性犯罪に関する刑事法検討会
意見要旨集(第7回会議分まで(2))
性犯罪に関する刑事法検討会
意見要旨集(第7回会議分まで(2)) 目次
第1 刑事実体法について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
8 性的姿態の撮影行為に対する処罰規定の在り方・・・・・・・・・・・・・・1
(1) 他人の性的な姿態を同意なく撮影する行為や画像を流通させる行為を
処罰する規定を設けるべきか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
(2) 撮影された性的な姿態の画像の没収(消去)を可能にする特別規定を
設けるべきか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
第2 刑事手続法について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
1 公訴時効の在り方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
(1) 強制性交等の罪について,公訴時効を撤廃し,又はその期間を延長
すべきか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
(2) 一定の年齢未満の者を被害者とする強制性交等の罪について,公訴
時効期間を延長することとし,又は一定の期間は公訴時効が進行しな
いこととすべきか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
3 いわゆるレイプシールドの在り方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
4 司法面接的手法による聴取結果の証拠法上の取扱いの在り方・・・・・・・13
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意見要旨集
第1 刑事実体法について
【第7回会議分まで】
8 性的姿態の撮影行為に対する処罰規定の在り方
(1) 他人の性的な姿態を同意なく撮影する行為や画像を流通させる行為を処罰する
規定を設けるべきか
1 被害の実態
○しろまる 塾や学校,マッサージ店などでの盗撮事案は非常に多く,撮影される側が
気付かないため潜在化することが多い。また,航空業界では航空機内での客
室乗務員に対する盗撮が問題となっているが,犯罪地の特定が難しく,適用
される都道府県条例が定まらないため,取締りができない。さらに,アダル
トビデオ出演強要問題では,意に反する契約を結ばされて同意なき撮影が行
われて売却されているし,スポーツ界では,トップアスリートから中高生の
競技者に至るまで,赤外線カメラによる透視や,殊更に胸部や臀部を強調し
た写真を撮影してわいせつなコメントを付してインターネット上に投稿する
行為が問題となっている
○しろまる 同意のない性行為を強いられて,その状況を知らない間に撮影されて,後
に,その画像の存在を知られたくなかったら言うことを聞くよう言われ,画
像を基に脅迫され,性的行為を強要されるといった実態がある
○しろまる 街中で声をかけられ,アルバイトとして行った先で衣服を身に着けた状態
で撮影が始まり,年上の男性に取り囲まれて下着を見せるよう言われ,最終
的に脅されてアダルトビデオの撮影に至る事例や,生徒や学生が複数の同級
生に囲まれて撮影されながらレイプされる事例があるなど,今や多くの性被
害が撮影とセットになっている
○しろまる 性的な姿態をいつどこで誰に見られるかは自ら決めるべきことであり,た
とえ気付かない間に撮影されていても,また,顔が写っていない状態でも,
性的な姿態を同意なく撮影されることや,撮影された画像を他人に見られる
こと,撮影された画像を他人に持たれることは,自分の体を他人に性的に利
用されることにほかならず,被害者を苦しめ,その尊厳を害するものであっ
て,特に,画像を拡散されると,外出することが怖くなるほどの恐怖を覚え
るものである
○しろまる 性的な画像を他人に見られるのではないかという恐怖から,うつ病や対人
恐怖症になったり,死にたいという思いに駆られたりする人もいる
○しろまる 臨床や被害者の鑑定の経験から,性犯罪の被害の際に同意なく撮影が行わ
れたことが被害相談や警察への届出,民事訴訟の提起の妨げとなり,被害者
の精神的回復を遅らせる一因ともなっており,同意なき撮影が被害者を黙ら
せる手段として用いられる例が増加していると感じる
2 新たな罪の創設の要否・当否
○しろまる 盗撮行為は,主に都道府県の迷惑防止条例で規制されているが,条例によ
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って,対象となる行為や刑の重さが異なるため,不都合が生じており,軽犯
罪法や建造物侵入罪により取り締まることができる場合もあるものの,軽犯
罪法は刑が軽く,建造物侵入罪は撮影対象者が被害者にならないという問題
があることから,全国一律に盗撮自体を規制することが必要
○しろまる いわゆるリベンジポルノ法では,盗撮自体が犯罪とされておらず,また,
, , ,
迷惑防止条例は 都道府県によって内容が異なる上 法定刑も軽いことから
新たな処罰規定が必要
○しろまる 機器の発達により盗撮が巧妙化する一方,画像が容易に流出し得る状況に
。 , ,
ある インターネット上に流出すると 画像の回収が非常に困難であるため
被害結果が重大なものとなることから,法律による対処が必要
○しろまる 撮影データやその記録媒体を没収・消去の対象とする前提として撮影行為
を処罰対象とする必要性が高い
○しろまる 同意のない撮影行為が検討対象とされているが,同意に瑕疵がある場合と
して,例えば,顔を写さない約束であったのに写された場合,撮影したもの
を個人で持っている約束であったのに他人に拡散された場合,拡散の同意は
したが実際の拡散の範囲が異なっていた場合など,様々な場合が想定され,
同意の有無の認定に問題が生ずる
3 新たな罪の保護法益
○しろまる 同意なく性的な姿態を撮影する罪をプライバシーを侵害する罪として構成
することも可能であるが,性的な姿態が撮影され,それがデータとして固定
化されることで撮影対象者の羞恥心,屈辱感,重大な不安などの感情を引き
起こす危険性が類型的に高いことを重視し,性的自己決定権を損なう犯罪と
して位置付けた上で,撮影対象,撮影場所,行為態様などについて検討すべき4 新たな罪の処罰対象とすべき行為
○しろまる 撮影する行為によって視覚的情報が固定化され,データが拡散する危険性
が生じるのであって,見る行為とは次元の異なる法益侵害性が認められるか
ら,撮影という行為に着目した処罰規定を検討する必要がある
○しろまる 被害者には,撮影者の目的にかかわらず重大な被害結果が生じるから,強
制わいせつ罪において必ずしもわいせつ目的が必要ではないとされたことも
踏まえ,撮影の罪の構成要件としてわいせつ目的を要するものとすべきでは
ない
○しろまる 被害者が泣き寝入りしないよう,撮影された画像を第三者に提供した者,
譲り受けた者,インターネット上に拡散した者,売却して利益を上げた者も
処罰の対象とする必要がある
○しろまる 新たな処罰規定を設ける必要があると指摘されている類型としては,1被
害者に気付かれずに密かに性的な姿態を撮影する類型(撮影されていること
の認識があれば同意しなかったと推定されるもの ,2強制性交等罪等の犯行)状況を撮影する類型(性交等に同意しておらず,当然,撮影にも同意してい
ないもの ,3アダルトビデオ出演強要など欺罔や威迫によって性的な姿態を)- 3 -
撮影することに同意させられた類型(撮影の同意に瑕疵があるもの)に分け
られるように思われ,処罰規定を検討する際には,類型ごとに構成要件など
を検討する必要がある
○しろまる いわゆるアダルトビデオ出演強要問題については,性的行為と撮影行為が
密接不可分の関係にあり,性的行為の同意の有無に疑念が生ずる事例が含ま
れていることから,まずは,強制性交等罪や準強制性交等罪の適用の問題と
して,暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件についての議論を踏まえなが
ら,性的行為についての同意・不同意の限界を明確化する作業が必要
5 その他
○しろまる 性的な姿態の画像の問題については,被害申告は望まないが画像の消去は
望むという被害者もいるので,犯罪の成否を問わず,プライバシー情報のコ
ントロールという意味で,個人を特定できる情報,取り分け性的な情報に対
して個人がアクセスし,消去を求める権利を拡大した上で,その権利を実現
する方法を検討するといった被害者の救済の方が重要
(2) 撮影された性的な姿態の画像の没収(消去)を可能にする特別規定を設けるべ
きか
1 捜査・公判における画像の没収・消去の実情
○しろまる 捜査実務においては,刑罰として没収できないものについては,画像を消
去する前提として,捜査官が被疑者・被告人から所有権放棄を得る努力をし
ているが,相当長期間にわたって放棄に応じない者も珍しくなく,対応に苦
慮している
○しろまる 強姦等の犯行の様子を撮影したビデオカセットの没収を認めた平成30年
最高裁決定は,撮影の目的が,被害者が捜査機関に被告人の処罰を求めるこ
とを断念させ,刑事責任の追及を逃れようとするためであるとして,記録媒
, , ,
体を犯罪供用物件として没収できるとしているが それ以外の場合 例えば
性的満足を得る目的や営利目的で撮影した場合については,判断が示されて
おらず,そのことが検察官が没収求刑しないことに影響しているのではないか2 没収・消去を可能にする特別規定を設けることの要否・当否
○しろまる 被害者にとっては,画像が存在していること自体が恐怖であり,いつか誰
かに見られて何か言われるのではないか,交際相手や結婚相手,成長した子,供に見られたらどうしようなどと不安や恐怖を抱え続けるものであるところ
加害者は,そのような状態を利用したり,画像を保持したりすることで,利
益を得ているのであるから,法律上,没収を認めるべき
○しろまる 同意なく撮影された画像を取り戻すには多くの手続を要し,弁護士を介し
たとしても遅々として進まない上,PTSDなどで体調の悪い被害者がその
ような負担を抱えることは大変であるから,画像の消去等がより迅速に行え
るような法整備が必要
○しろまる 同意なく撮影された性的な姿態の画像を他人に持たれている限り,被害者
は傷を負い続けることになるので,所持者に,それが同意なく撮影された画
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像であることの認識がない場合であっても,没収はできるようにすべき
○しろまる 被害の拡大を防止する観点から,性的な姿態が撮影された記録媒体を没収
することが必要であるが,判例の理解を前提とすると,例えば,強制わいせ
つ罪の遂行の過程で撮影が行われた場合であっても,撮影自体が実行行為の
遂行を促進する効果を有し,実行行為と密接に関連する場合でなければ,犯
罪供用物件として没収することは困難であると解されるから,立法による対
応が必要
○しろまる 刑法19条による没収の対象は,犯行時に撮影した画像などの原本である
ところ,撮影した画像のデータの複製やスマートフォン・パソコン相互間等
でのデータの転送が極めて容易であることなど現在の社会情勢に照らすと,
現行法の没収対象物の範囲は狭きに失する
○しろまる デジタルデータに関しては,例えば,捜査としてクラウド上に保存してあ
るデータにアクセスしようとする場合には,本人からパスワードを聞かなけ
ればならないといった不都合があり,デジタルデータに関する刑法・刑事訴
訟法の在り方自体を考える必要があるのであって,性犯罪に特有の問題では
ない
3 特別規定を設ける上での検討課題
○しろまる 例えば,同意のない撮影行為を処罰対象とすれば,撮影されたデータが記
録された記録媒体は犯罪生成物件として没収が可能になるから,没収の議論
は,いかなる行為を処罰対象とするかの議論と関連付けて行う必要がある
○しろまる 刑法19条によって没収できるのは有体物であり,かつ,犯罪行為と直接
的な関連性を有するもの,すなわち原本に限られ,原則として複製物を没収
することができず,データの消去を命ずる措置を刑罰として科すことが困難
であるといった問題があるところ,データの複製が容易であることは性的な
画像に限った話ではないから,複製物を没収の対象に含めることを検討する
に当たっては,刑法典の没収規定全般に関する問題として検討するのかどう
かについて議論の余地がある上,データの一部のコピー,データの修正・加
工など,原本との同一性の認定が困難なケースにおいていかなる範囲で複製
物を没収・消去の対象とするかについて,刑法19条の趣旨に遡った検討が
必要
4 有罪判決を前提としない画像の没収・消去
○しろまる 現行法の没収は付加刑とされているから,他人の性的な姿態を同意なく撮
影する行為を処罰する規定を設けたとしても,没収は,当該行為について有
罪判決を得ることが前提となるが,捜査機関が性的な画像等を発見した時点
で既に撮影の罪の公訴時効期間が経過している場合や撮影対象者が処罰を望
, 。
まないという理由で起訴されない場合には 有罪判決を得ることができない
また,同意なく撮影された性的な画像を取得する行為を処罰する規定を設け
れば,犯罪取得物件あるいは犯罪生成物件として,取得者からの没収が可能
になるが,取得者が同意なく撮影された画像であることの認識を有しない場
合については,有罪判決を得ることができないこととなる。撮影する罪が犯
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され,その画像が残っていることによる法益侵害状態を解消する上で,その
画像の剝奪が付加刑でなければならないとする必然性はないから,有罪判決
を前提としない画像の没収ないし消去の仕組みを設ける必要がある
○しろまる 有罪判決を前提とせずに記録媒体の所有権を剝奪し,又はデータを消去す
る仕組みを設ける場合には,財産権の制約になることから,その可否や法的
根拠を検討するとともに,それと関連付けて剝奪・消去の要件や範囲を検討
し,記録媒体の所有者や画像データの保有者に対する手続保障の在り方も考
える必要がある
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第2 刑事手続法について
【第7回会議分まで】
1 公訴時効の在り方
(1) 強制性交等の罪について,公訴時効を撤廃し,又はその期間を延長すべきか
1 被害認識・被害申告をめぐる実情
〇 性犯罪は,被害として認識することが難しく,また,解離で記憶を失った
り記憶の保持が困難になったりすることが臨床上知られている。他方で,時
間がたって記憶の痛みにある程度耐えられるようになってから記憶がよみが
えることもあり,長期反復する虐待を受けていた人が30歳前後で被害を話
せるようになることも多い
〇 被害時に未成年である場合,解離によって被害の記憶を失うことがあるほ
か,自己の身に起きたことがよく分からずに被害認識に10年以上かかる例
もまれではなく,思春期以降に性的なことだと分かっても警察に届け出るよ
うな被害とは認識できない例がある。被害時に成人である場合,未成年より
, , ,
は短いが 被害認識に1年以上かかることが多く 特に知人からの被害では
見知らぬ人に突然襲われるという性暴力のイメージと一致しないため,被害
と認識できない例がある
〇 アンケートを実施したところ 「身体の一部や異物を口・肛門・膣に挿入さ,れた/させられた」被害に遭った者のうち,すぐに被害と認識できなかった
者の割合は63.6%,それらの者が認識までにかかった期間の平均は7.
46年であり,被害時の年齢が幼いほど期間が長いが,20〜30歳代でも
11年以上かかる者が一定数いた
〇 精神科臨床の経験からすると,単回の被害と比較し,継続的な性的虐待の
被害では,被害と認識していなかったり相談できなかったりしており,被害
が終わってから臨床に来るまでの期間の長短は,周囲の介入の仕方にもよる
が,成年に達したからといって被害を十分認識できるものではなく,30歳
前後にならないと一人ではなかなか被害を認識できないのが実情
〇 被害であると認識できても,被害者は,警察が事件として取り上げてくれ
るのか,警察に届け出て自分は安全なのかと迷い,フラッシュバックなどで
被害を口に出すことも難しい状況が続く。相手方との関係性の中で生じる継
続的な被害では,その関係を離れて安全が確保されて初めて警察に行くこと
を考えられるようになることもまれではなく,被害者が自分を責めているた
めに被害を言い出せないことも多い
2 精神的被害の継続や証拠の残存・散逸をめぐる実情
○しろまる 性犯罪については,被害者が長きにわたってトラウマで苦しむことが明ら
かになっている。他方,最近は,犯行状況の撮影が行われて映像が残ってい
る例も多いほか,被害直後に採取した証拠が冷凍保存されている場合もある
など,時の経過により変質しない証拠価値の高い証拠が残っている可能性が
高まっており,鑑定技術も進歩している
〇 犯人のDNAが採取できている場合には,公訴時効期間の延長等により,
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これまで公訴時効の完成が原因で検挙できなかった被疑者を検挙できる可能
性が高まり,逃げ得を許さなくなるという意味で効果がある
〇 犯人が画像を撮っている例や,被害者の関係者が録音している例があり,
容易に記録できる機器の増加により,そのような例が増加することが考えら
れるところ,処罰できるかどうかは事案ごとの判断であるが,公訴時効が完
成しなければ,少なくとも捜査を尽くした上で訴追の可否が判断されるとい
う意義がある
〇 公訴時効の趣旨の一つは法的安定性であり,訴追される側の利益も考えな
ければならないのであって,時の経過により,訴追される側の証拠も散逸す
るし,性犯罪の多くの事件で重要な役割を果たす被害者供述が,記憶の変容
により信用性に重大な問題を生じることがある
3 公訴時効を撤廃することの要否・当否
〇 被害者が成人の場合も含めて公訴時効を撤廃し,性犯罪は時間の経過によ
り許される罪ではないことを示すべき
〇 公訴時効の撤廃は,その犯罪には公訴時効制度の趣旨が妥当しないという
ことを意味する。平成22年に殺人等の公訴時効が撤廃されたのは,殺人に
ついては時間の経過により犯人が一律に処罰されなくなることは不当である,という意識が国民の間で広く共有されているとの理由によるものであったが
性犯罪についてそこまでの社会的合意ができているかは疑問があり,生命を
奪う犯罪である傷害致死罪の公訴時効が撤廃されていないこととの均衡から
も,現時点で性犯罪の公訴時効を撤廃することの説明は困難
4 上記3のほか,特別の取扱いをすることの要否・当否
〇 公訴時効の撤廃に問題があるとしても,諸外国のように,成年又は一定の
年齢まで公訴時効を停止し,その後,20年,30年たっても被害を訴えら
れるようにすべき。解離症状で記憶が失われていたり被害を認識できなかっ, ,たりする間に公訴時効が進行するのは 被害者にとっては不正義であるから
その期間は公訴時効を停止することも考えられる
〇 公訴時効制度は,犯人処罰の必要性と法的安定性の調和とも言われるが,
一般国民には理解が難しく,説得力のある説明がなされているとはいえない
から,性犯罪の被害の実情や証拠が残存している状況も踏まえ,被害者の視
点から再検討して制度を改正すべき
〇 公訴時効期間は,法定刑を基本的な基準として定められているが,現行法
, 。
上 特定の罪種について別の観点から異なる取扱いとすることも許容される
性犯罪については,1被害の害悪や影響が長期にわたって残存すること,2
被害者が被害と認識して相談・届出をすることができない場合や,被害認識
を形成しても,周囲の目や人間関係,被害を語ることへの心理的抵抗といっ
た様々な理由から被害申告が困難である場合が少なくないことから,特別の
取扱いをすることも検討に値するところであり,2については,特に年少者
に妥当する
〇 公訴時効期間を延長すると,証拠の散逸による誤判のおそれが生じないか
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が懸念されるが,検察官が立証責任を負うことなど立証に関わる刑事訴訟法
上の諸制度・仕組みが正しく機能する限り 「疑わしきは被告人の利益に」と,いう原則に従い,証拠によって認められる限りの事実が認定されるにとどま
るので,根拠のない有罪判決のおそれが高まることにはならない
○しろまる 被告人に有利な事情を示す証拠の散逸により防御が困難になるという指摘
については,検察官が十分な立証を行えるかという問題であるし,被疑者・
被告人の地位に置かれること自体についても,一般に,検察官は有罪の見込
みなく公訴提起することは許されないと理解されており,そのような原則に
従う限り,訴追される負担が理由なく広がることにはならない。そして,相
応の根拠がないのに重い負担が課されることにならないのであれば,時間が
たっていることによって特に不合理な負担が生じることにはならない
〇 長期間たってから被害と認識した場合,そもそも行為があったかどうかの
証拠が散逸し,客観的証拠が残っていない場合が多いと思われるし,仮に,
犯人の画像等が残っていたとしても,その人物が被疑者・被告人であるかと
いう識別の問題が生じた場合に,例えば,被疑者・被告人がその時間にはそ
こにいなかったという反証が証拠の散逸によって難しくなるし,同意の有無
やその誤信について争う場合に,被害者との関係性や当時の被害者の態度,
あるいは周囲から二人がどのような関係に見えたかといった反証のための有
利な証拠が散逸していることが考えられ,公訴時効の撤廃や停止については
慎重であるべき
5 特別の取扱いをする場合の運用上の課題
〇 警察では,捜査の過程で収集された証拠品や捜査資料を公訴時効の完成ま
で保管する必要があり,特に,DNA試料は冷凍庫で保管しているところ,
これらを保管するためのスペースの問題や,紛失・劣化への対応という課題
があるほか,被害の発生から長期間たってから被害認識ができて初めて警察
に届出がなされ,客観証拠が得られてない場合における立証の問題,警察の
限られた人的資源の配分・活用の方法についても考える必要がある
(2) 一定の年齢未満の者を被害者とする強制性交等の罪について,公訴時効期間を
延長することとし,又は一定の期間は公訴時効が進行しないこととすべきか
〇 被害者が子供である場合,親に被害を伝えても親が届出をしないことがある
ほか,監護者による性交など届出が大変困難なものがある。また,子供は,性
や性暴力に関する知識や理解の程度が大人と異なり,力が弱く,年長の加害者
からの脅しが強い恐怖となり得るので,言いくるめられたり脅されたりしてい
たら被害を話せないし,加害者が知人であると更に話せないので,一人で考え
て警察に届け出て捜査に関わることができる年齢になるまで,公訴時効を停止
させることが必要
〇 未成年者に対して繰り返し行われる性的虐待については,犯行日時が特定で
きないために公訴時効の起算点が定まらず,その結果,公訴時効が完成してい
るかもしれないことを理由として立件ができない事案があるが,未成年者につ
いて,一定年齢に達するまで公訴時効が進行しないこととすれば,この問題は
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解決できる
〇 時の経過によって性的行為についての合意の立証が難しくなるとの指摘があ
るが,監護者による事案や被害者がいわゆる性交同意年齢を満たしていない事
案では,合意の有無は問題にならない
〇 特に未成年者については,周囲の者も本人も被害を認識できないという問題
があるので,一定の年齢まで公訴時効の起算点を遅らせることが必要であると
考えるが,その方法については,例えば,被害者が30歳に達するまで全ての
性犯罪について公訴時効の起算点を遅らせる方法や,被害者が18歳未満の者
である場合に限り,28歳に達するまで公訴時効の起算点を遅らせるといった
方法が考えられる
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【第7回会議分まで】
3 いわゆるレイプシールドの在り方
被害者の性的な経験や傾向に関する証拠を公判に顕出することを原則として禁止
することとすべきか
1 捜査・公判における二次被害の実態
〇 弁護人が要証事実とは無関係な性的な事項に言及して被害者をおとしめるこ
とが現に法廷で行われており,例えば,被害とは関係がないとして公判前に裁
判所・検察官・被告人側で合意したにもかかわらず,弁護人が法廷で被害者の
職業に殊更に言及したり,弁護人が被害とは無関係の被害者の既往歴やピルの
服用に言及したりする例があるが,裁判所の訴訟指揮に任され,漫然と放置さ
れる例があるなど,裁判官により訴訟指揮に相当程度の違いがある
〇 警察官による個人差はあるが,被害を訴えたときに,警察官から,裁判で嫌
な質問をされるとか,過去の出来事を持ち出されるなどと言われて被害届を取
り下げた例があるし,すぐに警察に届け出なかったことを理由に,同意を疑わ
れる例もある。また,その場から逃げなかったことを理由の一つとして性犯罪
の無罪判決が出たり,これまでにいろいろな人と性的関係を持っているから今
回も同意があると推測して被害者の訴えを信用しなかったりすることが司法の
現場で起きており,社会全体に,被害者心理や危機的状況に置かれた人の反応
についての無理解,レイプ神話に基づくジェンダーバイアスがある
〇 見知らぬ人から被害に遭った女性が,法廷で,風俗や水商売の仕事に就いて
いたことに言及されることや,加害者との過去の関係以外の性関係が問題にな
, , ,
ることがあり また 警察の捜査の段階で二次被害的に言及されることがあり
明確な禁止規定が必要
2 現行法の下での対応の実情
○しろまる 被害者の証人尋問において,弁護人から被害者の性的な経験や傾向について
, , ,
質問がなされ 検察官が事件に関係がないとして異議を出した場合 裁判所は
弁護人の意見を聴き,関係がないと判断すれば質問を認めず,又は質問を変更
させることになり,仮に必要であったとしても,質問の方法が被害者を侮辱す
るものである場合には,質問の方法を変更させ,又は質問を止めさせることが
ある。また,裁判官は,裁判での被害者への配慮やレイプ神話などに関する専
門家の講演などを通じ,偏見に基づく不当な扱いをしていないか,二次被害を
与えていないかを常に心に留め,努力している
○しろまる 水商売に従事しているからといって性的行為に同意があったことにはならな
いという裁判例が集積されており,そうした被害者の属性そのものを重要な立
証事項と考えている弁護人は恐らくいないが,立証上,被害者の属性に言及せ
ざるを得ない事件があり,例えば,売春の支払金額でもめた,出会い系サイト
で知り合って性的関係を持ったことが家族や恋人にばれた,若い被害者が性的
な事柄への関心から積極的に関係を持とうとしたといった事案においては,同
意の立証のため,被害者の属性を争点とせざるを得ない
〇 公判前整理手続に付されていない場合,裁判所は争点を知らずに裁判に臨ん
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でおり,弁護人の質問が争点に関わりがあるのかが分からないまま,検察官が
適切に異議を述べずに放置され,それが裁判所の訴訟指揮が悪いという批判に
つながっている例もあるのではないか
3 新たな規定を設けることの要否・当否
○しろまる 被害者は,被害を訴えるといろいろなことを言われる,警察で嫌な質問をさ
れるといった情報をインターネットで検索しており,そのようなことを言われ
たら心身の状態が悪化する,生きていけないなどと考え,訴えることが難しく
なるので,統一した見解を明示し,不適切な質問や同意に関する誤った判断が
なされないよう,レイプシールド法を制定すべき
〇 法廷では不要・不適切な尋問は行われないことを明文で示し,被害申告を考
えている人に説明できるようにしておく必要があるし,不適切な反対尋問がさ
れない法律を整備しておくことが重要
〇 不適切な質問に対して検察官が異議を出すかどうかにかかわらず,質問され
た時点で被害者を侮辱するような事態が起きているのであるから,刑事訴訟法
に確認規定を設ける,研修を行う,指針を定めるといったことも含めて,何ら
かの手当てをすべき
〇 過去の性的な経験や傾向が,今起きている出来事の同意の有無には関わらな
いということが何らかの形で明確になれば,捜査段階の聴取の仕方が変わるな
どして,被害者の二次被害が減るのではないか。また,性被害に対する偏見や
先入観はいまだ大きく,証拠の関連性の判断全体にバイアスがかかっている可
能性があるから,レイプシールドの在り方の検討,レイプ神話・ジェンダー・
セクシャリティーに関する司法関係者への適切な研修を検討すべき
○しろまる 証拠の提出や尋問に当たっては,検察官による意見・異議と裁判所の裁定が
適切になされれば,関連性のない証拠や質問は排除されるはずであり,他方,
関連性・必要性がある場合にまで禁止する規定を置くことは,憲法で保障され
た反対尋問権を不当に制限するものであり,認められるべきでない
4 具体的な対応策の在り方
〇 被害者の性的な経験や傾向を立証することが被告人の防御に必要であれば,
それを一切認めないことは許されないので,仮に立法をするとしても,関連性
や必要性のない証拠の取調べを認めない,又は不相当な質問は認めないといっ
た現在の運用を確認する規定を置くことになると考えられるが,その際には,
前科証拠の扱いなども含め,関連性についての一連の規定を設けるのが筋であ
る。レイプシールドについてのみ規定を置くことについては,関連性や必要性
に関して裁判所が誤った理解・解釈をしているのであれば,特別な規定を置い
てそれを正す意味があるが,個別の事件における判断の誤りなのであれば,裁
判所内部での研修や運用面の指針の作成などの方法で対処すべき
○しろまる 個別の事件において証人の性的遍歴に関する質問や侮辱的な言葉の使用に対, ,する制限を決めることができる制度を設ける方法もあり得るし 運用において
公判前整理手続や事前の打合せで証拠提出や尋問の範囲を明確に定め,合意に
反する行為がなされないように強くコントロールして,適切な訴訟指揮や異議
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申立てができるようにし,それが機能するようになれば,証人となる被害者に
とっても予測可能性があり,利益になる
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【第7回会議分まで】
4 司法面接的手法による聴取結果の証拠法上の取扱いの在り方
司法面接的手法による聴取結果を記録した録音・録画記録媒体について,特別に
証拠能力を認める規定を設けるべきか
1 刑事訴訟法321条1項の運用の実情
○しろまる 検察官が請求した被害者の供述調書を不同意とされた場合には,被害者の証
人尋問請求をしなければならず,刑事訴訟法321条1項2号により証拠能力
が認められるのは,証人尋問を実施して相反供述とされた場合や,供述不能の
場合に限られる。供述不能要件の認定の運用は厳しく,検察官が証人の状態か
ら供述不能に当たると判断し,その供述調書を証拠請求しても,裁判所から,
実際に出廷することができないという事実を示すよう厳しく求められる例もある2 法廷で証言することに伴う負担
○しろまる 被害者が裁判官や被告人の前で証言することで,その内容が真実かどうかを
明らかにする必要があるというのは,トラウマ経験を持っている人に,ほぼ不
可能なことを要求するものであり,耐えられない出来事を経験して安全感や信
頼感が奪われた人が,非日常的な権威的で安全でないと感じられる場所に行く
ことで,緊張やストレスが高まって記憶へのアクセスが失われ,かえって適切
な証言ができなくなる,○しろまる 子供の心理に精通していない人が聴取するたびに子供の心の傷口は刺激され
警察の聴取や裁判での証言の後に状態が悪化したり,事件について聴かれるこ
とが嫌だとカウンセリングに来なくなったりする子供がいるし,子供にそのよ
うな負担を負わせたくないとして届出を諦める保護者もいる。年齢を問わず,
被害を一から話すことは,その場で正に被害が起きているかのような苦痛を感
じかねないことであり,大人であっても意見陳述や証言で泣き崩れる人がいる
し,子供の脆弱な心にはそれが非常に大きな負担となる
3 司法面接的手法による聴取の在り方
○しろまる 性犯罪の被害者は,成人であっても,聴取の当初は被害を過少に申告するな
ど,適切に被害を申告することが難しい状況にあるので,全件について司法面
接を行うべきとの医師の指摘がある
○しろまる 司法面接は相対的に優れた手段であるにすぎず,司法面接さえすれば事実が
全て分かるとか,子供が全く傷つかないというわけではなく,司法面接のとき
に既に回避的で話せなかったり,被害の最中から記憶の変容が起きたりする例
もあり,司法面接に至る経過も供述の在り方も様々であって,司法面接の技術
にも差異がある。とはいえ,子供の負担や記憶の問題を考えれば,司法面接に
より質の高い供述が得られることが望ましく,同時に,司法面接の手法を評価
していくことも必要
4 特別に証拠能力を認める規定を設けることの要否・当否
○しろまる 子供の聴取においては,年齢,発達レベル,記憶に対するトラウマの影響,
暗示性,バイアスなどを考慮する必要があるとされ,また,子供から正確な回
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答を得るためには,サポーティブな姿勢,すなわち,安心できる環境や対応が
必要であり,子供の限られた語彙に合わせて記憶を聴き取り,ノンバーバルな
情報を読み取る必要がある。司法面接の実施までの間に記憶が汚染される可能
性を考慮しても,少なくとも司法面接の時が最も適切な聴取の段階であり,子
供の発達や心理に精通して訓練を受けた人による司法面接の録画が情報として
最も適切であるから,主尋問においては司法面接の方が正確であるし,証言の
信用性が争われる場合には,聴取者や,映像を見て誘導の有無を判断できる司
法面接に精通した人を尋問する方法が考えられる
○しろまる 司法面接的手法による聴取結果を記録した録音・録画記録媒体を証拠として
用いることを認める必要性として,1捜査段階の複数回の取調べや公判廷での
証言で被害を追体験させられることは,心身に多大な悪影響を与え,その後の
人生にも影響を及ぼすところ,供述の反復によって生じる問題は,遮蔽やビデ
オリンクなどの証人保護措置では対処できないこと,2誘導や暗示を受けやす
く,記憶の変容を生じやすい年少者の特性から,初期の供述を確保しておく必
要があり,司法面接的手法により聴取された供述の方が信用性が高い場合があ
るので,これにより正確な事実認定を確保する必要があることが挙げられる。
特に子供の場合,1について,心身の健全な成長に与える悪影響が重篤である
といえる
5 具体的な規定の在り方
○しろまる 子供に対して誘導・暗示的な質問がされないように,また,二次被害を起こ
さないように,必要な情報を客観的に聴取して録画することは,証言の変遷を
防ぎ,被害者を保護するために必須のこととして実施されているので,そのま
ま証拠として採用されるべき
○しろまる 子供や知的障害者などの供述弱者の供述をいかに刑事裁判の証拠とするかと
いう問題であり,証拠法上の手当てが必要であるが,反対尋問なしに証拠能力
を認めると被告人が納得できず,再犯防止にもならないと考えられるから,主
尋問に代えて用いることができる諸外国の制度を参考にすべき
○しろまる 司法面接的手法による聴取結果を記録した録音・録画記録媒体は,被害状況
等を立証するために用いる場合には伝聞証拠に当たるところ,刑事訴訟法は,
証拠とする必要性と信用性の情況的保障の強弱の兼ね合いによって伝聞証拠の
例外を認めている。これを前提に検討すると,規定の在り方としては,1刑事
訴訟法321条1項3号のように,反対尋問の機会を与えることなく証拠能力
を認める規定と,2同法321条の2のように,反対尋問の機会を保障した上
で,主尋問に代えて証拠能力を認める規定とが考えられる。1の方法は,高度
の必要性がある場合に限られると思われるが,性犯罪の被害者等の中でも,年
少者については,繰り返し被害の状況を供述することによる心的外傷の症状の
悪化等が極めて重篤であるとされ,公判期日において証言をすれば,将来にお
いて心身の故障に至るおそれが現実的なものとして想定されるので,高度の必
要性が認められると思われる。信用性の情況的保障については,同法321条
1項3号と同等の情況が必要となると考えられ,事件から近い時期に誘導や暗
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示を排除した聴取手法を用いるといった司法面接の要素や,供述に至る経緯,
聴取者の立場等の要素を要件ないし考慮要素として明文化することが考えられ
る。2については,反対尋問の機会が保障されているので,1ほど厳格な要件
を設ける必要はないが,裁判官の面前における供述ではなく,信用性の情況的
保障が類型的に高いとはいえないため,先ほどと同様,司法面接の手法に着目
した特信性の要件を設けることによってこの点を補うことが考えられる
○しろまる 現在の代表者聴取は,警察・検察官・児童相談所が行っているところ,どれ
だけ訓練を受けていても,捜査や訴追を行い,被害を調べる立場の者による聴
取では暗示・誘導のおそれが払拭できないから,医師や臨床心理士など中立な, ,第三者が聴取すべきであるし 仮にそのように得られた供述であったとしても
詳細かつ迫真的なうその供述が語られることがあり,当然に信用性が認められ
るわけではないから,被告人が事実を争う場合には,主尋問に代替するものと
しても証拠能力を認めるべきではなく,証人尋問を行い,証人が記憶がなかっ
たり泣き崩れたりして証言ができない場合に限り,刑事訴訟法321条1項2
号の要件に従って判断されるべき
6 特別に証拠能力を認める規定を設ける場合における検討課題
○しろまる 憲法で保障された証人に審問する権利を剝奪するものであるから,証言能力
が年齢によりかなり差があることを踏まえ,司法面接でなければならない人の
範囲をどう考えるのかという視点が必要であるし,被疑者として取り調べられ
ている人についても司法面接を取り入れることを考えてほしい。また,そうし
て得られた供述が常に正しいわけではないから,証拠能力を認めるには,その
供述を裏付ける独立した証拠を要するとすることの検討が必要
○しろまる 専門家が聴取することが最適であるし,検察庁・警察・児童相談所という場
所自体が,悪いことをした人のことを話す場所であるという暗示性を持つ可能
性があることも考えるべきである。また,被害に遭ってすぐに警察に行く人は, ,少ないので 聴取の前に事件について保護者等と話している可能性が高いから
全ての事件で記憶汚染の可能性があると考え,誰とどのような話をしたかに関
する資料を集めておく必要がある
○しろまる 司法面接の運用についても更なる検討が必要であり,記憶の汚染を防ぎ,子
供の心を守りながら正確に記憶を聴取する上で,子供の発達や心理についての
研修が多く行われる必要があるし,それらに精通して訓練を受けた人が,何が
重要であるかを理解した上でプロトコルを遵守して聴取を行うことが必要