5勤務延長制度(国公法第81条の3)の検察官への適用について

1勤務延長制度(国公法第81条の3)の検察官への適用について
国家公務員法
(以下
「国公法」
という。)第81条の3に規定される,
定年による退職の特例(以下「勤務延長制度」という。
)は,特定の職員に定年後も引き続きその職務を担当させることが公
務遂行上必要な場合に,定年制度の趣旨を損なわない範囲で定年を超えて勤務の延長を認め,公
務遂行に支障を生じさせないようにしようという趣旨から設けられている(森園幸男ほか編「逐
条国家公務員法(全訂版)
」698頁)。勤務延長制度は,職員が同法第81条の2第1項により退職する場合に適用されるところ,同
項において,職員が定年に達したときは,定年に達した日以後の最初の3月31日又は任命権者
があらかじめ指定する日のいずれか早い日に退職する旨規定され,同条第2項において,職員の
定年年齢が原則として60歳である旨規定されている。
一方,検察官の定年については,検察庁法第22条において,一般の国家公務員とは異なり,
検事総長は65歳,
その他の検察官は63歳にそれぞれ達した時に退官する旨規定され,
さらに,
同法第32条の2において,同法第22条の規定は,国公法附則第13条の規定により,検察官
の職務と責任の特殊性に基づいて,同法の特例を定めたものとする旨規定されている。
このように,検察官の退職(退官)に関して国公法の特例となっているのは,定年年齢と退職
時期であり(具体的には,同法第81条の2第1項に規定される「法律」による「別段の定め」
は,検察庁法(22条)により規定される定年年齢と定年による退職時期と解される。前記逐条
国家公務員法1233頁も同旨。),検察官の定年による退職は,広く捉えれば,一般法たる国公
法が規定する「定年による退職」に包含されるものと解される。そして,前記の勤務延長制度の
趣旨は,検察官にも等しく及ぶというべきであり,検察官についても,国公法の定年制度を前提
とする勤務延長制度の適用があると解される。
この点,昭和56年の国公法改正により一般職の国家公務員全体に定年制度が導入される以前
から,検察官については定年制度が設けられており,いわば検察官の定年制度そのものが国公法
の特例であったところ(国公法の特例を定める検察庁法第32条の2は,国公法施行後の昭和2
4年に設けられ,その時点で既に検察官の定年に関する検察庁法第22条が国公法の特例とされ
ていたことからも明らかである。),前記国公法改正により一般職の国家公務員全体に定年制度が
導入されたことに伴い,その特例としての意味は,定年年齢と退職時期の2点に限られることと
なったものであって,その意味でも,前記国公法改正以後は,国公法に規定される定年制度その
もの,そして,これを受けて規定されている勤務延長制度については,検察官にも(一般法であ
る)国公法の規定が適用されると解するのが自然である。
なお,勤務延長制度は,職員が同法第81条の2第1項により退職する場合を前提としている
ところ,前記のとおり,検察官の定年による退職に関する特例は,定年年齢と退職時期の2点で
あり,国家公務員が定年により退職するという規範そのものは,検察官であっても定年退職に関
する一般法たる国公法に拠っていると言うべきであって,結局,検察官の定年による退職は,検
察庁法第22条により前記2点につき修正された国公法第81条の2第1項に基づくものと解さ
れる。
以 上
(注1) 勤務延長制度に関する国公法第81条の3の検察官への適用にあっては,検察官に
つき前記2点に関しては本来検察庁法第22条により特例とされていることから,国 2公法81条の3第1項及び第2項のうち,
「その職員に係る定年退職日」
とあるものは,
「その職員が定年に達した日」と修正されて適用されることとなる。
(注2) 再任用制度に関する国公法第81条の4についても,勤務延長と同様,同法第81
条の2により退職した者を対象としていることから,検察官にも観念的には適用があ
るものの,このうち,短時間再任用については,検察官は,犯罪の捜査や公訴の提
起,刑事裁判への立会といった事務(検察事務)を自己の責任において行うこととさ
れ,その職務内容が,週の一部や一日のうち限られた時間のみ勤務するといった短時
間再任用になじまないこと,また,フルタイムの再任用についても,これまで,一般
の国家公務員のような再任用職員のための俸給表が定められていないなど,法令上必
要な手当てがなされていないことから,現状では適用できない状態にある。

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