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令和3年1月6日
公 安 審 査 委 員 会
当委員会は,公安調査庁長官から,無差別大量殺人行為を行った団体の規制に
関する法律(以下「法」という。
)に基づく処分の請求を受け,本日,以下のと
おり,決定をした。
決 定 の 概 要
【被請求団体】
麻原彰晃こと松本智津夫を教祖・創始者とするオウム真理教の教義を広め,これ
を実現することを目的とし,同人が主宰し,同人及び同教義に従う者によって構成
される団体
(注)本件処分請求は本件観察処分の期間の更新を求めるものであるから,被請求
団体の表記としては,本件観察処分の対象とされた団体の表記を維持した。
【決定主文】
1 平成15年1月23日付け,平成18年1月23日付け,平成21年1月23日
付け,平成24年1月23日付け,平成27年1月23日付け及び平成30年1月
22日付けで期間更新決定を受けた,平成12年1月28日付け当委員会決定に係
る被請求団体を,3年間,公安調査庁長官の観察に付する処分の期間を更新する。
2 被請求団体は,
法第5条第5項において準用する同条第3項第6号に規定する
「公
安審査委員会が特に必要と認める事項」として,次の事項を公安調査庁長官に報告
しなければならない。
(1) 被請求団体の構成員に関する出家信徒及び在家信徒の別並びに出家信徒の位階
(2) 被請求団体作成のインターネット上のホームページに係る接続業者名,契約名
義人の氏名及び掲載の管理・運営責任者の氏名
(3) 被請求団体(その支部,分会その他の下部組織を含む。以下,この項において
同じ。
)の営む収益事業(いかなる名義をもってするかを問わず,実質的に被請
求団体が経営しているものをいう。
)の種類及び概要,事業所の名称及びその所
在地,当該事業の責任者及び従事する構成員の氏名並びに各事業に関する会計帳
簿を備え置いている場所
(その会計帳簿が電磁的記録で作成されている場合には,
当該電磁的記録の保存媒体の保管場所)
【決定理由の要旨】
1 被請求団体の現況
被請求団体は,団体の活動として,平成6年から平成7年にかけて,無差別大量
殺人行為である,いわゆる「松本サリン事件」及び「地下鉄サリン事件」
(両サリ
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ン事件)を敢行した団体である。
被請求団体は,前回の期間更新決定時には,
「Aleph」
,山田美砂子(以下「山田」
という。
)を中心とする集団(
「山田らの集団」
)及び「ひかりの輪」を中心として
活動しており,中心として活動する集団に変化のないまま,現在に至っている。
「Aleph」は,被請求団体の中で最多の構成員を擁する集団であり,麻原彰晃こ
と松本智津夫(以下「松本」という。
)及び松本の説いたオウム真理教の教義への
絶対的帰依を明示的に強調して活動していること,松本が創設した組織構造や修行
体系を継承していること,出家構成員の大多数が両サリン事件当時からの構成員で
あることなどから,現在も,本件観察処分の対象とされた団体と基本的性質を同じ
くするものと認められる。
また,
「山田らの集団」は,20名以上の構成員を擁し,構成員を集めた行事等
を継続的に実施している集団であり,松本及び松本の説いたオウム真理教の教義へ
の絶対的帰依を隠さずに活動していること,集団内で最も位階が高い山田が指導的
立場にあり,松本が創設した出家制度や修行体系を継承していること,中心的に活
動する山田は両サリン事件当時からの出家構成員であり,構成員の大多数が過去に
「Aleph」に所属していた者であることなどから,現在も,本件観察処分の対象と
された団体と基本的性質を同じくするものと認められる。
さらに,
「ひかりの輪」は,そもそも,松本に帰依し,松本の説いたオウム真理
教の教義に従う者によって,観察処分を免れ,松本の意思を実現することを目的と
して組織されたものであるところ,現在も,多数の構成員を擁する集団であり,表
面上は松本やオウム真理教との関係を否定しつつも,実質的には松本及び松本の説
いたオウム真理教の教義に絶対的に帰依することを説いていること,位階制度等を
前提とした組織構造や,松本が創設した修行体系の基礎的・本質的部分を維持して
いること,両サリン事件当時,
「正大師」の地位にあった上祐史浩(以下「上祐」
という。
)が代表役員であり,構成員の約半数が両サリン事件当時からの構成員で
あること,
「ひかりの輪」が「脱麻原」の取組や「反麻原」の活動と主張するもの
は,過去の過ちに対する真摯な反省に基づき,その在り方自体を変化させていくも
のとして実施されたものとは認め難いことなどから,依然として,本件観察処分の
対象とされた団体と基本的性質を同じくするものと認められる。
2 観察処分の期間の更新の要件を満たすと認められること
松本の死亡後も,
「Aleph」及び「山田らの集団」においては,松本を「グル」
等と尊称するなどし,松本及び松本の説いたオウム真理教の教義に絶対的に帰依し
ていること,松本が行った危険な説法を含む教本等を使用し,松本及び松本の説い
たオウム真理教の教義に絶対的に従う意識を構成員に扶植していることなどが認め
られ,また,
「ひかりの輪」においても,オウム真理教の教義の根幹部分を維持し,
実質的には松本及び松本の説いたオウム真理教の教義に絶対的に帰依することを説
いていること,
「聖地巡り」等を通じ,松本やシヴァ神への信仰を継続しているこ
となどが認められるなど,いずれの集団についても,現在においてもなお,両サリ
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ン事件の首謀者である松本の過去の言動及び松本の説いたオウム真理教の教義が,
その存立・運営の基盤をなしており,松本が,その活動に絶対的ともいえる影響力
を有しているものと認められる(法第5条第1項第1号)。また,
「ひかりの輪」については,両サリン事件当時,被請求団体の役員であっ
た上祐が,現在も,代表役員として,その意思決定に関与し,かつ,事務に従事し
ていることは明らかである(法第5条第1項第3号)。さらに,
オウム真理教の教義は,
殺人を暗示的に勧める内容を含んでいるところ,
いずれの集団においても,現在に至るまで,かかる危険な教義が破棄ないし変更さ
れたと認められる事実はなく,その教義が構成員に周知徹底されており,構成員に
おいても,その教義に従う意思を有しているものと認められるから,現在も,殺人
を暗示的に勧める「綱領」を保持していると認められる(法第5条第1項第4号)。上記に加え,いずれの集団も,両サリン事件を組織的かつ秘密裏に実行すること
を可能とした,一般社会と隔絶した独自の閉鎖社会を維持していることなど,現在
も,無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実があると認めら
れる(法第5条第1項第5号)。その上で,
いずれの集団も,
公安調査官の立入検査の際に非協力的な姿勢をとり,
公安調査庁長官への報告義務の懈怠を繰り返すなど,依然として,その体質は閉鎖
的で透明性に欠けるというほかない上,欺まん的な組織体質も認められ,その活動
状況を把握することが困難な実情にあることなどから,引き続きその活動状況を継
続して明らかにする必要があることは明らかである(法第5条第4項)。以 上
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【参 考】
(決定に至る経過等)
令和2年10月26日 公安調査庁長官が当委員会に対し観察処分の期間の更
新を請求
同年11月20日 被請求団体から意見陳述書を受理
同年12月14日 被請求団体からの口頭による意見陳述の聴取日
(ただし,いずれの集団も出頭せず)
同3年 1月 6日 観察処分期間更新決定

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