全国52か所にある少年鑑別所では,「法務少年支援センター」として,非行・犯罪問題
に関する本人やその家族,機関・団体からの相談に応じたり,研修や講演等を実施したり
と,地域の非行・犯罪防止のほか,青少年の健全育成に向けた様々な活動を行っています。
更生支援企画課だより
KOUSEI SHIEN KIKAKUKA DAYORI
法務省近畿エリアの再犯防止・更生支援情報が満載の広報誌
法務省大阪矯正管区
☎:06-6941-5781
:06-6910-2428
Vol.11R2.61
平成28年12月に施行された再犯防止推進法において,地方公共団体にも地方再犯防止
推進計画の策定努力義務が明記されていますが,令和2年5月1日時点でその他の市町村を
含めると全国61団体で再犯防止推進計画が策定済となりました((注記)当課で把握している限
り) 。近畿地区においては,すでに,滋賀県,大阪府,加古川市が「再犯防止推進計画」と
して,京都府は「京都府犯罪のない安心・安全なまちづくり計画」に,兵庫県は「地域安全
まちづくり推進計画」にそれぞれ盛り込む形で,豊中市や堺市は,「地域福祉計画」に包含
して地方再犯防止推進計画を策定しています。また,明石市に続き,奈良県では,「奈良県
更生支援の推進に関する条例」が制定されています。
続々と計画策定や条例の制定等が進んでいますが,令和元年12月に決定された再犯防止
推進計画加速化プランにおける成果目標の一つとして,「令和3年度末までに,100以上
の地方公共団体で地方計画が策定されるよう支援する」が設定されており,今後,地方自治
体への総合窓口である当課では,さらに地方計画の策定・連携強化の推進に向けて取り組ん
でいきます!
地方再犯防止推進計画の策定,進んでいます
:kouseishien-osaka
@cccs.moj.go.jp
矯正の取組み紹介1 【地域援助】
(地方再犯防止推進計画にぜひ盛り込んでほしい)
特徴その1 「非行・犯罪に関する行動科学のスペシャリストがそろっている」
•少年鑑別所は非行・犯罪問題に特化した専門機関であり,そのノウハウを活用し,問題行動等のメ
カニズム分析,心理検査や行動観察等の結果を踏まえた助言等を得意としています。
(例:1夜遊びや万引き等の逸脱行為が始まった子の保護者・教師等に対する本人への関わり方の
助言・本人へのカウンセリング・専用のワークブックを用いた指導等,2暴力等の問題行動のある
福祉施設入所者や職員に対し,知能検査や性格検査を踏まえた関わり方の助言等)
特徴その2 「成人の問題についても相談可能」
•名称に「少年」とありますが,少年の問題に限らず,成人についても相談可能です。
(例:1更生保護施設入所者への就労支援として,職業適性検査や性格検査等を踏まえた助言,2
雇用主等に対する本人の就労継続のための関わり方等の助言等)
特徴その3 「相談費用等が一切かからない」
•「法務少年支援センター」は国の機関であり,地域社会のための活動という位置付けで当該業務を
行っていることから,相談費用等は請求していません。ご相談内容によってはお受けできなかった
り他機関をご紹介したりするケースも一部ありますが(例:児童相談所等へとつなぐことが適当な
場合等),まずはお気軽に最寄りの法務少年支援センターまでお問合せください。
ご不明な点,もっと詳しく知りたい点等があれば当課までご連絡ください!
KOUSEI SHIEN KIKAKUKA DAYORI2TOPIX 〜統計データに見る 『特殊詐欺』の傾向について〜
「特殊詐欺」とは,被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ,指定した預
貯金口座への振込みその他の方法により,不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪(現金
等を脅し取る恐喝及び隙を見てキャッシュカード等を窃取する窃盗を含む。)の総称です。
図1は,平成24年から平成30年における特
殊詐欺で検挙された少年の検挙人員と,成人
を含めた特殊詐欺全体の検挙人員に占める少
年の割合を示したものです。平成30年中に特
殊詐欺で検挙された少年は812人で,成人を
含めた総検挙人員の28.6%を占めており,こ
こ数年にわたり著しく増加していることが分
かります。15%10% 11% 10% 9%
42% 39% 41% 41% 41%5%6% 7% 7% 6%26%26%
28% 27% 28%39%46% 45%
53% 58%
1% 1% 1% 1% 4%
(221) (250) (213) (189) (336) (957) (883) (818) (743) (571)0%20%40%60%80%100%
平成2627 28 29 30 平成2627 28 29 30
少年院新入院者の共犯者数別構成比の推移(非行名別)
不詳
不特定多数
4人以上3人2人
単独
( )内は実人員
(出典:法務省矯正局調査)
【詐欺】 【窃盗】
図3 図3は,平成26年から平成30年における
少年院新入院者の共犯者数別構成比を非
行名別に示したものです。「窃盗」につ
いては「単独」と「2人」を合わせた構成
比が毎年70%弱を占め,主として単独も
しくは少人数での犯行が主となっていま
す。一方,「詐欺」については「不詳」
と「不特定多数」を合わせた構成比は
年々増加し,平成30年においては80%弱
となっており,多人数による組織的な犯
行がほとんどであると言えます。19231735541536048081212.6%
17.9% 17.9%
16.6% 15.2%
19.6%
28.6%0%5%10%15%20%25%30%0200400600800
1,000
1,200
平成24 25 26 27 28 29 30
特殊詐欺で検挙された少年の検挙人員の推移
(出典:「SIGNAL FROM THE YOUNG 少年からのシグナル」令和元年警察庁)
成人を含めた特殊詐欺全体の
検挙人員に占める少年の割合
(人)図136% 36%28%36%
31% 27%
32% 31% 27%
1% 2%5%1% 6% 15% 3% 7% 19%27%31%
24% 19% 23%20%15%22%15%
(708)(641)(240) (1,726)(1,345)
(769) (1,537)(1,207)(1,099)0%20%40%60%80%100%
平成2025 30 平成2025 30 平成2025 30
少年院新入院者の非行名別構成比の推移(年齢層別)
その他
覚せい剤取締法違反
強制性交等・強制わいせつ
道路交通法
傷害・暴行
詐欺
窃盗
( )内は実人員
(出典:法務省矯正局調査)
【15歳以下】
入院時の年齢
【16歳〜17歳】 【18歳以上】図2注 「15歳以下」には,14歳未満の者を含む。
「18歳以上」には,入院時に20歳に達している者を含む。
図2は,平成20年・25年・30年
における少年院新入院者の非行名
別構成比を年齢層別に示したもの
です。いずれの年齢層でも「窃
盗」と「傷害・暴行」の構成比が
高い傾向にあります。また,年齢
層が上がるにつれて「詐欺」の構
成比が高くなっており,平成30年
の18歳以上においては「窃盗」に
次いで高く(19%)なっていま
す。「窃盗」の構成比が年々減少
傾向にある一方,「詐欺」の構成
比は全年齢層において年々増加傾
向にあることが分かります。
これらのデータからは,多くの人間が共謀した,巧妙で複雑な手口による「特殊詐欺」が近年
台頭してきていることがうかがえます。
詐欺集団はいわゆる「出し子」や「受け子」を「アルバイト」や「仕事」と称して巧妙に募集
しているケースが多く,詐欺という犯罪の重大性や被害額の大きさなどを深く考えないまま,高
額な報酬につられ,悪質な組織的犯罪に加担してしまう若者が増えており,詐欺に特化した指導
プログラムの導入を進めている少年院もあります。今後,詐欺被害を防止するため国民への広
報・啓発や,未成年の非行防止施策などの一層の拡充が必要と思われます。

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