議事録


法務・検察行政刷新会議(第5回)
議事録
第1 日 時 令和2年10月1日(木) 自 午後 3時58分
至 午後 5時58分
第2 場 所 法務省20階第1会議室
第3 議 題 1 「法務行政の透明化」についての議論
2 その他
第4 議 事 (次のとおり) -1-議 事
しろまる保坂事務局 それでは,ただいまから法務・検察行政刷新会議の第5回会議を開催いたしま
す。
座長,お願いいたします。
しろまる鎌田座長 本日は皆様,大変お忙しい中御出席賜りまして,誠にありがとうございます。
まず,本日の会議の出席状況について確認します。
本日は,小林オブザーバーは所用のため御欠席でいらっしゃいます。また,冨山委員,山
本隆司委員は,所用のため遅れて御参加になる予定であります。
それでは,議事に移らせていただきます。
前回の会議におきまして,本会議における検討の柱の一つ目である検察官の倫理について,
活発な御議論を頂きました。
私の認識に基づいて,検察官の倫理についてのこれまでの議論を簡単にまとめさせていた
だきますと,第1に,検察の理念を改め,又は新たに検察官についてマスコミとの関係や私
生活上の規律を設けるべきか,あるいは職権行使上の行為規範を設けるべきかという課題に
つきましては,規律等を設けるべきであるとの御意見があった一方で,既に各種の規律が存
在することや私生活領域の規律には慎重であるべきこと等から消極的な御意見もあり,なお
異なる意見が併存しているという状態でございます。
一方,第2に,検察当局において外部の声を取り入れるなど,企画段階から工夫しつつ,
幹部が社会の目を意識し,常識から乖離しないようにするための幹部研修等の取組を強化す
ることにつきましては,おおむね御異論がありませんでした。
もとより,各委員等におかれましては,更に具体的な御意見もあろうかと存じますが,少
なくともこれまでの御議論により,一つ目の柱につきましては御意見が一致する部分と一致
しない部分について,大体御意見が出尽くした感がございます。それに加えまして,森大臣
も強調されていたところでございますが,新たに就任されました上川陽子法務大臣からも,
信頼回復のためにはスピード感が何よりも大事であり,できる限り早期に議論を進め,その
結果を示してもらいたいとの御意向が示されました。
これらを踏まえて,なるべく早期に三つの検討の柱についての実質的な議論を一巡させる
という観点から,本日の会議では冒頭から本会議における検討の二つ目の柱である法務行政
の透明化の議論に入りたいと思います。
なお,前回の会議でお配りしました久保事務局作成の検察改革の進捗状況の評価につきま
しては,三つ目の検討の柱の議論と主に関わっておりますので,本日の会議では取り上げず,
三つ目の検討の柱の議論の際に取り上げることにしたいと考えております。
以上のような進行とすることについて,よろしいでしょうか。
ありがとうございます。
なお,本日の会議に当たりまして,後藤委員と紀藤副座長からそれぞれ検察官の倫理に関
連する内容の資料が提出されております。お手元に届いているかと思いますが,ただいま申
し上げたとおり,本日は法務行政の透明化の議論に入りたいと考えておりますので,それぞ
れの資料の内容につきましては,各委員等においてそれぞれお読みいただくこととして,本
日のところは後藤委員と紀藤副座長から簡潔にそれぞれの資料の趣旨について,補足すると -2-ころがあれば御発言を頂ければと思います。よろしくお願いします。
まず,後藤委員。
しろまる後藤委員 ありがとうございます。
提出した意見要旨の1のところは,刑事手続に関する議論の補足ですので,御覧いただけ
れば足りると思います。
2のところは,先ほど座長が指摘されたように,検察官の倫理について意見が分かれた部
分について,一致点を探るための提案でございますので,しかるべき段階で御検討いただけ
れば幸いです。
しろまる鎌田座長 ありがとうございます。
それでは,紀藤副座長,お願いします。
しろまる紀藤副座長 紀藤の方からお出ししたのは,「検察の倫理」に関して参考となる「検察講義
案」の内容ですけれども,これは司法研修所で検察講義において教科書として使用されてい
るものでありまして,各年ごとにいろいろ版が分かれているものです。
司法研修所で研修した者,つまり弁護士,検察官,裁判官に関しては,この本の内容は皆
さん御存じで,特に説明するところはないわけですけれども,念のため,前回検察官一体の
原則とか,それから独任制官庁の話が出ていましたので,一応その説明と,検察官の倫理に
関してどういうふうに書いてあるのかということを確認していただくためにお出ししたもの
です。教科書としては,私が使っていた頃は,縦書きの教科書でして,今は平成30年版と
いうのが一番新しいんですけれども,同じ白表紙で出ているものが販売されているものです
が,今は横書きというふうになっています。
この縦書きの教科書を,私の方で特に大体40期前後ぐらいで使われていた昭和59年版
の教科書を,今日は引用しています。
特に重要なのは,検察官一体の原則とか独任制官庁の問題というのは当然の前提なので,
お読みいただければよろしいかと思うんですけれども,例えば2ページの上から6行目から,
検察官の独立性の問題が書いてあるんですけれども,検察官は独任制官庁であるから,本来
独立的性格を持つものであると。それは,検察権の行使が他の力に左右されることなく公正
でなければならないことと,検察官の職務行為は直ちに確定的効力を生ずるものでなければ
ならないことのために必要であるということで,独立性は重要であることと同時に公正でな
ければならないことを定めていて,3ページの下からに検察官の心構えというページがある
んですけれども,この中で4ページに,そんなに長くないので読ませていただきますけれど
も,検察官は,常に,公益の代表者であり,かつ,国民全体の奉仕者であることを自覚し,
不偏不党の立場にあって,あくまで公正誠実に職務を行わなければならない。そのためには,
独任制官庁たる自覚と誇りを堅持し,真の勇気と強い責任感をもって事に当たることが必要
である。
また,検察官は,国民の納得する良識ある検察を行わなければならない。そのためには,
私行上も他から非難を招くことのないよう,言動を慎むことはもちろん,常に視野を広め識
見を高めることに努めるとともに,健全な国民感情を正しくつかみ,国民から深い信頼を得
るよう絶えず謙虚な反省を怠ってはならないというふうに書かれていまして,司法研修所で
勉強する人は,弁護士も裁判官も検察官も,この教科書を読んで,私行上もほかから非難を
招くことのないようということで理解しているところでありまして,現在の平成30年版の -3-検察講義案にもこれは明記されているところでありまして,議論の論点の前提事情として御
理解いただければというふうに思っております。
同時に,今日,検察官の倫理に関しては,一応今後に駒を進めるということで,今日は文
書の管理の問題になりますけれども,文書の管理や,それから刑事手続においても,この検
察官の倫理はとても重要な論点ですので,それぞれの場面で検察官の倫理の問題は出てくる
と思いますので,これまでの議論は当然の前提として,次の議論につなげたいと思っており
ますので,よろしくお願いしたいと思います。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
それでは,二つ目の検討の柱であります法務行政の透明化について議論をしたいと考えて
おります。
法務行政の透明化に関して,本会議で取り上げるべき具体的な検討事項につきましては,
これまで委員等の皆様から文書管理,決裁の在り方,あるいは人事の在り方,更には政治と
検察の距離などについて,本会議で取り上げることの当否も含めてでありますが,多様な御
意見がありました。そのため,本来ならば,ここで論点を整理してお示しすべきところであ
りますけれども,なお極めて多様な御意見があり,論点を絞り込むことが困難でありますが,
私の理解するところでは,法務行政における文書管理や決裁の在り方について取り上げて議
論していくべきことについては,大方の御異論はなかったと思います。
その上で,これらの点について未来志向で議論していくに当たっては,法務省における現
行のルールに加え,この間の検察庁法改正案や勤務延長等の一連の経緯につき,委員等の間
で共通の認識を得ておくことが有用だと考えられます。そこで,本日は,まず当局から文書
管理・決裁のルール及び関連する一連の事態や指摘事項等について説明してもらうこととい
たします。
それでは,刑事局総務課長,よろしくお願いいたします。
しろまる佐藤刑事局総務課長 刑事局でございます。
それではまず,法務省の文書管理・決裁のルール,それから関連する一連の事態や指摘事
項等について御説明いたします。
まず,法務省の文書管理・決裁のルールについて御説明をさせていただきますが,行政文
書の管理につきましては,政府共通のルールとして,本日配布させていただきました資料1
の公文書等の管理に関する法律及び資料2の行政文書の管理に関するガイドラインがありま
す。行政文書の作成から整理,保存,保存期間満了後の措置に至るまで事細かに定められて
おります。
そして,法務省では,公文書等の管理に関する法律を受けまして,内閣総理大臣の同意を
得た上で,文書管理のルールとして資料3の法務省行政文書管理規則を定めております。そ
の内容は,政府共通のルールであるガイドラインにのっとったものとなっております。例え
ば,公文書等の管理に関する法律第4条によれば,当該行政機関における経緯も含めた意思
決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け,又は検証する
ことができるよう,処理に係る事案が軽微なものである場合を除き,文書を作成しなければ
ならないとして,文書主義の原則について規定をしておりますが,これを受けて法務省行政
文書管理規則第11条において同趣旨の規定を置くなどしています。
また,法務省では,法務省行政文書管理規則を受けまして,決裁等に関するルールとして, -4-資料4の法務省行政文書取扱規則を定めております。
法務省行政文書取扱規則では,例えば第12条において,決裁の方法として文書管理シス
テムを利用する,いわゆる電子決裁や,押印により行ういわゆる紙決裁等について記載して
いるほか,第13条において,部局長以上の決裁を要する決裁事項及び決裁者は,別表第一
に定めるところによるとして,決裁を要する事項及び決裁者について別表に記載しておりま
す。
続きまして,法務省の文書管理,決裁のルールに関して,検察庁法改正案において問題と
なった点などについて御説明いたします。
国家公務員の定年に関して,平成30年8月,人事院から国会及び内閣に対し定年を段階
的に65歳に引き上げるための国家公務員法等の改正についての意見の申出がなされました。
これを受けて,政府は一般職の国家公務員の定年を段階的に65歳に引き上げる国家公務員
法等の一部を改正する法律案の検討を進め,法務省では,同じく一般職の国家公務員である
検察官について,同様に定年年齢を引き上げるため,検察庁法改正案の検討を進めてまいり
ました。
その中で,従前は国家公務員法上の勤務延長の規定は検察官には適用されないと考えられ
ていたことから,このような解釈を前提に策定した法律案について,昨年10月末頃には内
閣法制局第二部長の審査が終了いたしました。
しかし,昨年の臨時国会では法案提出に至らなかったことから,本年の通常国会への提出
に向けて,改めて昨年12月頃から現行の国家公務員法と検察庁法との関係を検討いたしま
した。そして,その結果,検察官についてもこれまで適用がないと解釈されていた国家公務
員法上の勤務延長制度が適用されると考え,法務大臣に御説明して了解を得て,法務省とし
て解釈を変更したということでございます。
そして,令和2年1月17日,勤務延長制度等に関する解釈についての法務省としての解
釈をまとめた,資料の5の勤務延長制度(国公法第81条の3)の検察官への適用について
と題する文書を作成いたしまして,同日17日,1月17日から1月24日にかけて,同文
書をもって内閣法制局等との関係省庁との協議を行い,異論はない旨の回答を得て,政府と
して解釈を変更しました。
なお,法務省では,今般の法律案の内閣法制局審査の際,内閣法制局等の担当者との間で,
検察官に国家公務員法の勤務延長の規定は適用されないことを当然の前提として議論をして
おりました。そのため,内閣法制局等に協議するに当たり,従前の解釈は当然の前提である
ということで,文書の中で従前の解釈に触れてはおりませんでした。
その上で,解釈変更を前提とした検察庁法改正案について,法務大臣の決裁を経た上,令
和2年3月13日,検察庁法の改正を含む国家公務員法等の一部を改正する法律案が国会に
提出されました。
この解釈変更に対しましては,国会審議の場などにおいて様々な御意見を頂きました。先
ほど御説明した解釈変更をまとめた文書については,例えば解釈変更をまとめた文書に日付
がないのはおかしいのではないか,それから,解釈変更をまとめた文書について,口頭での
了解だけでなく,書面での決裁を取る必要があったのではないかなどといった指摘がなされ
ました。
これに対する説明といたしましては,まず1点目として,解釈変更をまとめた文書は,関 -5-係省庁と協議を行うために作成したものであって,法務省としての案を確定させた作成日付
が重要であるとの考えには至っておらず,作成日付は入れなかった。それから,2点目です
が,法務省では,法律案の決裁についてはその最終的な成果物である成案を確定する際に,
法務省行政文書取扱規則に定められた方法による決裁を経ることとしているところ,具体的
には例えば法律の案文及び理由,法案の概要,要綱などが同規則に定められた方法によって
決裁を得るものであり,他方で,解釈変更をまとめた本件文書のような法律案策定の過程に
おいて検討のために作成された文書については,同規則に定められた方法による決裁を逐一
経ることは要しない。もっとも,決裁対象とされた文書と共に行政文書として保存される場
合がある。このように御説明しているということでございます。
この点,法務省では,先ほど申し上げた公文書管理法及び法務省行政文書管理規則の規定
の趣旨を踏まえ,国家公務員法等の一部を改正する法律案の意思決定に至る経緯を,合理的
に跡付け,又は検証することができるようにするため,その経緯について,今回お配りした
資料6の検察庁法改正案策定経緯文書を作成し,管理しております。
なお,検察庁法改正案を含む国家公務員法等の一部を改正する法律案は,令和2年6月1
7日に廃案となっております。
続きまして,黒川元東京高等検察庁検事長の勤務延長について御説明をさせていただきま
す。
黒川氏については,令和2年2月7日限りで定年に達するものであったところ,同年1月
29日,法務大臣から閣議請議を行い,同月31日に6か月間,具体的には令和2年8月7
日までの勤務延長が閣議決定されました。
なお,この閣議決定に係る決裁文書は存在しており,法務大臣まで決裁がなされておりま
す。
こちらの勤務延長に対しましては,国会審議の場などにおいて,例えば国家公務員の勤務
延長の規定は検察官には適用されないはずであり,勤務延長は許されないのではないか,黒
川氏を検事総長にするために官邸主導で勤務延長を行ったのではないかなどといった指摘が
なされました。
これに対する説明といたしましては,1点目として,検察官も一般職の国家公務員である
ため,今般検察庁法に定められている特例以外については一般法たる国家公務員法が適用さ
れるという関係にあり,検察官の勤務延長については国家公務員法の規定が適用されると解
釈したものである。2点目ですが,黒川氏については検察庁の業務遂行上の必要性,すなわ
ち東京高等検察庁管内において遂行している重大かつ複雑困難事件の捜査・公判に対応する
ためには,黒川氏の検察官としての豊富な経験,知識等に基づく管内部下職員に対する指揮
監督が必要不可欠であり,当分の間,引き続き東京高等検察庁検事長の職務を遂行させる必
要があるとして,検察庁を所管する法務大臣からの閣議請議により閣議決定され,引き続き
勤務させることとしたものであり,指摘は当たらない。このような説明でございます。
続きまして,黒川元検事長の人事上の処分について御説明いたします。
黒川氏は,新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言の自粛要請期間の令和2年5月
中,2回にわたり,報道関係者ら3名とともに金銭を賭けてマージャンを行ったという事実
で,令和2年5月21日,訓告の措置を受け,翌5月22日に辞任しました。
この黒川氏に対する措置に対しては,国会審議の場などにおいて,例えば報道関係者から -6-聴取していないなど調査が不十分ではないか,訓告の措置は軽過ぎるのではないかなどとい
った指摘がなされました。これに対する説明としては,黒川氏の処分を決するに当たり,黒
川氏の聴取を行い,黒川氏と共にマージャンを行ったとされる報道関係者が所属する各社が
公表した内容を総合的に判断して事実認定をしており,処分を決するに当たり必要な調査を
行ったものであり,また,黒川氏の行為は旧知の間柄の者との間で,必ずしも高額とまでは
言えないレートで行われたものであること,事実を認めて深く反省し,自ら職を辞したこと
などの事情を総合的に考慮し,監督上の措置として最も重い訓告としたもので,適正な措置
であるというものとなっております。
資料7,8につきましては,懲戒処分の指針について,あるいは法務省職員の訓告等に関
する訓令でありますが,こちらについては時間の関係もございますので説明は省略させてい
ただきます。
なお,委員からお求めがありました検察官の厳重注意及び注意の件数ですが,各検察庁に
おいて行われる厳重注意及び注意は,法務省において把握しているものではございませんの
で,お答えすることができないことを御理解いただければと思います。
刑事局からの説明は以上となります。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
ただいまの当局からの説明に対して,御質問や御意見はありますでしょうか。御発言され
る委員の方は,ウェブで参加されている委員の方に発言者が分かるよう,お名前をおっしゃ
ってから御発言ください。
それでは,発言を希望される委員等は挙手をお願いいたします。
後藤委員,どうぞ。
しろまる後藤委員 ありがとうございます。
提出してあります意見要旨中の3のところで,私の質問を列挙してございます。今の御説
明の中で,一応お答えがあった部分もありますが,私としてはまだ納得できない部分などが
ございますので,順次申し上げます。
私がこれをお聞きしたい趣旨は,黒川さんの勤務延長の人事は,それまでの法律解釈を変
更してまで行った非常に特殊なものだったし,かつ,それが彼の不祥事による辞任によって,
結果的には失敗に終わっているわけです。なので,どうしてそのような人事が行われたのか,
その経過はどういうものだったかは,私を含めて多くの国民が疑問を持っているところだと
思います。
それについて,一応常識的に納得いくような説明がないと,法務・検察行政を信頼してく
れといっても難しいだろうと思うので,疑問の点を率直にお聞きするという趣旨でございま
す。
まず,1は,先ほどの御説明で,昨年の11月までは法務省としても勤務延長制度は検察
官に適用されないと考えていたというふうに理解しました。もしそれが違っていたら御指摘
ください。
それから,2番目,何で昨年12月頃から勤務延長制度が検察官にも適用できるのではな
いかという再検討を始めたのか,そのきっかけがどうも分からないです。最初に黒川氏にそ
れを適用したところを見ると,それをしたいのがきっかけだったと見るのが言わば情況証拠
としては自然に見えるのですけれども,先ほどの御説明はそこがはっきりしていなかったの -7-で,お尋ねします。黒川氏の勤務延長をしたいという意見がきっかけだったと理解してよい
のかどうかです。
それから,3番目,協議文書と言われている解釈変更を説明するための文書で,なぜそれ
までの解釈について触れていないのかという疑問です。先ほどの御説明では,それは相手も
当然それを理解しているからだという御趣旨だったと思います。けれども,このような文書
はいろいろな人に見せるのだと思います。必ずしも説明する法務省の側と説明を受ける方と
の間で従来の解釈が共通の理解になっているとは限らないでしょう。これまでの解釈を変更
するための文書,それを説得するための文書であれば,これまで違う解釈をしていて,それ
にはこういう理由があったのだけれども,考え直したらこの方が正しいというふうに説明す
るのが誠実な説明のように思います。そこが先ほどの御説明では納得できませんでした。
4番目は,この解釈の変更について法務大臣の了解を得たということですけれども,これ
は厳密に言うと,協議文書を作成する前に口頭で了解を得たと理解してよいのでしょうか。
今年の2月25日の法務大臣の記者会見での御発言だと,この文書自体について口頭で決裁
したとも受け取れる御説明があるので,その前後関係がどうなっているのか,大臣の了解な
るものがいつ,どういう形で行われたのか御説明いただきたいと思います。
5番目は,具体的に黒川氏の勤務延長というこのアイデアは,実際誰が最初に考えついた
ものなのか。
6番目は,勤務延長というのは,今その人でなければ対処できない課題があるので,つま
り余人をもって代え難い仕事があるからするものだと理解します。そこが,先ほどの御説明
では検察庁の業務遂行上の必要性という非常に抽象的な御説明しかないので,それでは全く
分からないです。もう少し具体的に黒川氏でなければ対処できない課題とは何だったのかを
お聞きしたいと思います。
それから,7番目については,勤務延長人事については決裁文書があると理解いたしまし
た。
8番目は,余人をもって代え難いので黒川氏の勤務延長をしたとして,実際にはその後で
林眞琴さんに途中で代わらざるを得なくなったわけです。そのことによって東京高検の事務
ないし職務遂行に何らか支障が生じたのかどうかをお聞きしたいと思います。
以上です。
しろまる鎌田座長 では,当局からお願いします。
しろまる佐藤刑事局総務課長 先ほどの説明と重なる部分もありますが,再度御説明したいと思いま
す。
まず,1点目の御質問として,2019年11月まで,国公法上の勤務延長制度は検察官
には適用されないと解釈していたということで,それはそのとおりでございます。
それから2点目として,勤務延長制度の検察官の適用可能性を再検討したきっかけという
お話がございました。こちらも先ほどの説明と重複する部分がございますが,もともと検察
官の定年引上げに関する法律案については従前から検討を行っており,昨年10月末頃には
内閣法制局2部長の審査を終了していたが,法律案の提出には至っていなかったということ
でございます。
その後,本年の通常国会の提出に向けて,改めて法律案において国家公務員法上の特に勤
務延長制度,あるいは再任用制度について,これをどう取り扱うべきかということを検討い -8-たしました。それを考える前提として,昨年12月頃から国家公務員法と検察庁法との関係
を検討したことがきっかけということでございますので,御指摘は,いろいろな国会審議で
も御指摘があったところですが,黒川氏について勤務延長したいという意見が現れたことが
きっかけということではございません。
それから3点目として,協議文書と御指摘いただいた文書ですが,これについて従来と異
なる解釈であるという点が触れていないということは,先ほども説明したとおりです。その
理由としては,今回,内閣法制局あるいは内閣人事局等に協議をしているわけですが,当然
その関係省庁との間では,従前の解釈というのは当然の前提となっておりましたので,それ
については見る側にとっても当然の前提だったので,記載していないということでございま
す。
それから4点目,大臣の了解という点ですが,これも先ほど説明したとおりでございます。
この協議文書の内容について,口頭で事務方から必要な説明を行い,その了解を得た上で協
議を行ったということになります。
それから5点目として,黒川氏の勤務延長を最初に誰が発案したのかということですが,
これは国会審議でも答弁しているものと承知しておりますが,法務省内で検討し,検察庁の
業務遂行上の必要性に基づいて引き続き勤務させることを決めました。それから,検察庁を
所管する法務大臣から閣議請議を行って閣議決定されたということなのですが,その詳細に
ついては,個別の人事プロセスということもありますので,これまでもお答えは差し控えさ
せていただいてきたところであります。
それから6番目,勤務延長の理由としての課題,これが具体的に何だったのかと,こうい
うお尋ねかと思います。こちらについて,重複する部分がありますが,黒川氏の勤務延長の
理由については,東京高検管内で遂行している重大かつ複雑困難事件の捜査・公判に対応す
るため,黒川氏の検察官としての豊富な経験・知識等に基づく管内部下職員に対する指揮監
督が必要不可欠である。当分の間,引き続き東京高検検事長の職務を遂行させる必要がある
ため,引き続き勤務をさせるものとしたということは,これまでも国会でも答弁しておりま
すが,これ以上の詳細については,個別の人事に関することであり,また,捜査機関の活動
内容,あるいはその体制に関わるものですので,お答えは差し控えさせていただいてきたと
ころであります。
それから,決裁文書については,先ほど説明したとおり,勤務延長に関する閣議決定,閣
議請議に関する決裁文書はございます。
それから,最後の点,後任への交代,その間,課題への対応に対する支障があったのかと
いうところですが,こちらも黒川氏の辞任によって東京高検検事長の席が空席になったとい
うことがございます。その時点で業務の継続的遂行に問題が生じたということは事実であり
ますが,最適な後任者を速やかに選任し,その結果,空白の期間は比較的短く,具体的な業
務の支障が生じるまでには至らずに済んだということで,これまでも答弁はさせていただい
ているところであります。
以上,8点でございます。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
関連して御質問ございますか。
では,篠塚委員。 -9-しろまる篠塚委員 従前,定年後の勤務延長については検察官に適用がないということの立法事実な
んですが,それはやはり今回この改正案が出てから,世論あるいは元検事総長も含むOBか
ら強い批判が出たように,検察の独立を侵すおそれがあるんじゃないかということにあった
わけです。元検事総長あるいは検察OBもそのように批判されたのですから,法務省の中,
あるいは検察の中からこれはまずいんだというような議論があったのではないでしょうか。
今までがそういうことでやってきたことを急に変えるに当たっては,法務省の検討の過程で
後からOBが言われるような批判,検察の独立を侵すのではないか,世論もそう思ったし,
弁護士会も出したわけですけれども,そういう議論はなかったんでしょうか。
しろまる鎌田座長 では,当局からお願いします。
しろまる佐藤刑事局総務課長 勤務延長が可能であるとするに至って解釈変更を法務省として行った
わけです。こちらについては,先ほども申し上げたとおり,検察官全体の定年引上げという
課題がある中で,国家公務員法と検察庁法との関係を改めて検討した結果,解釈変更をした
ということです。確かに,御指摘のとおり,いろいろな御指摘が国会でも審議,あるいはそ
の内外でございました。それについて,国会でもいろいろ説明をしてまいったわけですが,
その点について,法務省としては,当時法務省だけではなく,関係省庁にも協議をして決め
たというのが過程でございます。
いろいろな指摘があったことは,当然こちらとしても大変重く受け止めておるところです
が,当時の経緯としてはそのような状況でございます。
しろまる篠塚委員 答えられないのかもしれませんけれども,これだけ発表になった後,検察,現場
もあると思うんですけれども,OBから批判が出ているのに,法務省の検討の中で出なかっ
たというのは,ちょっと理解できないし,そういうのがあれば,やはり公文書として議論の
過程を残すべきではなかったのでしょうか。
しろまる鎌田座長 当局,お願いします。
しろまる佐藤刑事局総務課長 これまでの解釈を変えるということをしたわけでありまして,それに
ついて,当然内部でも検討いたしました。それまで適用がないと解釈していた勤務延長の規
定,これを検察官に適用することについて,果たしてどうだろうかと,当然それは内部でも
よく検討しているところでございます。法務省として,あるいは政府として,その解釈はで
きるという判断を結論的にしたわけですが,これに対して,今御指摘があったように,検察
官のOBからも意見が出たことは当然我々承知しております。そこは結果としてそういう御
意見が出てしまった,ということは,我々としても受け止めなければならないと考えている
次第です。
しろまる篠塚委員 公文書管理法の4条では,法令の制定又は改廃及びその経緯について,意思決定
の過程を含めて文書を作らなければならないと書いてあるわけです。それから,人事に関す
る事項もそうですし,それから,関係者で構成される会議又は省議の決定及びその了解及び
その経緯も公文書を作らなければならないというふうになっているわけなんですけれども,
そういうものが作られているんでしょうか。
しろまる鎌田座長 当局からお願いします。
しろまる佐藤刑事局総務課長 まず,本日もお配りしておりますが,国家公務員法81条の3の勤務
延長の規定が検察官に適用されるという文書についてはまとめたわけです。ただ,これにつ
いてはいろいろな御批判があって,例えば日付がないとか,決裁過程がよく分からないとい
-10-
った御批判を頂きました。その文書を保存するかどうかという観点では,この文書を当然行
政文書として保管しておりますし,また,今日もお配りしておりますが,解釈変更,あるい
は法案提出に至る経緯については,文書を取りまとめて,その経緯についての文書という形
で今保管をしています。
これまでの我々の解釈,考え方として,法律案策定の前提となる法律の考え方,検討の状
況,これについてどこまで決裁を取るか,あるいはどこまで残すか,保存するかというとこ
ろについては,これらのルールにのっとってやった結果,日付がなかったというのが実際の
ところなのですが,今回,いろいろな御指摘もございましたので,経緯に関する文書につい
ては改めて今回作成し保存しているということでございます。
しろまる篠塚委員 我々が問題にしているのは,日付が,作成者が書かれていないというところもも
ちろんあるんですけれども,やはりいろいろな意見,多分恐らくあった反対意見も含めて,
議論をした経緯,意思決定の過程がやっぱり文書として残されていないと,公文書管理法の
本来趣旨に合わないんじゃないか。そういうところにやっぱり国民が納得していない理由が
あるんじゃないかと思うんです。それはいかがなんでしょうか。
しろまる鎌田座長 当局,お願いします。
しろまる佐藤刑事局総務課長 今回も配布資料の中にあるいわゆる協議文書,これはある意味結論が
記載された文書であります。当然,その過程において事務的にいろいろな検討をしているわ
けですが,それは結果として今回はこの文書にはそこまでは記載がないというのは,実際,
事実でございます。
いろいろな内部での意見,外部からの意見はその後の話ですので,それは国会審議等で明
らかになっているところですが,内部でどういう意見があったかということは,結果的に文
書としてはおりません。
これを残すべきであったか,今振り返ってどうかということは,正にこれから御議論いた
だくことでもあるのかもしれませんが,そういった御指摘については私どもも承知しており
ます。
しろまる篠塚委員 結果として,一つの意見で突っ走ったように見えるわけですよね。それが批判を
非常に浴びたと思います。だけれども,国民の信頼を回復するという意味では,実はいろい
ろな意見があって,結果としてそうなった。要するにOBから批判されるような意見も踏ま
えていろいろ議論したんだというのはまだいいんですけれども,振り返ってみると,そうい
うのはないように見えるというのは,法務省にとっても不幸なことだと思うんですよね。多
様な意見があり,またOBの意見を聞けという意味じゃないですけれども,当然予想される
ような意見について,なぜそれが駄目なので,なぜ変えなくちゃいけないのかと,そういう
ことをやはり公文書管理の目的,公文書管理法の1条で言っている,公文書は,健全な民主
主義の根幹を支える国民共有の知的財産だと言っていて,やはりこういう大きな検察の独立
というところに関わる問題について,いろんな意見があったけれどもこうしたと,やっぱり
残して,国会にもそれを説明して理解を得なかったことが,やはり今回の不信というか,法
律案自体が取り下げざるを得なかった,廃案にならざるを得なかったというところにあるん
だと思うんですけれども,それはいかがなんでしょうか。
しろまる佐藤刑事局総務課長 結果として,多様な意見が出ていたかどうかが保存されている文書に
ないという御指摘だろうと思います。そういった多様な意見をどこまで残すか。例えばこれ
-11-
が立法の過程でいろいろな検討会でありますとか,法制審議会でありますとか,そういった
ところでいろいろな御意見が出る,それを議事録に残すというのは,一つの法案策定のプロ
セスとして,どんな議論があったかという大変参考になることだと思います。今回はそうい
う過程を経ずに,正に法務省の中でまず決めた上で関係省庁に協議をして,合議が調ったと
いう経過をたどっておりますので,結果としてこのような形になっています。御指摘は私た
ちも理解したところであります。
しろまる鎌田座長 既に御意見を頂戴しているところですので,意見の前に,ここだけは確認してお
きたいという御質問があれば,まずそれを出していただいて,その後,自由な討論に移りた
いと思いますが,いかがでしょうか。もう質問はよろしいですか。
徐さん,どうぞよろしくお願いします。
しろまる徐オブザーバー この後の議論に進む前に確認しておきたいことが2点ほどございましたの
で,挙手させていただきました。
まず前提として,今回あった御批判等に対して確認すべきことというのが,規則,様々管
理規則だったり取扱規則あると思うんですけれども,これ自体が何か不足していることがあ
ったのか,あるいは見直すべき点があったのか,それとも,規則自体は正しく制定された上
で,運用オペレーションに批判を受ける点があったのかというところを確認しなければいけ
ないと私は認識しています。
その上で,国会の答弁で当時森大臣が,今回の件について口頭決裁,事務次官が行ったと
いうことをおっしゃっていたんですけれども,口頭の決裁に関するルールというのは,私自
身は存在していないというふうな理解をしていまして,そのような理解でよいでしょうか。
また,その上で,なぜ事務次官という立場の方の決裁を取られたのかというところがまず1
点目でございます。
もう一つが,先ほど篠塚委員からも御指摘ございましたが,この問題は,文書が作成され
ていたのかという問題と,それとは別に決裁を取っていたのかという問題で,御説明のあっ
たところは後者の決裁のところが中心だったと思います。私自身も,決裁に関するところが
問題というか批判が起きたのかなというふうに思っているんですけれども,2点目にお伺い
したいのは,この資料4にある文書取扱規則の第13条に,別表第一にいろいろ決裁規定が
あるというふうに規定されていまして,その第17番ですね,別表第一の17番に,国会,
内閣,各府省及び最高裁判所との連絡,交渉及び協議等に関する文書は,それぞれ決裁権限
者が定められて決裁部署に当たるというふうな指定がされていて,今回資料として出してい
ただいた協議文書,これ人事院だったり内閣各省庁か内閣人事局とのいわゆる協議文書だと
思っているんですが,この別表第一の17番の特に重要なもの,重要なもの,一般のものの
三つそれぞれにも当たらないという認識の下で,決裁文書ではないという判断をされたとい
う理解でよいかを確認したいです。
しろまる鎌田座長 それでは,当局からお願いします。
しろまる佐藤刑事局総務課長 まず,1点目の規則そのものの問題なのか,あるいは運用としてどう
だったのかという点について御説明いたします。その結論を私の方で申し上げるかどうかと
いうことは別として,次のような理解でやっておりました。
まず,森大臣,当時の法務大臣が口頭で決裁をしたということですが,口頭で決裁をする,
この決裁の概念の問題だと思うんですが,全体としてはまず口頭で了解はされていたという
-12-
事実はございます。その上で,この口頭での了解あるいはその了解のやり方について,この
法務省行政文書取扱規則において明確に定められているかというと,その点は記載がないと
理解をしております。
それから,なぜ事務次官まで了解を得たのかということですが,これは案件,国家公務員
法と検察庁法との関係,それからこれまでの解釈を変えると,そういう意味で内容としては
重要なものであるということで,事務方のトップである法務事務次官までの確認を受けて,
了解を得ているということでございます。
2点目であります。文書取扱規則の方で別表一というのがございまして,こちらについて
は,規定の在り方というよりも,その運用の問題として考えていたわけですが,まず今回の
協議文書についても,検察官の定年引上げに関する法律案策定の過程でその検討の前提とし
て整理していたのであり,法律案策定の過程であるということで,別表第一の条項には該当
しないという取扱いを当時していたということでございます。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。徐さん,よろしいですか。
しろまる徐オブザーバー すみません,念のため確認なんですけれども,各府省との協議のうち重要
なものに当たらない,あるいは一般のものにすら当たらない文書だったという理解でよいで
しょうか。
しろまる佐藤刑事局総務課長 今回は,その別表一のいずれにも当たらない,その分も含めて当たら
ないとして運用していたものであります。
しろまる鎌田座長 それでは,質問はこの辺りでよろしいですか。
紀藤委員。
しろまる紀藤副座長 今の説明の話だと,結局,事実の報告しかないというふうに私は理解している
んですけれども。結局,日付のない文書があったという結果は出ているわけじゃないですか。
過程の文書も残っていないという結果も出ているわけですよね。それから口頭決裁したとい
う結果も出ているわけですよね。大臣まで上がっていないという結果も出ているわけですけ
れども,それに対して法務省には当然公文書の管理に関する責任者がいらっしゃると思うん
ですよね。法務省の公文書監理官というのは,今はホームページにも上がっていらっしゃる
佐伯さんという方なんですけれども,監理官が今回の件に関してどういう監査をして,どう
いう何か問題点があるということを指摘しているのかということは,反省も踏まえて,何が
問題点があって,何が改善しないといけないかということは,やっぱりちゃんとやっている
のかどうかを明らかにしていただかないと,この後の議論が伝わりにくいんじゃないかと思
うんですね。
それで,見ていただいたら分かるとおりなんですけれども,例えば資料4の法務省の行政
文書管理規則によると,例えば,6枚目表というところに,様式2号ということで起案用紙
というのがあるわけじゃないですか。これ,起案をする際に起案日に年月日とか起案とか,
こういうことで日付とかは全部これで分かるようになっているというふうに思うんですよね。
資料5を見ると,そこに日付がないということは,この起案用紙との関係で1月17日が分
かるということを過程として示しているのかもしれませんけれども,そういうものであると
か,それから資料7に人事院の事務総長による懲戒処分の指針について(通知)というのが
あるんですけれども,それを見ると,4ページに公文書の不適正な取扱いに関しては,場合
によっては懲戒処分の対象になるということまで書かれているんですね。それと公文書管理
-13-
法が文書主義の原則を挙げていて,現に文書主義というのは,マニュアル資料2の文書の管
理に関するガイドラインの9ページに,作成は文書主義の原則と,もうはっきり書いてある
わけだから,原則文書を作らないといけないことになっているわけですよね。
そうすると,何か問題があったということは,私は思うんだけれども,その問題があった
ことに関して法務省内でどういう調査をして,事後報告をして,どこに問題点があったかと
いうことを反省して出直してくれるんだったらともかく,今日の報告には,そこがないとい
うか。正にこの次の議論に関わると思うんですけれども,そこを報告していただかないとい
けないと思っているんですけれども,それはどうですか。
しろまる鎌田座長 では,当局,お願いします。
しろまる佐藤刑事局総務課長 まず,文書の作成管理,それから決裁のことでありますが,これまで
も国会で答弁してきたとおり,法務省文書管理規則,あるいは取扱規則について,法務省と
しての理解の下に進めてきました。決裁の必要なものは決裁を取り,あるいは文書の作成が
必要なものは文書を作成して管理しています。法務省としての理解に基づいてやってきたと
いうことをこれまでも累次説明をさせてきていただいたところです。
そういう意味で,我々としては文書の決裁等についても必ずはんこあるいは電子決裁が必
要なものについては電子決裁をしてきたと考えておりますし,あるいは文書の作成について
も必要なものは経緯の文書をはじめ作成してきたと理解しているところであります。
しろまる紀藤副座長 今の点,ちょっと念のため確認ですけれども,そうすると,反省すべき点はな
いという趣旨の回答なんですか。それとも理解なんですか。佐藤さんの理解,個人的な理解
なのか,反省すべき点がないと法務省的な見解なのかというのは。
しろまる佐藤刑事局総務課長 文書の取扱規則あるいは管理規則にのっとってやってきたということ
は,私個人というよりも,法務省としてこれまでも答弁をさせてきていただいたところです。
しろまる鎌田座長 質問がほかにないようでしたら,大分長くなりましたので,当局はここでお引き
取り願って,あとは委員等の議論にしたいと思いますが。
篠塚委員,どうぞ。
しろまる篠塚委員 平成30年7月20日に閣議会議で個々の省としての取組だけではなくて,政府
を挙げて,内閣府の下に言わば横串でこの文書管理を強化するということになったのではな
いでしょうか。これは財務省の改ざん事件があってから強化されたわけですね。その中では,
PDCAサイクルだとか,正にコンプライアンスでもっとどんどん向上していこうというの
もありますし,管理を間違えれば人事の評価にするとか,悪質な事案は懲戒処分にするとか,
あめとむちといいますか,むちの方も入っているわけですね。しかも,その中で独立公文書
管理監というのは,最高検の検察官から出ているわけで,法務省はこの内閣府と一体となっ
て公文書管理を推進する重要な役割があると思うんですけれども,そういう点から見て,紀
藤副座長が質問されたような,仮に今までのやり方で問題ないんだということは分かります
けれども,そう言われるのは納得はしていませんけれども,このPDCAサイクルとかコン
プライアンスの在り方として,もっと向上を目指していくんだという点から見たら,やっぱ
り改善する余地は本当にないんでしょうか。
しろまる佐藤刑事局総務課長
公文書管理法以下の法令に基づいて,法務省として,行政文書を管理してきたところです。
委員御指摘のとおり,それについて見直しが累次にわたってなされており,御指摘の内閣府
-14-
の方でやっているというのも,もちろん承知をしております。それに見合った形でこれまで
も法務省では取り組んできたところでありますが,そこから先,これが十分だったかどうか
という点については,当局からは差し控えたいと思います。
しろまる鎌田座長 むしろその点をこの会議体で御意見申し上げることが重要だというふうに思いま
すけれども,後藤委員,どうぞ。
しろまる後藤委員 同じ質問を繰り返しても先に進まないと思いますので,先ほどのお答えに対する
私の意見を申し上げたいのですけれども,もしかすると何らか反論があるかもしれないので,
説明者がいらっしゃる間に申し上げてもよいでしょうか。
しろまる鎌田座長 御意見に対する反論を立場上当局は返しにくいと思うので,そこはむしろ意見交
換の中でやっていただければと思います。
徐さん,質問ですか。
しろまる徐オブザーバー 何度もすみませんが,もう一点だけ御確認したいことがございまして,法
令解釈について,法務省として解釈を変更したとか,当局の説明がさっきあり,また資料の
中でも政府として解釈を変更したというのが御説明にあったと思うんですけれども,この大
なり小なり法令解釈というのは,法務省の中でどれくらいの頻度があって,かつそれが余り
にも多過ぎて,法令解釈を都度決裁,その経緯も含めて決裁取るのは現実のオペレーション
として不可能に近いのか,それともやはり法令解釈というのは非常に重要なもので,かつ数
も限られているので,決裁を取るという運用にしていっても問題がないのかというところの
現実の課題を,あるいはオペレーションを全く存じ上げないので,その点だけお伺いしてみ
たいです。
しろまる鎌田座長 では,当局,お願いします。
しろまる佐藤刑事局総務課長 まず,法令を解釈する,それは法案を立案する過程で様々な既存の法
令について解釈をするということは,それこそ山のように当然あります。それから,今後法
案を策定していくという過程で,これまでの法律の解釈を整理するということは,これもた
くさん当然ありますし,これは多分どこの省庁も同じなのではないかと思います。
そういった意味で,ちょっと頻度と言われるとなかなか申し上げにくいところではありま
すが,それはそれなりにあるものだろうと思っています。めったになくても,固まったもの
で硬直的に法律案を一切出さないということであれば,運用だけやっているということであ
れば別ですが,いろいろな法律,これはもう刑事法に限らず民事法でも多分同じことだろう
と思いますけれども,様々な場面で解釈を検討したりするということは,多くあろうかと思
います。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
ほかに当局にこの場でお答えいただかないといけない課題がございましたら。
よろしければ,委員の意見交換に移りたいと思います。御当局におかれましては,長時間
ありがとうございました。
それでは,二つ目の検討の柱,これは文書管理,決裁中心であります。それ以外に,こう
いう問題について議論すべきであるというふうな御意見についてもお出しいただいて結構で
ございますけれども,順次御発言を頂ければと思います。残りがあと1時間程度になってま
いりましたので,お一人当たり単純に割ると大した時間が割けないことになりますので,是
非最長でも5分を過ぎないようにお願いいたします。
-15-
それでは,御発言を希望される方は挙手お願いいたします。
後藤委員からどうぞ。
しろまる後藤委員 ありがとうございます。
先ほどの私の質問に対する御返事では,私としては余り納得できませんでした。
一つは,黒川氏のために解釈変更を考えたのではないとおっしゃるのですけれども,でも
それまでの法案では全くそれを出していなくて,その必要を認めていなかったわけです。そ
れが,12月になって急に再検討したというのは,やはり黒川氏のために考えたと,情況証
拠はそのように見えます。仮にこれが捜査の対象になる事件で,被疑者が「これは黒川さん
のために考えたことではありません」と説明しても,おそらく有能な検事は容易に信じない
でしょう。それを素直に信じるほど,普通の検事は人がよくはないと思います。
それから,黒川氏でなければ対処できない案件とはって何だったのか。東京高検における
複雑困難な事件,という非常に抽象的な御説明です。それが例えばゴーン被告の公判対応だ
ったんだとか,河井克行さんの捜査だったとか,その程度説明してくだされば,そうなのか
なという気もするのですけれども,それがないので,非常に納得し難いですね。
それから,林眞琴さんに代わるときに,交代に伴うギャップを別にすれば特に支障はなか
ったということでした。それなら最初から黒川氏でなければできない仕事とは何だったのか,
ますます分からない,というのが私の意見でございます。
しろまる鎌田座長 ほかに御意見いかがでしょうか。
先ほど来の議論を踏まえると,こういうところをもっとこうしろというふうなお知恵をお
出しいただけると今後の取りまとめに役に立つかと思うんですが,いかがでしょうか。
では,太田委員,どうぞ。
しろまる太田委員 余りさしたる意見でもないんですが,解釈変更の資料に日付がないというのは説
明の中でもおっしゃっていましたけれども,私も行政官としての経験から言いますと,各省
間のやり取りの中で比較的重要なものであれば,日付と作成名義等入るというのは,割合一
般的でありまして,そういう面からすると,この1点だけを捉えて全てを論ずるのが適切か
どうか分かりませんが,文書の作成の仕方とか,その辺で公文書管理規則等の運用面でより
厳格に見直していくという余地はあるのかなと,この1点だけを捉えればそういう感想がご
ざいます。
それから,先ほど来の委員の意見の中で,私も内閣法制局に5年ほどいて,法律案や政令
案の審査をやっていた立場から申し上げれば,制度設計というのはかなりな議論を伴うもの
でありまして,法案の成案に至るまでには相当長時間,多岐にわたる議論を経ています。そ
のプロセスが全て記録になっているかというと,それは事実上不可能という側面もありまし
て,最終的には法律案という成文の形でまとまったものが結論ということになっている。特
に一つの省庁の中での議論というのは,これは紆余曲折ある場合もありますので,そのプロ
セスを一々残していっては,恐らくこれもまた実際的ではありませんし,役所の意思という
のは最終的にはもう決裁権者の決裁行為によって決まるものです。異論があったのを残して
おくべきだったというような御意見がありますけれども,なかなか実務上はそれは難しい話
なのかもしれないということを1点思いました。
それから,後藤委員ですか,過去の解釈に言及がないというお話がありましたけれども,
これも内閣法制局での経験からしますと,解釈を協議するときには,この条文についてはこ
-16-
ういう解釈でいいだろうかと,こういう解釈をするという結論だけは書いてあって,これに
ついての意見を求めるというのは,役所間のやり方としては一般的なんですね。過去,恐ら
くこの件については適用がないと思われてきた,前例もなかったでしょうし,そういう確立
した文書での解釈があったという話でもないと思います。
意識として,通念として,適用がないというふうに解されてきたのを,今回適用があると
いう解釈で確立しようとしたときに,こういう理由で適用があるものと解するという文書を
まとめて協議に出すというのは,これは中央官庁のやり方としては一般的なものだと思いま
すので,その点申し添えさせていただきます。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
冨山委員,どうぞ。
しろまる冨山委員 冨山です。
多分,今回の議論で,ある種手続論的にちゃんとやっておけばいい的な話で進めていたの
が,これ政治論になったんですよ,黒川さんの議論は。だから,結局政治論的観点で透明性,
説明責任と言われる問題と,行政手続に普通こうですよねという話の多分のりを結果的に超
えちゃったんです。超えさせられたというか,そうされちゃったんです,現実問題として。
だってあれだけ政治的に大騒ぎになっちゃったんだから。
それで,私,思うんですけれども,これは私もそれなりに政策形成プロセスに関わってき
ているので思うんですけれども,もうこういう時代,SNSの時代になっちゃっているので,
従来であれば手続的にちゃんと瑕疵なくやりました,ここにこうに書いてありますと幾ら言
っても,これ多分SNS空間では全く駄目ですね。残念ながら押し切られます,やっぱり。
それが現実的な政治になっているし,それから,ある意味で官邸主導というか,ある種政治
主導の時代になってくると,従来であれば行政手続的な中でやっていくという話が,結局あ
る種民主的統制の政治的影響の中でやるという話が増えていくので,だから多分今議論して
いる,今までの多分の行政官的常識とか内閣法制局的常識とは違った意味での説明責任を事
実上やっぱり問われてくるんだと思うんですよ,これ。今後の,将来の議論ですよ,今の議
論じゃない。それが多分端的に出ちゃったような事案のような気が私は今回しています。
そういう詰められ方をするんですよということをある程度前提にして,文書管理とか意思
決定のプロセスの議論をどういうふうに,何を残して何を残さないのかという,こういう会
議もそうなんですけれども,それをやっぱり今後考えていくというのも生産的な議論のよう
な気が私はしています。これは多分宿命的に避けられないと思います。これはもう世界中で
起きていることなので。これが一つ。
それからもう一つ,またそもそも論が好きなのでそもそも論に行っちゃうんですけれども,
この国家公務員の定年延長の話にしても,あるいはそれが検察官に適用があるかないかにし
ても,正直やっぱり今,皆さんのようなのもある種キャリア官僚ですよね,広い意味で。キ
ャリア官僚の人事制度ってやっぱりこれすごい窮屈な議論をしているんです,はっきり言っ
て。もう民間,こんな窮屈なことやっていないので。もっとフレキシブルでダイナミックに
なっていますよね,特に偉い人の人事。偉い人ほどダイナミックにやっています。
そうすると,これは毎回,幹部のところの人事の在り方とかそれをめぐる,一番定年延長
が効くのは幹部のところなので,この辺の仕組みって何かちょっと私もう限界に来ているん
じゃないのという感じが正直します。
-17-
それで,ちょっとまた余分なことを言いますけれども,半沢直樹のこの前最終回がありま
して,私のモデルが登場していましたが,そのときに,最後に頭取が半沢直樹が辞めるとい
うから引き止めようと思って,君は将来の頭取だなんて言って引き止めるんですね。あれ,
今絶対通用しないですよ。だって,東京中央銀行ってあれでしょう,メガバンクでしょう。
10年後,20年後あるかどうか分からないんだから。ある前提の議論しているんです,あ
れ。だから,昭和の人は何の違和感もなく見ているんですけれども,ツイッターとか見てい
ると,若いやつは何でここで半沢は辞めないんだとみんな不思議がっているんですよ。だっ
て銀行はなくなっちゃっているかもしれないんだから,そこで頭取ポストちらつかせられた
って,全然ぴんとこないし,あと半沢さんは,あれ,バブル入行組だから多分50代ですよ。
恐らく今は,どうですかね,世界の本当にトップレベル,トップレイヤーのGSとかああい
うフィナンシャルファームでCEOの就任年齢って50歳前後ですよね。だから,もうそう
いう時代になっちゃっているので,だからこの全ての議論の前提が,またすごく乱暴なこと
を言いますけれども,要はかなりかちかちとした年功制で,何か刑事局長やったら何とかに
なって,何とか,最後検事総長やりますみたいな,そういうちょっと非常にダサい仕組みを
前提としているので,だから,たかだかちょっと定年延長になったかならないで黒川さんの
それが何か検事総長にしてやるかどうかと,大体そもそもが検事総長になってそんなにうれ
しいのかいなんて僕は個人的に思っちゃうので,だから何か根本論としてすごくダサい枠の
中で議論しているような気がしているので,なぜこれをあえて言うかというと,これも前々
から申し上げているように,こういう仕組みに対して,恐らく今日現在東京大学法学部に在
学している本当に優秀なやつは全然魅力感じないですよ。
だから,皆さんが,僕らが若かった時代,あるいは先輩方が若かった時代に,裁判所を目
指しました,あるいは検察庁を目指しました,司法試験受かって何とかという人たちとはも
う全然レベル下がっていますから,今来ている連中は。ということは,でもくどいようです
が,私自身は公の仕事をしてきて,やっぱり公の仕事はこれからもっと大事になります。公
の仕事を担う人の人材をもっと高めなければいけないので,とすると,やっぱり検察庁であ
れ法務省であれ,それは財務省であれ経産省であれ,あるいは警察庁であれ,ちょうど私の
同期が太田さんと同じでみんな今トップやっている,事務次官やっている年齢なので,これ
はいつも飲むと同じことを言っているんですけれども,やっぱりこの仕組みを根本的に変え
ていかないと,20年後,30年後にこの国滅びちゃうので,だから,願わくばそういう議
論の提起する契機になったらうれしいなと思っております。
以上です。
しろまる鎌田座長 ほかに。
金指委員,どうぞ。
しろまる金指委員 すみません,私75ですから,化石みたいなものでございまして,申し訳ござい
ませんが。
これは前からお話ししているんですけれども,こういったところの論議って,実は隣のお
じさんたちがワーワーやっているよという話であって,当事者って一体どう考えているんだ
と。ですから,前もお話ししたように,省内の方々はこういった問題に関してどんな問題意
識を持っておられるのか。あるいは,どうしたいと思っていらっしゃるのか。この辺の議論
を是非是非こういうことを契機に始めていただきたいなと。
-18-
そのときに,隣のおじさんの意見が大事であれば聞けばいいのであって,隣のおじさんが
みんなで出張っていって意見言い合って物決めちゃいかんと思うんですね。やっぱり省内で
実際に物事を扱っている方々が,その中で物事がおかしければ正せばいいのであって,あと
は冒頭から申し上げているので,是非またあえて,またくどいようですけれども,もう一度
申し上げると,どうかこういったことを契機に若い方々含めて,これはおかしいよ,どうも
というのか,あるいはこれはしようがないよという,こういったことを意見を言い合えるよ
うな空気がもしなければ,それが問題であり,それをだから今回の新大臣含めて変えていた
だくような努力をしていただくということなので,そういったことの契機にこの会議が使わ
れることがよろしいのであって,私は口幅ったいんですが,ここで余りものを決めてしまう
と,またそれで縛られていくというふうになっていくので,でき得れば,皆さんが考えてい
く契機になればと思いますので,これは意見というよりも,むしろ提案でございますので,
よろしくお願いいたします。すみません。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
では,鵜瀞委員,どうぞ。
しろまる鵜瀞委員 鵜瀞です。
文書管理として問題提起されていますけれども,文書があればいいのかという点でちょっ
と考えることがあるかと思います。文書として残すべきとされているものとして今問題にな
っているのは,個別の定年延長の事案の話と,それから検察庁法改正案がどうしてこうなっ
たのかという2種類あると思うんですね。
法案の方は,その後国会審議されていきますので,その中で内容の妥当性とか議論する機
会は多分あるんだろうと思うんです。個別の事案の方に関しては,必ずしもそういう機会は
ないので,そのことがそこで終わってしまうことについて,社会の人たちが疑問を持ったと。
何でというふうに疑問を持ったということだと思うんですね。それは,多分容易に想像でき
た話なのであって,出せば,秘密裏にやるということは多分できないので,このような方に
関しては,だから出せば,何でそういうことをするのという疑問に思われることは,およそ
すぐ想像できたはずで,そうすると,それに対して事前に何をすべきかというと,そういう
みんなが疑問に思うようなことは,しない方がいいんじゃないかという議論もあり得ると思
いますし,あえてするのであれば,ちゃんと説明を用意しておくということがポイントなの
かなと思うんですね。それが先ほど篠塚委員のおっしゃっていたことがそれに近いことだと
思うんですけれども,それが決裁になっているのかどうかとか,日付がどうとか,そういう
問題も多分あると思うので,文書管理としてやるべきことはやらなきゃいけないと思います。
公文書管理法というのは上川大臣の強いリーダーシップでできた法律ですから,今後も省
内の文書管理については大臣御指導されるんじゃないかと思うので,ルールにのっとった作
成,保管は必要だと思いますけれども,でも,本件の個別人事に関していうと,そういう文
書があるかないかの問題じゃなくて,みんながおかしいと思うことについてあえてやったん
だったら,そのときにそれなりの十分な納得感のある説明,あるいは経緯を言えば理解でき
るのかもしれませんけれども,その経緯はどなたもおっしゃっていないわけですから,なる
ほどそういう経緯ならしようがないねということにもならなかったわけですので,そういう
世論を予想した対応というのが足りなかったというのが,問題ではないかなと思います。
-19-
それが,どうしてそうなってしまったかというと,若干そこに人事のことでもあるので,
ちょっと内輪の論理みたいなのがあって,その省内あるいはその世界では通ると思ったとい
う,ちょっと国民の認識とのギャップがあったということだと思うんです。それは,長期的
にはそんなにいいことではないので,将来に向かってはギャップがなるべく起きないように
するということが必要かなというふうに思います。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
では,順次御発言を求めていってもよろしいでしょうか。
河合委員,いかがですか。
しろまる河合委員 河合でございます。
私は,勤務延長制度に関する文書ですね,今回問題になっている文書,これについて,今
日の説明でありましたが,やはり口頭決裁とか,非常に不透明な手続で進んでしまったとい
うところが問題ではないかと思います。重要な解釈変更ということが含まれておりますので,
そこは丁寧なプロセスを踏むべきなんですね。それを今鵜瀞委員おっしゃいましたが,そう
いった重要な問題だという問題意識が若干法務省の方で欠けていたんじゃないかと。やはり
国民を意識しながらもっと丁寧な説明,国民に分かる説明をすべきであったのが,説明が不
十分なためにいろいろな波及効果で大きな問題に発展してしまったというのが根本にあるよ
うに思いますので,そこら辺は変えていかなくちゃいけないんじゃないかと思っております。
以上でございます。
しろまる鎌田座長 井上委員。
しろまる井上委員 そもそも勤務延長の問題がこんなに炎上するときっと思っていなかったんだろう
なというのが前提にありまして,検事長も検事総長も内閣が任命をそもそもするところなの
で,何で延長のところだけそんな怒られるんだろうと,そういう気が正直しておりまして,
そういう意味でいくと,作業をしていた人たちに若干同情して,作っていく過程でそこをこ
れだけ炎上するということを念頭に置いた書類の作成という観点はきっとなかったんだろう
なと思うわけであります。
それで,私も昔,刑事の立法は大分やってきましたけれども,それの感覚でいきますと,
省としては,法律案を作るまでの内部の協議の過程は,いろいろな意見が出ますけれども,
ほとんど多様な意見までは記録に残しません。主戦場は国会審議なので,そこで正にいろい
ろな意見が出て,そこで決まっていくわけですので,省内の意見の形成過程で残るとしたら,
外部の有識者の意見を聞いたとか,審議会をやったとか,そういう外からの意見はちゃんと
残しますけれども,中ではいろいろな協議の結果,こういうふうに残ったと,あるいは二つ
の意見が並立になったとか,そういう本当に大ざっぱなところしか残していないので,その
内部の協議の過程の文書をどこまで残すかというのは,実際は結構難しい問題で,やるとし
たら非常に重要なエポックになったようなところを残しておくということだと思うんです。
その重要性の判断というのは,もういろいろな法案でいろいろなプロセスがあるので,一
概に言えないので,それは当該文書の作成について責任を持つ責任者,ポストは決まってい
るはずですので,誰がその文書の残し方について責任を持つのかということをきちんと再確
認して,その人のセンスをよくするということだと思うんですね,研修で。そのセンスの背
景はもちろん説明責任の発想であります。現在及び将来の国民にどういう発想でこういう法
案ができたのかということが説明できるために必要な重要な文書は残していく。そういうこ
-20-
とを今後やっていく必要があるなと思います。本件でそれがどれだけできたかはちょっと分
かりませんけれども。
それで,その重要性の判断の主体が明確になっていないんじゃないかなというのが,自分
の今までの仕事をやっている感じからいくと,反省事項になるのかなという感じがいたしま
す。
それから,主戦場になる法案を国会に出すときに,いろいろな資料を作ります。その中で
一応立法の理由というものを書きますけれども,あれは実は結構さらっとしか書いていない
ですね。それは,法案を出す立場からいくと,余りぐじゃぐじゃ書くといろいろ揚げ足取ら
れて余計な論点出るから,やっぱり肝心なところ,本当の骨のところだけを書いて,あとは
必要に応じて審議の過程で口頭で補充していくというやり方を取っていると。そういうこと
を前提にすると,いわゆる説明責任的な観点で,法案を出す段階で立法事実をどれだけそこ
に文章で記載するのかというのは,また案件に応じて考えるべき事柄かなということでござ
います。それが今回の文書の管理の関係でちょっと補充的に申し上げたいことでございます。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
徐オブザーバー,まだ御意見にわたる部分の御発言がございませんが,御意見あれば御発
言ください。
しろまる徐オブザーバー ありがとうございます。
検察庁法の改正案含めてこれ問題になったのは,政治的なものも含めて個別の人事と関係
があるのではないかとか,政治的な狙いがあるのではないかという疑念が巻き起こってしま
ったからだと思っていまして,そこには多分に誤解も含まれていると思っています。
とはいえ,前提として,なぜ従前に適用されていなかった国家公務員法の制度が解釈変更
で適用可能になるのかという点に疑問を持った方々が,その解釈を支えている根拠,言わば
新たに出てきた立法事実というのを知りたいと思ったために,今回協議文書等を見たいとい
う方々,あるいは追及を受けたというふうに思っています。
この点については,恐らく法務省だったり内閣法制局の方々が完璧な論理武装を持ってい
るはずでしたでしょうし,そのロジックは構築されていると思っていまして,その点につい
て,日付が入っていないだとか,あるいは決裁を取っていなかったというところでまた新た
な疑問を生んでいってしまう,何か政治的な裏側に隠したいものがあったんじゃないかとか,
そういったことを疑念として呼んでしまったのは本当に悲劇だなというふうには感じました。
その上で,とはいえただ一つの定年延長の件だというふうに矮小化するのではなく,法律
の解釈変更というのはやはりすごく大きなものだと法曹の当事者としては思っています。と
いうところで,法務省としてこのように解釈をしたとか,政府としてこのように解釈を変更
したと,純粋に法律の解釈ではなくて,解釈を従前から変更するといった場合にまで取扱規
則にある別表第一のいずれにも属しないと見て業務の運用を進めるのは,多分に疑問だと思
っていまして,提案としては,法律の解釈の変更に至るものについては決裁を取るといった
ような運用を進めてもいいのではないか,あるいはそのような解釈を別表第一の下で行って
もいいのではないかというふうには感じました。
以上でございます。
しろまる鎌田座長 ありがとうございます。
解釈の変更も大から小までいろいろあるので,これはやっぱり検察官の独立性に関わる非
-21-
常に重要な部分であるということも加味すべきだろうというふうに思います。
それでは,篠塚委員,どうぞ。
しろまる篠塚委員 その点はまず,今回はやはり公文書管理法第4条を遵守していないというふうに
私は理解しています。やはり座長もおっしゃいましたように,検察の独立に関わる極めて重
要な,検察庁にとって重要な問題なわけです。当然,第4条でいえば当該行政機関における
経緯も含めた意思決定の過程を合理的に跡付け,又は検証できるようにするというのが公文
書管理法4条に明記されているわけで,やはりこれを守っていないんじゃないか,そういう
見方も当然できるんじゃないかというふうに私は思いました。
それから,将来的な問題をどうするかについては,平成30年7月20日の閣僚会議の見
解を受けて,やはり法務省は,この問題については特別な大きな役割が,ある意味先頭を切
って全省庁に先駆けて公文書管理を徹底するべき役所だと思うんですよね。それがこういう
結果を招いて,法案が廃案になるような,しかも閣法で出しているのに民間というか一般の
人がおかしいといって倒れてしまうようなことをやったというのは,省庁としても恥ずかし
いことだと思うんです。そのための信頼回復としては,一層,文書のPDCAサイクルだと
か,いろいろなコンプライアンスの基本原則にのっとって,一からやり直さなくちゃいけな
いんじゃないかというふうに思っています。
しろまる鎌田座長 井上委員,どうぞ。
しろまる井上委員 さっき徐さんがおっしゃった法律の解釈変更ですけれども,これは座長もおっし
ゃったように,本当,大中小様々ございまして,実際の現場での個々の事案への当てはめで
今までなかった解釈を決めるみたいなものもありますし,刑事の場合にはむしろ裁判規範に
なっちゃっているから解釈権がどこにあるのかという感じがしますけれども,私,入管にい
た感じでいくと,行政解釈が通用するところなので,その行政解釈の決定とか変更というの
は,個別の案件を通じてたくさんあるわけですね。そういうのを一々残すということは余り
に非常識で合理的でない。ただ,制度の根幹に関わるようなものの解釈変更は,これは法案
に準ずる取扱いをすべきだという意見は,私もそれは賛同できます。
しろまる鎌田座長 後藤委員,どうぞ。
しろまる後藤委員 法解釈の変更もいろいろあるというのは,確かにそうでしょう。刑法や刑事訴訟
法について,検察の現場では日常的に解釈が問題になって,いろいろな考え直しはあるのだ
と思います。けれども,今回問題になったのは,検察庁法という,検察庁にとって根幹とな
る法律です。だから普通の現場での法解釈の変更とは違う意味があったと思います。
しろまる鎌田座長 どうぞ,冨山委員。
しろまる冨山委員 冨山です。
質問に近いんですけれども,さっき河合先生が言われた,センスというのかな,の問題な
んですけれども,今,だから重要か重要じゃないかという議論ですよね。これを誰がジャッ
ジするのかという問題と,ジャッジする人の能力センスの問題が分かるような気がしていて,
それで,やっぱりただこれ,定年問題って普通の会社だったら大騒ぎですよね,これ。制度
変えるといったら。だから,どう考えても,常識的にこれが何か割と軽いと思ったとしたら,
その人相当やばいですよ,はっきり言って。その人の判断能力,申し訳ないですけれども,
これ。だって,すごい重要な問題ですよ,定年制変える。これ役員定年だって大騒ぎですよ
ね,変えるとしたら。それが一つ思ったんです。だから,ちょっと大丈夫かよと正直思って
-22-
います,その関わった人の能力的な問題として,これは一つ。
それからもう一つは,ちょっとさっき政治と申し上げたのは,今回やっぱり固有名詞が浮
かんじゃうんですよ,誰がどう見たって。どうしても黒川さんという固有名詞と関連する制
度変更ということは。これもやっぱりセンスですよ,言うなれば。
だって,結局,民主制国家なので,最終的に政治的に重大かどうかというのは非常に重要
な要素ですよ。だってお客さんは国民なんだから。そういう意味でいうと,その二つの意味
合いにおいて,ちょっとその辺どうしてそういうミスジャッジが起きちゃったのかなという
感じがしていて,それが普通に起きるとすれば,それはひょっとしたら検察庁の,ちょっと
言い方が悪いけれども,あるいは法務省のこれは組織能力の劣化ですよ,はっきり言って。
もしそれを誤ったとすれば。
そこは僕ずっと心配なんですよ。要は,これはかなりダサいミスなので,はっきり言って
そういう意味でいっちゃうと。そこが私は非常に心配というか,危機意識を感じます。
しろまる鎌田座長 私,全然検察庁,検察官を擁護する立場にいないんですけれども,多分これ推測
するに,検察庁法で検察官幹部の定年を普通の一般公務員より長くしていますが,それはそ
の部分の身分保障をすることで検察官の独立を保証していた。それが一般公務員の定年が上
がってきたときに検察官をどうするかが問題になった。これは上げなきゃいけないと思うの
ですが,それを任期最後の段階で裁量的に勤務延長ができるようにするということにされた
のですが,これも従来の検察庁法で意識されていた権利の保護,身分保障というのは途中で
失脚されられないようにすることだったところ,これは延ばすんだから別にいいじゃないか
という,多分そんな感覚があって,延ばすことについて裁量が絡むことのデメリットに思い
が至らなかったのかなというふうに推測します。邪推かもしれないですけれども。
しろまる冨山委員 だから推測するけれども,でも,多分そういう割とイージーな推測で定年制はい
じらないですよ,やっぱり定年問題は。だとしても。
しろまる鎌田座長 そういうふうにすると,せめて一般公務員に追いつけるという,何かそんな発想。
追い抜かれるのを追いつこうという。
しろまる冨山委員 それは分かるんですけれども,でもやっぱり定年問題というのは物すごくデリケ
ートな問題なので,どんな組織でも。それは大学でもそうですよね,仮に裁量的であっても
すごくいろいろな議論が出るはずなので。だから,そこは私もちょっと組織経営能力的な意
味での疑念でちょっと大丈夫かなと思ったところです,正直。
しろまる鎌田座長 大学も,多くの大学はそういう裁量的要素のある例外的定年延長を排除していま
すね。
ちょっと横道にそれるような発言を座長がしてしまって申し訳ございません。
紀藤副座長,御意見をどうぞ。
しろまる紀藤副座長 私,いろいろ御意見を伺いまして,やっぱり,個人のセンスとかが問われると
いうケースであると同時に,どうしてそのセンスが悪くなってしまったのかというのがやっ
ぱり考えていかないといけないのかなというふうに思うんですよね。それはどこにあるのか
なというふうに思うと,最初に山室委員がいらっしゃった時に,山室さんが言っていました
けれども,やっぱり検察の独立性,政治との関係の独立性というのは極めて重要だと思うん
ですよね。
今さっき私が配布した資料でも,検察官の独立性ということをかなり強くうたってあって,
-23-
そこに倫理がかぶってくるわけですけれども,そのために何かいろいろなものが制度疲労し
ているのかなと思うのは,結局,検察官の定年延長に対しては法務省が検察庁にあまり物が
言えないのかなとか,今日は検察庁の中での注意とか厳重注意は検察庁のことだから法務省
からは組織が違うから説明できないと言われると,それはおかしいでしょう。だって法務省
の組織の中に検察庁があるわけであって,検察官の定年延長は法務省がやっているわけです
から,なぜ厳重注意と注意が言えないのかというのが全く説明になっていないと思うんです
けれども,そういう説明が通ってしまうとか,それから,週刊新潮が9月24日号で検事総
長の秘書官の方がセクハラしたということを報じているんですけれども,これも週刊新潮の
記事を見ると,森大臣に上がっていなくて,事務次官までしか上がっていなかったという話
になっているんですけれども,それも,事務次官は検察官ですからね。検事総長よりは人事
的には下の位置に属しますから,これは物が言えなくなってしまうというのも分からないで
もないというか,それはどんな組織でも上下関係があるとなかなかそれを言えなくなるとい
うのは当たり前の話であって,法務省と検察庁の関係はやっぱり整理をしないと,このまま
では物が言えない社会になっているのかなとか,反省がないのかとさっき聞いたら,反省と
かそういう議論にはならず,何も後日法務省内でも検討していないということですから,そ
うすると,そのことも含めて考えると,いろいろ考えさせられることが多いなと,今日はち
ょっとつくづく思いました。
ちなみに週刊新潮は,とても私は報道は遺憾だと思っていて,前回の会議で,検察官のい
わゆる懲戒の話をした日は9月10日なんですね。週刊新潮は9月24日号なんですけれど
も,実際には木曜日発売で1週間前の9月17日に発売されるわけですけれども,9月17
日に発売されるものというのは,その週の9月14日月曜日が週刊新潮の原稿締切日に当た
るんですね。だから,常識なので説明しておきますけれども,月曜日に雑誌の締切りがある
原稿というのは,その前の週から当然取材に入るということになるわけですけれども,その
前の週の木曜日が9月10日だったんですね。
そうすると,週刊新潮がこの事実を知ったのというのは,9月10日に知っているんだっ
たら当然取材が来ると思うんですけれども,多分11日以降になると思うんですよね。そう
すると,セクハラの事実が7月17日の検事総長の就任パーティーから2か月近く隠されて
いたということは,とても大きな問題だろうというふうに思っていて,やはり大臣に知らさ
れていないという,先ほど誰が決裁権者かという問題もありましたけれども,大臣に知らさ
れていないということ自体も非常に大きな問題で,結局,法務省と検察庁の中で大臣に上が
らずぐるぐる情報が回っているんじゃないかと。それもなお民主的統制の観点から問題があ
るというふうに思うので,検察の独立性であるとか,法務省との関係性であるとか,それか
ら民主的統制の関係とかは,どうもきちっと整理しないとまた同じことが起こってしまうの
かなというふうに思っております。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
山本隆司先生,御発言をお願いしてもよろしいでしょうか。
しろまる山本委員 直前まで授業をしておりまして,前半の方の御議論を伺うことができておりませ
んので,あるいは的外れな発言になるかもしれないのですが,その点は御了承いただければ
と思います。
私が思いますに,今回の特に解釈変更に関わる問題ですけれども,大きく分けて二つの問
-24-
題があり,その二つは密接に関わっていますが,あえて分けて申し上げるならば,文書管理
の問題と,それから国民に対する説明の問題があるのではないかと思います。文書管理に関
しましては,解釈変更であり,法律の制定・改廃そのものではなく,その過程において作ら
れた文書であるということから,日付がないとか決裁を上位機関まで経ていないといったこ
とがあると伺っております。
この点は,先ほども議論があったのですけれども,解釈といってもいろいろございます。
例えば個別の事案に当たったときに,言わば解釈を微修正していくというか,少しずつ調整
していくといったような解釈の変更もあろうかと思います。ただ,今回の場合は,先ほどか
らお話がありますように,検察の独立に関わる重要な事項であり,なおかつ一般的なルール
の話であり,そして明確にこれまでの解釈を変更するというものでありまして,その意味で
は,やはり文書の作り方としては,法律の制定・改廃そのものに近い扱いをすべきだったの
ではないかという感じがいたします。
そのことを明確にルール化できるかと申しますと,先ほど来議論がありますように,解釈
の変更と一口に言いましても,いろいろなケースがありますのでなかなか難しいのですけれ
ども,ただその点につきましては,やはり反省をして今後考え直していく必要があるのでは
ないかと思います。
それから,もう一つは,国民に対する説明の問題です。法律の解釈適用のレベルの話をい
たしますと,現在では行政手続法が適用される場合には,基準を作ることが原則として義務
づけられる,あるいは努力義務とされているということがあり,基準を策定する前にはあら
かじめパブリックコメントにかけることが原則とされております。そして行政手続法が適用
されるか否かにかかわらず,先ほども話がございましたけれども,例えば法令の制定・改廃
にしても,あるいは基準のレベル,通達等のレベルの変更にしても,審議会を開くなどして
透明性をなるべく早い段階から確保する方策が採られていることと思います。
今回の問題は,人事に関わるという特殊性があったかと思います。行政手続法は公務員の
人事関係については適用されないという形で,そこのところは切り分けています。とはいえ,
やはり公務員の勤務関係については,基本的な部分は法律で定める形で,国民に対してきち
っと説明して勤務関係を定めることになっております。人事に関することであっても,定年
制のようなやはり一般的なルールを定める際には,国民に対する説明あるいは透明性が強く
要求されるのではないかと思います。
現に,今回これだけ問題になってしまったのは,個別の,黒川氏の案件が出るのと同時に
解釈も変更すると言われたため,個別の案件のことを考えてルールを変更したのではないか
と受け取られたためです。そのようなことが現に起きて,現に国民からいろいろな声が出て
いることを考えますと,やはりその点は考え直す必要がある。国民に対する説明という点で
も,私は経緯を詳しく存じ上げているわけではございませんけれども,一般的なルールの変
更を決めるのであれば,もう少し早く,何らかの形で明らかにするべきであったのではない
かと思います。それがあれば,ここまで話がこじれることもなかったのではないかと思いま
す。
以上,2点申し上げました。以上です。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
山本副座長,何かありますか。
-25-
しろまる山本副座長 それでは,もう皆さんの御意見に尽きているところがあると思うんですが,私
自身も個人的なことを申し上げれば,やはり解釈変更,特に今回のような国家公務員法と検
察庁法の関連,特別法・一般法の関係にあるのかどうかというような極めて重要な部分につ
いて従来の解釈が変更されたのだとすれば,それは基本的にはやはり文書主義の原則という
かが適用されるようなものなのではないかというふうに思います。
先ほど来御議論があるように,解釈変更にもいろいろなものがあるということですけれど
も,この公文書管理法でも,あるいは法務省の管理規則においても,軽微なものはもちろん
除くということになっているわけですので,実質的には立法あるいは法律の改正に匹敵する
ようなもの,重大なものについて,この文書主義の原則は妥当することは明確でないという
状況は,私はやはり適当ではないのではないかというふうに思います。
恐らくその解釈変更というのは別に法務省だけで問題になることではなくて,ほかの省庁
等でもいろいろな公権的な解釈権を持っているような法律について,日常的に解釈は行われ,
場合によってはその変更が行われているのではないかというふうに思うので,ですから,そ
れはほかの省庁がどういうふうにそれを規則等に落としているのかということとも関係する
のかなというふうに思いますけれども,その辺りは事務当局,今後法務省で精査していって
いただくべきことかなというふうには思うのですが,原則的にいえば,やはりそういうもの
もこの別表第一はどのような形で含めるかというのはあるかとは思いますけれども,検討に
値する問題として,今回の件を契機として検討していくべき問題かなというふうに思いまし
た。
私からは以上です。
しろまる鎌田座長 ありがとうございます。
手短に,手短にというふうにお願いをしてきて,少し時間が余っておりますので,まだ言
い足りないことがありましたら,御発言をお願いしたいと思います。それと,できるだけ一
巡したいと思っており,次の回は第3の柱についての議論にしたいなと思っていますので,
今,文書管理,決裁についていろいろ御意見いただきましたけれども,それ以外に第2の柱
に関連して,これはやっぱり議題として取り上げてもらいたい,討論の対象にしてもらいた
いというものがありましたら,御発言いただければと思います。
それでは,篠塚委員,お願いします。
しろまる篠塚委員 今日御配布の資料の一番最後についておりますけれども,この透明化,要するに
文書管理の問題というのは,実は刑事の司法の問題とも絡んでおりまして,刑事確定訴訟記
録法という法律があるわけなんですけれども,その改正とか運用改善の必要があるんじゃな
いかというふうに考えています。
実際,例えばオウム事件の記録については,上川先生が大臣のときに永久保存にされたと
いうこともありまして,この今,法律,どういうところにちょっとおかしいところがあるの
かというと,閲覧対象から除外されている基準にいろいろ矛盾があるということが一つです。
それから,期間制限があるんですけれども,これも,期間制限が合理的でないということが
あります。それから,謄写の権利が,見ることは,書き写すことはできるんだけれども,コ
ピーは駄目とか,ちょっと時代遅れのところもあって,改善の余地がある。
一方,裁判所の方が管理している民事裁判の確定記録については,判決はもちろん永久保
存なんですけれども,それ以外の重要な記録も裁判所は鋭意,逐次国立公文書館に移管され
-26-
て,今は国立公文書館も建て直しされているところですので,是非刑事も民事と均衡を取る
ような形での改革をお願いしたいと。
それから,永久保存とするかどうかについては,今,検察官が判断権者なんですけれども,
先ほども山本先生がおっしゃいましたけれども,基準がないんですね,その基準が。やっぱ
り基準を作る委員会等を作ってやっていただいたらどうかと。外交文書についても,どう公
開するか,あるいはどう保存するかについては,検討する委員会があるわけです。URLを記
録の方につけているので御覧ください。そういうことは既に外交文書についてはありますか
ら,それに準じて,この機会に上川大臣の方で是非改正の方向を打ち出していただけないか
ということで提案させていただきます。
日弁連の方で先月,理事会を通して意見書をまとめておりますので,それも参考にしてい
ただければと思います。
以上です。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
冨山委員,どうぞ。
しろまる冨山委員 先ほどの金指委員のところとちょっと絡むんですけれども,何度も申し上げます
けれども,やっぱりこれからの組織人事制度というんですかね,これは検察と法務の関係性
も含めてなんですけれども,要は,私に言わせれば極めて年次制でがちがちで硬直的で,出
世コース全部決まっていますなんていう昭和な仕組みをまだやっているわけで,それが果た
して若い,要するにこれからを担う法務・検察の若い検察官僚というか,司法試験受かって
いるの,受かっていない方両方とも含めてから見て,こんなのでいいのかよというのを是非
とも聞いてみたいです,僕。私の知る限り,今の20代,30代でこんな仕組みで喜んで一
生働きたい優秀なやつはいませんので,私の知る限りは。是非是非聞いてみてください。こ
こは是非とも提案したいと思います。
しろまる鎌田座長 分かりました。
井上委員,どうぞ。
しろまる井上委員 冨山委員からの法務・検察の人事の硬直性について御指摘がありまして,確かに
年寄りが順繰りにたらい回しにしているようなところがあることは,これはどこの省庁も大
体同じだろうと思うんですけれども。それで,実際それで若い人たちが魅力を感じないとい
う面もあるのかなと,そういうものにもアンテナを立てなきゃいかんなとは思うんですが,
じゃ,どんなふうにすればいいのかというのを,今ある公務員制度を根底からひっくり返す
というのはなかなか現実性がないような話になりかねないので,冨山委員からアイデアがあ
ったらちょっとさわりでも御披露していただけると,今後,法務・検察が基本的には適材適
所とかいろんなことを考えながら人事はやらなきゃいけないんですけれども,少しでも何か
そういうのに役立つような要素があれば,是非御披露していただけたらどうかなと思います。
しろまる冨山委員 もともと公務員制度大改革論者なので,法律を変えたいぐらいなんですが,分か
りました。それはそれで,何ができるかという議論はもちろん喜んでしたいと思います。こ
れは金指さんからもいろいろ意見が出ると思いますけれども。
ただ,ちょっと申し上げると,やっぱり民間の企業も従来すごくがちがちのいろんな制約
のある中で,やっぱりそれをかなり時間をかけながら変えてきましたよね。大変な努力をし
-27-
て。ですから,基本的な今の例えば日本の仕組みで言っちゃうと,民間企業だってぼんと給
料下げられないですよね,今は制約があるので。実際いろんな制約もかかっている中で,だ
けれども,かなりダイナミックにしてきたことも事実なので,これを私,一,二年で一気に
解決するという話ではないと思うんですね。だけれども,やっぱり本気でそういう努力を1
0年20年やった20年後と,法律があるからしようがないやで諦めている10年後ではま
た違うと思うので,そういった意味で,私としては是非ともここで努力をして,いろんな創
意工夫を始めていって,その結果として私は公務員制度が根本的に変わっていくということ
を私は期待しています。
しろまる鎌田座長 ほかにはいかがでしょうか。
しろまる冨山委員 ちなみに,ちょっと,私,産業再生機構でCEOになったときに42歳ですけれ
ども,公務員体系の中で私は当時事務次官級扱いでした。そういうのもやろうと思えばでき
るということです,これ。別に,もちろんいわゆるみなし公務員ではあったので。体系上は
次官級でした。だからそういうふうに人を雇えるわけでしょう。別に年齢制限ないので。だ
から,そこは本気でやればできるということだと私は思いますけれども。
逆に,私実は,ちょっとごめん,また余計なことを,私は実は定年憲法違反論者なので,
要するにあれって結局あれですよね,解雇規制が厳しい前提で定年で辞めてもらうというセ
ットになっていて,こんなもの,今どきのこんな流動性が高い,人生100年時代なのに定
年制なんて,それもすごいダサいと思っているので,要するに優秀な方はもう80歳でも9
0歳でもやっていただいたらいいし,ちなみに私は昨日の時点で私はうちの会社のCEO,
代表権,返上して降りています。今うちの会社で私はただの平パートナーです。平パートナ
ーとして役に立つ限りはずっとうちの会社で頑張ろうと思っているので,そういうのがあっ
てもいいですよね。検事総長辞めて平検事やればいいじゃないですか,元気だったら。それ
が何が悪いのか,僕よく分からないんですよ。そういうダイナミズムは,僕今の仕組みでは
持てるんじゃないのかなというふうにちょっと,そこはすみません,過剰な期待かもしれな
いですけれども,基本的には応援団なので,そういうふうになったらいいなと,すばらしい
なと,個人的には思っております。
しろまる鎌田座長 大学は総長辞めた次の日から組合員ですから。
しろまる冨山委員 ですよね,ただの教授ですものね。そうですよね,本当に。それで全然不都合な
いですよね。
しろまる紀藤副座長 時間があるみたいなので。
私も今の意見は基本的に賛成で,定年自体の,今回の定年ってやっぱり63歳定年がちょ
っと短過ぎるというか,国家公務員法の改正で65歳になるのに63歳という,そういうこ
とで短過ぎるということが前提にはあるとは思うんですよ。だけれども,一方で,定年を延
長する仕組みを作るときに,その定年が情実とかお手盛りとか内部だけで決められるとか,
そういうことになってしまうと,結局大企業だって結構まずい事態になりかねないと思うん
ですね。定年ってやっぱりなくすということになると結局純粋な能力主義ということになり
ますが,能力主義ということになると,やっぱり米国的なメリットシステムみたいなきちっ
とした人事考課システムがなければ,客観的な人事考課システムがなければ,うまく機能し
なくなるという弊害もあって,先ほど私が独立性の問題というのを発言したのは正にそうい
うことで,人事の問題を検察官独自の独立性とどう調和していくのかというのが結構難しい
-28-
だろうなというふうに実は思っています。
ですので,定年延長するにしても,国家公務員と同じにする,もともと国家公務員法の改
正に乗っかれば65歳になったわけですけれども,それに乗っからずに別途の仕組みでやろ
うとしたことが,国家公務員法の改正って施行時期がありますので,施行時期から見て黒川
さんは検事総長になれないんですね。そういう意味で,国家公務員法の改正では間に合わな
いということも今回の背景にあったと思いますが,いずれにせよ,定年の仕組み自体が社会
的に余り機能しなくなっていくことは社会的な事象だし,例えば内閣府においての首相補佐
官制度みたいなものはもう定年を事実上廃止しているようになっていますから,そうなると,
やはり有能な人材を年齢にかかわらず配置するというのは,これからの日本の社会において
はとても重要だということを前提に,先ほど言った情実とかお手盛りとか内部的な自分たち
で決めてしまって外部的な感覚がなくなることの問題点をどう処理していくかを,きちっと
精査した方がいいのかなというふうに思ったりもしています。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
河合委員。
しろまる河合委員 一言だけ。河合でございます。
私は,検察官あるいは裁判官に関する限り,定年はあった方がいいという意見です。とい
うのは,世代交代が進まないんじゃないかと。これだけ寿命が長期化しますと,有為な人材,
有能な人材をどんどん使おうとなると,下にも有能な人材はたくさんいるんですね,今。検
察庁にも山ほどいるはずなんですが,それがいつまでたってもポストに就けない。するとや
る気をなくしてしまうということなので,ある程度年限が来たら,そこは引き継いでもらう
ということの意味はあるんじゃないかと思います。ちなみに,こんなことを言うと弁護士会
に怒られますが,弁護士の先生は長命な方が多く,80,90になっても活躍されているん
ですが,逆に言うと,中堅・若手の人の不満というのは,いつまでたっても自分に顧問先が
回ってこないという,そういう不満をよく聞くんですね。だから,それは世代交代をすべき
じゃないかと,私はそういう意見ですので,決して定年が悪いというばかりではないという
のが私の意見でございます。
以上です。
しろまる鎌田座長 これは公務員制度の根幹にも関わりますけれども,山本隆司先生,何か補足的な
御発言ございますでしょうか。
しろまる山本委員 その問題に関して本格的に議論しようとすると大変ですけれども,私も基本的に
は今河合委員が言われたように考えております。もちろんいろいろな立法の仕方がある話で
すので,一概にこちらが絶対正しいとは言えないかと思いますけれども,やはり公務員の場
合,あるいは検察官も含めてですけれども,世代交代といいますか,できるだけいろいろな
人に公職に就けるチャンスを与える,そういったチャンスを作るということは一つの視点で
あると思いますので,その制度自体が,私は不合理であるとは思っておりません。
しろまる鎌田座長 徐さん,残りの時間少なくなりましたけれども,何か御発言あればお願いします。
しろまる徐オブザーバー すみません,では唯一の多分20代でありますので,その視点から定年制
についてのみコメントさせていただければなと思うんですが,私の周りでも多数国家公務員
になった人間はいるんですけれども,定年制があるからそれを避けるとか,あるいは定年制
がなければやっぱりこっちに進むといったことはなく,少なくともやっぱり働き方としては,
-29-
冨山委員がおっしゃったみたいに,そもそも終身まで行こうと思っている人たちがどれだけ
いるのか非常に多分に疑問な話ではありまして,そこには,就職先として国家公務員を選ぶ
かどうかという単純な意思決定はたくさんの要素が含まれていると思います。
ただ,その上で,定年制を延長することそのものがこれほど話題になったことは,国民に
とってはとてもいい契機だったかなというふうに思っていまして,これをきっかけに少し国
家公務員そのものも含めてなんですけれども,定年延長,定年がどうあるべきだとか,ある
いは定年制そのものがあるべき姿なのかといったところが議論できればなというふうには思
いました。特に提案等になっていないんですが,コメントさせていただきました。
しろまる鎌田座長 ありがとうございました。
ほかによろしいですか,御発言。よろしいですか。
今日のところで大体第2の柱についての意見は出尽くしたというと,また御不満な方もい
らっしゃるかもしれませんけれども,先ほど申し上げましたように,できるだけ,議論を一
巡させたいということで,次回の会議におきましては三つ目の検討の柱,我が国の刑事手続
につき,国際的な理解を得られやすくするための方策というちょっと曖昧な表現になってい
ますけれども,その三つ目の柱に議論,入りたいというふうに思っておりますので,御準備
を頂ければと思います。
そのような進め方でよろしいでしょうか。
それでは,若干時間を余しておりますけれども,本日予定していた件につきましてはこれ
で終了いたします。本日の会議の議事につきましては,これまでと同じように,特に公表に
適さない内容はなかったと思われますので,発言者名を明らかにした議事録を作成し,法務
省のホームページ上で公表することとさせていただきます。
部分的に不都合な箇所がございましたら,おっしゃっていただければ,それに対する対応
をしたいというふうに思います。
しろまる紀藤副座長 ごめんなさい,今の点,いいですか。
前回の,今朝ホームページ拝見してきたんですけれども,前回の座長の報告がアップされ
ていないみたいなんです。だから,座長報告をアップしていただきたいと思っているんです
けれども。
しろまる鎌田座長 座長報告って,私の森大臣への報告のことですね。これは事務局とも相談をした
んですけれども,これは委員の皆様にはお配りしてありますよね。ホームページに上げると,
会議体の全体の意見であるというふうな形になってしまうことを懸念いたしました。あくま
でも座長個人の責任で大臣にこれまでの議論の経過を御報告申し上げたまでだということで,
ホームページへの掲載は遠慮をさせていただいたところですけれども,いかがでしょうか。
しろまる紀藤副座長 そうなんですか。
しろまる鎌田座長 本日の配布資料は全部ホームページに載せるようにいたします。
次回の予定等について事務局から御報告お願いします。
しろまる保坂事務局 次回の予定でございますが,皆さんの日程を照会させていただきまして,都合
つかない方には恐縮でございますが,次の会議は10月15日木曜日の午後2時から開催す
ることを予定しております。会議の方式につきましては,また追って御連絡させていただき
ます。
しろまる鎌田座長 今日は珍しく早く終わったんですけれども,次回は長引くこともありますので,
-30-
2時間より長く設定させていただくことがあるかもしれないということで,御了解いただけ
ればと思います。
本日は,長時間にわたり大変御熱心に御議論いただきまして,誠にありがとうございまし
た。これにて閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。

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