議事録


法務・検察行政刷新会議(第3回)
議事録
第1 日 時 令和2年8月27日(木) 自 午後 1時01分
至 午後 3時03分
第2 場 所 法務省20階第1会議室
第3 議 題 1 検討すべき具体的事項についての意見交換(続き)
2 「検察官の倫理」に係る当局からの説明
3 「検察官の倫理」についての議論
4 その他
第4 議 事 (次のとおり) -1-議 事
しろまる保坂事務局 それでは,ただいまから法務・検察行政刷新会議の第3回会議を開催いたしま
す。
しろまる鎌田座長 本日は大変お忙しい中,御出席賜りまして誠にありがとうございます。
まず,出席状況についてですが,本日は委員等の皆様,全員御出席いただいております。
ただし,冨山委員におかれましては御所用のため午後1時30分頃に御退席予定であると伺
っております。また,山室惠元委員の後任といたしまして河合健司委員が新たに就任され,
今回の会議から御出席を頂いていますので,河合委員より自己紹介を頂きたいと思います。
河合委員,お名前と御所属,御専門等の自己紹介をお願いいたします。
しろまる河合委員 河合でございます。どうぞよろしくお願いします。私は平成29年4月に定年で
退官するまで,約37年間ですか,裁判官として主に刑事裁判を担当してまいりました。実
務以外では司法研修所の司法修習生に対する教官,これが比較的長い,7年ぐらいやってお
りました。現在は第二東京弁護士会におきまして弁護士をしております。どうぞよろしくお
願い申し上げます。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
それでは,議事に移らせていただきます。
まず,議事1番,検討すべき具体的事項についての意見交換です。これは前回,途中まで
で途絶えておりますので,前回御出席いただいていなかった委員の皆様から,まず,この会
議で検討すべき具体的事項等について御発言を頂ければと思っております。前回も1人5分
以内という時間制限を課しておりましたので,等しくそのような形で御発言を頂きたいと思
います。それによりまして委員全員の御意見を頂いたということになりますので,その後に
意見交換に移りたいと思います。
それでは,最初に,前回御欠席でありました冨山委員,お願いいたします。
しろまる冨山委員 どうもありがとうございます。資料の中の最後の方に,法務・検察行政刷新会議
意見書,今回の三つの論点というのを用意しております。ちょっと長いので下線のところだ
け,飛ばしてさっと読んでいきます。いろいろ私なりに,皆さんの御意見とかをいろいろ伺
って,自分なりにやや青臭いところまで遡って整理したものです。読んでいきます。
今回提起されている三つの問題と,そのきっかけとなった三つの事件に対する国内外の強
い反響の背景には,1刑事訴訟手続が追求すべき二つの価値,すなわち犯罪の摘発・抑止に
関わる真実究明と,被疑者・被告人の人権保障に関わる適正手続との間における緊張関係の
問題,もう一つは,三権分立において非政治部門である司法(裁判所)と,政治部門である
立法及び行政との間で,検察と法務がそれぞれ組織レベル,個人レベルで取るべき立ち位置
の難しさ,この二つの根本問題があるように私は感じました。
村木厚子さん事件に端を発した前回の在り方検討会議においても,この根本的な問題構図
がやはり論じられているので,今回も,これはやはり普遍的,恒常的な重要問題なので,本
刷新会議でもその意識を持つということを私は期待しています。
その脈絡で,論点1について,倫理問題についてですが,これは倫理問題と検察庁及び法
務省との政治部門との距離感がやはり私はリンクすると思っています。真実究明,すなわち
検察官の実体的真実主義的役割,あるいは準司法官性に傾くほど,検察官の行動倫理に関す -2-る要請として,組織上・役職上はもちろん個人としても,政治部門である内閣や国会との一
定の距離を置くという議論にやはり私は傾くと思います。他方,検察官に対して,また高い
廉潔性を公私問わず国民が期待するのは,私は自然な流れだと思います。ましてやネット時
代の到来で,公私の区別なく言動が世間,すなわち主権者ですが,の目にさらされる現代的
な状況においては,これは事のよし悪しは別,私は実は余りいいことだと思っていないんで
すけれども,ただよし悪しは別として,準司法官であり,かつ捜査権,公訴権に関わる大き
な裁量的権力を有する検察官に対する国民の目は,より高官になるほど厳しくならざるを得
ないです。
ちょっと飛ばしていただいて,この刷新会議においては,かかる刑事司法が追求すべき二
つの価値の間のバランス論を基盤に,検察官の倫理問題に連動し,かつその背景にある政治
部門(内閣に直属する法務省を含む)と準司法官的性格を持つ検察ないし検察庁との間の距
離感,両組織の人事システム上,キャリアパス上の位置関係についての議論は私は避けて通
れないと思っています。
論点2,法務行政の透明性,文書問題です。これは,やはり法務省の組織経営の在り方が
あると思っていて,官僚組織全体がかかる意味でいろいろな問題が,これは実は法務省に限
らず,起きているわけです。多くの省庁で人材の劣化やモチベーションの低下が指摘されて
います。実際,若い世代の多くにとって,中央の官僚組織のキャリア職は,これははっきり
言ってしまいますけれども,ベスト・アンド・ブライテストが志望する就職先ではなくなっ
ています。これは単なる給料の問題ではなくて,やりがいや自己実現欲求を含めたトータル
な動機づけ体系として,いまだ強固な終身年功秩序の呪縛の中にあるキャリア官僚の仕事が
魅力的ではなくなっているということです。これは,恐らく法務省も例外ではありません。
ちょっと飛ばしていただいて,こういう事案が繰り返し生じる背景には,やはりこうした
構造矛盾の中で国家公務員制度,取り分けキャリア官僚制度をめぐる制度疲労と,それに起
因するモラル低下が背景にあると私は思っています。
法務省については,こうした多分,霞が関共通の問題に加えて,最高幹部ポストの多くを
法曹資格者,取り分け検察庁出身者がほぼ固定的に年次順繰りで占める慣行となっており,
これははっきり言いますけれども,かなり硬直的な組織人事運営が行われているように見え
ます。もちろん例外はありますけれども,少なくとも民間の感覚で言うとあり得ないくらい
硬直的です。法務行政の重要部分を刑事司法に関わる政策の立案と遂行が占め,検察官とし
ての経験や両組織間での情報共有がそこで有用であることは否定しません。しかし,そのこ
とが法務省の幹部ポストを検察庁,検察官のいわゆるエリートコース,キャリアパスとして
固定化されることを必然化しないと思います。
それから,現代の時代認識として,法務行政はますますダイナミックで幅広いスコープの
知見,グローバルな視点を取り込みながら,時にスピーディーな政策対応を迫られる時代に
なっています。だとすれば,優秀な法務行政官は,ますます時代の変化に対する感度を持ち,
柔軟で,法曹の枠,官僚の枠を越えた経験と知識の多様性に富む人材,そして民主的政策形
成過程に強い人材である必要が出てくると思います。組織の長として検事総長と法務事務次
官の適性条件は重なる部分があるかもしれませんが,準司法官として組織人としても個人と
しても厳しい廉潔性,純理性要求にさらされる傾向が強まる検察官の在り方と,政治的ダイ
ナミズムの中で行政官としていい仕事をすることを期待される法務行政官の在り方は,今後 -3-は距離が遠くなることこそあれ,近づくことはないと私は思います。
次に,論点3,これはずっと,ここに入れるかどうかともめている武器対等原則をめぐる
刑事司法制度の在り方なんですが,日本の戦後の刑事司法制度は,英米的な刑事訴訟手続観
を反映した新憲法の下,真実究明と適正手続の間でアンビバレンスを抱えながら,トータル
としてそのバランスを取ってきたと思います。むしろバランスは取れてきたと思います。そ
のバランス感ゆえに,国民的期待がすごく高くて,要するに検察に関する信頼感,やはり日
本は高いと思います。アメリカのドラマとかを見ていると,地方検事とかはろくでもないや
つばかりなので,やはり日本はすばらしいなと思います。しかし,逆にそれがあるゆえに,
少しでもそれを裏切る事件,権限行使が捜査訴追抑制的に見える事件でも,逆に過剰に見え
る事件でも,それが起きると激しいバッシングにつながる土壌があります。
村木厚子さん事件やカルロス・ゴーン事件が,特に長期拘留と取調べにおける弁護士同席
に関わる問題について,武器対等原則という被疑者・被告人の人権保障により重点を置いた
適正手続的な世界観から,我が国の刑事司法もまだ遠いところにあるのではないかという議
論が,今後も私は,これはずっと惹起し続けると思います。これはずっと続くと思いますよ,
きっと。それから,前回の在り方検討会議でも,この武器対等原則に関して,被疑者・被告
人の防御力を高めることと併せて,本人供述以外の部分での捜査・訴追側の武器の強化の議
論もされているんですが,この適正手続と真実究明をより高いレベルで両立させる議論とい
うのは,この会議を含めたあらゆる機会において国民に開かれた場所で,私は行うべきだと
思っています。ある意味でこれは,緻密性も大事なんですけれども,やはり国民に開かれた
場所で常に議論しているということが私はすごく大事だと思っています。
これは憲法31条を源とする根幹的な問題であるというだけじゃなくて,国際情勢の変化,
犯罪行為の国際化やサイバー化,あるいはコロナショックで更に進展するネット空間におけ
る人権意識のグローバル化の進展をにらみながら,日々やはりこのダイナミズムにさらされ
ている問題だからです。
それから,もう一つ,これは経済人としての意見なんですけれども,知識集約産業化の時
代において,資源小国の日本が持続的に繁栄するためには,海外の高度人材に日本を選んで
もらい,長期滞在,定住,そこで仕事をしてもらうということが非常に重要な国家的課題で
す。そうした人々は当然に権利意識が強い人々なので,そういった人々にとって刑事司法手
続が制度と運用の両面で他の先進国に近いものであるということは,当然これは安心感を与
えますから,実体面とイメージ面の両方で重要です。私は,激変する世界の中で,この数年
間の間を取っても,この辺はすごく変わっていると思うので,この辺も議論できればと思い
ます。
最後に,まとめですが,刑事司法をめぐっては,世論は一方で政官財に対しても遠慮なく
積極的に真実究明と捜査・訴追を行うことを検察官に期待します。他方で,冤罪事件に関連
して被疑者・被告人の人権保障と,そのための手続的保障の強化と,刑事的権力作用の牽制
を捜査・訴追・公判の全般に対して求めます。ここにはやはりアンビバレンスがあります。
また,政治運営における政治主導の民主的正当性を基盤として,政治主導が強まる中で,
「官僚たちの夏」で描かれたような官僚組織の政治からの独立性,超然性は,私はもうこれ
は望むべくもないと思っています。法務省もその例外ではないです。その一方で,国民はむ
しろそれゆえに,検察官に代表される刑事司法執行の政治からの独立性を強く期待します。 -4-これもある種のアンビバレンスです。
要は,今もろもろ起きている問題は,恐らくこのアンビバレンスのバランスがちょっと崩
れてきているんだろうと思います。そういう意味で言ってしまうと,やはりこの会議で是非
とも,そのリバランスを議論していってもらいたいと私は思います。
以上です。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
それでは,次に,同じく前回は御欠席でありました小林オブザーバー,お願いいたします。
しろまる小林オブザーバー ありがとうございます。
私も簡単なペーパーを提出させていただきましたので,こちらが皆様のお手元にあるかと
思います。前回の議論の議事録を拝読して,今,冨山委員がおっしゃった三つの論点の第1
と第2,倫理と行政手続については,恐らく議論に入ることが決まっていると思いますので,
第3の論点である刑事手続の在り方について含めるかどうかということについて,私見を簡
単に述べさせていただければと思います。
私は本当に法曹界の外の人間ではあるんですけれども,やはり事前に頂戴した法務省さん
からの資料,あるいは前回の委員の先生方の御議論,あるいは御提出された資料などを拝読
しても,やはりこの第3の論点は是非この会議でオープンに議論ができればなというふうに
思っております。
二つ具体的に,ここはちょっと一人の国民として素朴な疑問を感じるなという点をペーパ
ーにも書かせていただきました。冨山さんからも御指摘があられた,弁護人の立会いについ
て,そして取調べの可視化について,です。これらを含めた刑事手続の在り方については,
以前の検討会議を踏まえて法制審でも議論がなされているということは重々承知した上で,
やはりこうした国民に開かれた会議の場で,改めて大きな方向性だけでも議論ができればな
というふうに思っております。
最後にちょっと付記してあるんですけれども,これは私が一般国民として,こうあるべき
であるという強い意見を持っているというよりは,あくまで,こうした会議で一度きちんと
議論をしておく必要性を感じるというに過ぎません。あるいは,何度かほかの委員の先生か
らもありましたけれども,もし日本の法制度が非常に特殊なものであって,それがなかなか
国際的にも理解されていないという事実が本当にあるのだとすれば,どうやって国際的な理
解を得ていくのかという観点も含めて議論ができればなというふうに思っております。よろ
しくお願いいたします。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
少し事実関係の補足的な説明をしたいという事務局からの申出がありますので,ここで発
言をお願いします。
しろまる保坂事務局 事務局の保坂でございます。今のペーパーの中の2ページ目の(2)の取調べ
の可視化との関係で,録音・録画の制度と実施状況に関連して記載がございますが,この点
につきまして,第1回,第2回の刑事局の担当からの御説明の中でもございましたように,
録音・録画の制度と運用とがございまして,制度につきましては,昨年の6月1日から施行
されて,施行後3年を目途に見直すという規定が設けられていること,それから,制度以外
の運用につきましても,公判請求が見込まれる事件で,必要な事件については録音・録画が
実施されているという御説明がありましたので,少し補足させていただきます。 -5-それから,録音・録画の実施状況,数字も含めまして,検察の在り方検討会議の提言に基
づいて設けられた参与会に報告して御意見を頂いております。その状況につきましても最高
検のホームページで公表しておりますので,御参照いただければと思います。
以上です。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
しろまる小林オブザーバー ありがとうございます。
しろまる鎌田座長 続いて,新たに御就任いただきました河合委員,お願いいたします。
しろまる河合委員 まだ勉強途中でして,メモ程度のものを出させていただきました。
まず,検察の倫理についてですが,今回の問題は検察倫理に関しまして,検察の理念の実
践をはじめとするこれまで行われてきた取組,これについて抜本的な見直しを迫るものとま
では私は思っておりません。ただし,国民に検察官の倫理意識について疑念を抱かせたこと
は,これは否定できないところであると思っております。
そこで,私としては次のような事項について検討してはどうかと考えております。検察倫
理の更なる定着を図るために取るべき方策ということで,現在行われている倫理に関する教
育・研修,あるいはそれに限らず,その他の方策について,この検討会で問題点を洗い出し,
民間企業や団体等における実践例を参考にしながら,私生活における倫理の問題を含めて,
倫理を更に周知徹底させるための具体的方策を検討してはどうかと考えております。
なお,私生活上の行動に関する規律を設けたらどうかという御意見が出ているかと思いま
すが,我が国の法曹三者は法律の専門職として,職務外においても品位を保持する義務,こ
れは法曹三者共通の倫理として必要だと一般的に解されております。検察官の法的根拠につ
いてはここに記載したとおりです。その実践につきましては,これまで基本的には個々人の
自覚と自律に委ねられて来ております。確かに,具体的な規律を設けたらいいのではないか
という御意見も分からなくはないのですが,規律を設けることは,私生活を必要以上に自制
させて,検察官としての健全な成長を妨げるおそれがあるのではないかと私は思っておりま
して,その必要性について,特に我が国においてそれが必要かどうかについては,慎重に検
討すべきであると考えます。
それから,検察官とマスコミの関係についてもいろいろ御意見が出ておりますが,私は裁
判所において司法行政に携わった経験からしますと,このマスコミと検察との関係は相当デ
リケートなものがあるとうかがわれるところでございます。この検討会で議論することによ
って,下手をするとマスコミの取材,報道の自由への介入ということで,そちらの方から批
判を招きかねないという危険性もあることからしますと,検察とマスコミとの関係について,
行政機関である法務省という内部に設置されたこの会議の議題とすることは,できれば避け
た方がいいのではないかというのが私の意見です。
次に,法務行政の透明化に関して,文書の作成や保管につきましてはここに書いたとおり
で,皆様の御意見のとおり議論するのがいいかと思っております。
法務省と検察との人事面での関係の在り方につきましては,皆様からいろいろな御意見が
出ていることは承知しております。根本的に改めたらいいのではないかという御意見も出て
おりますが,法務・検察組織のこれは根幹に関わる問題かと思われます。全国各地の現場へ
の影響も大きいことから,これをやるとなると相当の時間をかけて慎重に検討すべき事柄で
あって,果たして本会議で議論し提言を出すことが本当にできるのだろうかというのが私の -6-偽らざる感想でございます。
もっとも,現在,検察官には非常に多くの有為な,有能な人材がそろっておるというのが
私の認識でございまして,法務・検察の組織全体の健全化,あるいは活性化のためには,い
わゆる出世ルート,出世コースといわれるような硬直した人事は決して好ましいものではな
いと思っております。もしそのような慣行が残っているとすれば,可能な範囲でこれの解消
に向けた努力を組織としても惜しむべきではないというのが私の意見です。
それから,第3番目の問題ですが,刑事司法手続について,特に司法制度改革以降,我が
国の刑事手続が大きく変わりつつあることについて,なかなか理解が得られていないという
現状があるようでして,裁判官として実務に携わった私としては非常に残念に思っておりま
す。したがいまして,これについては是非,国際広報の在り方について,多方面から検討し
ていただきたいと思っています。
なお,刑事手続の見直し論について,今も御意見がございましたが,これは結論的に言う
と,やはり専門家を交えた法制審議会などの場に委ねるのが相当であるというのが私の意見
でございます。
以上でございます。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
以上をもちまして,この会議で検討すべき具体的事項についての各委員の御意見を全てお
伺いしたところでございます。ただし,一方的に御意見を伺ってきただけで,ほかの方の御
意見に対する質問,あるいは他の委員の方の御意見を踏まえて,更に自分の意見を補足した
い,こういうふうなことがございましたら,ここで意見交換をしたいと思いますので,お願
いいたします。
なお,繰り返して恐縮ですけれども,できるだけ多くの方に発言の機会を確保できるよう
にするために,1回当たり5分をめどにしていただきたく,そこで紙を入れさせていただい
たりしておりますが,何とぞ議事進行に御協力を頂きたいと思います。
それでは,御発言される方は挙手をお願いしますが,ウェブ参加の方もいらっしゃいます
ので,発言の冒頭でお名前をおっしゃっていただければと思います。
それでは,井上委員,どうぞ。
しろまる井上委員 井上でございます。これから検討事項の絞り込みの作業,意見交換をするに当た
って,共通の前提的な事項につきまして,ちょっと皆さんの意見を伺って感じたことを三つ
ほど述べさせていただきたいと思います。
まず一つは,検討事項の絞り込みに際して,この会議の設置目的とか達成目標というとこ
ろをだんだんコンセンサスを得るようにしていかないと,終点が見えなくなってしまいそう
だなと不安に感じたということであります。
二つ目は,その出口の考え方でありますが,何らかの提言をしていくということでありま
しょう。何か改善を要する提言をするんでしょうから,その改善を要する問題状況について,
具体的な事実を摘示できなければならないということが一つ,確認しておきたいかなと思っ
たところであります。
3番目に,在り方検討会議は大変すばらしい提言を出せたわけなんですが,そのときと今
回とは前提条件が異なっているなということを認識したということであります。この最後の
点についてちょっと敷衍して言いますと,在り方検討会議のときは,その原因となった事件, -7-一連の不祥事は全部刑事事件になったと,そのために,裁判所の判決とかそういうところで
事実関係が確定されたということがありまして,しかも,これに加えて最高検も自ら検証し
て報告書を出しておりまして,その中でより詳細な事実を認定した上,最高検自体が問題状
況を自己分析して,特捜部における録音・録画の施行を含めた改善策を自ら提示したと。在
り方検討会議としては,それを踏まえて,事実認定を踏まえて議論して,検察の自己改革の
方針を是としつつ,さらにそれを推進する方向性を示すことができた,そういう経緯があっ
たのではないかと思います。
翻って本会議の状況を見ますと,今回の一連の問題状況とか事態とか事件,提案に係るそ
の他の項目にしろ,その改革とか刷新を必要とする事実的基礎というのが曖昧なものが非常
に多いと感じております。そして,この会議が何のために何を議論すべきかということ自体
をこの会議で決めるということになっておりますので,よほど注意していかないと論点が拡
散して漂流してしまうのではないかという心配をしたところでございます。
実は私も,大臣が最初の会合の冒頭で聖域なく何でも議論してほしいと挨拶されたのを聞
きまして,私の持論なんですけれども,この法務・検察行政のデジタル化の徹底的な推進と
いうのをやりたいと思っておりましたので,それを提案しようかと思ったんです。もう記録
の原本は全部紙から電子に移行させて,情報通信技術とか人工知能とかの活用もして,抜本
的に近代化,合理化すれば,いろいろオンラインの事情聴取とか接見とか,新しいことをい
っぱいできるようになっていって,世界に冠たる刑事手続のインフラが整備できるんじゃな
いかと思ったんですが,やはり今回の一連の事態との関連性はちょっと遠いなということは
認めざるを得ないので,余り論点を拡散させるのを避けるためにも,ちょっと提案は差し控
えたということでございます。
私自身はこの会議の目的は,損なわれた信頼の回復というところを中心に据えて,比較的
短い期間で一定の提言を出して,早期の信頼回復につなげることが最も大切だと思っておる
ところでございます。そういう観点からは,今後,検討事項を絞り込むに当たっては,一連
の事態との関連性がどの程度あるかということ,それから,提言の履行を法務・検察に期待
できるだけの事実的根拠のある問題状況が把握できているかということ,3番目には,この
会議体の委員構成に照らして十分な議論ができる項目の内容であること,4番目は,これは
言わずもがなですけれども,会議体で議論して意見が集約できる一応の見込みがあること,
そのようなことを念頭に置きながら,法務・検察において適時適切に実行される中身のある
提言をスピーディーに出すと,そういう方向に持っていけたらいいかなと思って,差し出が
ましいですが,議論の最初にちょっと考え方を紹介させていただきました。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。ただいま御指摘がありましたような点に十分配慮して,
できるだけ早く論点整理を行っていきたいと思っておりますので,よろしくお願いいたしま
す。
それでは,ほかの方。
後藤委員,どうぞ。
しろまる後藤委員 ありがとうございます。これまでの論点についての議論を伺ったところで,私が
幾つか感じたことを申し上げたいと思います。要旨のペーパーを提出しております。
まず,過去の個別事例を取り上げるべきでないという御意見を伺いました。確かに過去の
個別事例での処分や措置が妥当であったかどうかを議論するのは,この会議の目的,役割で -8-はないと思います。しかし,制度的あるいは構造的な問題は個別事例の中に表れるので,重
要な個別事例を抜きにして制度の適否を考えることはできないと思います。
それから,捜査機関からのリークはないのだという御指摘も受けました。しかし,報道を
見ていれば,メディアが公式な記者発表以外から情報を得て報道することがあるのは明らか
です。それをリークと呼ぶかどうかは,本質的な問題ではありません。だから,事実に即し
た本音の議論をする必要があると思います。
それから,刑事手続の在り方について取り上げるべきでないという御意見もありました。
日本の刑事手続に対する国際的な批判が誤解に基づくものであれば,それに対しては誤解を
解く努力をすればよいでしょう。しかし,例えば取調べに弁護人の立会いを許さないという
のは事実であって,誤解ではありません。極東の諸国では,韓国,台湾は既にこれを認めて
いるなかで,中国と北朝鮮と日本はそれを認めていません。それが日本の刑事裁判権から逃
避することの正当化の口実に使われるような実情は,非常に残念な悔しいことです。これが
日本にふさわしい刑事司法の在り方なのかという議論は,やはり必要だと思います。
この会議は法制審議会のような専門家の集まりではありませんので,立法の要綱まで作る
ことはできないと思います。しかし,運用の改善を提案することとか,法改正の大きな方向
性を示唆することはできると思います。実際,検察の在り方検討会議でも,特に取調べの録
音・録画についてそのような提言をして,それがその後の運用と立法に活かされたという経
緯がございます。
取り分け,取調べに弁護人の立会いを認めるべきかどうかは,特別な専門知識がなくても
議論できる問題です。つまり,刑事手続の専門家でなくても問題の意味が理解しやすいと思
います。この問題については検察の在り方検討会議でも,その後の法制審議会の特別部会で
も,賛成,反対,両論が対立して,先送りにされてきたという経緯がございます。専門家同
士の議論ではその繰り返しになって,先に進みません。この問題は2016年の法改正の附
則が求める施行後3年後見直しの論点にも入っていません。だからこそ,この会議で刑事法
の専門でない方々が,例えば取調べを受けた経験者,あるいは現役の検察官,弁護人などの
経験と意見を聞いて,言わば市民の視点から見識を示すことに重要な意味があると思います。
それによってこそ,このような会議の構成の特色が活きるでしょう。また,この会議には元
捜査官の委員もいらっしゃるわけで,現役の捜査官よりも,むしろ自由に議論ができて良い
と私は思います。
以上です。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
それでは,篠塚委員,お願いします。
しろまる篠塚委員 現在,検察官の倫理,法務行政の透明化,刑事手続の海外からの批判も含めて,
三つのテーマをどう取り扱うかということで検討されているわけですけれども,前回,金指
委員が,実際に携わっている人たちの風土や体質が変わらなければなかなか定着していかな
いという発言をお聞きしまして,本当に目からうろこが落ちる思いをしました。やはりこの
三つ,ばらばらに議論するのではなくて,何か共通するものがあるのではないかということ
を私も感じました。組織としての文化や土壌に,やはりいい面も悪い面も含めて,あって,
そこに到達していくのが,法曹という者にはなかなか難しくて,本当にいろいろな経験をさ
れた市民の方,経営者の方々から,やはりずばっと問題を指摘していただくということが今 -9-回されて,そこに希望を持ったということがあります。やはりテーマごとに響き合っている
問題,あるいはつながっている問題があるのではないかというふうに思いました。
やはり検察官の倫理と刑事手続の海外からの批判というのは,実はつながっているところ
が多いのではないかと思います。村木さんは,検察官に話せば分かってくれると思ったけれ
ども,実際は違っていたということを言われました。やはり検察官は有罪立証に傾斜した当
事者ではなくて,検察官には被疑者・被告人の言葉に耳を傾け,被疑者・被告人にも有利な
証拠を出していく,そういう役割があるんだということを多くの国民が期待し,検察官の倫
理として求められているのではないかと。こうした倫理に違反すれば検察官が懲戒されたり,
それによって公正な刑事裁判や再審の審理が進行することによって,一層検察の信頼は高ま
るのではないかというふうに考えます。
こうした問題について,例外はありますけれども,アメリカにおいては審判者となる可能
性のある市民に向けて誤った判断を導くような検察官のコメントについて規制があります。
これが,(注)をつけておりますけれども,テキサスの専門職規範を挙げておりますけれど
も,それ以外にもABAの方で詳しいそういう,マスコミとの関係についてもありますし,
それはもちろんイギリスにも,カナダにも,ニュージーランドにも,香港にも細かい規定が
あって,難しいからこそ細かい規定で適正な運用が求められているわけです。そして弁護人
から見ますと,リークがあると無罪推定だとか公正な裁判を侵害されるということを感じて
しまうわけですから,これはやはり倫理の問題として,また刑事訴訟の問題として,両方響
き合って議論していくべきだというふうに考えています。
法務行政の透明化と刑事司法の問題というのは,先ほど冨山委員が言われた,そのとおり
だと思います。第1回の審議でもおっしゃいましたけれども,やはり実は遡ると構造的なと
ころに根っこがあるのではないか,あるいは,先ほど言いましたように,民主政治の統制下
にある法務省と,政治から独立していかなければならない検察の業務執行というものは,や
はり分けて考えて,本来はそこをきちんと整理しなくてはいけないのではないかと。やはり
検察と法務の文化や土壌が一体化している,そこに問題があるのではないかというふうに私
も感じています。
検察官の定年延長の問題というのは,政治が検察の独立の土壌に踏み込んだということで
批判が出たのではないかと思います。逆に,法務省の文書作成と管理が民主政治の事後検証
に耐え得るものでなかったのではないかという批判も出てきているわけです。この点は十分
に検討していく必要があります。
やはり村木さんの冤罪事件から10年が経過して,数々の改善が正になされて,施行され
ているわけですけれども,それによって法務・検察行政の文化や土壌がどこまで変わってい
ったのかということを見据えながら議論していくのが今回の我々の役割ではないかと思いま
す。
そういう意味で,在り方検討会議の今の結果というものを,あるいはどこまで進んでいる
かというものを十分に一旦は把握した上で,次に議論をどうするかを考えていくというのが
よろしいのではないかというふうに思っています。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
それでは,太田委員,お願いいたします。
しろまる太田委員 これまで出てきた意見を伺ってきて思ったことをちょっと申し上げたいと思いま
-10-
す。
刑事司法制度に関する事項は,法制審などの専門の場に譲るべきだろうということを前回
も申し上げているわけですけれども,この場で御意見として出されていますような,弁護士
の立会いを含む取調べの在り方ですとか,あるいは勾留制度の問題,証拠開示の問題といっ
たようなことは決して新しい問題ではなくて,かねてから法制審の場などにおいて,この場
で提起されている趣旨と,私の理解するところ,ほぼ全く同じ意見がかねてから出されてい
ますし,これに対しては捜査機関側からも様々な意見が出されて,長らく議論が続けられて
きたところだと思います。改めてこの問題を取り上げても,恐らく同じような議論の繰り返
しのようなことになって,非生産的ではないかということをちょっと思いますのと,それか
ら,この場で自由な議論ということをおっしゃいますけれども,刑事司法制度,犯罪捜査も
そうですけれども,これは法務省なり捜査機関,現職の方々が責任を持った立場で運営に当
たっておられるわけで,その責任というのは非常に重いものがあると思います。そういう立
場の方を抜きにした議論というのが,これまた生産的なものになるかどうかというのには疑
問があります。もちろん私自身も犯罪捜査に携わってきた者として個人的な思いはあります
けれども,その責任のない立場から自由な議論というのをやりますと,かえって場外乱闘み
たいなことになって混乱を招いてもよろしくないような,そういう感を抱いております。
それから,この刑事司法の話について海外との対比から,取調べや勾留の問題を指摘され
る向きもありますので,海外との対比という点についてだけ申し上げますと,刑事司法制度
というのは,これまでの経験上もそうなんですが,各国によって歴史と文化が違うように,
実に違いがあるというふうに考えております。例えば,昨今流れていますニュースを見ても,
外国警察が逮捕制圧行為でどういうことをやっているか,あるいは武器の使い方でどういう
ことをやっているか,デモの規制のやり方でどうやっているかという,さらには刑罰法令の
制定ですとか,あるいは刑事訴訟手続,こういったものがかなり我が国と違うということは,
これは恐らく皆さん,お分かりいただけると思うんですけれども,刑事事件の世界というこ
とで言いますと,我が国の場合には令状逮捕が大原則で,単位人口当たりの比較で見ますと
諸外国と比べて逮捕される人員数というのは極端に少ない方だと理解をしています。また,
捜査段階でも身柄拘束期間が最長20日間ということですし,検察庁の判断を経て起訴され
る人員となると,もっと絞り込まれるというような図式があって,総じて捜査権,拘束権の
運用というのは慎重で謙抑的なのではないかというように経験上は感じているところであり
ます。
こういう背景事情を含めて,刑事手続というのは制度全体の議論というのが必要でして,
特定の一部だけを取り上げて,それで是か非かという結論が出るものではないように思いま
す。例えば,弁護人立会いの問題であれば,そもそも取調べの機能とか,あるいは取調べに
関する制約条件といったものも考える必要がありますし,国によっては法律の規定の中で,
被疑者が取調べに対して黙秘をすれば不利益推定を可能とする,そういう規定を置いている
国もあるように承知をしています。
こういうふうに,制度全体を視野に入れた多角的な検討が必要でありますし,また,海外
の批判ということでありますならば,例えばテロ対策とか,組織犯罪対策とか,資金洗浄対
策といったことについて,現職当時にも,例えば会話の傍受が認められていないなど,海外
からの批判というのは多々受けてきた経験がございます。我が国の制度が不十分であるとい
-11-
う批判もあるところで,海外からの批判というものが当を得たものであるかどうか,我が国
になじむのかどうか,何を取り入れるべきかということについては十分な専門的議論が必要
ですし,他方,我が国の制度についての国際的な広報の在り方というのは,これはまた十分
に議論していく価値がある話だろうと考えているところであります。
時間の関係がありますので,その点だけ申し上げさせていただきます。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
ほかに御発言いかがでしょうか。
しろまる井上委員 2回目いいですか。
しろまる鎌田座長 どうぞ,手短に。
しろまる井上委員 すみません,刑事手続の関係でいろいろな御意見が出ておりますので,私の考え
も述べさせていただきたいと思います。
刑事手続法の改正の要否を検討するに際しては,国民が何を期待しているかと考えると,
刑事手続に期待するところは被疑者・被告人の人権の確保と真犯人の的確な処罰と,この両
立を期待していると思うんです。しかし,この両者は時に相反する作用をすることがあるの
で,そのバランスの取り方が一番大事だと思います。
今回,被疑者取調べへの弁護人の立会いの提案がされておりますけれども,やはり被疑者
の権利として弁護人の立会いを認めると,弁護人が立ち会わない限り被疑者の取調べが一切
できないということになると思うんですが,これは現在の捜査構造を根幹から変更する重大
な制度改正でありまして,多くの国でやっているから我が国もと簡単に言える問題ではござ
いません。立会いを認めている国が多いから国際標準であるという御指摘もございましたが,
立会いを認めている国の多くは通信傍受を広く活用している上,我が国では認められていな
い自動車内や居室内での会話の傍受とか,覆面捜査官による潜入捜査とか,犯罪と戦うため
の様々な捜査手法を併せ持っておりまして,このような捜査手段の整備もある意味,国際標
準になっていると思うんです。ですから,被疑者の人権と真犯人の処罰の確保の両立に責任
を有する国の立場からは,捜査構造の根幹に関わる重大な制度改正の御提案については,
様々な観点から総合的に検討しなければいけない,そこで国民が求める適切なバランス点を
探していかなければいけないと思うのであります。
そういたしますと,これは非常に実務的にも理論的にも高度で大規模な議論になりますの
で,刑事手続関係の現場の代表者でありますとか,研究領域や見解の面でバランスの取れた
多くの研究者を中心に,なおかつ国民の声も十分に反映できるような委員構成を考えた体制
で,かつ十分な実情調査とか国際調査等の資料を踏まえて検討していくことが必要でありま
すので,この会議でやるには少し荷が重過ぎる問題ではないかなと,やっても非常に中途半
端な,結論が出ないと思いますし,中途半端なことしかできないのではないかと思いますの
で,立会いの導入の当否を検討することに深く立ち入ることについては困難であり,また不
適当であると考えます。
もう一つ付け加えますと,前回の法制審議会の中でも立会いの問題は提案されて,中間整
理の段階で先送りされた,そんな経緯があるわけでございます。しかし,その点につきまし
ては,録音・録画を導入した今回の刑事訴訟法の改正法の3年後の見直しの中で十分に議論
できるだろうと。つまり,録音・録画と立会いというのは取調べの機能への影響という意味
で非常に関連性がありますので,これまでの検討の経緯と検討の内容の面の両方から,制度
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化の必要性については,改正法の施行状況を踏まえた3年後の検討の場で本格的にやるのが
適当であろうと思っているところでございますが,ただ,立会いの導入に関しまして,この
会議で複数の委員,オブザーバーの方々から御提案があったということは,これは国民の声
の一端として非常に重要性が認められると思いますので,この会議における議論の状況につ
きましては,事務当局において3年後見直しの検討の場の方に的確に伝達していただくこと
が適当ではないかと思っております。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
ほかに御意見,よろしいですか。
後藤委員,どうぞ。
しろまる後藤委員 少しだけ補足させていただきます。確かに新しい立法をしようということになる
と,法制審議会のような場が必要になると思います。けれども,運用について,例えば弁護
人の立会いは,私の認識では,今の実務ではほとんど認めていません。それを試しに少しず
つやってみたらよいではないですかという議論は,十分ここでもできると思います。それか
ら,制度の問題として,弁護人の立会いを権利として認めると,弁護人が立ち会わない限り
一切取調べができなくなるのかはまた別の問題で,諸外国でもいろいろな在り方があるので,
そう単純ではないことだけを申し上げます。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
よろしいですか。
太田委員,どうぞ。
しろまる太田委員 お許しを頂けるようでしたら,ちょっと長くなって恐縮ですけれども。
冨山委員の御意見の中で,全体としては公務員制度全般とか刑事司法制度全体の在り方を
議論する上で参考になる鋭い分析と思うんですけれども,政治と検察の距離ということを冨
山委員以外の方もおっしゃっていますが,そもそも公務員制度というのを見てみますと,国
家公務員法の中で職員の政治的行為は制限されておりますし,要は公務員というのはすべか
らく政治的な中立性,公平性が求められる存在であるというように理解をしています。検察
官というのは捜査権と公訴権を行使する立場ですので,厳正公平,不偏不党ということが特
に強く求められるというのは確かだと思いますけれども,かといって,ほかの公務員が政治
的に振る舞うことが認められるわけでもありませんし,この点は国会議員たる内閣総理大臣,
あるいは国会議員であることが非常に多い各省大臣も,その立場としては行政権の一員であ
りますので,行政権の行使について中立性,公平性を損ねてはならないということがあるの
だと考えております。
ですから,法務省と検察庁を対比して,法務省は検察庁よりも政治に近い存在だというの
は必ずしもいえないのではないでしょうか。政治との距離の問題というのは,行政権の行使
が政治的意図によってゆがめられてはならないという趣旨であるならば,それはそういう懸
念を生まないような判断が,各省大臣もそうですし,大臣を補佐する公務員にも双方に求め
られているということなのではないかというふうに考える次第であります。
それから,法務・検察の性格の違いがそれぞれあることは確かなんですけれども,法務行
政というのを見てみますと,司法制度,刑事法,民事法の制度全般を持っていまして,やは
りこれらの制度に携わる立場というのは裁判実務に精通した人間でないとなかなかできない
ということもありますので,その意味では親和性がある部分というのも少なくないものとい
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うように理解をしています。この点,若干補足させていただきます。
あと,ちょっと1点だけ。先ほど,後藤委員の方から報道との関連についてのお話があり
ましたけれども,報道記事全体,お話を伺っていると,どうも事件報道の在り方のようにな
ってまいりまして,報道機関というのは,特に耳目を引く事件ですと,関係者全般,捜査機
関のみならず,弁護士さんあたりも含めて関係者各般に取材をして,結果を記事にしている
ということでありますので,なかなかその全体の在り方を議論するというのは非常に荷が重
いといいますか,また,前回も申しましたように,報道機関抜きにしては論じ得ないテーマ
ではないかということを感じましたので,その点も補足をさせていただきたいと思います。
しろまる鎌田座長 篠塚委員,どうぞ。
しろまる篠塚委員 先ほども言ったんですけれども,報道の自由というのはもちろん重要ですし,そ
れと公務員の守秘義務違反というのは,また別の問題であると思います。報道の自由という
のはアメリカでは極めて重視されているわけですけれども,そのアメリカにおいてこそ,正
に検察官の倫理がその部分は詳しく,細かく記載されているという事実もやはり同時に見て
いかなくてはいけないのではないかと思います。
しろまる鎌田座長 ありがとうございます。
しろまる太田委員 重ね重ね恐縮です。今の篠塚委員の御発言で,テキサス州の法典を紹介されてい
ますけれども,私も英米法は専門ではないので自信はありませんが,ちょっとこの法典を見
てみましたところ,条文上は,陪審員がその職務を終わった後,将来に向かって悪影響を与
えないようにするために,法律家,法曹ですね,ローヤー全般に対して,そういう影響を与
えるような言動をしないようにということを書いているので,どうも検察官固有の倫理の問
題について規律しているという話ではないように感じましたので,その点も補足をさせてい
ただきます。
しろまる篠塚委員 アメリカの場合は法曹一元ですから,検察官も弁護士も裁判官も同じレベルとい
うことで,先ほどちょっと申し上げたところですけれども,ABAのルールはもう少し具体
的に書いてありまして,要するに,被告人に対する公衆の非難を増強する実質的な可能性の
ある訴訟手続外の論評を行うことを避けなければならない,これは法曹全体に対して,もち
ろん例外はありますけれども,基本的には裁判の,それと,補助した捜査官等の論評につい
ても注意をしなさいということがルールになっているわけなんです。やはりマスコミはもち
ろんきちんと裏を取ってやるわけですけれども,検察官が言うというのは非常に重みがある
ので,裁判が始まる前にも被告人が非常に非難を浴びるというような状況は,やはり裁判の
公正さを維持する上でも好ましくないという考えがあるのだと思います。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
既にかなり実質的な議論,討論が始まっているところですけれども,この会議で検討すべ
き論点整理をしていきたいというのが最初の目標でございます。その点につきましては既に
皆様から様々な御意見をいただき,それに対する批判も含めて頂戴したところですので,副
座長や事務局と一度これを整理させていただいて,また論点案を提示することとします。こ
れも,最初に論点整理して,それに議論を拘束するというのではなくて,皆さんの議論にな
じむものから徐々にここで議論すべき論点として提示していくという進め方にしていきたい
と思っています。井上委員からも御指摘がありましたように,何を議論するとかというのを
絞り,かつ,早めに一定の方向性が見えたものについては整理をしていくと,こういうふう
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な進め方をせざるを得ないかなと思っているところです。
そういう観点から行きますと,第1回会議で法務大臣から三つの大きな柱の提示がござい
ました。その第1番目として掲げられました,検察の倫理というものを取り上げるべきだと
いうことについては,御異論がないというふうに思っております。それをどういう視角から,
どこまで掘り下げるかという点については,今日も様々な御意見のあったところですけれど
も,なるべく早期に焦点を絞った議論に移りたいということで,早速ですけれども,本日こ
の後の時間は,まず検察官の倫理についての議論をしたいというふうに考えておりますが,
皆様いかがでございましょうか。よろしいですか。
ありがとうございます。それでは,御了解を頂いたということで,検察官の倫理について
の議論を始めたいと思いますが,その前に,時節柄,換気のために5分ほどの休憩を取らせ
ていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
(休 憩)
しろまる鎌田座長 それでは,おそろいになりましたので,議事の2番目,検察官の倫理についての
具体的な議論に入りたいと思いますが,その前提として,当局から前提となるべき事項につ
いての御説明をしていただきます。簡略に,要領よくお願いいたします。
しろまる佐藤刑事局総務課長 刑事局総務課長の佐藤です。どうぞよろしくお願いいたします。
検察官倫理に関する規定と検察官倫理を涵養するための取組につきまして,資料に基づい
て御説明をいたします。本日お配りしている資料は資料1から資料4でございます。資料1
は枝番がありまして,資料1-1から1-6となっております。
まず,検察官倫理に関する規定について御説明をいたします。検察の理念からですが,こ
れまで御説明したとおり,平成22年に発生しました大阪地検特捜部における一連の事態を
受けて設置された検察の在り方検討会議の提言を踏まえ,検察におきましては平成23年9
月,検察職員が職務を遂行するに当たって指針とすべき基本的な心構えを定めた検察の理念
が策定されました。
まず,お手元の資料1-1を御覧ください。これは,検察の理念の策定に当たりまして検
事総長が検察庁職員に発出したメッセージです。その内容は,策定の経緯を確認するととも
に,検察庁職員が検察の理念の内容を十分理解して,検察の使命と役割について自覚を深め,
日常の職務の遂行に当たってこの精神を体現するよう努力していくことを期待するものとな
っています。お手元の資料1-2は,以前にもお配りしましたが,検察の理念であります。
この検察の理念は,1ページ目の前文,それから2ページ目の10項目からなっております。
こうした検事総長のメッセージや検察の理念は,検察職員が日常用いるグループウェアの
ポータルサイトからいつでも確認できるようになっています。また,検察の現場におきまし
ては,例えば検察官や検察事務官の執務室に検察の理念を掲げたり,決裁の場において決裁
官が部下職員に対し,検察の理念に基づいた指導,決裁をするなどし,その浸透に向けた取
組が継続的に行われているところです。
続きまして,国家公務員法,国家公務員倫理法及び国家公務員倫理規程について御説明を
いたします。こちらも前回の御説明と重なる点がございますので,簡略に説明をさせていた
だきます。資料1-3は国家公務員法の条文です。その資料の29/50に国家公務員法第
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82条というのがあります。こちらは倫理に関するものとして,例えばその82条1項3号
では,懲戒事由として,国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合が掲げら
れているところです。この非行というのは職務外の行動も含むものと解釈されておりまして,
したがいまして,職務外の非行によっても国家公務員,ひいては検察官が懲戒処分を受け得
るということになります。
次に,国家公務員倫理法及び倫理規程について簡単に説明をいたします。資料1-4,こ
れが国家公務員倫理法の条文ですが,ページでいうと4/24というところに倫理法の3条
がございます。ここには職員が遵守すべき職務に関する倫理原則などが書かれております。
それから,資料1-5は国家公務員倫理規程です。倫理規程におきましては,例えば第2
条で利害関係者に関する規定があり,第3条で禁止規定に関する規定が置かれておりますが,
利害関係者との間で金銭の贈与を受けたり,供応,接待を受けるなどすることが禁止されて
いることが定められているところです。
こうした国家公務員倫理法や倫理規程について,年に1回,全検察官が人事院から提供を
受けた資料を用いて研修を受けることとされています。
次に,検察官の倫理を涵養するための取組の概要について御説明をいたします。こちらは
新しい資料ですが,資料2となっています。検察官の倫理につきましては,日々の業務や定
期的な研修,定期的な会同等を通じて周知,浸透を図ることとしています。まず,中段にあ
ります定期的な研修とある項目を御覧ください。検察官のうち検事に限ってこれから説明を
いたしますが,検事につきましては任官後,経験年数等に応じ複数回の研修を受けることと
なっており,その研修の際に倫理等の講話,講義等が行われています。
かいつまんでお話ししますと,まず任官した新任検事は研修を受けることとなっておりま
すが,これが新任検事研修というものです。その中で,例えば法務総合研究所の幹部,ある
いは教官から検事の心構えについての講義や,各種講話等を受けることになります。こうし
た研修を受けた新任検事は,実務庁,現場におきまして,先輩検察官や決裁官から事件の決
裁等を通じ,いわゆるOJTの形式で,検察官倫理はもとより事件処理の在り方というのを
学んでいくこととなっております。
次に,検事は経験年数等に応じて,こちらにありますとおり,検事一般研修,あるいは検
事専門研修という研修を受けることとなっています。その中で,例えば法務総合研究所の幹
部,検察幹部から,検察官倫理を含む各種講話,監察指導の実情,検察改革や組織運営につ
いての講義を受けたり,辛口の研修という観点を踏まえ,刑事弁護を扱う弁護士の方,裁判
官の方から検察の在り方についての講義等を受けることとなっています。
次に,任官から一定年数を経過した検事は,決裁官あるいは支部長に新たに任じられると
いうことがありますが,その場合にも研修を受けることとなっています。その中でも,検察
幹部から組織運営の在り方,あるいは過誤等の対応の在り方,監察等についての講義を受け
ることとなっております。
さらに,任官から一定年数を経過しますと,検事正に新たに任ぜられるに当たって,検察
運営セミナーという研修を受けることとなります。ここでは特に,外部の声,組織運営の在
り方といった観点を踏まえた研修が行われておりまして,外部講師,例えば大学教授の方,
あるいは民間企業の役員の方,専門的知見を有する方など多様な方々を招聘して,働き方改
革,あるいは危機管理,こういったことについて講義を頂いているということでございます。
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また,検察幹部との間で検察運営について意見交換の時間を設け,様々な観点から自由闊達
な議論がなされるようにしております。
次に,この資料の一番下,組織体制を御覧ください。非違行為対策についての検察におけ
る実施状況ですが,検察の在り方検討会議提言を踏まえて最高検察庁に設置された監察指導
部におきまして,例えば,取調べにおける任意性に疑いを抱かせる尋問方法及び言動や,正
当な弁護活動の妨害など,検察官の捜査公判上の違法・不適正行為,またはこれらの疑いを
抱かせる行為を把握した場合,調査を実施して必要な対処をしているということがございま
す。
それから,次に資料3を御覧ください。こちらは,非違行為等防止対策委員会等について
と題するものですが,平成17年4月に最高検察庁に非違行為等防止対策委員会,それから,
各高等検察庁にその地域委員会を設置しております。非違行為等の原因分析,防止策の立案,
各庁における防止策の実施の支援等がなされてきたところです。
委員会では,例えば非違行為が発生した場合,その原因を分析するとともに,当該事例や
処分内容を検察職員に共有して注意喚起を行ったり,検察庁の職員が高い倫理観を持って行
動すべきことを自覚するため,非違行為等の具体的な類型についてまとめたものを作成し,
各職員がこれをいつでも閲覧できるようにするなどの取組をしています。
この2番に記載してありますとおり,各地域委員会が作成したマニュアルにおきましては,
国家公務員法や国家公務員倫理法,同倫理規程で定められた服務に関するルールの解説や,
検察庁において過去に発生した非違行為の具体的事例,職場のモラル確保のための手法など
がまとめられております。こちらは列挙しておりますが,マニュアルの表題あるいは初版作
成年度を記載しており,現在まで適宜改訂をされています。これらの資料は,各高等検察庁
及び,対応する地方検察庁の職員がいつでも閲覧することができるようになっております。
資料4は,条文関連です。
ここまで資料2に基づいて御説明してまいりましたが,それ以外にも,個々の検察官に対
しては,例えば定期的な研修以外に,日々の業務におきまして,決裁時や各庁の実情に応じ
たミーティングの実施時を捉えて指導教育等を行ったり,職員が一定期間休暇を取ることに
なる夏期や冬期に,例えば次席検事から部下職員宛に通知を発出して注意喚起を促すなどし
ております。また,検事正や検事長が参集する長官会同や,次席検事が参集する次席検事会
同において,時宜に応じ綱紀の保持を内容とした法務大臣の訓示や刑事局長の指示がなされ
ております。
以上,検察官の倫理を涵養するための取組の概要について御説明をいたしました。
なお,最後に,委員から前回の会議で御指摘を頂きました,検察官が国家公務員倫理法違
反で人事上の処分を受けた件数についてお尋ねがありましたので,それについて御説明いた
します。1件ございまして,平成21年に自ら捜査・公判を担当した事件の被告人から飲食
物の提供を受けたという事実で,平成24年に戒告の懲戒処分を受けて依願退職したという
例が1件ございました。
私からの説明は以上でございます。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
では,ただいまの当局の説明についての質疑応答に移ります。御質問のある方は挙手をお
願いいたします。
-17-
鵜瀞委員,お願いいたします。
しろまる鵜瀞委員 鵜瀞です。2点あるんですけれども,一つは,今御説明いただいた検察官の倫理
を涵養するための取組が十分とお考えなのかどうか,今回の倫理に関する問題を受けて何ら
か,省として,あるいは御担当として改善する御予定があるのかどうか,それをお聞きした
いと思います。これまでの取組が十分であるなら,なぜ今回のような問題が起きたのかとい
うことにもなります。非常に例外的な事情だと,今までの取組は適切であるというふうにお
考えであれば,そのようにおっしゃっていただいていいかと思います。
その点が一つと,それから,私は今回の賭けマージャン問題というのは,一般の検事さん
のなさったことではなくて,幹部の方がされたことなので,そこは区別して考えてもいいの
ではないかというふうに考えています。先ほど御説明いただいた検察官倫理を涵養するため
の取組のセミナーの,幹部等からこのようなお話をするとありましたけれども,東京高検の
検事長のような方はこのようなところで講師をされる方だと思うんです。そういう方が問題
行為をしてしまうというのは,一般の検事さんの倫理観とか,あるいは指導とか教育とか,
そういうのとはまたちょっと別なものです。幹部の方というのは,その幹部にふさわしい行
動ができる人を選んでいるはずだし,そうすべきであると。冒頭の御意見の中で,自覚とか
自律とか,そのようなことを言われた方がいらっしゃいましたけれども,幹部には幹部なり
の特別な規律というのがあるはずで,それとこのような倫理の取組というのは別に考えても
いいんじゃないかと。もっと言えば,私生活について介入することはいかがなものかという
御意見が前回からも出ていますけれども,より高位になっていけばいくほど,私もそういう
立場にありましたけれども,プライバシーの範囲というのは変わってくるわけです。そうす
ると,上の方にいらっしゃる方は,その立場にふさわしい規律というのが必要なのであって,
今回はそういうところが問題とされたということではないかというふうに考えています。
後半部分はちょっと意見にわたるところですけれども,前半部分で何か補足の御説明を頂
けるようでしたら,今日でなくても次回でもいいですけれども,お願いします。
しろまる鎌田座長 よろしいですか。では,お願いします。
しろまる佐藤刑事局総務課長 それでは,1点目についてお答えいたします。これまで,今しがた御
説明したとおり,倫理の涵養についての取組を検察全体で行ってまいりましたが,当然,不
断に見直されるべきものだと思います。また,これは2点目にも関わるお話かもしれません
が,検察官と一口に言っても,それは新任検事から,正に幹部の検察官まで,立場,立場で
職務内容も当然,異なるわけでございまして,それに応じてそれぞれに向けた研修等をこれ
までも考えてきたわけですが,また,その在り方についても当然,不断に見直すということ
ですし,また,本会議の今後の御議論というのもございますので,またそこは考えてまいり
たいというふうに思います。
以上でございます。
しろまる鎌田座長 第2点の方は,おっしゃられたように,御意見にわたりますので,この後の議論
の中で,それぞれの委員から考え方を御提示していただく方が妥当かと思っております。
ほかに当局に対する質問がありましたら。
篠塚委員,お願いします。
しろまる篠塚委員 検察の理念の中,10項目,項目があるんですけれども,これを更に具体化した
ような規定というのはないんでしょうか。
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しろまる鎌田座長 当局からお願いします。
しろまる佐藤刑事局総務課長 検察の理念としては,この10項目でございまして,それを更にブレ
ークダウンしたような規定はございません。
しろまる篠塚委員 もう一点よろしいですか。この検察の理念の10ある中の五つ目に,真実の供述
が得られるように努めるというのは,これは自白を取るという理解でよろしいんですか。
しろまる佐藤刑事局総務課長 当然,捜査機関に属しておりますし,犯罪立証というのが検察官の責
務であるわけですが,ただ,無実の人を起訴するということは当然できませんで,何が真実
であったかを希求するということがございますので,真実の供述というのは,場面によって,
あるいは相手によっても異なるものではないかというふうに考えております。
しろまる鎌田座長 虚偽の供述を取るようなことはしてはいけないという意味ですね。
しろまる徐オブザーバー すみません,オブザーバーの徐でございます。1点だけ少しお伺いしたい
んですけれども,民間企業等でも,あるいは裁判官等もあると思うんですが,例えば私生活
に関する介入についてもグラデーションがあると思っていまして,SNSを自由に発信して
はならないだとか,そういった一部,明文化されてはいないけれども暗黙の了解として,や
ってはいけないことだったり,省庁としてはマニュアル化してはいないが,こういったもの
は避けるように指導しているだとかいった,今回,委員からも多数意見があると思うんです
けれども,私生活にどこまで入るべきかにはグラデーションがあると思っていまして,実際,
今どういったような,プライベートも含めた,あるいは業務外の時間も含めたことまで何か
ルール,暗黙なり明文化されたルールがあれば教えていただきたいというふうに思っていま
す。
しろまる鎌田座長 当局の方で,今ルールがあるかどうかだけ,お願いします。
しろまる佐藤刑事局総務課長 今日御説明しましたとおり,国家公務員倫理法でありますとか倫理規
程というのがございますので,その範囲で規定しています。それには当然,職務外の行為も
含まれているわけですが,それについて事細かにいちいち,これは駄目,これは駄目という
規律を明確に設けているということはございません。暗黙と言われると,何ともお答えがし
にくいと思います。
しろまる鎌田座長 先ほど御紹介のあった地域委員会作成のコンプライアンスマニュアルとかいうよ
うなところで,それぞれに具体的なことを掲げたりというふうなことはないですか。
しろまる佐藤刑事局総務課長 そうですね,そこのコンプライアンスマニュアルでは,これまで非違
行為とされたことの具体例などが記載されていますので,それによってある程度,こういう
のが非違行為になるということは分かるのではないかと思っております。
しろまる鎌田座長 ほかに御質問はいかがでしょうか。
しろまる山本副座長 今のコンプライアンスマニュアルの関係なんですけれども,これは職員に配布
したり,グループウエアに掲示するというようなことが書いてあるんですが,倫理研修とか
をやる場合に,これを活用して研修を行うというようなことは行われているんでしょうか。
しろまる鎌田座長 当局,お願いします。
しろまる佐藤刑事局総務課長 これは各高検単位,地域委員会単位でやっておりますので,その高検
単位,あるいはその地域単位で教材としてこれらを用いるということは当然ございます。
しろまる鎌田座長 ほかにはいかがでしょうか。
どうぞ,紀藤副座長。
-19-
しろまる紀藤副座長 二つ質問と,お願いがあるんですけれども,一つは資料3の,今の非違行為等
防止対策委員会等についてという資料の関係なんですけれども,前回,言いっ放しじゃなく
て資料を添付してくださいとちょっとお願いしたと思うんですが,ここに東京高検から高松
高検まで,それぞれの地域委員会で何らかのマニュアルがあるということが書かれているん
ですね。東京高検に関しては,情報公開の関係で,私も,情報公開された方がいらっしゃっ
て,そこからその内容を入手はしているんですが,この東京高検の非違行為等防止対策地域
委員会のマニュアルみたいなものは,「品位と誇りを胸に」というものですけれども,これ
は平成20年初版,そのあと,平成26年初版,平成23年初版とか,初版があるじゃない
ですか。一つは,この初版ができた経緯を教えていただきたいと思っているんです。それま
ではなかったのかどうかというか,ないものを作ったということは,そのときに何かあった
のかもしれないし,やはりその経過が知りたいということと,そもそも在り方検討会議,そ
れから,その前の村木さんの事件は平成22年,23年の話なので,この「品位と誇りを胸
に」の初版を見ると,平成20年初版となっていますので,初版とその平成23年以降がど
の程度変わったかということは当然,資料的価値があると思いますので,一度拝見させてい
ただきたいというのがお願いと,もし分かれば,その質問の答えをしていただきたいという
のが1点です。
それから,もう一つは,先ほど公務員法上の処分で,平成23年以降,1件,これは在り
方検討会議以降,1件あったという話で,平成24年の戒告というふうに言われましたけれ
ども,私が調べた感じだと,戒告はほかにも幾つかあるように見えるんです,メディアの報
道だけ見ているとですね。あえてここでは触れませんが,その後にも幾つも戒告はあるよう
な気がしますのと,もう一つは,監督法上の処分というのがあるじゃないですか。今回だと,
問題になったのは厳重注意の処分の在り方だと思うんですけれども,行政上の監督上の処分
を入れていただかないと,具体的な現場のことが分からないので,やはりそれははっきりと
明示していただきたいと思います。
先ほど,井上委員からもちょっと発言がありましたけれども,村木事件は刑事事件になっ
たと,今回は刑事事件じゃないじゃないかと,その比較対象のときに,国民の意見としての
厳重注意は軽過ぎるんじゃないかというような国民世論的な批判があると,にもかかわらず,
厳重注意の部分をあえて外して,公務員法上の処分だけと言われても,それは何かちょっと,
むしろ情報公開としては中途なので,やはり行政上の監督処分も含めてきちんと公開してい
ただいて,その数も明らかにしていただきたいと思いますけれども。
しろまる鎌田座長 当局,今答えられることはありますか。
しろまる佐藤刑事局総務課長 まず1点目の,本日の資料3に関わるマニュアルですが,本日記載し
ましたのは初版の時期が分かるものということで記載をしています。少し確認しなければな
りませんが,その初版のものが現在残っているかどうかという点もございますので,ここは
確認をさせていただきたいと思いますし,また経緯についても私,直ちにお答えできません
ので,そこは調べておきたいと思います。
続きまして,本日紹介した国家公務員倫理法違反の事件が1件と申し上げました。これは
戒告という処分になっております。前回お尋ねがありましたのが,正に国家公務員倫理法違
反によって処分を受けた例ということでしたので,その点に限って本日は御説明しておりま
す。それ以外に,懲戒処分としての戒告というのが当然ございます。戒告以外にも懲戒処分
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はいろいろありますが,そのような処分を受けている例は当然あるというふうに承知してお
ります。本日紹介したのは,正に国家公務員倫理法に違反するものとして紹介をさせていた
だきました。
しろまる紀藤副座長 数が分かるかどうかも含めて,分かるのであれば,今言っていただければと思
います。
しろまる佐藤刑事局総務課長 国家公務員倫理法違反については,確認したところ,平成24年以降,
1件であるということでございます。
しろまる紀藤副座長 行政上の監督処分については答えられないですか。
しろまる佐藤刑事局総務課長 国家公務員倫理法違反について行政上の監督上の処置があったかどう
かは,少し確認をさせてください。ちょっと分かるかどうかということがありますので。
しろまる紀藤副座長 分かれば教えていただきたいと思います。そこは確認しないと先に進めないと
思うんですね,事実確認の問題なので。私が聞いている範囲でも,戒告ないし厳重注意のた
ぐいでも,世間から見たら相当問題があるような事案もあると思われるんです。だから,そ
れはどういう事案においてこういうことをやったのかということは必要ではないかというふ
うに思いますけれども。そういうことが繰り返し行われているようであれば,やはり検察の
理念は余り有効に機能していないということも意味すると思います。
しろまる鎌田座長 ありがとうございます。
当局の先ほどの説明に対する質問ということがもうなければ,意見交換に移りたいと思い
ますが,よろしいでしょうか。
それでは,検察官の倫理につきまして,委員等の皆様に意見交換を頂くことといたします。
なお,この問題に関しまして,ほかの法曹あるいは省庁,民間での取組も踏まえて議論する
必要があるという御意見を前回も頂いているところでございますので,そうした御経験をお
持ちの方につきましては,御発言に当たりまして可能な範囲で御出身の組織における取組等
の御紹介もしていただければと思います。
それでは,発言を希望される方は挙手をお願いいたします。
では,篠塚委員,お願いします。
しろまる篠塚委員 まず,弁護士の規律と,それを支える制度について,レジュメをお配りしていま
すので,それに沿って説明させていただきます。まず規律と,それから制度を支える懲戒等
の制度の問題と,分けて説明させていただきます。
弁護士の場合は弁護士法,それから日弁連の会則,かつては弁護士倫理といわれていたん
ですけれども,弁護士の職務基本規程,これは13章82条に具体的に記載して,これに違
反した場合には,もちろん努力規定と,そうではない,本当にそれに違反しただけで懲戒に
なるという二つに分かれますけれども,努力規定であっても,違反の程度が高い場合には,
弁護士法56条に基づいて,品位を失うべき非行として懲戒の対象になるということで,か
なり緻密に,詳細に,この規定を置いているということでございます。
それから,弁護士,これは法曹一般に通じるんだと思いますけれども,常に深い教養と高
い品性の陶冶に努めると,そして,もちろん法律及び法律事務に精通しなければならないと
いうことを掲げて,これに違反した場合にも当然,程度がひどい場合には懲戒になるという
こと。
それから,弁護士法,それから会則,それを具体化しているのが基本規程なんですけれど
-21-
も,第4章には刑事弁護における規律等も記載しておりまして,最善弁護ということを記載
しておりますし,接見の確保と身体拘束からの解放に努めることとか,あるいは防御権の説
明と不当な制限に対する対抗措置の努力義務等も記載しております。第5章から9章の中に
は,第71条,これは細かく書いておりませんけれども,事件の相手方との関係における規
律として,弁護士が信義に反して他の弁護士等を不利益に陥れてはならないというようなこ
とも記載しております。
それから,これを支える,今言ったのが実体法ですけれども,制度におきましては,弁護
士法に懲戒に関する規定がありまして,懲戒事由というのは会則違反,その他職務の内外を
問わず品位を失うべき非行があったときというふうに記載しておりまして,懲戒の種類は戒
告,2年以内の業務停止,退会命令,除名となっております。
これを審査する人の問題ですけれども,綱紀委員会と懲戒委員会,そして,司法制度改革
審議会の答申等もありまして,現在は弁護士,裁判官,検察官,学識経験者を構成委員とし
ています。特に日弁連の懲戒委員会におきましては,弁護士8名,裁判官,検察官2名,学
識経験者3名,8対7という構成になっております。さらに,綱紀委員会というのは言って
みれば検察のような役割を果たしているわけですけれども,それに不服があって,日弁連の
単位会の綱紀委員会,日弁連の綱紀委員会でも懲戒に付さないとなった場合には,綱紀審査
会という制度が,これも司法制度改革の中に出てきたわけですが,これは元裁判官,元検察
官,あるいは弁護士であっても,委員にはなれなくて,非法曹の学識経験者11名で構成さ
れておりまして,ここで懲戒に付さないということの適否について更に検討できるという形
で,開かれたものとして運営がされております。懲戒になった場合には公告,公表もありま
すし,裁判所をはじめ検察庁に対しても通知をいたします。
これも司法制度改革の中に出てきたわけですけれども,ただ,懲戒に付すというのはかな
り重い手続ですので,苦情窓口というのを,東京弁護士会でもそうですけれども,土日祭日
を除いて毎日開いておりまして,そこで苦情を受け付けて,かなりの部分はそれで納得して
もらえるんですけれども,その中でやはり弁護士会として懲戒に付するというものも含めて,
綱紀懲戒制度の前段階としてやっております。
それから,倫理研修については,これもだんだん強化されておりまして,現在は初年度,
登録後3年,それから登録後5年,その後も5年ごとに倫理研修の義務を課しております。
弁護士白書を見ますと,参加率は2017年度は,対象が9,857人で義務履行者が9,
737人で,義務履行率は98.8%となっております。
以上でございます。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。ただいま詳しく御説明いただきましたけれども,弁護
士会の状況について御質問があれば,まず出していただければと思いますが。特に質問はよ
ろしいですか。
どれぐらいの件数が懲戒にかかっていますか。
しろまる篠塚委員 今,御存じのように濫請求といって,一定の書式でばっと送られてくるのが多い
場合には1万件を超えることになりますけれども,ちょっと弁護士白書を持ってきましたの
で確認しますと,実際に懲戒処分になっている件数というのは1年間でも100件前後でし
て,その半分から半分以上が戒告で,それ以外の重い処分というのは,業務停止が1年未満
で,それが3割ぐらいということなんです。懲戒請求がなされて大半は懲戒しないという処
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分になります。実質的にと言ったらおかしいですけれども,濫請求を除く懲戒請求件数は,
1,000件から2,000件ぐらいというふうに理解したらよろしいかと思います。
しろまる鎌田座長 ありがとうございます。
山本副座長,どうぞ。
しろまる山本副座長 山本ですけれども,職務内外の品位を失うべき非行という,職務外のものも事
案としては結構多いという感じですか。
しろまる篠塚委員 これはちょっと,法務省の方と相談があったときに調べてみたんですが,賭けマ
ージャンってあるんですかというのがあったので,調べてみたんですけれども,これがカジ
ノバーでバカラ賭博をやって懲戒になった人がいますし,職務外でも飲酒運転で逮捕された
りとかある場合には懲戒になって,それはもう刑事犯罪ですが,ゴルフの帰りにお酒を飲ん
でいた,みたいなのもなりますね。決してないというようなことではありません。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。御意見の方もお願いします。
しろまる篠塚委員 意見の方は,ちょっと立ち入ったことなんですけれども,検察の理念の10項目
というのは,先ほど言いました弁護士の職務基本規程だとか諸外国の倫理規程に比較すると
かなり少ない,10項目しか挙がっていないので,その分やはり,かなり抽象的ではないか
という感じがしました。そういう意味で具体性がなくて,本当にこれで懲戒の規定になるの
かなという疑問がまずありました。
それから,先ほども言った5項のところの,取調べにおいて真実の供述が得られるように
努めると,これは正に検察の風土あるいは土壌だと思うんですけれども,やはり自白といい
ますか供述を取っていく,取調べを非常に捜査の中心に置いているということが出ているわ
けで,弁護側から見ますと,やはり黙秘権がある中で,これを正面に掲げるというのは,そ
ろそろ考え直すべきところに来ているんじゃないかというような感じは受けました。
以上でございます。
しろまる鎌田座長 ありがとうございます。
では,ほかの方からの御発言,いかがでしょうか。
後藤委員,どうぞ。
しろまる後藤委員 ありがとうございます。今,篠塚委員も御指摘のように,検察の理念は,検察の
精神及び基本姿勢と前文にあるように,抽象的なものです。検察官の仕事を考えてみると,
非常に大きな権限があるけれども,刑事訴訟法でその権限をどういう基準で行使しろと下謳
い的に書いていないで,検察官の裁量に委ねている部分が大きいわけです。実際には自ずと
実務的な基準が働いていると想像はしますけれども,それがどんな基準なのか外からは見え
ません。それがブラックボックスになってしまっている。そのため,検察官が従っている基
準が妥当かどうかについて,言わば社会との間で対話するような形,構造ができていません。
だから,もう少し具体的な行為規範に当たるものがあった方が良いと私は思います。
例えば検察の理念の1に,厳正公平,不偏不党を旨とするとあります。そうであれば,起
訴,起訴猶予の判断,いわゆる訴追裁量するときに,こういう事項は考慮してはいけないと
いう規範があってもよいと思います。
それから,3番目で,無実の者を罰してはいけないとあるのは当然ですけれども,ではど
れくらい有罪が確かであれば起訴してよいのか,起訴のための嫌疑の基準といわれるものが
明文としてはどこにも書いていないので,公式には分からないですね。
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それから,消極証拠についても集めなさいというのももっともですけれども,例えば,証
拠開示制度が法律上は適用されない場面で,弁護人から被告人の有利になるかもしれない証
拠があるはずだから見せてくれと言われたとき,どう対応すべきなのかという指針はどこに
もないですね。
それから,第5項の取調べについて,任意性を確保しろとあるわけですけれども,それこ
そ弁護人から立会いの求めがあったときにどうすべきかについて何も指針がないです。現場
の検察官は,それで迷うことがないのでしょうか。それから,取調べのなかで弁護人との相
談の内容を被疑者に聞いてもよいかどうかは,かなり微妙な問題ですけれども,それについ
ても公式の指針は何も示されていない。
それから,第7番目のところで,秘密を厳格に保持せよとあるわけですけれども,逆に,
報道機関に情報を出すときにどういうことに気をつけなさい,そういう規範が必要ではない
かと思うのですが,それも全くなくて,行為の基準が示されていません。そのために,言わ
ば社会と検察の対話の基盤ができていないという問題があると思います。
しろまる鎌田座長 法廷も一つの場ではあるんですよね。検察がじかに社会に説明するのか,訴訟の
場で......
しろまる後藤委員 それは基準の説明なのかどうか,分からないですけれども。
しろまる鎌田座長 井上委員,どうぞ。
しろまる井上委員 ちょっと後藤委員の趣旨を理解しかねて,社会との対話というのがよく分からな
かったんですけれども,捜査中のことについては公にできない部分というのが相当多いとい
うことは,まず御理解いただけると思うんですが,社会との対話ってどういうことを考えて
おられるのか。
しろまる後藤委員 例えば,訴追裁量においてこういうことを考慮すべきでないという方針が検察庁
にありますとなったら,その基準が妥当かどうかの議論ができるということです。あるいは,
仮に,一定の条件の下に被疑者に対して弁護人との相談の内容を聞いてもよいという規範を
作ったとすれば,それが妥当かどうかの議論が正面からできます。今そういう規範はないの
で,結局,検察官たちがどういう基準で判断しているのかが分からないわけです。
しろまる鎌田座長 井上委員,どうぞ。
しろまる井上委員 対外的にどこまで出すかというのは,私が答えるのがいいかどうかは知りません
けれども,検察の現場のいろいろな考え方があると思いますけれども,今,委員がおっしゃ
っていることのほとんどは違法,不当,不適正な捜査みたいなことに当たり得るところじゃ
ないかと思うんですけれども,それについては苦情申立て制度というのが検察にはありまし
て,例えば接見のことであれば,「接見内容を聞かれたりした,不当な捜査じゃないか」と,
そういう苦情の申立てが弁護士さんから上がってくることがあるんです。そうすると,それ
はまず地検で調査した上で,最後,監察指導部まで全部上がってくるんですが,その苦情申
立てには,そういう制度の中で,不当なものは適宜,指導していると,検察の中で自浄的な
仕組みが出来上がっている,そういう実情はあるということですね。全部ブラックボックス
に入るというか,監察の結果は参与に定期的に報告して,これは各案件,全部報告するんで
すけれども,そうやってそこで御意見を受けながら,現場の指導に当たっていると,そうい
う状況にある。私がいたときはそんなふうにやっていました。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
-24-
太田委員,どうぞ。
しろまる太田委員 太田でございます。公務員全般について,国家公務員法なり地方公務員法上の服
務に関する規定で服務規律というのが決まっていまして,検察官にも適用があるわけですか
ら,全体の倫理担保といいますか,その服務規律のありようというのは公務員共通項のよう
なところで決まっていると思います。私のおりました警察でも,そこはそういうことで,大
枠というのはもう常にそこで決まっています。
それから,細かい服務上のルールといったようなものというのについては,それぞれの省
庁とか機関で定めを置いている例もあるかもしれませんけれども,ただ,いずれにしても枠
組みというのは,国家公務員法なり,あるいは人事院の示している懲戒処分の指針なり,あ
あいったもので行為類型というのは定められてきているということなのかなと思います。
警察の場合ということで,ちょっと御紹介をいたしますと,基本となる基準は今申し上げ
たようなところではありますけれども,特に倫理の確保,警察の場合にも,やはり警察職員
の不祥事といいますか,非違事案がありますと,非常に市民の信頼を損ねて職務遂行に大き
な影響があるものですから,非違事案の防止というのは大きなテーマになっています。特に,
管理監督の立場にある警察職員にとっては常に念頭にあるといいますか,重視をしていると
ころでありますけれども,そのために恐らく一番エネルギーを入れていると思いますのは,
私は最後に警察大学校にいたということもあるんですけれども,教育という部分については
相当,エネルギーを割いているところがございます。
警察組織というのは,基本は都道府県警察で,大半の警察職員というのは地方公務員なん
ですが,ただ,このままだと全国一定の水準が保てないものですから,教育制度というのは
全国統一の格好にしていまして,一般の警察官の場合ですと,最初,巡査で入れば,都道府
県警察学校に半年なり1年近くなり入る。それから,階級制度を取っていますので,階級が
一つ上がるたびに,例えば巡査が巡査部長や警部補に上がれば管区警察学校というブロック
ごとの学校に入る。最後,警部以上の幹部になりますと,警察大学校に,これは全国から集
めて指導を行います。もちろん専門的な技術の教育も行いますが,まず例外なく全ての教育
課程,様々ございますが,全ての教育課程の中に職務倫理という時限を必ず入れていまして,
警察大学校でやっているような幹部教育の場面ですと,単なる講義にとどまらず,実際にあ
った事例を示しながら,こういう事例に対してはどう対処するかとか,あるいはこれを防止
するために組織のマネジメントをどうやったらいいだろうかといったようなことを演習形式
で時間をかけてやるというような,そういう教育の工夫をして,やっているところでありま
す。
また,今日も御説明ありましたけれども,これも各省庁,濃淡とか程度の差はあるんでし
ょうけれども,やはり機会あるごと,会議の場ですとか,あるいは通達等の指示もありまし
ょうけれども,様々な形でそういった点についての注意喚起と意識の徹底というのを図って
いるというのが特徴として挙げられることかなと思いましたので,ちょっと御紹介をさせて
いただきます。
それから,御意見を伺っていて思ったことですけれども,倫理と申しますときに,今御紹
介したような点も含めて,服務規律の世界の話というのが多分,一般的な観念だと思います。
先ほど来,篠塚委員とか後藤委員のおっしゃっているような刑事手続の中における様々な,
倫理といいますのか基準というのか,そういう世界ももちろんあるとは思うんですけれども,
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これはいわゆる一般的な公務員倫理の世界とは少し違う話なのかなというのを,伺っていて
感じまして,刑事司法手続の話は言ってみれば,公判廷というフィールドがあって,そのフ
ィールドで行われる裁判という競技のルールを,フェアプレーをきちんとやりましょうとい
う格好で定めるべしという趣旨のようにも聞こえまして,そうであるならば,アメリカの例
の御紹介もありましたけれども,法曹界,裁判官,そして両当事者,共通のルールの世界な
のかもしれないと。ちょっと公務員倫理,服務規律の世界とは次元を異にする話のような印
象を受けましたので,感想として述べさせていただきます。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
鵜瀞委員,お願いします。
しろまる鵜瀞委員 鵜瀞です。先ほどちょっと意見にわたる部分を申し上げたので,少し補足させて
いただければと思います。
今,ほかの委員からも,こういう規律を作った方がいいんじゃないかとか,こういう教育
方法があるんじゃないかというような御提案が展開されています。こうした方がいいんじゃ
ないかという議論はたくさんできると思うんですけれども,今回の倫理が問題とされた最初
の,非常にハイレベルの方による賭けマージャンというところに戻ると,何を守っていいか
分からないから,規範が分からないからやってしまった,守れなかったとか,そういう問題
ではないと思うんです。したがって,守るべき事項を詳しくすれば解決できるという問題で
はないのではないかというふうに思います。しかも,その事実関係がよく分からないという
種類の問題ではなくて,やったこと自体も大体は明らかにされているわけです。
そうすると,どうしてそういう問題が起きてしまったかということについて,ちょっと想
像にもなりますけれども,恐らくは,これぐらいならいいだろうとか,見つからなければい
いだろうとか,そういう内輪の論理のようなものが働いて,起きてしまったことではないか
というふうに想像されます。これはコンプライアンスの問題ではよくあることなんです。何
回か前,前々回でしたか,会社の常識は世間の非常識とかいうことが言われるという紹介を
させていただきましたけれども,自分たちの内輪の中ではまあまあ,自分で自分を許してい
るというような部分があって,それが問題視されるようになったということだと思うんです。
したがって,違法でなければいいというような感覚も問題になるわけで,違法でなくても
不適切と世間から糾弾されるということはよくあるので,それを紙にしていくとか研修して
いくということをすることも必要かもしれませんけれども,どちらかというと,それぞれの
方が,特に上にある方であればあるほど,自分のやっていることが外から見えたらどういう
ふうに見えるのだろうかという感覚で,その職務を,職務だけじゃなくて私生活も含めてか
もしれませんけれども,自己規律されていくということが一番重要なのではないかというふ
うに考えます。
一般の検事さんに関していろいろルールを作ったりとか,それから苦情申立ての仕組みを
作ったりとか,それはそれで必要ですし,機能させていくべきだとは思いますけれども,今
回問題になったことに関して言うと,そういう種類の問題ではないのではないかというのが
私の認識です。
以上です。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
紀藤副座長。
-26-
しろまる紀藤副座長 議論を,各論と総論の問題があると思うんですけれども,まず総論の問題をち
ょっと整理しておいた方がいいかなと思ったのは,太田委員からもちょっと話がありました
けれども,河合先生もちょっと書かれているんですが,法曹三者の倫理というのは一般の公
務員と比較して高いのか,低いのかという議論はした方がいいと思うんです。法曹三者とい
うのは,弁護士と検察官と裁判官なんですけれども,河合委員のレジュメには,法曹三者に
関して特別なものがあるということが記載されていまして,私もそれはそのとおりだという
ふうに思っているんです。その根本原因ですね,なぜ法律の専門職として何らかの品位が一
般の公務員よりも高いものが要求されるかということを,やはり総論として議論すべきだと
いうふうに思いますので,一般の公務員と同じという議論をしてしまったら,それはそれで
また一つの理屈が成り立つんですけれども,より高い品位が求められるのであれば,また別
の理屈になりますので,そこはちょっと整理した方がいいと思うんです。
私は前回,公益の代表者という概念がとても重要だという話をしたんですけれども,もう
一つ,検察官は単なる公務員ではなくて独任官庁であるということです。独任官庁という言
葉は1回目に,今日来られた佐藤さんが議事録11ページの中に,一般に検察官については
独任制の官庁であると言われたりしますというふうな話をされていて,検察官は訴追裁量を
持っているので,全ての訴追,それから訴追しないことも含めて,一人で決められるという
ことが国の権限として認められているわけです。そのことはとても大きな役割を担っている
と思うんです。裁判官も一人で判決を書けるわけです,単独であれば。そのぐらい重い職責
を担っている人が,一般の公務員,つまり末端の公務員も含めて,同じ倫理に服するという
のはやや無理があるんじゃないかというふうに思うんです。それは,弁護士がなぜ,職務の
内外を問わずとか,それから,弁護士は私益の事業者にもかかわらず,相手方の代理人や依
頼者にも配慮しないといけないというような考え方になっているわけであって,それは社会
正義を実現する者,法の正義を実現する者として,一定の社会に対する役割を担っているか
らだというふうに思われる。それ以外になんか正当化理由は成り立たないと思うんです。
ですので,検察官が独任官庁であること,公益の代表者になれる資格を持っていること,
弁護士は社会正義の実現,検察官と同じでしょうけれども,裁判所の司法を担う者として,
何らかの一定の義務を高品位に担っているということがいえるんじゃないかというふうに思
うので,そこはちょっと議論した方がいいと思います,違うのかどうか。
それから,各論としては,「検察の理念」というのは,検察官の理念となっていないです
よね。今日の資料1の1と1の2を見ても,検察職員の理念になっていて,つまり一般公務
員の理念ということで抽象化されているわけです。そういう立て方がいいのかどうか。例え
ば,検察の理念の1項では,「国民全体の奉仕者として公共の利益のため」と書いてあるん
だけれども,国民全体の奉仕者というのは一般の公務員全員そうなわけであって,それと同
じ倫理であれば,正にこの理念でいいんでしょうけれども,検察官に特別の倫理が成り立つ
のであれば,この検察の理念では不十分ということになりますから,そこはよく考えた方が
いいんじゃないかというふうに思ったりもします。
ちょっと時間の関係があるので,井上さんの議論は,さっき新しいIT技術とかいう話を
されましたけれども,それも検察の理念から出てくる話なので,議論してもいいのかなと思
っているのは,8項とか9項とかは「変化にも対応し得る幅広い知識や教養」であるとか,
「刑事政策の目的に寄与する」ということまで書かれているわけであって,その中にはGP
-27-
SやIT技術を使った仮釈放の在り方であるとか,録音・録画システムとかITを使った取
調べの在り方とか,いろいろこれは考えられるわけであって,やはりこの検察の理念という
のは単なる倫理ではないので,目的志向で書いている,そのこと自体がいいかどうかは別な
んですけれども,もう少し具体化することは可能なのかなと私は思っています。
しろまる鎌田座長 ありがとうございます。
残り時間があと5分になってしまいましたけれども,河合委員,どうぞ。この後,山本委
員も小林オブザーバーもいらっしゃいますので,できるだけ簡潔にお願いします。
しろまる河合委員 今,法曹倫理について紀藤委員の御発言がありましたが,法曹倫理等については,
これは非常に長い歴史があって,そういった中で培われてきて,先輩から助言,指導を受け
ながら不文律として構成され,確立されてきたものと理解しています。つまり法律をつかさ
どる法の番人として,厳しい倫理が求められているということかと思います。そういうこと
ですので,それと一般公務員と違うのかというのは,私もなかなか分からないところですが,
そういった観点から考えておく意味はあるかと思います。
一つ,裁判官については正に国家権力を行使するという意味で高い倫理が求められるわけ
ですが,検察官も,権力行使という点では裁判官と似たところがあるものですから,そうい
った意味では,より高い倫理が求められるということはあり得るかと思います。
しろまる鎌田座長 山本隆司委員。では,小林オブザーバー。
しろまる小林オブザーバー お時間もあると思いますので,簡潔に。総論という意味では,今議題に
なっている,検察官の方がほかの公務員の方とか,あるいは裁判官の方とどう違うのか,あ
るいは同じ倫理でいいのかという点が一つ,重要だと思うんですが,それに加えて,やはり
今回そもそもなぜこの話が話題になっているのかというところに立ち戻ると,やはりプライ
ベートにおける倫理観というのをどの程度まで明記していく必要があるのか,明文化してい
くべきなのかということは大きな論点になるのかなと思います。なので,検察の倫理の中に
は,今の文章の中ですと職務外については言及されていない状況のように見えますけれども,
これを変えるべきかどうかというのは,是非,次回以降になってしまうと思いますが,皆様
方の御意見を伺えればと思います。よろしくお願いいたします。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
先ほど,山本隆司委員は挙手されたわけではないですか。
しろまる山本委員 では,一言だけ,確認にすぎませんけれども,一般の公務員と検察官という対比
を余りにも強調するのは,やはり少々議論を違う方向に持っていくことになる可能性がある
ので,注意した方がいいだろうと思います。先ほども発言がございましたけれども,一般の
公務員に関しましても当然,政治との関係,あるいは中立性の問題がございますし,また,
規律は公務員の中でも職種あるいは職位によって変わってくることでございまして,この点
は検察官と共通の面がかなりあるだろうと思います。それから,IT技術の問題も,もちろ
んこれは一般の公務員といいますか,一般の行政機関にも正に求められていることですから,
その辺は少し整理して議論した方がよろしいのではないかと,それだけでございます。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
まだまだお伺いしたいといいますか,民間企業ではどうしているかとか,あるいは大学は
どうしているかとか,私は医道審議会をやっておりましたので,医師の倫理規程というのも
参考になる部分があると思いますので,それらは追ってまた,次に御発言いただけるような
-28-
機会を作りたいと思います。申し訳ございません,不手際で議論が詰め切れませんでしたけ
れども。
紀藤副座長,どうぞ。
しろまる紀藤副座長 井上さんが監察の話をされたと思うんですけれども,今日の佐藤さんの話だと,
結局,国家公務員倫理法違反の処分だけを開示されたんですね。だけれども,先ほどの説明
は,全体の説明は国家公務員法上の処分の話をされて,内外には品位の条項が国家公務員法
にあると言って,懲戒処分の規定を説明されたわけだから,本来であれば国家公務員法上の
処分も含めてちゃんとつまびらかにしていただかないと,説明と理由がそごしていると私は
思っているんです。ですから,それと監察の問題も結構リンクしていて,結局,行政法上の
監督処分もそうなんですけれども,監察上のどういう問題があって,その方がどういう,最
終的に検察官として身を処せられたかというのは,やはり情報としては意味があるのかなと
私は思っているんです。それはなぜかというと,普通の行政上の監督処分をしなくても,依
願退職とか,実際上辞めるということは幾つもあって,報道を見ると,処分はされないけれ
ども辞めましたという人も実はたくさんいるんです。私の知り合いでもいますし。そうする
と,そのあたりのことは井上委員に聞かないと分からないところであれば,やはり井上さん
に20分ぐらいしゃべってもらった方がいいのかなと正直言って,思うんです。
それから,リークの在り方も同じなんです。リークがないかと言われたら,私は現場でい
ろいろな事件をやっていますから,どう考えてもこれはリークであるしかないとか,それか
ら,警察官から文句を言われたこともあります。要するに,このリークはどこから出たか分
からないと現場の警察官が言っていて,非常に不満を上の上司に言われたようなケースも実
際にあります。特に,捜査情報であるとか,捜査情報がその日の朝にほぼ確実に漏れている
とか,そういうことも,どうしてそういうことが起こるのかは正直言って,分からないんで
す,現場の警察官からは言わないでくれと言われているわけですから。そういうことも含め
て考えると,リークって実際にどういうふうにされるのか。会見を開いているのは分かるん
ですよ,メディアから会見ペーパーを拝見しますから。だから,会見を開かれているのは分
かるんだけれども,会見以外で何があるのかはやはり明らかにしていただきたいなと,そこ
ら辺のニュアンスも含めて,一回,20分ぐらいしゃべっていただきたいなというのが私の
希望です。
しろまる鎌田座長 最初の点は,公務員倫理法違反の懲戒処分の件数という御質問だったので,懲戒
処分でないものはお答えがなかったのですが,それも出せという御要望と受け止めています
ので。
しろまる紀藤副座長 監察の集計とかの井上さんの話はですね,それはあたりでも構わないですけれ
ども,感覚でも構わないので,やってもらいたいです。
しろまる鎌田座長 ちょっと定刻過ぎてしまいまして,申し訳ございません。まだまだ議論は続きそ
うですので,次回,続けてこの議論をしていきたいと思います。
今後の進め方につきましては,本日までに頂戴した様々な御意見で,どこに対立点がある
かというようなことを少し整理した上で,副座長,事務局と相談して,今後の議論の進め方
についての第1次のプランを提示できるように務めてまいりたいと思います。本日の議事に
ついては,申し訳ございません,中途半端でありますけれども,定刻を過ぎましたので,こ
こまでとさせていただきます。
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本日の会議の議事内容につきまして,特に公表に適さない内容はなかったと思われますの
で,発言者名を明らかにした議事録を作成して,法務省のホームページ上に公表することと
させていただきます。また,配布資料につきましても公表させていただきますが,そのよう
な進め方でよろしいでしょうか。
ありがとうございました。
では,次回の会議の予定につきまして,事務局から説明をしてもらいます。
しろまる保坂事務局 御都合のつかない先生方には恐縮でございますが,次回,第4回会議につきま
しては,9月10日木曜日,午後1時から開催予定としております。その会議の方式等につ
きましては,追って御連絡をさせていただきます。
しろまる鎌田座長 本日はこれにて閉会とさせていただきます。
長時間にわたって熱心に御討議いただきまして,誠にありがとうございました。

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