではないか,との意見があった。15・他方,不払いの場合の支払の動機付けは,家庭裁判所の履行勧告等の利用で対応可能で
あり,また,民間事業者の早期関与により,養育費の支払義務者と権利者の間の関係修
復が難しくなるのではないか,との意見もあった。
・民間サービサーによる過去の不払い分の請求とひとり親の養育費請求との同時期請求等
の課題について検討すべきではないか,との意見があった。20(養育費保証サービスの利用)
2 将来的な養育費の受取りに不安があるひとり親にとって,保証会社の養育費保証サービス
(保証会社が養育費権利者と保証契約を締結し,義務者に養育費の不払いがあった場合に,
保証会社が一定範囲内の養育費相当額を権利者に支払うとともに,義務者に事後求償を行
うスキームが一般的なものである。)の利用も選択肢の一つとなり得る。自治体が保証会社に25直接業務委託をする取組や,ひとり親が負担する保証会社の利用料金(保証料等)を,自治体
が一部補助する仕組みが活用され始めている。もっとも,営利を前提とした第三者が介在す
ることにより,ひとり親に相当額の費用負担をさせるようなスキームも散見され,養育費の一
部が子の養育に充てられないといった課題もあることから,保証会社の活用については,そ
の利用状況を注視しつつ,活用するとした場合のメリット・デメリットや規制の在り方を含めて30多角的な観点から検討すべきである。11(特に指摘のあった問題意識・課題等)
・現状では,不適切なビジネス等を防止する監督体制が欠如しており,ひとり親にとって
安全・安心にサービスを利用できるよう,また,自治体等としても支援の効果が保たれ
るよう,ルールづくり(事業参入基準や監督体制等)を早急に検討すべきではないか,
との意見があった。5・サービスの内容が弁護士法など関係法規との整合性が保たれている必要があるとの指摘
や,保証会社が関与することで,養育費の不払いがあった後の父母間の関係修復が難し
くなったり,養育費の増減変更が難しくなったりするおそれがあるとの指摘があった。
第7 強制徴収制度の創設を始めとする取立て支援に向けた方策10(強制徴収制度やそれと同様の機能・効果を生ずる枠組みの検討)
1 養育費の不払いがあった場合に,現状では,ひとり親にとって養育費の督促・取立てを行う
ことの負担が大きく,現行の強制執行手続の利用を促すのみでは十分ではない。
そこで,養育費請求権を対象とした新たな法整備を行い,養育費請求権の権利者に代わっ
て,国等の公的機関が権利者の養育費請求権を行使し,支払義務者から未払いの養育費を回15収し,請求権者に交付するという強制徴収制度や,ひとり親にとって同様の機能・効果を生ず
る新たな枠組みを設けることについては,引き続き,検討を続けていくべきである。
今後,様々な選択肢(本検討会議では,(1)行政機関が,独自に請求行為や強制執行手続の
申立て等を行う形,(2)行政機関が,公債権と同様に,強制執行手続によらずに,独自の手続
で養育費請求権の回収を行う形,(3)公的機関が,権利者に代わって,支払義務者の預貯金20債権や給与債権等に関する情報を取得し,請求権者に提供する形,(4)取立てのために権利
者の代理人である弁護士を活用する仕組みや養育費請求権の回収のための裁判手続の特例
を設けることにより,養育費請求権の取立てを実現する仕組み,を例として取り上げられた)
について,さらに必要性,効果等の検討を進める必要がある。
(特に指摘のあった問題意識・課題等)25・監護親は,合理的負担のもとで,安全性が十分に確保された中で養育費請求権を行使し
て,確実に回収が実現することを望んでいることを念頭に検討すべきであるとの意見が
あった。
・行政機関が,ひとり親の委託を受けて,公債権と同様の強制徴収手続により,養育費請
求権の回収を行う方向性を,
最終的には目指していくべきではないかとの意見があった。30・養育費請求権の公債権への転換(上記(2))は,望ましいが,理論面の課題が少なくない12と考えられるから,むしろ,上記(3)や(4)の方法により,権利者の負担なく取立てを実
現させる方向が,まずは望ましいのではないかとの意見があった。
第8 不払いが生じた場合に公的給付・立替払いにより支援を行うための方策
(公的給付・立替払い制度に関する検討)51 現行制度でも,児童扶養手当等のひとり親家庭への経済的支援策が設けられてはいるが,
養育費の不払いが生じた場合に特化した経済的支援策は設けられていない。取決めに従った
養育費の支払を前提としていたのに,離婚後に突然支払われなくなったような場合には,ひ
とり親家庭の生活への影響は甚大である。
そこで、養育費不払いに着目した公的給付の仕組みを設けることや,養育費の不払いがあ10った場合に,公的機関が養育費の一定部分を立て替えて請求権者に支払い,その後に支払義
務者から立替分を回収するという立替払い制度を設けることについては,選択肢や課題等を
整理しつつ,引き続き,検討を続けていくべきである。
今後,養育費が不払いとなった場合のセーフティーネットが有効に機能しているかという観
点から,既存の社会保障制度との関係や調整も踏まえつつ,様々な選択肢(本検討会議では,15(1)債務名義ある養育費請求権の不払いがあった場合に,行政機関が,一定の資力要件の
下,一定期間のみ,定額の立替金を支払い,事後に求償する形,(2)強制執行が不奏功の場合
に限って,行政機関が,(1)と同様に立て替えて支払い,事後に求償する形,を例として取り上
げられた)について,さらに必要性,効果等の検討を進める必要がある。
(特に指摘のあった問題意識・課題等)20・不払いが生じた場合の公的給付や立替払い制度の実現には期待が大きい,との強い意見
があった。
・公的給付や立替払いの対象を,債務名義ある養育費請求権を有する債権者に限るか否か
が問題となるとの意見や,強制執行の不奏功を要件とせず,行政機関が不払い発生直後
に一時的な緊急支援として立替払いを行う方が,より早期段階での必要性の高い支援が25可能になるのではないか,との意見があった。
・事後的に義務者に対する求償の余地を残すことがモラルハザード防止にも繋がるとの指
摘があった。
・事後的に義務者に求償する制度とする場合,求償権の性質を私債権とするか公債権とす
るかによって回収可能性が大きく変わるため,債権の性質に関する検討も必要であると30の指摘があった。13(緊急給付による一時的支援措置の検討)
2 養育費の不払いが生じた場合に公的給付・立替払いにより支援を行うための方策を検討す
るとしても,養育費の不払いがあった全ての場合に,公的給付・立替払い制度を設けることは
現実的でない。他方で,ひとり親は,養育費が突然支払われなくなることによって,相手方へ
の権利行使や必要な行政支援が開始するまでの間,一時的に特に困窮して経済的に不安定な5状況に置かれることになることを特に意識する必要があると考えられる。
そこで,今後の検討に当たり,まずは,養育費の不払いがあった場合に,緊急給付による一
時的な支援措置を検討すべきとの指摘を踏まえつつ,引き続き,検討を続けていくべきであ
る。その場合には,既存の社会保障制度との関係や調整も踏まえつつ,さらに必要性,効果等
の検討を進める必要がある。10(特に指摘のあった問題意識・課題等)
・緊急給付による一時的な支援措置を検討するにあたっては,その対象者の要件(例えば,
取決めや債務名義の要否,不払いまでの現に支払われた期間を問題にするか等)につい
て十分な議論が必要であるとの意見があった。
・緊急給付による一時的な支援措置の期間のイメージとして,権利者が不払い発生後に裁15判所に調停等を申し立て,それが解決するまでの平均的期間分は必要であるとの意見が
あった。また,その支給期間中に,ひとり親の生活の立て直しを図られるよう,行政支
援を充実させる必要があるとの意見もあった。
・新たな緊急給付を設ける場合には,児童扶養手当等の他の手当とは無関係に一定期間支
給されるべきであるから,当該緊急給付と他の手当との間で受給調整は行うべきではな20いとの意見があった。14《III 養育費の支払の促進策,その他の制度的課題》
第 9 事業主の役割その他社会全体として養育費の支払を促進していくための制度的方策
(事業主等の社会全体による取組)
1 養育費請求権が子の生活・成長のために重要な権利であることを共通認識として,養育費
の重要性や支払の確保に関する国民・社会の意識を変えていく方向を目指して,養育費を確5実に確保するための各方面における様々な環境整備に向けて,引き続き,検討を続けていく
べきである。
(特に指摘のあった問題意識・課題等)
・まずは国と地方自治体が,広報活動を含めた理解促進に主体的に取り組み,養育費問題
について,経済界も含めた社会全体に浸透させる必要があるとの意見があった。また,10養育費の確実な確保に向けた事業主の協力や経済界を含めた環境整備が重要であるとい
う意見があった。
・ひとり親からは,義務者の給与から養育費相当額を天引きして権利者に支払うようにし
てほしいとの要望が強い。義務者の同意等がある場合には,そのような養育費の支払方
法が可能であることの周知・推奨や,給与明細に「養育費」との欄を設けるなど,離婚15後には親が養育費を負担することは子のために当然のこと,という意識作りを進めるべ
きとの意見があった。
・従業員が権利者である場合に,養育費のための裁判期日等を理由とした休暇取得に事業
主が配慮すること等を推奨する意見や,養育費問題に熱心に取り組む企業に,認定マー
クを付与するなど,経済界の理解・協力を得た取組を進めるべきとの意見があった。20・養育費問題が家族の問題であり,周囲に知られることを望まない場合もあるから,養育
費支払促進に事業主が関わることについて慎重に検討すべきではないかとの指摘もあっ
た。
・事業主の取組以外に,社会全体としての取組も考えていく必要があり,養育費問題には,
法テラスや弁護士による司法的支援のみでなく,家庭や子どもに関する福祉的支援,教25育的支援等の幅広い対応が必要であり,これらの専門性を備えた相談機関の確保も必要
ではないか,との指摘があった。
第 10 公的給付や税制との関係に関する制度的方策
(児童扶養手当と税制上の措置)301 養育費の支払が自発的に継続されることが重要であり,養育費の支払義務者及び権利者に15よる養育費の履行・受け取りのインセンティブを高める観点から,公的給付や税制との関係に
ついて,各制度の制度趣旨や公平性の視点を踏まえつつ,引き続き,検討を続けていくべき
である。
(特に指摘のあった問題意識・課題等)
・児童扶養手当の支給認定において,受け取った養育費の8割相当の金額が受給者の所得5として算入され,児童扶養手当が不支給や減額となる可能性がある現行の制度を見直し
てほしいとの意見があった。ひとり親からは,児童扶養手当が減額される可能性がある
なら養育費は請求しない,という声が聞かれているとの指摘があり,特に,取り立てた
養育費が低額の場合には,取立てに相応のコストがかかることを踏まえ,一定の金額未
満の養育費については算入しないか,
より低い率とする方向で見直すことはできないか,10との意見があった。
・養育費を支払う側(非監護親も含む)に,養育費の支払額に応じた収入金額からの控除
を認めることができれば,支払意欲の促進となり,養育費の不払い解消とともに社会保
障費用の減額にも繋がるのではないか,との意見があった。
・公的給付や税制の在り方の見直しについては,父母が離婚をしていない場合との取扱い15の公平性や,義務を履行していない者に優遇措置を与えることがないような方策を慎重
に検討すべきであるとの指摘があった。
第 11 養育費の不払いに対する義務者への制裁の強化・多様化のための制度的方策
(悪質な不払いに対する不利益・制裁の検討)201 養育費の不払いが解消されないことの一因として,義務者が支払を怠っているのに,その責
任が自覚されていないことや,不払いが許されるとの誤った認識が存在しているとの指摘が
ある。
そこで,養育費の不払いを社会全体として許さないというメッセージとして,諸外国におけ
る取組を参考に,悪質な不払いを繰り返す養育費支払義務者を対象として,不利益や制裁を25課す制度を設けることについて,その必要性,効果や弊害,他の私債権との関係等の幅広い
観点から,引き続き,検討を続けていくべきである。
(特に指摘のあった問題意識・課題等)
・裁判所からの一定の命令に従わないことを罪とする制度(裁判所侮辱罪)について検討
の余地があるとの意見があった一方で,これを導入して金銭的制裁を科した場合には養30育費の支払原資が減るとの問題のほか,そのような制度を設けること自体の当否や我が16国の法体系全体との整合性から慎重に考慮すべきとの意見もあった。
・免許証・パスポートの発給停止等は,履行命令違反の効果や間接強制の一態様として検
討してはどうかとの指摘があったが,これに対し,義務者の職業いかんでは不利益が甚
大となり,義務者の反発を招きかねず,効果や不利益の程度等に十分に配慮した設計が
必要であるとの指摘もあった。5第 12 養育費確保に伴う懸念や弊害(DV,児童虐待等)を解消するための制度的方策
(DV・児童虐待問題を念頭に置き,その対策と連携した対応の必要性)
1 DVや児童虐待あるいはその他の様々な事情があるにもかかわらず,養育費の取決めや取
立ての際に安全・安心な手続が保障されないままであれば,養育費の不払いを解消すること10はできない。
養育費の取決めや取立てを適切に行うためには,その安全・安心面への懸念等を解消する
必要があり,法的支援の充実,制度面の改善を図るとともに,DV・児童虐待といった家庭の問
題への対応を含め,総合的対応を図るべきである。
(特に指摘のあった問題意識・課題等)15・婚姻期間中のDVがある事案では,離婚後に養育費を巡って父母間で連絡や取決めをさ
せようとすることは,
DVの再燃に繋がりかねない危険があることを十分認識した上で,
裁判手続を始めとする各段階における安全のための環境整備と必要十分な支援が不可欠
であるとの指摘があった。
・現状のDV対策では,安全・安心の確保に重点が置かれているが,その後のひとり親の20自立や生活基盤の確保の観点からは,相手方から養育費の支払を受けられるようにする
ための養育費問題の支援や弁護士等との連携についても,DV対策の一環で取り組んで
いくべきではないか,と意見があった。
・養育費に関係する問題を抱えた当事者に携わる幅広い関係者が,DV問題に関する十分
な知識・知見を習得し,被害者等への適切な対応ができるようにすべきであるとの意見25があった。
・養育費の不払い解消の観点からも,DV問題への対応として,公的給付・支援の対象と
なるDVの範囲の見直しや加害親への制度的方策(加害者更生プログラム等)等の検討
・対応が望まれるとの指摘があった。30第 13 離婚前別居期間中における子の養育費確保のための方策17(別居時の養育費に関する方策)
1 子が経済的に困難な状態に陥るのは,父母の離婚時よりもむしろ,それ以前の別居開始時
であることが多いと考えられるが,別居期間中に婚姻費用(子のための養育費を含む。)を相
手方に請求できることが社会的に認知されていないと考えられる。
別居期間中の子の置かれている状況に関する実態調査を行いつつ,父母の離婚前別居期5間中の子の養育に着目し,父母が別居して一方の親が子の監護をしている場合について,子
の利益のために別居期間中の養育費を確保するための方策を検討すべきである。
(特に指摘のあった問題意識・課題等)
・子の養育費を含む婚姻費用の内容として,その始期や金額水準が子の利益に資するもの
となるよう見直すべきという意見があった。10・単身赴任も多い我が国では,別居には様々な形態があることに留意して検討することが
必要であるとの指摘があった。
・別居時よりさらにさかのぼって,夫婦の婚姻時に,将来に子が生まれたときの養育費に
関して一般的に合意させる方法も考えられるのではないかとの意見もあった。
(父母の別居期間中の子に対する行政支援)152 父母が別居して一方の親が子の監護をしている場合において,子の適切な養育のために,
また,養育費を取り決めるための基盤づくりとして,別居期間中の子への適切な行政支援・福
祉施策・法律相談の在り方についても検討すべきである。
(特に指摘のあった問題意識・課題等)
・離婚時には夫婦間の葛藤等により養育費問題の解決が既に困難になっていることが多い20から,
取決め確保の支援や福祉措置を講ずる時期としては,
離婚時のみでなく,
別居中に
まで広げることを検討すべきではないか,との指摘があった。
・離婚前の別居の開始により,生活や経済状況が激変して困窮に陥っている場合が多いと
の指摘を踏まえ,父母の別居期間中からの子に対する公的支援(児童扶養手当や児童手
当等)がなされ,ひとり親施策など社会保障が充実するよう,課題の早急な検討が必要25ではないか,との指摘があった。また,公的支援の対象とすべき者の適切な認定の方法
やルールも重要な課題であるとの指摘があった。
・別居期間中の行政支援や福祉施策を検討する場合,
別居の動機や形態は多様であるから,
離婚を前提とした別居に対象を限るのか,別居開始後の事情変更等をどのように考慮す
るのか,
DV防止法の枠組みとの関係の整理といった点について検討が必要ではないか,30との指摘があった。18第 14 養育費の不払い解消に向けた国・自治体の責任・関与の強化
(国・自治体においてより一層の総合的・効果的な対応を進めていく必要性)
1 第1から第13までに掲げた制度的課題の検討にあたり,国及び自治体の果たすべき責任を
十分に踏まえた上で,法務省として,制度の在り方に関する検討に引き続き取り組むととも5に,その取組にあたり,関係省庁等とのより一層の連携を図っていくべきである。
これまでも,養育費不払いのない社会作りを目指して,関係省庁や各自治体等による取
組が進められてきた1
。また,養育費の不払いに関連するDV・虐待等や,養育費問題に関
係する子どもの貧困対策,ひとり親家庭への支援,女性活躍,男女共同参画等の課題につ
いても,それぞれが政府の最重要施策の一つと位置づけられ,様々な対応が講じられてき10ている。
今後は,これら取組について,子の成長・未来のために,という大きな視点に立って,
関係省庁・関係機関等の十分な連携の下で,より一層の総合的,効果的な対応が進められ
ていくべきである。そして,養育費の不払い解消に向けた社会環境整備として,国及び自
治体が適切な役割分担・関与を図るための制度的方策について,運用面での速やかな対応15と並行して,更に検討していくべきである。
1 養育費の不払い問題に関する制度的課題については,本検討会議と並行して,養育費確保のた
めの公的支援の問題について考えられる論点と課題等の整理を行うため,法務省・厚生労働省
の審議官級で立ち上げられた「不払い養育費の確保のための支援に関するタスクフォース」
(本年6月設置)において検討が進められており,海外・自治体の先進的取組の把握・分析も
含め,論点整理が進行中である。19(別紙1)
法務省養育費不払い解消に向けた検討会議5○しろまる構成員(敬称略・五十音順)
赤 石 千衣子 NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長
石 田 京 子 早稲田大学大学院法務研究科教授
大 森 三起子 弁護士・大森三起子法律事務所
兼 川 真 紀 弁護士・インテグラル法律事務所10熊 谷 信太郎【議長】弁護士・熊谷綜合法律事務所
杉 山 悦 子 一橋大学大学院法学研究科教授
野 上 宏 東京都港区子ども家庭支援部子ども家庭課長15○しろまるオブザーバー
日本司法支援センター(法テラス)
公益社団法人家庭問題情報センター(FPIC)・養育費相談支援センター
厚生労働省
最高裁判所20○しろまる法務省関係部局
大臣官房司法法制部
民事局【事務局】253020(別紙2)
法務省養育費不払い解消に向けた検討会議・開催状況5第1回(令和2年6月29日)
今後の進め方について
第2回(令和2年7月17日)
支援現場からみた現状と課題,改善事項等(自治体からのヒアリング)
第3回(令和2年7月31日)10専門家からみた現状と課題,改善事項等(ひとり親支援団体関係者,法律
専門家からのヒアリング)
第4回(令和2年8月7日)
法テラスからのヒアリング,速やかに取り組むべき事項の論点整理
第5回(令和2年8月25日)15速やかに取り組むべき事項の論点整理に基づく意見交換
第6回(令和2年9月9日)
中間取りまとめの実施
第7回(令和2年9月30日)
制度的在り方に関する議論120第8回(令和2年10月14日)
制度的在り方に関する議論2
第9回(令和2年11月2日)
制度的在り方に関する議論3
第10回(令和2年11月27日)25内閣府からのヒアリング,制度的在り方に関する議論4
第11回(令和2年12月7日)
取りまとめに向けた意見交換1
第12回(令和2年12月21日)
取りまとめに向けた意見交換230