不払い養育費の確保のための支援に関するタスクフォース第5回資料1公的機関による養育費の立替払い制度・取立て制度について
本資料は,公的機関による養育費債権の立替払い制度及び取立て制度のそれぞれに
ついて,現時点で考えられる具体的な制度像及びそれらの実現のために検討すべき論
点について整理をしたものである。
第1 公的機関による立替払い制度
公的機関が,
ひとり親家庭の子について,
その監護に必要な費用の一部を監護親
又は子本人に対して予め支払い,
その後に,
扶養義務者からその義務の範囲内で求
償をするという方向性である。
後述の強制徴収制度とは異なり,
扶養義務者の資力
が不十分な場合であっても,
速やかに子の監護に必要な費用を子に届けることがで
きるため,最も広範な支援が可能となる。
もっとも,
公的機関による立替払いについては,
以下のような点について検討を
する必要がある。
論点
しろまる 公的機関が立替えた金銭を回収することができなかった場合に,その損失を国
民の税金で負担することについて国民の理解が得られるか。
しろまる 権利行使よりも立替払いの方が容易に金銭を得られることとなった場合に,監
護親が真摯に権利行使をしなくなったり,
義務者が履行をしなくなったりする事態
(モラルハザード)が生じないか。
しろまる 広範な立替払いを実施することとした場合には,膨大な回収事務が生ずること
となるが,当該事務の処理を担うことができる公的機関があるか。
しろまる 回収の実効性を高めるために,
義務者の収入,
資産等を把握するための制度を整
備する必要はないか。
しろまる 公的機関の求償権と,養育費債権者の請求権(残額又はその後に発生するもの)
との優先関係をどのように規律するか。
不払い養育費の確保のための支援に関するタスクフォース第5回資料2しろまる 養育費の取決めが必要的なものとされていない現行制度下で公的機関による立
替払い制度を導入することの相当性があるか。
1 社会給付と強制徴収公債権としての求償を組み合わせるスキーム
ひとり親家庭に対して一定期間・一定額手当を給付(同額で養育費債権消滅)
+ 義務者に対して扶養義務の範囲での求償に関する強制徴収公債権を取得
対象となる子 【1】全ての子(死別も含む)
【2】非監護親(潜在的養育費支払義務者)がいる子
【3】監護親が養育費に関する債務名義を有している子
論点
(全体について)
しろまる 養育費に関する権利義務は本来的に私法上のものであるにもかかわらず,公的
機関が立替払い(給付)をすることによって,求償権が強制徴収公債権となること
を正当化することができるか。
しろまる 全ての非監護親を対象とすべきか。
申請主義とすること,
監護親の資力が一定未
満であること,権利行使(債務名義に基づく強制執行)を試みたにもかかわらず不
奏功であったこと等を要件とすることについて,どう考えるか。
しろまる 公的機関が立替払い(給付)をする期間及び金額をどのように定めるか。
しろまる 偽装離婚等による制度の不正利用をどのように防ぐか。(【1】について)
しろまる ひとり親家庭に対する社会的給付である児童扶養手当(死別の場合には遺族基
礎年金)との関係をどのように整理するか。(【1】
(死別を除く)及び【2】について)
しろまる 公的機関が求償する場面において,監護親が養育費に関する債務名義を有して
いない場合に,非監護親の扶養義務の内容をどのような手続によって定めるか。
不払い養育費の確保のための支援に関するタスクフォース第5回資料3(
【2】及び【3】について)
しろまる 一方の親と死別した子は,
【1】であれば公的給付を受けられるのに対し,
【2】
及び【3】では受けることができないこととなるが,その取扱いを正当化すること
ができるか。特に,
【2】では,非監護親が具体的扶養義務を負わない場合(例え
ば,病気により収入が全くない場合)であっても,公的給付が支給されることとの
関係で,公平性を害することはないか。(【3】について)
しろまる 支援を受けることができる子の範囲が,監護親が養育費に関する債務名義を有
しているか否かにより変わることとなることについて,どのように考えるか。
しろまる 本来は養育費の支払能力がない場合等に,公的給付を受けることのみを目的と
した債務名義が作成されることとなるおそれはないか。
しろまる 公的機関が求償に関する強制徴収公債権を取得することを懸念して,義務者が
養育費に関する債務名義の作成に協力しなくなるのではないか。
2 弁済による代位と強制執行を組み合わせるスキーム
一定期間,回収不能の有名義債権のうち一定額を弁済による代位で取得
+ 義務者に対して行使(私債権・強制執行)
論点
しろまる 保護の対象を債務名義を有する債権者とし,支援を受けることができる子の範
囲を限定することとなることについて,
どのように考えるか。
一定の者に限って公
的機関が立替払い(代位弁済)することに公平性の観点から問題が生じないか。
しろまる 私債権の行使として強制執行による場合に,回収の実効性はどうか。
しろまる 公的機関が弁済による代位を行った段階で,公債権に性質を切り替えることが
可能か。仮に可能としても,債務名義を有する債権者に対してのみ,立替払い(代
位弁済)を行い公債権として保護することに公平性の観点から問題が生じないか。
不払い養育費の確保のための支援に関するタスクフォース第5回資料4しろまる 公的機関による代位行使の場面でも,
強制執行における養育費請求権
(扶養義務
に係る定期金)の特例に関する規律の適用があることとするか。
しろまる 本来は養育費の支払能力がない場合等に,公的給付を受けることのみを目的と
した債務名義が作成されることとなるおそれはないか。
しろまる 公的機関が義務者に対して行使(私債権・強制執行)することを懸念して,義務
者が養育費に関する債務名義の作成に協力しなくなるのではないか。
第2 公的機関による取立て制度
公的機関が,監護親(又は子)に代わって,養育費請求権を回収するという方向
性である。
公的機関による立替払い制度と異なり,
給付する又は金銭を弁済するこ
とによる直接的な財政支出はないものの,仮にこの方向性で検討を進める場合に
は,以下のような点について検討をする必要がある。
論点
しろまる 公的機関の支援を利用することができる期間を限定するか。仮に限定する場合
には,どの程度の期間とすべきか。
しろまる 公的機関の支援の範囲を債務名義成立後に限定するか。債務名義成立過程への
支援も含めるか。
しろまる 公的機関の支援の範囲を債務名義成立後に限定した場合,公的機関が義務者に
対して取立てすることを懸念して,
義務者が養育費に関する債務名義の作成に協力
しなくなるのではないか。
しろまる 公的機関の支援を利用するための資力要件等を設けるか。
しろまる 養育費の取決めが必要的なものとされていない現行制度下で公的機関による取
立て制度を導入することの相当性があるか。
不払い養育費の確保のための支援に関するタスクフォース第5回資料51 強制徴収型
権利者からの申立てを受けた公的機関が権利者に代わって強制徴収の方法で取り
立てるもの
論点
しろまる 私債権が強制徴収公債権に転化することを理論的に説明することができるか。
しろまる その他の債権との優先関係等についてどのように整理するか。
しろまる 代理的な強制徴収を行う機関の体制や,当該機関の運営に要する財源について
どのように考えるか。
2 公的機関による強制執行手続代理型
公的機関(含:弁護士等に再委任)が権利者を代理して,独自に義務者の所在や財
産を調査・把握し,請求行為や強制執行手続の申立て等を行うもの
論点
しろまる 裁判手続において,
行政機関が一方当事者を代理することについては,
手続的な
公平性の観点から問題とならないか。
3 本人による手続遂行支援型
公的機関(含:弁護士等に再委任)が義務者の所在や資産について情報収集・提供
し,それを権利者に提供して,権利者本人が強制執行の方法で取り立てるもの
論点
しろまる 強制執行手続は権利者本人が遂行することとなるため,現行の養育費債権に関
する調停・審判手続や強制執行手続について,
権利者自らが簡易迅速に遂行するこ
とができるようにする観点から,
手続的負担の軽減を図り,
更に利便性を高めてい
不払い養育費の確保のための支援に関するタスクフォース第5回資料6くことが前提となるのではないか。
また,
改正民事執行法により新設された第三者
からの情報取得手続等の執行手続や,
家庭裁判所の履行勧告や履行命令の手続の更
なる活用と併せて検討を行うことが必要となるのではないか。
しろまる 行政機関が一方当事者を代理することにはならず,手続的な公平性の観点から
の問題は解消されるものの,
権利者に対する強制執行手続全般に対する法的支援の
拡充と併せて検討することが前提となるのではないか。
第3 公的機関による立替払い制度及び取立て制度の併存可能性
しろまる 両方策は互いに相反するものではなく,
今後の検討に当たっては,
両方策を組み
合わせていく方向性も考えられるのではないか。
以 上

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